デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治10年9月3日（1877年）

是ヨリ先、第一国立銀行ヨリ当座預金印税低減ノ儀ヲ申請シタルニ、規則ニ抵触スルノ故ヲ以テ却下セラル。然ルニ此ノコトハ商取引ノ発達ニ関スル重要事ナルヲ以テ、是日、栄一他ノ諸行ニ図ツテ再度上申ノ儀ヲ決ス。

後、再ビ却下セラル。

択善会録事　第三回・第一二―一六頁
○上略
○又同氏○渋沢栄一ハ当座預リ金印税申請ノ始末ヲ報シテ曰、本行六月十四日《（マヽ）》ノ申請ハ規則ニ抵触スルヲ以テ允准セラレサル事ヲ七月十三日批朱セラレタリ、然リト雖トモ官其減税ニ係ルヲ嫌フニアラス、又視テ妥当ナラサル者トスルニアラスト、因ツテ同盟連署更ニ之ヲ申請スルニ如カス、之ヲ以テ其文案ヲ起稿セリト、乃チ同氏ハ前申ノ批朱ヲ展読シテ各位ニ告テ次ニ再申文案ヲ上読シ以テ各位ニ意見ヲ問フ、衆皆異論ナキヲ答ヘテ本案ノ如ク決定シ、乃チ第一国立銀行担当シテ其清本ヲ作リ、輪移シテ記名盖印ヲ清整シ、以テ上申スヘキ事ヲ約ス、但第十五国立銀行ハ実際関係ナキヲ以テ名印セサルヲ乞フ、然レトモ異議アルニアラサルナリ、其両文ヲ左ニ掲載ス
　　○銀行当坐預金ノ儀ニ付伺（前申文）
銀行当座預金ノ儀ハ定期預金トハ其質大ニ異リ、相預ケ候当日ニテモ預ケ主ニ於テ随意ニ小切手ヲ以テ引出シ候品ニテ、縦令ハ午前ニ相預ケ午後ニ至リ引出シ、又翌日ニ至リ相預ケ得候事ニ有之、預ケ人ノ為メニハ至極ノ便法ニ有之候得共、銀行ニ取リテハ使用シ得難キ金額ヲ相預ケ候ト同様ノ品ニ候処、二類ノ印紙貼用候様ニテハ、銀行条例ノ御本旨ニ従順シ該業ヲ開設候為メ幾多ノ損耗ヲ醸シ候ハ必然ニ付、已ムヲ得ス該業ノ伸張ヲ望マサル様成行可申、特ニ右預ケ人ヨリ振出シ候小切手ニ印紙貼用候上ハ、二重ノ印税ニモ相当リ候儀ニ有之候間、特別ノ御詮議ヲ以テ国立銀行ニ限リ当坐預リ金通帳ハ金額ノ多寡ニ拘ハラス預ケ金ノ都度毎ニ壱銭ノ印紙ヲ貼用候様仕度、此段御許可被下度奉願候也
　　明治十年六月四日　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　大蔵卿　大隈重信殿
伺之趣規則ニ抵触シ難聞届候事
　　明治十年七月十三日　　　　　　大蔵卿　大隈重信印

　　○銀行当座預金之儀ニ付伺（再申文稿）
銀行当座預リ金ノ儀ハ各商取引之際ニ於テ現貨ノ受授ヲ要セス巨額ノ売買モ一瞬時ニ完結スルノ便道ニシテ、今日商務急閙ノ時ニ当リ実ニ欠クへカラザルノ要務ニ有之、且銀行営業上ニ付テハ別紙第一国立銀
 - 第5巻 p.442 -ページ画像 
行ヨリ申請仕候通ノ次第ニ候処、已ニ同行ヘ御聞届難相成旨御指令相成候儀ニ候ヲ、再応奉願候モ恐悚之至リニ候得共、前陳ノ如ク此預金ノ如キハ定期預金トハ大ニ相異リ、其商法上ニ於テ至要ナル事ハ申ス迄モ無之、商務振興ノ基トモ可相成程ノ儀ニ付、其辺厚ク御聴察被成下、銀行ニ限リ右通帳印税ハ金額ノ多寡ニ拘ラス預金ノ都度壱銭印紙貼用候様御低減被成下度、此段奉願候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　各国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井銀行

銀行集会理財新報　第九号・第一二丁〔明治一二年一月〕
　　○追録
一昨年○明治十年九月廿七日同盟十行聯名ニテ大蔵省ニ上申シタル「銀行当坐預リ金印税之儀ニ付伺書」本年十二月十八日指令アルニ因テ、同廿三日第一国立銀行ヨリ同盟一同ニ通達セリ、指令文ニ云「伺之趣使用不致明文無之上ハ成規ニ触レ難聞届候事」大蔵卿名印ヲ具ス

第一国立銀行半季実際考課状
　○第九回・第四頁〔明治一〇年一月一三日〕
一前会ニ於テ報告シタル当座預金通帳ニ係ル貼用印紙ノ稟請ハ、印税規則ニ抵触スルヲ以テ允准セラレカタキ旨七月十三日指令アリ、然レトモ実際已ミ難キ情態アルニ因リ、更ニ其性質ヲ詳述シ、各銀行ノ（択善会）同盟連署ヲ以テ九月十四日大蔵省ニ再稟セリ

　○第一一回・第一一頁〔明治一一年一月一九日〕
一昨年九月廿七日同盟銀行聯名シテ大蔵省ニ上申セシ当座預リ金ノ印税ハ、頗ル商法上ニ関係スルニ因リ該通帳ノ印税ハ金額ノ多寡ニ拘ハラス毎ニ預ケ金ヲ為スニ於テ壱銭印紙ヲ貼用スヘキ事ヲ允准セラレンヲ乞ヒ、爾後周年余ヲ経テ玆ニ十二月十八日成規ニ触レテ聴用シ難キ旨ヲ指令セラレタリ