デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治11年10月7日（1878年）

是ヨリ先、安田善次郎同盟各行間ニ振出手形等ヲ流用スベキヲ談論ス。栄一未ダソノ期ニ非ザル旨ヲ述ブ。而シテ時勢漸クソノ流用ヲ促スニ至リタルヲ以テ、栄一当座預リ金小切手裏書式様ノ議案書ヲ発シ、衆議シテ之ヲ決定セントス。是日栄一再度議案ヲ発シ衆議ヲ求ム。衆議一決セルヲ以テ各行連署シテ十月九日上申シタル処、十一月二十七日允准セラレタリ。

銀行集会　理財新報
　○第二号・第一―二丁〔明治一一年六月一一日〕
　　　　○銀行集会第十一回録事
○中略
一　右演述畢テ復タ其旧規ノ便否得失ヲ弁説シ、及ビ旧為替方両換店等ノ旧慣習ヲ談論ス、安田善次郎、渋沢ニ謂テ曰ク、小子数回前ニ於テ各銀行ノ振出シ手形ヲ盛ンニ行フベキノ議案ヲ発シ衆ノ弁難スル所ト為リシ、而シテ今談論スル所ニ由テ更ニ前案ノ要用ナルコトヲ覚ヘ其流用ヲ盛ンナラシメンコトヲ欲ス、之ヲ如何シテ可ナランヤ、答テ曰、畢竟一般信認ノ生ズル処ニ従ハザルヲ得ス、思フニ今日如シ通貨現品タラバ振出シ切手ノ流行スルヤ必セリ、而シテ其実ハ猶之ヲ好ムニアラズシテ現貨ノ不便ヲ厭フノ窮ニ出ヅルト謂ハザルヲ得ズ、然ルニ太政官本年第八十七号御布告号ニ依レバ昨年西討鴻費ノ為メ損札交換準備ノ紙幣ヲ使用セラレタルニ因リ、現今流用ノ半円以下紙幣二千七百万円ハ之ヲ本年ヨリ向キ十五年間ニ銀銅貨ト交換セラルヽヲ以テ、自今数年ノ後ニ迄レバ振出シ手形ノ盛ンニ行ハルヽヤ期シテ待ツヘシ
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且此時ニ至レバ世間一般其便利ヲ好ミ、並ニ現貨ノ不便ヲ厭テ以テ之ヲ信認流用スルヲ得ベシ、此他術計アルヲ知ラズ

銀行集会　理財新報
　○第四号・第三―四丁〔明治一一年八月一二日〕
　　　　○銀行集会第十三回録事
○中略
一　安田善次郎ハ前条渋沢栄一為替広通法ノ議ヲ演ルニ由テ更ニ自家ノ旧説ヲ再述シ、此同盟銀行ハ相共ニ振出シ手形及ヒ当座預リ金小切手等ヲ流用スベキヲ談論セリ、渋沢栄一之ニ答テ云、此論案ニ於テハ嘗テ意見ヲ陳述スル所アリ、其流用広通ノ如キハ専ハラ望ムベキモノト雖トモ其実際ニ行ハルヽニ至テハ到底信憑ノ有無ニ任セ敢テ約束ヲ以テ之ヲ施行シ難キモノナリ、然而シテ振出シ手形ニ於テハ各信憑ノ在ル所ニ従テ務メテ之ヲ拒絶セザランコトヲ要スルトセバ聊其端緒ヲ開クニ足ルベキナリ、各位之ヲ要セバ此同盟銀行ハ各其式様印鑑ヲ作リ、後会互ニ交付セバ如何、且当座預リ金小切手ノ如キハ其振出人ヨリ銀行ニ対スルノ受取手形ナレバ、若シ或ハ此振出人ニ於テ其切手ニ記入セシ金額ヲ銀行ニ預クルコトナクシテ一時ノ作為ヲ以テ之ヲ振出ス等ノ恐レナキ能ハズ、故ニ米国ニハ此小切手ニ「アクセプト」（小切手ヲ以テ振出シタル金額ヲ其銀行ニ於テ必ズ仕払フベキコトヲ保認スルノ義）ノ法アリ、此法ニ依レバ其小切手ハ一タビ銀行ノ裏書ヲ経ルニ於テ該銀行ノ通常振出シ手形ト同種ニ属シ、全ク其性質ヲ変換スル者ナリ、而シテ此法ハ厳然トシテ法律ノ部分ニ備在シテ其受授ノ順叙裏書ノ例文等ヲ詳カニセザレバ今日遽カニ施行スルヲ得ザル者ナリ、因テ此一案ハ尚他日更ニ議スル所アルヲ要スト衆皆此答議ニ協同シ其振出シ小切手式様印鑑等交付ノコトヲ領諾セリ

銀行集会　理財新報
　○第五号・第二―一七丁〔明治一一年九月九日〕
　　　　○銀行集会第十四回録事
○上略
一　又同氏○渋沢栄一ハ前会ノ議ニ基キ、各銀行当座預リ金小切手ノ裏書法ノ議案書ヲ発シテ之ヲ説明シ、而シテ当今其流用法ヲ促スノ形勢ナルヲ以テ本案其式様ヲ試設シ、衆議シテ之ヲ決定センコトヲ要ス（本案下ニ載ス）
此ニ於テ動議ヲ為ス者二名アリ、又専ハラ本案ヲ修整スルノ説ヲ主張スル者三名、各討議スル処左ノ如シ
（甲）岩橋徹輔、動議、本案ノ方法ニ依レハ銀行ハ其仕払ト振込トノ繁沓醸スヲ免カレズ、要スルニ振出手形ノ流用ヲ盛ンナラシメバ以テ可ナラントス、或ハ又同盟互ニ其預リ金ノ額ヲ時々報告スル者ハ如何ト云
（乙）原田銀造、動議、本案ノ如ク開弁スルト雖トモ、自後東京ニ於テ此同盟外ニ銀行ノ設ケアルトキハ此方案ノ之ニ関渉セサルヲ以テ、仮令此書式ノ設ケアツテ同盟之ニ従事スルト雖トモ、到底完全ナル望ミヲ遂グベカラザルモノナリ
 - 第5巻 p.554 -ページ画像 
（丙）辻金五郎、修整説、本案ノ起ルハ原其小切手ノ流用ヲ僅カ一時間ト雖トモ滞碍ナク交収スルヲ要スレバ、敢テ其裏書ノ式法ヲ論スル迄モナク、此同盟相共ニ口頭ノ契約ヲ立テ、而シテ只各照査ノ為メニ保認ノ如キ字ヲ印記セバ、聊カ交収ニ於テ阻碍ナクシテ畢竟之ヲシテ一ノ習慣法ニ属セシムルヲ得へシト云
（丁）種田誠一、同上、本案ノ式様ハ、到底各管経ノ銀行ヨリ該振出人ノ名宛先ニ対スベキ意義ノ文字ヲ以テスルヲ要スト云
（戊）安田善次郎、同上、自カラ別ニ書式ヲ作リ、一銭印紙ヲ貼用シテ之ヲ弁行スヘキヲ要シ、而シテ（丙）議ノ如キハ其実暗符ニ過ギザルヲ以テ之ヲ広通スルニ不便ト為シ、而シテ自家ノ旨義ハ振出シ人ヨリ他ニ付スルニ当リ、若シ之ヲ拒ム者アレバ其拒ム可カラザル理由ヲ明カニスルヲ以テ足レリトス、然レトモ此書式ヲ不可トセバ或ハ其暗符ヲ記スモ妨ゲナシト云
渋沢栄一ハ右ノ動議ニ対シ各弁解アリ、即チ（甲）義ニ対シテ云、若シ其動議ナレバ当座預リ金ハ変シテ単一ノ別預リニ属シ、小切手流用法ヲ要セザルニ帰ス、夫レ当座預リナルモノハ商家ニ於テ只其現金動用ノ煩ヲ省クノミナラズ自カラ銀行ヲ金庫ト看傚シ、彼ノ振出シ手形ノ定額アルガ如クナラズ適宜ノ金額ヲ旦暮随便ニ出納シ得テ而シテ傍ハラ多少ノ利子ヲ生ズル者ナレバ其便利ノ有無ハ固ヨリ論ヲ俟タズ、而シテ又其互ニ預リ金額ヲ報告スルガ如キハ実ニ繁雑ノ甚シキ者ニシテ到底行ヒ得ベキ所ニアラザル可シト、次ニ（乙）議ニ対シテ云、其動議ノ如キハ初ヨリ事ノ完全ヲ欲スル者ニシテ、如シ之ヲ得ザレバ止ムニ如カスト云ニ似タリ、然レトモ元来本案ノ旨ハ一朝ニ成功シ難キヲ以テ、縦ヒ其初メハ同盟中十分ニ行ハレザルモ猶之ヲ厭ハズシテ互ニ信ズル所ヨリ漸次ニ其流用ヲ通ジ、竟ニ到処銀行トシテ之ヲ交収セザルハナク、尚一層憑信ヲ収ムルニ至レバ世間到処之ヲ拒ムナキニ至ルヲ期スベシ、故ニ当初寥々タル者ハ本案ノ以テ安ンズル所ニシテ尚止ムニ勝レリトナス者ナリ
次ニ其修整説ニ就キ本案ノ調理ヲ議シテ曰、今夫小子ノ説ハ（即本案）樸実ナル文字ヲ用ヒ、安田氏ハ較ヤ簡略ノ書式ニ従ヒ、辻氏ニ至テハ殊ニ一層簡略ヲ取テ僅カニ保認ノ二字ヲ記スヲ要ス、所謂異声ニシテ同調ナル者ナリ、然而シテ本案ノ旨ハ原ト当座預リ小切手ノ流通ヲ弘メント欲スルニ在テ既ニ之ヲ欲スルトセバ予メ其奸弊ノ未ダ萌生セザル前ニ於テ少シク予防ヲ設ケザル可ラズ、既ニ予防ヲ設ケント欲セバ又其方法ヲ設ケザル可ラズ、唯タ流用広通ニ鋭意ナルノミニシテ其変通ノ法ヲ設ケザル時ハ一朝事ニ遇フニ及ンデ遽カニ両式ヲ捜索シ、甲是乙非紛々定マラズシテ初メテ其法律ノ設ケアランコトヲ希望シ、捧漏注焦ノ急アルヲ免カレザルベシ、故ニ今日虚大ノ法ヲ求メズシテ現実切要ノ小款ヲ求ムルニ在リ、因テ要スルニ辻氏ノ説極メテ適実ナルニ似タリ、諸君此情由ヲ詳悉セバ宜シク今日ヲ以テ本案ノ採否ヲ決定シ、而シテ尚其順次ヲ後会ニ於テ裁議センコトヲ要スト
此ニ於テ復タ動議ヲ主張スル者ナク衆皆本案修整説ニ同ジ、而シテ尚各熟案シ後会ヲ待テ再議スベキコトニ決定セリ
○中略
 - 第5巻 p.555 -ページ画像 
一　前会ニ於テ同盟各銀行振出シ手形ヲ流通スルノ議案ヲ決定スルニ由テ本会其式様票ヲ携帯シテ之ヲ交収スル者凡ソ十一行、其余ハ当日携帯セザルヲ以テ他日各交収スベキコトニ契約セリ
○中略
　　　　○渋沢栄一議案当座小切手ヲ各銀行相互ニ授受スルノ議
当座預金小切手ヲ以テ振出シ手形一様ノ取扱ヲ為サント欲スルハ為シ得難キコトナリ、何ントナレバ受取人ニ於テ其振出人ハ名宛先ノ銀行ニ当座預金ノアルコトヲ信認シ難キヲ以テナリ、故ニ小切手ヲ受取ルニハ名宛先銀行ノ憑信有無ニ拘ハラズシテ振出人ノ憑信有無ニヨリテ其ノ拒否ヲ決スヘキモノトス、而シテ此小切手ハ其振出人ノ信用シテ以テ之ヲ受取ルモ尚ホ二十四時間内ニ於テ其取附ケヲ為スベキハ英米一般ノ通法ニシテ決シテ振出シ手形ノ如ク預リタル銀行ノ憑信ニヨリテ各人相互ニ授受スルモノニ非ズ、此理由アルニヨリ英米諸洲ニテハ小切手ヲ振出ストキハ振出人之ヲ其当座預ケ金アル銀行ニ持参シテ小切手面ニ「セルテフワイド」即チ保認ヲ受ケテ後之ヲ発付スルモノ多シト聞ク、此保認アル者ハ「セルテフワイド、チヱツキ」即チ保証手形ト称シ、我ガ振出シ手形ト同様ノ性質ニ変シテ其銀行ニ於テ仕払ノ責ヲ負担スルナリ、故ニ今此当座小切手ノ受授ヲ便ニセント欲スルニハ宜シク先ツ其振出人ヲシテ前ニ云フ処ノ「セルテフワイド」ノ法ヲ採用セシムルヲ捷径トス、而シテ其方法ノ慣習ト為ルハ素ヨリ一朝一夕ニシテ之ヲ期スベカラズ、要スルニ世人ヲ誘導シ漸次ニ此範囲内ニ入ラシムベシ、而シテ一タビ振出人ニ於テ此方法ヲ便ナリトシ小切手面ニ保認ヲ乞フ者アルニ至テハ未ダ我邦ニ英米各邦ノ如キ簡単ナル文字ヲ記入スルノ法アツテ之ヲ成文律上ニ組織シ在ルヲ見ズ、因テ該裏書ハ左ノ式様ノ如ク之ヲ立設スル者ハ如何
　　表書ノ金……円ハ使用不致正ニ当銀行ニ預リ置候間何時ニテモ此手形引替ニ御渡シ可申候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　第何国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　頭取　　誰某
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　支配人　誰某
右裏書ノ主旨ヲ以テ妥当ナルモノトセバ各銀行連署シテ其文例ヲ一応大蔵省ニ稟請スヘキカ、謹テ各位ノ高議ヲ乞フ
　　○右同案安田善次郎所選ノ式様左ノ如シ
　　　　表書ノ金額ハ当行ニ預金者之ニ付此券持参人ヘ無相違引換渡スベシ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　預リ金掛リ小印

銀行集会　理財新報
　○第六号・第一―四丁〔明治一一年一〇月七日〕
　　　　○銀行集会第十五回録事
○中略
一渋沢栄一ハ前会ノ決議ニ由テ当座預リ金小切手裏書式様ノ議案ヲ発シ、衆議ヲ問フ、刻下同意ヲ表スル者四名、辻金五郎ハ更ニ翻案ヲ以テ質問ヲ為シ、渋沢ノ弁解ヲ経テ全ク本案ノ旨ニ協同セリ、衆亦異議
 - 第5巻 p.556 -ページ画像 
ナクシテ本案ノ如ク決定ス、而シテ之ヲ大蔵省ニ稟報スベキヲ以テ其案文ハ尚第一国立銀行ヨリ回議ヲ発シ、決議ヲ経テ上申スベキコトニ決定セリ（本案甲号下ニ載ス）
○中略
　（甲号）当座預リ金小切手裏書式様ノ議案
前会ニ於テ当行ヨリ当座預リ金小切手裏書式様ノ議ヲ発シ、而シテ安田辻両君ノ見解ヲモ領聴セリ、因テ之ヲ再考スルニ辻君見解ノ如ク保認ノ字ヲ書シテ各其銀行担任ノ証券ト為スハ甚ダ簡潔便易ナル者ニ似タリ、然レトモ翻テ其小切手ヲ取携スル者ニ就テ之ヲ推考スルトキハ或ハ其性質ノ如何ヲ詳悉セズシテ妄信妄疑ノ誤ナキヲ保ツ可カラズ、或ハ又奸計者有テ保認ノ印符ヲ偽造スルノ恐レ無キヲ保ツ可カラズ、安田君ノ書式ニ至テハ預リ金云々引換ノ文字ヲ記載シ、将来ノ契約ニ渉ルノ文意有ルヲ以テ到底印税法ニ抵触セザルヲ得ザル者ナリ、弊行ノ書式ハ字句長衍ニ過ギタリ、今其得失ヲ斟酌シ繁簡ヲ折中シ、更ニ左ノ如ク決定シ、之ヲ施行シテ稍其実効アルニ至テ其文字ヲ省去シ、只其印章ヲ以テ通用ヲ為ス者ハ如何
　表書ノ金額ハ何時ニテモ当銀行ニ於テ仕払可申候也

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第何国立銀行
保認或ハ保信ノ字
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　支配人　姓名　印

右ノ式様ヲ以テ各位之ヲ決定セバ、嗣テ其稟牒ヲ作リ、同盟連署シテ大蔵省ニ上申スベシ、且其稟牒草案ハ後会ヲ待タズ之ヲ輪札ニ載シテ回議スルヲ要ス

　○第七号・第一五丁〔明治一一年一一月三〇日〕
　　　　○追録
一　第十五回会同ニ於テ決議セシ「当座預リ金裏書式之儀上申」ハ、爾後輪札ノ議ヲ経テ裏書ニ用ユベキ印章ノ文字ヲ保信ト決定シ、十月九日連署シテ大蔵省ニ上申セリ

諸達願並指令綴込　第一号・自明治一一―至三三年
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　当座預リ金裏書式之儀上申
当座預リ金小切手流用之儀ハ商法上最大ノ便利ナル者ニ候処、本邦ニ於テハ未タ此事ニ至ラス、然ル所以ノ者ハ本邦銀行ノ業相開ケ候已来星霜未タ深カラサルヲ以テ、縦令銀行上ハ互ニ憑信スヘキ場合有之候トモ各主顧ノ事情ヲ審カニセサルニ由リ遂ニ各銀行共ニ他行ニ宛ルノ小切手ヲ領収スルニ於テ懸念不少場合モ有之候、英米等ニ於テ其主顧小切手ヲ発スルニ際シ、其確実ヲ表明スヘキ為メ「セルテフイト」即チ裏書ナル者ノ方法有之、其文字モ至テ簡単ニテ十分憑信ノ法相立チ候趣ニ付、今此ニ仿ヒ裏書ノ例相設ケ申度ト同盟協議仕候処、所謂殊俗異風ヲ以テ只其「セルテフイト」之訳字相用候迄ニテハ何トナク自他認視ノ確切ナラサル様相覚ヘ候間、持来慣習之境《（将カ）》ニ趣キ候節ハ更ニ簡便ノ字符相用候積ヲ以テ、先ツ目下別帋ノ通式様御設ケ、此同盟ヨリ其端ヲ開キ施行仕、漸次流用ノ区域ヲ広メ小切手ノ便利十分可相開
 - 第5巻 p.557 -ページ画像 
積ニ決議仕候間、此段御承認被下度依テ書式相添此段上申仕候也
　　明治十一年十月九日　　　　　　　第三十二国立銀行支店印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第十八国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代理第一国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第六国立銀行支店印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第十国立銀行支店印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第四国立銀行支店印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第十三国立銀行支店印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第七十四国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第百国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第三十三国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第二十七国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第三十国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第二十国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第三国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第五国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第二国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第四十四国立銀行印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行印

　　　大蔵卿　伊藤博文殿
（朱筆）
　上申之趣聞置候事
　　明治十一年十一月廿七日
　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　小切手裏書式様
　　表書之金額ハ何時ニテモ当銀行ニ於テ
　　仕払可申候也
　　　　　　　　　　　　　　　第何国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（役印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　支配人　姓名(印)

銀行集会　理財新報　第八号・第一―二丁〔明治一一年一二月一六日〕
　　　　○銀行集会第十七回録事
○中略
第二次、十月九日聯名上申シタル所ノ「当座預リ金裡書式ノ儀ニ付上申」十一月廿七日批裁アルヲ以テ渋沢栄一ヨリ之ヲ報道ス、批裁ノ文ニ曰ク「上申ノ趣聞置候事」（大蔵卿名印）該上申文ハ既ニ理財新報第七号ニ掲載セリ、復タ贅セズ

第一国立銀行半季実際考課状　第十一回第一〇―一一頁〔明治一二年一月一九日〕
一当座預リ金小切手ハ商法上ニ流用シテ頗ル便利ヲ与フヘキ者ナルニ此法未タ本邦ニ十分行ハレサル所以ハ銀行開設以来星霜深カラスシ
 - 第5巻 p.558 -ページ画像 
テ銀行相共ニ主顧ノ情実ヲ詳ニセサル者ト謂ハサルヲ得ス、是ヲ以ヲ《（テ）》同盟銀行ト議シテ小切手流通スル為メニ該裏書及ヒ印章ノ式様等ヲ設ケ、十月九日同盟銀行聯名シテ大蔵卿閣下ニ上申シ、十一月廿七日允聴ノ旨ヲ指令セラレタリ