デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治11年12月16日（1878年）

栄一各行ノ捐費ニ依リ田口卯吉ヲシテ理財新報並ニ銀行雑誌ヲ合併シ一雑誌ヲ創刊セシメンコトヲ諮ル。衆異議ナク、ヨツテ第一国立銀行外二行委員トナリテ此ノ事務ヲ処理スルニ決ス。明治十二年一月二十九日「東京経済雑誌」創刊サレ、第十九回以降ノ録事ハ同誌ニ掲載サル。

銀行集会　理財新報　第九号・第二―五丁〔明治一二年一月〕
　　　　○択善会第十八会録事
○中略
一　第三次ハ渋沢栄一理財新報ノ体裁ヲ変更スルノ議ノ為メニ田口卯吉ナル者ヲ紹介シテ臨場セシメ、而シテ衆ニ告テ曰ク、小子近ゴロ理財新報ノ体裁ヲ再変シテ較々其規模ヲ大ニシ、以テ効用ヲ弘メント欲スルノ考案アルニ際シ、田口氏アツテ我ガ理財新報ノ材料及大蔵省刊行銀行雑誌ノ材料ヲ一併シテ、又自カラ訳述スル経済ノ論説ヲ加ヘ、一種ノ雑報ヲ就造シ、其費用ハ同氏ノ力及バザルニ因テ我ガ同盟ヨリ二ケ年間毎月百円ヲ捐資シ、及ビ毎刊五百部ヲ採売スル立約ヲ設ケ、毎刊凡ソ二千部ノ発兌ヲ得ルニ至レバ毎時詳明ナル計算表ヲ示シテ純益ノ半額ヲ会同ノ費途ニ供スル等ノ節目ヲ要請セリ、小子此挙ヲ喜ビ故ニ諸君ニ詢ルト、言畢テ田口氏ヲ別室ニ屏ケ、再ビ議シテ曰ク、田口卯吉ノ要求ハ稍小子ノ考案ニ適スルニ因テ爰ニ諸君ト協議シテ以テ其変更ヲ妥為セント欲シ、諸君考案ノ為メニ理財新報発兌以来会計ノ得失ト今日田口氏開陳スル予算トヲ呈ス、理財新報ノ会計ハ内外両算アリ、内算ハ則第一銀行・三井銀行・第十五銀行ヨリ毎月支出スル定額六十円出納ノ計算ナリ、外算ハ則第一銀行ト日報社ト約束シテ発兌スル所ノ理財新報発售ノ計算ナリト此計算ノ大要ヲ説明セリ、諸位之ヲ領シテ各意見ヲ陳ベ、議論紛如トシテ或ハ捐資ノ項ヲ前議ノ積金法ト同一ニ論ズル者アリ、或ハ捐資ノ多寡ヲ決定スルハ積金ノ法ヨリ議セザルベカラズト云者アリ、或ハ又本項ノ費ハ積金ト別種ナルヲ以テ宜シク本項費用ノ一途ヲ議定スベシト云者アリ、渋沢衆説ヲ酌量シテ更ニ議ヲ発シテ曰ク、要スルニ積金ノ一項ハ別議ニ付シ、本費ノ一途ヲ妥為シ、則捐資百円ノ如キハ各行毎月三円ヲ支行シテ之ヲ六十三円ト為シ、其不足額三十七円ハ弊行・三井銀行・第十五銀行相共ニ支弁シ、約束年限ノ長短ハ其長キヲ欲セザルニ因テ之ヲ一年ニ定メ、而シテ今夕委員ヲ公挙シ其一切ノ事務ヲ調理セシムルヲ要ス、前議積金及ビ規矩ヲ改正スルノ挙ハ原ト小子ガ考案ニ出ヅルニ因テ、他日議案ヲ設ケ以テ高論ヲ仰ガント欲ス、而シテ若シ積金ノ方法能ク其適実ナル者ニ出デ、本議編輯ノ費用ヲモ支出スルノ計算ヲ得バ更ニ其計算ニ従ヒ、本議支出ノ方法ラ廃止スベシト、衆皆此議ニ同意シ、但ダ其委員ハ敢テ公挙ヲ須ヒズ、旧ニ依リ第一銀行・三井銀行・第十五銀行ニ委任センコトヲ要請シ、三行之ヲ領諾ス、但ダ三井銀行欠席スルニ因テ
 - 第5巻 p.602 -ページ画像 
渋沢代ツテ之ヲ諾ス、又問フ、約束期限ハ一年ト定ムベキカ、衆皆可ト曰フ、渋沢衆ニ告テ曰ク、議全ク定マリ、三行委員ト為ル、要スルニ此委員ハ田口卯吉ト契約ヲ修メ、日報社ト理財新報発兌ノ約束ヲ解ク等ノ事件ヲ整理スベシト、衆皆領諾ス
一　第五次ハ渋沢栄一理財新報ヲ変更スルノ議前節ノ如ク決定スルニ因テ、従前三行（第十五・第一・三井）ヨリ支出スル定額金ノ内失費二百円余ハ只三行ノ損失ト為シ、一般同盟ニ於テ之ヲ負担スルヲ須ヒザルコトヲ宣陳ス、安田善次郎答議シテ云、該費ノ如キハ当初原善三郎先ヅ一年ヲ期シテ盈絀ヲ試ミ、如シ損失有ルトキハ同盟ノ公費トナスベキコトヲ要求セリ、而シテ本会同氏会セザレバ尚後会ヲ俟テ協議スルヲ請フト、衆亦タ之ニ同意シ竟ニ本議ヲ舎ク

東京経済雑誌
　○第一号〔明治一二年一月二九日〕
　　　　○銀行集会第十九回録事
○中略
一　初次渋沢栄一ハ諸位ニ報道シテ云、前会田口卯吉ト約束ノ為メニ委員ヲ撰ヒ、敝行等三行之ニ任シ、再ヒ敝行委員中ノ委托ニ因テ該約束案ヲ擬設シ、田口卯吉ニ照会ヲ経テ方今委員ト之ヲ協議ス、不日契約ヲ得ハ尚各位ニ報道スヘシト
○中略
一　第四次ハ同氏前会ノ決議ニ依テ設クル所ノ会同章程ノ改正案ヲ議スル為メニ諸位ニ向ヒ報告シテ云○中略言畢テ原案ノ要旨ヲ宣読セリ、蓋章程改正ノ旨ハ会同積金ノ法ヲ設ケ、並ニ之ヲ需用スルノ途ヲ定メ及ヒ談論議事演説等ヲ区別スルノ数項ト為ス、而シテ今積金ノ項ニ於テ議論紛起シ、或ハ本案ノ積金ニ三等ノ区別ヲ分ツハ尚之ヲ数等ニ細分スルニ如カスト云者アリ、或ハ等級ヲ分ツヲ須ヒスシテ各行平分ニ月積スルヲ論スル者アリ、或ハ分等月積スルヲ須ヒス、各行適宜ニ積額ヲ設ケ、一時公債証書ヲ収買シ其利息ヲ以テ支出ヲ弁スヘシト云者アリ、或ハ各資本額ニ応シテ月積スヘシト云者アリ、甲駁シ乙弁シ、紛議既ニ極ルニ至テ、衆論稍還タ修整説ニ帰シ、但タ田口卯吉ニ捐資スルノ一項ハ月積ト別途ニ出サスシテ月積ノ一法ヲ以テ一切ノ費用ヲ支出センコトヲ要シ、更ニ原案ヲ改正シ、輪札周議ヲ行ヒ以テ決定センコトヲ乞ヘリ
○中略
一　第五次ハ第四次ノ議ニ於テ積金ヲ設ケ、以テ一切ノ費用ヲ支出スヘキニ議定スルニ依テ、未タ其等級金額等ヲ撰定スルニ至ラスト雖トモ、田口卯吉ニ捐資スルノ項ハ、本月ヨリ之ヲ共捐スヘキコトニ決定セリ

　○第四号〔明治一二年四月二九日〕
　　　　○択善会第二十二回録事
○中略
第二次渋沢栄一君ハ経済雑誌社田口卯吉君ヨリ開刊一月ヨリ三月マデノ損益計算表ヲ呈報スルニ因リ、之ヲ諸位ニ展示シ且其大要ヲ演説ス
 - 第5巻 p.603 -ページ画像 
ルニ其損益ノ如キハ三ケ月ニシテ二百円有余ノ純益ヲ得タリ、而シテ此計算ハ未タ章程案ヲ決セサル前ニ在ルヲ以テ、其捐助金ハ理財新報資金ノ残余ヲ流用シ、及ヒ第一銀行ヨリ仮ニ之ヲ貸与シテ以テ其計算ヲ為シ得タルコトヲ報道ス、畢テ田口卯吉君ハ雑誌開刊以来発售ノ事情及ヒ将来ノ目途等ヲ諸位ニ報道シ、並ニ謝詞ヲ陳述セリ

　○第一七号〔明治一二年一二月二五日〕
　　　　○択善会第廿八回録事
○中略
一　本会経済雑誌社ト契約ノ期幾ント迫リ、且其契約ノ事件ハ独択善会ノ便宜ノミナラス全国理財ノ途ニ裨益スルヲ以テ同社ノ請ヲ允シ、更ニ一ケ年ノ継約ヲ修メンコトヲ議ス、衆皆嘗テ其効用アルヲ信スルヲ以テ異議ナク同意セリ、因テ前規ニ従ヒ幹事銀行ニ在テ其継約ヲ修ムヘキコトニ決定セリ
○下略

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