デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治12年12月15日（1879年）

是ヨリ先、栄一栃木第四十一銀行貸付金ノ抵当タル公債証書ノ所有者身代限リヲ受ケ、同行其貸金先取ノ権利ヲ失ヒタル事件ヲ報道シ、之ニ付キ同盟連署上申ノコトヲ議ス。衆異議ナキヲ以テ是日栄一右ノ建白文案ヲ展読ス。委員ヲ選ビ修整ノ後上申ス。

東京経済雑誌
　○第一五号・第五一八頁〔明治一二年一一月二九日〕
　　　　○択善会第廿七回録事
○中略
第七次、同氏○渋沢栄一ハ頃日本会ニ在テ聞ク所ノ橡木第四十一銀行ニ於テ貸金ノ抵当トシタル公債証書ノ所有主ナル者、同地裁判所ニ於テ身代限リノ処分ヲ受ケ、而シテ其掲示日限中同銀行ヨリ該貸金ノアルヲ訴出セサルニ由リ其先取ノ権利ヲ失ヒタルコトハ、同業上ニ関シ重大ノ事件ナルヲ以テ能ク其始末ヲ審カニシ、果シテ該法律ノ我カ営業上
 - 第5巻 p.652 -ページ画像 
ニ害アル者トセハ同盟連署シテ其法律ノ改正アランコトヲ建白スルモノハ如何ト議ス、諸位異議ナク之レニ同シ、而シテ其調査ハ第一銀行ニ於テ担当スヘキコトニ決定セリ

　○第一七号・第五八六―五八八頁〔明治一二年一二月二五日〕
　　　　○択善会第廿八回録事
十二月十五日、択善会月次会ト四季宴会トヲ兼ネテ枕橋八百松ノ楼上ニ開会ス、会員ハ幹事第一銀行渋沢栄一・西園寺公成、同第十五銀行肥田昭作・三輪信次郎、同三井銀行三野村利助・斎藤銀蔵、第二同下田善次郎、第三同安田善次郎・安田忠兵衛、第四同原田銀造・辻金五郎、第五同和田中太、加藤兵吉、第六同平尾東三・斎藤長作、第十同市川好三、小野金六、第十二同寺西成器・北川亥之作、第十三同高柳岩三郎・蘆田順三郎、第十四同加藤典経、第十八同代理第一銀行三井八郎次郎・大沢正道、第二十同杉山勧・川杉義方、第二十二同堀内正善、第二十三同代理第一銀行向井小右衛門・小川貞之介、第二十七同渡辺治右衛門・安藤利助、第三十同鍋島平五郎・下村忠清、第三十二同平池玄四郎・北川清七、第三十三回川村伝衛・岩橋静彦、第四十四同清田正喬・市原政樹、第六十同関岡孝治・土屋直温、第九十五同菅沼菫雄、第百同原六郎・宮部久、第百十三串田孫三郎・鈴木重恒、第百十八同塚本正教・芝崎守三、第百十九同村瀬十駕、経済雑誌社主田口卯吉等合セテ五十人ト為ス、（第七国立銀行ハ欠席ヲ告ク）午後三時会員畢ク集リ、四時ニ及テ議席ヲ開キ、会頭渋沢栄一君ハ報告及議案等ヲ処理スルコト左ノ如シ
○中略
一　櫔木第四十一銀行貸付金ノ抵当タル公債証書ノ所有主身代限リヲ受ケ、同行其貸金先取ノ権利ヲ失ヒタル事件ヲ以テ議事ヲ発ス、蓋本議ハ前会既ニ再議ヲ以テ本会ヨリ当路ニ建白スヘキコトニ決定シ第一国立銀行ハ尚其始末ヲ探明スルカ為メニ、前日須藤時一郎氏ニ托スルニ親シク櫔木ニ之キ第四十一銀行ニ就テ尋問スルヲ以テシ、先是第三国立銀行モ亦本会ノ為メニ屡其始末ヲ尋問スル者アリ、頃日須藤氏ノ報告ニ先チ同行ヨリ第三銀行ニ対シ回報アルヲ得テ初テ之ヲ詳悉シ続テ亦須藤氏ノ報告ヲ得ルニ因リ、渋沢君嘗テ協議スル所ニ基キ其建白文案ヲ裁シ、並ニ同氏カ此建白ノ為メニ意見書ヲ筆スルヲ以テ之カ討論ヲ求ムル所ナリ、因テ渋沢君ハ諸位ニ問テ曰ク、本議ノ如キ固ヨリ速了ヲ得スト雖トモ当席略々大意ヲ述ヘ、然ル後其修正ヲ他日ニ期スルヲ要ス、諸君如何ト為スト、諸氏皆其大意ヲ領スルヲ望メリ、乃チ渋沢君ハ其意見書ヲ演説シ、建白文草ヲ展読ス、諸氏皆大要ニ異議ナク但タ修整及ヒ建白ノ順序等ニ於テ論説アルヲ以テ、渋沢君ハ宜シク委員ヲ撰ンテ修整スヘキヲ議ス、衆乃チ幹事三行第一銀行・第十五銀行・三井銀行及ヒ第二十銀行頭取杉山君ヲ以テ委員タランコトヲ乞ヒ遂ニ此ノ如ク決定セリ、因テ該委員ハ速ニ其修整ニ着手シ、其小会議ヲ決シテ後更ニ衆議ニ従フヘキコトニ決定セリ

第一国立銀行半季実際考課状　第十四回　第一一頁〔明治一三年七月一八日〕
一一月十九日択善会同盟連署シテ負債者身代限リニ際シ、其掲示日限
 - 第5巻 p.653 -ページ画像 
ニ若シ債主訴出テサレハ其配当分与ヲ得ヘカラサルハ大ニ債主ノ権利ヲ妨害スルヲ以テ、銀行営業ノ如キハ殊ニ此法律ヲ不便トナスニ因リ、幸ニ当路ニ議シテ其法律ヲ改正セラレンコトヲ大蔵卿閣下ニ建言セリ