デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治19年10月10日（1886年）

敗裂銀行紙幣交換ノ便法ヲ立案シ、日本銀行ニ稟議シ允諾ヲ得タルニ因リ各国立銀行ニ対シ、同一ニ処理スベキコトヲ稟告セル旨ヲ報道ス。

集会録事　従明治十五年第一月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第六十七回定式集会録事　○明治一九年一〇月一〇日
是日開宴ノ前定式集会ヲ開キ、委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ左ノ報告ヲセラレタリ
○中略
又敗裂汚染等ニ係リ通用シ難キ銀行紙幣ヲ以テ通貨ト交換ノ便法ヲ立案シ、日本銀行ニ稟議シ、允諾ヲ得タルニ因リ全国各国立銀行ニ向ヒ同一ニ処理スヘキコトヲ照会セリ

銀行通信録　第一一号・第二三―二六頁〔明治一九年一〇月二〇日〕
○稟告
各国立銀行発行紙幣ノ内、敗裂汚染等ニ係リ通用難相成損傷紙幣交換之義ニ付、当銀行集会所ニ於テ別紙手続書ノ如ク考按相立、日本銀行ヘ稟請致シ候処、右交換承諾之旨回答ヲ得候ニ付、各銀行共同様ノ取扱ニ相成候ハヽ一般ノ便利ト存、本年十月六日附ヲ以テ右手続書相添御照会申上候処、大凡同意ヲ得候ニ付、各銀行ヨリ申出次第御取扱相
 - 第6巻 p.140 -ページ画像 
成度段、更ニ日本銀行ヘ照会致置候ニ付、自今該手続書ノ通御承知相成度此段各国立銀行ヘ稟告致候
　　　　手続書
第一条　各国立銀行発行紙幣ノ内、敗裂汚染等ニ係リ通用難致損傷紙幣アリテ其高百円以上ニ充ツルトキハ、之レヲ日本銀行東京本店ヘ送致スヘキ事
第二条　右送致ノ期限ハ上半季分ハ三月一日ヨリ四月三十日迄、下半季分ハ九月一日ヨリ十月三十一日迄ニ日本銀行ヘ到達スヘキ見込ヲ以テ送出シ可申事
　　但右期限ヲ経過セシ分ハ日本銀行ニ於テハ、次ノ期内ニ受取ルモノトスヘキ事
第三条　日本銀行ヘ送致スヘキ損傷紙幣ノ限高ハ、日本銀行ニ於テ其期内ニ消却スヘキ各国立銀行紙幣高ヲ目的トシ、各其発行紙幣高ニ比準シテ送出シ可申事
　　但右限高ニ超ヘタル損傷紙幣アラハ各国立銀行ハ銀行成規第二十三条ノ手続ヲ以テ大蔵省ヘ上納シテ御引換相願可申事
第四条　右ノ損傷紙幣ヲ送致スル時ニハ其金額種類及番記号等ノ調書ヲ相添可申事
第五条　損傷紙幣ハ都テ其全額ニ充テタルモノニ限リ送致スヘシ、モシ半額又ハ区分判定難致モノハ直ニ大蔵省ヘ交換方出願可申候事
第六条　右ノ損傷紙幣ハ独リ自行ノ発行紙幣ニ限ラス、他行ノ分ヲモ取交テ送致スルモ妨ケナカルヘキ事
　　但其限額ハ自他ノ紙幣ニ拘ハラス第三条ノ通タルヘキ事
第七条　此損傷紙幣ヲ送致スルハ各其本店ヨリ納付スルモ、又ハ在東京銀行ノ代理ヲ以テスルモ其銀行ノ都合ニ任セ可申事
第八条　日本銀行ハ各国立銀行ヨリ損傷紙幣ノ送致ヲ得レハ、其高ニ応シ時々預リ証書ヲ発付シ置可申事
第九条　日本銀行ハ毎年五月・十一月ニ於テ紙幣消却元資金ニ係ル公債証書ノ利足ヲ受取ルトキハ直ニ前ニ預リタル損傷紙幣ト交換シ、凡ソ六月・十二月三十日迄ノ期限ヲ以テ損傷紙幣ノ送致高ニ応シ、第七条ノ預リ証書ト引換ニ同額ノ通貨ヲ各国立銀行ヘ交付スヘキ事
　　但代理店ヲ以テ送致セシ分ハ其代リ金モ代理店ヘ送致スヘシ、尤代リ金交付ニ係ル費用ハ其請求本店ニ於テ負担可致候事