デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治23年2月25日（1890年）

第百銀行支配人池田謙三、不渡手形取扱ノ件ニ付キ求議ス。衆之ニ同意シ、本日欠会ノ銀行ニハ通牒ヲ発スベキコトヲ決議ス。

会議録事　自明治二十二年一月至明治二十三年十二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百一回定式集会録事
二十三年二月二十五日、同盟第百一回定式集会ヲ開キ、来会スル者二十五名ナリ、委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ本月例会ノ延期シタル事理ヲ告ケ　○中略
次ニ第百銀行支配人池田謙三氏ヨリ不渡手形取扱上ニ関シ、我同盟会ニ求議ノ事件ヲ報道シ、衆同意ヲ表シ、本日欠席ノ銀行ニハ之ヲ通牒スヘキコトニ決議セリ
　　　　求議之抄要
　　二月十三日、第百銀行ヨリ交換ノ為メ当所手形交換所ヘ持出シタル手形ノ内、某銀行ヨリ某銀行ヘ宛タル金高百円為換手形約定超過ニテ不渡リトナリシヲ以テ止ヲ得ス取引先ヘ返付シ、現金ト引換タレトモ取引先ハ銀行手形ノコト故之ヲ信シ、其手形着ト同時ニ荷物ヲ積出シ、迷惑ヲ受ケシ由、又近来当坐小切手不渡ニテ迷惑スルモノモ之アリ、是等ハ必竟コルレス約定外ニ為替手形ヲ振出シタルト預ケ金ナクシテ小切手ヲ振出シタルトニシテ宛ラレタル方ニハ咎ナシト雖トモ取引先ハ等シク損害ヲ受クルナリ、銀行ノ為替ニテ已ニ如此、況ヤ其他ノ手形小切手ハ信スルニ足ラストノ念ハ自然ニ増加シ漸ク手形小切手ノ流通ヲ奨励スルノ今日ニ当リ、大ニ妨害タルヘキニ付之ヲ予防スルノ方法ナカルヘカラス、小生ノ考案ニハ此事ヲ公ニ喋々スルハ其人々ニ大関係ヲ生スヘケレハ、最モ鄭重ニ之ヲ取扱、万一此ノ如キ不都合アリシトキハ、各同盟銀行ノ重役ニ宛テ親展書ヲ以テ之ヲ告知シ、自今其等ノ人人トハ可成取引セサル様注意セハ、予防ノ道モ立チ、自然取引先モ拱害ヲ受ケサルニ至ルヘシ、先般第六十銀行営業停止ニ付テハ株主ノ困難取引先ノ迷惑ヨリ各銀行ハ如何ト大ニ世人ノ注目スル折柄ナレハ、尚不都合之ナキ様同盟銀行ニ於テ信用ノ基礎ヲ固メタシ、云々
　　　　出席者
　　　委員　　第一国立銀行頭取　　　渋沢栄一　○外三名氏名略
　　　会員　　第三国立銀行頭取　　　安田善四郎　○外二〇名氏名略
　　　　但第二・第五・第六・第十・第廿七・第三十二・第三十三・第八十九・第九十ノ九行ノ差支アリテ参会セス