デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治23年9月15日（1890年）

是ヨリ先、小形社印使用許可取消ニ付テハ定款ノ改正ヲ稟請スベキ旨ノ決議ヲナス。是日右ヲ修正シ印章ノ寸法ノ更正ヲ稟請ス。

会議録事　　自明治二十二年一月至明治二十三年十二月　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○明治二十三年九月五日定式会議録事草按
明治二十三年九月五日午後五時ヨリ同盟銀行定式会議ヲ開キ、来会スル者二十六名ナリ
 - 第6巻 p.252 -ページ画像 
○中略
　第二号議案
　　　　印章改正之儀ニ付稟請案
　国立銀行印章ハ銀行成規中定款雛形第三十二条ニ拠リ彫刻致シ、諸約款及報告書等ニ押捺致来候処、某年月御省第何号ヲ以テ諸手形類ニ至ル迄必ス成規ノ印章押捺可致様御達有之、尋テ同年某月第何号ヲ以テ小形社印ヲ彫刻使用ノ儀御許可相成大ニ便利ヲ得候処、今般第三四一三号ヲ以テ右小形社印使用御許可ノ達御取消相成候ニ付テハ頻繁ノ業務取扱中数百ノ手形類ニ毎紙巨大ノ印章ヲ押捺致候様相成、頗ル労力ヲ要シ候ノミナラス手形ノ紙幅極メテ偏小ナルモノニ至リテハ一顆ノ印影ヲ以テ殆ント全紙ヲ覆フニ至リ、実地取扱上差支不尠候ニ付、成規第三十二条印章ノ寸法ヲ方一寸位ニ御改正被下候歟、又ハ諸手形其他紙幅偏小ノモノニ限リ、同条雛形中ノ押切印ヲ相用候歟両様ノ内便宜ノ御処置被成下候様仕度、此段奉悃請候也
　　　明治廿三年　月　日
　　　　大蔵大臣宛
会長○安田善次郎曰ク、本案ニ付テハ各員共ニ注意セラルヽコトナレトモ、頃日渋沢氏モ亦大ニ配意シ、自身又ハ佐々木勇之助氏ヲシテ銀行局長ニ面陳セラレタル趣ナレトモ、本員モ亦同局長ニ面会シ、割引手形ノ如キハ五ツヽ転輾スヘキモノナルニ、巨大ノ社印ヲ用ユルハ実際不便ナルノ理由ヲ縷述セシニ、其事情ハ尤モナレトモ之カ為メ条例ヲ改ムルハ難カルヘシ、又割引手形ノ如キ実際ニ於テハ五ツ転輾スルコト稀少ナレハ敢テ差支モアルマシ、然シ止ヲ得サレハ手形ノ枠ヲ四ツニナスヘシトノコトナリシカ、為換手形其他ニモ同様ノ不便アレハ、去ル一日臨時委員会ニ於テ本会ノ旨趣ニヨリ稟請スヘキコトヲ評議シテ爰ニ提出スル所以ナリ
第一銀行佐々木勇之助氏曰ク、本員モ諸手形ニ社印ヲ押用スルハ実際不便トノ考按ナレハ請願スルハ賛成ナリ、然シ本按中某年月御省第何号ヲ以テ諸手形ニ至ルマテ云々トアリ、是レハ第三十三銀行ヨリ伺ニ対シ指令セラレタルモノヲ心得ノ為メ銀行局長ヨリ達セラレタルモノト思考セシニヨリ篤ト再調アリタシ、然シ字句上ノコトハ措キ物ニヨリ小ナルモノヘ大ナル印ヲ用ユルハ不体裁ナルモノニ付、段々銀行条例ヲ調ヘ其第五条及第六条ノ精神ヲ審案スレハ定款中ノ諸款ハ社中ノ格段決議ヲ経テ大蔵大臣ノ承認ヲ得ルニ於テハ随意ニ之ヲ更正増補シ、又ハ之ヲ廃止スルヲ得ルナリ、果シテ然ラハ本按ノ如ク其処置ヲ請願スルヨリモ寧ロ定款ノ改正ヲ願タル方可ナランカ、又過日銀行局長ニ支店モ一寸八分ノ印ヲ用ユヘキモノナルヤ否ヲ問シトキ明示ナカリシカ、此程第十三銀行支店ヨリ大阪ノ或銀行ノ為メニ伺ヒタルニ支店ハ小形社印ニテ差支ナシトノコトナレハ、本店モ亦定款中雛形ノ改正ヲ出願セハ聞届ケラレサル事ナカルヘシ、故ニ本員ハ其更正方ノ請願ヲ希望ス
会長曰ク、佐々木氏ニハ銀行局長ニ向ヒ、条例五条六条ニ付テノ意見ヲ述ヘラレタルカ
佐々木氏曰ク、否局長ニ面話セシトキハ未タ条例ノ取調ヲ為サヽリシ
 - 第6巻 p.253 -ページ画像 
第百十九銀行三村君平氏曰ク、本案中寸法ヲ方一寸位ニ御改正被下候歟、又ハ云々トアリ、此又ハ以下ヲ刪除シ単ニ改正ヲ望ミタル方可ナルヘシ、且又本按中頗ル労力ヲ要スルノ文字刪除シタシ
第百銀行高田小次郎氏ハ三村氏ノ説ヲ賛成ス
第二十銀行佐々木氏モ、三村氏ノ又ハ以下ヲ刪除スルノ説ニ賛成ス
第十五銀行三輪信次郎氏ハ、原按ニテ差支ナキコトヲ述フ
第一銀行長谷川一彦氏曰ク、条例第五条第六条ニヨレハ改正ノナラサルコトナカルヘシ
会長曰ク、書面ヲ差出ス場合ニ至ラハ単ニ改正ヲ願ヒタル方可ナルヘシ、兎ニ角一応定款雛形改正ノ事ヲ渋沢氏ヨリ銀行局長ヘ内話ノ上若シ行ナハレサルトキハ本按ニ修正ヲ加ヘ、委員長ヨリ大蔵大臣ヘ稟請書ヲ差出ス事ニ為シタシ
皆異議ナキヲ表シテ其取扱ヲ委員ヘ委托スヘキコトニ決議シ第三号議案ニ移ル　○下略

諸達願並指令綴込　　自明治十一年至明治三十三年　（東京銀行集会所所蔵）
　明治二十三年九月八日　　　　　　　　　　　　　　書記(印)
　　＊
　　委員長栄一印
　　委員(印)(印)(印)
　　　去ル五日同盟銀行定式会議ノ議決ニ拠リ第二号議案左ノ通更正仕候ニ付御廻議申上侯候也
　　　　印章改正ノ儀ニ付稟請
国立銀行印章ノ義ハ同銀行成規中定款雛形第三十二条ニ拠リ彫刻致シ諸約款及報告書等ニ押捺致来候処、明治十八年四月二日第三十三国立銀行ヨリ条例第十三条見解ノ伺ニ対シ諸手形類ニモ渾テ社印押捺可致儀ト心得ヘシ、尤小形ナル社印調製使用ノ儀不苦旨御指令有之、同月六日銀行局甲第一号ヲ以テ国立銀行及横浜正金銀行ヘ右伺及指令書為心得御達相成候ニ付、爾来一同之ニ準シ諸手形ハ総テ小形社印ヲ用ヒ居リ候処、今般御省第三四壱三号ヲ以テ右小形社印使用許可御取消相成候ヨリ自今諸手形類ニモ悉ク巨大ノ印章ヲ押捺可致事ニ相成、頻繁ノ業務取扱上頗ル煩労ニ有之、且ツ手形ノ紙幅偏小ナルモノニ至リテハ一顆ノ印影ヲ以テ殆ント全紙ヲ覆フニ至リ、実際不便尠ナカラス候間、本月五日同盟銀行定式会議ニ於テ及評議候処、条例第六条ニ拠レハ各国立銀行社中ノ格段決議ヲ経テ其筋ノ承認ヲ得ルニ於テハ定款中ノ諸款ヲ増補更正又ハ之ヲ廃止スルヲ得ヘシト有之候ニ付、印章ノ改正モ各銀行ヨリ出願致シ候節ハ御承認可相成筈ト奉存候ヘ共、多数ノ銀行一々出願候トキハ繁累不少候間、此際右第三十二条印章ノ寸法ヲ方一寸ニ更正之儀御聞済被成下候様仕度、此段奉稟請候也
　　　　　　　　　　　　　　　　東京銀行集会所
　　年　月　日　　　　　　　　　　委員長　渋沢栄一
　　　　大蔵大臣宛
＊欄外記事
　九月十五日進達
（別紙）
大蔵省指令第三八四九号
 - 第6巻 p.254 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銀行集会所
廿三年九月十五日、請願印章改正ノ件株主格段決議ノ上各銀行ヨリ更ニ出願スヘシ
　　明治二十三年九月卅日　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊
　　　　　　　　　　　　　大蔵大臣　伯爵　松方正義
　＊張紙
　御指令ハ当局江御送付有之度候也
　　　明治廿三年九月卅日　　　　　　　　銀行局印