デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治23年12月15日（1890年）

第六十国立銀行処分ノ件ヲ衆議ニ附シ遂ニ同行ノ除名ヲ決議ス。

会議録事　　自明治二十二年一月至明治二十三年十二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　　　　　　　　　　　　栄一印
　　　　○第百六回同盟定式会議録事(印)○明治二三年一〇月一五日
会長○渋沢栄一ハ第六十国立銀行、本年一月中営業停止ヲ命セラレシカ、今回解停セラレ本月一日更ニ開業シ、並ニ役員ノ更迭ヲ行ヒタル通知アリシ旨ヲ報道シ、又同行従前手形交換所同盟ナリシカ、今般都合ヲ以テ退盟スヘキ要求アルニ因リ、是ト同時ニ東京銀行集会所同盟解除ノ事ハ如何処理スヘキヤ、手形交換所決算尻勘定未タ結了セサレハ、之ヲ督促シ、其結了ヲ待テ只交換所ノ同盟ヲ除名スヘキヤヲ議事ニ付ス
　安田善次郎氏曰、前ノ規程ニハ当集会所ヨリ除盟スルノ権ナキ様覚ユレハ、先ツ要求ノ如ク聞置クヲ可トセン
　会長曰、第六十国立銀行交換所不渡手形ニ係リ、曾テ委員ヨリ数次往復ヲ経テ大略結了ノ運ヒニ達シタレハ、大略損害ヲ醸ス事ナカルベシト雖、依旧銀行集会所ニ同盟スル時ハ常ニ会議ニ列席スヘクシ
 - 第6巻 p.259 -ページ画像 
テ我同盟諸君ハ之ヲ屑ヨシトセサルヘシ、然レトモ一旦営業停止ヲ命セラレタル銀行ハ之ヲ除名シ、開停ノ日更ニ加盟ヲ允スト云如キ規程ナキヲ以テ特ニ諸君ノ協議ヲ要ス
　山中隣之助氏曰、余ハ某事ノ為メ前ニ同行ニ向テ要償セシカ、百円以上ハ六ケ月後、千円以上ハ一ケ年後ニアラザレハ之ニ応スルコト能ハサルトノ回答アリシヲ以テ考レハ、同行ハ未タ完全ナル営業ニ従事スル者ニアラサルカ故ニ、此際新規程ニ拠リ除盟ノ手続ヲ為スハ如何
　安田善次郎氏曰、然レトモ同行ハ未タ規程改正ノ事ヲ知ラサルヲ以テ、恐クハ其除盟ヲ肯ンセサルヘシ
　山中隣之助氏曰、然ラハ今一応委員会ノ熟議ヲ経、退盟ヲ勧告スルカ、又ハ除名スルカヲ決定シテハ如何
会長ハ山中氏ノ説ヲ可トシ、至急臨時委員会ヲ開クベキ事ニ決シ
　　　　○第百八回同盟定式会議録事　○明治二三年一二月一五日
又会長○渋沢栄一ハ前会ノ評議ニ係ル第六十国立銀行処分ノ件ニ付衆議ニ付セシニ、規程第二十一条ニ拠リ除名シタル方可ナルヘシトノ説多数ナルヲ以テ之ニ同意ノ者ヲ起立ニ問ヒシニ、全会一致ヲ以テ遂ニ除名スヘキコトニ議決セリ
　　明治廿三年十二月十五日
　　　　定式会議出席人名
　　　　　　第一国立銀行　　渋沢栄一　○外二八名氏名略