デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治25年10月15日（1892年）

当座小切手ニ於ケル字体ノ件ニ付キ協議ス。又各国立銀行社債応募ノ件ニ付キ監査局長ヨリ注意アリタル旨ヲ報道ス。

集会録事　自明治二十四年一月至明治二十五年十二月　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百二十六回定式会議録事
明治二十五年十月十五日午後四時ヨリ同盟銀行第百二十六回定式会議ヲ開キ、渋沢委員長首メ来会スルモノ二十九名ナリ
渋沢委員長ハ会長席ニ着キ、去月廿二日同盟銀行定式会議ニ於テ加盟ヲ許諾シタル信濃銀行東京支店本月ヨリ加入シ、定式臨時会議ヘ出席スヘキ者ハ支配人小川昌夫、副支配人高山国風両氏タル事、第三十国立銀行ハ従前頭取深川亮蔵氏出席セシカ、本会ヨリ取締役原代九郎氏之ニ代リ支配人諸隈宣明氏ト両名出席スヘキ事、第四国立銀行東京支店高野清一氏本店ヘ転勤ニ付、自今其後任者大泉遵誼氏出席スヘキ事等ヲ報道セリ
次ニ当坐預金小切手ニ一二三十等ノ字体ヲ用ユル者往々有リテ、現ニ本月二日東京手形交換所ニ此ノ如キ字体ニ係ル小切手出現シ、一時論議ノ生シタルヲ聞キシカ、元来銀行ニ預金有ル者カ之ヲ引出スニ当リ改描シ易キ字体ヲ以テ其金額ヲ記載スルハ自ラ危険ヲ犯スニ近シ、我我ハ既ニ二ヲ四ニ、三ヲ五ニ改描シタル者有リトノ類例ヲモ聞知シタル以上ハ、従前銀行者ハ其預人ニ対シ其等ノ危険ヲ踏マサル様、曾テ注意ヲ与ヘタル者アリシカ、尚又本年ノ春ニ於テ諸証書文例ヲ修正シテ我同盟銀行ハ当坐小切手書式ヲ一定シ、其用法第四項ニ小切手ニ記載スル金額ハ、壱・弐・参・拾ノ字ヲ用ヒ、一二三十ノ字ヲ用ユヘカラサルコトヲ規定シテ危険ノ虞ナキヲ期シ、我々ノ注意ハ十分尽シタリト云ヘキモ、今俄ニ其略字ヲ記載シタル小切手ハ一切之ヲ拒絶セントスル時ハ忽チ不便ヲ生スヘキノ恐有ルヲ以テ、殊ニ其向ヘ取引ノ銀行ヨリ懇篤ニ忠告シテ以テ其注意ヲ喚起スヘキコトニ議決セリ
次ニ近時北海道炭礦鉄道会社、及日本郵舶会社社債応募ニ関シ、諸新聞紙ニテハ国立銀行・横浜正金銀行等ニ於テ直ニ之ヲ引受タルカ如ク報道セシニ因リ、頃日鈴木監査局長ヨリ山中書記長ニ告ケラレタルニハ、国立銀行等ハ其条例ニ依リ社債ニ応募スヘカラサル事ハ固ヨリ当業者ノ領知セラルヽ所ナレハ、諸新聞ノ報道ハ国立銀行カ他ノ資本家ノ為メニ紹介スルニ当リタル其引受高ヲ予定シテ之ニ従事セシヲ誤伝シタル者ニテ、銀行自ラ引受タルニアラサル事ハ問ハスシテ分明ナレ
 - 第6巻 p.310 -ページ画像 
トモ、万一ノ注意ニ之ヲ言フトノ事ナリ、是一私話ニ似タリト雖亦我我同業者ノ公務ニ関係ノ事抦ニ付特ニ告知スル旨ヲ報道セリ