デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治28年6月14日（1895年）

是ヨリ先、バンベルゲル「五十億法償金論」及ビアドルフ・シヨートベール「仏国償金論」ヲ紹介シソノ内容ヲ略述ス。是日右ニ鑑ミ清国償金ノ使途ニ付キ、当局ニ意見ヲ上申スベキ旨ノ議案ヲ発シタルニ衆ノ同意ヲ受ク、依テ委員ヲ選ビ之ニ委托スベキコトヲ決議ス。

集会録事　自明治二十六年一月　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百五十一回定式集会録事　○明治二八年五月一五日
次ニ委員長ハ此程金子農商務次官ヨリ寄贈ニ係ル、独国経済学者バンベルゲル氏ノ著「五十億法償金論」及アドルフ・ショートベール氏著「仏国償金論」ヲ一読シタルニ大ニ我国目下経済上ノ参考タルヘキ良書ナリト信シタレハ、各位他日ノ参考ニ供セント欲シ、更ニ同次官ニ数本ヲ請求セシヲ以テ爰ニ各位ニ毎一本ヲ呈スト云ヒ、且曰フ、本書ノ大意ヲ略言スレハ、独逸ハ戦勝ノ結果仏蘭西ヨリ五十億法ノ償金ヲ得タルモ、其償金ノ支途宜キヲ得サリシヲ以テ却テ経済社会ノ紊乱ヲ起セリ、之ニ反シテ其償金ヲ支払タル仏国ハ一時大ニ困難セシト雖爾後非常ノ奮励ヲ以テ漸々復旧シ、今日ハ已ニ戦争前ニ優ル国力ヲ保有スト云フニアリ、我邦モ亦今後一年ナラスシテ一億万以上ノ金額外ヨリ流入スヘキナレハ、其支途如何ニ依リテハ経済社会就中銀行者ニ影響スル所重大ナルヘキヲ以テ、今ヨリ之カ講究ヲナスハ甚タ緊要ノコトタルヘシ、願クハ委員数名ヲ撰ミ予メ其来勢ヲ査察考量シテ、以テ其意見ヲ当路ニ開陳スルハ可ナラスヤト、衆皆適切ナル実例ニシテ殊ニ銀行者ニ在テハ大ニ研究ヲ要スヘキ者ナレハ、能ク熟読ヲ経テ次会ヲ俟チ協議スヘシト答議ス
　　　　○第百五十二回定式集会録事　○明治二八年六月一四日
次ニ会長ハ前会各員ヘ参考ニ供シタル五十億法償金論及仏国償金論ニ鑑ミ、今後清国償金ノ支途ニ付国家経済上ニ於ル影響ノ如何ヲ予察推
 - 第6巻 p.380 -ページ画像 
見シテ其意見ヲ開陳スヘキ事ヲ発議シタルニ、衆皆其事ヲ以テ営業上ノ必要トナシテ之ヲ賛成セリ、但シ其順序方法ニ至リテハ特ニ委員数名ヲ選ミテ之ニ委托センコトヲ望メリ、因テ会長ハ本議ハ実ニ国家経済上ノ重案ナレハ、其委員ニハ日本銀行ヨリモ亦一名選出アランコトヲ要スルニ付、之ヲ同行ヘ協議シ次会ヲ俟テ委員ノ選定ヲ行フヘキコトヲ告ケ、衆皆之ニ同意ス
次ニ会長ハ凱旋奉祝会企図ノコト及貨幣制度調査会経過ノ事ヲ談話シ晩餐ノ後八時下散会ス
　　　　　　当日出席者
　　　　　　　　　第一国立銀行　渋沢栄一　○外二六名氏名略