デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治29年2月15日（1896年）

是ヨリ先、興信機関設置ノ必要ヲ説キテ衆ノ注意ヲ促ス、即チ調査委員ヲ選ビテ之レガ調査ニ当ラシム。是日東京商業興信所創立ノ運ビニ至リタル旨ヲ告ゲ、且衆ノ賛成加入ヲ希望ス。

集会録事　　自明治二十六年一月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百三十回定式集会録事○明治二六年二月一五日
次ニ渋沢氏ハ頃日行旅大坂滞留ニ於テ同地興信所効用ノ大略ヲ聞知シ且第一銀行支店ニテ実際該所ヨリ送致セシ回報ヲモ亦一覧シタルニ、能ク其事実ヲ探究シテ明瞭ニ報告セリ、仮令ハ動産不動産ノ有無、及其質入書入ノ有無、沿革等ヲ始メ、品行ノ正邪ヨリ些末ノ事項ニ至ル迄綿密ニ査明セリ、而シテ該社ニ加入ノ銀行ハ、之レカ為メ営業上ノ危険ヲ免カレタルモノ尠ナカラスト云、尚其報告ノ方法ニハ種々区別アルモ、要之銀行者等ニハ尤必要ヲ感シタルヲ以テ爰ニ一言シテ諸君ノ注意ニ供シ、且当地ニモ之ヲ創設スルモノハ如何ト思惟セリ、但其利害得失等ハ次会ヲ俟テ熟慮セラレンコトヲ請フトノ旨意ヲ述ヘラレ
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タリ
右会事畢リ同八時下退会セリ
　　　　○第百三十一回定式集会録事
明治廿六年三月十五日午後五時、同盟銀行第百三十一回定式会議ヲ開キ、渋沢委員長、中上川委員ヲ首メ来会スル者総テ二十四名、此外客員トシテ日本銀行筆頭書記山本達雄氏モ来会セラレタリ
渋沢委員長ハ会長席ニ着キ、同盟銀行春季懇親会開設ノ事宜ヲ協議シ来ル四月十六日ヲ卜シテ開会スヘキコトニ議決セリ
次ニ渋沢氏ハ前月定式会議ノ余談ニ係ル信用調査所創設ノ件ヲ以テ、尚又諸氏ノ意見ヲ問ヒ、皆其挙ヲ必要トシテ同意ヲ表シタルモ、営利ノ事業トシテ収支直ニ償フカ如キコトハ到底望ムヘカラサレハ先ツ三四年間ハ其経費ヲ補助スルモノト為サヽルヘカラス、特ニ其組織ニ至テハ会社法ニ拠ルカ、或ハ特ニ有志者ニ於テ組織スル者ト為スカ、試ニ同氏ニ於テ其大躰ノ順序ヲ起草シテ再ヒ協議スヘキ事ヲ約シ、晩餐ノ後同八時下退散セリ、当日出席員左ノ如シ
　　　　　　　　　第一国立銀行　　　渋沢栄一○外二三名氏名略
　　　　○第百三十三回定式会議録事
明治二十六年六月十五日午後五時ヨリ同盟銀行第百三十三回定式会議ヲ開キ、渋沢委員長首メ来会スルモノ三十八名ナリ、是日客員トシテ日本銀行筆頭書記山本達雄氏来会シタリ
渋沢氏ハ会長席ニ着キ、従来銀行通信録発行日ハ毎月廿八日ナリシカ本月ヨリ十日ニ変更セシニ付テハ、材料蒐集ノ都合ニ依リ之ヲ二回トナスノ議ヲ提セシカ、未タ其必要アラサルヘシトシテ従前ノ如ク一回発兌ノ事ニ決セリ
次ニ当集会所考課状従来毎季印刷ノ上、同盟銀行ヘ配布セシカ、会議ノ顛末ハ毎月銀行通信録ニ載セ、又経費ハ毎季予算表ヲ作リ評議スレハ、之ヲ印刷シテ報告スルノ必要ナキヲ以テ、之ヲ廃シ二月七月ノ総会ニ於テ報告スヘキ事ニ決セリ
次ニ渋沢氏ハ本年三月定式会議ニ於テ信用取調所創設ノ件ニ付協議セシカ、当時其方案モ定マラス甚タ漠然タルヲ以テ、其取調ヲ小子ニ托セテレ、重テ協議スヘキ事ヲ約セラレシカ、頃日大阪ヨリ詳細ノ書類到達セシニヨリ、本会ノ議案ト云フニアラサレトモ、銀行者ニ取リ緊要ノ機関タルヘキヲ以テ、再ヒ之ヲ諸君ニ諮ル、蓋シ此事タル始メヨリ収利ノ望アラサレハ、暫ク其経費ヲ有志ニ於テ負担スルニアラサレハ創設スル能ハス、加之ナラス適当ノ担任者ヲ得ルハ最モ至難ノ事ナルヘシ、然ラハ到底之カ創設ハ望ム能ハサルヤト云フニ、現ニ大坂ノ如キハ創設後未タ幾クナラサルニ既ニ世人ニ必要視セラレ、其依頼件数ノ如キモ漸次増加スルノ傾向ナレハ、到底将来之カ創設ヲ望マサルヘカラサルヲ以テ、再ヒ之ヲ協議スル所以ナリ
池田謙三氏曰　金融機関トシテ銀行者ニ密接ノ関係アルモノナレハ、之ヲ有志組織トシテ創立スルモノトナシ兎ニ角委員ヲ選ミ調査セラレテハ如何
豊川良平氏曰　早晩之ヲ創設セサルヘカラスト雖、大阪ノ如キハ外山氏熱心ニ之ヲ唱導シ、且板原氏ノ如キ熱心家ヲ得タルヲ以テ幸ニ此ニ
 - 第6巻 p.386 -ページ画像 
至リシモノナレハ、東京ニ於テモ仮ニ経費ヲ出スモノアリトスルモ、其人ヲ得サレハ殆ント死物ニ属スレハ、其人ヲ得ルハ甚タ肝要ノ事ナラン
山川勇木氏曰　列席諸君モ略其必要ヲ感セラルヽ如クナレハ、兎ニ角委員ヲ設ケ之カ取調ヲ為ス事ニシタシ
池田謙三氏曰　銀行者ニ於テ之ヲ創設セサレハ他ニ之ヲ創設スルナカルヘケレハ、集会所ノ議題トシテ取調委員ヲ設ケラレタシ
渋沢栄一氏曰　然ラハ兎ニ角集会所ノ議題トシテ之カ調査ヲ為スモノトシテハ如何ト云ヒシニ、皆同意ナルヲ以テ、渋沢氏ヨリ佐々木勇之助、三輪信次郎、佐々木慎思郎、池田謙三、三村君平ノ五氏ヲ調査委員ニ指名シ、常委員並山川勇木氏モ之ニ参同スヘキコトニ決シ、同七時閉会セリ
当日出席員
　　　　　　　　　第一国立銀行　　　渋沢栄一○外三七名氏名略
　　　　○第百四十四回定式会議録事　○明治二七年八月一五日
次ニ嘗テ協議シタル信用調査所創立ノ件ハ前項○不渡手形ノ発生ノ如キ流弊ヲ矯正セントスルニハ頗ル必要ヲ感スレハ、同盟銀行其他ニ於テ経費補助法ヲ考定シ、更ニ協議スヘキコトヲ打合セタリ
　　　　○第百五十四回定式会議録事○明治二八年一〇月一五日
次ニ会長○渋沢栄一ハ嘗テ当銀行集会所ニ於テ協議シタル商業興信所創立ノ件ハ、爾来東京交換所組合銀行中ニ於テ再三協議ヲ経テ、経費予算設立方法主任者撰用等ノ要項略ホ定リタレハ、遠カラス開業準備ニ着手スルニ至ルヘキ事情ヲ報告シ、畢テ晩餐ノ後八時散会セリ
当日出席員
　　　　　　　　　第一国立銀行　　　渋沢栄一○外二四名氏名略
　　　　○第百五十八回定式集会録事
明治二十九年二月十五日午後四時ヨリ同盟銀行第百五十八回定式会議ヲ開キ出席スルモノ総テ三十四名ナリ
○中略
次ニ嘗テ同盟銀行ノ協議ヲ経タル東京興信所ハ爾後創立ノ運ヒニ至リ其配付セシ規約草案ハ各位已ニ閲了セラレタルナルヘシト陳ヘテ、担任者森下岩楠氏ヲ紹介セリ
　　　　○第百六十二回定式集会録事○明治二九年六月一五日
次ニ今回東京商業興信所規程修正ニ付テハ、此際発起人ニ加入ヲ望マルヽ向ハ本月中ニ右興信所ヘ申込マルヘキ旨ヲ報道シ、了テ晩餐ノ後八時下散会セリ
　　　　　　当日出席者
　　　　　　　　　第一銀行　　　渋沢栄一君○外二七名氏名略