デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.421-425(DK060124k) ページ画像

明治30年9月15日(1897年)

是ヨリ先、東京交換所組合銀行集会ニ於テ取引上ニ於ケル厘位廃止ノコトヲ協議ス。是日右ノ件ヲ決議シ後委員ヲ選ビテ組合銀行注意廉書並ニ得意先及為替取引銀行ヘノ通知案ヲ決議セリ。


■資料

銀行通信録 ○第一四二号・第一三一―三二頁〔明治三〇年九月〕 東京交換所組合銀行定式会(DK060124k-0001)
第6巻 p.421 ページ画像

銀行通信録
 ○第一四二号・第一三一―三二頁〔明治三〇年九月〕
    ○東京交換所組合銀行定式会
東京交換所組合銀行は去八月廿七日午後五時より其定式会を開き○中略客員鶴原定吉氏は厘位切捨の談に及ひて曰く、近時の如く次第に取引頻繁に赴きしに付厘毛の計算徒らに手数を要するのみにして、自他共に損益を感せされは之れか実施を希望すること既に久しと雖、日本銀行は国庫出納の勘定に関すること尠からされは大蔵省の同意を得るにあらされは之を施行すること能はさるを以て、屡々同省に交渉したるも現に厘位の通貨存在する今日なれば、議会の協賛を経るにあらざれば之を裁すること能はさるへしとの事にして、荏苒躊躇したるも営業部に属する勘定に至りては、何時実施するも更に差支なしと思惟すれは、各銀行の意向を聞き、幸ひに多数の同意を得れは速かに実施したしとの説に皆同意を表したるも、尚銀行集会所組合銀行の集会に於て協議決定したる方、可然との事に帰し外二三の要項を議し午後九時下退会せり

銀行通信録 ○第一四三号・第一一六―一一九頁〔明治三〇年一〇月〕 第百七十五回定式集会録事(DK060124k-0002)
第6巻 p.421-424 ページ画像

 ○第一四三号・第一一六―一一九頁〔明治三〇年一〇月〕
    ○第百七十五回定式集会録事
九月十五日午後五時より東京銀行集会所組合銀行第百七十五回定式集会を開き来会したるもの卅四名なり、渋沢会長は前会加入したる東京商業銀行及成田銀行支店並第一銀行外八行より、新たに会員として出
 - 第6巻 p.422 -ページ画像 
席すへき人名の届出ありたる事を告け、而して本日出席の諸氏を紹介せり
夫より議事に移り会長の説明により決定したる要領左の如し
一厘位廃止 近時経済社会の発達に伴ひ銀行業務も次第に頻繁に赴きたるに付ては、計算上煩雑の手数を省略し、自他双方の便利を図らんか為め、取引上厘位を廃して総て銭位に止めたしとの件は、頃日東京交換所組合銀行集会に於て評議あり、一般の商業者に取りても敢て不便なかるへしと思惟したれは、爰に本案を提示して諸君の意見を問ふ、而して本案に付日本銀行の意向を聞くに同行に於ては厘位廃止を希望する既に久しと雖、国庫出納に関係あれは大蔵省の承認を経るにあらされは全体に之を実施すること能はさるを以て、屡屡同省に交渉したる趣なれども、同省は現に法貨として一厘銭の存在する今日、国庫出納上に厘位を切捨つるは不可なりとして之を容れざれば、国庫に関する分は暫く之を措き先つ営業上の計算に於て之を実施したしとの事なれは、我組合銀行全体の同意を得は日本銀行も亦同時に之を実施するに至るへしと述へ、之を討議に付したるに大体は目下の急務なりとして皆同意を表したるも、愈之を実施せんには其施行期日並取引先に対する計算等自つから其順序方法をも要すへけれは、特に調査委員五名を置くへきことゝ為し、而して其人選は会長より指名ありたしと望みたるを以て、会長は厘位廃止調査委員に左の五名を指名し各承諾せり
    池田謙三    佐々木勇之助
    波多野承五郎  三村君平
    伊東祐之
○中略
猶厘位廃止に付委員会に於て決議したる組合銀行注意廉書並得意先及為替取引銀行への通知案を附記する事左の如し
    厘位廃止に付組合銀行注意廉書
一諸預金利息は積算上に於て一口毎に厘位を切捨つへし
二貸附割引貸越の利息は積算上に於て一口毎に厘位を切捨つへし
三為替利息決算尻に厘位を生したる場合には双方之を切捨つへし
 諸手形取立手数料も之れに準す
四割引手形荷為換手形及代金取立手形に厘位あるものは取扱はさるを以て通例とす、但已むを得さる向は厘位を切捨てゝ取扱ふへし
五割引手形荷為換手形及代金取立手形の延滞日歩は積算上に於て一口毎に厘位を切捨つへし
六本年十一月一日以後若し厘位附の当座小切手又は送金手形を持参するものあるときは厘位を切捨て支払を為すへし
七他店手形を当座勘定等に入金する場合には一枚毎に厘位を切捨て勘定すへし
八他店手形を交換所に持出す場合には一枚毎に厘位を切捨て勘定すへし
九送金手形は総て銭位に止め厘位は取扱はさるへし
十為換取組先の銀行に於て官金公金を取扱ふ為め已むを得す送金に厘
 - 第6巻 p.423 -ページ画像 
位を附する場合には、便宜上現金を以て厘位の支払を為すと雖とも為換勘定に於ては厘位を切捨つへし
十一諸預金貸越金及為換差引尻の残高に放ける厘位は十月三十日に於て四捨五入の法に拠り勘定を整理すへし
十二前数項の実施に付ては組合銀行の名を以て予め新聞紙に広告すへし
    当座預金取引先へ通知案
拝啓益御繁栄奉慶賀候陳者今般東京銀行集会所組合銀行の申合せに拠り諸勘定上の厘位廃止の事に決定致候間、予て御取引相願居候当座預金勘定の儀も来る十一月一日より左記の方法を以て厘位廃止致度候間御承諾被成下度此段予得貴意候 敬具
一十一月一日以後現金を以て御預入れの場合には其都度厘位を省き銭位に止め御入金被下度候
一十一月一日以後厘位記載の手形小切手を以て御預入れの場合には一枚毎に厘位を切捨て御受入れ可仕候
一十月二十日以後御振出の小切手には厘位御省き被下度候
一十一月一日以後厘位記載の小切手を以て支払の御請求相成候場合には厘位を切捨て御支払可仕候
一十月三十日現在の当座御預金及同貸越金残高に厘位有之候ときは四捨五入の法に拠り四厘迄は切捨て五厘以上は銭位に切上け整理可致候
  但此整理に御不同意に候へは十月三十日迄に銭位に相充ち候様御入金被下候歟若くは厘位の金額は便宜御引出被下度候
一当座御預金及同貸越金の利息毎決算期に於て積算上厘位を生し候ときは銭位に止め厘位は総て切捨て授受不仕候
    以上
  明治三十年 月 日             何銀行
     得意先宛
    為換取引銀行へ通知案
拝啓貴銀行益御隆盛奉慶賀候、陳者今般東京銀行集会所組合銀行の申合せに拠り諸勘定上の厘位廃止の事に決定致候に付ては、貴我間為換勘定の儀も来十一月一日より左記の方法を以て厘位廃止致度候間御承諾被成下度此段予め得貴意候 匆々敬具
一十月二十日以後約束手形、為換手形、荷為換手形及代金取立手形に厘位あるものは互に仕向けさる事
  但已むを得ず厘位附の諸手形を仕向くるときは双方とも厘位を切捨て計算に加へさるへし
一十月二十日以後は厘位の送金手形を互へに振出さゝる事
  但官金公金に限り已むを得さる場合には厘位を附するも妨けなしといへとも、相互の勘定は総て厘位を切捨て計算に加へさるへし此場合に於ては取組案内書に其厘位を附記し而して支払ゑたる厘位の金額は支払銀行の損失となすへし
一十一月一日以後若し厘位記載の送金手形を以て支払の請求ありたる場合に於ては前項但書を除く外総て双方とも厘位を切捨て支払を為
 - 第6巻 p.424 -ページ画像 
すへし
一十月一日以後諸取立手形の延滞日歩を支払人より徴収するに当り積算上厘位を生するときは一口毎に之を切捨つる事
一十一月一日以後為換尻付替為換尻戻入及雑勘定には総て厘位を附せさる事
一十月三十日に於て為換勘定差引尻の残高に厘位ある場合には同日四捨五入の法に拠り之れか整理を為すへし
一為換取引利息決算期に於て積算上厘位を生するときは双方とも之れを切捨つへき事
  但諸手形取立手数料も之れに準すへし
    以上
  明治三十年 月 日
                        何銀行
      為換取引銀行宛
  ○第百七十五回定式会議録事中「厘位廃止ノ件」ニ関スル記述ハ「明治二十六年一月集会録事」中ノモノヨリ「銀行通信録」ニ掲載ノモノ詳細ナルヲ以テ之ヲ採リタリ。


銀行通信録 ○第一四五号・第一二八―一二九頁〔明治三〇年一二月〕 関東銀行会組合銀行其他各地厘位廃止(DK060124k-0003)
第6巻 p.424-425 ページ画像

 ○第一四五号・第一二八―一二九頁〔明治三〇年一二月〕
    ○関東銀行会組合銀行其他各地厘位廃止
関東銀行会幹事は東京銀行集会所の首唱に係る厘位切捨の件に付、該組合銀行に照会したるに大凡同意を表し十二月上旬迄に其実施日限を報告したる銀行左の如し
 信州  上田   十一月一日より
 同   稲荷山  十一月十五日より
 越後  新潟   十一月一日より
 同   長岡   十一月一日より
 同   高田   十二月一日より
 甲州  山梨   十一月十一日より
 駿州  大宮   十二月一日より
 遠州  二俣   十一月一日より
 武州  八王子  十一月一日より
 野州  栃木   十一月一日より
 上州  館林   十二月一日より
 上州  前橋   十二月十一日より
尚其外
 越後  新発田  三十一年一月一日より
 弘前       十二月一日より
 和歌山      十二月一日より
 三重県下一同   十二月一日より
右の如く厘位の切捨の件は一般に認められ続々之か実行を見んとす、其他愛知にも挙つて之を行ふの議あり、今左に愛知同盟銀行の廃止に関する議案を録せんに
 一、利息割引料並手数料は総て積算上一口毎に厘位を切捨つへし
 二、割引手形荷為換手形及ひ代金取立手形に厘位あるものは取扱はさるものとす、但已むを得さる向は厘位を切捨て取扱ふへし
 - 第6巻 p.425 -ページ画像 
 三、本年十二月一日以後厘位附の当座小切手又は送金手形を持参するものとあるときは厘位を切捨て仕払を為すへし
 四、他店手形を受入るときは一枚毎に厘位を切捨つへし
 五、送金手形は総て銭位に止め厘位を取扱はさるへし
   但官金公金に限り已むを得さる場合にて厘位を附するも妨なしと雖とも記帳上は厘位を省くべし
 六、為換取組先の銀行に於て官金公金を取扱ふ為め已むを得す送金に厘位を附する場合には便宜上厘位の支払を為すと雖も為替勘定に於ては厘位を切捨へし
 七、諸預金貸出金及ひ為替尻の残高に於ける厘位は、十一月三十日に於て諸預金は厘位繰上の貸出金は厘位切捨て為換尻は四捨五入の法に拠り勘定を整理すへし
 八、厘位切捨実行前取組みたる貸付金割引手形の厘位あるものにして本年十二月一日以後之か取立を為すときは厘位を切捨て受取るへし
 九、同盟銀行中貯蓄銀行事業を兼営するものは其貯蓄部に前各項を実施すると否とは各行の任意たるべし
 十、前各項の実施に就ては同盟銀行連署を以て予め新聞紙に広告すへし
  明治三十年十一月          愛知同盟銀行