デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治33年2月15日（1900年）

是ヨリ先、小切手呈示期間延長外二件ニ付キ協議シ、委員ヲ選ビテ調査セシム。是日議員ヨリ当議会ニ印紙税法中追加法律案提出セラレシ旨、並ニ倉庫証券及支払保証小切手ノ件ニ付清浦法典調査会副総裁ニ陳情セシ旨ヲ報告ス。

集会録事　自明治二十六年一月　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百九十六回定式集会録事
明治三十二年十月十八日午後五時ヨリ銀行集会所組合銀行第百九十六回定式集会ヲ開キ出席シタルモノ五十七名ナリ、渋沢会長ハ会議ニ先タチ左ノ諸件ヲ報道セリ
　一横浜正金銀行東京出張所副主任長岡長氏自今会員トシテ出席ノ旨届出アリタル事
　一八十九銀行取締役森一馬氏従来支配人兼務ノ処今回取締役専務トナリ、大山勉氏其後任ニ任命ノ旨同行ヨリ通知アリタル事
　一九十五銀行ヨリ今般支配人ノ名称ヲ廃シ、自今営業主事ノ役名ヲ以テ是迄ノ通業務為取扱ノ旨通知アリタル事
　一東海銀行取締役早川松之助氏支配人兼務ノ処今般取締役専任トナリ、元支配役笹井慎次郎氏ヲ支配人ニ任命ノ旨同行ヨリ届出アリタル事
　一東京商業銀行ハ従来支配人名義ヲ以テ諸事為取扱ノ処今般営業部長ト改称、従前ノ通諸事為取扱旨通知アリタル事
　一浅草銀行ヨリ左ノ通会員届出アリタル事
　　　　専務取締役頭取　　今井喜八
　　　　専務取締役　　　　関戸金三郎
　　　　取締役兼支配人　　小池長次郎
　　　　書記長　　　　　　西沢米二郎
　一今般竣工シタル増築建物、附属品、備品等ノ諸費用決算並嘱托技師及助手ヘ報酬ノ件ヲ報告シ、且会長ハ組合銀行ヲ代表シテ本建築委員上柳清助、芦田順三郎両氏ノ労ヲ謝セリ
右了テ会議ニ移リ、小切手呈示期間及印紙税中新ニ参着払為替手形ハ金高ニ拘ハラス印紙税一銭ト云フ一項追加ノ件ニ付協議ヲ為シ、尚倉庫会社預証券質入証券ニ関スル件ニ付テハ特ニ日本銀行文書局ヨリ津久井茂氏出席アリテ其意見ヲ陳ヘ、又三井銀行波多野承五郎氏ヨリ仕払保証小切手ニ対スル銀行ノ責任如何ト云ニ付同氏ノ意見アリ、右問題ニ付種々協議スル処アリシカ、結局委員ヲ置キ以上四件ノ調査ヲ嘱托スル事ニ決シ其委員ニハ左ノ七行当選セリ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横浜正金銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第三銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　十五銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第百銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井銀行
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三菱銀行
次ニ関東銀行会開催ノ可否並該会ヘ提出スヘキ問題ニ付協議スル処アリシカ、問題ノ有無ニ拘ハラス来ル十一月下旬ヲ期シ開催シタル方然ルヘシトノ説ニ帰一シ、其日限及其場所等ハ幹事銀行ニ於テ之ヲ定ムベキ事ニ決セリ
右会事了リ晩餐ノ後九時散会セリ、当日出席者左ノ如シ
　　　　　　　　　第一銀行　渋沢栄一○外五四名氏名略

銀行通信録　　第一六八号・第一五一四―一五一五頁〔明治三二年一一月〕
　　　　○小切手呈示期間延長外三件特別委員会
東京銀行集会所第百九十六回定式集会に於て設定せる小切手呈示期間延長外三件調査特別委員会は、明治三十二年十月二十三日午後五時より開会、左の如く議定したり
　一小切手呈示期間延長の件は現行法定期間に若干の延長を為すも、亦実際に於ては、其改定期間を経過することなきを必すべからず特に印紙税法中に、「参着払為替手形は金額に拘らず印紙税金壱銭」の一項追加の目的を達するを得ば、敢て小切手の現行法定期間を延長するの必要なきを以て本問題は姑く現行法の儘とする事
　二印紙税法中に「参着払為替手形は金高に拘らず印紙税金壱銭」の一項追加の件は参着払為替手形に限り印紙税を免することを期し大蔵省に交渉する事
　　支払保証小切手に対する銀行の責任に就ては法典起草委員中の意見を叩くこととなり、法典起草委員梅謙次郎氏の意見は波多野承五郎氏に、同委員岡野敬次郎氏の意見は三崎亀之助氏に托して各各之れを叩くことゝし、且つ此件に関しては横浜正金銀行に依頼し米国に於ける慣例を調査し然る上にて更に協議する事
　三倉庫預証券、質入証券に関する件は現行法の不備にして、之が改正を要するを認むるに付き、先つ倉庫業者実際の取扱に付調査することゝなり、該業務に関係ある豊川良平氏に其調査及改正意見の立案を委托し成案の上更に協議する事

渋沢栄一　日記　　明治三二年
十月十八日
五時半銀行集会所例会ニ列シ議案数項ヲ議決ス、夜九時兜町ニ帰宿ス

銀行通信録　　第一七〇号・第五七―第五九頁〔明治三三年一月〕
　　　　○小切手呈示期間延長外三件特別委員会
東京銀行集会所に於ける小切手呈示期間延長外三件特別委員会は十月二十三日の第一回集会（昨年十一月発行銀行通信録緊百六十八号本欄内《（第）》に掲けたり）に於て小切手呈示期間及参着払為替手形印紙税の二件を議了せしが、其後昨年十一月二十一日第二回の集会を開き東京倉庫内外倉庫、三井倉庫及渋沢倉庫の各主任者に出席を乞ふて倉庫証券に関する協議を遂げ、更に同年十二月九日第三回の集会を開きて仕払保
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証小切手に対する銀行の責任に関する件及倉庫証券に関する件を議了し、全く委員会を終了せり、即ち倉庫証券に関する件に就ては第二回の委員会に於て三菱銀行部桐島像一氏に托し右に開する商法修正意見の起草を托することゝなりしに、桐島氏より第三回の委員会に各意見の報告あり、種々討議の上実際取扱上現行法不便の要点修正の希望を正副会長より法典調査会総裁に陳情して其意見の貫徹を勉むることに決し、次に仕払保証小切手に関する件も同総裁に陳情することに決し委員一同は桐島氏に対し起草の労を謝し、之にて委員会を閉会し、超て十二月十一日左の如く委員会の経過及結果を会長に報告したり
　拙者共去る十月十八日組合銀行定式集会の決議に依り小切手呈示期間の延長、仕払保証小切手に対する銀行の責任、参着払為替手形印紙税、倉庫預証券及質入証券に関する商法の規定に付調査委員に選定せられ候に付、前後三回委員会を開き特に倉庫証券の取扱に就ては倉庫業者の意見を聴くの必要を感じ、十一月二十一日第二回委員会に於て東京倉庫、内外倉庫、三井倉庫、渋沢倉庫の主任者に出席を乞ひ、之れに協議し、爾後委員会に於て審究討議を尽し、左の通決議致候に付此段及御報告候也
　　明治三十二年十二月十一日
　　　　委員　　　　　　　　（イロハ順）
　　　　　　　　　　　　　　　　第百銀行　　池田謙三
　　　　　　　　　　　　　　　　三井銀行　　波多野承五郎
　　　　　　　　　　　　　三菱会社銀行部　　豊川良平
　　　　　　　　　　　　　　　　十五銀行　　伴野乙弥
　　　　　　　　　　　　　　　　第三銀行　　小川為次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　第一銀行　　佐々木勇之助
　　　　　　　　　　　　　　横浜正金銀行　　三崎亀之助
　　　会長　渋沢栄一殿
　　倉庫証券に付商法中修正の希望
第一、現行法にては質入証券所持人に対する債務者不明瞭の疑あるに付、法文を以て之れを明瞭ならしむる事
　　但し第一の質権設定者を債務者と規定せられんことを希望す
第二、現行法にては質権設定後寄託物の一部出庫を法律にて認めあるや否判然せず、故に法文にて之れを明瞭にし、且つ内出し物件に代へて倉庫に供託しある金額は、質入証券所持人の優先権に属するものなる事を法文に規定する事
第三、現行の法文に拠れば預証券及質入証券は必ず併用すべき規定にて不便の場合尠しとせざれば、別に単独なる預証券のみをも発行し得るの規定を設くる事
　　仕払保証小切手に付法定の希望
一、小切手に支払保証を為し、取引上の安全を保するは我邦銀行の商習慣なるにも拘はらす、商法に規定なきを以て該小切手振出人か破産したる場合、其金額の優先権は孰れに在るや甚だ疑あり、故に法律上、仕払保証を為したる小切手の資金は振出人か破産の場合に於ても破産財団に組入れされざるの規定を設けられんことを希望す
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右二件は法文に於て明瞭に規定せられんことを当集会所組合銀行の希望として正副会長より法典調査会総裁へ面陳し、当季議会中に右希望を達することに尽力あらんことを望む
　一小切手呈示期間延長の件は已に参着払為替手形追加の希望あれば現在使用せる処の各地送金の便は皆此為替手形に拠ることを得るか故に之を延長するの必要を認めず
　一参着払為替手形の件は印紙税法中に参着払為替手形の一項を追加し、其印紙税は金高に拘はらず壱銭或は無税なるを希望することを、正副会長より大蔵省に交渉あらんことを望む
　　　　　以上

渋沢栄一　日記　　明治三二年
十二月十五日
四時銀行集会所例会ニ出席ス、夜浜町宅ニ帰宿ス

集会録事　自明治二十六年一月　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第百九拾八回定式集会録事
明治三十二年十二月十五日午後五時ヨリ第百九拾八回定式集会ヲ開キ出席シタル銀行参拾九行其出席会員四拾六名ナリ、渋沢会長ハ議事ニ先チ左ノ諸件ヲ報告セリ
　一第二銀行取締役樋口登久次郎氏任期満了ニ付退任、樋口源六氏新ニ取締役ニ就任シ、又原鉄五郎氏ハ取締役頭取ニ就任相成候旨同行ヨリ届出ノ事
　　又同行ヨリ自今会員トシテ頭取原鉄五郎氏、副支配人大村精鋭氏出席ノ旨届出ノ事
　一九十五銀行ハ今般其筋ノ認可ヲ得貯蓄預リ金業ヲ開始シ、日本橋区本小田原町六番地ニ出張所ヲ設置シタル旨届出ノ事
　一十五銀行ハ今般日本橋区新乗物町六番地ニ支店ヲ設置シ、松山可澄氏ヲ同支店支配人ヲ命シ、本月十四日ヨリ開業ノ旨通知アリタル事
　一帝国商業銀行取締役会長成川尚義氏病死ニ付其後任ニ取締役馬越恭平氏就任、自今会員トシテ出席ノ旨届出ノ事
次ニ兼テ委員ニ付托シ置タル倉庫証券仕払保証小切手参着払為替手形印紙小切手呈示期間ノ件ニ付、爾来委員ハ再三ノ会同ヲ経、審究討議ノ結果、別紙ノ通報告アリタリト、其報告書ヲ朗読セシメ、本会ノ意見ヲ問ヒタルニ、桐島像一氏ハ委員会ニ於テ遺漏シタリトシテ委員報告書ノ外、別ニ倉庫証券取扱ニ関スル一ノ便法ヲ設ケタシト其意見ヲ陳ヘシカ、右ハ会長ヨリ法典調査会総裁ニ面陳ノ節同行シテ之ヲ陳述シタル方可然トノ事ニナリ、結局全会一致ヲ以テ委員報告ノ通是認スヘキ事ニ決シ、会長ヨリ法典調査会総裁ヘ面陳ノ時日ヲ打合、正副会長ノ内並委員ヨリモ両三名同行シテ其事情ヲ陳ヘ、当季議会中ニ希望ヲ達シ得ラルヽ様精々務ムヘキ事ニ決議シ、
次ニ東京明治銀行当集会所ヘ加入ノ件ハ多数ヲ以テ異議ナク之ヲ許スヘキ事ニ決セリ
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次ニ集会所職員増給並賞与金支給ノ件ヲ協議シタルニ、一同異議ナク正副会長ニ一任セリ
次ニ来三十三年新年会時日ヲ協議シ、一月十一日ニ決セリ
　　　　　　当日出席者
　　　　　　　　　　　第一銀行　　　渋沢栄一○外四五名名氏略

渋沢栄一　日記　　明治三三年
二月十五日
四時銀行集会所例月会ニ出席ス、此夜深川宅ニ帰宿ス

集会録事　自明治二十六年一月　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　○第二百回定式集会録事　　　　　　　　　　　(印)
明治三十三年二月十五日東京銀行集会所組合銀行第二百回定式集会ヲ開キ、出席シタル銀行四十二行其会員五十名ナリ
会長渋沢栄一氏会長席ニ着キ、左ノ二件ヲ報道セリ
一印紙税法中ニ一覧払為替手形ノ一項追加ノ件ハ兼テ当組合銀行ノ決議ニ依リ其希望ヲ当路ニ陳情セシカ、政府ヨリ之レヲ議会ニ提出スルハ敢テセサル所ナリト云フヲ以テ、頃日組合中諸氏ニ謀リ尚貯蓄預金通帳ヲ無税トスルノ件ヲモ併セ昨年来該件ニ付依頼シタル代議士諸氏ニ托シ、此程別紙ノ通衆議院ヘ提出シタル事
一倉庫預証券及支払保証小切手ノ件ニ付、旧臘二十二日法典調査会副総裁清浦奎吾氏ヘ依頼シタル結果、尚該件ノ運方ニ付更ニ別紙ノ書面ヲ差出シタル事
　（別紙）
　　　　印紙税法中追加案
　明治三十二年法律第五十四号印紙税法第四条第一項ノ次ニ「一一覧払為替手形印紙税壱銭」、同第五条第六項ノ次「貯蓄預金証券及通帳」ノ二項ヲ追加ス
　　　　理由
　　従来甲地ヨリ乙地ニ送金スルニ送金手形ナルモノヲ使用シタリシカ、印紙税法実施後ハ為替手形ヲ使用スルモノ少ナク、之カ為メ種々ノ弊害ヲ生シ、取引上不便尠ナカラサルヲ以テ、特ニ一覧払為替手形ノ印紙税ヲ軽減セラレンコトヲ望ム
　　又貯蓄預金ハ極メテ少額ノ金額ヲ取扱フモノニシテ、畢竟細民保護ノ趣旨ニ外ナラサルカ故ニ、其証券及通帳ニ限リ無税タル事ヲ希望ス
　　是レ本案ヲ提出スル所以ナリ

　曩ニ当銀行集会所決議ニ依リ、現行商法中倉庫証券ニ関スル規定修正及支払保証小切手ニ関スル法律ノ制定希望ノ旨親シク陳情仕候処幸ニ右希望ノ在ル所ヲ御諒察被成下候而已ナラス、猶場合ニ依リ追テ御下問ノ次第モ可有之哉ニ被仰聞候ニ付、爾後只管右希望ニ付御詮議ノ程切望罷在、一日モ早ク素志貫徹致候様相成度ト存居候次第ニ御坐候、仰願クハ当所希望御採択ノ御模様一応拝承仕度、最早当
 - 第6巻 p.480 -ページ画像 
期議会閉会ノ期モ漸ク切迫致候旁憂慮ノ余此段書面ヲ以テ奉拝願候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　恐惶敬具
　　　　　　　　　　　　　　東京銀行集会所会長
　　明治三十三年二月十二日　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　法典調査会副総裁　清浦奎吾殿
夫ヨリ株式会社両羽銀行東京支店加入申込ノ件ヲ報告シ、投票ヲ行ヒタルニ異議ナク許諾スヘキ事ニ決シ
○中略
右ニテ会議ヲ了リ晩餐ノ後同八時二十分散会セリ
　　　　　　当日出席者
　　　　　　　　　　第一銀行　　渋沢栄一○外五〇名氏名略