デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治42年4月23日（1909年）

是日開カレタル旧同会社臨時株主総会ニ於テ清算人ヨリ清算報告アリ、次デ残余財産分配ニ関スル件ヲ議定ス。栄一株主ヲ代表シ重役並清算人ニ対シテ謝辞ヲ述ブ。

竜門雑誌　　第二四〇号・第二八頁〔明治四一年五月二五日〕
○元日本鉄道株式会社臨時総会　元日本鉄道株式会社にては本月七日臨時総会を神田青年会館に開き、専務清算人山田英太郎氏より買収概算額決定以来今回決定に至るまでの顛末を報告し、青淵先生は株主一同を代表して鄭重なる謝辞を述べられ、以て清算人の功労を称揚せられたり、斯くて清算人、監査役報酬年額を一万円以内とする事、花瓶金銀盃等の御下賜品及寄贈図書等処分の事等を議決し、次に買収価額確定に就き、特別報酬金支出の件は委員を設けて調査することゝなり、青淵先生を始め根津嘉一郎・大橋新太郎・山中隣之助等十五名の委員を挙げ、委員は別室に於て委員会を開き、将来の準備金として七万五千円、清算人に七万五千円、所得税其他の問題に付き、特に援助を与へられたる人々に対する慰労謝金として十万円、合計二十五万円を支出し、其分配方法は清算人に一任することに決し、青淵先生は右委員会の決議を齎らして議場に報告したる処、満場一致にて委員の報告を可決し、之にて総会を閉会せり。

竜門雑誌　　第二五二号・第七七―七八頁〔明治四二年五月二五日〕
○日本鉄道会社清算の結果　日本鉄道会社にては四月二十三日午後一時より神田美土代町青年会館に於て、臨時株主総会を開きて清算報告を為し、残余財産分配に関する件を議定せり、当日専務清算人山田英太郎氏は清算の始末を報告し、鉄道国有の結果吾社の買収せられたる当時政府の算定価格は約一億三千六百万円なりしに対し、今日に於ける実際買収価額は一億四千二百万円と確定し、六百万円の増額を見るに至りたるは、吾等清算人の最も誇とする所にして、株主及び社会
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一般に公表するを憚らざる所なりと述べ、株主側に於ては深く清算人の尽力に感謝し、議題たる監査役増員に関する仮決議以下七件を一括して原案賛成に決し、最後に青淵先生は株主総代として、重役並に清算人に対し熱誠なる感謝演説をなし、午後三時半一同満足して散会せり、同会社残余財産分配方法を見るに、鉄道及兼業買収価額に対し政府より交付せらるべき公債総額金一億四千二百五十二万三千六百円を旧株（五十円払込）八十万株、新株（三十円払込）五十二万株、合計百三十二万株に割当て、一株に付公債額面金百二十二円四十四銭三厘、新一株に付公債額面金八十五円七十一銭宛分配し、株主全部に対する公債割当額合計の上に於て生じたる五十円未満の端数に対しては公債額面百円に付き九十二円の割合にて換算し、現金を以て分配をなし、四月以降清算結了に至るまでの清算費其他一切の経費を金五十五万千二百二十八円三十六銭九厘と算定し、右に対する仕払決済一切の処分を清算人に一任することとし、是を以て打切り計算をなしたり、然るに右の計算に依りて更に残余財産金三十四万九千二百円を生じたるを以て、之を総株数百三十二万株に割当て、旧一株三十銭、新一株二十一銭を分配することゝせり、尚ほ本年一月より四月に至る四ケ月分の政府交付金（国有法第十三条に依る）二百三十四万二千八百五十三円六十九銭九厘は、追つて政府より交付を受けたる上、旧株一株二円一銭二厘余、新株同一円四十銭八厘余を分配する筈なり。

鉄道国有始末一斑　　（逓信省発行）第八八六―八八七頁〔明治四二年一〇月〕
本鉄道ノ買収価額ハ鉄国第一八八号ヲ以テ兼業資産ノ買収価額ト共ニ大蔵省ニ合議ノ上明治四十一年四月十四日之ヲ決定シ、同日別記日本鉄道株式会社所属鉄道及兼業資産買収価額並公債交付額計算書ヲ添附シテ本会社ニ通達シ、同月二十三日鉄国乙第二二二号ヲ以テ臨時国債整理局ニ該計算書ヲ送付シ、次テ左ノ通之ヲ告示シ、又明治四十二年一月十六日鉄国乙第九号ヲ以テ同計算書ヲ鉄道院ニ送付セリ
　逓信省告示第五百一号
　日本鉄道株式会社所属鉄道及兼業資産買収価額並ニ公債交付額左ノ通リ決定ス
　　明治四十一年四月二十五日
　　　　　　　　　　　　　　逓信大臣　子爵　堀田正養
　　　　鉄道ノ部
　　一金壱億四千弐百四拾九万五千百弐拾円八拾弐銭壱厘
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　買収価額
　　一壱億四千弐百四拾九万五千百五拾円　　　　　　公債交付額
　　　　兼業ノ部
　　一金弐万八千四百拾壱円五拾銭五厘　　　　　　　買収価額
　　一金弐万八千四百五拾円　　　　　　　　　　　　公債交付額
（別記）　　日本鉄道株式会社所属鉄道及兼業資産買収価額並公債交付額計算書
　　一金壱億四千弐百五拾弐万参千六百円也　　　　　公債交付総額
　　　内訳○略ス
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鉄道国有始末一斑　　（逓信省発行）　第八九三―八九四頁〔明治四二年一〇月〕
鉄道国有法第十三条ニ依ル本鉄道会社ノ交付金ニ付テハ、買収価額算定上所得税其ノ他諸種ノ問題ノ解決ニ先タチ、本会社ヨリ概算渡ノ請求アリタルニ由リ、明治四十年六月二十八日鉄国第六六一号ヲ以テ左記日本鉄道買収価額及公債交付額概算調ノ如ク買収価額ヲ見積リ、之カ公債交付額ハ兼業ト併セ金壱億参千六百五拾参万九百五拾円トナシ同日之ヲ本会社ニ通達シ、並大蔵省ニ通牒セリ
　　　　日本鉄道買収価額及公債交付額概算調
　一金壱億参千六百五拾参万九百五拾円也　　　　公債交付総額
　　　内訳
　　　　鉄道之部
　　一金壱億参千百六拾六万壱千九百四拾五円参拾八銭也
　　　　鉄道国有法第五条第一項第一号ニ依ル六営業年度間ニ於ケル建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ弐拾倍シタル金額（第一号表）
　　一金四百六拾八万四千参百六拾参円拾五銭也
　　　　貯蔵物品実価及査定額ヲ時価ニヨリ公債券面金額ニ換算シタル金額（第二号表）
　　一金拾七万六千六百六拾八円六拾弐銭也
　　　　建設費査定額ヲ時価ニヨリ公債券面金額ニ換算シタル金額（第三号表）
　　合計金壱億参千六百五拾弐万弐千九百七拾七円拾五銭也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　買収価額
　　一金五千五百七拾六円六拾弐銭参厘也
　　　　鉄道国有法第六条第二項ニ依ル鉄道所属物件ノ補修ニ要スル金額五千円ヲ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額（第四号表）
　　差引金壱億参千六百五拾壱万七千四百円五拾弐銭七厘也
　　一金壱億参千六百五拾壱万七千四百五拾円也　公債交付額
　　　　兼業之部
　　一金壱万参千四百八拾四円参拾七銭七厘也
　　　　兼業支出実費金壱万弐千九拾円九銭弐厘ヲ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額（第五号表）
　　一金壱万参千五百円也　　　　　　　　　　公債交付額
　　　（別表略之）
此ニ於テ大蔵省ハ前記見積額ニ依リ之カ交付金ノ概算渡ヲナシタリ、其ノ金額左ノ如シ
　自明治三十九年十一月一日至明治四十年十二月三十一日交付金七百九拾六万七千四百弐拾弐円五拾五銭
其ノ後明治四十一年四月十四日ヲ以テ兼業ヲ併セ買収価額金壱億四千弐百五拾弐万参千五百参拾弐円参拾弐銭六厘、此ノ公債交付額金壱億四千弐百五拾弐万参千六百円ト決定シ、其ノ交付金年額金七百拾弐万六千百八拾円トナルヲ以テ、金参拾四万九千七百八円七銭ノ追給ヲナ
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セリ
　　○日本鉄道株式会社清算事務ニツイテハ其清算人等ヨリ、四十年六月八日所謂日鉄ノ六問題トシテ
　　（1）所得税非控除ノ件
　　（2）用地整理費振替計算ノ件
　　（3）無賃聯結郵便車ニ対スル料金ヲ益金ニ加算ノ件
　　（4）両毛線建設費ハ両毛線譲受価額ヲ以テ別計算トスル件
　　（5）未開業線建設費計算方ノ件
　　（6）収益勘定ヨリ他勘定ヘ流用シタル金額ニ対スル利子ヲ益金ニ加算ノ件
　　ノ六項ニツキ政府ニ交渉シ四十一年三月十四日円満解決スルニ至レリ（日本鉄道株式会社解散始末ニ拠ル）