デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
1節 綿業
2款 三重紡績株式会社
■綱文

第10巻 p.167-168(DK100021k) ページ画像

明治33年6月(1890[1900]年)

五月十日栄一男爵ニ叙セラルルヤ、是月当社ヨリ紅白ノ羽二重二匹ヲ贈リ賀表ヲ呈ス。


■資料

竜門雑誌 第一四七号・第九―一〇頁〔明治三三年八月〕 ○三重紡績会社の賀表(DK100021k-0001)
第10巻 p.167-168 ページ画像

竜門雑誌 第一四七号・第九―一〇頁〔明治三三年八月〕
    ○三重紡績会社の賀表
三重紡績会社は曩に先生の授爵を祝せんが為め、紅白の羽二重二匹を贈られ、之に添ふるに左の祝辞を以てせられたり
   祝賀文
 三重紡績株式会社取締役等謹て
 本社相談役正四位勲四等男爵渋沢栄一君の授爵を祝し、敬しく紅白羽二重二匹を呈し敢て称謝する所あらんと欲す、窃に思ふに此次君か新に 朝恩の渥きに浴せられたるは、其掛冠以降三十年商工業開進の木鐸に任し励精企図其面目を一新し、以て今日の盛を致したるの功績に因らすむはあらす、而して此慶や君の一家に止まらすして博く商工界に渉るの光栄なり、本社亦与つて一分の栄を荷ふ何の幸か之に如かむ、水を飲み源を思ふ情感の禁せざる所宜しく本社の経歴を略叙し、以て君の勲功を頌するの万分を補ふへし、恭しく惟れは君は夙に我紡績業に達観し二十年前に於て其拡張を奨励せられ、自来同業続々興起し各発達の情勢を以て製造售路互に畛域を設け競て奇利を博せむとす、此時に当り本社の発起人等は君を推戴して我北勢振興の為めに紡績業を起さむと欲し、十九年の春初て君の門に造り親しく馨咳に接し、君の一諾を領し以て本社の重きを為すこと千鈞啻ならさるなり、蓋君の眼中唯公益あるのみ、国家あるのみ、各社の奇利を私せむとするか如きは以て君の卓見を蔽ふに足らす、而して君は本社の企図を援助せらるゝの厚き、遂に進て創立委員に任し口講指画して計遺算なく、事皆宜しきを得て同年五月資本二十二万円を以て紡錘一万二三千本を装置すへき計を定め、尋て三十万
 - 第10巻 p.168 -ページ画像 
円に増額し、廿一年三月を以て数千錘の運転を開始し、爾来君か監督の切実なるを以て事業日に進み、漸次増資して廿二年八月に至り、資本七十万円紡錘大約三万本の一大工場と為り、廿六年更に一躍して百二十万円の資本と為し、名古屋に分工場を設けて大に紡錘を増添し、兼て織布の業を起し卅年二躍して資本を百五十万円と為し、津に分工場を開きて紡錘一万本を増添し、現今本支工場を通計して紡錘七万千本余、織器五百二十台を擁し挺然として同業の巨擘に居り、南北の分工場を両翼として紡績界に雄飛し、地方の一富源に任し当初の企図をして実効あらしむるもの、是皆君か指導の賜なり、而して今日君の祥慶を祝するに当り本社の経歴は以て君を頒するの事蹟と為り、君か国家に於ける勲功の一分は以て本社の経歴たるもの、本社か君に負荷する所洵に深重なりと謂ふべし、仰き願くは不腆の賀儀を斥けられす、併せて本社の徴誠を諒納せられむことを
   明治三十三年庚子六月吉辰