デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
4節 毛織物業
2款 東京毛織物株式会社
■綱文

第10巻 p.766-769(DK100071k) ページ画像

明治39年11月25日(1906年)

栄一、大倉喜八郎・日比谷平左衛門等ト共ニ東京毛織物株式会社ノ設立ヲ計画、是日東京商業会議所ニ於テ創立総会ヲ開ク。推サレテ相談役トナル。


■資料

中外商業新報 第七四五七号 〔明治三九年一〇月四日〕 新毛織物会社発起人会(DK100071k-0001)
第10巻 p.766 ページ画像

中外商業新報  第七四五七号 〔明治三九年一〇月四日〕
    新毛織物会社発起人会
渋沢男・大倉喜八郎・日比谷平左衛門諸氏、発起計画中の毛織物会社は既報の如く二日兜町渋沢事務所に発起人会を開きたるが、何事か遽に調査を要する事項出来し、右調査の結了の上にて事業進行の事に決定せりと云ふ


竜門雑誌 第二二一号・第五四―五五頁 〔明治三九年一〇月二五日〕 ○東京毛織物会社設立計画(DK100071k-0002)
第10巻 p.766 ページ画像

竜門雑誌  第二二一号・第五四―五五頁 〔明治三九年一〇月二五日〕
○東京毛織物会社設立計画 青淵先生を始め大倉喜八郎・日比谷平左衛門氏等の計画に係る東京毛織物株式会社は、本月九日午後より兜町渋沢事務所に於て発企人総会を開き定款の作成其他を決したり、同社総資本金二百万円は已に発企人其他内外の同業者に於て引受済となりたるに付、一般公衆に向て株式を募集せずと云ふ、創立委員には左の諸氏を挙げ事務所は当分日本橋区三代町日本煉瓦会社内に設くるよし
 委員長青淵先生、委員山中隣之助、日比谷平左衛門、高橋半兵衛、三木儀助、渋谷正吉、諸井恒平、鈴木純一郎、町田徳之助
因に記す、同社の目的は古毛織物を利用して下等毛織物を製織するに在り、我国が年々数百万円の毛織物を輸入しつゝありて其丈け廃物となる部分も亦少からざれども、目下之が利用の方法立たず孰も古洋服古毛布等を持余す状態にて、是迄溜り来れる廃物も少からざる可ければ、此等を利用し一方低廉に下等織物の供給をなして輸入を防き、他方廃物利用の途を講ずるは一国の利益となるもの夥しく、仮令一二年間は会社の純益挙らずとするも早晩相当の利を得べき見込あり、製織及び染色等に関しては既に十分の試験を経たりと云ふ


中外商業新報 第七五〇二号〔明治三九年一一月二七日〕 東京毛織物会社重役(DK100071k-0003)
第10巻 p.766-767 ページ画像

中外商業新報 第七五〇二号〔明治三九年一一月二七日〕
    東京毛織物会社重役
東京毛繊物会社は廿五日東京商業会議所に於て創立総会を開き、取締役及監査役は左の如く決定就任せり
 △取締役 日比谷平左衛門 渋沢篤二 高橋半兵衛 諸井恒平 鈴木純一郎
 △監査役 大橋新太郎 山中隣之助 町田徳之助
 △相談役 渋沢栄一
取締役互選の結果、諸井・鈴木の両氏就任し、当分社長は置かさるこ
 - 第10巻 p.767 -ページ画像 
ととなしたりと云ふ


竜門雑誌 第二二三号・第四四―四五頁 〔明治三九年一二月二五日〕 ○東京毛織物株式会社創立総会後報(DK100071k-0004)
第10巻 p.767 ページ画像

竜門雑誌  第二二三号・第四四―四五頁 〔明治三九年一二月二五日〕
○東京毛織物株式会社創立総会後報 同社創立総会の件に関しては前号に略報せる所なるが、猶詳細を聞くに当日(十一月二十五日)青淵先生は推されて議長席に着き、先づ創立委員より創立経過の報告あり異議なく之を承認して議事に移り、定款二十条に取締役会の決議により相談役を推選するを得るの一項を加へることを可決し、次で取締役監査役人数及選挙の件は渋沢本社々長を取締役に加ふるを条件として青淵先生に一任することとなり、其結果取締役に高橋半兵衛・諸井恒平・鈴木純一郎・渋沢篤二・日比谷平左衛門の五氏、監査役に大橋新太郎・山中隣之助・町田徳之助の三氏当選し、報酬額は総計八千円以内と決して次で右重役の就任挨拶ありたる後、取締役会に於て青淵先生に相談役を依嘱することに決したる旨の報告あり、其他商法の規定により検査其他二三の決議ありて三時二十分散会せり、取締役会長は当分欠員とし常務二名を置く筈にて鈴木純一郎・諸井恒平の二氏之に当るべしと云ふ


中外商業新報 第七六九二号 〔明治四〇年七月七日〕 東京毛織物会社紛擾(DK100071k-0005)
第10巻 p.767 ページ画像

中外商業新報 第七六九二号 〔明治四〇年七月七日〕
    東京毛織物会社紛擾
同社は予て、解散非解散の紛議あり、玆に臨時総会の開会を見るに至り、六日午後二時東京商業会議所に総会開催せり、鈴木純一郎氏開会を報じ諸井恒平氏議長席に就き、「今日の臨時総会は解散の如何を議し、事本社の存亡に関する問題故充分慎重の討議を望む」と述べ、次で解散問題の議事に入り杉野文弥氏は本案提出の理由を詳述し、夫れより各員種々の提議を為し頗る紛擾を加へしかば、前山久吉氏は一時協議会に転ずるの必要を述べ満場之を認め、協議会に転じ前山氏の発議にて解散派は其案を撤回し一方同社が将来に採るべき方針を決する為め、委員の選出を要すべく即交換的意味の案を出せしに反対者は止むなくば臨時会を継続会となすべき必要其他を述しも、遂に前山案に纏り更に本議に入りしに解散派は杉野氏に依りて本案を撤回し、再度の協議会に転じ諸井氏は満場に推されて前回協議会に定まりし委員十名を如左指名したり
 高松豊吉、佐久間福太郎、川崎栄助、渋谷正吉、前山久吉、井上静雄、中島喜之助、門田猪三郎、梅林福太郎、杉野文弥
以上の委員は資本を五十万円に減じ現払込を以て経営せんとする説出で居れば、是等資本の増減、若くは払込高を如何に決すべき乎を研究し、本月の定時総会迄に報告を為し其節併せて臨時総会を開き、其の報告に基き更に決議を為す都合なりと


竜門雑誌 第二三〇号・第一―二頁 〔明治四〇年七月二五日〕 新事業解散に就て(青淵先生)(DK100071k-0006)
第10巻 p.767-768 ページ画像

竜門雑誌  第二三〇号・第一―二頁 〔明治四〇年七月二五日〕
    新事業解散に就て(青淵先生)
○上略
毛織物の解散説 即ち此人気の変遷より新事業の中止若しくは解散説
 - 第10巻 p.768 -ページ画像 
を唱ふる者が多くなつたのでありませう、併しながら単に証拠金の払込に止まつて未だ産声を挙げぬ前なれば如何に残念と思うてもが株主と為るべき多数の人々の気合が、斯くまで冷え切つて中止解散を望むとあるからは余儀なき成行と諦めやうもあるけれども、彼の東京毛織物会社の如き誰れしも前途有望の事業なりと認めて進んで賛成し、既に第一回の払込を終へて創立総会を開き登記まで経て立派に成立を告げ、工場敷地の買収までして今や将に機械を購入せんとする矢先に於て解散説を聞くは真に寝耳に水の感なきを得ぬ、新事業を発起する人賛成する人は孰れも事業界幾多の困難に遭遇する位の覚悟があつて、始めて発起もし賛成をせられたものと自分は信ずる、然るに新事業門出の第一歩に於て時ならぬ波瀾に遭遇したりとて、倐ち意気銷沈して船を漕ぎ戻さうとは如何にも腑甲斐ない、斯くも日本の商工業家は薄志弱行なるかと誹られても何と云訳の致方もあるまいかと思はれる、勿論自分とても情に於ては重々中止解散を希望する方々の心情を酌まぬ次第ではないけれどもが、事業の前途国家永遠の富源如何を想うて眼前の困苦を忍んで欲しいと思ふ、否轍鮒の急前途を楽む暇がないと云ふ事情かも知れぬが、如何にも不面目の次第にもあり折角成立したる事業は、独り東京毛織物会社に限らず起業家の徳義心日本商工業家の品位に顧みて、是非とも他日の成業を期せられんことを希望せざるを得ん次第であります


渋沢栄一 日記 明治四〇年(DK100071k-0007)
第10巻 p.768 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治四〇年
一月二十八日 晴 寒          起床七時三十分
                    就蓐十一時三十分
○上略 午後一時商業会議所ニ抵リ、毛織物会社煉瓦会社等ノ株主総会ヲ開キ ○下略
五月二十九日 曇大風 暑        起床七時
                    就蓐十一時三十分
○上略 午前十一時兜町事務所ニ抵リ ○中略 畢テ毛織物会社重役ノ人々ヨリ重要ノ談話アリ○下略
五月三十一日 晴 暑          起床七時
                    就蓐十一時三十分
○上略 午前十時兜町事務所ニ抵リ ○中略 畢テ毛織物会社ノコトヲ談ス ○下略
八月二日 晴 暑            起床六時三十分
                    就蓐十一時三十分
○上略
朝、諸井・鈴木二氏来リ毛織物会社ノコトヲ談話ス
八月十七日 晴 暑           起床六時
                    就蓐十一時三十分
○上略 諸井恒平氏来リ、毛織物会社ノコトヲ談ス ○下略



〔参考〕渋沢栄一 日記 ○明治四三年(DK100071k-0008)
第10巻 p.768 ページ画像

渋沢栄一 日記
 ○明治四三年
六月十六日
十二時千住毛織物会社ニ抵リ、鈴木純一郎氏・日比谷・諸井・町田諸氏ト共ニ工場ヲ一覧シ、会社員一同ニ面会シ一言ノ訓示ヲ為ス

〔参考〕渋沢栄一 日記 ○明治四四年(DK100071k-0009)
第10巻 p.768-769 ページ画像

 ○明治四四年
九月二十日
 - 第10巻 p.769 -ページ画像 
諸井恒平氏来リ ○中略 毛織物会社ノ件 ○中略 等ヲ談ス

〔参考〕渋沢栄一 日記 ○明治四五年(DK100071k-0010)
第10巻 p.769 ページ画像

 ○明治四五年
一月十二日
諸井恒平氏来リ煉瓦会社ノコト、毛織会社ノコトヲ談話ス