デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治14年1月28日（1881年）


 - 第11巻 p.487 -ページ画像 

是迄本局構内空地ヲ無代貸与セル耐火煉瓦製造所ノ借地期間ヲ更ニ五ケ年間延期セラレンコトヲ製造主西村勝三ヨリ願出デタルガ、府庁之ヲ許サザルニ依リ、西村勝三再願ニ及ベリ。是日栄一瓦斯局長トシテ、其事情巳ムヲ得ザルニ因リ明治十五年中ヲ限リ該地所ヲ貸与セラレ、且尚同人ヘ耐火煉瓦石壱万本ヲ注文シ度旨府知事松田道之ニ伺出デ許サル。而シテ明治十五年十二月満期トナルヤ西村勝三再ビ尚六ケ月間延期サレンコトヲ出願シ又許サル。

瓦斯局書類　明治十四年会計課　　　　　　　　（東京府庁所蔵）
　　　　西村勝三当局構内煉化製造場地所
　　　　拝借延期之義上申
予而西村勝三ヘ耐火煉化製造場之為メ、構内海岸地貸与有之候処、先頃増瓦斯竈用之煉瓦ハ悉皆上納済ト相成、更ニ右場所五ケ年間拝借之義願出候ヘ共、可成構内之地所他人ヘ貸与之義ハ取締上ニモ関係有之候付、難聞届旨ヲ以テ書面一応返却致候処、該場ハ仏人ヘレケレン土質ヲ発見シ之ニ充分之使用方ヲ伝習建築致シ候義ニ而未ダ一両年ハ保存相成候竈ニ付、即今取除候節ハ付属之品々も悉皆癈物ト相成難渋之趣申出、有用物ヲ癈シ候義ニ而事実無拠次第ニ相聞ヘ、且右煉瓦ハ当局必需之品ニも有之、此際製造方注文致シ度存候ニ付、右製造皆納迄地所貸与致シ猶実際竈保存之見込も候ハヽ、或ハ明治十五年中ヲ限リ貸与致シ可然哉、此段奉伺候也
　　明治十四年一月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　瓦斯局長　渋沢栄一　東京瓦斯局長之印章
　東京府知事　松田道之殿

（別紙）
　　　　再願書
予而瓦斯局御構内明地拝借仕、御同局御入用堪火煉瓦製作罷在、昨年五月廿六日ヲ以テ御約定高皆納仕候、後引続御地所拝借奉願候処、御聴届難相成旨被仰渡奉畏候、然ル処右御地所中ニ築地罷在候煉瓦焼竈之義ハ、他所エ移転仕候ハ新規築造同様之費用相掛リ難渋仕候ニ付、甚奉恐入候次第ニ候得共、最初御傭工師ペレゲレン氏粘土ヲ内地ニ発見仕、爾後製煉上数十回之試験研究ヲ以テ遂ニ洋品ニ代用スルノ品種ヲ製出仕ニ付而者、冗費モ不尠ニ付何卒事実御諒察被成下、特別之御詮義ヲ以テ今後弐ケ年間、右煉瓦窯保存之間、右御地所拝借御允許被成下度、此段再応奉懇願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　京橋区築地壱丁目壱番地
　　明治十四年一月十四日　　　　　　　　　西村勝三　(印)
　瓦斯局長
　　渋沢栄一殿
（別紙）
 - 第11巻 p.488 -ページ画像 
　　　　西村勝三ヘ耐火煉化注文之伺
一金千三百円也　　　　耐火煉化並寸壱万本
　　内　　　　　　　　壱本ニ付拾三銭かへ
　　　　金千円前渡ニ致度候
右西村勝三製造之耐火煉瓦ハ外国品ト匹敵相成候品ニ而、当局竈用ニ者年々多分之入用も有之候処、外国品ヲ購買仕候ヘ者現今壱個ニテ紙幣拾六銭已上ニ相当リ、同人製造之分ハ拾三銭ニテ製造可致旨申出候付、今般別紙約定書之通リ壱万個注文申付度奉存候、就而者兼而御聞知相成候旧会議処関係之頃、川島半十郎より当局ヘ可相納砕粉石炭未納分百三拾四噸三分七厘、此代金九百七拾七円弐拾三銭西村勝三引受ト相成候処、一昨年来より再々納メ方督促仕候ヘ共、難渋之趣申立今以納方不相成、然ルニ当人手元不如意ニ而何分片付兼候ニ付而者、同人製造之耐火煉化代ヲ以テ石炭代価之分ハ納方仕度旨願出、不都合之次第ニ者候ヘ共、現今之場合ニテハ到底右御聞済被成下候外有之間敷被存候付此段上申仕候、本文御裁可之上者煉化製造納方共厳重ニ取計可仕該費出方之義ハ竈修繕之節口々ヲ以テ精算上申可仕候、早々何分之御指揮被成下度候也
　　明治十四年一月廿八円
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　瓦斯局長　渋沢栄一東京瓦斯局長之印章
　東京府知事　松田道之殿
（朱筆）
書面伺之趣無余儀次第ニ相聞ヘ候ニ付、特別之訳ヲ以テ聞届候条、煉瓦代価前金並該品皆納之上残金受取方共会計課ヘ可申出事
　　明治十四年二月十　《（原本欠字）》日
　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　松田道之
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京瓦斯局用紙）

明治十四年二月十日出　　　　　　　　　　　一等属　荒木功(印)
　　　　（松田）　　　　　　（銀林）
知事印　　書記官(印)　　　　会計課(印)(印)(印)
堪火煉瓦製造場及ヒ堪火煉瓦注文等之儀ニ付、瓦斯局長ヨリ別紙二通上申有之、右堪火煉瓦之儀ハ従前舶来品相用居候処、啻ニ其高価ノミナラス航海陸揚等ニテ毀損不少候故、内国ニ於テ製造可致存候際、去明治九年中増瓦斯用パイプ鋳造方之儀ニ付小官瓦斯工師局員等、上州甘楽郡中小坂鉱山ヘ出張被命、帰途同州乗付村ニ於テ工師ペレゲレン氏堪火煉瓦質ニ適スル粘土ヲ発見シ、帰京之上当時瓦斯局事務副長タリシ西村勝三ト相謀リ数回試験之末、竟ニ外国品ニ譲ラサル堪火煉瓦ヲ製出スルコトヲ得、於是府庁之誘導ト、工師ノ奨励トニ因リ西村勝三、此製造ノ事ヲ引受ケ瓦斯局構内ニ於テ製造所ヲ建設シテ其使用ニ供セシニ、同人ハ副長之故ヲ以テ貸与之期限等モ定メス製造之事ニ従事シ、既ニ瓦斯製造所増築ニ付堪火煉瓦三万五千個、其余異形ノモノ若干ノ代価合金三千七百円余ヲ同席ニテ購買シ、輸入之煉瓦ヲ仰カスシテ瓦斯竈ヲ増築スルコトヲ得タリ、右之如ク内国創製ノ物ヲ用ヒテ
 - 第11巻 p.489 -ページ画像 
復海外ノ輸入ヲ須タサルノ顕功アリシト雖、元来創始之業ニ属スルヲ以テ其試験ヨリ製造所建設之費等、許多ニシテ得失相償ハス困難之趣ニ相聞ヘ、且当初無期限ヲ以テ貸与候ニ付、今更遽ニ立退等申付候テハ弥以難渋ニ至ルヘク存候間、局長伺出之通現存之竈保存セラルヽ迄ヲ期シ、即チ来明治十五年中貸与之儀御許容相成可然哉、且又堪火煉瓦壱万本買入之儀ハ差向キ必需之物ニハ無之候得共、旧会議所以来西村勝三引受石炭代価未納金九百七拾余円之分、同人失敗後家計困難且其引受ニ就テ種々之事情モ有之、返納方今日迄遷延到底埒明キ候目途無之候ニ付、此度煉瓦買入之事ニ取極其前金千円ヲ渡シ其金員ノ内ヲ以テ未納金返納為致候ハヽ、双方都合ヨク落着可致、尤右製出之煉瓦壱万本ハ当府瓦新局並ニ横浜瓦斯局ニテ使用致候ハヽ、凡一年半間之有之需用ニ充ルニ不過且外国輸入品ヨリハ低価ニ有之従前横浜瓦斯局ヘ該所製造之煉瓦譲渡候事モ有之且廉価ノ故ヲ以テ同局ニ於テ譲受ヲ乞フハ必然ノ事ト存候旁以不得止次第ニ付、是亦局長上申之通御裁可相成可然哉、依テ御指令案左ニ取調相伺候也
　　　　案　製造所貸渡上申之分
書面上申之趣聞届候事
　　　　同　煉瓦注文伺之分
書面伺之趣無余義次第ニ相聞ヘ候ニ付、特別之訳ヲ以テ聞届候条、煉瓦代価前金並該品皆納之上残金受取方共会計課ヘ可申出事
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府庁回議用用紙）

瓦斯局書類　明治十六年会計課　　　　　　　　（東京府庁所蔵）
　　　　願書
予テ瓦斯局御構内拝借仕、堪火煉瓦製件罷在候御地所、昨年十二月迄拝借仕度奉願候処、御聴届被成下引続就業罷在難有仕合奉存候、然ルニ昨年十二月限リニテ右場所引払可仕筈ニ御座候処、諸方ヨリ製品注文之仕残モ多少有之一時ニ引払候ハ甚難渋仕候間、本年六月迄之御融余ヲ以テ右製造場他所ヘ移転改築相成候迄引続拝借御允許被成下度奉歎願候也
　　明治十六年一月廿日
　　　　　　　　　　　　　　　築地壱丁目壱番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西村勝三(印)
　瓦斯局長　渋沢栄一殿

（朱書）
第八三号
　　　　局構内地所貸渡延期之儀伺
当局構内東海岸地先之内、予テ西村勝三ヘ堪火煉化製造場トシテ明治九年御貸渡相成、満期后去十四年一月ヨリ昨十五年十二月迄、更ニ延期御許可ヲ経聞届置候ニ付、昨年十二月中右製造場引払地所返納之儀屡々申談之末、猶六ケ月間延期申出候ハ、無余儀事情且少月数ニモ有之、旁申出之通再延期致度西村勝三申出書相添、此段仰御指揮候也
　　明治十六年二月十日
　　　　　　　　　東京瓦斯局副長　藤本精一東京瓦斯局副長藤本精一
　東京府知事　芳川顕正殿
 - 第11巻 p.490 -ページ画像 
　明治十六年二月十三日出　　　　　　　　　　　　　会計課
瓦斯局構内海岸付地所堪火煉化石製造場トシテ明治九年ヨリ西村勝三ヘ貸渡候処、十五年十二月満期ニ付該局ヨリ引払方督促之末、本人ヨリ尚六ケ月間延期出願ニ及候段、該局副長ヨリ申立有之取調候処事実無余儀相聞、尚又他ニ支障之廉も有之間敷被存候間、副長伺之通御聞届相成可然哉御指令案共相伺候也
　　　　案
　書面伺之趣聞届候事
　　年月日　　　　　　　　　　　　　　　　　　長官

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