デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治31年1月26日（1898年）

当会社営業状態漸ク順境ニ入リ、連年ノ損失ヲ補塡シ負債ヲ消却シ、始メテ年一割ノ利益配当ヲ行フ。此ノ間栄一、会長トシテ尽力スル所多シ。

（日本煉瓦製造株式会社）営業報告　　第一八回（明治三一年一月）
　　　　明治三十年下半期利益金分配案
一金弐万九千九百六拾弐円〇六銭也　　　本期間純益金
一金壱万弐千六百弐拾弐円五拾五銭也　　前期繰越金
　　合計金四万弐千五百八拾四円六拾壱銭也
　　　　　内訳
　　　金壱万弐千弐百五拾六円参拾九銭也　　株主配当金
　　　　但旧株壱株ニ付金弐円五拾銭新株壱株ニ付金弐円九銭四厘
　　　　即年壱割
　　　金壱万四千八百七拾円四拾七銭壱厘也　故隅山尚徳貸金損失及池田栄亮未払込株金損失並ニ船舶売却差損消却金
　　　金六千円也　　　　　　　　　　　　　准備積立金
　　　金参千円也　　　　　　　　　　　　　役員賞与金
　　　金六千四百五拾七円七拾四銭九厘也　　後期繰越金
　　　　　　〆

（日本煉瓦製造株式会社）営業報告　　第十九回（明治三一年七月）
 - 第11巻 p.554 -ページ画像 
　　　　株主総会
明治三十一年一月二十六日第一銀行楼上ニ於テ株主通常総会ヲ開キ、前期間ノ営業報告ヲ為シ、利益金ノ分配ヲ旧株一株ニ付、金弐円五拾銭、新株壱株ニ付金弐円九銭四厘（年一割）ニ議決セリ

青淵先生六十年史（再版）　　第二巻・第二五〇頁〔明治三三年六月〕
　○第四十二章第二節　日本煉瓦製造会社
　　　　青淵先生ト我社トノ関係（諸井恒平述）
○上略　皇天亦吾々ノ微衷ヲ憐マレ、社運振興ノ天使ハ吾社ノ頭上ニ降臨セラレケン、此ノ鉄道ノ成功ト前後シテ日清戦争将サニ終局ヲ告ケントシ、諸般ノ事業漸ク活気ヲ帯ヒ来リ、煉瓦ノ如キモ鉄道ニ、工業ニ需用ノ途漸次頻繁ヲ加ヘ、三十年ノ上半期ニ入リテハ俄然トシテ春蕾ノ一時ニ発ラクカ如ク、未曾有ノ盛況ヲ呈スルニ至レリ、吾社ハ此ノ一期ニ於テ実ニ数万円ノ収益ヲ得、従来ノ損失及ヒ社債若干ヲ償却シ尚ホ年一割ノ配当ヲ為スヲ得タリ、是レ吾社カ創業以来利益配当ヲ行ヒタル嚆矢ナリ
○下略
　　○コノ頃ヨリ社業極メテ順調ニ発展シタルヲ以テ、特ニ栄一ノ配慮ヲ患シタルコトナシ。（諸井恒平氏談話ニヨル）

（八十島親徳）日録　明治三五年　　（八十島親義氏所蔵）
十二月六日　曇夜雨
本日ハ男爵ハ全快ニテ上敷免ニ赴カル、煉瓦会社十五年祝式臨場ノ為ナリ

（八十島親徳）日録　明治四一年　　（八十島親義氏所蔵）
七月二十一日　晴
今日ハ日本煉瓦製造会社ノ総会ヲ上敷免工場ニテ開会スルニ付、八時廿五分上野発車ニテ赴ク、男爵・諸井兄弟・日比谷氏・竹井澹如氏等皆来リ会ス、予ハ初メテナルガ先ツ工場ヲ視、其規摸ノ壮大ニ驚キタリ、敷地五六万坪、今資本金三十万円積立金十余万円ニ過キサレトモ実際此工場ヲ現今新調スレハ百万円以上ノ価格アルベシ、総会後食事饗応、次ニ男爵ノ既往懐旧談（会社ノ沿革ニツキ）アリ、終テ揮毫不相変親切ナリ

渋沢栄一　書翰　　諸井恒平宛（明治三五年？）二月二五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（諸共恒平所蔵）
拝啓、昨日御遣之議案一覧候処、増株之半高を使用人ニ引受権利を付与するハ老生異議無之候得共、其分割方法ハ取締役会ニ於て之を定むるものといたし候方相当と存候、もし誰も之を相望候より競争之弊ニても相生し候ハヽ、分割方ニ不公平を生する恐有之哉ニ候、御再案可被下候
煉瓦要説ニ対する書状ハ更三相認め封入仕候、御落手可被下候、右申上度　匆々不一
 - 第11巻 p.555 -ページ画像 
　　二月廿五日　栄一
　　　恒平様
　　○煉瓦要説（諸井恒平著）ノ出版年月ハ明治三十五年九月ナルヲ以テ、此書翰ハ同年ナリト推定サル。

渋沢栄一　書翰　　諸井恒平宛（明治三五年）五月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（諸井恒平氏所蔵）
拝啓、益御清適是賀、然者過日御托有之候煉瓦要説ニ序文之事ハ、御承知之如く出立前日々多忙何分出来兼候ニ付御容捨可被下候、併此煉瓦事業ニ付而ハ老生も従来貴台と共ニ種々之辛酸を嘗めたる次第ニて十数年御精励之結果其事業も進歩いたし、且今日此著あるに至りしハ貴台之御尽瘁ニ依るものにして、老生も常々感佩致居候義ニ御坐候、蓋し業精于勤と申韓愈之言も比等を意味せし義と存候、依而陳謝旁一書申上候　匆々敬具
　　五月四日　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　諸井恒平様
　　　　　　　　梧下
　　○右書翰ハ諸井恒平ガ「煉瓦要説」ヲ出版スルニ際シ、序文ヲ請ヒタルニ寄セシモノニシテ、諸井ハ該著ニ写真版ニシテ掲ゲタリシナリ。是年五月十五日、栄一欧米視察ノタメ横浜ヲ出帆シ、十月末帰朝ス。

渋沢栄一　書翰　　諸井恒平宛（明治三五年）一一月二五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（諸井恒平氏所蔵）
貴翰拝見仕候、然者煉瓦会社之為来月初旬ニ地方出張之事ハ七日ハ何分差支候ニ付御断申上候、尤も六日八日とも只今之処ハ別ニ約束無之候得共、早く決定せされハ又故障相生し候哉も難測と存候、又同日出張之際如何なる手続ニて地方之人々とハ何様之談話致候都合ニ哉、前以其趣旨篤と御打合致置度候間、御取調之上御申越可被下候
右之段御答旁再応申上候　匆々不一
　　十一月廿五日　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　諸井恒平様
　　○追書略ス。

渋沢栄一　日記　　明治三五年
十二月六日　曇夜ニ入リ雨降ル
此日ハ煉瓦会社ニ於テ園遊会ノ催アルヲ以テ午前七時ノ汽車ニテ上敷免村ニ抵ル、九時過深谷駅着、夫ヨリトロリー車ヲ以テ工場ニ抵リ園遊会ニ出席ス、近傍ノ村民来集ノ際ニ於テ一場ノ演説ヲ為シ、夕方工場ヲ辞シ午後五時王子別荘ニ帰宿ス、此日煉瓦会社ヨリ案内状ヲ発セシハ近傍各村民約三百名許リニテ来集スル人々ハ無慮四五百名ナリト云フ

渋沢栄一　日記　　明治三六年
四月十五日　曇　風
○上略　日本鉄道会社ノ各課長ヲ煉瓦会社ニ於テ招宴スルニ付、十数人来
 - 第11巻 p.556 -ページ画像 
会セラル、夜ニ入リ種々ノ饗応及余興等アリテ一同歓ヲ尽シテ去ル

渋沢栄一　日記　　明治三七年
三月二日　曇
○上略　午後諸井恒平来リテ煉瓦会社ノ営業方針ヲ協議ス○下略