デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治16年2月6日（1883年）

是日栄一瓦斯局長トシテ、営業資金並ニ家内瓦斯引用枝管埋布ノ儀ニツキ府庁ニ上申ス。仍テ府庁区部会ニ諮リタルニ前項ノ上申ハ否決サレ、後項ノ上申ハ取付費金三千円ハ本局経費定額ノ内ニ組込ムコトニ修正可決サレ、其予算金額ヲ目途ニ取付方ハ都テ本局ニ委任スル旨達セラル。

瓦斯局書類　明治十六年会計課　（東京府文庫所蔵）
（朱書）
第七十二号
　　　　営業資金並家内瓦斯引用埋布之儀ニ付伺
当局経費ハ其費途ヲ要スルニ際シ時々府庁ニ請求之上支払致シ、収入金ハ日々ノ収入ヲ二十日或ハ壱ケ月ヲ合セ納付致候ニ付、其年度之終局ヲ為スハ五六ケ月或ハ七八ケ月ヲ経過候ニ拠リ、府庁ニ於テハ其年度ノ収入支出相償ハサル旨屡々督責ヲ蒙ルト雖、経費其佗一ケ月両度ニ之ヲ支出スルハ必ス其定日ヲ違フ能ハス、殊ニ石炭ノ如キハ少クモ二三ケ月間ノ消費額ハ貯蓄致シ置候ニ付、予定相成候経費金額ハ其年度中繰揚支出スルノ有様ナルニ、収入ハ之ニ反シ通常二ケ月間ヲ経過セサレハ収入完結相成兼、依テ支出ハ年度末月前既ニ請求済相成候モ収入ハ年度ノ末四五ケ月ヲ経過セサレハ完納難致、故ニ不得止新旧交代シテ常ニ当局ヘ操替御渡シ相成居候金額ハ平均七八千円以上ニ有之候間、更ニ明治十六年度ノ初ニ於テ当局営業資本トシテ金壱万円御下附相成、而シテ毎月収入ノ受納ヲ止メ、経費及石炭費等ヲ請求不致、其資本金ト月々収入ノ金額ヲ以テ相弁シ置、其年度ノ収支差引利益金ハ必ス十月迄ニ悉皆納付可仕候様致度、右ハ十六年度ニ於テ金壱万円ノ支出ヲ仰クモ爾後臨時費ヲ除クノ外ハ繰替其佗費途ノ要件無之、当局ニ於テハ石炭等ヲ買収スルモ臨機処断スルヲ得、且請求及納付等ノ手順ヲ省略セハ一挙両全ニ存候、而シテ各家引用枝管費之儀モ目途金弐拾円已内ニシテ伺済、消却期限内ノ者ハ適宜埋布スル事ヲ御委任相成度、右ハ営業資本ノ内ヲ以テ繰替支弁シ其年度決算ニ至リ其精細ヲ具申シ請求仕候様相成候得ハ、処務ノ順序モ大ニ改良可仕見込ニ付、右営業資本御下附並枝管費適宜支弁ノ両条御許可相成度此段相伺候也
 - 第12巻 p.543 -ページ画像 
　　明治十六年二月六日
　　　　　　　　　東京瓦斯局長　渋沢栄一　東京瓦斯局長之印章
　東京府知事　芳川顕正殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京瓦斯局）

瓦斯局書類　明治十六年会計課　（東京府文庫所蔵）
明治十六年二月　日受月七日出　七等属　服部敏(印)
　　（芳川）
　印　(印)
　知事　　　　　　書記官　　　　　(印)会計課(印)(印)(印)
瓦斯局営業資本金トシテ十六年度之始メ金壱万円ヲ請求シ該局収入金ヲ合セ全年度之経費ニ充用致度段、並ニ家内引用枝管取付費壱廉金弐拾円以内ニシテ制規ノ通リ五ケ月以内ニ其費額ヲ消却シ得ヘキモノハ該局ニ於テ適宜処弁致度旨別紙局長ヨリ及上申取調候処、右両件ハ十六年度共有金収支予算議案中ニ掲載シ、同年度通常会決議之後何分之御指令相成可然哉、此段相伺候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府庁回議用）

瓦斯局書類　明治十六年会計課　（東京府文庫所蔵）
明治十六年六月　日受月廿三日出　七等属　服部敏(印)
　（芳川）
　印　(印)　　　　　　(印)会計課(印)(印)(印)
　知事　　　　　　書記官　(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　調査掛印(印)(印)(印)(印)
瓦斯局営業資金年度之始メ御下渡相成、右金額ヘ該局収入金ヲ併セ全年度之経費ニ充用致度段、並家内引用枝管取付費壱廉金弐拾円以内之分ハ適宜処分致度旨副長ヨリ上申ニヨリ既ニ臨時会ニ付セラレ候処、営業資金之儀ハ否決ニ対シ御認可相成候ニ付御許可難相成被存候、枝管取付費金三千円ハ該局経費定額之内ニ組込候事ニ修正可決セリ、就テハ右取付費壱廉分金額之多少ニ不拘、其工事ハ都テ該局ヘ御委任相成、費金ハ其都度請求書並仕訳書為差出渡方取計候テ可然哉、前顕二廉之御指令案左ニ相伺候也
　　　　案
　書面伺之趣営業資金之儀ハ認許難相成、家内引用瓦斯枝管取付方ハ都テ其局ニ委任候条、予算金額ヲ目途ニ工事取計、其都度請求書仕訳書ヲ以金員請取方申出候儀ト可相心得事
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　　長官
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府庁回議用）