デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
7款 東京銀塊取引所
■綱文

第14巻 p.265-273(DK140025k) ページ画像

明治31年2月10日(1898年)

東京銀塊取引所創業総会開カレ、栄一等五名ニ相談役ヲ委嘱スルコトヲ決ス。栄一諾ス。


■資料

中外商業新報 第四八二五号〔明治三一年三月一五日〕 東京銀塊取引所相談役の承諾(DK140025k-0001)
第14巻 p.265 ページ画像

中外商業新報 第四八二五号〔明治三一年三月一五日〕
    東京銀塊取引所相談役の承諾
東京銀塊取引所にては、去月十日の創業総会に於て、相談役五名を置き、之を渋沢栄一・大江卓・今村清之助・米倉一平・渋沢喜作の五氏に嘱托することに決せしが、其内渋沢栄一・今村清之助・渋沢喜作の三氏は其当時既に承諾し、又大江・米倉の両氏も此程承諾したりといふ


竜門雑誌 第一一八号〔・第五一頁 明治三一年三月二五日〕 竜門社記事(DK140025k-0002)
第14巻 p.265 ページ画像

竜門雑誌 第一一八号 〔明治三一年三月二五日〕
    竜門社記事
◎青淵先生 先頃奠都三十年祝賀会の副会長に推され、是と前後して農商工高等会議々長に上任の内命あり、是より先東京銀塊取引所の相談役たることを承諾せられ、又近来専ら東京市養育院感化部の創設に尽力せられ居る由なり



〔参考〕銀行通信録 第一四〇号・第一二八頁 〔明治三〇年七月一五日〕 ○東京銀塊取引所の売買法(DK140025k-0003)
第14巻 p.265 ページ画像

銀行通信録 第一四〇号・第一二八頁 〔明治三〇年七月一五日〕
○東京銀塊取引所の売買法 商品取引所派と中野氏等の一派との合同に成りたる東京銀塊取引所は今明日中発起認可申請書を提出する由なるが、銀の取引所売買は我邦に於る嚆矢とて発起人諸氏は殊に慎重に其売買法を調査し漸く大体を決定したりと云ふ、今其要点を記すれば左の如し
 (一)売買に供する地銀は九百二十五位のものならざるべからず
 (二)売買には英量を用ゐ百オンス建とし呼直は一オンスを以てす
 (三)外国銀貨も地銀として売買し其純分量目に随ひ格附を以て受渡を為す
 (四)七百五十位以上の地銀は格附を以て受渡に供することを得
売買標準とする銀を九百二十五位と定めしは倫敦銀塊取引所の法に則りしものにて紐育に於ては九百位と定むと云ふ、而して売買単位をオンスとせしは世界銀市場の枢軸たる倫敦の銀相場一オンスにて立つを以て便宜のため斯くは為したるなりと云ふ、又同取引所の位置に就ては未だ決定の運に至らざる由


〔参考〕銀行通信録 第一四三号・第一四六頁 〔明治三〇年一〇月一五日〕 ○東京及横浜に於ける銀塊取引所の認可(DK140025k-0004)
第14巻 p.265-266 ページ画像

銀行通信録 第一四三号・第一四六頁 〔明治三〇年一〇月一五日〕
○東京及横浜に於ける銀塊取引所の認可 元来銀塊相場の高下は外国貿易に至大の影響を及すは勿論頃日の如く銀価の変動甚しきに於ては
 - 第14巻 p.266 -ページ画像 
将来我国より銀貨国に対する貿易上大に憂ふべきものあり、然れとも之か相場は是迄一に倫敦市場の左右する所となれり、然るに我国は今回幣制を改革せるを以て一層銀相場の高下より多大の影響を被むるべきに、奈何して之を救治し東洋貿易上の優勢を持続せんかは夙に識者の憂ふる所なりしか、畢竟するに我国にて銀相場を立て対清貿易者の如き予め銀の高下を計りて取引契約を為さば銀価の変動に依て生する損失を免かるゝこととなるべしとの説あり、終に有志者の発起する所となり其筋に許可を申請するに至りしか、引続き二三の出願者もありたれとも、当局者の注意に依つて終に中野武営氏一派及東京商品取引所が合併出願することとなし、其分は去月十三日を以て農商務省より発起認可を与へられたれば、同十五日直ちに発起人会を開らき市場の撰定其他該設立許可に至る迄一切の件を中野武営氏其他五名に委托したる由なり、又横浜とても続々出願する向ありしも発起人中無資格の者多く、為に単に四品取引所及谷川派の合同出願に係る分のみ去る六日発起認可の指令ありたりと云ふ、此等の取引所愈々設立せられ予期の如く良果を奏するに至らは我国経済界の為喜ふべきなり


〔参考〕銀行通信録 第一四四号・第一六一―一六二頁 〔明治三〇年一一月一五日〕 ○東京銀塊取引所創立の由来及取引方法の概要(DK140025k-0005)
第14巻 p.266-267 ページ画像

銀行通信録 第一四四号・第一六一―一六二頁 〔明治三〇年一一月一五日〕
  ○東京銀塊取引所創立の由来及取引方法の概要
銀塊取引所の事に関しては前号に記す所ありしか、今其由来及方法の概要を左に掲げん
東京銀塊取引所創立の計画は、東京商品取引所が去明治廿八年二月十九日附を以て同取引所定款第五条金属の部を改正し金銀取引認可を主務省に申請したるに始まりしも、其願書は同年七月十八日附を以て却下せられ、次で同年九月廿六日に至り中野武営氏外廿六名より金銀取引所設立の発起申請を為し、又商品取引所にても之に後るゝこと数日にして同月卅日第二回の請願を為せしも、商品取引所の出願は同年十一月廿一日、又中野氏等の出願は同年十二月廿八日に至り並に再び不認可となりしも、双方の発起者共当初の意旨を貫徹せんことを期し、中野氏等は廿九年一月廿八日附を以て第二回の申請を為し、又商品取引所にても同年八月廿九日を以て第三回の請願を為したるに、金塊取引は到底詮議に及び難き旨其筋の命ありしより、中野氏等は今年四月五日を以て前願書を銀塊取引所と訂正して第三回の出願に及びたるが五月二十七日に至り更に其筋より双方発起者に対し合同して出願すべき旨口達ありたるより、双方発起者等は玆に始めて交渉の末合同を為し、四十万円の資本金を以て銀塊取引所を創立することゝし、更に七月九日附を以て主務省に申請したるに、九月十三日に至り始めて認可となれり、売買取引及び受渡方法の概要は左の如くなるも、猶海外の実況をも取調の上之を確定する筈なりといふ
 一、当取引所に於て賞買取引《(売)》する金塊は千分の九百二十五位を以て標準とし、銀塊の含銀量千分の七百五十以上のものは其品位の割合に従ひ受渡を為さしむ
   但諸外国の銀貨幣も亦本文に准し地金と見做し受渡品に加ふることを得
 - 第14巻 p.267 -ページ画像 
 一、当取引所に於て直取引・延及定期取引の売買は左の規定に依る
  品名 一口売買量   約定直段の呼直
  銀塊 百「ヲンス」 一「ヲンス」(一「ヲンス」は日本量目の八匁二九四四に当る)
 一、当取引所に於て売買受渡に供する銀塊は、明治三十年勅令第百三十九号に依り造幣局の品位証明を受けたる品質に限り当取引所の撿査を要せすと雖、其他の銀塊は当取引所の定むる試金師の撿査を経て品位を定め受渡を為《(衍)》ちさしむ
   但撿査法は別に之を定む
 一、当取引所の売買は当取引所に於て現品若くは予め指定したる銀行の銀塊預り証書を以て受渡を為さしむと雖、其受渡数量多額なるときは予め当取引所に於て指定し置きたる倉庫に出張して受渡を為すことあるべし
 一、当取引所に於て現品の受渡を為すに其銀塊廿「ヲンス」以内の過不足を生じたるときは其額に対しては最近一週間の平均直段を以て之を決算するものとす
 一、当取引所に於て売買取引を為したる銀塊現品の受渡を為すときの権衡は日本銀行に於て使用すると同種類のものに依る


〔参考〕中外商業新報 第四八〇四号 〔明治三一年二月一八日〕 東京銀塊取引所の役員会(DK140025k-0006)
第14巻 p.267 ページ画像

中外商業新報 第四八〇四号 〔明治三一年二月一八日〕
    東京銀塊取引所の役員会
東京銀塊取引所にては昨十七日午前十時より兜町同所事務所内に於て役員会を開き、先づ互選を以て中野武営氏を理事長に、伊井吉之助・小川為次郎の両氏を常務理事に選定し、引続き設立申請の手続等を議定せりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四八二七号 〔明治三一年三月一七日〕 東京銀塊取引所の建築(DK140025k-0007)
第14巻 p.267 ページ画像

中外商業新報 第四八二七号 〔明治三一年三月一七日〕
    東京銀塊取引所の建築
東京銀塊取引所にては東京株式取引所の旧市場を買入れて同所の市場となすことゝなり、既に売買の契約も済みたる由なれば、来月中には予て買入ある茅場町の同所位置に於て建築工事に着手する予定なりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四八四二号 〔明治三一年四月三日〕 東京銀塊取引所(DK140025k-0008)
第14巻 p.267 ページ画像

中外商業新報 第四八四二号 〔明治三一年四月三日〕
    東京銀塊取引所
取引所位置の引渡 東京銀塊取引所が同所位置として買収したる日本橋区南茅場町二番地戸張要吉氏の住宅は、晩くとも本月末までには悉皆引渡を結了する契約なりしが、近日に至り右戸張氏は移転先を確定せしにや、最早四五日の後には何時引渡を行ふも差閊なき由を取引所に申入れたりといふ


〔参考〕銀行通信録 第一五〇号・第七一五―七一六頁 〔明治三一年五月一五日〕 銀塊取引所談(中野武営)(DK140025k-0009)
第14巻 p.267-269 ページ画像

銀行通信録 第一五〇号・第七一五―七一六頁 〔明治三一年五月一五日〕
    銀塊取引所談(中野武営)
銀塊取引所は目下一方に於ては設立認可出願中にして又一方に於ては市場の撰定中なれとも、取引市場の確定し又設立の認可あり愈々之が
 - 第14巻 p.268 -ページ画像 
取引を開始するを得る迄には尚五六ケ月間の時日を要するならん
銀取引なるものは徳川時代に於て大阪に行はれつゝありしも、政治上社会上の変動に依りて一時廃頽に帰し、下て明治十一二年に及ひ彼の所謂不換紙幣増発の結果として、紙幣の価頻りに下落し殆んと停止する処を知らざるの有様なるに引換へ銀価は騰貴の一方に傾きたれば、当時横浜に漸く取引の芽を生じたる弗相場は中止の命に遭遇せり、又取引所法中にも金銀塊の項目ありて之か取引を許せるにも拘はらず爾来全く金銀取引相場の成立することなきに至りぬ、然れとも金銀と雖とも元より相場を立て取引を為すことを得さるものにあらざるを以て去る廿七年頃よりして金銀比価の変動甚しきに及ひ余輩は金銀の相場を立て取引するの必要を感し同志者と計りて金銀塊の取引所を設けんとしぬ、然るに日清戦争終て社会上諸般の事情大に変動し就中経済上に就ては爾後世界的共通の度頗る敏捷を加ふるに至り外国貿易上の関係よりして一層其必要を感せしめたり、何となれば貿易の差額は常に為替に依りて決済するものなるに、金銀比価の変動にして常なくは折角得たる利益も為替上に於ては却て不利となることあり、即ち現在の金銀相場を見、以て契約せるものゝ其荷物の到着し代金を支払ふべき時には為替相場騰貴せる為め、契約当時と同様の支払を為すには之より多額を以てせさるべからざるに至る等甚しき損失を被むることありて真正の取引は常に行ふべからず、貿易商人は一に為替変動如何にのみ注意せざるべからずして確固たる目算を立て真の取引を行ふ能はす唯為替相場の高下に依りて僅かに其差利を得るのみ、如斯くんは外国貿易は依然として一の投機を行ひ居るものにして今日以後の貿易は決して此等の不便不利に安んずるを得ざること勿論なり、故に金銀取引所を設けて輸出入の業務に従事するものは予め其将来の騰下如何を推測し、若し将来金銀比較の変動は那辺迄なるべきやを察し、或は銀を買ひ置き或は之を売る等の手段に依りて予め変動に備ふるを得は貿易商は安心して事に従ふを得べし、故に対外取引の頻繁を加へんとするの今日に於ては愈々以て其必要を感し、遂に金銀塊取引所の設立を当該官庁に出願せしものなり
然るに松方内閣の下に幣制改革行はるゝに至り金貨を以て本位と為すの制度確立したれば、金は最早取引するの要なきを以て昨年に及ひ単に銀塊取引所となすことに決し訂正を願出し其許可を得たり、本位制改革の結果として今日に対欧対米の商業取引上に於ては為替変動の影響に依りて損失を招ねく如きことなきに至りたるも、尚支那・朝鮮・海峡殖民地其他銀貨を以て取引すべき国尠からさるを以て、其取引に銀塊相場を立て以て現在及将来の安全を確保するの必要あるものとす加之欧州の銀相場は倫敦に於て之を為し米国に於ては紐育にて相場を立つるが如く、東洋に於ても之が取引所を設けて世界の銀塊相場をば三ケ所鼎足の姿を以て相場をして互に相均等からしむるの必要あり、蓋し現今の如く当業者すら之が相場の変動に依りて苦しめらるゝのみならず、一般の人々は尚銀の高下如何を知るに由なきを以て、取引所の設立に依りて日々倫敦・紐育等の相場をば速知するを得べきが故に銀塊取引所の効用は此辺に於ても尠からざるなり
 - 第14巻 p.269 -ページ画像 
我国か銀塊取引所を設立するも何の効なし依然倫敦の相場に左右せらるべし即ち倫敦の銀塊相場に盲従するものならんと云ふ者あれども、元より銀は他の商品と異り世界到る処に存在する《(の脱)》みならず、設令其容量等を均ふせざるも其純分と性質とを異にするが如きことなきが故に自然倫敦の相場と非常の差異あるべき筈なきなり、若し又我国に於て銀塊を取引する所なくんば、商業者は必要あり之を得んとする場合には所々方々に奔走し之を収集せざるべからざるの煩労あり、然るに取引所にして存在せば必要に応じて何時たりとも直ちに之を供給することを得るなり
而して取引の方法如何と云ふに、是れ目下夫れ夫れ調査中なれども、取引の本位は従来我国にて用ひ来りたる一分・二分と云ふが如きは不便なるが故にオンスを用ひんとす、何となれば英国に於てはオンスに依りて為すが故我国にても均しく之を用ひば、独り当業者たる専門家のみならず一般の世人も直ちに視て以つて倫敦の相場と対比するを得て頗る便利なるべければなり、又売買の標準も倫敦と同じく九百二十五位と為す筈なり
  附言 右は大体の議論なれども銀塊取引所は我国創始の制度にして頗る注意を要する処なれば、余輩は尚我国従来の銀相場に関すること及欧米に於ける之が取引方法等に就ては調査終了の上読者に紹介するを得るの約あり、読者乞ふ之諒


〔参考〕中外商業新報 第四八七七号 〔明治三一年五月一四日〕 東京銀塊取引所の設立認可(DK140025k-0010)
第14巻 p.269 ページ画像

中外商業新報 第四八七七号 〔明治三一年五月一四日〕
    東京銀塊取引所の設立認可
中野武営氏外二十九名にて予て設立申請中なる東京銀塊取引所は、去る十一日附を以て主務省より其免許状を東京府庁まで廻附せられたるも、同所定款中猶不備の事項あるを以て早速同訂正書差出すべき旨指令せられたるより、同所にては本日其手続を運ぶ筈なれは、愈々免許状の下附せらるゝは本日なるべしといふ、而して認可の上は株金募集等の件に就き不日重役会議を開くべき由


〔参考〕中外商業新報 第四八七九号 〔明治三一年五月一七日〕 東京銀塊取引所重役会(DK140025k-0011)
第14巻 p.269 ページ画像

中外商業新報 第四八七九号 〔明治三一年五月一七日〕
    東京銀塊取引所重役会
東京銀塊取引所設立認可の件に就きては、去十四日の本紙に記載せしが、同所にては主務省より指令されたる定款訂正の件に関し、本日午前十一時より兜町同事務所に於て重役会議を開き更に訂正届を其筋に差出す由なるが、猶引続き同市場に買入れたる地区の旧建物公売及同市場新築工事の件をも議する筈なりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四九〇二号 〔明治三一年六月一二日〕 東京銀塊取引所旧建物の売却(DK140025k-0012)
第14巻 p.269-270 ページ画像

中外商業新報 第四九〇二号 〔明治三一年六月一二日〕
    東京銀塊取引所旧建物の売却
東京銀塊取引所にては去三日以来一昨十日までを期し、同所建築地内なる日本橋区茅場町二番地の旧建物の入札売却を行ひしが、孰れも予定価格以上に登りて京橋区越前堀一町目大森惣右衛門及神田区三河町二町目田中文治郎の両名に落札し、同日以後二週間内に悉皆取毀を了
 - 第14巻 p.270 -ページ画像 
る筈なりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四九一五号 〔明治三一年六月二八日〕 東京銀塊取引所臨時総会(DK140025k-0013)
第14巻 p.270 ページ画像

中外商業新報 第四九一五号 〔明治三一年六月二八日〕
    東京銀塊取引所臨時総会
東京銀塊取引所にては去月十三日附を以て主務省の設立認可を得たる以来、本月一日附を以て重役の上任を為し、創立事務の引継を了りて目下株金払込の場合に進行せしことなるが、今月の如く経済社会不振を極めて金融は逼迫し、諸株式は孰も払込以下に低落せし情勢にては法定の開業期日までには到底総資本金四十万円の二分一を払込ましむるの望なきを以て、此際に於ては自ら減資するの要あるのみならず、由来同取引所が未だ東京商品取引所派と合同を為さゞる以前の計画に於ける金銀取引所設立の目論見にては資本金は二十万円にして、現今の如く四十万円に改めたるものは、畢竟同商品取引所派と合同の結果株式分配上の都合より出でたる増加に外ならずして、其二十万円は既に当時より多く必要を感じたるものにあらざれば、此際資本金を半減し株式二個を収めて一個となせば、内に於ては少しも当初の計画に悖らずして外に於ては却て株金の払込を容易にするの益あるを以て、遂に重役は資本金の半減を必要として、因て来月四日午後三時より日本橋区坂本町銀行集会所に於て臨時総会を開き、右の件に就き協議する筈なりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四九二二号 〔明治三一年七月六日〕 東京銀塊取引所臨時総会(DK140025k-0014)
第14巻 p.270-271 ページ画像

中外商業新報 第四九二二号 〔明治三一年七月六日〕
    東京銀塊取引所臨時総会
東京銀塊取引所にては予記の如く一昨四日午後三時半より日本橋区坂本町東京銀行集会所楼上に於て第一回臨時総会を開きしが、出席株主委任状共百九十五名(此権利数六千三百九十五個)にして、席定まるや理事長中野武営氏会長席に着き、先づ開会の理由として、目下経済界の極めて沈淪せるが為に同取引所は之に処するの策として断然減資を決行し、以て株金の払込を容易ならしむると共に事務の進行を疾速ならしむるの要あることを述べ、次で左の議案
 第一号 定款第六条変更及但書追加の件
  (旧条)第六条 当取引所の資本金は四十万円とし之を八千株に分ち一株を金五十円とす
  (変更)第六条 当取引所の資本金は二十万円とし之を四千株に分ち一株を金五十円とす
  (追加)但右資本金の内六万五千円を以て倉庫資本に充つ
 第二号 定款十四章の次へ第十五章倉庫の一章を増加し、第十五章以下一章づゝ繰下け、第二十一章定款変更の項を第二十二章と為し、同定款第百六条の次へ倉庫に関する左の二条を増加し、第百七条以下二条づゝ繰下げ、第百三十九条を第百四十一条と為す
    第十五章 倉庫
 第百七条 当取引所は倉庫を設置し当取引所に於て売買取引する物件を保管し貨主の請求に応じ之に対する預り証書を発行すへし
 第百八条 当取引所は役員会の決議を以て予め確実なる倉主と特別
 - 第14巻 p.271 -ページ画像 
の契約を結ひ売買物件受渡の便宜と為すことあるべし、此場合に於ては契約書案を添へ農商務大臣の認可を受くべし
 第三号 第一□議案定款第六条変更の結果資本金を半減にするに付株式合併整理を左の如く処分す
    株式合併整理を左の如く処分す
 第一 資本金四十万円を半減し二十万円とし之を四千株に分ち一株を金五十円と為すに付、旧株式二個を以て新株式一個と為す事
 第二 現在株主中一株を所有する向並に奇数株を所有する向の之より生ずる端数一株に対しては当取引所より(当取引所は多数の株式を所有する株主に交渉し之を取扱ふ者とす)別に旧株式一個を交付し之を合せて新株式一個と為すへきに付、其交付する旧株式一個に対する証拠金二円五十銭を期日内に納入せしむる事
 第三 前項期日内に有証拠金《(右カ)》を納入し、旧株式一個の交付を要求せさる向は、現に所有する旧株式一個に対する権利を放棄する者とし、其権利を役員に於て引受け、之に対する既納証拠金二円五十銭を還附する事
 第四 旧株式一個証拠金二円五十銭は既納に付、其合併株即ち新株式一個に付証拠金五円の既納と為し、更に新領収書を製し之を旧領収書と交換する事
 第五 前三項の証拠金納入期限、権利放棄者に既納証拠金還付期限及領収証書交換期限、其他此株式合併整理処分に付必要なる手続を定むることは役員に一任する事
に就き議事を進行せしに孰れも満場一致を以て原案に可決せしが、猶第三号議案中第二の条項は改正したる総株数に準ずるは勿論なるも、更に証拠金領収書に記載せる旧株数高に応じ処分することに決し、其他右諸議案決定の結果として更に定款の改正を要するものは総て之を役員に一任することにし散会せりといふ


〔参考〕中外商業新報 第四九六〇号 〔明治三一年八月一九日〕 東京銀塊取引所の減資認可(DK140025k-0015)
第14巻 p.271 ページ画像

中外商業新報 第四九六〇号 〔明治三一年八月一九日〕
    東京銀塊取引所の減資認可
東京銀塊取引所にては、曩に資本金四十万円を半減するの件並に之を伴ふ定款改正の件を農商務省に申請中なりしが、昨日認可となりし由なり


〔参考〕中外商業新報 第五〇〇九号 〔明治三一年一〇月一六日〕 東京銀塊取引所の開業期と省令の改正(DK140025k-0016)
第14巻 p.271 ページ画像

中外商業新報 第五〇〇九号 〔明治三一年一〇月一六日〕
    東京銀塊取引所の開業期と省令の改正
東京銀塊取引所にては去五月十二日附《(三カ)》を以て農商務省より設立認可を得たるが、明治廿六年農商務省令第十三号第十条の規定に依れば、設立認可以後満六箇月以内に開業せざれば無効に帰する筈なるを以て、来十一月中旬までには是非とも開業せざるべからざりしも、昨十五日農商務省に於て同条の改正せられたる結果、来年五月までに開業すれば有効なることゝなれりといふ


〔参考〕中外商業新報 第五一七〇号 〔明治三二年五月三日〕 東京銀塊取引所解散に決す(DK140025k-0017)
第14巻 p.271-272 ページ画像

中外商業新報 第五一七〇号 〔明治三二年五月三日〕
 - 第14巻 p.272 -ページ画像 
    東京銀塊取引所解散に決す
東京銀塊取引所にては昨二日午後五時より日本橋倶楽部に於て臨時株主総会を開き、同取引所存廃の件を議せしが、出席株主委任状共三百八十五個、権利数二千七百八十九個にして、協議の末同取引所は表面上解散し、更に東京商品取引所より銀塊の取引追加を出願せしめ、其収益金より税金を控除したる残額を以て銀塊取引所の旧株主に対し漸次債券を償却するの方法にて、今日より来明治三十七年十月(東京商品取引所の営業期)まで従来の銀塊取引所に於ける債務債権を東京取引所に引継ぐことに決したり、されば銀塊取引所に於て既に買収したる敷地及木材等は、商品取引所に於て処分する筈なるが、猶東京商品取引所に於ても不日臨時総会を開き、此契約に就き株主の承認を求むる筈なりといふ


〔参考〕竜門雑誌 第一三一号・第三五頁 〔明治三二年四月二五日〕 △東京銀塊取引所の臨時総会(DK140025k-0018)
第14巻 p.272 ページ画像

竜門雑誌 第一三一号・第三五頁 〔明治三二年四月二五日〕
△東京銀塊取引所の臨時総会 東京銀塊取引所は浜町日本橋倶楽《(部脱)》に於て臨時株主総会を開き、予ての問題たる同取引所存廃に関し種々協議したる結果遂に東京銀塊取引所は一先づ解散することに決し、右にする《(マヽ)》銀塊の旧株主と東京商品取引所との間に一の契約を取結ぶことをも承認せり、即右銀塊を東京商品取引所の一種目として追加出願し其筋の認可を得たる上は銀塊市場を開き、是より生ずる所の利益金を以て税金を控除し(其他の費用は一切関係なし)其残余金は悉皆東京銀塊取引所の旧株主に分配し、尚先に地所木材等を購求せし代金三万五千円程の負債に属する(内二万円証拠金)利子其他を漸次償却すること、及び合同期間は商品取引所の営業期限たる来る明治三十七年十月となすことゝして、此間若し独立自営の見込充分相立つに於ては旧株主は此権利を得て再願の上営業する事を得るの契約なり、又銀塊取引所が既に買収したる土地木材等は、商品取引所をして処分せしむることに決して散会せり


〔参考〕竜門雑誌 第一三一号・第三五頁 〔明治三二年四月二五日〕 東京商品取引所役員会議(DK140025k-0019)
第14巻 p.272 ページ画像

竜門雑誌 第一三一号・第三五頁 〔明治三二年四月二五日〕
△東京商品取引所役員会議 同取引所内に於て銀塊取引所と合同する件に付き役員会議を開き協議の末、銀塊取引所合同の後二ケ年間に於て銀塊取引より生ずる純益金七千円を収むるを得たる場合に於ては二万円を銀塊取引所の旧株主に交附し、若し右期間に該利益を収むる能はざるときは、銀塊取引より生じたる純益金十分の三を交附す、但し商品取引所の営業継続期間(明治三十七年迄)に幾何の利益を収むるとも二万円は交附せざるの条件にて、銀塊取引所と合同することに決議したる由


〔参考〕銀行通信録 第一六二号・第七九八―七九九頁〔明治三二年五月一五日〕 △東京銀塊取引所の解散(DK140025k-0020)
第14巻 p.272-273 ページ画像

銀行通信録 第一六二号・第七九八―七九九頁〔明治三二年五月一五日〕
△東京銀塊取引所の解散 東京銀塊取引所は創立期限本月二十日迄なるも、此際株金の払込をなさしめ直に営業を開始せんことは到底出来能はざるより、去る二日株主総会を開き存廃問題に付き協議する所ありしが、銀塊取引所と商品取引所との間には銀塊取引権利譲与に付き
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種々協議する所あり
 一、銀塊取引所の解散と共に商品取引所にて銀塊取引追加を其筋に出願すること
 一、銀塊追加の出願許可の上は直ちに同品の取引を開始し納税金を控除したる上、尚ほ剰益金存する場合には其剰益金を以て銀塊取引所創立費を弁済する事
 一、商品取引所営業満期後(三十七年)銀塊取引所在来の株主にして別に銀塊取引所を創設せんとするときは直ちに其権利を譲与すること
の各項に付双方重役間に協議整ひしを以て、総会の結果、商品取引所総会に於て右の条項を議決するを待て銀塊取引所を解散することに決せり、即ち表面は解散なりと雖も内実は或る意味に於ての合併なり、因に記す、銀塊取引所にて当初より消費せし金額は株金二万円、借入金一万五千円、合計三万五千円にして、内土地及其他有形品として存するもの一万五千円なりといふ