デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治22年6月10日（1889年）

是ヨリ先、五月二十二日大蔵大臣松方正義ヨリ生糸荷為替取扱上ノ事ニツキ訓諭アリ、仍テ是日栄一、横浜生糸売込問屋組合ニ対シ意見ヲ申送リ置キタル旨ノ書翰ヲ萩原源太郎ニ送ル。

渋沢栄一　書翰　　萩原源太郎宛　（明治二二年）六月一〇日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（萩原英一氏所蔵）
○上略
生糸ニ付而ハ今日横浜之糸屋連中ヘ愚見申示置候、近々何とか申出候事と存候
○中略
　　六月十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　萩原源太郎様

委員決議　　明治一六年―二二年　（東京銀行集会所所蔵）
明治二十二年五月　(印)
　　　　（原）
　　委員　(印)栄一　(印)　(印)　(印)　(印)　(印)
　　　此程松方大蔵大臣ヨリ訓諭有之候生糸荷為替取扱上注意相加可申件ハ、去ル廿五日臨時集会ノ議決ニ依リ先ツ横浜生糸売込問屋組合ヘ照会ヲ経、同組合ノ回答ヲ以テ更ニ同盟銀行及生糸取引ニ関係ノ各銀行ヘ通知取計可然乎、此段御廻議申上候也
　　　　横浜生糸売込問屋組合ヘ照会
一翰啓上仕候、陳ハ生糸荷為替取扱上ノ件ニ付去ル二十二日松方大蔵大臣ヨリ渋沢栄一・原善三郎・茂木惣兵衛氏等ヲ其官邸ニ招カレ、御訓諭相成候ハ《（四字栄一筆）》、本邦最大ノ物産タル生糸ノ産出高ハ年々其多キヲ加ヘ随テ之ニ融通スル金額モ亦以テ尠ナシトセス、然ルニ従来ノ弊習トシテ生糸季節ニ及ヒ其取引ニ関係アル銀行者ハ此際荷為替ノ取扱高多カランコトヲ勉ムル為メ、其貸金割合ヲ増加シテ一時荷主ノ歓心ヲ得ンコトニ汲々トシ、甲乙相競フテ意外ノ割合ニ増進シ遂ニ損失ヲ蒙リシコト其例尠ナシトセス、是レ一般経済上ニ於テ損害アルノミナラス余カ職権上ニ於テモ亦以テ憂慮ニ耐ヘサル処ナリ、故ニ昨年ハ生糸取引ニ関係スル銀行者ニ対シ注意ヲ訓戒セシニ、同年ハ幸ニシテ障害アリシコトヲ聞カサリシカ、近キニ慣レテ遠キ《（ヲ脱）》忘ルヽハ人情ノ常ナレハ今又此季節ニ際シ之レヲ諸氏ニ告ケ以テ同盟銀行及生糸取引ニ関係アル同業者一同ニ伝達セシメンコトヲ希望ス云々トノ御趣旨ニ付、当集会所同盟銀行ハ去ル廿五日臨時集会相催今後厚ク注意ヲ加ヘ可申事ニ治定致候得共、其貸付金割合ノ如キハ予テ御組合ヘ御打合申上候方双方
 - 第15巻 p.151 -ページ画像 
取扱上都合ト存候、且ツ貴組合ニ於テ昨年御取扱之振合モ可有之候得ハ其割合等一応御評議ノ上御回示相成候様仕度、此段御照会申上候也
　　廿二年六月六日
　　　　各銀行ヘ通知案
一翰啓上仕候、陳者生糸荷為替取扱上ノ件ニ付頃日松方大蔵大臣閣下ヨリ訓諭之次第モ有之候ニ付、同盟銀行協議ノ上横浜生糸売込問屋組合甲号ノ通照会ニ及候処、乙号ノ通回答有之候ニ付、御注意ノ為メ此段御通知申上候也
（二字栄一筆）
此処
　　年　月　日
　　　　　　　　　　　　　　　　　（「東京、銀行集会所」罫紙）

委員決議　明治一六―二二年　　（東京銀行集会所所蔵）
明治二十二年六月十九日　　　　　(印)
　　委員　栄一　(印)　(印)　(印)
　　　去ル六日横浜生糸売込問屋組合ヘ照会相成候処別紙ノ通回答有之候ニ付、同盟銀行及右荷為替関係ノ各銀行ヘ照会按御廻議申上候
一翰啓上仕候、陳ハ此程松方大蔵大臣閣下ヨリ生糸荷為替ニ対シ貸附金取扱之儀ニ付、従来ノ弊害ヲ矯正シ着実ニ経営可致様懇篤ナル御訓諭有之候ニ付、同盟銀行協議ノ上其要旨ヲ以テ横浜生糸売込問屋仲間ヘ及照会候処、同仲間ニ於テハ已ニ昨年中一定ノ規約ヲ作リ同港時価ノ七掛ヲ目途トシテ荷物ヲ引受可申事ニ申合有之候ニ付、本年モ亦右規約ノ通可取扱事ニ評議一決致候間、我同盟銀行及各地方ニ於テ該荷為替可取扱向ヘ伝達相成度旨回答旁依頼有之候ニ付《＊》「右御取扱上充分御注意相成候様仕度」此段御照会申上候也
＊（欄外朱記）
　　テハ当集会所同盟銀行ニ於而も右之割合ヲ以テ荷為替取扱可申候間、貴行ニ於ても生糸荷為替ニ限リ、右之振合を以て御取扱被下度、別紙往復書状写相添
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　銀行集会所
　　　何　銀行
　　　　　　　　　　御中
　　　　横浜生糸売込問屋仲間ヘ照会書
　一翰啓上仕候、陳者生糸荷為替取扱上ノ件ニ付………………
　　　　同回答書
　復啓仕候、陳者此程松方大蔵大臣ノ訓諭ニ基キ生糸荷為替金取扱振ノ件ニ付………
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「東京、銀行集会所」罫紙）

委員決議　　明治一六―二二年　（東京銀行集会所所蔵）
復啓仕候、陳者此程者松方大蔵大臣の訓諭ニ基き生糸荷為換金取扱振の件に付御照会書を被下御厚志の段奉謝候、偖御書面中に有之候生糸荷為換貸付金割合の義者昨年来仲間の相談に於て一定いたし当港時価の七掛を目途として荷物を引受くる事に相成り仕候、仮令ば当港に於
 - 第15巻 p.152 -ページ画像 
而時価千円のものに付ては七百円迄荷為替を取組みたる生糸は荷受致す振合に御座候、乍併本年ノ儀ハ未た評議も不仕罷在候処幸ひ貴所の御照会も有之候ニ付、去る十五日仲間の集会ニ於而相談致し候処何れも前年の振合に据置之事に評決相成候、就而者右荷為換之儀は爾後時価の七掛を目途として御取扱相成候様同盟諸銀行及地方ニ於て荷為替取扱ひ候向へ夫々御伝達被成下度、此段御回答旁々及御依頼候也
　　明治廿二年六月十八日　　　　　　横浜生糸売込仲間　横浜生糸売込仲間印
　　　　銀行集会所
　　　　　　　　御中