デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治19年2月15日（1886年）

是ヨリ先明治十八年六月、栄一同盟銀行定式集会ニ於テ米商委托販売業者間ニ申合規程設定ノ必要ヲ力説シ、銀行集会所会員多数ノ賛成ヲ得、爾来東京廻米問屋組合ト交渉誘導ノ結果、同組合ヨリ米雑穀取扱規則草案ノ提出アリ、是日第六十二回定式集会ニ附議シ、同組合ニ対シ速ニ実施アランコトヲ回答スベキコトヲ決議ス。

東京銀行集会所半季実際考課状　第一〇回・第七―九頁　明治一八年一月―六月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　同盟銀行集会決議及報道ノ事
○上略
一六月○明治一八年　十八日第五十四回ノ定式集会ニ於テ○中略
　又渋沢栄一氏ハ、目下銀行者ニ在テ米商委托販売者ヲシテ確実ナル申合規程ヲ定設セシムルノ必用ナル理由ヲ演述シテ衆員ノ意見ヲ問ヒシニ、一同其急務ナルヲ以テ同氏ノ意見ヲ賛成シ、而シテ其方法ニ至テハ各自熟慮シテ以テ之ヲ次会ニ提出スヘキコトニ議決セリ
○下略

集会録事　明治一五年一月―明治一九年一二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　第五拾四回定式集会録事
明治十八年六月十八日月番第二十銀行及第九十三銀行支店盟主トナリ同盟第五拾四回ノ定式集《（会脱）》ヲ当集会所ニ於テ開設ス、詳録左ノ如シ
　　　　会員
　第一国立銀行　　　　　　　渋沢栄一
○中略
　　已上弐拾七行
　但三十二・百十二・百三十二・第六ノ四行ハ参会セス
右列席ノ上委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ○中略
次ニ米商其他ノ商賈中ニ於テ委托販売ノ規程之ナキニ因リ、世上ニ金融ノ責ヲ負担スル我々銀行者ニ於テハ安ンシテ之レカ貨物ヲ抵当ニ預ルヲ得ルコト能ハサルニ付、此等ノ商賈ヲ誘導シテ各業其申合規則ヲ作ラシメ、仮令ハ今般深川米商一件ノ如キモノ生スルモ債主ニ於テハ其内規ノ拠ルヘキモノアレハ敢テ狼狽走奔セス静カニ事ヲ処シテ可ナリ、現ニ先年横浜生糸売込商人中ニ葛藤ヲ生セシトキ該商人等ノ重立タル者之レヲ憂ヘ、明治十六年中之レガ申合規則ヲ作リタル旨ヲ告ケテ其規則書ヲ朗読セシメシニ、衆皆之ヲ承諾ス、此ニ於テ同氏又曰ク此事タル多少考按ヲ要スル件ニ付篤ト取調ヘ時宜ニヨリ臨時会議ヲ開
 - 第15巻 p.238 -ページ画像 
キテ之レヲ協議決定スヘキコトヲ約セリ
○下略

渋沢栄一　書翰　萩原源太郎宛（明治未詳年）二月二五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（萩原英一氏所蔵）
拝見仕候米穀問屋除盟申立候ニ付誘導願ハ早々御差出可被下候○中略
　（朱書附箋）［明治十八、九年
　　二月廿五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　萩原源太郎様

東京銀行集会所半季実際考課状　第一一回・第一―二頁　明治一八年七月―一二月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　同盟銀行集会決議及報道ノ事
一七月○明治一八年十五日同盟第五十五回定式集会ニ於テ○中略
　廻米問屋組合ヲシテ其申合規則ヲ定設セシムヘキハ、銀行者融通上必用ノ事件ナルヲ以テ、該組合ヘ照会スヘキ事ヲ協議シ、因テ、我委員中ヨリ其年行事ノ如キ重立タル者ニ之ヲ勧説スヘキコトニ決定セリ
○下略

集会録事　明治一五年一月―明治一九年一二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　第五十五回定式集会録事
明治十八年七月十五日同盟銀行第五十五回定式集会ヲ集会所ニ於テ開設ス、来会者姓名左ノ如シ
　委員　第一国立銀行頭取　渋沢栄一
○中略
　　已上弐拾壱員
　第三・第五・第九十五・第百七・第百十二・第四・第六・第十・第六十三・第十九等ノ十行ハ参会セス
委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ起テ衆位ニ告ケテ曰ク○中略
又同氏ハ会員ニ報道シテ曰ク、前回約スル所ノ廻米問屋組合規程及ヒ同盟外銀行ト通信ヲ開設スヘキ方法等草按未タ全備セサルヲ以テ本日之ヲ議スルヲ得ス、因テ先ツ本日ノ会同ニ於テ要領ヲ協議センニ、其廻米問屋組合ヲシテ之レカ規程ヲ作ラシメンニハ宜ク先ツ当集会所ヨリ該商業者ニ照会シテ規程ヲ作ルノ必要ナルヲ喚起セサルヘカラスト第百国立銀行副頭取高田小次郎氏ハ公然照会スルヲ為サスシテ陰ニ誘導センコトヲ述ヘ、第百十九国立銀行頭取肥田昭作氏モ亦之レト大同小異ノ説ヲ為セリ、渋沢氏曰ク、諸君ノ説誠ニ是ナリ、余已ニ一日試ニ同商中重立タル者ニ詢ヒシニ同商組合ノ事情タル一二有力者ノ制ス可ラサルモノアルヲ以テ到底局外ノ刺衝ヲ受クルニアラサレハ奮起スルニ至ル可カラスト云フ、故ニ余前説アルカ如シト雖トモ今諸君ノ説アルヲ以テ公然照会ノ事ヲ為サス、委員ヨリ同商年行事等ニ向ヒ頃日同盟銀行相議シテ以為ラク、今回深川蔵預リ米事件ノ如キ尤モ危険タ
 - 第15巻 p.239 -ページ画像 
ルヲ以テ自然融通ヲ謝絶セサル可ラス、若シ同商ニ於テ旧来ノ習慣ニ従ヒ其申合規則ヲ定設シテ該営業ヲ堅固ナラシムレハ大ニ自他ノ便宜ヲ得ントノ忠告ヲ為スハ如何ト、各此説ニ同意ヲ表シ、且ツ同氏ヨリ同商ニ勧告セラレンコトヲ請ヒ、同氏之ヲ肯諾セリ
○下略

東京銀行集会所半季実際考課状　第一一回・第三―四頁　明治一八年七月―一二月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　同盟銀行集会決議及報道ノ事
○上略
一八月十五日《（マヽ）》○明治一八年第五十六回定式集会ニ於テ委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ○中略
　又同氏ハ去月三十一日西邑・山中両氏ト共ニ廻米同屋組合益田孝・渋沢喜作・鈴木周四郎ノ三氏ヲ本会ニ招致シ、該組合申合規則ヲ定設スヘキコトヲ勧説シ、三氏之ヲ諾シタルヲ以テ其成効ヲ見ルモ亦近ニアルヘキヲ報道セリ
○下略

集会録事　明治一五年一月―明治一九年一二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　第五十六回定式集会録事
明治十八年八月十八日同盟第五十六回定式集会ヲ開設ス、来会者姓名左ノ如シ
　委員　第一国立銀行頭取　渋沢栄一
○中略
　　已上弐拾弐行
　正金・三十三・川崎・九十五・安田・第六・廿八・六十三・八十九ノ九行ハ参会セス
右列席ノ上委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏各位ニ告ケテ曰ク○中略
又曰ク、去月三十一日前会ノ決議ニ基キ、小子ハ西村乕四郎氏・山中隣之助氏ト共ニ廻米問屋組合益田孝・渋沢喜作・鈴木修四郎《（鈴木周四郎）》ノ三氏ヲ本会ニ招致シ、該組合ニ於テ宜シク申合規程ヲ定設スヘキコトヲ勧説セシカハ三氏ヲ承諾シ、且本月七日該組合定式集会ニ於テ協議ヲ遂ケ、其草按取調委員ヲ選定シ本会ニ照議スヘシト云、事此ニ及ヒタレハ其成効ヲ見ル蓋シ遠キニアラサルヘシ、各位之ヲ領セヨト
○下略

東京銀行集会所半季考課状　第一二回・第五頁　明治一九年一月―六月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　同盟銀行集会決議及報道ノ事
○上略
一二月○明治一九年十五日同盟第六十二回定式集会ニ於テ○中略
　嘗テ本会委員ヨリ東京廻米問屋組合中重立タル数氏ヘ勧告セシ米穀委托販売取扱規則草按成ルヲ以テ之ヲ我カ委員ニ送致シ、適宜取捨センコトヲ請求セシニ因リ、各位一読シ字句上修正ヲ加ヘ、此修正
 - 第15巻 p.240 -ページ画像 
按ニ照ラシ速カニ実施アランコトヲ回答スヘキコトニ決議セリ
○下略

集会録事　明治一五年一月―明治一九年一二月　（東京銀行集会所所蔵）
　　　　第六拾二回定式集会録事
明治十九年二月十五日同盟銀行第六拾二回定式集会ヲ開キ来会スルモノ廿二名、各位座定リ委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ起テ各位ニ告テ曰○中略
同氏又曰ク、前日我委員ハ東京廻米問屋中重立タル数氏ニ向ヒ、其米穀委托販売取扱ノ事タル従来規則一定セサルヨリ既ニ昨春深川預米一件ノ如キ紛議ヲ生シ、其取引ニ対シ大ニ懸念ヲ抱キ、為ニ一般融通上ノ障碍タルヲ以テ宜シク仲間申合規則ヲ確定スヘキコトヲ勧告セシカ頃日該規則草按成ルヲ以テ之ヲ我委員ニ送致シ、適宜ニ取捨センコトヲ請求セリト、乃チ其草案ヲ一読セシメテ各位ノ意見ヲ問ヒシカ衆皆異議ナキニ因リ、則字句上二三ノ修正ヲ加ヘ、此修正稿ニ拠リ速ニ実施アランコトヲ要求スルノ旨ヲ回答スヘキコトニ決議セリ
○下略

（東京廻米問屋組合）書翰　銀行集会所総代宛　明治一九年二月一三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京銀行集会所所蔵）
拝啓仕候、過般当組合ヘ御相談有之候米雑穀委托販売取扱規則之義ハ私共組合一同ノ委托ヲ受ケ別紙之通草案取調候ニ付、別冊壱部差出シ候間、御熟覧何分之御賢評御加筆被成下度、此段得貴意候　已上
　　尚組合一同協議ノ都合モ御坐候得バ御多忙中恐入候得共何卒至急御回答ニ預リ度奉願候又拝
　　明治十九年二月十三日
　　　　　　　　　　　東京廻米問屋組合
　　　　　　　　　　　　　草案取調委員　江口真造(印)
　　　　　　　　　　　　　同　　　　　　万代徳蔵(印)
　　　　　　　　　　　　　年行事　　　　渋沢喜作(印)
　　　　銀行集会所総代
　　　　　　渋沢栄一様
　　　　　　山中隣之助様
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「廻米問屋仲間」罫紙）

委員決議　明治一六年―明治二二年　（東京銀行集会所所蔵）
明治十九年二月十六日
　　栄一(印)　（栄一筆）　(印)
　　　　(印)　附箋ハ別段ニ清書いたし貼付候様御取扱
　委員　　　　有之度候也
　　　　(印)(印)
　　　　回米問屋米穀委托販売取扱規則取調委員ヘ御回答按
一翰啓上仕候、陳ハ兼テ御相談申上候米雑穀委托販売取扱規則頃日草按御取調相成候ニ付別冊相添ヘ御照会之趣承知付候、熟覧之上昨十五日同盟銀行定式集会ニ於テ一同ヘ報道ニ及候処、其旨趣至極完全更ニ異議無之候ニ付早々実施ノ御手配相成候様希望仕候、尤第九条外三ケ条字句中心附候廉有付箋仕置候間再按之上可然御取捨可被下候、右御
 - 第15巻 p.241 -ページ画像 
回答迄如斯御坐候也
　　明治十九年二月　　　　　　　　　　　銀行集会所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（抹消シアリ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　委(印)員(印)
　　　　東京廻米問屋草按取調委員
　　　　　　渋沢喜作殿
　　　　　　万代徳蔵殿
　　　　　　江口真造殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「東京銀行集会所」罫紙）
（別冊）

従来東京廻米問屋ニハ同業組合ノ設立アリト雖トモ未ダ其営業上一定ノ例規アラズシテ、各地方ノ荷主ニ対スル取引ノ方法一途ニ出デザルニヨリ往々問屋及荷主間ニ紛議ヲ生ジ、勢自ラ相互ノ信憑ヲ毀損スルノ恐ナシトセズ、是実ニ当業者ノ常ニ深ク遺憾トスル処ナリ、故ニ今般更ニ東京廻米問屋米雑穀取扱規則ヲ定メ、問屋及ビ荷主間ノ関係ヲ明ラカニシ、以テ各自拠ル処ヲ知ラシメ、能ク紛議ヲ未然ニ防ガントス、是蓋シ相互ノ信憑ヲ保持シ、結局本業ヲシテ益々盛大ナラシメントスルノ趣旨ニ外ナラザルナリ、依テ今仲間一同ノ合議ヲ以テ条款ヲ定ムルコト左ノ如シ
　　　　第壱条
此規則ハ明治十九年　月　日ヨリ実施スベシ
　　　　第弐条
此規則ハ実施ノ日ヨリ二十日以前ニ東京諸新聞紙ヲ以テ三日間広告シ且ツ常ニ各問屋ノ店頭ニ於テ最モ見易キ場所ヲ撰ミ、之レヲ掲ケ置クベシ
　　　　第三条
前条ノ手続キヲ為シタル后ハ東京廻米問屋ヘ対シテ米雑穀委托販売ニ関スル取引ヲ為スモノハ、凡テ此規則ノ趣旨ヲ承認シタル者ト看做スベシ
　　　　第四条
廻米問屋ハ荷主ノ委托ヲ受ケタル米雑穀ヲ売捌キ、併セテ荷主ノ為メニ該米雑穀ヲ引当トシテ金融ヲ図ルニ在リ、故ニ荷主ニ於テ廻米問屋ヘ米雑穀ヲ送附スル時、特ニ其申込又ハ依頼等ノ手続ヲ為サザルトモ問屋ハ総テ其売捌キ及ビ金融ヲモ委托セラレタル者トス、尤モ其依頼ニ応ズルト否トハ毎時問屋ノ都合ニ依テ取捨スベシ
　　　　第五条
凡テ通信掛合報知等ハ相当ノ手続ニ依リ本人若クバ代理人ニ宛テ発信スベシ、而シテ其方法ハ郵便・電信若クバ面談等其時ノ便宜ニ従フベシト雖トモ、発信者ハ其都度必ズ証拠ヲ保存スベシ、故ニ若シ此証拠ノ存スルモノハ仮令途中ニ於テ故障又ハ遅滞等ノ事アルモ、発信者ハ
 - 第15巻 p.242 -ページ画像 
其義務ヲ尽シタルモノト看做スベシ
　　　　第六条
委托米雑穀廻着ノ時ハ問屋ニ於テ相当ト見込ム処ノ相場ヲ荷主ニ報知シ、其売捌ノ諾否ヲ問合スベシ、而シテ荷主ノ指直アルモノハ其指直ニ依テ売捌キ、指直ナキモノハ成行相場ニ従ヒ売捌クベキモノトス、尤モ此場合ニ於テハ問屋ハ厚ク注意シテ市場ノ景況ヲ熟察シ相当ト見込ミタル所ノ相場並ニ方法ニ依リ売捌クベシ
　　　　第七条
委托米雑穀ヲ売捌ク法方ハ普通売付日ヨリ五日目限、米雑穀ノ所在地則チ問屋ノ蔵所ニ於テ金穀引替ニ其受渡ヲ為スモノトス、若シ時機ニ依リ別段ノ法方約定ヲ以テ売捌クベキ時ハ問屋ハ必ズ其趣キヲ荷主ニ報告スベシ
　　　　第八条
委托米雑穀ノ販売ハ総テ代金引替ニ受渡シスルモノナルカ故ニ問屋ノ不注意ヨリ生スル売懸金滞貸等ハ総テ問屋ノ負担タルベシ
　　　　第九条
荷主ノ照会ヲ経サル荷物ハ売却スルヲ得スト雖トモ、左ノ場合ニ於テハ問屋ノ専断ヲ以テ売却スル事アルベシ
　　一濡沢手変質或ハ変質セントスルカ、又ハ積置中他ノ変質物ノ為ニ其害ヲ受ケントスルモ予防ノ術ナキ時
　　一第十四条ノ委托期限ヲ経過シタルトキ
　　一第十五条《（三カ）》ノ返金期限ヲ経過シタルトキ
　　一第十六条ノ差金セザルトキ
　　　　第十条
桝廻シハ水揚ノ桝目ニ不拘売却シタル時ノ桝目ヲ以テ計算スルモノトス
　　　　第十一条
荷主ヨリ為替ヲ附セザル荷物ヲ廻送シ、之ニ対シ金員ヲ借ランコトヲ請求スルトキハ、問屋ニ於テ相当ノ金額ヲ貸スコトアルベシト雖トモ其貸借ヲ証明スル為メ相当ナル証書ヲ取リ置クベシ、若シ遠隔ノ地ヨリ電信又ハ郵便ヲ以テ請求スルトキハ、電信為替又ハ通常為換ノ手続ヲ以テ送金スルコトアルベシ、此場合ニ於テハ仮令前陳ノ証書ヲ取リ置カザルトモ、問屋及荷主ニ於テハ既ニ此手続ヲ以テ充分相互ノ貸借ヲ証明シタルモノト承認スベシ
　　　　第十二条
問屋ニ於テ為替付ノ荷物ヲ引受ケントスルトキハ、則其荷物ト引換ニテ為替金ヲ為替方ヘ直チニ支払フカ又ハ支払フベキ約束ヲ為シ、即時ニ其為換手形ヲ受取置クベシ、而シテ此手形ハ後日荷主ト決算ヲ為スニ当リ立換支払金ノ証拠トスルヲ得ヘキハ勿論、万一荷物ニ異変ヲ生スル等ノ場合ニ於テハ、問屋ハ之ニ依リテ為換振出人（荷主）ニ対シ為換手形約束手形条例ニ定ムル処ノ趣旨及此規則ニ示ス処ノ手続ニ従ヒ其権利ヲ主張スルヲ得ベシ
　　　　第十三条
委托米雑穀ヲ引当トシテ問屋ガ荷主ニ対スル諸仕払立替金ノ返金期限
 - 第15巻 p.243 -ページ画像 
ハ満三ケ月限リトス
　　　　第十四条
米雑穀委托ノ期限ハ満六ケ月限トス
　　　　第十五条
問屋ハ其委托サレタル米雑穀ノ相場下落シテ荷為換又ハ諸仕払立替金ニ不足ヲ生ジ、若クハ不足ヲ生スベキト思慮スル場合ニ於テハ、問屋ハ荷主ニ対シテ其差金ヲ請求スベシ、荷主ハ問屋ノ指定スル差金ヲ直チニ入金スベシ
（下ケ紙、栄一筆）
　［「問屋ハ其委托サレタル」ノ字ハ削去リテ可ナラン
　　　　第十六条
前条ノ場合ニ於テ若シ二回已上ノ請求ヲ受ケ、其差金ヲ入金セザルトキハ、問屋ハ其荷物ヲ時価成行相場ヲ以テ売却シ、其代金ヲ以テ諸掛リ及ビ諸立替金ノ元利ヲ引去リ、余金アレバ返金シ若シ不足ヲ生スルトキハ之ヲ請求スベシ
　　　　第十七条
委托米雑穀廻送ノ途中若シ其荷物ノ全部又ハ其幾分ヲ荷打又ハ濡沢手乱俵等ヲ云フ損失シタルトキハ、問屋ハ荷主ニ代リ保険状又ハ送状ノ趣旨ニ依リ相当ノ取計ヲ為スベキヲ以テ、荷主ハ積出シノ節必ズ其荷物ノ送状ヲ保険ヲ付シタル者ハ保険状ヲ添ヱ荷受ノ問屋ヘ送達スベシ、問屋ハ之レニ依リテ其荷受方ヲ為スべシ
　　但シ濡沢手等ヲ生ジタルトキハ特ニ定ムル所ノ引石割合ニ従フベシ
　　　　第十八条
委托販売ノ諸掛リトシテ荷主ヨリ問屋ヘ領収スル要目左ノ如シ、但シ其割合ハ問屋ニ於テ特ニ定ムル所ヲ以テ毎決算ノ際差引勘定ニ立ツヘキモノトス
　　一委托販売手数料（問屋ノ口銭）
　　一蔵敷料
　　一受渡小揚費及人足賃
　　　　第十九条
前条諸掛リノ外臨時ノ費用及電報料金打歩等ハ、其時ノ実費ニ依リ之ヲ問屋ノ諸立替金ト為シ計算スベシ
　　但シ問屋ノ注意ニ依リテ発信シタルモノハ之ヲ申受ルコトナシ
　　　　第弐拾条
諸立替金ノ利足特別ノ納定アルモノノ外ハ総テ其問屋ニ於テ時々定ムル所ノ割合ヲ以テ荷主ヨリ之ヲ領収ス、尤モ其計算ハ日割ヲ以テスベシ
　　　　第弐拾壱条
委托米雑穀ノ売代収入金ノ利足ハ之ヲ諸立替金ノ利足ト差引勘定スベシト雖トモ、諸立替金皆済后若クハ立替金ナキトキハ決算迄ノ間一時問屋ヘ借越勘定トナルモ其利足ハ仕払ハザルモノトス
　　　　第弐拾弐条
問屋ヘ一旦送付シタル荷物ヲ荷主ノ都合ニ依リ之ヲ受戻シ、又ハ他ノ問屋ヘ委托替等ヲ要スルノ時ハ諸掛リ並ニ諸立替金ノ元利ヲ払込タル上其荷物ヲ引取ルベシ
 - 第15巻 p.244 -ページ画像 
　　　　第弐拾三条
問屋ハ自己ノ名義ヲ以テ其委托ヲ受ケタル荷物ヲ売捌キ、又ハ之ヲ抵当トナシ、及其金員ヲ受取ル等ノ権利アリトス、故ニ荷主ニ於テ万一其買人ヨリ直チニ代価ヲ受取、若クバ問屋ノ承諾ヲ得スシテ其荷物ヲ他江抵当ト為スコトヲ得ズ
　　　　第弐拾四条
荷主若シ米雑穀ノ取引ニ関シ当組合ノ問屋ニ対シテ借越金ヲ為シ之ヲ返済セス、若クハ彼我ノ徳義ヲ破リ取引ノ妨ト認ムル時ハ、当組合ノ問屋ハ其荷主ニ対シテ一切取引セザルモノトス
　　　　第弐拾五条
荷主ヨリ問屋ニ係ル通信、往復ノ電報又ハ書翰ノ文意不分明ニシテ其取調ニ属スル間ハ其通信ノ効ヲ有セサルハ勿論ナレトモ、電報ノ如キハ往々誤字誤解等アルヲ免カレザルカ故ニ互ニ注意ヲ厚クスルヲ要ス尤モ其送達紙面ニ記載アル文意明瞭ナル者ハ之ニ憑リ取計フベキヲ以テ、後日苦情ヲ生スルトモ受信者ハ其責ニ任セザルベシ
（下ゲ紙、栄一筆）
　　凡テ荷主ヨリ問屋ヘ通信スル電報又ハ書翰等ノ文意不分明ニシテ其取調ニ属スル時間ハ其通信ノ効ヲ有セサルヘシ、且電報ノ如キハ往々誤字誤解ヲ免カレサルカ故ニ互ニ其注意ヲ厚フスルヲ要ス尤モ其送達紙面ニ記載アル（電報又ハ書翰共）文意明解シ得ラルル者ハ問屋ハ之レニ憑リテ取扱フヘキヲ以テ、後日荷主ヨリ苦情ヲ生スルトモ其責ニ任セサルヘシ[img 印]栄一
　　　　第弐拾六条
委托米雑穀預リ中問屋ハ常ニ注意ヲ尽スヘクシテ若シ不注意ヨリ生シタル損失ハ之ヲ弁償スベシト雖トモ、水火ノ災及防禦スベカラサル盗難其他非常ノ災厄ヨリ生シタル損害ハ問屋総テ其責ニ任セザルベシ
（下ゲ紙、栄一筆）
　　委托米雑穀預リ中ハ問屋ハ常ニ其保護ヲ怠ラサルヘシ、若シ問屋ノ不注意ヨリ生スル所ノ損失アレハ之レヲ問屋ヨリ弁償スヘシ、尤モ水火難及抗拒スヘカラサル盗難又ハ不測ノ天災地変ヨリ生スル損害ハ、問屋ハ総テ其責ニ任セサルヘシ[img 印]栄一
　　　　第弐拾七条
問屋ハ荷主ノ委托ヲ受ケ代理販売者タルガ故ニ荷主ノ掛引ニ関スル事柄及其他隠蜜《（密）》ノ事件等ハ決テ他言スベカラズ
　　　　第弐拾八条
荷主ト問屋ノ間ハ固ヨリ徳義親切ヲ旨トスルガ故ニ、平日取引ノ際或ハ此規則ニ定ムル所ノ権利義務ヲ相譲ルコトアルモ、之カ為メ他日此規則ヲ適用スルノ妨トナスベカラズ
　　　　第弐拾九条
此規則ニ掲クル事項ノ外尚各般ノ手続キハ総テ東京廻米問屋ノ慣習法ニ従フベシ
　　　　第三拾条
此規則ヲ改正シ又ハ増補ヲ要スル時ハ、当組合一同協議ノ上之ヲ改正増補スルヲ得、但シ此場合ニ於テハ第弐条ノ手続キニ従フベシ
右ノ条々組合ノ問屋一同協議ノ上決定シタル証拠トシテ各此ニ記名調印ス、向後此組合ニ加入シタルモノハ順次連署調印スベキモノ也
 - 第15巻 p.245 -ページ画像 
　　明治十九年　月　日　　　　　　　　　　　東京廻米問屋組合
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「廻米問屋仲間」罫紙）

（中井弘）書翰　渋沢栄一宛　（明治未詳年月）十三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
寒気甚敷候処益御壮栄奉賀候、扨滋賀県下常置委員林田騰九郎儀県下米穀商買之事ニ付御依頼仕度、何卒御閑ヲ得御一会被下候はゝ難有仕合奉存候、尚拝眉万可奉謝候　頓首
　　十三日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弘拝
　　　　青淵居士函丈
二白ゆるゆる拙者とも一夕御出会仕度御閑暇之折御一報可被下候

（八十島親徳）日録　明治四三年　（八十島親義氏所蔵）
四月九日　晴後雨
○上略
十時ヨリ出掛ケ深川ナル倉庫会社ニ至リ事務ヲ視、且目下構内ニ開設中ノ回米問屋組合主催米品評会ヲモ一覧ス、在来及新営ノトタン倉ヲ用ヒタルモ意外ニ立派ナル品評会ヲ現出セリ○下略