デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治40年5月（1907年）

是月、沖牙太郎ノ経営セル沖商会ハ組織ヲ更メテ合資会社ト為ス。栄一有限責任社員ニシテ監査役ニ就任、四十二年六月辞任ス。

渋沢栄一　日記　明治四〇年　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
四月三十日　半晴　暖　起床七時就蓐十二時
○上略　午前八時浅野総一郎氏来話、沖電気事業○中略　コトヲ談ス

竜門雑誌　第二二八号・第二三頁　明治四〇年五月
○合資会社沖商会の設立　沖牙太郎氏の経営に係る沖商会は今回資本金六十万円を以て会社組織と為し合資会社沖商会と称して電話・電信其他電気に関する機械・器具・材料・電線の製造・販売及同上外国品の輸入及電気に関する建設工事の請負業を営む筈にて、青淵先生・浅野総一郎・安田善次郎の諸氏も有限責任社員として加入せられたり

青淵先生公私履歴台帳　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　民間略歴（明治二十五年以後）
○上略
一合資会社沖商会監査役　四十年五月　同　○四十二年六月六日辞任
○中略
　　以上明治四十二年六月七日迄ノ分調

（八十島親徳）　日録　明治四〇年　　　　　　（八十島親義氏所蔵）
六月二十九日　晴　夕ヨリ雨
○上略　午後男爵ハ若主人・元治氏等ヲ伴ヒ沖商会ヲ視察セラル、予モ亦此行ニ加ハル、同商会ハ数月前ヨリ合資組織トナリ渋沢家之ニ加入セルモノ也、今日ハ新肴町ノ本店、入船町並ニ月島ノ工場ヲ視察ス、多クハ逓信省納ノ電話機ノ製造ナルガ、頗微細巧妙ノ仕事ニシテ、他ノ競争ナク非常ニ多忙ヲ極ムトイウ、庫品又工場ノ有様等頗ヨク整頓セリ、浅の氏亦同シク視察ス、同氏ハ沖ノ親戚且出資者ナリ○下略
　　　○中略。
七月廿九日　晴　アツシ
○上略　十時沖商会ニ至リ、若主人ト共ニ帳簿検査ヲ為シ、正午出勤○下略

（八十島親徳）日録　明治四一年　　　　　　（八十島親義氏所蔵）
十二月廿六日　曇
○上略　出勤ノ途札ノ辻ニ近頃引越シタル沖商会ニ至リ、渋沢家ヲ代表シテ会計検査ヲ為シ、十一時半出勤○下略
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竜門雑誌　第二五三号・第四七―四九頁　明治四二年六月
　　　　青淵先生の各種関係事業引退
我青淵先生　○中略　本月六日　○中略　同日附を以て左記の如き辞任書及書状を発送せられたり
○中略
　　　　辞任書
　拙者儀頽齢に及ひ事務節約致度と存候間貴社「何何役」辞任仕候此段申上候也
　　明治四十二年六月六日　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　書状
　　拝啓、時下向暑の候益々御清泰奉賀候、陳は小生儀追々老年に及ひ候に付ては関係事務を減省致度と存し、今回愈々第一銀行及東京貯蓄銀行を除くの外一切の職任を辞退致候事に取極候に付、別紙辞任書差出候間事情御了察の上可然御取計被下度候、尤も右様役名は相辞し候へ共向後とて従来の御交誼上必要に臨み御相談に与り候事は敢て辞する処に無之候間其辺御承知置被下度候、此段申添候　敬具
　　　明治四十二年六月六日　　　　　　　　　渋沢栄一
辞任せられたる各種事業の名称及び職任は左の如し
○中略
　　合資会社沖商会同上○監査役
○下略

（八十島親徳）　日録　明治四二年　　　　　（八十島親義氏所蔵）
七月廿日　八十一度　涼　曇
○上略　帰路札ノ辻沖商会ニ立寄リ、決算書類ニ対シ一応ノ検査ヲナシ、尚工場ヲ見ル、合資会社ナレトモ一個人時代ヨリノ習慣ニテ上下一致大車輪ニ勉励シ、殆一家ノ如キ有様、八十万円ノ資本ニ対シ半季七八万円ノ利益アリ（商ヒ高ハ四十万円位）　○下略

渋沢栄一　書翰　八十島親徳宛（明治四四年）八月七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（八十島親義氏所蔵）
　　　○本文略ス。
副申兼而元治より申出候沖商会へ之出資を治太郎其他之人ニて分配いたし、相残候分ハ基本財産之方ニて引取候事ハ治太郎之分ハ壱万五千円丈ケニ致度よし市郎氏面会被申聞候、又明石之分も同様之金高ニ為致度と存候、其外ニ望人あれハ幾分引分候も可然、其残高ハ前陳之如く御取扱可被成候、右乍序申添候也
　　八月七日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　栄一
　　　　八十島殿
　　　○当会社ハ先代沖牙太郎ガ、明治十四年一月京橋区新肴町十九番地ニ電機工場ヲ設ケ、電気諸機械製造販売並ニ電気諸工事ノ設計請負業ヲ創始セルニ始ル。後チ沖電気会社創立サレ、沖商会ト合併シテ資本金百五万円ノ株式会社トナレル際栄一其発起人タリ、又創立総会議長タリ。（雨夜譚会調査）