デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治29年9月24日（1896年）

栄一、梅浦精一等ト共ニ北越石油株式会社設立発起人トナリ、是日創業総会ニ於テ相談役トナル。

青淵先生六十年史（竜門社編）第二巻・第一六六頁明治三三年二月刊
　○第三十五章　石油業
　　　　第二節　北越石油会社
○上略
北越石油株式会社ハ明治二十九年梅浦精一・土田政次郎・小阪松五郎等《（小坂松五郎）》ノ発起ニ係リ、其資本金六拾万円ナリ、其事業ハ越後長岡地方ノ石油汲取販売ヲ目的トスルモノニシテ、現ニ徐々トシテ其経営ヲ進メツツアリ、青淵先生ハ発起人ノ依頼ニヨリ之ヲ賛助セラレ、現ニ相談役ニ列ス

東京経済雑誌　第三四巻第八四一号・第四三〇頁明治二九年九月五日
○北越石油株式会社の発起認可　兼て出願中なる同社（資本金六十万円）は去月二十九日発起認可を得たるに付、築地二丁目三十二番地事務所に発起人総会を開き、渋沢栄一・楠本正隆・大倉喜八郎・大橋佐平・伊藤幹一・土田政次郎・梅浦精一・小坂松五郎・横山栄七、九氏を創立委員とし、梅浦氏委員長に挙げられしが、同社は来月一日開業の見込なる由

中外商業新報　第四三八六号　明治二九年一〇月一日
　　　　△北越石油会社の創業総会
北越石油会社にては去る二十四日、日本橋倶楽部に於て創業総会を開き、楠本正隆氏議長席に着き創業以来諸般の報告を為し、次で定款の議定、創業費の承認及び取締役・監査役の報酬の議決を為し、次で梅浦精一氏の坑区視察の報告あり、次で役員の撰挙を為せしに当撰者は左の如し。
取締役会長　梅浦精一○専務取締役　小坂松五郎○取締役　大倉喜八郎・浅野総一郎・大橋佐平○監査役　伊藤幹一・土田政次郎・横山栄吉《（横山栄七）》○相談役　楠本正隆・渋沢栄一。

第三課文書類別　会社五明治二十九年　　　　　　（東京府庁所蔵）
明治廿九年八月十一日受日出　内務部第三課主任属
　知事(印)
　　内務部長(印)　　　第三課長(印)　　　農商掛
内三丙五七〇五号ノ二
 - 第15巻 p.442 -ページ画像 
　　　　北越石油株式会社発起申請書進達案
府下東京市京橋区木挽町九丁目十一番地梅浦精一外弐拾壱名ヨリ、北越石油株式会社設立発起認可申請書進達方願出候ニ付、予テ御内訓ノ旨趣ニ拠リ調査致候処、意見大略左記ノ通有之候条、此段副申上候也
　　年　月　日　知事
　　　　農商務大臣宛
一法律命令ニ違反セス
一公安・公益・風俗ヲ害スルノ虞ナシ
一何レノ階級ノ人民ニ於テモ、其生計及営業上多大ノ傷害ヲ被ムルノ虞ナシ
一坑内ハ勿論事業上ノ監督取締ヲ充分完全ナラシメサルニ於テハ、就業者ノ健康安全ヲ傷フノ虞アリト認ム
一発起人中ノ多数ハ相応ノ資産ト信用ヲ有スルヲ以テ企業ニ適スト認ム
一本会社ハ新潟県下古志・三嶋両郡ニ於テ石油ヲ採掘シ、及精製販売スルモノナルニヨリ、品質ノ精選ト価格低廉トニ注意セハ実際ノ需用応《（マヽ）》シ良好ノ結果ヲ得ヘキ望アリト認ム
一資本ノ金額ヲ募集シ得ヘキ見込アリ
一資本金額ハ企業上相当ト認ムルヲ以テ其目的ヲ達《（マヽ）》ニ足ルヘク、及法律命令ヲ尊行《（マヽ）》シ得サルノ虞ナシト認ム
　　　　右ニ付照会案
府下東京市京橋区木挽町九丁目十一番地梅浦精一外弐拾壱名発起ニ係ル北越石油株式会社発起申請書進達致候処、右附属書類中礦区並地所建物売買予約書ノ謄本ハ正式ノ手続ヲ欠キタルモノニ付、不都合トハ上存候得共、目下発起人小坂松五郎元本携帯旅行致居候ニ付、不日正式謄本ト引替可致旨ヲ以テ発起人ヨリ至急進達方申出候ニ付、書面其儘及進達候間、可然御取計相成度ノ次第モ有之、此段及照会候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　　　知事
　　　　農商務省商工局長宛
　　（理由）本件ハ最モ至急ヲ要スル趣ヲ以テ直ニ進達方願人ヨリ口頭申出有之候処、発起人中ノ過半ハ府下有名ノ者ニ有之ニ付、余ノ者モ相当ノ身元アルモノト見做シ、此度限リ慣例ノ調査手続ヲ一切省キ書面其儘進達スルモノトス

　　　　内三丙五七〇五号
　　　　北越石油株式会社発起認可申請書進達願
今般私共新潟県下古志・三島両郡ニ於テ石油採掘ノ上販売ノ目的ヲ以テ北越石油株式会社発起仕度候ニ付テハ、別冊主務省ヘ御進達被成下度此段奉願候也
　　明治二十九年八月六日
　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人
　　　　　　　　　　　　　東京市京橋区木挽町九丁目十一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　同市日本橋区本町三丁目八番地
 - 第15巻 p.443 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大橋佐平(印)
　　　　　　　　　　　　　新潟県古志郡千手町大字千手百四拾壱番戸
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小坂松五郎(印)
　　　　　　　　　　　　　新潟県古志郡長岡町大字柳原弐拾番戸
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山栄七(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市京橋区木挽町八丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土田政次郎(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市麹町区永田町一丁目卅一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楠本正隆
　　　　　　　　　　　　　東京市麻布区市兵衛町一丁目十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐藤甚兵衛
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町四丁目拾番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広部清兵衛
　　　　　　　　　　　　　東京市本郷区駒込千駄木林町四十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡本善七(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市赤坂区葵町三番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大倉喜八郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同市麻布区飯倉片町二十七番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹内綱(印)
　　　　　　　　　　　　　同市赤坂区氷川町四十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大八木喬朶(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代理　竹内綱(印)
　　　　　　　　　　　　　同市京橋区元数寄屋町三丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河村隆実(印)
　　　　　　　　　　　　　同市京橋区築地三丁目十五番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手島鍈次郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同市日本橋区青物町拾五番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加東徳三(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市芝区芝公園地十五号二番
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大江卓(印)
　　　　　　　　　　　　　同市小石川区江戸川町廿八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伊藤幹一(印)
　　　　　　　　　　　　　同市牛込区市ケ谷加賀町十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中島行孝(印)
　　　　　　　　　　　　　同市麹町区内山下町一丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山孫一郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同深川区福住町四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　　　　　　　　　　同京橋区大鋸町六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　喜谷市郎右衛門(印)
　　　　　　　　　　　　　同市深川区清住町壱番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅野総一郎(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代　白石元治郎
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿
 - 第15巻 p.444 -ページ画像 
（別冊）
　　　　北越石油株式会社発起人認可申請書
今般私共新潟県下越後国古志・三島両郡ニ於テ石油ヲ採掘シ、原油ノ儘若クハ精製ノ上之ヲ販売スルヲ以テ営業ノ目的トシ北越石油株式会社ヲ発起仕度候ニ付テハ、何卒御認可被成下度、即チ別冊目論見書及仮定款相添此段申請仕候也
　　明治二十九年八月六日
　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人
　　　　　　　　　　　　　東京市京橋区木挽町九丁目十一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大橋佐平(印)
　　　　　　　　　　　　　新潟県古志郡千手町大字千手百四拾壱番戸
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小坂松五郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同県同郡長岡町大字柳原弐拾番戸
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山栄七(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市京橋区木挽町八丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土田政次郎(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市麹町区永田町一丁目卅一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楠本正隆(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市麻布区市兵衛町一丁目十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐藤甚兵衛(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町四百拾番地《（マヽ）》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広部清兵衛(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市本郷区駒込千駄木林町四十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡本善七(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市赤坂区葵町三番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大倉喜八郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同市麻布区飯倉片町二十七番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹内綱(印)
　　　　　　　　　　　　　同市赤坂区氷川町四十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大八木喬朶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代理　竹内綱(印)
　　　　　　　　　　　　　同市京橋区元数寄屋町三丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河村隆実(印)
　　　　　　　　　　　　　同市京橋区築地三丁目十五番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手島鍈次郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同市日本橋区青物町拾五番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加東徳三(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市芝区芝公園地十五号二番
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大江卓(印)
　　　　　　　　　　　　　東京市小石川区江戸川町廿八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伊藤幹一(印)
　　　　　　　　　　　　　同市牛込区市ケ谷加賀町十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中島行孝(印)
 - 第15巻 p.445 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　同市麹町区内山下町一丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山孫一郎(印)
　　　　　　　　　　　　　同　深川区福住町四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　　　　　　　　　　同　京橋区大鋸町六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　喜谷市郎右衛門(印)
　　　　　　　　　　　　　同市深川区清住町壱番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅野惣一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代　白石元治郎(印)
　　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿
　　　○目論見書後掲（第四五八頁）ニツキ略ス。

　　　　北越石油株式会社仮定款
　　　　　　第壱章　総則
第壱条　本社ハ北越石油株式会社ト称ス
第弐条　本社ハ本店ヲ東京市　ニ置キ支店ヲ新潟県下越後国長岡町ニ置ク
第参条　本社ハ礦油ヲ採掘シ、原油ノ儘若クハ精製ノ上之ヲ販売スルヲ以テ営業ノ目的トス
第四条　本社ハ存立期限ヲ定メス、故ニ法律・規定又ハ株主総会ノ決議ニ依ルニアラザレハ解散スルコトナシ
第五条　本社ノ資本金ハ六拾万円トシ、之ヲ壱万弐千株ニ分チ壱株金五拾円トス
第六条　本社ノ印章ハ左ノ如シ
　　　北越石油株式会社　北越石油株式会社
第七条　本社ノ責任ハ有限ニシテ株主ノ負担スベキ義務ハ株金額ニ止ルモノトス
　　　　　　第弐章　株式及株主
第八条　本社ノ株主ハ、定款ヲ遵守シ株主名簿ニ登録ヲ受ケタル者ニ限ル
　　但シ無能力者ハ、適法ノ代理人若クハ後見人ニ依リ、法人及ヒ団体ハ代表者ニ依リ株主タルコトヲ得
第九条　本社ノ株式ハ一株毎ニ株券壱通ヲ発行スルモノトス
　　但シ株券全額払込ニ至ル迄ハ仮株券ヲ発行シ、完納ニ至リ本株券ト交換スベシ
第拾条　本社ノ株券ニハ其金額・発行ノ年月日・番号・社名・社印・取締役ノ氏名印章・株主ノ氏名及其摘要事項ヲ記載ス
第十一条　株券ヲ毀損シタル時ハ其株券ニ請求書ヲ添ヘ其更換ヲ請求スルコトヲ得
第十二条　株券ヲ滅却若クハ紛失シタル時ハ其事由ヲ詳記シタル請求書ニ、証人弐名以上連署シテ新ニ株券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得、此場合ニ於テハ会社ハ請求者ノ費用ヲ以テ三日間其旨ヲ新聞ニ公告シ、三十日ヲ経テ故障ヲ生セサルトキハ其請求ニ応スベシ
 - 第15巻 p.446 -ページ画像 
第十三条　株式ノ売買譲与ハ本社所定ノ書式ニ従ヒ証書ヲ作リ株券ニ添ヘ名義書換ヲ請求スベシ、本社ハ相当ノ照査ヲナシ其名義ヲ書換フベシ
第十四条　第十一条・第十二条ノ場合ニ在テハ其請求者ヨリ株券壱通ニ付金弐拾銭ヲ、第十三条ノ場合ニ在テハ書換手数料トシテ金拾銭ヲ会社ニ支払フヘシ
第十五条　本社ノ株式ヲ新ニ取得シタルモノハ、株主名簿ニ記載ノ日付以前ニ於テ本社ヨリ前株主ニ通知シタル総テノ事項ヲ知了シタルモノト見做スヘシ
第十六条　株主氏名・住所及印鑑ヲ変更シタルトキハ直チニ本社ニ届出テ其名簿ノ更正ヲ請求スヘシ
第十七条　本社通常総会ノ前二十日間ハ株式名義書換ヲ停止ス
　　　　　　第三章　株金払込
第十八条　本社ノ株金ハ設立免許ノ日ヨリ三ケ月以内ニ壱株ニ付金拾弐円五拾銭宛ヲ払込マシメ、残額ハ来ル明治三十五年十二月迄ニ払込マシムルモノトス
　　但シ株金払込期日及金額ハ取締役会ニ於テ決議シ、少クトモ十四日以前ニ各株主ニ通知スヘシ
第十九条　株主ニ於テ株金払込期日ヲ遅延シタルトキハ、其払込ムヘキ金額ニ対シ其期日ノ翌日ヨリ百円ニ付日歩四銭ノ割合ヲ以テ遅延利子ヲ仕払ヒ、且ツ其遅延ノ為メ生シタル費用ヲ仕払フモノトス
第二十条　株主ニ於テ株金ノ払込ヲ怠リタルトキハ、取締役ハ十四日ヨリ少カラザル期日ヲ指定シ其期日迄ニ払込ムベキ旨ヲ催告スヘシ前項ノ催告ヲ受クルモ尚株金ノ払込ヲナサヾルトキハ、本社ハ其株券ヲ公売ニ付シ、其取得金ヲ以テ払込金及遅延利子並ニ之カ為メニ生シタル総テノ費用ノ償還ニ充ツヘシ、此場合ニ於テ剰余アレハ之ヲ返却シ不足アレハ之ヲ追徴スヘシ
　　　　　　第四章　取締役及監査役
第二十一条　本社ハ取締役五名・監査役弐名ヲ置ク
第二十二条　取締役及監査役ハ総会ニ於テ五拾株以上ヲ所有スル株主中ヨリ之ヲ撰挙ス
第二十三条　取締役ノ任期ハ三ケ年トシ、監査役ノ任期ハ二ケ年トス
　　但満期ニ至リ再撰セラルヽコトヲ得
第二十四条　役員ノ満期改撰ハ通常総会ト同日ニ臨時総会ヲ開キ之ヲ行フヘシ、然レトモ役員不次ノ欠員ヲ生シタルトキハ特ニ臨時総会ヲ開キ其補欠員ヲ撰挙スヘシ、但シ現役員法定ノ数ニ欠クルコトナク且事務執行ニ差支ヲ生セサル場合ニ於テハ、次回ノ改撰期迄其補欠撰挙ヲ延期スルコトヲ得、其補欠撰挙ニ当撰シタルモノヽ任期ハ前任期ヲ継承スルモノトス
第二十五条　取締役ハ会社一切ノ業務ヲ総括シ之ヲ施行スルノ権ヲ有シ、且ツ支配人以下ノ役員ヲ任免黜陟スルノ権ヲ有ス、然レトモ法律・命令・定款及総会ノ決議ヲ遵守スルヲ要ス
第二十六条　取締役ハ同僚中ヨリ取締役会長及専務取締役ヲ互撰スヘシ
 - 第15巻 p.447 -ページ画像 
第二十七条　取締役及監査役ハ、其所有ノ株式五拾株ヲ会社ニ預ケ置キ、在任中ハ之ヲ引出スコトヲ得ス
第二十八条　監査役ハ取締役ノ業務執行ガ法律・命令・定款及総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヲ監視スヘシ
第二十九条　監査役ハ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案ヲ撿査スヘシ
第三十条　取締役及監査役ノ報酬ハ総会ニ於テ之ヲ定ム
　　　　　　第五章　株主総会
第三十一条　本社ノ株主総会ハ通常総会・臨時総会ノ二種トス
第三十二条　通常総会ハ毎年七月・一月ノ両度之ヲ開ク
第三十三条　通常総会ニ於テハ前事業期ノ諸計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書及配当金積立金・役員賞与金ノ分配案ヲ議決スルノ外、一切他議ニ渉ルコトヲ得ス
第三十四条　臨時総会ハ取締役又ハ監査役ニ於テ必要ト認ムルトキ、又ハ総株数四分ノ一以上ニ当ル株主ノ請求アリタルトキ之ヲ招集スルモノトス
第三十五条　総会ヲ招集スルニハ、取締役会ニ於テ決議シ、時日・場所・会議ノ目的及事項ヲ記載シタル書面ヲ以テ、少クトモ十五日以前ニ株主ニ通知スルコトヲ要ス
第三十六条　株主ヨリ臨時総会招集ノ請求アルトキハ其目的ヲ明記シテ会社ニ差出スヘシ
第三十七条　総会ニ於テハ総株高ノ少クトモ五分ノ一（委任状ヲ加ヘ）以上ヲ有スル株主ノ出席ヲ要ス
第三十八条　総会ニ於テ出席株主定数ニ満ザレハ仮リニ決議ヲナシ、十五日以内ニ再ヒ総会ヲ招集スヘシ、其通知ニハ第一総会ノ決議ヲ明記シ、且第二ノ総会ニ於テ出席株主議決権ノ多数ヲ以テ第一総会ノ決議ヲ認可シタルトキハ、之ヲ有効トナスベキ旨ヲ明記スヘシ
第三十九条　総会ノ議長ハ取締役会長之ニ任スヘシ、取締役会長出席セサレハ他ノ取締役代テ議長トナルベシ、若又取締役出席セザルトキハ株主中ノ一名ヲ推シテ議長トナスベシ
第四拾条　総会ノ議長ハ会議ヲ延期シ会場ヲ転ズルコトヲ得
第四十一条　総会ノ議決ハ出席株主議決権ノ過半数ニ依ル、可否同数ナルトキハ議長ハ之ヲ裁決スルノ権ヲ有ス
第四十二条　総会ノ決議シタル事項ハ決議録ニ登載シ、取締役署名捺印ノ上之ヲ保存シ、其謄本ヲ作リテ株主ニ通知スベシ
第四十三条　本社ノ総会ニ於ケル議決権ハ其所有ノ株数壱株毎ニ壱個ノ議決権ヲ有ス
第四十四条　株主自ラ総会ニ出席スルコトヲ能ハザルトキハ、会社所定ノ書式ニ依リ委任状ヲ作リ株主中ノ一人ヲシテ代理セシムルコトヲ得
　　　　　　第六章　計算及配当
第四十五条　本社ハ壱ケ年ヲ二期ニ分チ其総勘定決算ヲナスモノトス
　　但毎年一月ヨリ六月迄ヲ一期トシ七月ヨリ十二月迄ヲ一期トス
第四十六条　毎期ノ配当金ハ六月・十二月末日現在ノ株主ニ割賦スル
 - 第15巻 p.448 -ページ画像 
モノトス
第四十七条　本社ノ総勘定決算ヲナスニハ、其前一期間総収入金ノ内ヨリ一切ノ諸経費及諸損失ヲ引去リ、其残額ヲ純益トシ之ヲ配当スルコト左ノ如シ
　　第一　純益金ノ弐拾分ノ一　積立金
　　第二　純益金ノ百分ノ一　役員賞与金
　　第三　株式配当金　若干
　　　　　　第七章　解散
第四十八条　本社ハ総会ノ議決ニ依リ任意ニ解散スルコトヲ得
第四十九条　解散ハ任意議決ノ日ヲ以テ初日トナシ、解散ニ関スル総テノ手続ヲナス
第五拾条　解散ノ議決ヲナシタルトキハ、直チニ株主中ヨリ精算人三名ヲ撰挙シ、其事務委任細則及給料ヲ議定スヘシ
　　　　　　第八章
第五十一条　此定款ハ株主総会ノ決議ヲ経テ更正加除スルコトヲ得ヘシ
右仮定款之通相違無之ニ付、発起人一同署名捺印仕候也
　　明治廿九年　月　日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　署名捺印

北越石油株式会社設立認可之儀申請仕候ニ付、石油礦区並地所建物売買予約証書可差出旨御下命之処、右正式謄本之儀ハ会社発起人小坂松五郎携帯帰国仕リ、又公証人中村正直儀ハ当時旅行中ニ有之、旁差掛リ正式謄本ヲ得兼候、然ルニ会社発起申請書之儀ハ本月十八日迄ニ正式謄本ニ引替進達可仕候間至急御允裁ヲ奉仰度存候間、契約書ハ先以テ別紙扣書ノ儘其筋ヘ御上申被成下度、此段奉副願候也
　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人惣代
　　　　　　　　　　　　東京市京橋区木挽町九丁目拾一番地
　　明治廿九年八月十一日　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿

（別紙）
第伍阡伍陌伍拾漆号
　　　　石油礦区並ニ地所建物売買予約証書謄本
北越石油株式会社長小坂松五郎・同会社専務取締役金安仁輔両名代理田中弥三次ハ、大橋佐平・梅浦精一及ヒ横山栄七代理安倍徹蔵等ト明治弐拾玖年捌月拾参日公証人中村正直役場ニ於テ、桜井庄太郎ノ立会ヲ以テ左ノ契約ヲ締結ス
第壱条　北越石油株式会社ハ該社所有ニ係ル左記ノ礦区権並ニ諸物件ヲ代金肆万参阡伍陌円ヲ以テ大橋佐平・梅浦精一・横山栄七等ヘ売渡シ、右参名ハ之ヲ買受クル旨互ニ予約シタルコトヲ陳述シタリ
　　　　売買物件及礦区
　新潟県越後国古志郡山本村大字浦瀬小字腐沢榎峠ノ内
　一石油礦区坪数弐万玖阡参陌陸拾五坪
　　　此借区番号伍阡陌肆拾肆号
 - 第15巻 p.449 -ページ画像 
　新潟県越後国古志郡山本村大字浦瀬地内内腐沢壱万伍千陸陌肆拾参番《（衍カ）》
　一田玖歩
　字同壱万伍阡陸陌拾捌番
　一田拾歩
　字同壱万伍阡陸陌拾玖番
　一田拾玖歩
　字同壱万伍阡陸陌弐拾弐番
　一田拾伍歩
　字同壱万伍阡陸陌弐拾捌番
　一田壱畝捌歩
　字同壱万伍阡陸陌参拾参番
　一田弐畝拾歩
　字同壱万伍千陸陌参拾肆番
　一田壱畝伍歩
　字同壱万伍阡陸陌参拾伍番
　一田壱畝陸歩
　字同壱万伍阡陸陌参拾陸番
　一田参畝陸歩
　字同壱万伍阡陸陌参拾漆番
　一田弐拾玖歩
　字同壱万伍阡陸陌参拾玖番
　一田肆畝弐拾陸歩
　字同壱万伍阡陸陌拾陸番
　一畑玖歩
　字同万伍阡肆陌陸拾壱番
　一畑壱畝拾肆歩
　字同壱万伍阡漆陌拾参番
　一畑弐畝拾壱歩
　字榎峠壱万伍阡弐陌捌拾漆番
　一畑弐畝拾伍歩
　字同壱万伍阡肆陌陸拾玖番
　一山拾歩
　字同壱万伍阡漆陌拾弐番
　一山陸畝弐拾壱歩
　字同壱万伍阡弐陌漆拾弐番
　一畑壱畝拾捌歩
　字腐沢壱万伍阡陸陌拾伍番
　一田壱畝歩
　字同壱万伍阡陸陌弐拾壱番
　一田弐拾玖歩
　字同壱万伍阡陸陌弐拾壱番
　一田弐拾玖歩
　字榎峠壱万伍阡弐陌捌拾参番
 - 第15巻 p.450 -ページ画像 
　一畑壱畝漆歩
　　反別合計参反陸畝陸歩
　新潟県越後国古志郡草生津町大字草生津弐陌捌拾壱番戸所在
　一事務所　参間肆間
　　　此坪拾弐坪
　一土蔵戸前　弐間拾弐間弐尺
　　　此坪弐拾肆坪陸合陸夕
　一両便所　肆尺陸尺
　　　此坪陸合漆夕
　一土蔵　肆間拾弐間
　　　此坪肆拾捌坪
　一洗場　肆間伍間
　　　此坪弐拾坪
　一口付場　玖間弐間
　　外歴木　参尺陸尺
　　　此合坪参坪伍合
　一釜場　伍間玖間半
　　附ケ下ケ　陸間肆尺
　一タレ場　玖尺弐間半
　　　此坪参坪漆合伍夕
　一土蔵　参間半伍間
　　　此坪拾漆伍合《（坪脱）》
　浦瀬山出張所
　一事務所　弐間肆間
　　歴木　陸尺
　　　此合坪拾弐坪
　同上
　一工夫居宅　参間伍間
　　　此坪拾伍坪
　　　総坪数弐陌捌坪伍合捌夕
　右石油礦業ニ附属スル諸器械及常用物品並ニ同会社ノ権利ニ属スル財産等別冊第拾参回調製ノ通リナリト雖モ、本年肆月以来増減シタル物品ハ現在有形ノ儘悉皆ナリ
第弐条　前条売買ノ履行ハ売渡人ニ於テ会社任意解散ノ手続ヲ了シ、該会社ノ清算人ヨリ礦区権及ヒ不動産ヲ買受人ノ名義ニ書換、他ノ諸物件ハ該礦区所在ノ地ニ於テ買受人ヘ引渡ヲ為スト同時ニ、買受人ハ代金ヲ支払フコトヲ互ニ約諾シタル旨陳述シタリ
　　但本件売買履行ノ期日ハ明治弐拾玖年拾月参日ト定ムル旨互ニ承認シタリ
第参条　北越石油株式会社ハ是迄毎年肆月ヨリ玖月迄ヲ以テ壱季間ノ決算期ト為シタルニ付、前記売買予約ハ成立スルモ物件ノ管理及礦業事務ハ、明治弐拾玖年玖月参拾日迄売渡人ニ於テ担任シ、壱季間（明治弐拾玖年肆月ヨリ同年玖月マデ）ノ決算結了ノ上此季間ノ純益金肆阡円以上ヲ買受人ヘ引渡ス旨陳述シタリ
 - 第15巻 p.451 -ページ画像 
第肆条　北越石油株式会社ハ第参条ノ如ク明治弐拾玖年玖月参拾日ヲ以テ可引渡、純益金肆阡円以上ノ金額ハ素ヨリ売買代価中ニ包含シ当然此純益アルコトヲ買受人ヘ担保シタルモノナルニ依リ、決算期ニ至リ純益減少スル時ハ其予定額マテ売渡人ニ於テ補足シ、買受人ニ対シテハ金肆阡円ニ下ラサル金額ヲ引渡ス旨陳述シタリ
第伍条　北越石油株式会社ハ別冊諸物件明細書ニ記載シアル通リ、同社ノ所有ニ係ル公債証書額面壱阡円及ヒ積立準備金其他ノ債権ヲ合計シ計金参阡円ニ下ラザル財産ヲ、明治弐拾玖年拾月参日限リ諸物件ト共ニ買受人ヘ引渡ス旨陳述シタリ
第陸条　売渡人ニ於テ前記契約ニ違背シ期日ニ前記諸物件ノ引渡ヲ怠ル時ハ、買受人ヘ対シ金伍千円ノ違約償金ヲ支払フ旨陳述シタリ
第漆条　買受人ニ於テ前記契約ニ違背シ期日ニ代金ノ支払ヲ怠リタル時ハ、違約償金トシテ金伍阡円ヲ売渡人ヘ支払フ旨陳述シタリ
右関係人ヘ読聞カセタル処一同相違ナキ事ヲ認メ左ニ署名捺印ス
　　　　　　　　　　新潟県越後国古志郡草生津町大字草生津弐陌捌拾壱番戸
　　　　　　　　売渡人　　　　　　　　　　北越石油株式会社
　　　　　　　　　　新潟県越後国古志郡千手町大字千手陌肆拾壱番戸住居平民醤油醸造営業
　　　　　　　　右北越石油株式会社長　　　小坂松五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当肆拾陸年壱ケ月
　　　　　　　　　　新潟県越後国三島郡中野島村大字西野参拾壱番戸住居平民農
　　　　　　　　右北越石油株式会社専務取締役　金安仁輔
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当参拾玖年壱ケ月
　　　　　　　　　　東京府武蔵国東京市芝区三田壱丁目参拾玖番地住居平民無職業
　　　　　　　　右小坂松五郎金安仁輔両名代理
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　田中弥三次
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当陸拾捌年弐ケ月
右田中弥三次ハ北越石油株式会社長小坂松五郎及ヒ同会社専務取締役金安仁輔両名ノ部理代人タル委任状ヲ所持シタリ
　　　　　　　　　　東京府武蔵国東京市日本橋区本町参丁目捌番地住居平民書籍出版業
　　　　　　　　買受人　　　　　　　　　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当陸拾年玖ケ月
右大橋佐平ハ管轄区長ノ証明ヲ以テ本人タルコトヲ証シタリ
　　　　　　　　　　東京府武蔵国東京市京橋区木挽町玖丁目拾壱番地住居平民会社員
　　　　　　　　買受人　　　　　　　　　　　梅浦精一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当肆拾肆年参ケ月
　　　　　　　　　　新潟県越後国古志郡長岡町大字柳原弐拾番戸住居平民唐物商
　　　　　　　　買受人　　　　　　　　　　　横山栄七
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当伍拾伍年漆ケ月
 - 第15巻 p.452 -ページ画像 
　　　　　　　　　　東京府武蔵国北豊島郡南千住町千住南組玖陌肆拾伍番地堀口敬三郎方同居士族安倍小次郎長男無職業
　　　　　　　　右横山栄七代理　　　　　　安倍徹蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当弐拾壱年漆ケ月
右安倍徹蔵ハ横山栄七ノ部理代人タル委任状ヲ所持シタリ
　　　　　　　　　　東京府武蔵国東京市京橋区木挽町参丁目伍番地住居士族無職業
　　　　　　　　立会人　　　　　　　　　　桜井庄太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当肆拾肆年肆ケ月
右契約ヲ為シタル事ヲ確証スル為メ左ニ署名捺印スルモノ也
　　明治弐拾玖年捌月拾参日公証人中村正直役場ニ於テ
　　　　　　京橋区裁判所管内東京府武蔵国東京市京橋区銀座参丁目拾玖番地住居
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中村正直
此謄本ハ大橋佐平ノ請求ニ依リ原本ニ就キ謄写ス、依テ其確実ヲ証スル為メ左ニ署名捺印スルモノ也
　　明治弐拾玖年玖月弐日公証人中村正直役場ニ於テ
　　　　　　京橋区裁判所管内東京府武蔵国東京市京橋区銀座参丁目拾玖番地住居
　　　　　　　　公証人　　　　　　　　　中村正直印
農商務省指令商第一〇八二四号
　　　　　　　　　　　　　　東京府東京市京橋区木挽町九丁目十一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　外二十一名
明治廿九年八月六日付申請北越石油株式会社発起ノ件認可ス
　　明治廿九年八月卅一日
　　　　　　　　　　　　　農商務大臣　子爵榎本武揚

　　　　受取証
一北越石油株式会社発起申請願
　右正ニ受領仕候也
　　　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人
　　明治廿九年九月二日　　　総代
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　農商務大臣　子爵榎本武揚殿

　　　　仮定款訂正届
第三十四条中「四分ノ一」トアルヲ「五分ノ一」ト訂正ス
第四十四条中株主中ノ下ニ役員外ノ三字ヲ加入ス
　右之通訂正仕候ニ付此段御届申上候也
　　明治廿九年九月二日　　　北越石油株式会社発起人総代
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
 - 第15巻 p.453 -ページ画像 
　　　　農商務大臣　子爵榎本武揚殿

第三課文書類別　会社五明治二十九年　（東京府庁所蔵）
明治廿九年十月五日受日出　内務部第三課主任属
　知事(印)　　参事官(印)
　　内務部長(印)　　　第三課長(印)　　　農商掛
内三丙六六六一号ノ三
　　　　北越石油株式会社設立免許
　　　　申請書進達案
曩ニ北越石油株式会社設立発起認可相成候処、今般発起人総代梅浦精一ヨリ右設立免許申請書進達方願出候ニ付、調査候処不都合之廉無之ト被存候ニ付書面及進達候也
　　年　月　日　知事
　　　　農商務大臣宛
内三丙六六六一号
別紙北越石油株式会社設立免許申請書農商務大臣ヘ御進達被成下度此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人総代
　　明治廿九年九月卅日　　　　東京市京橋区木挽町九丁目十一番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　東京府知事　侯爵久我通久殿

　　　　北越石油株式会社定款
　　　　　　第一章　総則
第一条　本社ハ北越石油株式会社ト称ス
第二条　本社ハ本店ヲ東京市　ニ置キ、支店ヲ新潟県下越後国長岡町ニ置ク
第三条　本社ハ礦油ヲ採掘シ、原油ノ儘若クハ精製ノ上之ヲ販売スルヲ以テ営業ノ目的トス
第四条　本社ハ存立期限ヲ定メス、故ニ法律・規定又ハ株主総会ノ決議ニ依ルニアラサレハ解散スルコトナシ
第五条　本社ノ資本金ハ六拾万円トシ、之ヲ壱万弐千株ニ分チ壱株金五拾円トス
第六条　本社ノ社印ハ左ノ如シ
北越石油株式会社
第七条　本社ノ責任ハ有限ニシテ、株主ノ負担スヘキ義務ハ株金額ニ止ルモノトス
　　　　　　第二章　株式及株主
第八条　本社ノ株主ハ定款ヲ遵守シ株主名簿ニ登録ヲ受ケタル者ニ限ル
　　但シ無能力者ハ適法ノ代理人若クハ後見人ニ依リ、法人及団体ハ代表者ニ依リ株主タルコトヲ得
 - 第15巻 p.454 -ページ画像 
第九条　本社ノ株券ハ甲乙二種トシ甲ハ一株券乙ハ十株券トス
　　但シ株金全額払込ニ至ル迄ハ仮株券ヲ発行シ完納ニ至リ本株券ト交換スヘシ
第十条　本社ノ株券ニハ其金額・発行ノ年月日・番号・社名・社印・取締役ノ氏名印章・株主ノ氏名及其摘要事項ヲ記載ス
第十一条　株券ヲ毀損シタル時ハ其株券ニ請求書ヲ添ヘ其更換ヲ請求スルコトヲ得
第十二条　株券ヲ滅却若クハ紛失シタル時ハ、其事由ヲ詳記シタル請求書ニ証人弐名以上連署シテ新ニ株券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得、此場合ニ於テハ会社ハ請求者ノ費用ヲ以テ三日間其旨ヲ新聞紙ニ公告シ三十日ヲ経テ故障ヲ生セサルトキハ其請求ニ応スヘシ
第十三条　株式ノ売買譲与ハ本社所定ノ書式ニ従ヒ証書ヲ作リ株券ニ添ヘ名義書換ヲ請求スヘシ、本社ハ照査ヲナシ其名義ヲ書換フヘシ
第十四条　第十一条・第十二条ノ場合ニ在ツテハ其請求者ヨリ株券壱通ニ付金弐拾銭ヲ、第十三条ノ場合ニ在ツテハ書換手数料トシテ金五銭ヲ会社ニ支払フヘシ
第十五条　本社ノ株式ヲ新ニ取得シタルモノハ株主名簿ニ記載ノ日附以前ニ於テ、本社ヨリ前株主ニ通知シタル総テノ事項ヲ知了シタルモノト見做スヘシ
第十六条　株主、住所氏名及印鑑ヲ変更シタル時ハ直チニ本社ニ届出テ、其名簿ノ更正ヲ請求スヘシ
第十七条　本社通常総会ノ前廿日間ハ株式名義書換ヲ停止ス
　　　　　　第三章　株金払込
第十八条　本社ノ株金ハ設立免許ノ日ヨリ三ケ月以内ニ壱株ニ付金拾弐円五拾銭宛ヲ払込マシメ、残額ハ来ル明治卅五年十二月迄ニ払込マシムルモノトス
　　但株金払込期日及金額ハ取締役会ニ於テ決議シ少クトモ十四日以前ニ各株主ニ通知スヘシ
第十九条　株主ニ於テ株金払込期日ヲ遅延シタルトキハ、其払込ムヘキ金額ニ対シ其期日ノ翌日ヨリ、百円ニ付日歩四銭ノ割合ヲ以テ其遅延利子ヲ仕払フモノトス
第廿条　株主ニ於テ株金ノ払込ヲ怠リタルトキハ、取締役ハ十四日ヨリ少ナカラサル期日ヲ指定シ其期日迄ニ払込ムヘキ旨ヲ催告スヘシ
　　前項ノ催告ヲ受クルモ尚株金ノ払込ヲナサヽルトキハ本社ハ其株券ヲ公売ニ付シ、其取得金ヲ以テ払込金及遅延利子並ニ之カ為ニ生シタル総テノ費用ノ償還ニ充ツヘシ、此場合ニ於テ剰余アレハ之ヲ返付シ不足アレハ之ヲ追徴スヘシ
　　　　　　第四章　取締役及監査役
第廿一条　本社ハ取締役五名監査役三名ヲ置ク
第廿二条　取締役及監査役ハ総会ニ於テ五十株以上ヲ有スル株主中ヨリ之ヲ撰挙ス
第廿三条　取締役ノ任期ハ三ケ年トシ、監査役ノ任期ハ二ケ年トス
　　但満期ニ至リ再撰セラルヽコトヲ得
第廿四条　役員ノ満期改撰ハ通常総会ト同日ニ臨時総会ヲ開キ之ヲ行
 - 第15巻 p.455 -ページ画像 
フヘシ、然レトモ役員不時ノ欠員ヲ生シタルトキハ特ニ臨時総会ヲ開キ其補欠員ヲ撰挙スヘシ、但シ現役員法定ノ数ニ欠クルコトナク且事務執行ニ差支ヲ生セサル場合ニ於テハ次回ノ改撰期迄其補欠撰挙ヲ延期スルコトヲ得、其補欠撰挙ニ当撰シタルモノヽ任期ハ前任期ヲ継承スルモノトス
第廿五条　取締役ハ会社一切ノ業務ヲ総括シテ之ヲ施行シ且ツ支配人以下ノ雇員ヲ任免黜陟スルノ権ヲ有ス、然レトモ法律・命令・定款及総会ノ決議ヲ遵守スルヲ要ス
第廿六条　取締役ハ同僚中ヨリ取締役会長及専務取締役ヲ互撰スヘシ
第廿七条　取締役ハ其所有ノ株式五拾株ヲ会社ニ預ケ置キ、在任中ハ之ヲ引出スコトヲ得ス
第廿八条　監査役ハ取締役ノ業務執行カ法律・命令・定款及総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監視スヘシ
第廿九条　監査役ハ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案ヲ撿査スヘシ
第卅条　取締役及監査役ノ報酬ハ総会ニ於テ之ヲ定ム
　　　　　　第五章　株主総会
第卅一条　本社ノ株主総会ハ通常総会・臨時総会ノ二種トス
第卅二条　通常総会ハ毎年七月・一月両度之ヲ開ク
第卅三条　通常総会ニ於テハ前事業期ノ諸計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書及配当金ノ分配案ヲ決議スルモノトス
第卅四条　臨時総会ハ取締役又ハ監査役ニ於テ必要ト認ムルトキ、又ハ総株数五分ノ一以上ニ当ル株主ノ請求アリタルトキ之ヲ招集スルモノトス
第卅五条　総会ヲ招集スルニハ取締役会ニ於テ決議シ時日・場所・会議ノ目的及事項ヲ記載シタル書面ヲ以テ、少クトモ十五日以前ニ株主ニ通知スルコトヲ要ス
　　但シ臨時緊急ヲ要スル場合ニハ其時日ヲ短縮スルコトヲ得
第卅六条　株主ヨリ臨時総会招集ノ請求アルトキハ其目的ヲ明記シテ会社ニ差出スヘシ
第卅七条　総会ニ於テハ総株高ノ少ナクトモ四分《（五カ）》ノ一（委任状ヲ加ヘ）以上ヲ有スル株主ノ出席ヲ要ス
第卅八条　総会ニ於テ出席株主定数ニ満サレハ仮リニ決議ヲナシ十五日以内ニ再ヒ総会ヲ招集スヘシ、其通知ニハ第一総会ノ決議ヲ明記シ且ツ第二ノ総会ニ於テ出席員定数ニ充タサルモ出席株主議決権ノ多数ヲ以テ第一総会ノ決議ヲ認可シタルトキハ、之ヲ有効トナスヘキ旨ヲ明記スヘシ
第卅九条　総会ノ議事ハ予テ通知シタル会議ノ目的及事項ノ外他ノ問題ニ渉ルヲ得サルモノトス
第四十条　総会ノ議長ハ取締役会長之ニ任スヘシ、取締役会長出席セサレハ他ノ取締役代テ議長トナルヘシ、若又取締役出席セサルトキハ株主中ノ一名ヲ推シテ議長トナスヘシ
第四十一条　総会ノ議長ハ会議ヲ延期シ会場ヲ転スルコトヲ得
第四十二条　総会ノ議決ハ出席株主議決権ノ過半数ニ依ル、可否同数
 - 第15巻 p.456 -ページ画像 
ナルトキハ議長ハ之ヲ裁決スルノ権ヲ有ス
第四十三条　総会ニ於テ決議シタル事項ハ決議録ニ登載シ、取締役署名捺印ノ上之ヲ保存シ其謄本ヲ作リテ株主ニ通知スヘシ
第四十四条　総会ニ於ル議決権ハ其所有ノ株数壱株毎ニ壱個ノ議決権ヲ有ス
第四十五条　株主自ラ総会ニ出席スルコト能ハサルトキハ会社所定ノ書式ニ依リ委任状ヲ作リ、株主中役員外ノ一人ヲシテ代理セシムルコトヲ得
　法律上ノ代理人ハ自己株主ニ非サルモ、代理人タル証明書ヲ有スル時ハ総会ニ列席スルコトヲ得
　　　　　　第六章　計算及配当
第四十六条　本社ハ一ケ年ヲ二期ニ分チ其総勘定決算ヲナスモノトス
　　但シ毎年一月ヨリ六月迄ヲ一期トシ、七月ヨリ十二月迄ヲ一期トス
第四十七条　毎期ノ配当金ハ六月・十二月末日現在ノ株主ニ割賦スルモノトス
第四十八条　本社ノ総勘定決算ヲナスニハ其前一期間総収入金ノ内ヨリ一切ノ諸経費及諸損失ヲ引去リ、其残額ヲ純益金トシテ配当スルコト左ノ如シ
　　一準備金　　　　　　　　　純益金百分ノ五以上七迄
　　一坑区建物器械償却積立金　純益金百分ノ五以上二十迄
　　一役員及雇員賞与金　　　　純益金百分の十迄
　　一株主配当金　　　　　　　若干
　　　　　　第七章　解散
第四十九条　本社ハ総会ノ議決ニ依リ任意ニ解散スルコトヲ得
第五十条　解散ハ任意議決ノ日ヲ以テ初日トシ解散ニ関スル総テノ手続ヲナス
第五十一条　解散ノ議決ヲナシタルトキハ直チニ株主中ヨリ清算人三名ヲ撰挙シ、其事務委任細則及給料ヲ議定スヘシ
　　　　　　第八章
第五十二条　此定款ハ株主総会ノ決議ヲ経テ更正加除スルコトヲ得ヘシ
　右北越石油株式会社定款株主創業総会ノ決議ニ依リ確定候也
　　明治廿九年九月廿四日　　北越石油株式会社
　　　　　　　　　　　　　　発起人総代　　梅浦精一(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　発起人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　連署捺印
壱銭印紙　北越石油株式会社株式申込書
一弐百……株　但壱株ニ付金五拾円也
　　　此額面壱万円也
右北越石油株式会社起業目論見書・仮定款及発起人申合規約ヲ承認シ頭書ノ株数引受度候ニ付、証拠金トシテ一株ニ付金弐円五拾銭宛添エ此段申込候也
 - 第15巻 p.457 -ページ画像 
　　明治廿九年九月五日　　　　　　東京深川区福住町四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　北越石油株式会社創立委員　御中

第三課文書類別　会社五明治二十九年　　　　　（東京府庁所蔵）
明治廿九年十月十四日受日出　内務部第三課主任属
　知事
　　内務部長(印)　　　第三課長(印)　　　農商掛
　　　　北越石油株式会社目論見書ノ義ニ付示達ノ件
商工局長ヨリ別紙ノ通照会有之候ニ付、発起人ヲ召喚シ其旨示達ノ上別冊目論見《（書脱カ）》ハ下戻スモノトス

内三丙六六六一号ノ三
第一四七三一号
本月六日付内三丙第六六六一号ノ二ヲ以テ御進達相成候北越石油株式会社設立免許申請之件査閲スルニ、目論見書末尾ニ梅浦精一壱人ニシテ他ノ各発起人ヲ代理調印有之候得共、目論見書ハ本書ヲ差出スカ否ラサレハ公証人ノ公証ヲ経タル謄本ヲ差出スベキ筈ニ有之候条其旨御垂示相成度、前紙目論見書添此段及御照会候也
　　明治廿九年十月十三日
　　　　　　　　　農商務省商工局長　安藤太郎印
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿

第三課文書類別　会社五明治二十九年　（東京府庁所蔵）
明治廿九年十一月四日受日出　内務部第三課主任属
　知事
　　内務部長(印)　第三課長(印)　農商掛
内三丙六六六一号ノ六
　　　　北越石油株式会社設立免許書下付及定款訂正届書送付案
客月廿九日付旨第一三六三九号ヲ以テ北越石油株式会社定款訂正方ノ義御照会ノ趣了承、即其旨発起人ヘ示達候処、前紙訂正届書差出候ニ付設立免許書下付致候間、此段及回答候也
　　年　月　日　知事
　　　　農商務省商工局長殿宛

　　　　北越石油株式会社定款訂正願
第二拾条
　第二項　前項ノ催告ヲ受ルモ尚株金ノ払込ヲナサザルトキハ本社ハ其株券ヲ公売ニ付シ、其所得金ヲ以テ払込金及遅延利子並ニ之レカ為メニ生シタル総テノ費用ノ償還ニ充ツベシ、此場合ニ於テ剰金アレハ之レヲ返付シ不足アレバ之レヲ追徴スベシ
本項中、本社ハノ下ニ株主ニ通シノ六字ヲ加フ
第三拾七条　総会ニ於テハ総株高ノ少クトモ五分ノ一委任状ヲ加ヘ以上ヲ有スル株主ノ出席ヲ要ス
 - 第15巻 p.458 -ページ画像 
本条中、五分ノ一下委任状ヲ加ヘノ六字ヲ委任状ヲ付シタル分ヲ加ヘノ拾二字ニ訂正
第五拾一条　解散ノ決議ヲ為シタルトキハ株主中ヨリ精算人三名ヲ撰挙シ、其事務委任細則及給料ヲ議定スベシ
本条中、撰挙シノ下其事務委任細則ノ七字ヲ削除ス
右ノ通リ御訂正被成下度此段奉願上候也
　　　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人総代
　　明治廿九年十一月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿

　　　　御請書
一北越石油株式会社認可証　壱通
右正ニ御請仕候也
　　　　　　　　　　　　　　京橋区木挽町九丁目十一番地
　　明治廿九年十一月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿

第三課文書類別　会社五明治二十九年　（東京府庁所蔵）
明治廿九年十一月十六日受日出　内務部第三課主任属
　知事
　　内務部長(印)　　　第三課長(印)　　　農商掛
内三丙六六六一号ノ四
　　　　北越石油株式会社設立申請ノ義ニ付
　　　　回答案
本月十三日付第一四七三一号ヲ以テ北越石油株式会社設立免許申請書附属目論見書ノ義ニ付御照会ノ趣了承、其旨発起人江示達候処、別冊目論見書並委任状壱括差出候ニ付及送付候条可然御取計相成度、此段及回答候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　　知事
　　　　農商務省商工局長宛

　　　　北越石油株式会社起業目論見書
第壱条　本社ハ株式組織ニシテ北越石油株式会社ト称ス
第弐条　本社ハ石油ヲ採掘シ、原油ノ儘若シクハ精製ノ上之ヲ販売スルヲ以テ営業ノ目的トス
第参条　本社ハ本店ヲ東京市ニ置キ、支店ヲ新潟県下越後国長岡町ニ置ク
第四条　本社ノ資本総額ハ金六拾万円トシ、之ヲ壱万弐千株ニ分チ壱株金五拾円トス
第五条　本社資本金使用ノ概算左ノ如シ
　　一金拾五万円　　　　　坑区池買収代金
　　一金弐拾万円　　　　　鑿井器械及附属品買入代金
　　一金拾万円　　　　　　坑井掘鑿費
　　一金拾万円　　　　　　石油精製資金
　　一金壱千円　　　　　　創業費
 - 第15巻 p.459 -ページ画像 
　　一金弐千五百円　　　　本社及支社事務所建築費其他器具備品費
　　一金四万六千五百円　　営業準備金
第六条　本社ハ存立期限ヲ定メス、故ニ法律・規定又ハ株主総会ノ決議ニ依ルニアラサレバ解散スルコトナシ
第七条　本社発起人ノ氏名住所及発起人各自ノ引受株数ハ左ノ如シ

　　金額　　　　　　株数　　　　　住所　　　　　　　　　　　　　　　　　　氏名
金弐万五千円　　　五百株　　　東京市京橋区木挽町九丁目十一番地　　　　　梅浦精一
金弐万五千円　　　五百株　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地　　　　　　大橋佐平
金弐万五千円　　　五百株　　　新潟県古志郡千手町大字千手百四十一番戸　　小坂松五郎
金弐万五千円　　　五百株　　　新潟県古志郡長岡町大字柳原廿番号　　　　　横山栄七
金七千五百円　　　壱百五拾株　東京市京橋区木挽町八丁目一番地　　　　　　土田政次郎
金壱万円　　　　　弐百株　　　同糀町区永田町一丁目卅一番地　　　　　　　楠本正隆
金壱万円　　　　　弐百株　　　同麻布区市兵衛町一丁目拾六番地　　　　　　佐藤甚兵衛
金壱万弐千五百円　弐百五拾株　同本郷区駒込千駄木林町四十六番地　　　　　岡本善七
金壱万円　　　　　弐百株　　　同日本橋区本町四丁目十六番地　　　　　　　広部清兵衛
金弐万五千円　　　五百株　　　同赤坂区葵町三番地　　　　　　　　　　　　大倉喜八郎
金五千円　　　　　壱百株　　　同麻布区飯倉片町廿七番地　　　　　　　　　竹内綱
金壱万円　　　　　弐百株　　　同赤坂区氷川町四十四番地　　　　　　　　　大八木喬朶
金五千円　　　　　壱百株　　　同京橋区元数寄屋町三丁目一番地　　　　　　手島鍈次郎
金壱万円　　　　　弐百株　　　同日本橋区青物町十五番地　　　　　　　　　加東徳三
金五千円　　　　　壱百株　　　同芝区芝公園十五号二番　　　　　　　　　　大江卓
金五千円　　　　　壱百株　　　東京市小石川区江戸川町廿八番地　　　　　　伊藤幹一
金五千円　　　　　壱百株　　　同牛込区市ケ谷加賀町十四番地　　　　　　　中島行孝
金壱万円　　　　　弐百株　　　同麹町区内山下町一丁目一番地　　　　　　　横山孫一郎
金壱万円　　　　　弐百株　　　同深川区福住町四番地　　　　　　　　　　　渋沢栄一
金五千円　　　　　壱百株　　　同京橋区大鋸町六番地　　　　　　　　　　　喜谷市郎右衛門
金壱万円　　　　　弐百株　　　同深川区清住町一番地　　　　　　　　　　　浅野惣一郎

右目論見書之通相違無之ニ付、発起人一同署名捺印仕候也
　　　　　　　　　　　　　　北越石油株式会社発起人惣代
　　明治二十九年九月廿四日　　　　　　　梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　発起人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小坂松五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山栄七
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土田政次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楠本正隆
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐藤甚兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
 - 第15巻 p.460 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広部清兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡本善七
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大倉喜八郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹内綱
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大八木喬朶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河村隆実
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手島鍈次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加藤徳三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大江卓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伊藤幹一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中島行孝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山孫一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　喜谷市郎右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅野惣一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代梅浦精一印

青淵先生公私履歴台帳　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　民間略歴（明治二十五年以後）
明治二十九年
○中略
一北越石油株式会社ノ発起人トナリ後相談役ニ挙ケラル
　　本会社ハ越後長岡地方ノ石油採掘及精製ヲ目的トシテ発起セシモノニシテ友人ノ勧誘ニ応シテ之ニ加入シ現ニ相談役ニ列セリ
○中略
　　以上明治卅三年五月十日調

渋沢栄一　書翰　松井吉太郎宛（明治未詳年）一月一七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（松井三郎氏所蔵）
○上略
 - 第15巻 p.461 -ページ画像 
石油事業ハ向後追々拡張候事と存候、既ニ老生も浅野と組合長岡地方ニ一坑区を得即今着手中ニ御坐候、米国人も使用候義ニ付稍規則立たる仕事ニ致候事と存候
○中略
　　一月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　松井吉太郎様
　　　○北越石油株式会社ハ、明治三十四年宝田石油株式会社ニ合併セリ。次款参照。