デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治27年6月25日（1894年）

日清戦役ニ際シ第一国立銀行ノ仁川・釜山ノ両支店及京城出張所ヲ臨時中央金庫派出所ト為ス。栄
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一当行頭取トシテ之ニ与ル。

第一銀行五十年史稿　巻四・第五〇―五一頁　大正一二年刊
　○第一編　第四章　営業の満期
　　　　第四節　朝鮮支店の発達
○上略
明治二十七年日清戦役の起るや、本行は六月廿五日を以て日本銀行と金庫出納事務取扱代理条約を結び、仁川・釜山の両支店及び京城出張所を以て臨時中央金庫派出所となし、日本金庫事務を代理して軍用金の保管並に其出納事務を取扱ひ○下略

韓国ニ於ケル第一銀行　第一銀行編　第二六九―二七一頁明治四一年八月刊
　　　　第六章　日本中央金庫派出所事務取扱
明治二十七年日清戦役ニ際シ、本行ハ日本銀行ノ委託ニヨリ、仁川・釜山・京城ノ三支店ヲ以テ臨時中央金庫派出所トナシ、日本金庫事務ヲ代理シ、軍用金ノ保管及出納事務ヲ取扱フコトヽナレリ、而シテ右ニ関スル日本銀行トノ約条ハ左ノ如シ
　　　　金庫出納事務取扱代理約条
　朝鮮国京城・仁川・釜山ニ於ケル中央金庫臨時派出所ノ現金出納ヲ取扱フ為メ、第一国立銀行ヘ日本銀行代理店ヲ嘱託スルニ付、大蔵大臣ノ認可ヲ得テ、日本銀行ト第一国立銀行ト約条ヲ締結スルコト左ノ如シ
　　　　第一条
朝鮮国京城・仁川・釜山ニ於ケル中央金庫臨時派出所（以下単ニ各臨時派出所ト称ス）ノ現金出納ヲ取扱フ為メ日本銀行ハ第一国立銀行ヘ代理店ヲ嘱託ス
第一国立銀行頭取ハ同銀行仁川・釜山ノ二支店長及京城出張所長ニ其事務ヲ委嘱スベシ
　　　　第二条
第一国立銀行ハ各臨時派出所ニ属スル現金ノ保管出納並ニ其取扱フ事務ニ付、日本銀行ニ対シ一切ノ責任ヲ有スベシ
　　　　第三条
各臨時派出所事務取扱ニ係ル手数料ノ員額ハ別ニ之ヲ定メ、第一国立銀行ヘ給与スベシ
　　　　第四条
各臨時派出所事務取扱手続ハ日本銀行ニ於テ規定スベシ
　　　　第五条
本約条ハ各臨時派出所事務取扱仮規程各臨時派出所ヘ到達ノ上直ニ実施スベシ
　　　　第六条
右約条ヲ締結シタル証トシテ、双方役員記名調印シ、壱通ハ日本銀行ニ保存シ、壱通ハ第一国立銀行ニ保存スルモノ也
　　明治二十七年六月二十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本銀行総裁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　川田小一郎
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　同国庫局長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　薄井佳久
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同文書局長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河上謹一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　株式会社第一銀行頭取
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　支配人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々木勇之助

日本銀行沿革史　第一巻・第七五頁　大正二年一一月刊
　　明治二十七年
　　　　九月
一日　第一国立銀行ニ一円銀貨二十五万円（実際貸付高ハ十五万円）ヲ無利息ニテ貸付シ、之ニ依リ同行釜山・仁川・京城各支店ニ於テ兌換券、政府紙幣及鎖店銀行紙幣ノ交換ヲ取扱フヘキ旨ヲ契約ス、是レ従来朝鮮国各地ニ於テハ銀紙交換ノ際尠カラサル打歩ヲ要セシニ依リ、今回銀紙ノ運賃・保険料並ニ交換金高ノ百分ノ一乃至百分ノ一半ノ手数料ヲ程度トシテ交換請求者ヨリ領収シ得ルコトニ改メ以テ交換ヲ容易ナラシメントシタルナリ

日本銀行沿革史　第三巻・第三五二―三五五頁　大正二年一一月刊
是ヨリ先明治二十七年頃朝鮮国各地ニ於テ銀紙交換ノ際打歩ヲ要スルコト頗ル大ナルモノアリシニ依リ、之ヲ匡正センカ為メ同年九月一日第一国立銀行ニ対シ無利息ニテ一円銀貨二十五万円ヲ貸付シ、同行釜山・仁川・京城各支店ニ於ケル兌換券並ニ政府紙幣・鎖店銀行紙幣ノ交換基金トナサシメントシ同行ト左ノ約定ヲ締結セリ
　　　　約定書
　第一条　日本銀行ハ朝鮮国釜山・仁川・京城ニ於テ兌換銀行券交換ノ為メ基金トシテ壱円銀貨弐拾五万円ヲ限リ無利息ヲ以テ第一国立銀行ヘ貸付スヘキニ付、第一国立銀行ハ釜山・仁川・京城ノ各支店ニ於テ第二条以下ニ指示スル所ノ手続ヲ遵守シ該基金ヲ以テ兌換券ニ交換方取計フヘシ
　第二条　交換基金トシテ交付スヘキ壱円銀貨ハ第一国立銀行ノ請求ニ応シ、日本銀行大阪支店ニ於テ日本銀行ヨリ回付スル所ノ雛形ニ従ヒ第一国立銀行頭取ノ記名調印シタル借用証書ト引換ニ之ヲ請取リ、第一国立銀行ノ責任ヲ以テ之ヲ釜山・京城・仁川ノ各支店ニ送付ス可シ
　第三条　該交換基金ハ兌換券ノ交換ニ供スヘキハ勿論、政府発行紙幣・鎖店銀行紙幣交換ノ請求ニモ応スヘキモノトス
　第四条　交換ヲ了シタル兌換券・政府紙幣ハ最近ノ便船ヲ以テ日本銀行大阪支店又ハ西部支店ニ返戻シ、其領収証ヲ得テ之ヲ日本銀行大阪支店ニ差出シ、更ニ之ニ対スル壱円銀貨ヲ請取朝鮮国ヘ回送スヘシ
　　　但本文兌換券紙幣ノ回送ニ係ル運賃・保険料モ亦第二条同様第
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一国立銀行ノ負担タルヘシ
　第五条　交換基金ハ大略左ノ割合ヲ以テ朝鮮国各地支店ヘ配置スヘシ
　　　釜山　　　　十分ノ二
　　　仁川　　　　十分ノ四
　　　京城　　　　十分ノ四
　第六条　銀紙交換ニ対スル歩合ハ左記ノ程度ニ拠リ之ヲ請求者ヨリ領収スル事ヲ得
　　一　大阪ヨリ朝鮮交換地ニ至ル壱円銀ノ運賃並保険料
　　二　朝鮮交換地ヨリ赤間関又ハ大阪ニ至ル兌換券紙幣ノ運賃並保険料
　　三　交換金高ノ百分ノ一乃至百分ノ一半ノ手数料
　第七条　交換ニ関スル一切ノ経費ハ第一国立銀行ノ負担タルヘシ
　第八条　交換事務ニ付テハ総テ第一国立銀行ノ本業部ト別離シ、交換基金並兌換券紙幣ハ交換ノ為メ出納スルノ外決テ其本業上ニ使用スルヲ許サス、故ニ該基金並既ニ交換ヲ了シタル兌換券紙幣ハ保護預リノ取扱ヲ為シ、営業金其他ト混淆セサル様区域ヲ設ケ保管スヘシ
　　　但本文保管並運送中避クヘカラサル災害ヲ除クノ外第一国立銀行役員ノ故意又ハ過失又ハ水火盗難等ニ因リタル損失ハ総テ第一国立銀行ニ於テ弁償スヘキモノトス
　第九条　交換基金ハ予メ日本銀行ヨリ指示スル所ノ帳簿ニ記載勘定シ、且毎日其出入報告交換歩合調書ヲ作リ日本銀行ヘ差出スヘシ
　第十条　日本銀行ハ交換事務鑑査ノ為メ随時役員ヲ派出シ現金並帳簿ヲ点検スル事アルヘシ
　第十一条　日本銀行ハ必要ト認メタル場合ニ於テハ本約定外ノ事項ヲ指示スル事アルヘシ
　第十二条　日本銀行ハ何時ニテモ本約条ヲ解除スル事ヲ得
　　　但此場合ニ於テハ交換基金並交換済兌換券等ハ第一国立銀行ノ費用ヲ以テ日本銀行ノ指示スル所ニ返送スヘキモノトス
　　右約条ヲ締結シタル証トシテ双方役員記名調印ノ上各一通ヲ保存スルモノ也
　　　　附約
　今般第一国立銀行朝鮮国釜山・仁川・京城支店ニ於テ銀紙交換ノ為メ日本銀行ハ交換基金トシテ壱円銀貨弐拾五万円ヲ貸渡タルモ、該基金朝鮮各支店ヘ到着後交換ノ請求者ナク即交換ノ為メ更ニ出納セサルトキハ該基金ノ逓送賃・返送賃並保険料ハ日本銀行ヨリ之ヲ仕払フヘシ
　右締結ノ証トシテ双方役員玆ニ記名調印スルモノ也
右約定書第一条ニ示ス如ク、交換基金トシテ初メ一円銀貨二十五万円ヲ貸付スヘキ筈ナリシモ、都合ニ依リ同年九月三日ヲ以テ先ツ十五万円ヲ貸付シ、其後残額十万円ハ遂ニ貸付クルコトナクシテ止ミタリシカ、明治三十一年六月十四日ニ至リ右交換事務ノ委託ヲ解キ貸付金ノ返済ヲ受ケタリ