デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治34年8月7日（1901年）

是日栄一、白耳義人フランキート会見シ、京釜鉄道合同条約ノ修正ニ関シ其ノ意見ヲ聴ク。

渋沢栄一　日記　明治三四年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
八月七日　雨
昨夜ヨリ俄然冷気ヲ覚フ、朝来雨アリ、午前九時兜町事務所ニ抵リ、来人ニ接ス、白耳義人フランキー氏来ル、都築馨六氏・竹村本五郎氏等来ル、白耳義人トハ万国東洋会社ノ事及京釜鉄道ノ事ヲ談話ス○下略
　　○中略。
八月十日　曇
○上略　帝国ホテルニ抵リ、白耳義人ヲ訪フ、日光旅行中ニテ逢ハス○下略
　　○中略。
八月十七日　晴
午前十時兜町事務所ニ抵ル、白耳義人フランキー来話ス○中略白耳義人フランキー氏及同国公使ヲ来ル廿日深川邸ヘ招宴ノ事ヲ約シ、其招宴ニ関スル案内状ヲ発シ且準備ヲ指示ス○下略
　　○中略。
八月廿日　晴
○上略　夕三時白耳義人フランキーヲ洲崎養魚場ヘ誘引ス、但屋根船ニテ兜町ヨリ発程ス、舟中涼意清絶ナリ、釣魚ノ悞楽ヲ畢テ深川宅ニ於テ
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饗宴ス、公使ダンネタン・内田・坂谷《（阪谷）》・林・高島・吉田・竹村・瓜生ノ諸氏来会ス、夜深川宅ニ一泊ス
　　○中略。
八月廿二日　晴
○上略　六時築地メトルポール・ホテルニ抵リ、フランキー氏ヲ訪フ、蓋シ同氏ノ案内ニ応シテ夜食ノ宴ヲ享クル為メナリ○下略
八月廿三日　曇
午前兜町事務所ニ抵リ、フランキー氏ヘノ添書ヲ裁ス、韓国尾高次郎林公使・竹内綱其他ヘノ書状ヲ裁ス、夕方王子別荘ニ帰宿ス
　　○中略。
八月三十日　晴
○上略　一森彦楠氏○当会社庶務課長京釜鉄道会社ノ事務ニ付竹内氏ノ来状ヲ持来ス、依テ答書ヲ裁シ、且其詳細ヲ一森氏ニ附言シテ日下取締役ニ伝ヘシム
○下略
　　○中略。
九月九日　晴
○上略　十一時京釜鉄道会社ニ抵リ、重役会ヲ開ク、前島密・日下義雄来会ス、株式募集ノ事、及其他二三ノ要件ヲ議シ、竹内氏ヨリノ来状ヲ閲ス○下略
　　○中略。
九月十一日　晴
○上略　三時京釜鉄道会社ニ抵リ、重役会ヲ開ク、日下・前島二氏来会ス株式募集ノ事ヲ議定ス○下略
　　○中略。
九月廿一日　朝来雨頻リナリ
韓国行数多ノ書状ヲ裁ス、京釜鉄道会社株式募集ニ関スル説明書草案ノ修正ヲ為シ、福田氏ニ交付ス○下略

渋沢栄一書翰　　竹内綱・尾崎三良宛（明治三四年）八月一〇日　　　（竹内広氏所蔵）
御発途後各位益御清適、韓国御安着引続き事務御鞅掌被成候由奉遥賀候、御出立之際ニハ小生微恙之為御送別も不申上欠敬仕候
韓国御着後両台之尊書順次落手いたし、日下氏と申合表状ニて夫々拝答仕候ニ付既ニ御了承と存候、頃日之電報ニてハ起工式ハ御都合ニより廿日後ニ延引之由御申越ニ候得共、別段物議等之為ニハ無之義と相信申候、何卒韓廷ニ対する契約之条項ハ常々厚く注意いたし寸毫も違却せさる様取扱申度事ニ御坐候
事業着手之順序御見込等日下氏へ御送付之尊書も一覧いたし別ニ異見ハ無之候得共、韓廷より土地受取方ニ付而ハ少々来意明了ニ無之点有之候間御問合申上候様談し置候、来示之如く韓国ニて今日土地収用法抔相立候ハ当方之為不利益なるのミならす、種々事務之面倒と延滞可相生ニ付、精々東洋流即従来韓廷ニて取行候手続ニ依らしむる方と存候、就而ハ京仁鉄道之例ニ倣ひ早く必要土地之引渡を受け、日時も韓廷ニて公然之告示を為さしむるも亦以肝要之事と存候、右等之手続ハ
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京仁之方とても冣初ハモールス之手ニて引合候義ニ候得共、足立氏ニて其引継を受候義ニ付稍手続相心得可申と存候間、御打合被下精々其御取運被成下度候
土地引渡ニ関し韓廷より当方へ貸金請求申出候歟之由、是ハ尤以困難之義ニて、もしも韓廷之手なりとも其実ハ会社より収用之土地ニ対し資金払出之事相分り候ハヽ実ニ種々なる面倒相生し、到底其経費ニ堪兼候程ニ可相成と懸念仕候、既ニ竹内君御出立之際ニ懇々申上候京仁鉄道之土地ニ関し、折合上韓廷へ貸金云々之事も当会社之為悪例たるを掛念し、其行掛をも申上、又足立氏へも丁寧ニ書通せし義ニ御坐候故ニ、公使へも小生一書を呈し右等之愚見ハ披陳可仕と存候得共、両台より能々御話合被下、一方ニハ大江氏抔へも会社之為能々御熟議被下度候、但もしも右様愚案之通り拒絶一方ニてハ折合出来兼候様相成候場合ニ候ハヽ、其貸金高何程ニて屹度全体之土地引渡ニ付面倒無之事韓廷ニて請合候哉、又其貸金ニ対する韓廷より当方へ之報酬ハ如何相成候哉、其辺も最後之御考案として御含置被下度候、但夫とても次々株式募集いたし其払込ニても相済候上ならてハ第一ニ其金繰も出来不申事ハ御熟知之義ニ御坐候
右様冣後之意見申上候も元来例之合同条約ハ頗る不完全之条項有之、現ニ十五条も修正を要し、其上韓廷にて此鉄道買上方法ニ付而も此程白耳義東洋会社之代理人フランキー氏ニ内話候処、前陳買上手続と此鉄道を抵当ニする之方法明確ニ規定無之而ハ会社々債之応募者ニ懸念可有之と、支那ニ於る先例抔を引証して種々被申聞候、旁以てもしも貸金問題其高少々ニて且将来之見込も相立候様相成（続々支出申出終ニ面倒ニ堪兼候等之事無之様取究出来得るや之意味）而して其交換物として前陳之合同条約修正ニても出来候様なれハ、或は一考を要する義歟と存候事ニ候、但是ハ只小生之愚案ニて日下氏とても打合候義ニハ無之候、其御含ニ被成下度候
前書条約修正ニ付而も一意改正とか修正とか申候ハヽ、又韓廷及他外国ニ於て議論可相生哉ニ付、詰り合同条約之意義説明之趣意ニて副約之議定書と致候ハヽ被行可申歟と存候、是等ハ全体之企望相行き候様相成候場合ニ一之便宜法として申上置候、是又御記憶被下度候
竹内君より来示有之候大江氏との御間柄ニ付縷々御懇話被成候云々拝承仕候、右様御双方之情意融和いたし候ハヽ、此上当会社之都合無此上義と小生も実ニ喜悦之至ニ候、曾而大江氏より株金立替払ニ付監査役へ御書通有之候処、過日東京之監査役ニてハ此等之議論ハ可成ハ不問ニ措申度と申事ニ相成候、何卒大江氏ニも東京監査役より回答せし手続ニ御同意被下候様致度と存候、右ニ付而ハ小生も一書同氏へ差上尚相願候積ニ御坐候
鉄道工事請負方法ニ付而ハ向後一問題とも可相成懸念ものニ御坐候、既ニ大倉氏抔も一昨日面会候処、同氏ハ創立之際特ニ心配も有之候旁幾分か其辺も記憶有之度、過日中山とか申代理人韓国より帰り候話ニてハ右等何たる特別之御待遇も無之と苦情申居候、且此事ニ付而ハ是非小生より両台へも申上敢而一手ニ専擅致度と申ニハ無之候得共、幾分か創業之際之微衷寸功を御存余被下度と存候、是ハ決而八方美人之意ニ
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無之、本人之苦情も有之候旁玆ニ申上候義ニ候
又来示ニハ韓国ニ成立せる三会社（用達役夫運輸）を利用して、一方ニハ不平苦情之防禦とし、一方ニハ人気収攬之手段と被成度哉ニ相見候得共、此御取扱方ハ随分懸念不少義と存候、もしも三会社へ一時先方へ利益ある工事を与候ハヽ却而三会社へハ悪例を生し、他之請負会社又ハ個人ニも不平を生し可申ニ付、両得却而両失と相成候恐有之候能々御再思被下度候
株式再募集之事ニ付而ハ昨日日下氏ハ本年中ニ今一回挙行致度と申居候、是ハ両台ニハ如何御考被成候哉、もし本年中とせハ十月頃歟と存候、或ハ来春ニても可然歟と存候、御熟案之上来示被下度候、何分今日之処ニてハ外資之見込ハ充分ニ無之ニ付、先以て少くとも千万又ハ千五百万円位之株式ハ相募り、其払込金ニて事業相進め、其中ニ外資之経営候外無之歟と存候
本邦政治経済とも御出立後別ニ異状無之、気候も土用ニ入大ニ景気相増し、稲作も安心と存候処、去ル七日より俄然冷気ニ相成今日も雨天冷気強く大ニ痛心之候と相成候
日下氏ハ今日出立一寸仙台へ被参候由、留守中小生精々会社之方注意可致と存候
御申越相成候三万円ハ昨日御送金致候由日下氏申居候、例之創立之際ニ係る報酬取行方も可成御細思ニて御取扱被下度候、社宅其外之義ニ付来示ハ表状ニ拝答候ニ付別ニ不申上候
右当用可得芳意　匆々不一
　　八月十日　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　竹内綱様
　　　　尾崎三良様
　　尚々大江・大三輪其外之方々へも可然御伝声頼上候也

渋沢栄一書翰　　竹内綱宛（明治三四年）八月二〇日　　　（竹内広氏所蔵）
　　尚々本文ニ付而ハ今日商業会議所ニ於て井上角五郎氏と面会之処大江氏ハ井上・小野両氏へも会社成立時日之事及国王へ献金之事共被申越候由ニて、井上氏ハ詰り愚案と同様なる意味ニて回答致候見込之由申居候、為念此段も申添候也
本月初旬発再度之尊翰ニハ別封公状を以て夫々御回答仕候ニ付、御領意可被下候、又尾崎君御一名之御状ニ対してハ昨日渋沢一名ニて拝答書差出候ニ付是又御承引被下度候
偖別啓として日下氏宛御内状拝見仕候処、例之合同条約締結之際ニ尽力せし人々へ之報酬金額林公使ハ金五万円まて支出候方可然との意見有之候様子ニ付、当方重役会之内決ハ弐万円位ニて為相済申度見込之旨御主張之処、公使ハ夫ニても致方有之間敷と被申候得共、大江氏之意見ハ右様小額ニてハ寧ロ支出せさる方可然とまで極論せられ候趣拝承仕候、大江氏之説も一応ハ尤之様なれとも、先方各員之満足と申金額ハ或ハ五万円ニても如何と被存候、然時ハ到底彼等之企望ニ対してハ欠欠ハ免るへからさる義ニ付、愚案ニてハ可成其高減少《（を脱カ）》して事済ニ相成候様切望仕候、もしも此報酬額満足ニ相増候為メ他ニ交換的之当
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方ニ便利相生し候事も有之候ハヽ是ハ別段之方法と存候ニ付、更ニ御考慮被下度と奉存候
皇帝陛下へ献上云々之事も既ニ株式募集ニ付千株ハ当方ニて払込為相済候筈内々之協議相成居候ニ付、今日別ニ金額献上と申事ハ少々順序も如何と懸念仕候、且此献上を以て将来を打切候意味と申事ハ一寸計算上之理由ニハ相成候得共、其場合ニ至り亦多少之企望不相生とも難期次第と存候間、今日強而献上物之御評議ハ先御見合之方と奉存候
六月廿五日を以て当会社成立と相定候ハ不都合云々大江氏主張之由ハ尾崎君之来書ニも詳細御申越有之、兎角法律上ニ関する会社重役之見解ニ齟齬相生し候ハ困却之次第と存候、乍去今日既ニ廿五日を以て成立とし諸事相運来候ニ付、今更如何とも致方無之歟と存候、瑣細之時日ニ付余り法理之微ニまて論及候事ハ見合候様仕度ものと愚考仕候
右ニ付而ハ尚近日重役会相開き、審案之上申上候様可仕とハ存候得共日下氏旅行中ニ付右等ハ其帰京を待て取極可申、就而不取敢拙案ハ前陳之通ニ付先以御含まで申上置候、大江氏へも宜敷御協議可被下候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匆々不備
　　八月廿日　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　竹内綱様
　　尚々会社成立日ニ関する件ハ尾崎君来状へも御答申上候、御聞合可被下候
　　別ニ内啓仕候ハ、先日合同条約之義ニ付白耳義人より修正之必要有之候旨申出候云々書中ニ相認置候様覚居候、右ニ付尚両三日前、会見し色々内談候処、何分今日之条約ニてハ欧羅巴ニて資本者を得候義ハ或ハ困難なるべしと申居候、其訳ハ第一ニ鉄道買上ニ関する規定頗る不備ニして計算上ニ面倒可相生、第二ニ此鉄道他ニ抵当ニ提供之事明亮ニ相成居不申、第三ニ株式之引受両国人ニ限ると申事等ニ候、依而其修正意見相尋候処、廉書ニて申出候ニ付次便ニ反訳之上兎も角も貴方へ差上候積ニ候、今日之処此修正も極而困難とハ存候得共、成程西洋ニて資金を得候ニハ右等之修正ハ是非とも必要歟と存候、依而ハ此末何か之交渉ニ付合同条約附属議定書と申様之意味ニて前陳之廉々修正出来候様御心掛被下度と存候、是ハ来示拝答外内々御含まてニ申上置候義ニ候

渋沢栄一書翰　　竹内綱・尾崎三良宛明治三四年八月二七日　　　（竹内広氏所蔵）
　（朱書）
　発第九二七号
　　　　　　　　　　　　　(印)《（日下）》
（別筆）
拝啓去ル八月八日付ヲ以テ竹内殿ヨリ別啓トシテ御申越相成候三件及他一件ニ付去ル二十四日重役会相開キ決議致候ニ付左ニ御通知申上候
一合同条約締結ニ尽力セラレシ韓人ヘノ報酬ニ付テハ、公使モ大江氏モ五万円位支出可致様主張セラレ、殊ニ大江氏ハ二三万円位ナラハ寧ロ出金不致方宜敷様被申出候趣了承仕候、乍去韓人ノ満足ヲ得ル為メ三万円ヲ五万円迄ニ増額致候共○中略到底満足致ス様ノ事無之、従フテ増額致候共差シタル効験モ可無之哉ト被存候、乍去又大江氏ノ御説ノ如ク増額致サヽルニ於テハ寧ロ出金不致方宜敷ト申事ハ此
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亦韓人ノ不満ヲ買フノ基トモナリ、意外ノ故障ヲ招カズトモ難計カト被存候
　右等ノ理由ニヨリ矢張予定額ヲ限度トシテ夫々報酬相成、増額ト全廃トノ調和ヲ得ル様ニ御取計相成度候
一韓廷ヘ弐万円献金致将来ノ請求ヲ打切ルトノ事ニ付テハ、若シ曩ニ募集ノ都度韓廷ヘ株式献上可致トノ語気ヲ洩シタルニ於テハ、弐万円位ニテ到底打切ルト申ス事難出来ト被存候、尤モ右ノ義ニ付株式献上ノ契約ナトアリテ此ヲハ献金ニヨリテ取消ストカ、又ハ献金ニヨリテ他ニ交換的ノ利益ヲ得ル等ノ事アラハ兎モ角、只タ漠然ト献金致シ将来ノ請求ヲ絶ツカ如キ御考ハ却テ韓廷望蜀ノ念ヲ強ムルヤノ掛念モ有之、全ク献金損ト相成ル様ノ事モ有之哉ト被存候ニ付、此義ハ断然御見合可然ト存候
一大江氏ノ監査役就任ノ日限ニ付テ法理上ヨリ議論致候ニ於テハ双方共多少ノ拠所モ可有之ト存候得共、他重役モ夫々六月廿五日ヲ以テ就任ノ事ニ相成居候事ニテ、既往ノ事ヲ今更彼此議論致スモ差シタル実益モ無之カト被存候、此段申進候也
右ノ通リ決議相成候ニ付御承知被下度候　拝具
　　明治卅四年八月廿七日　　　　　　　会長　渋沢栄一
　　　　竹内常務取締役殿
　　　　尾崎常務取締役殿

竹内広氏所蔵文書
　　　　京釜鉄道合同ニ関スル修正意見書
　　　　　　第四条（修正）
停車場ハ一ヲ京城ニ置キ、一ヲ釜山ニ置ク、其他ノ停車場ハ便宜ニ従ヒ列置スヘシ、而シテ其場所ニハ別国人ノ居留ヲ許サヽル事
（太字ハ朱書）
・・而シテ其場所ニハ会社ノ損益ニ与ラサルモノハ何人ト雖トモ居留ヲ許サヽル事
　　　　　　第十一条（修正）
若シ鉄道ニ関シ措弁シ難キ場合ヲ生シタルトキハ、韓国政府ト該会社ト各一人ヲ派出シテ協議処分セシムル事、各協議整ハサルトキハ該二人ハ局外者一人ヲ招キ斟酌裁定セシメ、此裁定ヲ以テ終結トナス事、局外人ニシテ自ラ裁断スルヲ欲セサルトキハ、其局外人ト該二人ト別ニ局外二名ヲ招キ立会ノ上協議処分スル事
・・若シ双方ノ委員ニ於テ協議整ハサルトキハ其仲裁々判ヲ韓国駐剳日本国公使ニ乞ヒ、此裁定ヲ以テ終局トスル事、若シ日本国公使ニ於テ裁定ヲナスコトヲ拒ミタルトキハ、日本国公使、双方ノ委員、及日本国公使ト双方ノ委員トニ於テ任命シタル二名ノ局外人立会ノ上本問題ヲ協議処分スル事
　　　　　　第十二条（追加）
鉄道落成後第十五年ノ終リニ於テ韓国政府若シ該鉄道ヲ専有スルノ意アラハ即チ上条第三項ノ人員ニ公平ノ評価ヲ致サセ買収スルヲ得若シ買収スル能ハサルトキハ十年ヲ延期ス、其十年ノ終リニ於テ尚買収スル能ハサルトキハ又十年ヲ延期ス、延期ハ毎二十年ヲ以テ期トナス事
・・鉄道買収価額ハ最近五ケ年ノ平均純益ヲ四分若クハ五分ノ利率ヲ以テ元金ニ直スコトヲ要ス、但此価額ハ会社ノ株金・社債其他一切ノ負債ヲ償却シ得ル金額ニ其
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二割ヲ加ヘタル高ヨリ少キヲ得サルモノトス
　　　　　　第十五条
該鉄道会社ハ如何ナル場合ト雖トモ日韓両国ノ政府曁民臣ニ非ル外ハ該株券ヲ他人ニ譲与スルヲ許サヾル事
本条ハ日本人以外ノ外国人ヲシテ会社ノ事業ニ干与スルヲ許ヽサルモノナレハ此ヲ全廃スルヲ要ス
　　　　　　（追加）
韓国委員ハ韓国政府ノ特許ニ基ツキ、鉄道収入金ノ中ヨリ事務費及営業費ヲ支弁シタル残純益金ヲ優先権ヲ以テ社債及収入担保ノ株式ノ元利ノ支払ニ充ツルコト、即チ該社債又ハ株式ノ為ニ右純益金ノ金額ヲ譲与シ得ル事ヲ日本ノ会社ニ允許スルコトヲ宣言ス
右ノ充当ハ独占且確定タルヘシ
上ニ掲ケタル証券々上ニ記載シタル保証ヲ確実ナラシムル為メ、日本ノ会社ハ鉄道線路ヲ抵当トナシ且線路・其固定財産・車輛及収入ノ上ニ第一順位ノ特別担保ヲ此証券ニ与フルコトヲ許サルヽモノトス
此証券ノ所持人及代理人ハ彼等ノ証券ノ元本又ハ利息ノ支払ナキ場合ニ於テ、上ニ掲ケタル財産ノ上ニ此特別ノ充当ヨリ生スル凡テノ権利及訴権ヲ行使スル為メ一切ノ権限ヲ有スルモノトス
　　○右修正意見書ハ渋沢ノ名ヲ入レタル半紙判罫紙ニ認メアリ、或ハ白耳義人フランキーノ修正意見ノ訳カ。（前掲明治三十四年八月二十日附書翰参照）
　　○京釜鉄道合同条約修正ニツイテハ本款明治三十三年三月ノ条（第四〇三頁）参照。
　　○白耳義人フランキー　Francqui　ハ東洋万国会社　Compagnie Internationale d'Orient　ノ重役ニシテ、同社創立当時活躍シ、後欧洲大戦中ベルギー国民ノ食料供給ニ努力シ、一九二六年ニ財務大臣トナリ、同国幣制改革ニ功績ヲ致シ、一九三五年死亡。
　　○東洋万国会社ト栄一トノ関係、其他フランキーニ関シテハ本節第四款「東洋万国株式会社」（本巻第六八七頁）参照。