デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
2款 京釜鉄道株式会社
■綱文

第16巻 p.503-506(DK160078k) ページ画像

明治39年6月15日(1906年)

是ヨリ先三月三十日、京釜鉄道買収法公布セラレ四月二十九日会社ニ通達セラル。依テ是日株主総会ニ於テ解散ヲ決議シ、栄一、竹内綱・小野金六ト共ニ清算人ニ選挙セラル。七月一日統監府鉄道管理局ト会社トノ間ニ引継ギ行ハル。


■資料

官報 第六八二三号 明治三九年三月三一日 ○法律(DK160078k-0001)
第16巻 p.503 ページ画像

官報  第六八二三号 明治三九年三月三一日
    ○法律
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル京釜鉄道買収法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
 御名御璽
  明治三十九年三月三十日
             内閣総理大臣外務大臣 侯爵 西園寺公望
             陸軍大臣          寺内正毅
             大蔵大臣     法学博士 阪谷芳郎
             逓信大臣          山県伊三郎
 法律第十八号 京釜鉄道買収法○後掲ニツキ略ス


朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第三四七―三五二頁昭和四年一〇月刊(DK160078k-0002)
第16巻 p.503-505 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第一巻・第三四七―三五二頁昭和四年一〇月刊
 ○第一編 第八章 鉄道の国有
    第三節 京釜鉄道の買収
翌三十九年一月七日桂内閣辞任して西園寺内閣と更迭したるが、韓
 - 第16巻 p.504 -ページ画像 
国鉄道統一の政策は後継内閣に於ても継承踏襲せられ、逓信大臣山県伊三郎は前内閣に於て決定せられたる鉄道国有法案並に京釜鉄道買収法案に付更に調査を遂げ、二月十六日を以て京釜鉄道買収法案を具して閣議の決定を経、次で本案は三月三日鉄道国有法案と共に第二十二帝国議会衆議院に提出せらるるに至つた。而して鉄道国有に関しては朝野の間に是非の論囂々として喧しかりしが、京釜鉄道買収法案に対しては格別の異論なく貴衆両院を通過し、三十九年三月三十一日法律第十八号《(三十日)》を以て京釜鉄道買収法の公布を見、玆に京釜鉄道の運命は決定されたのである。
    京釜鉄道買収法
 第一条 政府は本法の規定に依り明治三十九年に於て京釜鉄道株式会社所属の鉄道を買収すべし、買収の期日は政府に於て之を指定す
 第二条 政府は買収の日に於て会社の現に有する権利義務を承継す
  但し会社の株主に対する権利義務並収益勘定、積立金勘定及雑勘定に属するものは此の限に在らず
 第三条 買収価格は左に掲ぐるものとす
  一、払込株金の六分に相当する金額を二十倍したる金額
  二、京仁線に於ける明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期の六営業年度間に於ける建設費に対する益金の平均割合を、買収の日に於ける建設費に乗じたる額を二十倍したる金額
  前項第二号に於て益金と称するは営業収入より営業費及収益勘定以外の諸勘定より生じたる利息を控除したるものを謂ひ、益金の平均割合と称するは明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期の毎営業年度に於ける建設費合計を以て同期間に於ける益金の合計を除したるものの二倍を謂ふ
 第四条 会社に於て塡補すべき社債発行の差損金は会社の負担とす
 第五条 左に掲ぐる金額は時価に依り公債券面金額に換算し買収価額より之を控除す
  一、京仁線へ繰替使用したる金額
  二、京仁線の債務にして政府へ返還すべき金額
  前項第二号の金額は買収の日を以て年五分の単利利引法に依りて之を算定す
 第六条 会社が鉄道及附属物件の補修を為さざる場合に於ては、其の補修に要する金額は前条第一項の例に依り買収価額より之を控除す
 第七条 権利義務の承継に関し又は計算に関し会社に於て異議あるときは、政府は審査委員をして決定を為さしむべし
  審査委員の決定は終局とす
  審査委員に関する規定は勅令を以て之を定む
 第八条 買収の執行は審査委員の審査中と雖之を停止せず
 第九条 会社が買収に因りて解散したるときは主務大臣は解散の登記を登記所に嘱託すべし
 第十条 買収代価は買収の日より二箇年以内に於て券面金額に依り
 - 第16巻 p.505 -ページ画像 
五分利付公債証書を以て之を交付す、但し五十円未満の端数は之を五十円とす
  会社残余財産の分配は前項公債証書を以てす
 第十一条 政府は買収の日より公債証書交付の日に至る迄、買収価額に対し一箇年百分の五の割合に相当する金額を従前の決算期毎に会社に交附すべし
  前項に依り交付したる金額は清算中と雖之を株主に配当することを得
 第十二条 政府は買収の執行に必要なる額を限度とし公債を発行す
 第十三条 政府は前条に依り発行したる公債及第二条に依り承継したる債務の整理に必要なる額を限度とし公債を発行することを得
  前項の場合に於て利率・募集の方法・規約・据置年限及償還年限は命令を以て之を定む
 第十四条 前二条の公債に関しては本法に別段の規定あるものを除くの外整理公債条例を適用す
 第十五条 第五条に規定したる公債時価は買収期日前六箇月間に於ける帝国五分利公債の平均相場に依る
  前項平均相場は日本銀行の証明に依り政府之を定む
 而して買収の実行に当り国家として最も重大なる利害を有せしは買収価格の一点であつた。故に政府は先づ買収価格の変動を厳重に監督するの必要を感じ、逓信大臣は三月二十三日附を以て会社に対し貯蔵物品の購入、売却並に建設費に増減を生ずべき施設に付ては会社監理官の承認を経べきを命じ以て会社財産の甚だしき変動を防止した。但し買収法には明治三十九年に於て買収を決行すべきことを規定せるのみにして、其の期日の決定は之れを政府の自由裁量に一任した。一方京義鉄道は既に全通して営業期に入り韓国鉄道統一の必要一日も緩うすべからざるものありしを以て、政府は一面会社の便宜を考慮し、遂に会社の明治三十九年度上半期決算期の翌日即ち七月一日を以て買収引継の日と定め、四月二十九日之れを会社に通達すると共に翌三十日の官報に其の旨公示した。


京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著 第一〇〇頁(DK160078k-0003)
第16巻 p.505 ページ画像

京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著  第一〇〇頁
明治三十九年六月十五日株主総会ヲ開キ会社解散ノ議決ヲナシ清算人ヲ選挙シタリ
    清算人
  渋沢栄一  竹内綱  小野金六


朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第二〇一―二〇七頁大正四年一〇月刊(DK160078k-0004)
第16巻 p.505-506 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第二〇一―二〇七頁大正四年一〇月刊
 ○第二期 速成時代
    第八章 京釜鉄道ノ国有
○上略
 翌三十九年一月七日桂内閣ハ西園寺内閣ト更迭セシカ、韓国鉄道統一ノ政策ハ後継内閣ニ套襲セラレ、山県逓信大臣ハ前内閣ニ於テ決定セル鉄道国有法案並ニ京釜鉄道買収法案ニ付キ更ニ調査ヲ遂ケ、二月
 - 第16巻 p.506 -ページ画像 
十六日ヲ以テ京釜鉄道買収法案ヲ具シテ閣議決定ヲ請ヒ、次テ該案ハ三月三日鉄道国有法案ト共ニ衆議院ニ提出セラルルニ至レリ、鉄道国有ニ関シテハ是非ノ論喧シカリシモ本法案ニ対シテハ格別異論ナク両院ヲ通過シ、三月三十日法律第十八号ヲ以テ、京釜鉄道買収法ノ公布ヲ見、玆ニ京釜鉄道ノ運命ハ決定セリ
○中略
 七月一日京城南大門外旧京釜鉄道株式会社支店ニ於テ、統監府鉄道管理局長官古市公威ト元京釜鉄道株式会社理事川崎寛美トノ間ニ引継手続ヲ了リ、京釜鉄道株式会社京城支店ハ統監府鉄道管理局ニ改メラレ、玆ニ京釜鉄道株式会社ノ京仁・京釜両線ハ国有ニ帰シ、統監府鉄道管理局ノ所管ニ移ルト共ニ、京釜鉄道株式会社ハ七月一日ヲ以テ解散セリ、而シテ曩ニ会社ノ発行セル社債一千万円ハ七月六日東京ニ於テ旧京釜鉄道株式会社総裁代理竹内綱ト統監府鉄道管理局長官代理大屋権平トノ間ニ是亦引継ヲ了セリ○下略