デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
2款 京釜鉄道株式会社
■綱文

第16巻 p.506-509(DK160079k) ページ画像

明治40年12月14日(1907年)

是ヨリ先、政府ハ京釜鉄道買収価格ヲ二千一万六千五百円ト決定シ、三十九年十一月二十九日之ヲ会社ニ通達ス。栄一等会社ノ清算人ハ十二月三日之ヲ承認セシモ、是日ニ抵リ、他ノ買収鉄道ト同一ノ計算法ニ改メンコトヲ逓信大臣山県伊三郎ニ請願ス。


■資料

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第六〇九―六一一頁昭和四年一〇月刊(DK160079k-0001)
第16巻 p.506-507 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第一巻・第六〇九―六一一頁昭和四年一〇月刊
 ○第一編 第十七章 経理
    第二節 京釜鉄道の買収
     一、買収価格の査定
 京釜鉄道の買収実行に当り国家に最も重大なる利害を及ぼすものは買収価格の一点に存するを以て、政府は先づ買収価格の変動を厳重に監督する必要を感じ、逓信大臣は明治三十九年三月二十三日附を以て会社に対し、貯蔵物品の購入・売却並に建設費の増減を生ずる施設に付ては会社監理官の承認を経べきことを命じ、会社財産の甚だしき変動を生ずることを防いだ。而して買収法の規定は三十九年に於て買収することを規定したるのみにして、其の期日の決定は之れを政府の自由裁量に一任された。
 然るに一方京義鉄道は既に全通して営業の期に入り、韓国に於ける鉄道統一の必要漸く迫りたるを以て、政府は一面会社の都合をも考慮し、京釜鉄道三十九年上半季決算期の翌日即ち三十九年七月一日を以て買収引継ぎの期日と定め、四月二十九日之れを会社に通達すると共に翌三十日の官報を以て其の旨を公示した。玆に於て政府は鉄道事務官原田真義を韓国に派遣し、実地を調査せしむると共に一方会社の報告書並に諸帳簿等に就き調査したる結果、買収価格を弐千壱万六千五百円と査定し、同年十一月二十九日之れを会社清算人に通達した。
 - 第16巻 p.507 -ページ画像 
 右買収価格の通達に対し会社清算人は十二月三日を以て異議なき旨の請書を提出した。然るに此の計算は京仁線買収価格の分は、其の所得税を営業費に算入し益金より之れを控除したるものなりしが、其の後国有に決定せられたる我が国地方鉄道の買収価格は何れも所得税を益金に計算せられたるを以て、四十年十二月二十四日会社清算人《(十四)》は左の如き上申書を山県逓信大臣に提出して他の買収鉄道と同一の計算法に改められむことを請うた。
    京釜鉄道清算人の上申書
 京釜鉄道買収価格先般御達相成候処、右買収価格御決定に付ては京仁線の部に於て所得税を営業損金中に包含せしめたる計算に相成居候、然るに頃日他鉄道会社に於ける買収価格御決定に付ては所得税は営業損金中に包含せしむべきものに非ずと御裁定相成候趣、依て当所に於ても所得税を益金に加へ計算致候に、曩に御達相成候買収価格に十万余円の増加相生じ候様相見へ申候、固より本鉄道買収価格算定上京仁線は他鉄道と同様可有之存候に付、京釜鉄道買収価格も他鉄道同様の御算定に依価格御追加相成候様御詮議被成下度、此段稟請仕候也
  明治四十年十二月十四日  京釜鉄道株式会社
                 清算人  小野金六
                 同    竹内綱
                 同 男爵 渋沢栄一
    逓信大臣 山県伊三郎殿


東京経済雑誌 第五四巻第一三五五号・第五四六頁明治三九年九月二二日 ○京釜鉄道総会(DK160079k-0002)
第16巻 p.507 ページ画像

東京経済雑誌  第五四巻第一三五五号・第五四六頁明治三九年九月二二日
    ○京釜鉄道総会
同社は来る廿九日東京商業会議所内に於て総会を開く由にて、株主に通知状を発したり、其議案左の如し
 一明治卅九年度前半期営業報告・明治卅九年六月三十日現在財産目録・同貸借対照表・明治卅九年度前半期損益計算書承諾の件
 一明治卅九年度前半期利益配当決議の件
 一会社解散に付社員及会社発起以来の特別功労者に対し手当・報酬金三十四万円支払決議の件
 一前件に要する経費は積立金及ひ借入金を以て之に充つることを決議の件
 一買収法に依り公債の交付せらるゝ迄買収価格に対し政府より下付せらるゝ利子は其都度株主総会を開かず、払込株金に対し年六分の計算を以て定款に定むる三月一日及九月一日現在株主に配当し尚清算費・所得税及借入金の利子を支払ひ其残余金は之を積立て置き公債の下付せられたる上決算することを決議の件


東京経済雑誌 第五四巻第一三五七号・第六三四頁明治三九年一〇月六日 ○京釜鉄道の臨時総会(DK160079k-0003)
第16巻 p.507-508 ページ画像

東京経済雑誌  第五四巻第一三五七号・第六三四頁明治三九年一〇月六日
    ○京釜鉄道の臨時総会
京釜鉄道会社臨時総会は、去月二十九日東京商業会議所に於て開会、三十九年前半期営業報告・諸計算書承認の条件並《(マヽ)》に同期間利益分配の
 - 第16巻 p.508 -ページ画像 
件等異議なく可決し、次で慰労金問題に入り、渋沢議長は詳細叮寧なる説明をなし、尚本案は清算人に於て充分調査を遂たる結果出来得る限の節減を加へ、即ち前案より七万円を減額し卅四万円として提出したる旨を述べ、賛成を求めたるに一部株主中より盛に質問を試み、或は修正を主張し或は延期説を述べ、或は清算人の権限を云為して法律上の議論を持出す等、小波瀾を起したるも議場の大勢既に原案賛成を認め居るのみならず、議長より懇願的の希望もあり、結局全会一致を以て承認することに決したり、次に公債の交付せらるゝ迄、買収価格に対し政府より下付せらるゝ利子は、其都度総会を開かず、払込株金に対し年六分の計算にて三月・九月の両期現在株主に配当し、尚清算費・所得税及借入金の利子を支払ひ残余は積立置き、公債下付の上決算するの件は直に原案を可決し散会せり、但し建設費其の他に対する清算は全部決了に至らず、従つて正確なる買収価格を算出するに由なきも、略三十円払込一株に対し、公債券面卅九円四十銭余を得る計算なりと、尚三十九年前半季の配当案左の如し
    △京釜線
 一金四十五万円           補給金
 一金十万七千三百五十二円卅銭三厘  京仁線特別積立繰入
 一金一千七百八十円七十銭一厘    配当準備金
  計五十五万九千百三十三円四銭
   内
  一金十万九千百三十三円四厘    当期損失金
  一金四十五万円(年六分)     配当金
    △京仁線
 一金五万三千七百八十八円七十五銭  利益金
 一金八十円二十五銭         特別積立金
  計五万三千八百六十九円
   内
  一金四万五千円          政府上納金
  一金八千八百六十九円       借入金利子


竜門雑誌 第二二一号・第五二頁 明治三九年一〇月 ○京釜鉄道会社臨時総会(DK160079k-0004)
第16巻 p.508-509 ページ画像

竜門雑誌  第二二一号・第五二頁 明治三九年一〇月
○京釜鉄道会社臨時総会 同社に於ては九月二十九日午前十時より東京商業会議所に於て臨時株主総会を開き、清算人青淵先生会長席に着き軈て議事に移り、本年前半期間の営業報告其他諸計算書を異議なく承認し、次で本年上半季の利益金分配案を可決し、夫れより前回の総会に於て決議を延期したる会社解散に伴ふ社員及び特別功労者に対する慰労金問題に入り、先生には詳細丁寧なる説明をなし、本案は清算人に於て充分調査を遂げたる結果出来得る限りの節減を加へ、即ち前案より七万円を減額し三十四万円として提出したる旨を述べ賛成を求めたるが、一部株主中より質問を試み或は修正を主張し、或は延期説を述べ或は清算人の権限を云々するものありたれども、議場の大勢既に原案に同意し居ることゝて結局全会一致を以て承認することに決し議案第五公債の交付せらるゝ迄買収価格に対し政府より下付せらるゝ
 - 第16巻 p.509 -ページ画像 
利子は其都度総会を開かず払込株金に対し年六分の計算にて三月一日九月一日の両期現在株主に配当し、尚清算費・所得税及ひ借入金の利子を支払ひ残余は積立置き、公債下附の上決算するの件は直ちに原案を可決し、十二時散会せり、因に建設費其の他に対する清算は全部決了に至らず、従て正確なる買収価格を算出するに由なきも略ぼ三十円払込一株に対し公債券面三十九円四十銭余を得る計算なりと云ふ○下略