公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
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明治41年3月5日(1908年)
是ヨリ先、栄一等当会社ノ清人算トシテ政府ト折衝スルトコロアリシガ、ソノ請願許サレ、是日買収価格二千十二万三千八百円ト改定セル旨通達アリ。仍テ三月二十六日臨時株主総会ヲ開キ買収公債交附手続等ニ関シ報告ス。尋イデ六月三十日右価額ノ公債交附セラレ、七月三十日株主総会ヲ開キ、清算勘定残余財産分配等ニ関シ議ス。清算事務ノ全ク結了セルハ四十五年四月二十日前後ノコトナリ。
朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第六一一―六一三頁昭和四年一〇月刊(DK160080k-0001)
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朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第六一一―六一三頁昭和四年一〇月刊
○第一編 第十七章 経理
第二節 京釜鉄道の買収
一、買収価格の査定
○上略
政府は此の申請○明治四〇年一二月一四日附ノ申請に依り審議の結果、買収法第三条第二項に規定したる計算方法は鉄道国有法第五条第二項の規定と異なる点なく両者同一の取扱ひと為すの正当なるを認め、其の願意を容れ、買収価格に拾弐万千参百円を増加せる弐千拾弐万参千八百円と改定し四十一年三月五日を以て之を会社清算人に通達した。次で政府は同年六月三十日公債額面弐千拾弐万参千八百円を会社清算人に交付し、政府と会社との関係は玆に全く終結するに至つた。今其の内訳を示せば左の通りである。
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京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著 第一〇〇―一〇一頁(DK160080k-0002)
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京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著 第一〇〇―一〇一頁
政府ハ四十一年三月五日買収価格弐千拾弐万三千八百円ト決定シ、同年六月三十日公債額面弐千拾弐万三千八百円ヲ清算人ニ交附セラレタリ
清算人ハ明治四十一年八月十一日ヨリ総株式五拾万株ニ対シ払込金参拾円ノ一株割当公債券面四拾円弐拾四銭七厘六毛トシ、分配額五拾円未満ノ端数ハ公債売却代価ニ依リ現金ヲ以テ分配シ、会社所有財産ヲ
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処理シ清算諸経費ヲ差引キタル剰余金拾七万五千円ヲ総株式五拾万株ニ対シ壱株参拾五銭ノ割ニテ現金ヲ以テ分配スルモノトシ、総株主壱万九千弐百弐拾八人ニ通知セリ、株主中住居不明ノ者株券ヲ紛失セルモノ等ノ事故ニ依リ分配公債現金ノ渡方ニ大ニ混雑手数ヲ要シテ遅延漸ク明治四十五年四月二十日ニ至リ清算事務ヲ結了セリ
竹内広氏所蔵文書 【京釜鉄道株式】(DK160080k-0003)
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竹内広氏所蔵文書
京釜鉄道株式
第一回募集 明治参拾四年参月 拾万株
第二回募集 同年 拾壱月 参拾参万五千六百八拾四株
第三回募集 同 参拾六年五月 六万四千参百拾六株
買収価額ノ算定
京釜線 払込株金壱千五百万円ノ六分ニ相当スル金額ヲ二十倍シタル金額千八百万円
京仁線 自明治参拾五年下半期至同参拾八年前半期六期間ノ平均益金ノ割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ二十倍シタル金額四百拾参万六百拾七円弐拾銭
合計金弐千弐百拾参万六百拾七円弐拾銭
内 控除スヘキモノ
一京仁線ヘ繰替使用シタル金額七拾万円
二京仁線ノ債務ニシテ政府ヘ返還スベキ百五拾参万円ノ利引金額壱百九万七千六拾弐円六拾五銭壱厘
三買収価格ヨリ控除スベキ補修費九万四千弐百弐円五拾五銭壱厘三口合計百八拾九万壱千弐百六拾五円弐拾銭弐厘ノ公債時価
換算額
金弐百万六千八百六拾円参拾五銭八厘
差引
金弐千拾弐万参千八百円(七百五拾余円ヲ八百円ニ切上ケ)買収価額
竹内広氏所蔵文書(DK160080k-0004)
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竹内広氏所蔵文書
一解散ノ日 明治三十九年六月参拾日
一買収価額 金弐千拾弐万参千八百円
金壱千八百万円 京釜鉄道買収法第三条ニ依リ払込株金壱千五百万円ノ六分ニ相当スル金額ヲ二十倍シタル金額
金四百拾参万六百拾七円弐拾銭
同上京仁線益金平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ二十倍シタル金額
合計金弐千弐百拾参万六百拾七円弐拾銭
内
金七拾万円 買収法第五条ニ依リ買収価額ヨリ控除スベキ京仁線ヘ繰替使用シタル金額
金百九万七千六拾弐円六拾五銭壱厘
同上京仁線ノ債務ニシテ政府ヘ返還スベキ金額百五拾参万円ノ利引金額
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金九万四千弐百弐円五拾五銭壱厘
同上第六条ニ依リ買収価額ヨリ控除スベキ補修費
小計金百八拾九万壱千弐百六拾五円弐拾銭弐厘
金弐百万六千八百六拾円参拾五銭八厘
前記三口ノ金額ヲ買収法第五条及第六条ニ依リ公債時価ニ換算額
差引
金弐千拾弐万参千七百五拾六円八拾四銭弐厘
金弐千拾弐万参千八百円
買収法第十条ニ依リ会社ニ交付スヘキ公債券面額即チ買収価額
残余財産分配
一金弐千拾弐万参千八百円 公債額
総株式五拾万株ニ対シ一株ノ割当公債券面四拾円弐拾四銭七厘六毛
但一人ニ対スル分配額五拾円未満ノ端数ハ売却代価ニ依リ現金ヲ以テ分配ス
一金拾七万五千円 清算勘定残余金
総株式五拾万株ニ対シ壱株金参拾五銭ノ割ニテ分配ス
清算結了ノ日 明治四拾五年四月弐拾弐日
渋沢栄一 日記 明治四一年(DK160080k-0005)
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渋沢栄一日記 明治四一年 (渋沢子爵家所蔵)
三月二十六日 曇 寒
午前七時起床入浴シ畢テ朝飧ヲ食ス、後新聞記者来訪アリ、午前十時商業会議所ニ抵リ、京釜鉄道会社株主総会ニ出席ス○下略
竜門雑誌 第二三九号・第七六頁 明治四一年四月 ○元京釜鉄道株式会社株主総会(DK160080k-0006)
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竜門雑誌 第二三九号・第七六頁 明治四一年四月
○元京釜鉄道株式会社株主総会 元京釜鉄道株式会社にては三月二十六日午前十一時より東京商業会議所に臨時株主総会を開き、清算人たる青淵先生は議長席に就き、監査役選任の件を議に付せしに前任者重任に決し、清算人竹内綱氏は買収公債交附手続に関し左の報告を為して散会せり
買収公債は来る六月三十日を以て下附せらるゝ旨、此程通達ありたり、依て当事者は可成急速に之れを各株主に交附する考なり、而して一株配当額は三十円払込に対して大約額面三十九円三十銭の見当なるが、右公債配付の方法に就ては大蔵当局と共に尠なからず苦心せり、何分一万九千三百四十二人の大多数株主は日本全国のみかは海外に迄も散布しつゝあり、右株主に対し一々公債を送附せんか尠なからぬ費用を要し且又無記名公債の為め紛失の虞なしとせず、故に大蔵省と協議の上其交附公債は凡て日本銀行に於て登録を請ふ事に決し、其登録済書附を各株主に分配し、各日本銀行支店及代理店に於て随意公債と引換ふるの便宜を図りたり云々
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渋沢栄一書翰 野口弘毅宛(明治四一年)三月二七日(DK160080k-0007)
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渋沢栄一書翰 野口弘毅宛(明治四一年)三月二七日 (野口弘毅氏所蔵)
華翰拝読爾来御疎情ニ打過候処、賢台益御清適之条奉欣慰候、然者釜山・草梁間聯絡工事も近々落成開通可相成ニ付態々御通知被下拝承仕候、右ニ付而ハ当初より老生釜山居留之商工業者ニ口約有之候旁、一同も喜悦罷在候云々来示拝承御同慶此事ニ御坐候、何卒其向々之人ニ御逢之序宜敷御伝声可被下候
○中略
三月廿七日
渋沢栄一
野口弘毅様
拝答
中外商業新報 第八〇二三号 明治四一年七月三一日 京釜鉄道総会(DK160080k-0008)
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中外商業新報 第八〇二三号 明治四一年七月三一日
京釜鉄道総会
元京釜鉄道会社は三十日午前十時より東京商業会議所に於て最終の株主総会開会、出席株数委任状共千九百三十一人にて、精算人渋沢男爵議長席に就き、三十九年七月一日より同四十年六月卅日迄に至る精算勘定の承認を求め、夫れより残余財産分配案及精算勘定予算案を議したるに、株主中より清算費予算は過去の状況に徴せば過当の予算と認めらるゝに因り、其五万円を削除して之を精算勘定残余金に追加すべしとの動議出で、精算人より縷々説明する所ありたるも、此際一厘にても配当の多からんことを主張し到底聞き入るべくもあらざりしかば結局精算中より二万五千円(一株当五銭)を控除し、精算勘定残余金を十七万五千円とし、其他は原案通り可決、午後零時半散会せり
△残余財産分配案
円
公債額 二〇、一二三、八〇〇・〇〇〇
但総株五十万株に対し一株当公債券面四十円二十四銭七厘六毛にして、各株主の所有株に応し一人に対する分配額五十円未満の端数は売代価に依り其割合にて計算し、銭位未満は切捨て現金を以て分配の事
清算勘定残余金(原案十五万円) 一七五、〇〇〇・〇〇〇
但総株式五十万株に対し一株の割当金三十五銭宛、右は清算勘定繰越金四十九万四千九百四円二十六銭六厘の内より借入金二十万円及四十一年七月以後に要する清算費を控除したる残余金なり
△明治四十一年七月以後精算勘定予算案
清算費 一一九、九〇四・二六六
右は清算勘定繰越金の内より支払すること前掲の如し
尚各株主の収得すべき公債額並に端数金分配に就ては清算人は最初政府をして公債を百余万円丈買収せしめ、端数現金の分配を為す見込にて計算を立てたるも、右の計画は不結果に終りしを以て、該計算は左の相違を来せり
旧計算
円
公債分配額 三九・三〇〇
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配当金九十銭の公債換算額(時価八十円) 一・一二五
計 四〇・四二五
新計算
公債分配額 四〇・二四七六
清算勘定残余金三十五銭公債換算額(時価同上) 四三七五
計 四〇・六八五一
差引新計算増加額 二六〇一
○右総会ノ記事ハ「東京経済雑誌」第一四五一号(明治四一年八月八日)及ビ「竜門雑誌」第二四三号(明治四一年八月二五日)ニモ掲載シアリ。
渋沢栄一 日記 明治四一年(DK160080k-0009)
第16巻 p.514 ページ画像
渋沢栄一 日記 明治四一年 (渋沢子爵家所蔵)
六月十二日 曇 暑
○上略 竹内綱氏来リ京釜鉄道会社ノ事ヲ談ス○下略
六月十三日 雨 冷
○上略 竹内綱氏来リ京釜鉄道ノ事ヲ談ス○下略
○中略。
七月三十日 晴 大暑
午前六時半起床入浴シ、畢テ来状ヲ調査シ、八時朝飧ヲ食ス、後電話ニテ内務・文部二大臣ニ面会ノ事ヲ照会ス、午前十時兜町事務所ニ抵リ来人ニ接ス、十一時東京倶楽部ニ抵リ鶴原氏ニ面会シテ稷山金鉱ノ事及第一銀行ノ事ヲ談ス、午飧後帝国ホテルニ抵リ家屋修繕ノ事ヲ談シ、渡辺譲原林之助二氏来会ス、内務大臣ヲ訪問シテ帝国ホテル敷地ノ事ヲ談話ス、四時第一銀行ニ抵リ重役会ヲ開キ要務ヲ議決ス、畢テ事務所ニ抵リ要務ヲ処理シ○中略夜十一時王子ニ帰宿ス
○右七月三十日附ノ日記ニハ元京釜鉄道株式会社株主総会ノ記事ヲ欠ク。
〔参考〕明治大正財政史 大蔵省編纂 第十一巻・国債(上)第八八〇―八八一頁 昭和一一年五月刊(DK160080k-0010)
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明治大正財政史 大蔵省編纂 第十一巻・国債(上)第八八〇―八八一頁 昭和一一年五月刊
○第八編 第二章 第四節 鉄道買収公債(甲号五分利公債)
第二款 交付
○上略
右両法律○鉄道国有法及ビ京釜鉄道買収法に基く鉄道買収公債の発行額は頗る莫大なるを以て、其交付に就ては政府は最も慎重なる考慮を費し、各鉄道会社株主の利益を害せざる程度に於て、成るべく円滑に之が発行を了し以て市場金融の調節を破らず、又国債整理事業の進路に障礙を与へざらむことを期したり。故に買収決行後、直に之が発行を為さずして、特殊の事情あるもの又は事実止むを得ざるものに限り、会社の請求に応じ特に全部又は一小部分の公債を交付するに止め、唯京釜鉄道の分のみは、明治四十一年六月三十日を以て法定の交付期限満了するに由り、之に対しては全部の交付を為し、其の他の公債に就ては徐ろに時機の到来を待つこととしたり。○下略
会社名 買収年月日 交付年月日 交付額
年月日 年月日 円
京釜 明治三九、七、一 明治四一、六、三〇 二〇、一二三、八〇〇
○下略
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〔参考〕青淵先生公私履歴台帳(DK160080k-0011)
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青淵先生公私履歴台帳 (渋沢子爵家所蔵)
民間略歴(明治二十五年以後)
○上略
一京釜鉄道株式会社 取締役会長(三十四、六、廿五)理事(三十六、十二、廿八)
○中略
以上明治三十三年五月十日調
○中略
一京釜鉄道株式会社清算人 三十九年六月 同○四十二年六月六日辞任
○中略
以上明治四十二年六月七日迄ノ分調