デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
3款 京仁鉄道合資会社
■綱文

第16巻 p.571-575(DK160093k) ページ画像

明治36年2月24日(1903年)

是日当会社社員総会開カレ、京釜鉄道株式会社ト
 - 第16巻 p.572 -ページ画像 
ノ合併決議ヲ延期ス。後七月三十日ニ至リ再度合併ニ決セラル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三六年(DK160093k-0001)
第16巻 p.572 ページ画像

渋沢栄一日記 明治三六年           (渋沢子爵家所蔵)
一月三十一日 雨夜ニ入リテ雪トナル
○上略 午後一時兜町事務所ニ抵リ京仁鉄道合資会社々員総会ヲ開ク○下略
  ○中略。
二月廿四日 晴
○上略 午後一時兜町事務所ニ抵リ京仁鉄道会社々員総会ヲ開ク、来会者少ク、且管轄官庁ト計算上ノ談判結了セサルヲ以テ、総会ヲ延会スル事トス、午後四時松尾理財局長ヲ大蔵省ニ訪ヒ、更ニ芳川逓信大臣ヲ官舎ニ訪フテ、京仁鉄道会社計算上ノ事ヲ陳述ス○下略


東京経済雑誌 第四七巻第一一七〇号・第二六八頁 明治三六年二月一四日 ○京仁・京釜両鉄道の合併(DK160093k-0002)
第16巻 p.572-573 ページ画像

東京経済雑誌  第四七巻第一一七〇号・第二六八頁 明治三六年二月一四日
    ○京仁・京釜両鉄道の合併
京仁・京釜両鉄道の合併に関し、両会社とも来る廿五日を以て総会を召集する由なるが、京釜鉄道会社の提案は左の如し
 京仁鉄道を本会社に合併するの件
 京仁鉄道合資会社明治三十五年十二月三十一日現在資金(但し現金を除く)に対し金六十四万千五百八十円七十六銭を支払ひ、同会社に属する政府年賦納金並に其他諸般の権利義務を承継し、明治三十六年一月一日より同鉄道を本会社に合併する事
 本会社に京仁鉄道を合併後は京仁線と称し、同線に関する興業費及び営業費収支の会計は京釜鉄道と全く区別して特別会計と為す事
 京仁鉄道を本会社に合併するに付社債募集の件
 京仁鉄道合資会社の支払金及京仁線路の補修、橋梁の架設等に要する資金として金八十万円を限り左の条件によりて社債を募集する事
 一、社債利子は年八分以内とす
 一、社債償却年限は三十ケ年以内とす
  但し償却年限中借替の為既に募集したる社債金同額迄の社債を募集することを得るものとす
 一、償却の方法は、元利金共京仁線より生ずる収益金を以て之に充て、償却年限内に於て部分償還をなすを得るものとす
 一、経済上の都合により前三項の規定に従ひ銀行より一時借入れを為すを得るものとす
 一、前各項の範囲内に於ける社債及借入金の処分は総て取締役に一任する事
 一、合併に関する法律上の手続並びに政府への申請に関する事項は総て取締役に一任する事
又同社にては京釜鉄道工事進行の為め、上記社債の外に別に一千万円の社債を発行するの件を総会の議に附する筈にて其の提案は左の如し
 一、社債募集の件
  本会社に対する明治三十三年九月十四日勅令第三六六号及び同年同月二十七日秘発第二七八二号命令に基き社債一千万円迄を募集
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する事
 一、借入金を為すの件
  前件社債を募集し得る迄経済上の都合により一時金四百万円を限り利子年八分以内返済期限は五ケ年以内を以て借入金をなす事
 一、前二項の社債並に借入金実施に付政府への申請及其他の処分は前項の範囲内に於て取締役に一任する事


東京経済雑誌 第四七巻第一一七二号・第三四三―三四四頁 明治三六年二月二八日 京仁・京釜両鉄道の合併(DK160093k-0003)
第16巻 p.573-574 ページ画像

東京経済雑誌  第四七巻第一一七二号・第三四三―三四四頁 明治三六年二月二八日
    京仁・京釜両鉄道の合併
去る廿六日神田の青年会館に開きたる京釜鉄道株式会社の臨時総会に於ては、京仁鉄道合資会社明治三十五年十二月三十一日現在資産(但し現金を除く)に対し、金六十四万千五百八十円七十六銭を支払ひ、同会社に属する政府年賦上納金並に其他諸般の権利義務を承継し、明治卅六年一月一日より同鉄道を本会社に合併する事、京仁鉄道を合併後は京仁線と称し、同線に関する興業費及び営業費収支の会計は京釜鉄道と全く区別して特別会計と為す事、京仁鉄道合資会社への支払金及京仁線々路の補修、橋梁の架設等に要する資金として金八十万円を限り社債を募集する事、金八十万円の内金六十四万千五百八十円七十六銭は京仁鉄道買収費にして、金十五万八千四百十九円二十四銭は線路補修及橋梁架設費也、社債利子は年八分以内とす、社債償却年限は三十ケ年以内とす、償却の方法は元利金共京仁線より生ずる収益金を以て之に充て、償却年限内に於て部分償還をなすを得るものとす、経済上の都合に依り銀行より一時借入れを為すを得るものとす、本会社に対する明治三十三年九月十四日勅令第三六六号及び同年同月二十七日秘発第二七八二号命令に基き、社債金一千万円迄を募集する事、社債を募集し得る迄、経済上の都合に依り一時金四百万円を限り、利子年八分以内、返済期限は五年以内を以て借入金をなす事を決議せり
右合併其の他に関し、渋沢会長及び尾崎取締役は説明して曰く、京仁鉄道の布設権は明治廿七八年戦役後日本政府に於て獲得したるに、其後約束期限内に起工するものなかりしを以て、韓国政府は米国人の要求を容れて、更に米人に布設せしむるに至りたるを以て、折角日本の得たる権利を他に奪はるるは遺憾なりとして、三有志者より時の政府に請願し、政府補助の下に米国人と交渉して、再びこれを日本人の手に引取り、三十二年同線開通以来営業を為し来れるが、成績良好にして開通後間もなく相当の利益を収め得るに至りたるが、当時政府の命令に基き資本に対する利益配当を年五朱に止め、残余はこれを政府の貸下金中に仕払ふこととなり居りしも、本来京仁線は速成を期したるが故に、線路橋梁不完全にして、修繕を要する処多く、為めに政府貸下金の内へ返納する迄の余地を存せざりしが、今回、政府と交渉の結果、京仁に向て貸下げある政府の百八十万円は、明治三十七年度より向ふ廿ケ年賦無利息返納となれり、故に京仁線は将来一割五分乃至二割の配当を為し得ることは確実なるを以て、京釜本線より特別会計となし、其利益中より政府に返金すること必ずしも困難のことにあらず京釜・京仁の合併は前述の如くにして京釜に取りて決して不利益のこ
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とにあらず、而して其合併を実行するに至りたるは、永登浦より京城に入るの間六哩は、両線相並行せるを以て、恰も我が東海道線が横浜線と神奈川に於て同一線路を東京に入ると一様の観あり、営業上相互の為に利益ならず、特に我が国人が海外に於て始めて鉄道経営を為すに小会社が分立する如きは躰面上面白からずとは、両社の重役及び政府に於ても同一様に感ぜられたる処なるが故に、今回の合併に就ては政府の尽力尠なからざるなり、京釜本線に対する三十三年九月十四日勅令第三六六号及び同年同月廿七日秘発第二七八二号令に基く社債金一千万円の募集は、政府と交渉の結果、政府は日本興業銀行の社債と同一方法に拠りて借入れ方に同意し請願許可の命令書を交付せられたり、即ち次期議会の協賛を待て政府は保証の位置に立つと云ふにあり而して一時借入金も成るべく低利にて其資金を得るの方針なりと
更に右の社債保証に関する廟議を聞くに、政府は議会の協賛を経て有効とするの条件の下に、元利の保証に立ち、其外国に売出す場合には之に裏書することを決定せられたり、其手続きは日本興業銀行をして引受けしめ、同銀行は会社の必要に応じ、内外経済界の状況を察し、随時売出す筈にて、差向き七分五厘以内の利子にて、四百万円を内地に募債する由なり、此問題の大体は早く内定する所ありしも、大蔵・逓信両省に於て十分の審査を遂ぐる為、多少決定遅延し居たるなり、又法理論に於ては六分補給の時已に議会の協賛を経て有効とすとの条件を付したる例もあれば、今回とても其決断を是非するは別として理屈上からは敢て非難せらるべしとも覚えず、愈々議会の協賛を経たる暁には重役を官選にするとか、然らざるも政府自ら監督するとか、相当の手段を取る見込なりと云ふ


朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一一四―一一六頁 大正四年一〇月刊(DK160093k-0004)
第16巻 p.574-575 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第一一四―一一六頁 大正四年一〇月刊
 ○第一期 第二章 京釜鉄道
    第四節 京仁鉄道ノ買収
○上略
是ニ於テ翌三十六年二月二十五日ノ京釜総会ハ、重役ノ締結セル合併仮契約ヲ承認シタルモ、京仁鉄道合資会社ニ於テハ偶政府トノ関係ニ難問題ヲ生シ、其ノ決定如何ハ会社ノ利害ニ重大ナル影響ヲ蒙ムルヲ免レサリシヲ以テ、恰モ其ノ前日即チ二月二十四日ノ社員総会ハ、合併ノ決議ヲ一先ツ延期セリ、是ヨリ先明治三十二年一月二十四日附ヲ以テ、政府ノ下付シタル命令書ニ依レハ、鉄道運輸ノ益金一箇年組合員出資額ノ百分ノ五ノ割合ニ達セサルトキハ、貸付金ハ無利息トシ、一箇年百分ノ五ヲ超過スルトキハ、其ノ超過額ハ之ヲ政府貸下金ニ対スル利子トシテ、五分ニ達スルマテ政府ニ納付スヘシトノ条項アリ、而シテ此ノ命令ハ三十五年七月三日附命令ニ依リテ改メラレ、百八十万円ノ貸下金ハ以後無利子トシ、三十七年以降二十箇年賦返納ヲ認メラルルニ至リシモ、前ノ命令ノ有効期タル三十五年下半期末ニ至ル間ニ於ケル会社ノ利益金中ヨリ支出シタル仮工事補修費残額ハ、此ノ際返納ヲ命スヘシトノ議、政府部内ニ生セリ、社員ノ多数ハ此ノ合併問題ノ寧ロ京釜側ノ希望ニ出テ、京仁トシテハ強テ不利ヲ顧ミス、急ニ
 - 第16巻 p.575 -ページ画像 
之ヲ決行スルノ必要ナク、会社ニシテ解散ヲ為ササル以上、政府トノ間ニ困難ナル関係ヲ避ケ得ヘシトセルニ由レルモノナリ
 然レトモ其ノ後京仁鉄道側ニ於テモ一タヒ鉄道統一ノ端緒ヲ得タル以上、此ノ難問ヲ解決スヘキ適当ナル方法ニシテ存セハ、合併ヲ決行スルヲ可ナリトスルニ至リシカハ、遂ニ七月三十日ノ社員総会ハ主義ニ於テ合併ヲ認メ、若シ政府カ会社ニ対シ或金額ノ上納ヲ命シタルトキハ、其ノ金額ハ鉄道代価以外ニ京釜ヨリ京仁ニ支払フヘキ条件ヲ付シ、前年末現在ノ資産(現金ヲ除ク)及ヒ営業権ヲ二百四十四万千五百八十円七十六銭ニテ京釜ニ売却スルノ決議ヲ為シ、京釜鉄道株式会社ニ対シテ之カ通告ヲ発スルト共ニ、現金ノ支払期日ハ契約ニ定ムル手続ヲ経テ其ノ有効トナリタル日ヨリ起算シ、一箇月以内トスルコト若シ十月三十一日ニ至ルモ尚取引ヲ結了スルコト能ハサル場合ハ、契約ヲ無効トシ、更メテ協議センコトヲ提議セリ、其ノ後政府ノ方針モ決定ヲ見、九月十九日京仁鉄道合資会社ニ対シ、京仁鉄道既収益金ノ内政府ニ納付スヘキ金額十二万五千四百七十四円四十三銭ヲ、京仁ノ義務承継者タル京釜ヨリ上納スヘキ内達アリ○下略
  ○栄一日記ニ明治三十六年七月三十日ノ記事ヲ欠ク。