デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治39年6月20日（1906年）

是日、韓国水力電気株式会社設立許可セラル。栄一、大倉喜八郎・浅野総一郎・日下義雄等ト共ニ発起人タリ。

渋沢栄一　日記　明治三九年　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
一月二十四日　曇　寒　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十二時
○上略　韓国水力電気ノ事ニ関シ和田某来訪セラル、昨日土岐僙ヨリ紹介アリシ為メナリ
○下略
　　○中略。
一月三十一日　晴　風ナシ　　　　　　　　　　　　　起床七時三十分　就蓐十一時三十分
○上略　午前十時半兜町事務所ニ抵リ独乙公使ワルレイ氏及総領事通訳某ト共ニ此度来朝セシ電気技師紹介ノ為メ来訪セラル、中原工学博士来話ス、韓国水力電気事業調査ノ事ニ関シテナリ、土岐僙氏ト共ニ談話ス○下略
二月一日　半晴　風ナシ　　　　　　　　　　　　　　起床七時三十分　就蓐十二時
○上略　午飧後第一銀行ニ抵リ重役会ヲ開キ、畢テ韓国水利ノ件ニ関シ和田技師ノ来訪ニ接ス○下略
　　○中略。
二月十七日　曇　風無シ　　　　　　　　　　　　　　起床八時
○上略　一時半韓国水利ノ件ニ付同志数名来会シテ和田技師ヲシテ更ニ精査セシムル手続ヲ協議ス　○下略
　　○中略。
三月五日　曇　寒　　　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十二時
○上略　和田義睦来ル、韓国行ノ書状ヲ交付シ水利調査ニ関スル要務ヲ注意ス○下略
　　○中略。
六月十二日　半晴　軽暑　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十一時三十分
○上略　十時過キ第一銀行支店ニ抵リ竹山・三島二氏ト事務ヲ処理ス、市原・八十島同行ス、十二時旅宿ニ抵リテ午飧シ、食後統監府ニ抵リ鶴原総務長官ニ面話ス、更ニ木内商工務長官ト鉱山ノ事及水力電気ノ事ヲ談話ス○下略
　　○栄一六月八日東京ヲ発シ、十一日京城ニ着ス。
　　○中略。
六月二十五日　晴　暑　　　　　　　　　　　　　　　起床六時三十分　就蓐十二時三十分
○上略　七時過朝飧ヲ畢リ宇都曾一・渡瀬常吉・和田義睦三氏ニ面話ス、東大門外ノ荒蕪地ニ関スル件、京城学堂ノ件、水力電気調査ノ景況等ヲ談ス○下略
　　○中略。
 - 第16巻 p.613 -ページ画像 
六月三十日　曇　蒸暑　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐一時
○上略　十二時帰寓、中原・和田二氏来リテ水力電気ノ事ヲ談ス、共ニ午餐シテ将来ノ調査手続ヲ示ス○下略
　　○栄一帰京ハ七月十八日。

青淵先生公私履歴台帳　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　民間略歴（明治二十五年以後）
○上略
　韓国水力電気株式会社発起人総代　明治三十九年五月
　（欄外記事）［発起人ナルヲ以テ辞任書発送セズ
○中略
　　以上明治四十二年六月七日迄ノ分調

竜門雑誌　　第二一五号・第三一頁　明治三九年四月
○韓国水力電気会社設立計画　青淵先生・大倉喜八郎・浅野総一郎・日下義雄氏外四名の発起にて韓国に水力電気会社を起すの目的を以て工作場設置の願書を統監府を経農商工部大臣へ差出したる由なるが、其出願の趣旨は韓国に於ける諸般工業の発達を計らんとするには廉価なる動力の供給を図るを第一とし、廉価なる動力は水力電気に如くなきを以て漢江の水力を利用して発電所を設けたしといふにあり、右許可の上は漢江の上流約七里の地点に工作場を設け水力に依り電気を起し永登浦附近の地、京城及仁川等に於ける各種工場等の電力需要に応ずる筈にして、其資本金七十万円にして其設計によれば広州郡孔徳里に発電所を置き永登浦より京城に電線を架設するものにして、工費五十四万円を要すべしと云ふ

竜門雑誌　　第二一六号・第二一頁　明治三九年五月
○韓国水力電気事業後報　青淵先生・浅野氏等が韓国に於て水力電気事業計画の挙あることは前号に記したるが、其後の報に依れば鶴原統監府総務長官は同社の設立に付き韓国農商工部に向ひ、公文を以て左の如き交渉を開きたりと云ふ
　京畿道広州公徳里に発電所を設け漢江の水を引用して水力電気を起し、同地より下流四里の永登浦まで電線を架設し附近に電力を供給すること又平安南道祥原郡に発電所を設け大同江の水にて電力を起し下流四里半の平壌まで電線を架設し、同地附近の電灯及び電力供給を営業するの二件の至急認許せられたし、而して該認許に関する条件は営業期間は工事竣成後三十個年、期限後政府に必要を認む時は土地・工作物その他も時価にて買収する権利を有すること、営業中純益金百分の五を毎年政府に納め此他一切の課金を負担せざること、現行及び将来発布の諸規則を遵奉すること
之に対する農商工部の意向は大体において賛成を表し、目下政府にて協議中なりと

竜門雑誌　　第二一七号・第三一頁　明治三九年六月
 - 第16巻 p.614 -ページ画像 
○韓国水力電気の許可　韓国水力電気計画の件に就ては前号に記載したるが其後の報に依れば青淵先生及浅野総一郎外数名の諸氏より議政府に出願したる漢江水力電気株式会社は本月十日朴参政より権農商工部大臣の裁決に一任する事と為り、其後の報に依れば本月二十日愈々許可せられたりと云ふ

竜門雑誌　　第二一八号・第三二頁　明治三九年七月
○韓国水力電気事業許可条件　青淵先生及浅野総一郎氏等発起に係る韓国水力電気事業の六月二十日許可せられしことは前号に記したるが今其条件を聞くに左の如し
　一、許可年限は二十五ケ年とし、満期の上は政府に於て買上ぐる事を得る事
　一、利益の百分の五を政府に上納する事
　一、将来発布の諸規則は堅く遵守する事
二百万円以上の大事業が何等運動の手段に依らず公明に許可されたるは韓国に於て殆ど稀有の事なり

（八十島親徳）　日録　明治三九年　　　　　　（八十島親義氏所蔵）
九月二日　日曜　少雨　涼シ
○上略　五時ヨリ常盤屋ニ至ル、今夜ハ木内重四郎・池田十三郎・中原貞三郎氏等ヲ招キ大同江水力電気事業及北韓礦山ノ件等ニツキ談話旁晩餐ヲ被饗、佐々木勇之助・太田三郎氏及土岐僙氏モ出席十時半帰ル
　　○中略。
十二月二十五日　晴
例刻出勤午前ハ兜町ニ韓国水力電気会社発起人ノ相談会アリ、大倉・浅の・大橋・服部・日下・土岐・佐々木・尾高・和田義晴《（和田義睦カ）》ト男爵、外ニ山川義太郎博士ノ出席アリ、大同江水力利用平南両地ノ電灯及両地間ノ電鉄企業ニツキ協議ノ結果、如何ニモ薄利ノ予算故到底株ノ募集モ覚束ナキニツキ、何カ附帯ノ利益的特権ノ如キモノヲ許可サルヽ上ハトノ条件ニテ願書ヲ出ス事ニ一決セリ
○下略

竜門雑誌　　第二二四号・第四一頁　明治四〇年一月
○韓国に於ける電気事業　青淵先生が大倉喜八郎・日下義雄・大橋新太郎・服部金太郎・尾高次郎・土岐僙等の諸氏と共に昨年六月権利を得たる韓国漢江・大同江水利の使用は今回其第一着手として大同江方面に起業することゝなり平壌・鎮南浦間電気鉄道敷設及電灯事業開始の出願を為したり

渋沢栄一　日記　明治四〇年　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
五月三十一日　晴　暑　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十二時
○上略　午前十時兜町事務所ニ抵リ、韓国水力電気ノ事ニ関シ発起人《（会脱）》ヲ開ク○下略
　　○中略。
 - 第16巻 p.615 -ページ画像 
六月二十一日　曇　冷　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十二時
○上略　午前十一時兜町事務所ニ抵リ、土岐・和田二氏ト韓国水力電気事業其他ノ事ヲ談ス○下略
　　○中略。
七月二十日　曇　冷　　　　　　　　　　　　　　　　起床七時　就蓐十二時
○上略
午前土岐僙・和田義睦二氏来リテ韓国水力電気ノ件及鉄道ノ事ヲ談ス

渋沢栄一　日記　明治四一年　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
二月二十一日　晴　寒
○上略　午前十時兜町事務所ニ抵リ韓国水力電気及セメント事業ニ関シ発起人会ヲ開キ要件ヲ協議ス○下略
二月二十二日　曇又雨　軽寒
○上略　午前九時小石川金富町ニ荒井賢太郎氏ヲ訪ヒ、韓国水力電車事業及第一銀行業務《（気カ）》ニ関シ種々ノ談話ヲ為ス○下略

渋沢栄一　日記　明治四二年　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
六月十四日　曇　大風暑
○上略　又八十島ニ電話シテ韓国水力電気組合協議ノ事ヲ取扱ハシム　○下略
　　○栄一是日腹痛ニテ病臥ス。

渋沢栄一書翰　西村道彦宛（明治四一年）一月三日　　　（西村道彦氏所蔵）
○上略　平壌ニ於てハ老生及東京之同志者申合水力電気事業経営之積ニて韓政府之保護出願中ニ候、併統監府之御詮儀未タ相済不申候由、其中荒井次官出京せられ候ハヽ承合候考ニ御坐候、同時ニ又セメント事業も浅野総一郎氏ニ於て計画中ニ候、是以荒井君より統監之許可を得候上ならてハ相決申間敷と存候、㝡初ハ南浦まて鉄道架設之企ありしも是ハ官設と相成候由ニ付見合候義ニ御坐候、右等ハ先頃も申上置候得共為念更ニ一言仕候○中略
　　一月三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　西村道彦様
　　　　　　　　拝復