デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
2節 支那・満州
10款 清韓協会
■綱文

第16巻 p.752-753(DK160127k) ページ画像

明治35年4月(1902年)

近藤廉平・益田孝等ト共ニ清韓協会ヲ設立シ、栄一幹事長トナル。


■資料

竜門雑誌 第一六七号・第三六―三七頁 明治三五年四月 ○清韓脇会の設立(DK160127k-0001)
第16巻 p.752-753 ページ画像

竜門雑誌 第一六七号・第三六―三七頁 明治三五年四月
    ○清韓脇会の設立
(支那朝鮮探検会の成立)
支那朝鮮に於て我商工権を拡張せんが為め、両国に関する調査及び企業を為す可き団体の必要なるは、世人の既に認むる所なるが、我実業界に於ける有力者も亦此必要を認め、同一の目的を達せんが為めに、曩頃より青淵先生を始め近藤廉平・益田孝氏等発起と為り、清韓協会なるものを組織するの計画を立て、此程帝国ホテルに会員の集会を催し、左の規約を定めたり
    清韓協会規約
 第一条 本協会は清韓両国に於ける商業・工業・鉱業及び運輸交通等に関する事項を調査講究し、事業経営の資料に供するを以て目的とす
 第二条 本協会に左の職員を置く
  幹事長一人 幹事若干人 書記若干人
 第三条 幹事長及び幹事は協会員の互選を以て之を挙ぐ、其任期は一箇年とす
  書記は幹事長及び幹事之を任免す
 第四条 本協会の業務及び重要の事項は協会会議に於て之を決す、日常の事務は幹事長及び幹事之を行ふ
 第五条 本協会の経費は協会員平等に之を負担す
 第六条 本協会は調査講究の結果或事業を経営することあるべし、此場合に於て加名《(盟)》すると否とは協会員各自の任意たるべし
 第七条 本協会に於て入会を承諾するは協会員四分の三以上の同意を要す
即ち其目的は商工業・運輸・交通・鉱山等に関する調査研究を為さんとするに在り、其性質は白耳義シンヂケート等とは異なる所あり、自国シンヂケートは法律上会社組織と為し、社員に事業の紹介を為し、社員をして実際の事業を経営せしむるに止まらず、会社自ら資本を有し、時に或は社員の為す事業の保証に立ち、時に或は直接事業を企つるありて、法律上権利義務の主体たるに引換へ、此協会は単に会員に事業を紹介し、同人に対して調査の便宜を賦与し、時としては協会自ら会員の臨時の出金を以て費用と為し大体の探撿を為すことあるに過ぎず、別に資本をも有せず、法人にも非ず、社会上の一会合に留まるのみ、即ち本協会の本質は事業の紹介、例へば鉱山事業にして有利の
 - 第16巻 p.753 -ページ画像 
ものあらば、之を会員中の鉱山業者に通知協議するが如き、又は鉄道工事ならば、事を会員中の請負業者に諮ると云ふが如き事業を為すに在るが如し、故に此紹介を受けたる人にして企業の決心を固め、シンヂケートの生起を必要とする場合には、協会自ら其斡旋の労を執ることゝなり、一協会中より幾多のシンヂケートを現生するに至る可し、次に本協会の会員は大約二十名許に限る由にて、目下の処左記十数名許の会員あり
 渋沢栄一・近藤廉平・益田孝・岩崎久弥・瓜生震・荘田平五郎(同氏は末承諾の由)・早川千吉郎・添田寿一・園田孝吉・相馬永胤・大倉喜八郎・安田善次郎・山本達雄
而して規約に依る幹事長は青淵先生にして、幹事は近藤廉平・益田孝の二氏なりと
   ○「東京経済雑誌」第一一二八号(明治三五年四月一九日)ニモ清韓協会ノ規約ヲ掲ク。


渋沢栄一 日記 明治三五年(DK160127k-0002)
第16巻 p.753 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三五年        (渋沢子爵家所蔵)
三月十九日 曇
○上略 十二時帝国ホテルニ抵リ、清韓協会設立ノ事ヲ協議ス、来《(会脱カ)》スル者十人余、畢テ堀越商会郷隆三郎氏、商業会議所萩原源太郎氏ニ会話シ更ニホテル事務ニ関シ、横山・神谷諸氏ト談話シ、四時兜町事務所ニ抵ル、午後五時第一銀行新築家屋ヲ一覧ス○下略


渋沢栄一書翰 高橋是清宛 (明治三五年)四月一四日(DK160127k-0003)
第16巻 p.753 ページ画像

渋沢栄一書翰 高橋是清宛 (明治三五年)四月一四日 (渋沢子爵家所蔵)
拝啓益御清適奉賀候、然者過日参上御顧申上候清韓協会へ御加名之事ハ其後総裁へも御打合被下候哉、願くハ御連名被成下候様致度候
右組織ニ付其際御垂示之趣も御尤千万ニて、決してさしたる効果も有之間敷とハ存候得共、時節柄此儘打捨置候も如何と申処より一同加名と相決候義ニ御坐候、尚委細ハ当日之評議録及規程等持参一人差上候間御聞上可被下候、此段書中拝願仕候 匆々不宣
  四月十四日
                      渋沢栄一
    高橋是清様
        侍史