公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第17巻 p.160-173（DK170018k） ページ画像
明治12年8月12日（1879年）
当会議所、十二年五月以降関税局ノ依頼ニヨリ海関税取調ノ参考ニ供スル目的ヲ以テ内外品ノ価格ヲ調査ス。調査完了セルヲ以テ是日之ヲ関税局長遠藤謹助ニ復申ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二（DK170018k-0001）
第17巻 p.160 ページ画像
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
（東京商工会議所所蔵）
第四六三号《（朱書）》 渋沢
東京商法会議所
別紙甲乙両号ニ記載致シ候各品ノ相場見合セ度儀有之候間、別紙心得書ニ照準シ其会議所ニ於テ議員ノ見込取調差出有之度候也
十二年四月廿五日
関税局長
大蔵大書記官 遠藤謹助関税局長之印
（別紙）
物品相場取調方心得
一 各品之相場ハ海関税則取調之標準ニ致シ候筈ニ付、確実ニ取調相成度事*
一 凡ソ一ケ年平均之相場ヲ別紙雛形之通記入相成度事
一 会議所ニ於テ難取調物品ハ強テ記入ニ不及候事
一 何年何月ヨリ何年何月迄ノ相場タル義ヲ明示相成度事
一 相場金員ハ金貨カ洋銀カ或ハ紙幣カヲ巻首ニ記載相成度事
一 一品中、上中下ニ因テ相場ノ差等有之モノハ上何円、中何拾銭、下何銭ト記シ、其中ニテ最モ売買多キ品ニ符号ヲ注記相成度事
一 一項ニ掲ケアル品名ト雖モ相場ノ差違アルモノハ数項ニ分ケ取調相成度事
以上
*（附箋）
図 本文相場ノ外織物類ハ内外品共壱疋或ハ一反ノ幅長等巨細ニ取調度事
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二（DK170018k-0002）
第17巻 p.160-168 ページ画像
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
（東京商工会議所所蔵）
往第四九八号《（朱書）》
- 第17巻 p.161 -ページ画像
各品相場取調之義申進置候ニ付、右事件ニ付会議之節ハ当局属員ノ内一名出頭為致候間、若シ不審之廉有之候ハヽ同人ヘ質問有之度此段及御照会候也
十二年五月一日 関税局長 遠藤謹助関税局長之印
東京商法会議所
御中
日本産
品名 数量 大取引 卸 小売 馬蹄 一斤 牛角 同 鹿角 同 生牛皮 同 生馬皮 同 生鹿皮 同 塊鉄 百斤 板鉄 同 竿鉄 同 管鉄 同 鋼 同 塊鉛 同 板鉛 同 管鉛 同 銅 同 鉄線 同 銅線 同 錫 同 塊亜鉛 同 板亜鉛 同 包装用洋紙 一斤 印刷用洋紙 同 写字用洋紙 同 書簡用洋紙 同 壁炉 一箇 置炉 同 靴 壱足 手巾 一打 襯《メリヤス》衫《ハダキ》 同 襯《メリヤス》褌《モヽヒキ》 同 赤砂糖 一斤 黒砂糖 同 白砂糖 同 氷糖 同 烟草 同 以下p.162 ページ画像 巻烟草 百本 紙巻烟草 同 生綿布 一方碼 晒木布 同 縞綿布 同 白縮緬 同 緋宿緬 同 天鵞絨 同 綿天鵞絨 同 生麻布 同 晒麻布 同 蝋燭 同 石炭 百斤 繰綿 一斤 麻 同 石灰 同 石鹸 同 茶 同 日本酒 一咖 麦酒 同 葡萄酒 同 毛皮 一斤 珊瑚 同 摺附木 一打 紅花 一斤 藍 同 麦粉 同 繻子 一方碼
右之外乙号品名ノ内日本産品有之候ツ《（ハ）》ヽ右ニ準シ取調相成度事
薬種製薬類
品名 数量 大取引 卸 小売 酒石酸 一斤 蘆薈 百斤 明礬 同 塩酸諳母尼亜 一斤 檳樃子 百斤 硼砂 一斤 加魯蔑児《カロメル》 同 加密列花《カミツレ》 同 竜脳 一斤 樟脳 同 蒼朮 百斤 桂皮 一斤 幾那皮 同 以下p.163 ページ画像 聖叔尼捏《シンコニヤ》 同 丁子・母丁子 同 児 茶一名阿仙薬 百斤 人参 一斤 亜拉毘亜護謨《アラビヤゴム》 同 石羔 百斤 藿香 同 甘草 同 炭酸麻倔捏失亜 一斤 麻黄 同 水銀 同 莫児非及莫児非塩《モルヒネ》 同 麝香及麝香皮 同 甘松 同 貌魯密度剥篤亜斯《ブロマイドポツトアス》 同 沃度剥篤亜斯《ヨードポツトアス》 同 木香 同 規尼及規尼剤 同 キノイダイン 同 大黄根 同 洎芙藍《サフラン》 同 硝石 同 山帰来 百斤 撒篤尼《サントニー》 一斤 撒児沙巴里児刺根《サルサバリルラ》 同 硝酸銀 同 滑石及滑石粉 百斤 コースチツク曹達 同 洗濯曹達 同 黄芩 同 施綿失那《セメンシーナ》 一斤
染料及顔料
品名 数量 大取引 卸 小売 唐靛《ブリユー》 一斤 孛靛及巴黎斯靛《ブリユー》 同 洋紅 同 五倍子 同 雌黄 同 藍《インヂゴー》 同 藍水 同 鉛粉（丹・黄・白色ノ者） 同 紅樹皮 百斤 紫梗《スライツクラツク》 一斤 羌黄 百斤 以下p.164 ページ画像 郡青 一斤 緑青 同 朱 同 蘇木及伯西児木《ブラジルウード》 百斤
皮・革・骨・牙・角類
品名 数量 大取引 卸 小売 獣蹄 一斤 牛角・水牛角・鹿角 同 犀角 同 水犀角 同 牛・水牛・綿羊・馬皮 同 （未タ治理セサル者） 象牙・一角牙 同 海馬牙 同
穀物
品名 数量 大取引 卸 小売 穀粉（各種） 百斤 大麦・蕎麦・玉蜀黍・蜀黍・燕麦・裸麦 同 籾 同 米 同 小麦 同 落花生豆 同 麦牙 同 豆類 同 種子（綿・麻・亜麻・胡麻・菜） 同
油・脂・臘類
品名 数量 大取引 卸 小売 豕膏《ラルド》及獣脂《タルロー》 百斤 石炭油・石脳油 一咖 豆油・落花生油 一斤 晒乾油《ドライエル》 同 必治及爹児 百斤 松脂《ローレン》 同 松油《スピリツト、オブ、トルヤンタイ》 一咖
金属類
品名 数量 大取引 卸 小売 鉄錨及錨鏈 同 塊鉄 同 条・桁及竿鉄 同 板鉄 同 〓鉄 同 圧艙鉄 同 釘鉄 同 丁鉄及角鉄 百斤 以下p.165 ページ画像 鉄線（電鍍スルト否トヲ論スルナシ） 同 塊・錠・条鉛 同 板鉛 同 筒鉛・管鉛 同 黒鉛 同 銅・鎕銅・青銅・黄銅 一斤 白銀（工作ヲ経サル者） 同 釘・無頭釘・平頭釘・曲頭釘・彎尾釘・鉸釘（鉄製） 同 同（銅製） 同 白銅 同 白鑞 同 鋼（条・塊・板等） 同 錫（条・塊等） 同 鉄葉 同 塊亜鉛 同 板亜鉛 同
文具類
品名 数量 大取引 卸 小売 唐墨 一斤 書籍用及新聞用紙 同 包装用紙（棕色或ハ下品ノ者） 同 書簡用紙及写字用紙 同 唐紙（灰色・白色ヲ論セス） 同 同（着色ノ者） 同 筆嘴《ペン》（黄金色ニ非サル者） 一𠹭 鉛筆（木柄ノ者） 同
衣服及其附属品類
品名 数量 大取引 卸 小売 褲帯《モモヒキツリ》（絹或ハ絹交製ヲ徐ク） 一打 襟子《エリ》（綿或ハ麻製） 同 同（紙製） 同 手巾《テヌグヒ》（綿製） 同 同（麻或ハ麻綿製） 同 襯衫《メリヤスハダギ》及襯褲《メリヤスモモヒキ》（綿製） 同 同（毛製） 同 同（毛綿製） 同 襪子《タビ》（綿製） 同 同（毛製） 同 同（毛綿製） 同 長子襪《ナカタビ》（綿製） 同 同（毛製） 同 同（毛綿製） 同
飲料及食物類
- 第17巻 p.166 -ページ画像
品名 数量 大取引 卸 小売 乾麺包《ビスキツト》（桶入） 一斤 乳油《バター》 同 咖啡 同 薫腿《ハム》及醃腿《ベーコン》 同 胡椒（黒・白ヲ論セス砕粉セサル者） 同 塩（大苞或ハ桶入） 百斤 鹹肉（牛肉・豚肉等ノ桶入） 一斤 茶 同
酒類
品名 数量 大取引 卸 小売 亜啤噺《アブジンス》（一骨児《クワルト》ニ超過セサル壜入ノ者） 一打 麦酒及黒麦酒《エールビール・ボルトルスタート》（同上） 同 同（一巴因ニ超過セサル壜入） 同 同（樽入） 一咖 亜力《アラツク》（一骨児ニ超過セサル壜入） 一打 桜子酒《チエルリーコルジアル》（同上） 同 林檎酒《サイドル》（同上） 同 里克児《リキユール》（同上） 同 里克児《リキユール》（一巴因ニ超過セサル壜入） 同 馬徳拉《マデイラ》・伯爾多及《＠ルト》 同 塞爾利《セリー》（一骨児ニ超過セサル壜入） 同 三鞭《シアンパン》（同上） 同 同（一巴因ニ超過セサル壜入） 同 葡萄酒（赤・白ヲ問ハス一骨児ニ超過セサル壜入） 同 同（樽入） 一咖 啤蘭地《ブランデー》（一骨児ニ超過セサル壜入） 一打 杜松子酒《ジン》及蔗酒《ラム》（同上） 同 同（樽入） 一咖 穀酒《ウヰスキー》（一骨児ニ超過セサル壜入） 一打 同（樽入） 一咖
砂糖並煙草類
品名 数量 大取引 卸 小売 砂糖（赤・黒・白ヲ論セス） 一斤 精製砂糖（棒・塊・砕・粉・粒ヲ論セス） 同 氷糖 同 巻煙草 百本 紙巻煙草 同
布帛類
品名 数量 大取引 卸 小売 生金巾 一方碼 晒金巾 同 紋金巾・雲斎木綿・寒冷紗・綾金巾及別項ニ掲載セサル綿 同 布類（着色・印花セサル者） 同 以下p.167 ページ画像 フエスチアンス、コツトンダマスクス及類似ノ重布類 同 綿天鵞絨 ウエルウエテインス 同 着色・印花シタル一切ノ綿布類 同 紋羽 一名綿フラネル 同 帆布（麻・綿ノ別ヲ論スルナシ） 同 綿製 ヂエーンス、デニムス及被蓐布 同 同 クイルチンクス、ピーク及綿繻子 同 男服又ハ男児服用ノ毛製羅紗 同 男服又ハ男児服用ノ毛綿製羅紗 同 毛製フラネル 同 毛綿製フラネル 同 呉呂（英・蘭及其他ノ諸国製品） 同 綾呉呂畔呉呂（毛製及毛綿製ノ別ヲ論スルナシ） 同 アルパカ、旗布、羅脊板、縮緬呉呂、メリノス、オルレンス、毛縀子及ヒ羊毛 同 オルステツド毛或ハアルパカ山羊及類似ノ獣毛ヲ以テ全製シ若クハ交製シタル一切ノ布帛類（別項ニ掲載セサル者） 同 製靴用ノ護謨布（巾六因制ニ過ギサル者） 一碼 油布（牀舗用ノ者） 一方碼 革布（家具用ノ者） 同 生亜麻布 同 晒或ハ色亜麻布 同 タペストリー氈 同 ブルツセルス氈 同 フエルト氈 同 ヂユート・ダツチ及ペンブ氈 一方碼 卧氈 一斤
雑貨
品名 数量 大取引 卸 小売 蝋燭 一斤 白堊（工作ヲ経サル者） 百斤 石炭 同 縄索類（麻糸ヲ除クノ外爹児ヲ塗ルト否トヲ論スルナシ） 一斤 綿花 同 天蚕糸 同 麻類（梳理スルト否トヲ論スルナシ） 同 窓硝子（無色ノ者） 百万幅 魚膠及阿膠 一斤 忽布 同 石灰 百斤 籐（割リタルト否トヲ論スルナシ） 同 石鹹《鹸》（条或ハ其他ノ形ニ製シタルヲ論セス無香ノ者） 一斤 縫糸（綿・麻ノ別ヲ論セス軸ニ巻カサル者） 同 麻糸 同 以下p.168 ページ画像 傘骨（溝形ノ者） 一打 同（円・角形ノ別ヲ論スルナシ） 同 白檀 一斤 沈香 同 織糸（有色・無色ノ別ヲ論セス綿製ノ者） 同 同（同毛製ノ者） 同 荇蓎（貨物ヲ包装スル者） 百個 船茹 百斤 施綿地《セメント》・巴黎斯灰《ブラストル、オブ、バレース》 同
東京商法会議所要件録 第五号・第四―九丁 明治一二年六月六日刊（DK170018k-0003）
第17巻 p.168-170 ページ画像
東京商法会議所要件録 第五号・第四―九丁 明治一二年六月六日刊
第八定式集会 明治十二年五月一日午後第七時開場
議員出席スル者 二十六名
同 欠席スル者 三十四名
関税局下問内国産並ニ輸入品価格調査ノ件
会頭 ○渋沢栄一曰ク、去ル四月廿日附ヲ以テ関税局長ヨリ下問セラレタル調査ソ件ハ之ヲ甲乙二号ニ分テリ、而シテ甲ハ内国産ニシテ乙ハ外国輸入品ナリ、此各品ニ就キ大取引・卸・小売ノ三種ニ分カチ其価格ヲ調査セン事ヲ要スルモノニシテ、且舶載品中ニハ其品称彼此ノ差異アルヲ免カレ難キヲ以テ、或ハ調査ノ際不便アラン事ヲ恐レ、更ニ和洋対訳書ヲ副ヘラレタリ、而シテ右品物中著重ノモノニ至テハ其見本ヲモ蒐集セン事ノ依頼アリタリ、抑モ此調査ハ海関税取調ノ参考ニ供セラルヽモノナルヲ以テ極メテ詳細ノ調査ニ渉ラザル可ラズ、幸ニ該局ニ於テ今会主任者ヲ臨場セシメラレタレバ諸君其解了セザルモノアラバ之ヲ主任者ニ質問シ、以テ之ガ取調ノ手続ヲ熟議アラン事ヲ望ム
二十番（朝吹英二）如此調査ハ之ヲ衆員ニ附スルモ自ラ東支西吾其功ヲ奏シ難カルベシ、故ニ内外事務委員ニ托シテ之ヲ調査セシメバ却テ十分ノ精密ニ渉ルヲ得ン
六番（大倉喜八郎）該取調ヲ要スルハ何ノ点ヨリ起リタル歟、又其調査年限ハ何年ヨリ起リ何年ニ了ルベキカ、之ヲ了解セザレバ其調査上大ニ差支ヲ生スベキヲ以テ予メ之ヲ主任者ニ質ス
会頭曰ク、余亦六番ト同一ノ感触ヲ以テ已ニ其大略ヲ質シタルニ、該調査ノ要ハ前陳ノ如ク税則取調ノ標準ニ供スルモノニシテ其年限ハ大略一ケ年ノ平均ヲ以テ目途トナシ、若シ品物ニ由リ甚シキ価位ノ昂低アリテ一ケ年ヲ以テ標準ト為シ難キモノニ至テハ二年若クハ三年ノ平均ヲ以テ目途ト為シテ調査スルヲ要スル旨ノ回陳アリキ、依テ直チニ余ヨリ之ヲ六番ノ質疑ニ答フ
六番（大倉喜八郎）会頭ノ演説ヲ詳解セリ、然レトモ別ニ一質疑アリ例之ハ木綿糸ノ如キ内国産ハ百斤ニ付其価位四十五円ニシテ、外国産ハ三十七円ニ出デズ、而シテ小倉織ノ如キ内国産糸ヲ用ヰザレバ精品ヲ織袵スベカラザルモノアルモ、其需用多クシテ供給ニ乏シキガ如シ、如是品種ニ至リテハ彼此ノ価位ヲ対照斟酌セザレバ以テ税則ノ標準ト為ス可カラザルガ如シ、是レ如何ノ心得ヲ以テ調査スベキヤ
- 第17巻 p.169 -ページ画像
会頭曰ク、余ハ六番ノ如ク之ヲ質セシニ非ザレトモ已ニ此思考ヲ以テ之ヲ質シタルニ、是レ甲号即チ内国産品ノ調査ヲ要スル所以ナルカ如シ、故ニ此意ヲ以テ調査セバ大ニ関税局長ノ望ニ差ハザラント思惟ス
六番（大倉喜八郎）果シテ然ルトキハ実ニ重大ノ関係ヲ有スルモノナルガ故ニ、更ニ之ヲ内外委員ノ小会議ニ付シ逐件熟議スルヲ要ス
十五番（益田孝）過刻二十番ガ論スル如ク之ヲ内外事務委員ニ一任スルハ理ハ則理ナルガ如シト雖トモ、如此至難ノ調査ヲ以テ僅々数名ノ委員ニ一任セバ委員ハ其労ニ堪ヘザルノ不幸ニ陥ラン、故ニ疇昔売徳調査ノ如ク共ニ協力シテ其事ニ従事セバ大ニ確実ノ取調ヲ得ベシ、若シ其実際ノ成否ヲ問ハズ只表面ノ理ヲ推シテ一ニ之ヲ委員ニ托シ、甲モ委員乙モ亦委員ト挙テ之ヲ委員ニ依托セバ自今其選ヲ承諾スルモノ無キニ至ラン
六番（大倉喜八郎）十五番ヲ賛成シ且曰ク、衆員ノ力ヲ以テ之ヲ調査シ、内外両委員ニ於テ蒐集復申セン事ヲ望ム
五十番（松尾儀助）東京及ビ横浜二地ノ相場ニ止マル歟、或ハ広ク内国各地ニ及ボス歟、其目途如何ヲ質ス
会頭曰ク、輸入品ハ横浜ヲ以テシ、内国産ハ東京ヲ以テスベシ、若シ広ク内国各地ニ及ボスト為ストキハ運搬ノ費用アルヲ以テ大ニ価格ノ差違ヲ生スベケレバナリ
五十番（松尾儀助）縦令ヒ東京・横浜ノ二地ト為スモ、銅ノ如キハ多ク横浜ノ売込相場ヲ基トス、而シテ東京ノ取引相場ハ稍々差異アルヲ免カレズ、是レ何ヲ標準ト為スベキヤ
会頭曰ク、銅ノ如キハ横浜ニ提出シテ売込ヲ為スヲ以テ東京・横浜両地ノ価格ニ稍少差アルベシト云トモ、他ノ輸出ニ供セザル物品ニ至リテハ東京ノ取引ニ止マルガ故ニ均シク東京ヲ基トシテ調査セバ不都合ナカルベシ、モシ夫レ横浜ヘノ運搬費アルヲ以テ小差アル品類ノ如キハ宜シク其見積ヲ以テ之ヲ加減スベシ
五十番（松尾儀助）該調査ハ之ヲ前会ノ売徳及ヒ過刻ノ金利調査ニ比スルニ其事更ニ重大緊切ナルヲ以テ、委員ニ於テ能ク之ガ手続キヲ定メ然ル后チ各員ニ分担セシメン事ヲ要ス（二十二番（渋沢喜作）四十一番（柴崎守三）之ヲ賛成ス）
五十番（松尾儀助）此調査ハ時間ヲ限リテ之ヲ速成スルヲ要スル歟、或ハ否ラザル歟、敢テ之ヲ主任者ニ質ス
番外一番（北野直壮）其速成ヲ要スルハ固ヨリ然リト雖トモ、該調査タル容易ノ業ニ非ザルヲ以テ仮令ヒ其日ヲ限ルモ実際行ナハレ難キヲ察スルカ故ニ敢テ其日限ヲ定メザルナリ
五十番（松尾儀助）前陳ノ如ク東京・横浜ノ二地ニシテ其相場ノ異ナルアリ、或ハ其他ノ事故ノアルアレバ此調査タル容易ノ事ニ非ス、加フルニ其目途ノ重大緊切ニシテ実ニ貿易ノ泰否ニ関スルガ如キノ実アレバ敢テ速成ヲ促サス、之ヲ詳悉丁寧ナラシメン事ヲ望ム
十五番（益田孝）是レ此調査タル従来ノ下問ニ比スレバ其事業ノ容易ナラザルノミナラズ其関係スル所更ニ重大ニシテ、今如是下問ヲ辱フシタルハ実ニ当会ノ面目ト云フベシ、故ニ極メテ心力ヲ格シ緻密ニ渉ラン事ヲ要ス、然レトモ凡ソ事為サヽレバ則成ルノ日ナキヲ以
- 第17巻 p.170 -ページ画像
テ、之ヲ難事ナリトシテ遅々スレバ則其功遅ク、勉メテ事ニ従ヘバ其功速ナルヲ以テ、各員ノ之ヲ忽諸ニ附セス速ニ之ガ調査ニ努力セラレン事ヲ企望ス
五十番（松尾儀助）小生ノ意モ亦十五番ノ意ノ如ク其事ノ重大ナルヲ以テ詳細ノ調査ニ渉ラン事ヲ企望スルヨリ或ハ速成ヲ促シテ却テ疎鹵ニ失セン事ヲ慮ルニ外ナラズ、豈之ヲ忽々ニ附スルノ意ナランヤ
会頭曰ク、該調査ノ重大ナルハ既ニ今会ノ初ニ当タリ余モ亦之ヲ陳説セリ、而シテ五十番ハ其軽忽ニ失セン事ヲ慮リ、十五番ハ其緩漫ニ流レン事ヲ憂ヒタリ、寔ニ二君ノ思考ニ背カズ内外委員ハ努力シテ調査ノ手続ヲ制定シ各員ハ共ニ協心シテ其手続ニ基キ速ニ成功ヲ奏セラレン事ヲ企望ス、然リ而シテ当会各委員ハ挙ナ其負担スル所ニ就キ調査報告スルノ約アリト雖トモ此約ニ背カズ屡々報告ノ労ヲ重ヌルモノハ内外委員ニ止マリ船舶委員ノ如キハ未ダ一回ノ報告ヲ聞カズ、何ゾヤ是レ自身其事務ニ繁劇ナルヲ以テ一調査ヲ為サント欲スレバ必ズ多少ノ心思ヲ労シテ之レガ措置ヲ為サヽル可カラザルヲ以テ、敢テ怠慢ノ意ナキモ遂ニ幾多ノ日子ヲ等閑ニ経過スルニ至ル、是レ尚ホ一片ノ郵便ヲ投シテ意ヲ隔地ノ人ニ致サント想フモ、手ヲ労シ足ヲ動カシテ之ヲ函中ニ投ゼザレバ書牘ハ決シテ想フ所ニ達セザルト一般ナリ、故ニ此調査ノ如キモ亦各人敢テ之ヲ等閑視セズト雖トモ自ラ遷延ニ流レン事ヲ恐ルヽヲ以テ各委員ノ間ニ奔走シテ其事ヲ理シ、或ハ横浜ニ至リテ之ガ価位ヲ採ル等ノ為メ別ニ担任者ヲ雇入ザル可カラズ、而シテ其人ヲ雇入スルヤ必ズ多少ノ給料ヲ要スルガ故ニ定額費即チ商務局下附ノ金員ノミヲ以テ之ヲ支弁シ難シ、或ハ各員ノ醵金ヲ投シテ之ヲ補充セザル可カラズ、故ニ其可否ヲ衆員ニ質ス
六番（大倉喜八郎）会頭演説ノ如ク各員ハ挙ナ事務繁劇ナラザルハナシ、故ニ中心常ニ之ガ速成ヲ熱望スルモ或ハ遅漫ニ流レン事ヲ恐ルルヲ以テ専任者ヲ雇入セン事ヲ要ス、即チ昨年ノ仏国税則調査ノ如キ各員挙ナ其有益ナルヲ認メ之ヲ調査セン事ヲ期シタルモ遂ニ専任者ナキヲ以テ遷延今日ニ至テ未ダ其功ヲ竣メス、以テ其言ノ虚ナラザルヲ徴スベキナリ、而シテ議員ノ醵金タル固ヨリ不得止ノ費途ニ充ツルモノニシテ、該事業ノ如キ重大ノ関係ヲ有シ之ヲ詳査センガ為メ専任者ヲ雇入スルハ実ニ不得止ノ事ナリ、故ニ会頭自ラ其人ヲ選ミ其給ヲ附スベシ、何ゾ他ノ意見ヲ問フ事ヲ須ヒンヤ
十三番（中山譲次）《（中山譲冶）》五十番説ノ如ク調査ノ期限ヲ予定セズ、啻ニ成ルベク速クト言フガ如キハ是レ各人ノ耳ニ慣レタル通語ニシテ却テ遅延スルノ文字タリ、故ニ本員ハ予メ其期限ヲ確定スルヲ要ス
会頭曰ク、五十番ノ質問ニ係リテ主任者ノ説明セラレタル所ニ拠レバ其期限ヲ明言セズト雖トモ、既ニ該調査ノ条約改正ニ関スルヲ了知スルニ足レリ、然ルトキハ大凡ソ何月ニ於テ復申スヘキ歟自ラ其期限アルヲ信ス、而シテ委員ニ於テ其手続ヲ製定スルノ際猶主任局ノ意見ヲ聞キ勉メテ其期ニ後クレザラン事ヲ要スル旨ヲ述ベ、而シテ此調査ハ衆員ノ同意ニ依リ縦令ヒ定額金ニ不足ヲ生シ醵金ヲ以テ其支消ニ供スルモ、専任者ヲ雇入シテ以テ調査ヲ丁寧詳細ナラシメン事ヲ要スルニ決シ、該事務専任者ハ理事本員ニ於テ其人ヲ選任スル旨ヲ述ブ
- 第17巻 p.171 -ページ画像
東京商法会議所要件録 第六号・第二―四丁 明治一二年七月二日刊（DK170018k-0004）
第17巻 p.171 ページ画像
東京商法会議所要件録 第六号・第二―四丁 明治一二年七月二日刊
第九定式集会 明治十二年六月五日午後七時五分開場
議員出席スル者 三十二名
同 欠席スル者 二十六名
大蔵省関税局下問内外物産価格調査ノ件
次ニ会頭 ○渋沢栄一ハ本件ノ議事ニ移ルベキ旨ヲ述ベ且曰ク、此件ハ前会ニ於テ報道シタルガ如ク、爾来内外商業事務委員ハ小集会ヲ催シ其調査ノ方法ヲ議定セリ、而シテ該局ノ下問ヲ以テスレバ、各品大取引・卸・小売ノ三種ニ就キ其価格ヲ調査スルヲ要スト雖トモ、其卸・小売ノ二種ニ至テハ独リ実際適当ノ調査ヲ為スニ苦シムノミナラズ復タ敢テ下問目的ニ副ハザルノ恐アルヲ以テ、此旨ヲ該局ニ上申シタルニ幸ニ其許諾ヲ得タリ、故ニ此二種ヲ除キ独リ大取引ノ相場ニ就キ之ヲ調査スルニ決セリ、本日諸君ニ呈シタルモノハ其表式並ニ記入凡例心得書等ナルヲ以テ、此表式ニ基キ各自其調査ヲ分担シ勉メテ精細ヲ尽シ兼テ速成ヲ期シ之ヲ復申セン事ヲ要ス、是レ既ニ前会ニ於テ開陳スル所ナルガ故ニ今更ニ之ヲ贅スルヲ須ヒズ、但之ヲ分担スルノ方法ニ就テハ一々其品名ヲ朗談シ一品毎ニ其担当者ヲ定ムベキ歟、将タ品類ヲ大別シテ各員ノ受持ヲ議定スベキ歟、是レ諸君ノ考按ヲ要スル所ナリ
二十二番（渋沢喜作）該下問ハ其品種極メテ多数ナルヲ以テ一々之ヲ朗読スルヲ須ヒズ、譬ヘバ米屋ハ穀類一切ヲ担当シ、唐物屋ハ西洋小間物各種ヲ調査スルガ如ク其品種ヲ大別シ、議員中其業ニ関係アルモノ二三人若シクハ四五人ヲ定メ以テ之ヲ担当セバ其調査自ラ確実ニ渉リ且速成ヲ期スルヲ得ン
十一番（福地源一郎）本員ハ二十二番ノ発議ヲ可トス、但シ関税局ヨリ下問ノ書中品種ヲ大別セズ相混記セルヲ以テ、願クハ今夕中品類ヲ大別シ且ツ其担任ヲ定メ以テ調査ノ緩漫ニ流ルヽノ恐レナカラン事ヲ欲ス
会頭曰ク、曩キニ委員ニ於テ其品種ヲ大別シ且其見込ヲ以テ予メ担当人ヲ仮定セルモノアリ、是レ固ヨリ参考ニ供スルニ止ト《（マ）》ルト雖トモ口聊カ裨補ナシトセズ、依テ二十二番並ニ十一番ノ説ニ従ヒ此大別シタル品類ニ依テ担当者ノ姓名ヲ朗読シ、諸君ノ可トスルヲ竢テ項ヲ逐フテ之ヲ決定スベキ旨ヲ述ベ、終ニ別冊分担簿ニ掲グルガ如ク一々之ヲ決定シ、更ニ衆員ニ向ヒ此調査ハ敢テ関税商《（局）》ヨリ期日ヲ定メラレズト雖トモ成ルベク速成ヲ要スルハ予テ諸君ノ諒セラル所ナレバ、概ネ其日限ヲ定メン事ヲ要スル旨ヲ述ベ、十一番（福地源一郎）ノ発議ヲ以テ之ヲ来ル七月十五日ト定メ且ツ曰、該調査タル関税局ニ於テハ殊ニ輸入品ヲ先ニセン事ヲ希望セラルヽヲ以テ右分担諸君ハ輸入品ニ就キ其調査ヲ了スルモノハ一品タリトモ之ヲ委員ニ送付セラレン事ヲ要ス、而シテ委員ハ此決議ニ依リ速ニ其分担品訳表ヲ製シテ之ヲ各員ニ通知スベシ、衆員之ヲ領セヨ
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二（DK170018k-0005）
第17巻 p.171-172 ページ画像
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
（東京商工会議所所蔵）
- 第17巻 p.172 -ページ画像
第八七九号《（太字ハ朱書）》
先般申進置候内外品相場調査之義至急入用ニ候条、早々御差出相成度此段及御催促候也
十二年八月五日 関税局副長 有島武関税局副長印
東京商法会議所 御中
追テ過日申進候商況等報告之義モ可成至急御差出相成度候也
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二（DK170018k-0006）
第17巻 p.172 ページ画像
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
（東京商工会議所所蔵）
（写）
内外物産価格調別冊之通リ出来候付復申仕候也
明治十二年八月十二日 東京商法会議所
大蔵省
関税局御中
別帋ハ別冊ニ綴込
○価格調査書ハ現存セズ。
東京商法会議所要件録 第八号・第三丁 明治一二年九月二二日刊（DK170018k-0007）
第17巻 p.172 ページ画像
東京商法会議所要件録 第八号・第三丁 明治一二年九月二二日刊
第十定式集会 明治十二年九月九日午後六時三十分開場
議員出席スル者 ○二十一名
同 欠席スル者 三拾七名
関税局ノ下問ニ係ル内外物産価格調査ノ顛末
曩日関税局ノ下問ニ係ル輸出入物価調査ノ件ハ七月十五日ヲ以テ調査完了ノ期ト定メ、各員之ヲ分担シ、已成ノ分ハ已ニ之ヲ該局ヘ上申スルニ及ビタリシガ、尚ホ未ダ其調査ヲ了セザルモノアルヲ以テ、若シ其分担者ニシテ実際之ヲ克シ難キモノアレバ更ニ理事本員ニ於テ調査ヲ遂ゲ速ニ之ヲ結了セント欲スルナリ、今ヤ調査略ボ終ルヲ以テ之ヲ諸君ニ告ケ、併セテ其分担ヲ了セザルモノハ速ニ成否ヲ通知セラレン事ヲ要スト
東京商法会議所要件録 第一〇号・第一四―一五丁 明治一三年一月一九日刊（DK170018k-0008）
第17巻 p.172 ページ画像
東京商法会議所要件録 第一〇号・第一四―一五丁 明治一三年一月一九日刊
○参考ノ部 東京商法会議所年報
官衙御下問ノ諸項
○上略
内外品価格調査ノ儀ニ付関税局ノ御下問
四月二十日関税局長ヨリ内国産及外国品ノ価格ヲ調査復申ス可キノ命ヲ得タリ、故ヲ以テ五月一日ノ定式集会ニ於テ之ガ調査ノ方法ヲ審按衆議シ、全会ノ決議ニ依リ理事委員ハ予メ調査ノ表式及ヒ其心得書等ヲ製定シ、更ニ六月五日ノ定式会ニ於テ之ガ調査ヲ要スル品類ヲ大別シ、議員中其商業ノ該品類ニ関係ヲ有スル者両三若クハ四五名ヲ以テ各分担ヲ定メ其調査ニ従事シタルニ九月中旬ニ至ル迄約之ガ復申ヲ完フスルヲ得タリ
東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四（DK170018k-0009）
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東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四
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（東京商工会議所所蔵）
辞第四十七号《（太字ハ朱書）》
予テ御回送相成居候海関税則改正ニ付下問復申書表中、甲ノ一唐糸之部ヲ算スルニ、美濃ハ一斤当リ十六円七拾八銭二厘、三河ハ同拾銭、羽前ハ六十二銭七厘、和泉ハ六拾八銭四厘ト相成、其他ハ大抵三十銭内外ニ相成候処右ハ如何ノ理由アリテ斯ク相違有之候哉、甚乍御手数至急御明示有之候様致シ度此段及御依頼候也
明治十四年十一月廿九日 大蔵省記録局
辞書取調掛印
東京商法会議所御中
印
去月廿九日付ヲ以テ、嘗テ御廻送申上候海関税則改正御下問復申書表中、唐糸之部、量価ニ付云々御問合之趣承知仕候、右ハ現ニ当会議所ニ於テ保存致シ候原表ト照査仕候処、何レモ御算出之通リニ有之候ニ付、猶当時右調査ヲ担当致シ横浜商人ヘモ問合候処、何分原稿散失精査仕兼候趣申出候、輸入品価額之義ハ水陸運輸之便否其他之原因ニヨリ多少其高抵不同有之候ハ勿論之義ニ御座候得共《（低）》、先ツ一斤当リ三十銭内外、大抵ノ品ニシテ一斤ニ付十六円以上ノ差違ヲ見ルモノハ恐ラクバ其実ヲ竅セザルモノト奉存候、猶右ニ付テハ更ニ審査ヲ遂ゲ追テ確算ヲ得候上ハ重テ上申可仕候得共、先ハ前条不取敢御廻報申上候也
東京商法会議所
大蔵省記録局辞書取調掛御中
○本款明治十二年九月十五日（第一八八頁）明治十二年十二月二十六日（第二四〇頁）明治十四年十二月十二日（第七八四頁）ノ各条参照。