デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治19年11月18日（1886年）

是日栄一当会会頭トシテ、東京府下ニ於テ各商工業者、同業組合規則ヲ定メテ府庁ニ出願スルニ当リテハ其都度当会ニ諮問センコトヲ東京府知事高崎五六ニ建議ス。二十年二月十二日採可セラル。

東京商工会議事要件録　　第二二号・第五―六頁　明治一九年一二月三日刊
　　第十一定式会
　　　　　　　　　　（明治十九年十一月十六日午後六時開会）
　　第廿二臨時会
　　　　会員出席スル者　○四十五名
○上略
次ニ会長（渋沢栄一）ハ是ヨリ臨時会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ左ノ二件ヲ衆議ニ附ス
○中略
一各組合ノ規約ヲ諮問スル義ニ付東京府知事ヘ上申ノ件
　　右上申ノ趣旨ハ是迄府下各商工組合ノ規約ハ要スルニ其組合一個ノ都合ニヨリテ定ムルモノナルガ故ニ動モスレバ各組合適当ノ畛界ヲ超ヘテ相衝突スルノ懸念ナシトセズ、依テ自今各商工同業者ガ規約ヲ定メ出願スルニ当リテハ必ズ先ヅ之ヲ本会ヘ諮問セラレタシト云フニ在リ、即チ会長ハ其上申案ヲ朗読セシメ各員ノ意見
 - 第18巻 p.562 -ページ画像 
ヲ問フタルニ一同異議ナク之レヲ可決ス（上申書ハ十一月十八日附ヲ以テ東京府知事ヘ進達シ其全文ハ参考部第五号ニ載スルヲ以テ重複ヲ厭ヒ玆ニ之ヲ略ス）

東京商工会議事要件録　　第二二号・第五三―五六頁　明治一九年一二月三日刊
　○参考部
（第五号）
　　　　○（組合規約諮問ノ儀ニ付東京府知事ヘ上申書）
府下商工同業者組合取締法ノ必要ナルハ今改メテ申上候迄モ無之、既ニ此件ニ就テハ去ル明治十七年五月中本会ヨリ農商務卿閣下ヘ建議仕候義モ有之候処、同年十一月農商務省第三十七号達ヲ以テ同業組合準則ヲ定メラレタルヨリ、爾来府下ノ商工同業者ニ於テ此準則ニヨリ組合ヲ新設シタル者其数不少是本会ガ全府商工業ノ為メ大ニ満足スル所ニ御座候、然ルニ右組合ノ規約タル畢竟各商工同業者ガ単ニ其組合一個ノ都合ニヨリテ定ムル所ニシテ、其規約ノ制定ニ就テハ毫モ他ヨリ之ニ参与スルノ制ナキガ故ニ其ノ他組合ニ対スル業体上ノ関係分明ナラズシテ、動モスレバ適当ノ畛界ヲ奔逸シテ互ニ相衝突スルノ懸念有之、夫レ各商工同業者ハ能ク単行孤立シテ其業ヲ営ムベキモノニアラズ、例ヘバ問屋商ノ仲買商ニ於ケルガ如ク又製造者ノ販売者ニ於ルガ如ク彼是ノ業体互ニ相関係シテ其間自ラ相侵スベカラザルノ畛界有之而シテ各組合規約中特ニ営業取引ノ方法ニ関スル要項ノ如キハ其議定ノ如何ニヨリテ大ニ他ノ組合ノ利害ニ関係スル事少カラズ、故ニ若シ其規約ヲシテ各組合一個ノ都合ニヨリテ定メシムル時ハ独リ各業体ノ畛界潰滅スルノミナラス、甚シキハ他ヲ害シ己レヲ利スルノ申合規約等ヲ定メテ為メニ商工業ノ秩序ヲ紊乱シ其極組合取締法ヲシテ一般商工業ノ厭忌スル所タラシムルニ至ランモ亦識ルベカラス、是本会ガ前途ニ深ク遺憾ヲ懐ク所ニ御座候、依テ何卒自今各商工同業者ガ規約ヲ定メ御庁ヘ出願スルニ当リテハ其都度必ズ先ヅ本会ヘ御諮問相成候様仕度、然ル上ハ本会ニ於テ其営業ノ由来取引ノ慣例等ニ就キ鄭重ノ審査ヲ遂ゲ適当ノ意見ヲ具シテ上陳可仕候、果シテ此方法ニ拠ル時ハ各商工同業者ヲシテ適当ノ畛界中ニ併進スルヲ得セシメ、全府商工業ノ改進上其効果不少ト確信仕候、依テ此段上陳仕候也
　　明治十九年十一月十八日　東京商工会々頭　渋沢栄一
　　　　東京府知事　高崎五六殿

東京商工会議事要件録　　第二三号・第一〇―一三頁　明治二〇年三月二二日刊
　　第十二定式会　　（明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会）
　　　　会員出席スル者　○五十六名
○上略
次ニ会長（渋沢栄一）ハ規程第五章第二十二条ニヨリ明治十九年下半季間定式事務ノ成跡ヲ報告ス
　　自明治十九年七月至同年十二月　半季間事務報告
○中略
　　　　政府ヘ建議　　　四件
○中略
 - 第18巻 p.563 -ページ画像 
○組合ノ規約ヲ諮問スル義ニ付東京府知事ヘ建議
　　本件ハ理事本員ノ考案ニ出デ、其要旨ハ是迄府下各商工組合ノ規約ハ要スルニ其組合一個ノ都合ニヨリテ定ムルモノナルガ故ニ動モスレバ各組合適当ノ畛界ヲ超ヘテ相衝突スルノ懸念ナシトセス依テ自今各商工同業者ガ規約ヲ定メ出願スルニ当リテハ必ズ先ヅ之ヲ本会ヘ諮問セラレタシト云フニ在リ、即チ十一月十六日第廿二臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ全会異議ナク之ヲ可決シタルニ付、同月十八日附ヲ以テ之ヲ東京府知事閣下ヘ進達シタリ
○下略

東京商工会議事要件録　　第二三号・第三〇―四九頁　明治二〇年三月二二日刊
　　第十二定式会　　（明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会）
　　　　会員出席スル者　○五十六名
○上略
次ニ会長（渋沢栄一）ハ是迄本会ヨリ諸官衙ヘ建議又ハ復申シタル事項ニ就キ特別ニ其成跡ヲ報告ス
　　　　○東京商工会建議又ハ復申事項ノ成跡
明治十六年十一月本会創立以来今日ニ至ルマデ各官署ヘ建議又ハ復申シタル事項中、其筋ニ於テ既ニ本会ノ意見ヲ採用セラレタルモノ又ハ現今特ニ審査中ノモノハ左ノ如シ
○中略
○組合規約諮問ノ義ニ付東京府知事ヘ建議
　　明治十九年十一月十八日左ノ趣旨ヲ以テ高崎東京府知事閣下ヘ建議シタリ
　　　是迄府下各商工組合ノ規約ハ要スルニ其組合一個ノ都合ニヨリテ定ムルモノナルガ故ニ動モスレハ各組合適当ノ畛界ヲ超ヘテ相衝突スルノ懸念ナシトセズ、依テ自今各商工同業者ガ規約ヲ定メ出願スルニ当リテハ必ズ先ヅ之ヲ本会ヘ諮問セラレタシ、然ル上ハ本会ニ於テ鄭重ノ審査ヲ遂ゲ適当ノ意見ヲ具シテ上陳可仕云々
　　然ルニ明治二十年二月十二日東京府農商課ヨリ該建議ノ趣旨ヲ採可シ、自今重立タル各商工同業者ガ規約ノ認可ヲ出願スルニ当リテハ之ヲ其会ヘ諮問スベキ旨口達セラレタリ