デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治25年7月1日（1892年）

是日栄一、当会議所会頭トシテ東京市内両換商ノ所有セル旧銅貨額ヲ日本銀行総裁川田小一郎ニ回答ス。

集会録事　　自明治二十四年一月至明治二十五年十二月　　（東京銀行集会所所蔵）
○上略
次ニ会長　○渋沢栄一ハ今回日本銀行ヨリ旧銅貨流通額調査ノ儀ニ付照会アリ、其要旨ハ旧銅貨発行額ノ旧記概ネ散逸若クハ焼失ニ属シ当今其現在額ヲ知ルニ苦シムヲ以テ、過般大蔵省ハ各地金庫ニ命シ已ニ調査ヲ了セリト雖、東京府下ノ如キハ集散常ナク容易ニ調査シ難カルヘシ、然リ而シテ独リ当府下ノミ之カ調査ヲ欠クハ甚タ遺憾ノ事ナレハ客年十二月三十一日府下各銀行各種現在額ヲ調査報告セラレタシト云フニアリ、然ルニ此調査ハ単ニ銀行ノミニテハ完全セサルヘケレハ府下為替商ヘモ同様ノ調査ヲ為サシメ相待テ其統計ヲ為サハ稍完全ノ調査ヲ得ヘシト思考ス、依テ其調査ハ東京商業会議所ヘ托サレタル方可然トノ趣ヲ以テ同行ヘ回答スヘシ、就テハ各行ニ於テモ昨年十二月二十八日現在額ヲ調査ノ上報告セラレン事ヲ望ムト述ヘ、衆皆之ヲ了諾セリ
○下略
　　　○右ハ明治二十五年二月二十六日ニ開カレタル定式会議ノ録事ナリ。

第三回東京商業会議所事務報告　　第三五―三六頁　明治二七年四月刊
一旧銅貨流通高ノ儀ニ付日本銀行ヨリ照会ノ件
　本件ハ明治二十五年三月七日附ヲ以テ川田日本銀行総裁ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ当市内両換商ノ所有スル旧銅貨明治二十五年十二月二十八日ノ現在額ノ調査報告ヲ得タシト云フニ在リ、依テ其後東京府庁ニ依頼シ各区内両換商ノ手許ニ所有セル旧銅貨現在額ヲ調査シ、同年七月一日左ノ如ク同銀行総裁ヘ回答シタリ
　　過般当市内各両替商ノ所有スル旧銅貨客年十二月廿八日ノ現在額取調候様御依頼ノ趣承知仕候、然ルニ既往ニ遡リ其実数ヲ知ルハ頗ル困難ト存候ニ付、其後東京府庁ニ就キ本年四月五日・十五日及廿五日ノ三日ニ於テ各区内両替商ガ其手元ニ所有セル旧銅貨現在額ヲ取調候処、別紙ノ通リニ有之候間左様御承知相成度、此段別紙相添及御回報候也
　　明治廿五年七月一日　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　日本銀行総裁　川田小一郎殿
（別紙）
　　　　東京市両替商所有銅貨現在高

　　年　月　日　　　　　　旧弐厘銅貨　　　旧壱厘五毛銅貨　　　　旧壱厘銅貨　　　　　　合計
　　　　　　　　　　　　　　　円　　　　　　　　　円　　　　　　　　円　　　　　　　　　円
明治廿五年四月五日　一、〇八〇・九三五　一、二一九・九四七　　七六二・二九一　三、〇六三・一七三
同　　　四月十五日　一、一三二・〇七三　一、二〇八・二三五　　八九四・一二五　三、二三四・四三三
同　　　四月廿五日　一、〇一九・一九九　一、〇〇九・七〇〇　　八〇〇・〇五八　二、八二八・九五七
　　平均　　　　　　一、〇七七・四〇二　一、一四五・九六一　　八一八・八二五　三、〇四二・一八八

　前表ニ掲グル各種旧銅貨ハ東京市内十五区両替商二百二十四名ノ所有額ヲ統計シタルモノナリ、今其人員ノ明細ヲ示セバ左ノ如シ
　　　　各区両替商人員明細表

　区名　　調査当日旧銅貨所有者　　同上所有セザル者　　同上休業ノ者　　　　計
　麹町区　　　　　　　　　　二　　　　　　　　　〇　　　　　　　〇　　　　二
 - 第20巻 p.100 -ページ画像 
　神田区　　　　　　　　　　三　　　　　　　　　〇　　　　　　　四　　　　七
　日本橋区　　　　　　　　五七　　　　　　　　　三　　　　　　　四　　　六四
　京橋区　　　　　　　　　三四　　　　　　　　　三　　　　　　　一　　　三八
　芝区　　　　　　　　　　一五　　　　　　　　　〇　　　　　　　三　　　一八
　麻布区　　　　　　　　　　二　　　　　　　　　〇　　　　　　　〇　　　　二
　赤坂区　　　　　　　　　一三　　　　　　　　　一　　　　　　　一　　　一五
　四谷区　　　　　　　　　　五　　　　　　　　　〇　　　　　　　〇　　　　五
　牛込区　　　　　　　　　　二　　　　　　　　　〇　　　　　　　〇　　　　二
　小石川区　　　　　　　　　二　　　　　　　　　〇　　　　　　　二　　　　四
　本郷区　　　　　　　　　　二　　　　　　　　　〇　　　　　　　三　　　　五
　下谷区　　　　　　　　　一八　　　　　　　　　六　　　　　　　〇　　　二四
　浅草区　　　　　　　　　四九　　　　　　　　　〇　　　　　　　〇　　　四九
　本所区　　　　　　　　　一五　　　　　　　　　二　　　　　　　〇　　　一七
　深川区　　　　　　　　　　五　　　　　　　　　二　　　　　　　〇　　　　七
　合計　　　　　　　　　二二四　　　　　　　　一七　　　　　　一八　　二五九