デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治30年12月24日（1897年）

是ヨリ先当会議所、アメリカ合衆国フイラデルフイヤ商業博物館商議員会加盟ノ儀ニ就キ同館ヨリ照会書ヲ接受シ、是日ノ会議ニ於テ審議ノ末、当会議所ヲ代表シテ会頭及ビ書記長ガ加盟スルコトニ決ス。翌三十年三月二十一日付ヲ以テ同館ヨリ入会証送付アリ、栄一同館商議員トナル。

東京商業会議所月報　　第六三号・第一二頁　明治三〇年一一月
○同月　○十月三十日、費府商業博物館商議員加盟ノ義ニ関シ、同館ヨリ照会書ヲ接受ス（照会書ノ全文ハ参照ノ部第八号ニ掲載ス）

東京商業会議所月報　　第六三号・第二四―二五頁　明治三〇年一一月
○参照第八号
　明治三十年十月三十日費府商業博物館ヨリ接受セシ照会書ノ全文ハ左ノ如シ
拝啓仕候、玆ニ当費府商業博物館設立ノ主旨及ヒ其方針ヲ述ヘテ貴所ニ呈スルヲ得ルハ、拙者等カ光栄トスル所ニ御座候、陳ハ当館ハ公立ノモノニシテ、一般外国貿易ノ進歩発達ヲ図ルヲ以テ目的ト致候、従ツテ世界到ル所ノ商業会議所及ヒ其他商業家ノ団体ヨリ少カラサル注意ヲ受クヘキハ、拙者等カ信シテ疑ハサル所ニ御座候、凡ソ何人ニテモ外国貿易ヲ企ツルニ当リ、最モ困雖ニ感スル所ノモノハ、其ノ事ニ関スル諸国ノ事情ニ暗ク、又ハ外国産品ノ其レニ類似スルモノニ付キテ報導ヲ欠クコトニ御座候、玆ニ於テ当館ニテハ此等万般ノ通信ヲ集メ、以テ其ノ需メニ応シ、各国商賈、其ノ言語・風土ヲ異ニスト雖トモ、遂ニ親睦和合シテ万国商業ノ隆盛ヲ来タス一助タランコトヲ切望致候
元来本館ハ費府立ノモノニシテ、当市及ビペンシルヴアニヤ州ヨリノ支出金ヲ以テ維持セラレ居リ候、而シテ苟モ当米国ト商売取引シ又タ将来取引シ得ヘキ諸邦ノ天然産出品ハ一切之ニ集メ、種ニヨリ類ニ従ヒテ之ヲ陳列シ、以テ永遠ノ参考ニ供ヘ候、且ツ又タ諸方ノ工業家ニ
 - 第21巻 p.282 -ページ画像 
報シテ好原料タルヘキモノハ其ノ注意ヲ促シ申候
又タ本館所属ノ化学実験所ニテハ此等諸物ヲ験シテ其ノ質ノ良否如何ヲ検定報告致候、尤モ此等試験・分析等ハ永遠陳列品トシテ原料ヲ寄送セラルヽ各位ノ求メニノミ応シテ致スモノニ有之候、次ニ当館ニハ材料富饒、規模整然タル報告局ナルモノアリテ、各国到ル所ヨリ商業ニ関スル報告ヲ蒐集シ、内外商業家ノ用ニ供シ申候、即チ当局ハ常ニ万国ノ市場ヲ観察研究ニ力ヲ致居候故、如何ナル品物ニテモ、之ヲ何レノ地ニ求メ又タ何レノ国ニ輸出スヘキヤ等ニ関シテハ、最モ精細確実ニ報告仕リ候、貴所全体又ハ貴所員各位ニシテ、若シ外国貿易ヲ企テラルヽニ当リテ右等ノ報道ニ不充分ヲ感セラルヽ如キ場合ニ於テハ当局ノ如キ蓋シ無二ノ助力タルヘクト奉存候
而シテ今マ当館ヲ当合衆全国、又タ弘クハ世界万国ノ用ニ供センカ為メ、玆ニ（一）当国内各地ノ商業会議所ノ代表者、及ヒ（二）海外諸国ノ商業会議所員ヲ集メテ勧告商議員ナルモノヲ設ケ候、該商議員会ハ当館事業ノ極大体ヲ監視スルモノニシテ、今マ或ル商業会議所カ之ニ加入相成ルトスルモ敢テ当館ノ企ツ所、為ス所、又タ意見スル所ヲ裁可シ、又タ為サヽル等ノ如キ権利ヲ有スルニ非スシテ、唯タ万国商業上ノ友誼ヲ厚フシ、又タ其ノ進歩発達ヲ期セラルレハ則チ可ナルモノニ御座候
右様ノ次第ニ有之候故ヘ、貴所ニ於テモ当館ノ事業ニ御賛同アリテ、該会ニ御加入被下候様玆ニ謹ミテ御案内申上候、追テ右御承諾ノ上ハ貴所代表者トシテ二名御撰挙有之御通知被下度候、此ノ二名ハ本館勧告商議員会ニ於テハ議員タルヘク、又タ当館トノ通信報告等ヲ掌トルノ任ニ当ルモノト相定メ候也
序テニ御参考迄テ申上候カ、当国内各地商業会議所ニ於テハ殊ニ其代表者ヲ撰挙スル事ナク、直ニ所長及ビ書記ノ二名ヲ以テ職務上ヨリノ代表者ト為スヲ例ト致候、斯クスレバ其ノ代表スル所ニ於テモ欠点有之ナク、又タ時々変更等ノ憂モナク万事好都合ト被存候、又タ総代表者ノ姓名録ハ毎年当館ヨリ出版致シ御送リ申上ヘク候
全体当館ハ去ル六月上旬ニ公開セラレ、大統領マキンレー氏親ラ其ノ式ヲ挙ケラレ候、其他各国公使方モ多ク参列相成候、又タ其ノ節右商議員会モ相開キ候ヒシカ、当国屈指ノ商業家、各地会議所ヲ代表シテ無慮二百名余モ参会セラレ、南米諸邦ヨリハ代表者七十余名派遣致サレ候、当国ニテハ南米代表者ヲ待スルニ賓客ノ礼ヲ以テシ、聊カ好意ヲ表スル為メ終会ノ後チ特別列車ヲ仕立テヽ諸方ノ大都会ニ案内シ、各地商工業所等閲覧ノ便ヲ計リ申候
当館ニテハ尚ホ引続キ同様ノ会ヲ毎年一回ツヽ相開キ、各国代表者互ニ相ヒ親和シ、従ツテ万国商業上ノ興味ヲ深フセン考ニ御座候、各会議所ニテハ該会ニ議スヘキ問題ヲ提出セラレ、又タ他ヨリ提出スルモノヲ討議論究セラレナハ其ノ相益スル所少ナカラサルヘクト奉存候、現ニ去ル六月ノ会カ与ヘシ利益ハ世上既ニ公認スル所ニ御坐候
尚ホ該会モ拡張セラレ其ノ員数モ増加致シ候上ハ、実ニ万国ノ商業界ニ現出スル世界的一偉観タラント存居候
特ニ御注意願上候ハ、今マ貴所カ該会ニ御加入相成ルトスルモ、代表
 - 第21巻 p.283 -ページ画像 
者派遣費ノ外ハ別ニ一銭タリトモ貴所ニ於テ要スル事ナク、且ツ其ノ派遣ノ義モ貴所ノ御随意ニシテ少シモ強制ニハ無之候、勿論毎年貴市ヨリノ代表者ヲ迎ヘテ互ニ快論スルヲ得ルハ拙者カ切望スル所ニ候ヘ共、尚ホ更ニ希望ニ堪ヘサルハ今マ貴所カ此ノ招待状ヲ御受諾有之候テ、万国ノ商業上ニ有セラルヽ友誼ノ情ヲ表セラレンコトニ御座候、斯クスレハ貴所ハ本館ヲ御利用アリテ益セラルヽ所有之ヘク、又タ当館ニテハ貴国特ニ貴府ノ商業ニ関スル報告等ヲ辱フシ得テ利スル少カラサルヘクト奉存候
唯タ一日モ早ク貴所ヨリノ好答ニ接シテ二名ノ代表者ノ御姓名ヲ知ルコトヲ得ハ拙者等ノ幸福之ニ過キズ
又タ此ノ好便ヲ機トシテ願上度候ハ、若シ貴会議所月報其他ノ出版物等有之候ハヾ、成ルヘク漏ナク御寄送奉願上候
又タ当館事業ヲ尚ホ充分御了解アラン為メ別ニ小冊子ヲ相添申候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　恐々頓首
　　　明治三十年十月
　　　　　　　　　　　　主事　ダブルユウ、ビー、ウヰルソン
　　　　東京商業会議所　御中

東京商業会議所月報　　第六五号・第三頁　明治三一年一月
○同月　○明治三〇年一二月二日午前十時、本会議所ニ於テ役員会議ヲ開キ、全国商業会議所聯合会開設ニ関スル件、費府商業博物館ヨリ照会ノ件等ヲ審議シ、午後二時閉会ス

東京商業会議所月報　　第六五号・第一―二頁　明治三一年一月
○明治三十年十二月廿四日、本会議所ニ於テ第六十八回ノ臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
　大木口哲君　○外二十三名氏名略
午後四時十五分開議、会頭渋沢栄一君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後七時三十分閉会ス
○中略
　一費府商業博物館商議員加盟ノ件　（役員会議提出）
本件ハ費府商業博物館ヨリノ照会ニ依リ、其要旨ハ、同館商議員トシテ本会議所ヲ代表スルモノ両名加入アリタシト云フニ在リ、右ハ審議ノ末役員会議ノ意見ノ如ク会頭及ヒ書記長加盟スルコトニ決ス

東京商業会議所月報　　第六五号・第三頁　明治三一年一月
○同月同日　○明治三〇年一二月二七日　費府商業博物館商議員加盟ノ義ニ付、同館ヘ回報書ヲ発送ス

東京商業会議所月報　　第六九号・第一頁　明治三一年五月
○同月　○四月二十一日、商議員加盟ノ義ニ付費府商品陳列館ヨリ回報書ヲ接受ス（回報書ノ全文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス）

東京商業会議所月報　　第六九号・第一―二頁　明治三一年五月
 - 第21巻 p.284 -ページ画像 
○参照第二号
　明治三十一年四月二十一日商議員加盟ノ義ニ付費府商品陳列館ヨリ接受シタル回報書ノ全文ハ左ノ如シ
　　　　訳文
拝啓十二月廿七日附ヲ以テ、貴会議所ニ於テ当館商議員会ニ御加入之趣及貴会議所本表者任命ノ趣御照会相成正ニ敬承仕候、貴会議所カ此御加入ニヨリテ当陳列館ニ御交誼ヲ御表示相成儀ハ、当館ニ於テハ喜悦不斜義ニ御座候、此関係ニヨリテ当館ト団体タル貴会議所及一箇人タル貴会員間ノ親交ハ、更ニ間然スル所ナキハ信シテ疑ハサル処ニ御座候
別封ヲ以テ東京商業会議所ノ入会証ヲ郵送申上候、御領収ノ上ハ之ヲ架シテ会場ニ掛ケ被下候ハヽ大慶此事ニ存候、又同封ヲ以テ渋沢栄一氏及萩原源太郎氏両代表員ノ入会証ヲ差上候間、両氏ヘ御届ケ被下度願上候
貴会議所ノ御入会ハ永久無期限ノ儀ト存候間、貴会議所ノ代表員撰定法ヲ一定ナラシメムニハ、代表員ヲ職務上撰定スル方最モ然ルベシト存候、就テハ貴会議所職員ニ移動有之候ハヽ、当館代表員名簿訂正ノ都合モ有之候ニ付、其都度御通知被下度願上候
当館ニ於テハ貴会議所ヨリ御問合セノ件有之候カ、又ハ御助力ヲ乞ハルヽ事有之候節ハ、出来得ル限リハ貴需ニ応シ可申、又貴国ニ関スル卑見有之候節ハ無腹蔵開陳可仕候
右得貴意度候間、何分ノ御回答ヲ待上候　敬具
　　一千八百九十八年三月廿一日
　　　　　　　　　　　　ヒラデルヒヤ商品陳列館主事
　　　　　　　　　　　　　　　　ダブルユー、ピー、ウヰルソン
　　　　東京商業会議所書記長殿
　　　　（入会証訳文）
「ヒラデルヒヤ」博物館商品陳列部ハ玆ニ東京商業会議所ヲ同部万国商議員会ノ永久ナル会員タルコトヲ承認ス
　此万国商議員会ハ各国ノ商業団体ヨリ組織セラレ「ヒラデルヒヤ」博物館ト相協力シテ、列国間ニ於ケル商業上ノ関係ヲ進捗シ、兼テ国際ノ和親ヲ鞏固ニセンコトヲ期スルモノナリ
　　　「ヒラデルヒヤ」博物館総裁ウヰリヤム、ペツパー（手署）
　　　同　　　　　　　主事ダブルユー、ピー、ウヰルソン（同）
　　　○栄一ノ右商議員ノ資格ハ明治三十八年二月十三日東京商業会議所会頭辞任ト共ニ消滅セリ。