デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年2月10日（1899年）

是日栄一当会議所会頭トシテ、商法修正案第百二十条第六号及ビ第七号ヲ削除センコトヲ司法大臣清浦奎吾ニ建議シ、貴族院議長公爵近衛篤麿・衆議院議長片岡健吉ニ請願ス。

東京商業会議所月報　　第七九号・第七―八頁　明治三二年三月
○明治三十二年二月七日、本会議所ニ於テ第八十回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
　長尾三十郎君　○外二十名氏名略
午後六時開議、会頭渋沢栄一君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ午後六時四十分閉会ス
○中略
　一商法修正案中改正ノ義ニ付建議・請願ノ件　（会員提出）
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本件ハ会員加藤正義君ノ提議ニ係リ、其要旨ハ、商法修正案第百二十条第六号・第七号ノ規定ハ実際不必要ナルニ付之ヲ削除センコトヲ政府ニ建議シ、議会ニ請願スヘシト云フニ在リ、審議ノ末全会一致ヲ以テ之ヲ可決ス

東京商業会議所月報　　第七九号・第九頁　明治三二年三月
○同月　○二月十日、商法修正案中削除ノ件ニ付司法大臣ニ建議書ヲ、貴族・衆議両院ニ請願書ヲ進達ス（建議書・請願書ノ全文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス）

東京商業会議所月報　　第七九号・第一〇―一一頁　明治三二年三月
○参照第二号
　明治三十二年二月七日第八十回臨時会議ノ決議ニ依リ、商法修正案第百二十条ノ義ニ付、同月十日附ヲ以テ司法大臣ニ進達セシ建議書貴族・衆議両院ニ呈出セシ請願書全文ハ左ノ如シ
　　　　商法修正案第百二十条ノ義ニ付建議（請願）
商法修正案第百二十条ハ株式会社ガ其定款ニ記載セサルヘカラサル事項ヲ列記シ、其第六号ニハ「本店及ヒ支店ノ所在地」其第七号ニハ「会社カ公告ヲ為ス方法」トアリ、元来支店ノ移転存廃ハ営業其他時ノ状況ニ従ツテ為スヘキモノタリ、然ルニ法律ニ於テ其所在地ヲ定款ニ記載スヘキ事項ト為ストキハ、単ニ本店又ハ支店ノ番地ヲ変更スルニ過キサル場合ニ於テモ株主総会ヲ招集シ第二百九条ニ依リ特別決議ヲ経サル可カラス、是レ啻ニ会社ヲシテ徒ラニ無益ノ煩累ヲ蒙ムラシムルノミナラス、要急ノ場合ニ於テ機宜ニ処スルノ道ヲ失ハシムルノ弊害ナキヲ保スヘカラス、故ニ是等ノ事項ヲ定款ニ記載スルト否トハ一ニ株主総会ノ意思ニ委ネテ可ナリ、敢テ法律ヲ以テ之ヲ強制スルノ必要ヲ認メサルナリ、又会社カ公告ヲ為ス方法ノ如キハ官報其他本店又ハ支店所在地ニ於ケル発行紙数ノ最モ多キ日刊新聞ヲ指定スルヲ以テ適当ノ方法ト為スカ故ニ、之ヲ定款ニ定ムルトキハ新聞紙ノ盛衰興廃ハ延テ株式会社定款変更ノ原因ト為リ、会社ヲシテ無益ノ煩累ニ堪エサラシメ且臨機応急ノ道ヲ失ハシムルコト第六号ノ場合ト更ニ異ナルコトナシ、而シテ本支店ノ登記及ヒ会社カ公告ヲ為スノ方法ヲ登記スヘキコトハ既ニ第百四十一条ニ於テ規定セラルヽヲ以テ、第三者保護ノ点ニ於テ毫モ欠クル所ナク立法ノ趣旨之ニ因テ貫徹セラルヘシ、従ツテ第百二十条第六号及ヒ第七号ヲ存スルノ必要決シテ之アルヲ見サルナリ（閣下幸ニ此ニ垂鑑セラレ、今回提出セラレタル商法修正案第百二十条中第六号及ヒ第七号ヲ刪除セラレンコトヲ切望ス）（願クハ貴院商法修正案第百二十条中第六号及ヒ第七号ヲ刪除セラレンコトヲ）
右本会議所ノ決議ニ依リ建議（請願）仕候也
　　明治三十二年二月十日
　　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　司法大臣　　　　　清浦奎吾殿
　　　　貴族院議長　公爵　近衛篤麿殿
　　　　衆議院議長　　　　片岡健吉殿
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　　　○右建議ハ採用サレズ。第十三回議会ニ於テ貴衆両院共政府提出ノ商法修正案ヲ無修正ニテ可決シ、明治三十二年四月九日法律第四十八号トシテ公布セリ。（日本商法典の編纂と改正第一〇〇―一〇一頁）