デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年7月24日（1899年）

是日栄一当会議所会頭トシテ、海外貿易ノ発達ヲ保護センガ為メ英領加奈陀モントリール市ニ領事館ヲ設置センコトヲ外務大臣子爵青木周蔵・農商務大臣曾禰荒助ニ建議シ、十二月二十三日、貴族院議長公爵近衛篤麿・衆議院議長片岡健吉ニ請願ス。

第九回東京商業会議所事務報告　　第五―六頁　明治三三年四月刊
一英領加奈太「モントリール」市ニ領事館設置ノ件ニ付外務大臣・農商務大臣ニ建議、貴族・衆議両院ニ請願ノ件
　本件ハ明治三十二年二月七日附ヲ以テ神戸商業会議所ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ我海外商業ノ発達ヲ保護スル為メ、英領加奈太「モントリール」市ニ我領事館設置要望ノ意見ヲ主務大臣ヘ建議シ、貴衆両院ヘ請願セシヲ以テ協賛セラレタシト云フニ在リ、仍テ之ヲ明治三十二年七月二十二日第八十四回ノ臨時会議ニ附セシニ、同意ノ上本会議所ニ於テモ建議・請願スルニ決シ、同月二十四日附ヲ以テ左ノ如ク外務・農商務両大臣ニ建議シ、同年十二月二十三日貴族・衆議両院ニ請願セリ
　　　　加奈太「モントリール」市ニ領事館設置ノ義ニ付建議（請願）
英領加奈陀「ヴヱネペツク」以東大西洋岸ニ至ル一帯ノ地方ハ商業尤モ繁盛ヲ極メ、殊ニ其中心市場タル「モントリール」ハ貿易事業大ニ発達シ、我物産タル茶・米其他雑貨ノ同地方ニ輸出スルモノ比年其額増加スルノ趨勢アリ、然ルニ本邦領事館ハ加奈陀ノ西端タル晩香坡ニ設置シアルノミニテ「モントリール」市ニハ其設置ナク、市俄古市駐在ノ領事ヲシテ、纔ニ同地方ノ商務ヲ兼轄セシメラルヽニ過キサルカ為メ、加奈太ニ於ケル政治上・商業上ノ実状ヲ視察シテ機敏ニ報告シ我国当業者ヲシテ機宜ヲ誤マラシメサルカ如キハ到底望ムヘカラサル所ニ属ス、現ニ前年関税定率割引法ノ制定セラルヽ際ノ如キ、日本人
 - 第21巻 p.466 -ページ画像 
排斥問題ノ起リタル際ノ如キ、往々我ヲシテ不利ノ地位ニ立タシムル憾アリシハ、畢竟我邦カ東部加奈陀ニ一領事館ヲモ有セサリシカ為メナラスンハアラス、故ニ本会議所ハ速ニ「モントリール」市ニ領事館ヲ設置セラレン事ヲ切望ス
右本会議所ノ決議ニ依リ建議（請願）仕候也
　　明治三十二年七月二十四日
　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　外務大臣　　子爵　青木周蔵殿
　　　　農商務大臣　　　　曾禰荒助殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（各通）
　　　　貴族院議長　公爵　近衛篤麿殿
　　　　衆議院議長　　　　片岡健吉殿
　　　○其後間モナクモントリールニ領事館設置セラレタリ。（日本貿易史綱第四一四頁）