デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治30年12月4日（1897年）

是日ヨリ九日迄、七部委員会ノ決議ニ依リ臨時会ヲ東京ニ於テ開催シ営業税法ヲ審議ス。栄一議長トナリ議事ヲ司宰シ、該法全廃ノ儀可決セラル。仍テ栄一、中野武営ト共ニ十七日農商務大臣男爵山田信道ヲ農商務省ニ訪ヒ、該法全廃ノ止ム可ラザル所以ヲ陳情ス。

第七回東京商業会議所事務報告　　第一九頁　明治三一年四月刊
一臨時商業会議所聯合会ヘ参会ノ件
　明治三十年十二月四日ヨリ当市ニ於テ臨時商業会議所聯合会ヲ開会スルニ付、同年十一月二十四日第六十七回ノ臨時会議ニ於テ、参会委員二名ヲ選挙セシニ、左ノ両君当選セリ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一君
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中野武営君

明治三十年十二月開設
臨時商業会議所聯合会報告　　第一―二三七頁　刊
　　　　○聯合会開設地ニ於ケル準備
本会ハ明治三十年十一月、東京ニ開キタル全国商業会議所七部委員会ノ決議ニ依リ、営業税法審議ノ為メ東京ニ開設スルコトニ決シ、委員会議所ノ一タル東京商業会議所専ラ準備ノ労ヲ執レリ
委員会議所ハ明治三十年十一月九日附ヲ以テ全国商業会議所ヘ左ノ通
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知書ヲ発シタリ
　拝啓陳ハ第六回商業会議所聯合会ノ決議ニ基キ、今般東京ニ於テ全国七部委員会議ヲ開キ、兼テ各部会並各商業会議所ヨリ提出相成リタル営業税法ニ対スル意見案ニ就キ審議致候処、右意見案中ニハ同税法全廃ノ意見アリ、又同シク修正意見中ニモ修正ノ方法大ニ相違セル向キ有之、委員会議ニ於テ取捨ヲ決スルハ穏当ヲ欠クノ嫌有之候ニ付、申合規定第七項ニ依リ臨時商業会議所聯合会ヲ東京ニ開設シ、同会ニ於テ審議ヲ遂ケ候コトニ決定致候、仍テ開期其他ノ手続左ノ通リ相定メ候
　　一臨時聯合会ハ来十二月四日ヨリ東京市京橋区木挽町十丁目十一番地東京商業会議所ニ於テ開設スル事
　　一十二月三日午後三時東京市芝区芝公園紅葉館ニ於テ来会員ノ懇親会ヲ開ク事、但会費ハ一人ニ付金弐円ノ事
　　一来会員ノ氏名ハ決定次第可成速ニ東京商業会議所ニ通知スル事
　　一来会者到着ノ上ハ直チニ其宿所及氏名ヲ東京商業会議所ニ報知スル事
　　一会員及事務員中ニテ別ニ説明員ヲ定メ出席セシムルハ規則第十三条ニ依リ固ヨリ差支ナキモ、尚他ノ会員ニシテ意見アルトキハ有志会員トシテ出席シ、其意見ヲ述フルヲ得ル事
　　一議案ハ開会ノ上協議決定スル事
　　右及御通知候也
　　　明治三十年十一月九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　熊本商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広島商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大阪商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　名古屋商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金沢商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　函館商業会議所
　　　　各商業会議所宛
　　　尚々営業税法ニ対スル各部会並各商業会議所ノ意見書ハ一ト纏メトシテ別郵ニ附シ御回附申上候也
此通知書ニ対シ大垣・上田・石岡・松江・水戸ノ五会議所ハ差支アリテ参会シ難キ旨ノ回答アリ、其他ノ四十五会議所ハ孰レモ賛同ヲ表シ委員ヲ派出セラレタリ
営業税法ニ対シ意見書ヲ提出シタル各部会並ニ各商業会議所ハ左ノ如シ
　　　　北陸部会　　中国部会　　九州部会　　東北部会
　　　　畿内部会
　以上部会
　　　　長崎　　佐賀　　赤間関　鹿児島　博多
　　　　熊本　　函館　　青森　　仙台　　高知
　　　　伏見　　神戸　　京都　　大津　　堺
　　　　大阪　　静岡　　大垣　　岡崎　　桑名
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　　　　四日市　岐阜　　津　　　豊橋　　名古屋
　　　　知多　　横浜　　高崎　　宇都宮　太田
　　　　上田　　八王子　東京　　高岡　　新潟
　　　　広島　　尾道　　松江　　山形　　金沢
　以上会議所
京都商業会議所ヨリ十一月五日附ヲ以テ、職工条例制定ニ関スル建議ノ件ヲ提出アリシモ、後ニ至リ撤回セラレタリ

　　　　○参会員氏名
各商業会議所ヨリ参会セラレタル委員ノ氏名ハ左ノ如シ（氏名ハ通知順）
　阿波　（副会頭）　志摩重三君
　名古屋（会頭）　　奥田正香君　　　（副会頭）　鈴木摠兵衛君
　小樽　（常議員）　高橋直治君
　函館　（会頭）　　平出喜三郎君
　佐賀　（副会頭）　西村万次郎君
　新潟　（常議員）　鍵富徳次郎君
　金沢　（常議員）　渡瀬政礼君
　尾ノ道（会頭）　　橋本吉兵衛君
　知多　（会頭）　　天野伊左衛門君　（常議員）　天木嘉祐君
　横浜　（会頭）　　大谷嘉兵衛君　　（常議委員）高橋是清君
　高崎　（会頭）　　中島伊平君
　四日市（会頭）　　井島茂作君
　鹿児島（会頭）　　宮里正静君
　熊本　（副会頭）　堀部直臣君　　　（会員）　　下田耕造君
　仙台　（常議員）　小林八郎右衛門君（特別会員）木村一是君
　堺　　（会頭）　　藤本荘太郎君　　（副会頭）　柴谷武次郎君
　桑名　（副会頭）　平野美純君
　栃木　（会頭）　　石塚新吾君　　　（常議員）　黒川伝八君
　高岡　（会員）　　荒井庄蔵君
　高知　（会員）　　竹井丑松君
　伏見　（副会頭）　江崎権兵衛君　　（常議員）　築山三郎兵衛君
　岡山　（会頭）　　香川真一郎君　　（常議員）　浜圭太郎君
　大阪　（会頭）　　土居通夫君　　　（副会頭）　亀岡徳太郎君
　津　　（副会頭）　橋本清助君
　神戸　（会員）　　岡田元太郎君　　（会員）　　横田孝史君
　岐　阜（常議員）　永井靖九郎君
　宇都宮（会頭）　　上野松次郎君　　（常議員）　田中勝次郎君
　大津　（副会頭）　西村卯兵衛君
　浜松　（副会頭）　中村忠七君
　八王子（会頭）　　吉田忠右衛門君　（常議委員）大野宗兵衛君
　静岡　（会頭）　　北村五郎兵衛君
　豊橋　（常議委員）宅間菊太郎君
　太田　（会員）　　前島平君
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　山形　（常議委員）佐治吉左衛門君
　広島　（会頭）　　桐原恒三郎君
　青森　（会員）　　藤林忠兵衛君
　京都　（常議委員）中野忠八君　　　（常議委員）大沢善助君
　博多　（副会頭）　是松右三郎君
　長崎　（会頭）　　松田源五郎君
　福井　（副会頭）　村野文次郎君
　東京　（会頭）　　渋沢栄一君　　　（副会頭）　中野武営君
　酒田　（会員）　　鐙谷惣太郎君
各商業会議所ヨリ参会セラレタル有志会員ノ氏名ハ左ノ如シ
　仙台　（常議員）　錦戸景訓君
　大阪　（会員）　　片岡直温君　　　（特別会員）三谷軌秀君
　八王子（常議委員）鈴木信太郎君
　神戸　（会員）　　岡崎高厚君
　東京　（常議委員）佐久間貞一君　（常議委員）　益田克徳君
　同　　（同）　　　中沢彦吉君　　　（同）　　　　加東徳三君
　同　　（同）　　　池田謙三君　　　（同）　　　　末延道成君
　同　　（同）　　　加藤正義君
　函館　（会員）　　斎藤又右衛門君
　伏見　（会員）　　山本卯蔵君
　博多　（会員）　　野守嘉猷君
各商業会議所ヨリ参会セラレタル事務員ノ氏名ハ左ノ如シ
　阿波　（書記長）首藤貞吉君　　小樽　（書記）　　　朝永彝三君
　函館　（書記長）内山例之助君　新潟　（書記長）　　近藤辰一郎君
　金沢　（書記長）高田磊介君　　尾道　（事務員）　　宇都宮胖蔵君
　知多　（書記長）鬼頭孫三郎君　四日市（書記）　　　小寺豊次郎君
　鹿児島（書記長）三木原正吉君　熊本　（書記長）　　曾我太郎君
　堺　　（書記長）小谷力造君　　桑名　（書記）　　　水谷輝之君
　岡山　（書記長）山羽協一君　　大阪　（書記長）　　浜田健次郎君
　赤間関（理事）　河村茂十郎君　八王子（書記長心得）林虎三郎君
　静岡　（書記長）森田勇次郎君　京都　（嘱託員）　　岩村繁君
　博多　（書記長）大熊浅次郎君　長崎　（書記）　　　一野喜三郎君
　福井　（事務員）松井文太郎君　広島　（書記）　　　村田文庫君
　富山　（書記長）北村竹四郎君　横浜　（書記）　　　森田忠吉君
　横浜　（書記）　岡戸宗七郎君　同　　（同）　　　　井上卓二君
　同　　（同）　　和仁幸之進君　名古屋（書記）　　　島菊次郎君

　　　　○懇親会
予定ノ如ク十二月三日午後三時ヨリ芝区芝公園内紅葉館ニ於テ参会員一同ノ懇親会ヲ開ケリ、席定マルヤ、東京委員渋沢栄一君開会ノ挨拶アリ、大阪委員土居通夫君之ニ答ヘ、夫ヨリ杯酒献酬ノ間歓ヲ尽クシテ午後九時散会セリ、当日出席ノ諸君ハ左ノ如シ　○氏名略
○中略
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　　　　○正副会長ノ選挙
本会ノ正副会長ハ別ニ投票ヲ用ヒズ、先例ニ依リ全会ノ請求ヲ以テ東京商業会議所委員渋沢栄一君ヲ会長ニ、同中野武営君ヲ副会長ニ推選シタリ
　　　　○会議ノ開閉
臨時商業会議所聯合会ハ明治三十年十二月四日ヲ以テ開会シ、同九日ヲ以テ閉会セリ
　　　　○農商務大臣ノ臨場
山田農商務大臣ハ十二月八日属僚ヲ随ヘテ臨場シ一場ノ挨拶アリタリ
○中略

　　　　○決議
審議ノ結果遂ニ営業税法ハ之ヲ全廃スルニ決シ、意見書起草ノ為メ金沢・横浜・京都・東京ノ四会議所ヲ委員ニ推選シタルニ、委員ハ左ノ如ク報告セリ
　本月八日臨時商業会議所聯合会ノ決講ニ依リ附託セラレタル営業税法全廃ニ関スル意見起草ノ件、篤ト遂審議候末、別紙ノ如ク起草致候ニ付御回附申上候、尤モ別紙意見ハ聯合会決議ノ趣旨ヲ大体ニ於テ表明スルニ外ナラザレバ、全廃ノ理由ニ就キテハ地方ノ状況又ハ各会議所ノ所見ニ依リ更ニ記入スベキ事項モ候ハヾ、此等ハ適宜記載ノ上其筋ヘ建議シ、議会ヘ諸願致候方可然ト存候、此段委員会ノ決議ヲ以テ及御報告候也
　　明治三十年十二月九日　　　　　　　　　　金沢商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横浜商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　京都商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京商業会議所
　　　　全国各商業会議所御中
（別紙）
左記ノ趣旨ニ依リ政府ヘ建議シ、帝国議会ヘ請願スル事
　　　　営業税法全廃ノ意見
現行営業税法ハ大体ニ於テ不良ノ税法タルニ止マラズ、税法ニ貴ブベキ課税標準ノ明確不動ナルコト、及ビ徴収方法ノ簡易公平ナルコトノ二要素ハ全然之ヲ欠ケリ、同法制定以来批難百出、特ニ其実施ニ際シテ物情騒然、官民乖離ノ状アルニ至リシモノ職トシテ此ニ由ラズンバアラズ、蓋シ租税ハ国民ノ勤勉労動ニ課スルヲ避ケ、勤勉労動ノ結果タル財産ニ課スルヲ以テ本旨トスベキニ、営業税法ハ売上金額・資本金額・報償金額・請負金額ノ如キ類ヲ課税標準トシテ専ラ商工業者ノ勤勉労動ニ課税スルノ方針ヲ取レリ、是ノ如クンバ啻ニ商工業者勤勉心ヲ阻止スルノミナラズ、其極遂ニ商工業ノ発達ヲ阻害スルヲ免レズ是其大体ニ於テ不良ノ税法タル所以ナリ、而シテ同法ハ売上金額・資本金額・請負金額・報償金額・建物賃貸価格、従業者ヲ以テ課税標準ト為セリト雖モ、個人ノ営業ニ在テハ以上六者一トシテ増減常ナク、且ツ之ヲ確知スルコト至難ナルモノナラザルハナシ、故ニ之ガ課賦ヲ定ムルニ当リ営業者ノ申告ハ収税吏ノ臆算ニ一致セズ、種々撿査ト
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幾多ノ手数トヲ要シ、而カモ其徴収ノ結果同一営業ニ於テスラ寛苛軽重甚ダシク其度ヲ異ニスルヲ免レズ、徴税費ノミ徒ラニ多キヲ加ヘテ国庫ニ収入スル所予期ノ如クナル能ハザルニ至ル、畢竟其是ノ如クナル所以ノモノハ、課税ノ標準明確ヲ欠キ、徴収方法簡易ナラズ、賦課ノ全部ヲ挙ゲテ収税吏ノ認定ニ一任スルノ外ナキガ為ノミ、熟々同法実施以後ノ状況ニ徴シ、併セテ同法ノ大体ヨリ考察スルニ、向後縦令之ヲ修正加刪スルモ到底完全ナル税法タラシムルニ由ナシト信ズ、故ニ現行営業税法ハ速ニ之ヲ廃止セラレンコトヲ望ム
○中略

　　　　○大臣訪問
聯合会決議ノ趣旨ニ本キ、明治三十年十二月十七日渋沢栄一・中野武営ノ両君ハ山田農商務大臣ヲ農商務省ニ訪ヒ、営業税法全廃ノ已ム可ラザル理由ヲ詳述セラレタリ

明治三十年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第一―一六九頁　刊
明治三十年十二月四日午前十時三十五分開議
　　出席委員　　　　　四十九名　○氏名略
○議長（東京、渋沢栄一君）　皆様此度ハ昨年来ノ営業税法ノコトニ就キマシテ引続キ当所ニ於テ臨時聯合会ヲ御開キニナルノ都合ニ相成リマシタノデゴザリマス、其聯合会ヲ御開キニナリマス顛末ハ、先月中七部委員ノ会議所ガ当所ニ集リマシタ、其集リマシタ時ニ審議ノ結果遂ニ臨時聯合会ヲ開クヲ要スルト云フ事ニナリマシタニ依ツテ、此処ニ御会同ヲ乞ヒマシタノデゴザリマス、其御報道ハ続テ申シマスガ、今日第一ニ東京商業会議所トシテ御詫ヲ申上ゲナケレバナラヌノハ此会場ノ事デゴザリマス、聯合会ニ御寄リ集リノ御方ハ凡ソノ程合ハ予テモ分ツテ居リマシタケレドモ、或ハ此当仮会議所ハ間狭デゴザリマスデエライ御混雑ニモアリ、議事ノ都合ニモ悪クハナカラウカト懸念致シマシタカラ、他ニ場所デモ取設ケヤウカト当会議所ノ役員ニ於テ種々相談致シテ見マシタケレドモ、色々ノ関係モゴザリマスシ、総テ借リ場所ト申ス者ハ日々会議デモ致スニハ至ツテ不便デアリマスシ、間狭デ見悪シクハゴザリマシテモドウカ間ニ合シタイト云フ考カラ枉ゲテ当所ヲ用ヒテ居リマスノデ、図ラザリキ大分御来会ノ御方ガ思フタヨリ多ク御集リデ、御賑々シク御光来ハ喜バシイコトデゴザリマスガ、今ノ御混雑ヲ来シ今朝別シテ吾々ノ注意ノ至ラザルニ恐縮致シマス、誠ニ御狭フゴザリマスガ御窮屈ヲ御忍ビ下サツテ御辛抱ヲ願ヒマス、甚ダ吾々ノ注意ノ至ラザルコトヲ第一番ニ謝辞ヲ申上ゲテ置キマス、続イテ前ニ申述ベマシタ先月中七部委員会ノ報告ヲ申上ゲネバナラヌノデス、其七部委員会ト申スモノハ三十年五月広島ニ開設シタ第六回商業会議所聯合会ノ協議ニ基イテ組立テラレタノデ、幹事ニハ東京商業会議所ガ当リマシタ、其幹事ハ七部委員会ヲ開キマシタコトヲ委シク斯様々々ニ行ツテ、七部委員会ハ何時何処ニ開カレタ、続イテ斯ク々々デアルト云フ手続ヲ今玆ニ臨時会ニ対シテ御報道仕リマス、一寸報告ノ要
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領ガ書取ツテゴザリマスカラ之ヲ書記ニ朗読致サセマス、但シ此御報道ハ七部委員ノ総代トシテ東京商業会議所ノ私カラ申上ゲマスノデゴザリマスデ、左様御聴取リヲ願ヒマス（書記朗読）
　　　　全国商業会議所七部委員会報告　○略ス
○議長（東京、渋沢栄一君）　唯今朗読致シマシタ通リノ経過デアツタノデ、一番仕舞ニ読上ゲマシタ通リノ委員会ノ結果ハ、此総テ皆様ニ御持参ヲ乞ヒマシタ今日ノ会議ニ用ユル所ノ議案ハ各種ノ者デアリマシテ、或ハ此営業税ヲ廃スルガ宜カラウト云ヒ、又其修正ト云フ意見ニ就イテモガ余程種々様々ニ渉ツテ居ルカラシテ、詰リ委員会ニ於テ之ヲ決シ切ル訳ニ往キ兼ル故ニ、臨時聯合会ヲ開クヨリ外ナイト云フコトニ決定仕リマシタノデゴザリマス、其会議ニ於テノ会議致シマシタ手続ハ別ニ玆ニ掲載ハ致シテゴザリマセヌガ、五日ヨリ八日ニ至ル数日間ノ審議ヲ尽シマシタ次第デゴザリマス、一応総代トシテ簡単ニ報告致シマス
○三十六番（神戸、岡崎高厚君）　一寸御尋致シマスガ、サウスルト委員会ハ唯全廃スルト云フ説ト併セテ修正スルト云フ所ノ説ノ両派ニ分ツタノデゴザリマスカ、ソレガ委員会ノ結果デゴザリマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　委員会ニ於テハ廃案説ヲ宜カラウトモ修正説ヲ宜カラウトモ決定ニナラナカツタノデゴザリマス、左様ニ変ツタル説ガ玆ニ輻湊シテ居ルカラシテ之ヲ決定スルハ特ニ臨時聯合会ヲ開イテ極メルガ宜カラウト委員会デハ決定シタ、斯ウ云フ主意ナンデス、右ノ次第カラ今日ノ此臨時聯合会ガ開カレマシタノデゴザリマス、委員会ノ顛末ハ今御報道致シタ通リデゴザリマス従ツテ此七部委員ト云フモノハ此御報道ト共ニ自カラ解任サレタルモノト云フ事ニ相成ラウト考ヘマス、此段併セテ全会ニ御報道申シテ置キマス、即チ其任ガ解ケマシタ訳ニ相成ツタ、続イテ此本会ヲ開クニ就キマシテノ会長及副会長ノ御選挙ヲ願ハネバナラヌ都合ニ相成リマス、ソレカラソレガ定マリマシタ所デ或ハ此会議ノ上デ傍聴ヲ許スヤ否ヤ、又規則ハ何レノ規則ニ依ルガ宜イカ即チ聯合会規定ガゴザリマスカラ聯合会規定ニ依ルノ順序ニ運ンデ往ク必要ガアラウト考ヘマス、先ヅ第一ニ会長・副会長ヲ御選ビニナルコトヲ乞ヒマス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　是迄ノ例モゴザリマスデ、甚ダ御迷惑デゴザリマセウガ会長ニハ渋沢栄一君、副会長ニハ中野武営君ヲ御頼ミシタイト考ヘマス、一同御異存モナイト存ジマスデ右提出致シマス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　賛成
○十七番（熊本、堀部直臣君）　賛成
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　賛成
○三十二番（大阪、土居通夫君）　次ニ傍聴ノ件デゴザリマス、此ハ一向差支ヘルコトハナイト考ヘマスガ、唯此議場ガ狭フゴザリマスデ此為ニ御不都合トアレバ致方モゴザリマセヌガ、ソレハ公ニ御許シニナル方ガ宜シカラウト考ヘマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　同感デゴザリマス、成ルベク此ハ許シマシタ方ガ宜カラウト思ヒマス
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○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　三番モ賛成デス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　同感デス
○十七番（熊本、堀部直臣君）　同感デス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　次ニ規則ノコトヲ御述ベニナリマシタガ、此ハ矢張東京商業会議所ノ規則ニ依ツテ議事ヲ御定メガ宜シカラウト考ヘマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　唯今土居君カラノ御発議デ、会長ハ開会地即チ東京商業会議所ノ会頭ヲ以テ此席ノ会長ニ充テルガ宜カラウト云フコトデ御賛成モゴザリマスヤウデスガ、別ニ御異議ガゴザリマセネバ甚ダ不肖ヲ顧ミズ此席ヲ涜スノハ恐入リマスガ、却テ謙遜シテ時ヲ費スノハ折角大事ナ議事ヲ妨グル恐ガアリマスカラ、不肖ナガラ敢テ其任ニ当ラウト考ヘマス、甚ダ不行届デゴザリマスカラドウゾ宜シク御容赦ノ程ヲ御願ヒシマス、従ヒマシテ此会長ノ定リマシタ以上、此開会ニ必要ナ議事規則及傍聴ノ有無ト云フコトハ今土居君カラ御発議ノ、規則ハ開会地即チ東京ノ議事規則ヲ適用シテ宜カラウ、又傍聴ハ公開ニシテ宜カラウ、禁ズル必要ハナカラウ、許シテ宜カラウト云フコトニ御同意デゴザリマスカ、別ニ御異議ゴザリマセネバ右ノ二件ハ其通リ極メマス（「異議ナシ、々々々々」ノ声起ル）ソレデハ唯今土居君ノ御発議ノ通リ、議事規則ハ開会地東京商業会議所ノ議事規則ヲ用ユル、傍聴ハ許スト云フ事ニ決定仕リマシテゴザリマス　○中略
○五十七番（東京、中野武営君）　最早御報告モ御済ミニナツタヤウデスカラ、是ヨリ議事ニ御取掛リニナル事ト考ヘマス、就キマシテハ此委員ニ御廻付ニナツテ居リマス原案ハ沢山ゴザリマスノデ、何レヲ採ツテ原案トシテ議スベキヤ、議事ノ順序ヲ是ヨリ御定メニナル必要ガアルト考ヘマス、之ヲ大別致シテ細カニ申述ルコトハ甚ダ無用ノコトヽ考ヘマスガ、大体此議案ヲ大別シマスレバ、現行営業税法ヲ全廃スルト云フノト営業税法ノ範囲ニ於テ修正スルト云フコトト此二ツニナリマスノデゴザリマス、夫故ニ議事ヲシマス順序ヲ申セバ大体全廃スルト云フコトガ果シテ多数デアルカ、少数デアルカ之ヲ先ヅ第一着ニ御取極メニナリマセヌケレバナリマスマイト思ヒマスガ、若シ全廃ノ意見ニ決シマスレバ修正ノ廉々ヲ議スル要ハナイノデアル、若シ又全廃ヲシナイテ修正スルトナリマスレバ此修正ハ沢山ノ廉々ガゴザリマスルニ依ツテ、何レカ其中ノモノヲ採ツテ原案トシテ議シテ参ランケレバナリマセヌノデ、即チ申セバ此案中ノ営業税法全廃ト云フ即チ先決問題ノヤウナモノト考ヘマスカラ第一ニ此全廃説ニ就イテノ議ヲ御聞キニナツタラ宜カラウト考ヘマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　唯今五十七番カラ述ベラレマシタ通リ、此議事規則ニ依リマシテモ議事法ノ上カラ云ヒマシテモ、全廃シヤウト云フ案ト云フモノハ勿論先決問題デゴザリマセウト存ジマスデ、先ヅ全廃説カラ議事ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　此全廃ト云フコトヲ先ニスルト云フコトハ至極同感ノ訳デゴザリマスガ、東京商業会議所ガ之ニ附帯シタル革新意見ト云フモノガアリ、又横浜ニモ其意見ガアル、金沢ノ
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会議所カラ提出ニナツタノハ別段サウ云フ附帯ハアリマセヌガ、今日愈々議題トナルノハ何モ附帯ハナイト心得テ宜シウゴザリマスカ念ノ為メ伺ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　今中野君ノ御発議ニナリマシタ意見ハ別ニ此廃案ニ就イテ斯ル者ヲ持出シテ廃案ト云フコトヲ申サレタノデハナイノデゴザリマセウ、此附帯スル意見ハ更ニ附帯スルニモ致セ別ニ建議スルト云フコトニ東京ナドハナツテ居リマスカラ、詰リ申セバ営業税ヲ止メテ仕舞フトカ、修正スルトカ云フ二途ニ於テ御判断ニナツテ宜カラウト考ヘマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　唯今ノ会頭ノ御意見ノ通リデゴザリマスレバ、五十七番ニ賛成ヲ致シマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　五十七番ニ同感（「異議ナシ、異議ナシ」ノ声起ル）
○議長（東京、渋沢栄一君）　五十七番ヨリシテ議案ニ就イテドウ云フ順序ニ議事ヲ計ラツテ往ツタラ宜カラウカト云フ御意見ガ出マシテゴザリマス、即チ其議案ト云フ者ハ皆様ニ差上ゲテアルモノデアルガ、其中廃案ト云フモノガアル、又修正ニモ多少色ノ変ツタノガアル、而シテ之ヲ議事ニ進行サセルニ就イテ順序ヲ考ヘルト云フト、先ヅ廃案ト云フモノヲ一番先ニ評議ニナツテ、廃案ニ決スルナラバ修正意見ハ別ニ議スルノ必要ガナクナルダラウカラ、詰リ先決問題ノ如キ形ヲ為スデアラウト云フ御説ガ大分御賛成ガアルヤウデゴザリマスガ、別ニ御異議ガゴザリマセネバ先ヅ廃案ト云フモノヲ第一ノ議題トシテ、玆ニ御討議アルヤウニ致シタウゴザリマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　唯今五十七番ニ賛成致シマシタノハ即チ両説何レカ多数デアルカト云フコトデゴザリマスカラ、別ニ議題トセズトモ直チニ其決ヲ採ラルヽコトヲ必要ト考ヘマスカラシテ其方ニ希望致シマス、其決ノ採リヤウハ成ル丈白紙カ或ハ青紙カ尚確カナ数ヲ一々会頭ノ面前デ御認メヲ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　採決ノ仕方ヲドウスルノデスカ
○六番（佐賀、西村万次郎君）　各自会頭ノ面前デ白紙ト青紙トヲ持参致シマシテ修正ト全廃ト云フコトヲ……
○議長（東京、渋沢栄一君）　点呼ノヤウニシタイト云フノデスカ
○六番（佐賀、西村万次郎君）　サウデス
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　少シ伺ヒマスガ、金沢会議所ハ最初修正説ヲ持ツテ居マシタガ、更ニ今日ハ説ヲ御取消ニナリマシタノデセウカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　修正ノ方ノ意見デスカ、修正ノ方ノ意見ハ御取消ニナツタヤウニ見ヘマス、更ニ左ノ如ク決議致シタ以上ハ前ノハ取消サレタト云フ意味デアラウト思ヒマス
○八番（金沢、渡瀬政礼君）　私ハ金沢会議所ノモノデアリマスガ、唯今二十番カラ御尋ノコトモアリマスシ旁々玆ニ少シ御断リヲセンケレバナリマセヌ、先ニ北陸部会ト云フ節ニ段々ト部会デ修正ノコトヲ討議致シマシテ、ソレヲ以テ先月ノ委員会ト云フモノニ提出シテ置キマシタ、其後金沢商業会議所ガ単独デ更ニ段々考ヘル所モアリ
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マスシテ、遂ニ金沢商業会議所丈ハ部会ニ拘ラズ更ニ営業税法ヲ全廃スルト云フコトヲ決議シマシタ、此ハ色々意見ノ進化シタ結果デアルト云フコトニ御承知下サルヤウニ願ヒマスガ、部会ノ時ノ修正ハ金沢商業会議所丈ハ取消シマシタ次第デアリマス、此段一寸御断リ申シテ置キマス
○四十二番（八王子、吉田忠右衛門君）　唯今五十七番カラ全廃ニスルカ或ハ修正説ヲ採ルヤ否ヤト云フ御説ガ出マシテ至極御尤デハゴザリマス、去リナガラ全廃ト云フノハ随分大問題ダラウト考ヘマスノデ、唯直チニ此処デ全廃スルカ或ハ修正説ヲ採ルカト云フノハ少シク熟考スル所モゴザリマセウカラ、暫時休憩ヲ願ツテ篤ト熟考ノ上デ、全廃スルカ或ハ修正説ヲ採ルカト云フコトノ採決ヲ願ヒタイ、直チニ此処デ全廃スルト云ツテモ随分全廃ト云フモノモ大問題ナリソレニ各々意見書モ出テ居リマスカラ直チニ全廃スルト云フ説ニ賛成スルモノモソコノ都合ガアラウト存ジマスカラ、暫ク休憩ヲ願ツテ篤ト熟考ヲ致シテ採決ヲ願フ方ガ都合ガ宜カラウト存ジマス、一寸一言述ベマス
○五十七番（東京、中野武営君）　先刻営業税法全廃ノ案ニ就イテ議事ヲ開クトナツタト考ヘテ居リマシテ、マダ此案ニ就イテ直グニ決ヲ採ルト云フ場合デアリマスマイト信ジテ居リマス、素ヨリ全廃ニ就キマシテモ修正ニ就イテモ、種々皆様ノ御考慮ガアル所ヲ十分ニ討論審議シタ結果、其上デ決ヲ採ラレルコトヽ考ヘマス、若シ既ニ営業税法廃止ノ意見ニ就イテ議題トシテ宜シイト云フコトデゴザリマシタナラバ、今ヨリ意見ヲ詳細申述ベタイノデゴザリマスガ、如何ナモノデアリマセウカ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　自分ハ五十七番ニ賛成シマシタノモ今発議者ガ述ベラレマシタ通リノ精神デ、愈々此議題ノ順序ガ定リ愈々廃案説カラ議事ニ掛ルト云フコトデゴザリマスレバ、提出者ノ意見モ能ク承リ、之ニ対シテ十分討議ヲ尽シタ後デナケレバ到底決スルト云フコトハ出来ヌモノデアラウト思ヒマスカラ、私ハ休憩ドコロデナイ、事ニ依ツタラ今日ハ此決議ヲスル事ヲ望マナイカ知リマセヌ、能ク熟考シナケレバナリマセヌカラ、其熟考ニ先立ツテ十分討議ヲシテ見タイト思ヒマス、ソレデ今五十七番ニ賛成シマシタノデゴザリマス
○四番（小樽、高橋直治君）　私モ三十三番・四十二番ト同感デ、之ヲ直グ様決ヲ採ラレルコトニナツテハ、吾々ハ何百里先カラ来テ自分ノ意見モ何モ御話カ出来ナイヤウニナリマスカラ、十分熟考サレンコトヲ希望シマス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　十六番モ五十七番ノ御説明デ明ニ分リマシタカラ其方ニ賛成デゴザリマスガ、全廃ト云フコトニ就イテハ吾々大ニ考ヘナケレバナラヌ、又此修正ト云フコトニ就イテモ大ニ考ヘナケレバナラヌコトデゴザリマスカラ、十分ニ皆様ニ御研究ヲシテ頂イテ、而シテ後ドチラカニ方針ヲ定メタイト云フノデゴザリマスカラ、五十七番ノ御説ニ賛成ヲ致シマシタ
○五十番（京都、中野忠八君）　五十番モ五十七番ノ述ベラレル順序ニ
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シタイ、即チ京都商業会議所ハ全廃ノ意見ヲ出シテ居リマス、今日迄ノ本会ノ議事ハ修正ト云フコトノ為ニ開カレタ会議ニ思フテ居リマスノデ、唯今迄マダ書面ハ御手許迄出シテ置キマシテゴザリマス幸ニシテ此全廃ノコトヲ御議シニナリマスコトデゴザリマシタラドウカ各会議所ヘ京都ノ意見ヲ御配布ヲ願ヒタイ、十分ニ此事ハ反対モゴザリマセウシ、十分ニ練リ合フタ上デ御採決ノコトヲ希望シマス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　此全廃説ニ就イテハ我ガ会議所デハ十分反対ヲ持ツテ居ルノデゴザリマスカラ、十分ニ御意見ヲ伺ヒマセヌケレバ決シテ賛成シナイ積リデゴザリマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　今四十二番サンノ御考ハ此議事ヲサウシテ往クト云フノト、決ヲ採ルノト少シ思ヒ違ヒガアリハ致サンカト思ヒマス、今迄ノ場合先ヅ先ニ全廃ニ就イテノ討議ヲナサルト云フコトガ今此処ニ議場ニ現レテ居ル場合ニナツテ居リマスノデ、直ソレヲ採決スルト云フ意味デハナイノデゴザリマス
○四十二番（八王子、吉田忠右衛門君）　ソレナラバ宜シウゴザリマス全廃ニ就イテ討議スルト云フコトナラバ唯先ニ全廃ヲ採ルカ修正ヲ採ルカト云フ決ヲ採リマスノハ困ル、唯ドウソレヲ議スルヤ否ヤト云フコトナラ一向差支ゴザリマセヌ
○議長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ御多数ノ御意見モ、御意向ガ全廃説ヲ先ニシテ致スガ宜カラウト云フニ殆ド御異議ガナイヤウニ見受ケマス、今ノ問題ハ全廃説ニ就イテノ御討論ト御考ヘ下サツテ御議論ノアルヤウニ致シタウゴザリマス
○五十七番（東京、中野武営君）　本員ハ営業税法全廃ノ意見ヲ持ツテ居リマスル故ニ其意見ノ大要ヲ申述ベヤウト考ヘマス、東京商業会議所ガ先ニ昨年即全国ノ商業会議所ニ提出ヲ致シマシタノハ営業税法ノ修正意見デゴザリマシテ、而シテ此度営業税法廃止ノ意見ヲ提出ヲ致シタハドウ云フ訳デアルカト申シマスレバ、昨年ノ時ニ当ツテハ未ダ税法ガ実施セラレテ居リマセヌデ、唯法文ノ上ニツイテ種種ノ想像ヲ画キ出シテ考査ヲ致シテ見タト云フニ過ギナンダ時節デアツタノデゴザリマスガ、然ルニ昨年一月ヨリ営業税法ガ実施セラレテ現在社会ニ現レタ有様ニ就イテ研究ヲ致シテ見マシタガ、結局此法ハ甚ダ不法不公平又産業ノ発達ヲ阻害スル税法デアル、斯ル税法ヲ将来ニ存セラルヽ事ハ甚ダ国家ノ為ニ宜シカラザルコトデアル縦令之ニ多少ノ修正ヲ加ヘテ見タ所ガ到底根本的ニ宜シカラザル税法デ、唯其枝葉ノミヲ直シテ見タ位ノコトデハ到底往クモノデハナイ、斯フ云フ考ヨリ致シテ税法ノ全廃ヲ致シマス意見ニ極メマシタノデゴザリマス、其提出ヲ致シテ居リマス意見書ノ参考書ト致シテ税法革新建議書ヲ添ヘテゴザリマスガ、之ハ予メ御断リヲ申シテ置カネバナラヌノデアル、其次第ハ此税法革新ノ意見ト申シマス者ハ聯合会ニ東京商業会議所ヨリ提出ヲ致ス心得ハナイノデゴザリマス之ヲ諸君ニ御諮リ申シテ斯ノ如キ建議書ヲ政府ニ提出シタイト申ス趣意デナクシテ、之ハ東京商業会議所ハ既ニ決議ヲ致シマシテ大蔵大臣及農商務大臣ニ建議ヲ既ニ致シタノデゴザリマス、乍併元ト営
 - 第22巻 p.218 -ページ画像 
業税ノ論ヨリシテ見マシテモ、国家ノ財源ト申シマスモノニ関係ヲ及ボスモノデゴザリマス故ニ、営業税ヲ唯廃シテ仕舞フテハ国家ノ経済ノコト、国家ノ財政ノコトハ少シモ顧ミナイト云フ考デハナイ即チ斯ノ如キ又別ニ税法ヲ革新シタナラバ日本ノ国庫ノ財政ハ十分之デ立チ得ラルヽモノデアルト云フ別種ノ意見ガ極リマシタガ故ニ此営業税法ヲ廃シテ仕舞ツタトテ国家財政ノ上カラシテ愈々意見モ極メラレマス訳ナンデスカラ、東京商業会議所ノ意見ハ此処ニアルト云フコトヲ御参考ノ為ニ申シ加ヘテ差出シタノデ、乍併此税法革新ノコトハ素ヨリ営業税一部ニ代ヘルニ斯ノ如キ税法ヲ以テスルト云フノデナイノデゴザリマス、此点ハ大体今日ノ如ク政府ガ姑息ノ仕方デハ往カナイ、根本的国家経営ヲシテ財源ノ道ヲ立テヽ往カネバナラヌモノデアルト申ス趣意デゴザリマスカラ、営業税法ハ唯一部ノ税ノコトデアル、此方ハ税法革新ノコトハ全部ノ税ニ対スル訳デゴザリマスカラ、是ニ代ヘルニ是ヲ以テスルト云フ訳ノ趣意デモナイノデゴザリマス、乍併従ツテ此税法革新ノ趣意ガ立ツタナラバ営業税ノ如キハ敢テ苦シミツヽ税ヲ取ルヤウナコトヲセヌデモ宜シク相成ル訳デアラウト考ヘマスノデ、念ノ為メ一言此参考書ノコトニ就イテ最初ニ申上ゲテ置キマス次第デゴザリマス、偖営業税法ノ不完全ニシテ実際ニ甚ダ紛擾困難ヲ醸シマシタコトハ、今更私ガ喋喋申上ゲルヲ待タズシテ諸君ガ実地ニ御経験ニナツテ居ルコトヽ考ヘマス、要スルニ其物ガ紛擾ヲ醸サシ困難ヲ来サスヘキモノナンデアル、営業税法ト云フ其物ガ現ニ紛雑ト困難ヲ醸サス道具ニナツテ居ルノデゴザリマスカラ、此税法ヲ施行スルニ就イテ各地方ニ紛擾困難ヲ醸シタト云フコトハ珍ラシカラナイ、紛擾スベキ種ヲ蒔イテ紛擾サセ、困難スベキ種ヲ蒔イテ困難シタノデ、私ハ少シモ怪シムニ足ラヌト思フノデアリマス、若シ税法其物ガ宜シキナラバ斯ノ如キコトハナイノデアル、税法其物ハ完全デアルガ唯役人ノ取扱ガ悪カツタト云ヘバソレ丈ヲ改正シ、ソレ丈ヲ改メサセタラ宜イガ、税法ノ根本ガ既ニ左様ナモノナラバ到底之ヲ直スト云フコトハ出来得ラレヌト思ヒマス、何故トナラバ此税ノ標準トナリ楯トナルモノガ尽ク明白ニ定ムルコトガ出来ヌモノデアル、申セバ無形ノモノデアルト申シテモ宜シイ、夫故ニ実際之ヲ施行スル場合ニ当ツテハ、之ヲ想像ト推測ト云フモノガ量リニナツテ之ヲ指定シテ往クヨリ外ニハ仕方ガナイ、偖税ト申スモノニ推測・測量・想像ト云フモノガ税ト云フモノヲ取ル根本ニナツテ、ソレヲ以テ人ノ営業ニ対シテ立入ラレルコトガアツタナラバ如何ナモノデゴザリマセウカ、税ト云フ性質ノ道理ニ適フテ居ル訳デアラウカ、決シテ税ノ性質ニハ適ハヌモノデアルト思フ、之ヲ要スルニ斯ノ如ク想像ニ立テヽ置イタナラバ、唯税務ニ当ツテ居ル役人ガ寸法ヲ立テヽ凡ソ是程ノモノダラウ此市街ハ此位ノモノハ取レルダラウト云フ大体ノ予想ヲシタモノヲ主義トシテ、其大体ノモノヲ以テ軒別ニ当テヽ往ツテ、ソレカラ是丈ノ税ヲ出セト云フコトニスルヨリ外租税ノ取リ方ガナイ、ソレガ即チ実行ニ就イテ各地方ニ紛雑ノ起ツタ所以ナンデゴザリマス、私ニ聞ク所ニ依リマスト、最初ヨリ政府ハ之ヲ以テ七百五十万円ナラ
 - 第22巻 p.219 -ページ画像 
七百五十万円ノ金ヲ取ラウト云フ予算ヲ立テヽ、七百五十万円ヲ全国ノ県々ニ分ツテ、東京市ハ何程、大阪府ハ何程、名古屋ハ何程、斯様ニシテ七百五十万円ヲ各地ニ割付ケテ、而シテ此之ヲ受ケタ所ノ府県ノ税務吏ハ其配当ヲ各町村ノ見当ヲ見分ケテ、サウシテ之ニ割振ツタ、又其下ノ税務吏ハ其分配ヲ受ケタ金額デ一町内ノ中ニ区別ヲ立テヽ営業ノ仕分ケヲスルカラ、凡ソ人ノ分限ト云フモノニ応ジテ或ハ名ヲ賃貸価格ノ方ニ付ケ、或ハ売上ゲ金トカト云フヤウナ標準ノモノニイヽ加減ニ盛リ掛ケテ、是丈ノモノハ出サセナケレバナラヌ、是丈ノモノハアル筈ノモノダト云フ寸法ニシテ往ツタ、素ヨリ税率トシテ左様ナ取方ニスルヨリ外思フタ丈ノモノハ取リ得ラレヌ寸法デアル、此税法ガサウナツテ居ル、規則ニハ書イテナイガ現在之ヲ行政シテ往フト思ヘバ斯ウ云フコトニナルノデアル、本年一月カラ税務ノ当局者ガ寸法ヲ立テヽ往キマシタモノハ唯今私ガ申シマシタ如キ仕方ヲ致シタコトニ私ハ承ツテ居ル、ソレガ為ニ甚シキ不都合、甚シキ不権衡不公平ナコトヲ生ジタノデアル、而シテ其結果ハドウナツタカト申セバ、極ク力ノ強クシテ見識ノ固イ人ナラバ如何ニ税吏ニ迫ラレヤウトモ、如何ナル苦ミニ会ハサレマセウトモ屈セズシテトウトウソレニ応ジナンダ、是ニ反シテ左様ナ見識意見ト云フモノヲ立テヽ貫クト云フコトガ出来ズ、啻ニ立テタ意見ヲ貫キタクモ日々店頭ニ出入シテ帳面ヲ見テ売上高ヲ調ベ、其帳面ノ中ニ印紙ノ脱漏ガアリハセヌカ、其罰ヲ附スゾト云フテ商売人ノ店先ニ立チ、税吏ガ一々店先ニ立ツテ請書ヲ出スカ、出サヌト帳面ヲ改メルト云フコトヲ受ケルノデ、既ニ税ノ道理ヨリ商売人ガドウモ店先ニ左様ナ圧迫ヲ受ケテ日々税吏ガ立ツテ居ラレルヤウナコトデハ、他人ニ対シテ面目カ立タヌカラト云フ苦ミガアルノミナラズ、ソレガ遂ニ商売ニ関係シテ来ルノデアル、仕方ガナク苦ンデ之ニ判ヲセヌト云ヘバ調査ヲスルト云フノデ泣寝入ニシタト云フ部分モアルノデアル、夫故ニ結果ニ至ツテ見ルト柔順ト云フカ卑屈ト云フカ知リマセヌガ、之ニ圧セラレタモノハ重キ税ノ負担ヲシ、理屈八釜敷云フタモノハ税ヲ受ケズシテ済ンデ居ル、税ヲ受ケヌデナイ外ノモノカラ見ルト安イ税デ済ンデ居ルト云フ甚シキ不都合ガ出来テ居ル、又此税ノ甚ダ薄弱ナ、政府ノ力ノ弱イト云フコトモ一例ヲ挙ゲテ申セバ、私ノ聞ク所ニ依レバ新聞業ト云フモノニハ此営業税ヲ附加シテナイノデアル、何故ニ新聞社ニハ営業税法カ及バヌノデアルカ甚ダ私ハ疑フテ居ルノデアル、所ガ最初ハ政府ニモ矢張新聞社ニ税ヲ附スルト云フ積リデアツタト見ヘテ、税務署ガ屡々呼ンデ申告書ヲ出ス催促ヲシタヤウナ様子ニ聞イテ居リマスガ、随分新聞社ナドデハ理屈モ言フタノト見ヘマス、又此税法ノ社会ニ甚ダ嫌ハレテ苦情ノ多イト云フコトヲ知ツテ居リマスカラ、新聞社トシテハ十分此税法ニ対シテ攻撃論ヲ出サウト云フ意気込ガアツタ、之ハ甚ダ政府ハツラク考ヘタト見エテトウトウ新聞営業者ニ対シテハ営業税法ヲ用ユルコトヲセヌ事ニ極メタ様子デアル、其曰クニハドウ云フ名儀デ営業税法ノ外ニ置クカト云フト新聞紙ハ高等商業デアル、新聞紙ガ何故ニ高等商業デアルカ又何ノ法律ニ高等商業・下等商業ト云
 - 第22巻 p.220 -ページ画像 
フ区別ガアルカ、私ハ甚ダ斯ノ如キ名義ノ下ニ於テ営業税法ヲ新聞社ニ及ボサヌト云フコトハ甚ダ疑フテ居ルノデゴザリマス、乍併兎モ角モ政略トシテ新聞社ニマデ此税法ヲ及ボシテ往クナラバ、新聞社モ共ニナツテ社会ノ苦情ヲシテ益々盛ナラシメテ、到底政府ノ困ルコトニナルダラウカラ、先ヅ新聞紙ヲ宥メ、新聞紙ニ余リ人民ノコトヲ云フテ貰ハヌヤウニ苦情ヲ鳴シテ貰ハヌヤウナ政策カラ、左様ナ名儀ヲ付ケテ此税ヲ附ケナンダノダラウト推測ヲシテ居リマス此新聞紙ナドガ十分此営業者ノ為メ此営業税法ノ不完全ナルコトヲ各地ノ状況ニ照シテ十分ニ鳴ラシタナラバ、私ハ余程当局者モ顧ル所ガアルダラウケレドモ悲イ哉今ノ所新聞紙ガ少シモサウ云フコトヲ論ジテ呉レナカツタノハ私ハ甚ダ遺憾ニ思フテヰル、遺憾ニ思フテ居ルガ、一方ニハ左様ナ一ノ特法ヲ新聞紙ニ与ヘテ、サウシテ吾吾人民ハ十分困難ナル所ヲ新聞紙ヲ以テ発表スルコトガ出来ナカツタト云フ恨ヲ玆ニ持ツテ居ルノデ、新聞紙デアツテモ既ニ斯様ナ税ヲ掛ケテ営業ハ立行カヌト云フコトハ明カナコトダカラ、外ノ商売ニアツテモ同様ナコトニ相違ナイノデアル、此一点ヲ以テ見テモ新聞紙ヲ以テ営業税法ノ外ニ置クト云フ道理カラ、ソレヲ以テ一般ノ営業者ニ其通リシテヤルノガ当然デアル、新聞ガ立行カヌナラバ外ノ営業モ立行カヌコトハ分ツテ居ル、右様ノ種々ナル魂胆ガアリ、種々ナル混雑ガアリマシタハ要スルニ先ニ申上ゲマシタ通リ営業税法其物ガ根本的宜シカラザルモノデアル故ノコトデアルノデゴザリマス、夫故ニ之ヲ廃スルハ当然ノコトヽ考ヘル、偖東京商業会議所ガ営業税法ハ不良ノ税法デアル、不公平ノ税法デアル、又営業税法ハ産業ノ発達ヲ阻害スル税法デアルト云フコトハ此意見書ニ認メテゴザリマス故ニ、此コトヲ繰返シテ私ヨリ申上ゲル必要ハナイノデ此ニ書キ載セテゴザリマセヌ、成ルベク外ノコトニ就イテ申述ベヤウト考ヘマス、元来此ノ商売人ニハ一番何ガ大事ナモノカト言ヘバ先ツ商売ノ取引、之ニ対スル資本ノ掛ケ方、又利益ノ多少ト云フコトハ極ハメテ商売人ニハ秘密ナモノデナケレバナラヌ、此ノ商売人ガ資本ヲ掛ケ取引シタ高、利益ノ多少ノコトヲ暴露シテ、アノ商売人ハ是程ノ資本ヲ掛ケテ是程ノ取引ヲシテ是程ノ利益ヲ取ツテ居ルト云フ事柄ガ社会ニ暴露サレテハナラヌコトデアル、商売人ト云フ者ノ間ニハ掛引緩急ト云フ者ヲ謀ツテコソ商売ガ出来ルノデアル、ソレハ独リ日本ダケデ御坐イマスマイ、各国トモ此商法ノ掛引ヲシテ居ル、決シテ他人ガ伺ヒ知ルコトガ出来ヌモノデアル、若シ他人ニ伺ヒ知レル様ナコトヲシテ居ツタナラバ商売ハ出来ヌモノデアラウト思フ、商売ノ本体トシテ左モアルベキコトデアラウト思フ、其商売ノ掛引ニ大事ナ機密ニ立入ツテ、其根本ニ遡ボツテ税ヲ掛ケルト云フノハ甚ダ宜シクナイ仕方ト思フ、税ヲ出サヌ様ニシタイト云フ希望デハナイ、併シ商売ト云フ者ノ誠ニ大事ナ働キ、大事ナ機密ト云フ者ヲ税率ノ標準ト云フ者ニシテ、ソレニ税吏ガ立入ツテ来テ貴様ノ資本ハドウカ売上ハドウカト云フ事ヲ調査シテ、其申告ガ不当ト見タ時ニハ税吏ガ立入ツテ其資本取引ノ帳簿ヲ検査シテ定メルト云フ事ハ如何ニモひどい話デ、是レガ野蛮国ナラバイザ知ラズ、
 - 第22巻 p.221 -ページ画像 
昔ノ如ク商売ト云フ者ヲ奴隷ノ如ク見テ一番人間ノ働キノ下等ナモノトシタ時ナラバイザ知ラズ、商売ト云フ者ハ貴重ナモノデアル、商売ト云モノデナケレバ国ハ立タヌモノデアルト云フ世ノ中ニナツテ居ルノニ、商売人ニ対シテ奴隷ヲ扱カウト云フ主義ヲ以テ税ヲ取ルト云フノハ根本的私ハ間違デアラウト思フ、先ツ第一営業者ニ対シテ税ヲ取ルト云フコトニ付テ営業者ノ秘密ト云フコトニ立入ツテソレデ調ベ上ゲテ論拠ヲ取ルト云フ様ナコトガ甚ダ宜シカラヌコトト私ハ思フ、ソレカラ凡ソ税ト申シマス者ニハ誰ガ見テモ判断ノ出来得ラレル様ナコトニシテ往カナケレバナラヌ、只人ノ想像ニノミ任カセテ往ク様ナ税ノ取リ方デハイカナイ、所ガ此営業税法ト云フ者ハ誰ガ見テモ斯ウジヤト云フ極メ方ノナイモノダ、是レガ又営業税法ノ甚ダ根拠トナルベキモノガ薄弱ナノデアル、税率ト云フ者ヲ作ル道理ノ上ニ於テ既ニ違ツテ居ルト思ヒマス、ソレカラ又此税法ヲシテ実際ニ人ノ機密ニ立入ツテ根本的裸カニスル迄ニ調ベ上ケテ税ヲ取ラナケレバ到底出来得ラレヌモノデアルト云フ事ヲ、税吏ガソレヲ良シ忍ンデスルニ至ツタナラバ、此税位重イ者ハナイト思フ何ゼナラバ印紙ノ様ナモノデ物品ニ一ツノ価ガアル、其価相当ノ物ニ一旦税ヲ出シタナラバ其品物ハ甲ノ人ニ渡ツテモ乙ノ人ニ渡ツテモ其物品ダケハ税金ガ払済トナラナケレバナラヌ、所ガ此ノ営業税法ヲ見マスト一ツノ物ニ何度税ヲ取ラレルノカ知レヌノデアル、是レハ意見書ノ第三項ニ概要書イテゴザイマスガ、甲ノ手ニ渡リ乙ノ手ニ渡リ其売上ケ高ニ付テ税ヲ取ルト云フコトニナリマシタナラバ何分ノ五ジヤノ十ジヤノト書イテアリマスガ、若シ初メカラ仕舞迄一人ノ手ニ渡ツタモノト算ヘテ見タナラバ宜シイガ、何度モ税ヲ取ルト云フ事ニナツタラ是レハ物品税デナク人ニ対スル税ト云フコトニナリマセウ、ソレハ講ハヌカモ知ラヌガ、結局サウナレバ産業ト云フ者ハ出来ナイ、夥ダシイ高イ物ニナツテ仕舞ウ、兎モ角モ斯様ナ税ト云フ者ハ根拠ガ元来悪ルイ、又商業上ノ機密ト云フ者ヲ人ニ知ラレルコトハ避クベキコトデアル者ヲ、ソレヲ捉マヘテ取ラウト云フ、是レガ宜シカラヌ、其他沢山箇条ヲ挙ゲテ申シマスレバ外ニアリマセウガ、是レハ独リ東京商業会議所ノ意見ノミデハアリマセヌ、横浜商業会議所ノ意見書、又金沢商業会議所モ全廃ノ意見ヲ持ツテ居ラレマスカラ、ソレソレ実際ニ調査シタ意見モ御坐イマセウカラ私ハ主トシテ弁ジマセヌガ、兎モ角昨年ノ想像ヨリモ実行上ノ今日ニ於テハ甚ダシイ不都合ハ現ハシテ居ル、斯ノ如キ所ノ者ヲ存シテ置キマシテ、サウシテ姑息ニアスコ此処ヲ直シテ見マシタ所ガ結局致シ方ノナイモノデアル、申サバ五十歩百歩ノ論ニナツテ仕舞ウ、道理カラ言ツタラ矢張リ対ノ話、是レハ修正スルト云フコトハ為シ得ラレヌモノデアル、斯様ナモノハ全廃ヲ致シテ、サウシテ相当ナル財源ヲ以テ財政ヲ整ヘテ往ツタガ宜カラウ、商売人ト云フ者ハ斯様ナ徴税ノ仕方デハ困ルト思フ、只一ツ此ニ申サナケレバナラヌノハ、商売人ガ営業税法ハ全廃スベシ、他ノ税源ヲ求メテ財政ヲ整ヘルト云フト、余リ勝手ナ事ヲ言フデハナイカ、何ト理由ヲ附ケテ見テモ税ヲ出スノガ否ヤダト云フノデ、余リ無遠慮ナ話ダト斯ウ
 - 第22巻 p.222 -ページ画像 
他人カラ思ハレハセヌカ、況ンヤ今日ハ政費多端ノ時ニ当ツテ、商売人ガ自分勝手ニ営業税ヲ廃ス可シト云フコトハ、他ノ種族ノ人ニ対シテ我儘ナ言ヒ分デアルト思ハレハシナイカト云フ掛念ヲ或ハ持タヌカト云フ恐レガアルカ知ラヌガ、私ハ決シテ其掛念ニハ及バヌト思フ、何ゼカナラバ日本ガ今日ヨリ後何ニ依テ進ンデ往クカ、何ヲ以テ日本ノ富ヲ立テ往クカト言ヒマスレバ商売ヨリ外ニナイ、商売国トシテ日本ノ国ハ立テ往カナケレバナラヌト云フ事ハ、農商工全体ノ人ガ是認シテ居ルニ違ヒナイ、モウ農工ノ時代ガ過ギテ商売ノ時代ニ世ガ進ンデ居ル、日本ハソレ程ノ地位ニ進ミ来ツタノデアル、外国ヲ相手ニシテ日本ガ将来国是ヲ立テ往カウト云フニハ商売ヲ以テ国是トシテ往クヨリ仕方ガナイ、商売ガ発達スレバ農産物モ盛ンニ出来、製造モ盛ンニ出来ルノデアル、詰リ申シテ見レバ農産物ノ発達スルノモ増進スルノモ又工業ノ発達増進スルノモ其発達増進シタル物品ノ運転捌キヲスル道ガアレバコソ往ケルノデアル、日本ハ随分農産抔ニハ適シテ居ル国デアル、只是レカラ先ハ益々増進ヲ図ラントスルニハ商売ト云フ者ヲ益々盛ンニシテ、此ノ取引ト云フ者ヲ増大ニシテ往クヨリ外ハナイノデアリマス、其時ニ当ツテ此商売人ガ働キヲスルト云フコトニ付テ、商売ノ妨害トナルト云フコトヲセラレタナラバ、遠慮モ会釈モナク切リ払ツテ往クガ当然ナノデアル、而テ商売人ガ総テ税ヲ出サヌカト言ヘバサウデハナイ、商売人ガソレソレ財産ヲ有シテ居リマス者ハ相当ノ税ヲ納メテ居ル、土地ヲ持ツテ居ル者ハ土地ヲ持ツテ居ル上カラ税ヲ納メテ居ル、所得ノアル者ハ所得ノ上カラ税ヲ納メテ居ル、ソレ丈ケニ対シテハ他人ニ譲ルコトハナイ、日本人トシテ同一ノ税法ノ下ニ税ヲ納メテ居ルカラ営業者ノミガ税ヲ納メヌト云フコトハナイ、若シ商売人ニ税ヲ掛ケテ営業税ヲ取ルナラバ、小作人ニモ小作税ヲ掛ケナケレバナラヌ、然ルニ小作ノ方ハ地主ガ税ヲ納メテ居ルノデアル、若シ営業税デ商売人ト云フ名ニ依テ税ヲ取ルナラバ農作スル者ハ農作スル者ダケニ税ヲ出サセナケレバナラヌデ、道理ニ於テハ決シテ商売人ガ税ヲ納メテ居ラヌノデハナイ、当リ前ノソレソレノ税ヲ納メテ居ルノデアリマスカラ、只商売ト云フ名ノ働キノ上ニ税ヲ掛ケルノハ甚ダ不公平ナ話デ偏頗ナ仕方デアル、況ンヤ商売ヲ発達シテ往カナケレバナラヌト云フ国ニ置キ乍ラ、其発達ヲ妨ゲル税ヲ置イテ此国ノ紛雑ヲ起シ、営業ヲスルノニ煩ハシクナルト云フ様ナ法律ヲ拵ヘテ此時ニ当ツテ施行スルト云フノハ甚ダ国ノ為メニ宜シカラヌ、ソレ故ニ営業税法ハ廃ス可シト言フテモ決シテ自己ノ我儘ノコトヲ言フ訳ノ者デハナイト思フ、又世間ノ人モソレヲ許スダラウト信ズル、国税トシテ斯ノ如キコトヲ立テルノハ甚ダ宜シカラヌト思ヒマスカラ、ソレヲ以テ何処迄モ推立往クガ宜シイト思ヒマス、決シテ他人ニ対シテ商売人カラ勝手ナコトヲ言フト自ラ遠慮シテ居ルコトハナイト思フ、又一ツニハソレ等ノ事ハ善イ事デアルガ、政府ハ行ヒハシマイ、無暗ニ言フタ所ガ聞クマイ、或ハ一部ノ修正位ナラバ政府ガ聞クダラウカラ先ヅ大キナ混雑ヲ救フヨリモ僅カデモ混雑ヲ救フ方ガ善イデハナイカト云フ説ガアルカモ知レヌ、私ハ決シテサウイ
 - 第22巻 p.223 -ページ画像 
フ者デナイト思フ、五十歩百歩ト云フカラ、五十歩ハ百歩ノ半分ダカラ混雑ガ少ナクナラウト云フ説カ知ラヌガ、私ノ考ヘハサウデナイ、物ト云フ者ハ大ナル者ト少ナル者トアル、大ナル者ガ忍ベルナラバ小ナル者ハ尚ホ忍ベナケレバナラヌ、若シ私ノ言フ論理ガ立タヌナラバ総テ論理ハ止メテ仕舞ハナケレバナラヌ、只幾分ガ斯ウヤツタラ混雑ガ少ナクナラウト云フノデ少シ斗リ修正シタ所ガ、矢張リ資本金ニ依ル売上ケ高ニ依ルト言ヘバ、其ノ資本金ニ依ル売上ケ高ニ依ルト云フコトハ混雑ト云フ者ガ起ル本デアルカラ、ソレヲ存シテ置イテ宜イト云フコトデハ根本ノ論ガ立タヌ、然ラバ却テ今ノ税法ガ善イノデハナイカト云フ論ニナル、商売人トシテ之ヲ政府ニ突出シテ往ク以上ハ、サウ云フ数歩ヲ譲ツテ矢張リ混雑ヲ甘ンジ、不行届ヲ甘ジテ産業ノ発達ヲ阻害スルコトヲ甘ンスルト云フ事ヲ一歩譲ツタ以上ハ、向フハ現行ノ営業税法デ善イジヤナイカ、対ナ理屈ジヤナイカト云フコトニ抑ヘラレテ仕舞ウ、ソレ故ニ姑息ナ修正ヲシテ出シテハ却テ向フニ利器ヲ持タセ、向フニ言質ヲ取ラレテ、全国ノ商業会議所ガ出テ研究シタ結果斯ウ云フ修正ニシテ呉レト言ツテ出シテ往ケバソレガ修正ノ根拠トナツテ、全廃所デナイ修正モ行ヘナイト云フ結果ニナツテ仕舞ウ、故ニ私ハ修正ヲシテ一時ヲ凌ギ一歩ヲ譲ルト云フ策ヲ取ツテハナラナイト思フノデアル、若シ又断然廃シロト言ツテ政府ガドウシテモ此廃止ト云フコトハ困ルト云フナラバ、政府ナリ立法府ナリ種々此問題ニ付テ議論ノアツタ事ヲ聞イテ居ラレマセウカラ、此処ヲ直シタナラバ一時ダケハ斯ウシテモ善カラウ、他日財源ガ出来タラ廃サウト云フ策ヲ向フカラ取ルガ宜シイ、ソレハ向フニ任カスヨリ仕方ガナイ、ソレニハ全国商業会議所ハ此税ハイカナイト云フコトニ根本ガ立テ居ラナケレバイカヌ其根本ガ立テカラ財政ノ繰廻シ上今ハ全廃スルコトハ出来ヌガ先ニナツテ全廃スル迄ノ間少シデモ苦情ノ少ナクナル様ニシテ往カウト云フコトハ全廃ヲスルト云フ目的ノ一ツノ道行手段デアル、其道行手段ト云フ者ハ当局者タル政府ニ於テ拵ヘレバソレデ宜シイ、併シ帰着スル本ハ我々カラ極メテ置カナケレバナラヌ、全廃ス可シト云フ根本ハ断ジテ極メテ置クガ宜イ、ソレヲ只其根本ヲ極メズシテ一部分ノ修正ニシタラ到底廃スルト云フ訳ニハイカナイ、今日之ヲ言フタカラ当年直チニ此営業税法ヲ廃スルヤ否ヤハ私ハ決シテ明言スルコトハ出来ヌ故ニ廃ス可キ法デアルト云フコトガ第一着ニ極ツタナラバ、ソレカラ後ノ手段ト云フ者ハ一年掛ルカ二年掛ルカ、又手段ガ立タナラバソレヲ直チニ廃スルコトモ出来ル、ソレ等ハ即チ第二ノ手段ニ属スルガ、其手段ト云フ者ノ範囲ニ我々ガ這入ツテ仕舞ウタナラバ廃スルト云フ目的ガ立タナクナル、夫故ニ決シテ之ヲ顧ミルニ及バヌ悪ルイコトハ悪ルイトシテ、廃スベキハ廃スベキモノト云フコトヲ断ジテ此際断乎ト極メテ政府ニ申立テルガ宜シイト思フノデゴザイマス、若シ今ノ手続上到底出来得ラレヌカラ姑息ニシタ方ガ宜イト云フ意見デ修正スルト云フガ為メニ、全体ヲ誤マラレテ現行法ヲ改メルコトノ出来ヌト云フコトニ立至ツテハナラヌト考ヘマスカラドウゾ断ジテ現行法ヲ廃スルト云フコトニオ取極メニナ
 - 第22巻 p.224 -ページ画像 
リタイト云フ希望デゴザイマス
○二十三番（桑名、平野美純君）当会議所ガ最初意見書ヲ出シマシタノハ修正ノ意見デアリマシタ、ソレハ詰リ之ヲ廃シマシテモ外ニ税法ノ変ハルベキモノガナイノニ、全廃ヲ唱フルモ到底ダメデアルト云フノデ、結局修正ノ意見ヲ出シテ置キマシタガ、其後此ノ各所ノ御意見ヲ御廻ハシ下サイマシテ、東京ノ諸君ノ全廃ノ御意見、尚ホ参考トシテ税法革新ノ御意見モ添附シテアリマス税法革新ノ全体ニ付テノ御精神ノアリマス所モ分リマシタ、尚ホ臨時集会シマシタ所詰リ東京ノ御意見ニ賛成シマス、ト云フ者ハ彼ノ税法革新ノ御意見ニ依リ賛成ヲ致シマスノデ、桑名ニ於キマシテハ最初修正ノ意見ヲ出シマシタガ、今日ハ全ク五十七番ノ御説ヲ賛成イタシマス
○議長（東京、渋沢栄一君)　モウ午時デゴザイマス、暫時休憩ヲ致シマセウ
　　午後零時五分休憩
　　午後零時四十五分開議
○議長（東京、渋沢栄一君）　○中略　引続イテ午前ニ御議シニナツテ居リマス営業税法ニ付テノ一読会ノ続キヲ議スルコトニ願ヒマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　只今五十七番ハ御出席ニナツテ居リマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　出席シテ居リマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　一寸五十七番ニ質疑イタシマスガ、尤モ御論ジニナリマシタ余波デアリマスカラ別段深ク御尋ネスルニモ及バヌ様デアリマスガ、決シテ此営業税法ヲ全廃スルト云フノハ商人ガ虫ノ善イコトヲ言フノデナイ、是レハ決シテ遠慮スルニ及バナイ又商人ハ納メヌノデナイ、即チ商人ノ如キハ所得税其他ヲ納メテ居ル又土地ト云フ者モ決シテ農民其者ニ税ヲ課スルノデナイ、所有者ニ課スルノデアルト云フ御説明ガアリマシタガ、其内ニ所得税ノコトガアリマシタガ、是レハ五十七番ニ御述ベニナリマシタ所ノモノト別ノモノニナツテ居リマスケレドモ、併シ営業税ヲ廃スルニ付テハ此財源ヲ見出サナケレバナラヌ、ソレニ付テハ独リ営業税法ニ向ツテノ革新デナイ、税法ノ総テノ革新ヲスル、即チ此税ヲ負担スベキモノハ地税・関税・酒税・煙草税ニ課スルガ一番適当デアラウ営業税ノ如キ申告税ハ総テ廃シタガ善カラウト云フコトデアリマスガ、サウシマスト所得税ヲ負担スルカラウサ云フ嫌ヒハナイト云フ御説ハ少シク御説明トハ矛盾スル様デアリマスガ、ドウ云フ御意見デゴザイマスカ、所得税ヲ負担スルカラサウ云フ嫌ヒハナイト云フ御一言ニ対シテ伺ヒマス
○五十七番（東京、中野武営君）只今御尋ネニナリマシタコトハ、如何ニモ此ノ商業会議所ノ意見ノ如ク税法革新ト云フコトニナリマスレバ、是丈ケデ財政ガ積レマスカラ外ノモノハ取ライデモ善イト云フ考ヘデアリマス、現在ノ所デ此税法革新ノコトヲ行ハヌデモ矢張リ此営業税ヲ廃スト云フ主義ヲ申シタノデアリマス、此ノ革新ノコトモ合セテ申シテ置キマスガ、元来今迄政府ガ税ヲ取リマス時分ノ考ヘガ、是程ノ歳出ガアルニ付テ何カ税ヲ取ランナラヌト云フ、其税
 - 第22巻 p.225 -ページ画像 
ガ財源ノ摸様ニ依テ色々ニ案出ヲセラレルコトモアルカラ、大体斯ウ云フ方針デ将来直シテ貰ヒタイ、是レハ大革新ノコトデアリマシテ、一朝一夕ニ容易ニ出来ルコトデハアリマセヌガ、大方針ヲ此方針ニ向ハセテ往クナラバ、出来得ラレヌコトハナイノデアル、ソレヲ姑息ナ修正ヲヤツテハ益々錯雑ナル税法ガ起ツテ来テ混雑ヲ来スニ相違ナイト云フノデ、先ヅ税法ノ大方針ヲ左様ニ極メテ貰ヒタイト云フノガ趣意デ、ソレニ付テ先刻所得税ノコトヲ申シマシタガ、現在斯ウ云フモノガアルカラ、営業税ハ営業ノ範囲デ納メテ居ルガ今日営業税法ヲ廃シタ所ガ営業者ト云フ者ハ何モ納メテ居ラヌノデハナイ、外ノ者ガ納メテ商売人ハ何モ納メテ居ラヌト云フコトデナイト云フ趣意ヲ以テ申シタニ外ナラヌノデアリマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　御説明デ分リマシタ、附帯トハ申シ乍ラ営業税法ヲ廃スルニ付テハ税法革新ノ御意見モ縷々御陳弁ナツテ居リマスカラ、所得税ヲ納メルカラサウ云フ嫌ヒハナイト云フコトハドウ云フ事ニナリマスカ質シマシタ所ガ、詰リ営業税ヲ廃シテモ所得税ヲ負担スルカラ決シテ商人ハ負担ヲ逃レルノデナイト云フコトニ止マリマスレバ、敢テ質議ヲシマセヌ、今御述ベニナツタ通リノコトデアリマスレバ差支アリマセヌガ、尚ホ之ニ対シテ少シク意見ヲ述ベ様ト思ヒマスガ、此全廃ノ御意見、先刻来五十七番ガ縷々御陳弁ニナリマシテ、自分モ此ノ御論ニ付テハ敢テ間然スル所ハナイ様デアリマスガ、去リ乍ラ固ヨリ営業税ヲ廃止シマスニ就テ東京商業会議所ノ御意見ヲ御述ベニナツテ居リマスケレドモ、全ク之ヲ廃スル、廃スルニ付テハ此ノ七百五十万円取ツテ居ル税ヲ取ラヌコトニナツタナラバ之ニ更ヘルモノガナケレバナラヌ、ソレハ先刻来御陳述ニナツテ居リマスガ、即チ税法ヲ革新スル、其税法ヲ革新スルニハドウ云フ風ニスレバ善イカ、地税・関税・酒税・煙草税ノ四税ニ依ルト云フコトニナツテ居リマス、此ノ関税・酒税・煙草税ノ如キハ御意見書中ニモ書イテアリマス通リ、別段改正スルニ手数ト云フ程ノコトハナイノデアリマスガ、此地税ト云フコトニナリマシテハ非常ナ取調上ニ長日月ヲ要スルモノデアラウ、以前ノ地租改正ノ如キコトハ申サズトモ諸君ノ御承知ノコトデアリマスガ、悉ク実価ヲ取調ベテ其実価ハ所有主カラ届ケサセ、之ヲ査定スルト云フ場合ニ至リマシタナラバ、成程調査委員等ヲ設ケレバ出来ルカ知リマセヌガ、之モ各地各々公平ヲ欠カヌ様ニシテ調ベルト云フコトハ何程急ギマシタ所ガ一年ヤ二年デ出来ルコトデナカラウ、サウシマスト、成程営業税法ノ悪法ナルコトハ申ス迄モアリマセヌガ、廃スルニシマシテモ之ニ代ヘル税ヲ取ルコトガ出来ザレバ之ヲ全ク廃スルト云フコトハ出来マスマイ、シマスト、今日ノ営業税法ヲ先ヅ実施シテ宜シイ、其改正ノ出来ル迄ハ我々ハ自ラ忍ブト云フコトニナリマセウ、如何ニモ今日各地ニ於テ非常ナ紛雑ヲ極ハメマシタノモ、根本的ニ悪ルイコトハ申ス迄モナク、各地ニ依リマシテ課シマス税吏ノ取扱向ニモ非常ナ寛厳ガアリ、非常ナ不公平ノアリマスノハ畢竟五十七番ノ御述ベニナツタ如クデアリマス、併シソレヲ今現ニ実行ニナツテ居リマス、是レガ今直チニ廃止ニナリマスレバ極宜シウ
 - 第22巻 p.226 -ページ画像 
ゴザイマスケレドモ、廃止ヲスルト云フニ付テハ之ニ更ハルモノガ出来ナケレバナラヌ、其辺ノコトニ付テハ又非常ナ講究ヲシナケレバナラヌ、此地租ヲ改正スルニ付テモドノ位カ日月ヲ要スルデアラウ、ソレ迄ハ已ムヲ得ンカラ、此営業税法ノ課税ニ制限ヲシテ、期限ナシニシタラ困リマセウカラ、或ハ五年ナリ三年ナリノ内ニ急イデ改正シタラ税法ノ革新ガ出来ルト云フコトヲ目的トシテ、ソレガ出来タラ必ス廃シテ貰ウ、ソレ迄ハ斯ノ如キ偏頗ナ箇条ダケハ取ツタラ善カラウ、即チ営業税法ヲ廃スルコトヲ根本ニシマシテ、コレヲ実施スル迄ノ間ハセメテハ斯ノ如クニセニヤナラヌト云フコトニモ思フノデ、単ニ此ノ営業税法ヲ廃止イタシマシテ、代ヘルニ税法革新ノ意見ヲ固ヨリ此案ノ通リニシナケレバナラヌト云フノデハアリマセヌガ、ドウシテモ何カ税源ヲ見出サナケレバナラヌ、之ヲ軽軽ニ決定シマシタ所ガ、議論ハ善サソウニ聞ヘマシタ所ガ、我々各地カラ寄リマシテ決シマシタ所ガ、只税ヲ廃スルガ宜イ、之ニ代ヘルニ地租ヲ改正スルガ善イト云フコトニナリマシタ所ガ、到底コレガ至急ニ行ハレルモノデナイ、併シ行ハレル行ハレヌノコトヲ言フテ居タラ、彼是レ論スルコトハ出来ヌ、遠慮ハナイカラ斯ノ如ク決シテ置イタラ、決シテ此方チカラ斯ウト申サヌデモ、若シ急ニ廃スルコトガ出来ナカツタラ、言ハズトモ営業者ノ困難ハ当局者モ知ツテ居ルカラ、出来ル丈ケノコトハ改メルダラウト云フコトデアリマシタケレドモ、自分等ノ考ヘデハ、到底此営業税法ト云フモノヲ三年・五年ナリ、之ヲ廃ス迄ハ此儘デ宜シイトハ言ヘマセヌ、又宜シカラヌノヲ黙シテ居ツタナラバ当局者ガ改メルタラウト云フ様ナコトデ安心ハ出来兼ルト思フ、其辺ニ付テハ我々ハ十分ノ講究ガシタイト思ヒマスカラ、今暫ク諸君ノ御高説ヲ承ハリマシテ、其上デモ遅シトシマセヌガ、願ハクハ相当ノ委員ヲ選ビマシテ之ヲ廃案ニスル即チ税ヲ廃スルト云フコトニ致シマスノモ、若クハ之ヲ修正スルト云フコトニ致シマスノモ、十分委員ニ於テ講究サレテ、其調査ガ成ルヲ待ツテ我々ハ此ノ可否ヲ決シタイト思フ、其時期ノ如キハ今暫ク諸君ノ御説ヲ黙聴シテ後ニ発議シテモ遅クアリマセヌガ、要スルニ全廃説ニシテモ東京ノ御意見ノ如クスルカ、又横浜ノ如ク家屋税ニスルト云フモノカ、修正説ニシテモ各地各々修正ノ意見ガアリマスガ、孰レヲ取ルガ宜シキカト云フ事ヲ調査スル為メニ委員ヲ設ケテ、其調査ノ成ルヲ待ツテ可否ヲ決シタラ善イデハアリマセヌカ其時期ノ如キハ只今其ノ選ビニナルカ、或ハ諸君ガ十分御高説ヲ述ベラレテ後ニスルカ、兎ニ角左様シタイト云フ説デアリマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　午前ニ於キマシテ五十七番カラ段段御弁明ニナリマシタガ、承知ヲ致シマシタガ、本会ニ於キマシテ営業税法ヲ廃シ様ト云フ御意見ハ東京・横浜・金沢・京都、此四ツノモノデアラウト思ヒマス、然ルニ此東京ノハ革新ノ御意見ト云フ者ガ既ニ本所ノ決議ヲ持チマシテ其筋ニ御提出ニナツテ居ル、是レガ参照トシテ添ヘラレテ居リマスカラ、大凡ソ御見込ガ此ニ立テ居ルモノデアラウカ、廃スルト言ツテ見タ所ガ、只有ルモノヲ無クシテ仕舞ウト言フタ計リデハイケナイト云フ御趣意ガ大凡ソ分ツテ居
 - 第22巻 p.227 -ページ画像 
リマスガ、横浜ノ御意見ハ家屋税ニ之ヲ課セヨト云フ御趣意デアリマス、其極結末ハ当局者ニ一任スルト云フ御趣意デアリマスガ、家屋税ト指サレマシタノハドウ云フ御趣意デゴザイマスカ、ドノ辺迄家屋税ニ課スルト云フコトノ大抵ノ御見込ガ附イテ居ルモノデアラウカ、之ヲ一ツ伺フテ見タイ、ソレカラ金沢ノハ単ニ之ヲ廃シテ仕舞ウ、他ニ適当ナル税源ヲ求メテ以テ国費ヲ支ヘンコトヲ望ムト云フ御趣意ニ止メテアル、是レハドウデアリマセウカ、只営業税法ナル者ハ宜シカラヌ税デアルカラ之ヲ廃シテ仕舞ウト云フ丈ケデ、他ニ御目的ガナイノデゴザイマスカ、ソレカラ京都ノ方ハ宅地地価修正ノ意見デ、之ヲ以テ取ラウト云フ御趣意ガ凡ソ分ツテ居リマスガ横浜ノ御趣意ト金沢ノ御意見ト一寸面倒ナガラ御目的ガゴザイマスレバ承ハツテ置キタイ
○十三番（横浜、高橋是清君）　只今三十三番カラノ御質問デアリマスガソレニ対シテ御答ヘヲ致シマス、横浜商業会議所ニ於テハ強ヒテ意見ヲ言ハシムレハト云フ考ヘデ述ベタノデアリマスガ、横浜市デ新タニ施行ニナリマシタ営業税法ニ依リマシテ政府ニ取入レル金高トソレト家屋ニ割当テマシテ此位ニシヤウト云フ予算ト比ベテ見マスレバ、横浜市ダケデハ或ハ家屋ニ増税シタ方ガ金高ガ多クナリハシナイカト云ラ概算デアリマス、凡ソ税ハ苦痛ヲ与ヘナイ様ニシテ取ルノガ第一デアリマス、其苦痛ハ金高ガ多クテ苦シメルノハ最モ悪ルイ話デアリマスガ、其出ス金高ヨリハ手数ノ繁雑、又不公平ニナルト云フ、感情ヲ害スルト云フ、此三ツト云フ者ハ之ヲ避ケナケレバナラヌ、此ノ営業税法ニハ賃貸価格ト云フコトガアル、成程是レハ外国ノ例ヲ調ベマシタラ賃貸価格ニ依ル所モアリマセウ、併シ是レハ社会ガ違ヒマス、大厦高楼ヲ立テ地主家主ト云フ者ガアツテ営業者ガ其下ナリ、二階ナリ乃至五階ナリノ一部分ヲ借リテ営業シテ居ル習慣デアル社会デハ、賃貸価格ト云フコトハ容易デアル、然ルニ我邦ノ習慣ハ之ニ反シテ凡ソ営業ヲスル者ハ土地ヲ持タヌデモ家屋ハ持ツテ居ルト云フ有様デ、又一家ノ家ヲ為シテ居ル者デモ、妻子ノ為メニ十分資産ノ計画ガ整ハナクテモ家ヲ買取ルト云フコトハ我邦ノ習慣デアル、借屋ニ住マツテ営業ヲスルノハ力ノ乏シイ者ガヤツテ居ル、又人ノ頭ニ税ヲ課スルト云フコトガ行ハレテ居ル国ガアリマスガ、一ツ々々税ヲ区別シテ往ツタナラバ孰レノ国モ憂ヒノアルコトニ違ヒアリマセヌガ、其各種ノモノヲ拾ヒ集メテ見テモ営業者ニ税ヲ課スルノハ是レハ苦痛ヲ免レヌノデアリマス、横浜デ考ヘテ見マスト、家屋ニハ既ニ等級ガアツテ定マツテ居ル、其等級ニ従テ税ヲ出スコトニスレバ少シモ不公平ナコトハナイ、此家屋ニ割当テヽ往ケバ少シモ繁雑ナコトハナイ、感情ヲ害スコトモナイ、強ヒテ代ハルモノガナケレバナラヌト言ヘバ、我ガ横浜市デハ家屋税ガ宜カラウト云フ考ヘデ、勿論其土地ノ状況ダケニ依テ提出シタ意見デアリマス、左様御承知ヲ願ヒマス
○八番（金沢、渡瀬政礼君）　只今亀岡サンノ尋ネデアリマスガ、金沢商業会議所ノ意見ト致シマシテハ、此ノ営業税法ヲ全廃シタ跡ノ補ヒハ十分講究シテナイノデ、サリ乍ラ凡ソ七百五十万ニシロ八百万
 - 第22巻 p.228 -ページ画像 
円ニモシロ、是レガソツクリ無クナルト云フ時ニハ斯ウ云フ補フ道ト云フ者ガナケレバナラヌ、之ヲ愈々廃スルト云フコトニ決シマシタ時ニ、例ヘバドウ云フコトニスルト云フコトガ理由ニナツテ居ルカト云フコトヲ此処デ述ベマスレバ、矢張リ地租ニ掛ケルト云フ位ガ宜シイト云フ意見デアリマス、単ニ地租ト申シマスト、現今ノ様ナ百分ノ二ケ半ト云フノヲ或ハ百分ノ三ニスルト云フ様ニ聞ヘルカ知リマセヌガ、ソレハサウ云フ仕方ニハヤリマセヌノデ、抑々明治ノ初年ニ地租改正ト云フコトガ出来マシテカラ今日迄ニ既ニ二十有余年トナツテ居リマス、其初年ノ改正ノ際ニハ余程米価モ今日ヨリ安クアリマシタ、又地価ト云フ者ノ売買直段ト云フ者モ余程安イコトデアリマス、此地価ヲ修正致シマシテ又米価ニ付テモ石代平均ト云フ者ヲ修正ヲ致シマシテ、サウシテ段々ト取調ベマシタナラバ必ズ余程ノ数ガアラウト考ヘルノデアリマス、或ハ百分ノ二半ニナリマスカ、或ハ百分ノ二ニナリマスカ、或ハ百分ノ一半ト云フコトニナリマスカ、其辺ノ詳細ノコトハ調査ノ上デナケレバ分リマセヌガ何シロ根本ノ地価ト米価ト云フ者ニ大ヒナル差ガ附イテクルモノト致シマスレバ、税率ト云フ者ハ現今ノ二ケ半ト云フ者ヨリハ余程遠クナルニ相違ナイ、ソレデ今日ニナツテハ誠ニ地租ト云フ者ハ極軽クナツテ居ルニ相違ナイ、各地ニモ毎度其議論ガ起ツテ居リマス、デ之ヲ以テ営業税ト云フ者ノ補ヒヲ致シマスコトナラバ誠ニ容易ナコトデモアリマス、横浜会議所ノ御論デ家屋税ト云フモノヲ新タニ国税デ課スルトカ、或ハ京都ノ会議所ノ御論ノ如ク地租宅地税ヲ調ベテ之ニ課スルト云フモコレモ即チ一法デアリマス、詰リ財源ノナイコトハ必ズアリマセヌカラ、大体金沢商業会議所ニ於テハマダ確定ハシテ居リマセヌガ宅地租カ或ハ地租ト云フ者ヲ以テ之ヲ補ハフト云フモノ、粗々意向デアツタノデ是レハ決議ハシテ居リマセヌガ総体ノ意向トシテ御答ヘヲシテ置キマス、ソレデ金沢商業会議所ガ今度提出致シマシタ所ノ営業税法ヲ全廃スルト云フ事ハ簡単ナ案ヲ御廻シヲシテ置キマシタ故ニ、未ダ十分ナル理由トスル所ヲ少シモ吐露ヲシテ居リマセヌ、大体先刻中野君カラ御話ニナリマシタ所ニ矢張外ナランコトデアリマスルナレドモ、此件ト云フモノガ随分聯合会ガ始リマシテカラ色々ノ議題モアリマシタガ、其中デモ余リ軽クモナイ問題デアラウト思ヒマス故ニ、少シク金沢商業会議所ノ意見ノアル所ヲ述ベテ置キタイト存ジマス、元来此営業税法ト云フモノハ誠ニ不良不完全ナルコトハ即チ午前ニ中野君カラ喋々御述ベニナリマシタ、又之ヲ実施スルニ当ツテ政府ノ手段ト云フ即チ其方針ト云フコトニ就イテモ中野君ハ御述ベニナリマシタコトデ、私等モ然カ感ジテ居ルコトデアリマス、此営業税法案ノ発布サレマシタ当時ハ戦後ノ経営トカ申シマシテ色々国事多端ニナツテ参リマシタ故ニ、新ニ税源ヲ求ムルト云フコトハソレハ誠ニ必要ナコトデアリマシタ、所ガ何分ニモ新法ヲ設ケラレタコトデアリマスカラ、其税法ノ難易又税額ノ軽重ト云フコトニハ大体尽クノ人民ガ余リ気ノ付カヌ所モアリマシタ、併シ識者ハ余程之ヲ難ジテ居ツタコトハ当時ヨリ諸君ノ御存知ノ通リデアリマス、併シ誠ニ国費多端ノコトニモナ
 - 第22巻 p.229 -ページ画像 
ツテ参リマシタカラ、成ルベク人民ハ其苦痛ヲ忍ビ国費ニ之ヲ供スルト云フコトハ所謂愛国心ト申シマスルカ、忍ベル丈ハ忍ブ精神デアツタニ相違アリマスマイ、其心ヲ以テ其税法ニ服従スルト云フ場合デアリマシタガ、愈々着手ニナリマシテ色々標準届デアルトカ、或ハ申告書デアルトカ云フモノヲ、段々ト八釜敷税務吏ト人民ト論ジ合フト云フコトニナリマシタ所ガ、如何ニ忍ブト云フテモ実ニ不当極マル事モ沢山アリマスル、我ガ金沢ノミナラズ色々ト聞取リマス所ニ依レバ、マダ金沢ノ如キハ或ル地方カラ云ヘバ幾分カ其辺ニ於テ苛酷ヲ免レテ居ツタデアラウ、苦痛モ幾分カ薄カツタデアラウト云フコトモ承リマシタ、所ガ夫程ノコトデハアリマシタガ、金沢及石川県彼ノ地方ノ有様ヲ今日ニ於テ考ヘテ居リマスニ、他ヨリ幾分カ其苛酷ノ度ガ薄カツタト云フニモ拘ラズ、遂ニ営業ヲ廃止シテ仕舞ツタト云フ者モ沢山現レテ居リマス、幾ツモ兼業ヲシテ居ルト云フモノハ成ルベク其兼業ヲ止メルト云フコトニナツテ来マシタ、ソレデ実業ノ発達デアルトカ生産物ノ進歩デアルトカ云フコトヲ計ランケレバナラヌト云フ場合ニ立ツテ、此新法ノ為ニ其営業ヲ廃シ大ニ縮小ヲスルト云フヤウナ結果ヲ生ジテ来マシタ、之ガ即チ素ヨリ不完全不良ノ税法ニ相違ナイ、根本的此税法ハ悪イニ相違ナイト云フコトヲ証スルノ一例ニモ数ヘラレマス、又実施以来今日ニ至リマスマデ之ヲ修正スルトカ或ハ全廃スルトカ云フ議論ト云フモノハ至ル所ニ未ダ一日モ絶ヘタコトハアリマスマイト思フ、即チ之ヲ不完全不良ノ税法デアルト云フ事ヲ証スルノ一ニモ数ヘラレマセウト思ヒマス、デ是迄広島県ノ聯合会以来種々ニ各会議所ノ諸君ガ脳髄ヲ費シテ段々ト御講究ニナツテ居リマスニ相違モナシ、当時カラ見マスト云フト修正ト云フ事ヲ方針トシテ色々講究ニナツテ居ルヤウニ承ツテ居リマスガ、根本カラ之ヲ不良ノ税法ト云フコトニナリマシタ以上ハ、如何ニ之ヲ修正致シマシテモ之ガ適当ノ税法ニナルト云フコトハ到底アリマスマイ、又修正ヲスルニ致シマシテモ広島会議所ニ各会議所ガ寄リマシタ時ノ御相談ニハ、全国ノ各会議所ヲ部分ケヲシテ其一部々々ノ組合カラシテ修正意見ヲ持ツテ出ルト云フコトニナツテ居リマシタガ、偖其修正ヲ持出シマスト必ズ各自同一ニハナツテ居リマセヌカラ、或ハ売上ヲ標準トスルガ宜イトカ、又利益ヲ標準ニスルガ宜イトカ云フヤウナ種々様々ノ差ヲ互ニ譲歩シテ愈々一ノ修正意見ト云フモノニナリマスケレドモ、其譲歩シタト云フモノガ即チモウ不完全ト云フ嫌ヒヲ免レタ訳ニハ参リマスマイト考ヘル、ナレドモ一ノ修正意見ト云フモノニ之ヲ纏メルカト云フノ点カラ、止ムヲ得ズ相互ニ之ヲ譲歩ハ致シマス、ソレヲ以テ又委員会ト云フモノガ先日開キマシタ所ガ中々其各地ノ修正ト云フモノヲ今度又之ヲ一ニシテ、一ノ修正意見ト云フモノニサセルニ就キマシテハ、実ニ何レヲ採レバ宜イカ、何レヲ捨レバ宜イカ、其程モ殆ド其案ガ立テ悪イ、之ヲ無理ニ一ノ意見トシテ、委員会ノ決議デ徳義ヲ守ツテ互ニ其筋ニ建議或ハ上申スルト申シマシテモ、各自皆不満足ヲ抱クコトハ明カナコトダラウト思ヒマス、何度互ニ講究ヲシ合ヒマシタ所ガ到底根本的不良ノ税法デアルト云フコトデ、又ソレ
 - 第22巻 p.230 -ページ画像 
ニモ間違アリマセヌカラ、数十度之ヲ直サウト申シマシタ所ガ唯姑息ノ修正ニ過ギヌト云フコトハ是亦免レヌコトデモアリマセウ、畢竟不完全不良ト云フコトヲ何処マデモ免レヌト云フ以上ハ之ヲ修正スルノ必要ハ又アリマセズ、又修正スル見込ガ立タヌト云フコトハ相違ノナイ話デアラウト考ヘル、斯ルコトヲ以テ実業家ニ対シテ此税ヲ取リ、唯税務吏ノ手加減デソコニ寛厳出来ルト言ヒマスケレドモ、今年ノ税務吏ハ大ニ之ヲ寛慢ニ之ヲ扱ヒ、明年更ニ之ガ代ツテ大変苛酷ニ扱フト云フタナラバ、当事者ト云フモノハ年々歳々営業税法ニ対シテ一日モ安ンズルノ量見ハ立チマスマイト考ヘマス、最早此税法ト云フモノハ全廃スルニ如クコトハナイト云フコトハ、先刻来殆ド皆様モ御感ジノアル所ヲ推察スルニ難カラヌヤウニ思ヒマス、私ハモウ余リ長クハ申シマセヌケレドモ、金沢商業会議所ガ之ヲ全廃スルト云フニ余リ簡単ナ一篇ノ書面ヲ提出シテアルト云フニ過ギヌ事デアリマスカラ、申訳旁々大略ノ趣意ヲ玆ニ述ベテ置キマス事デ、ソレカラシテ又之ヲ全廃ヲスルニ何レ補フノ道モ一方ニ新財源ガナケレバナラズ、又ソレヲ見出スニシテモ一年掛ル事デアルカ、二年掛ル事デアルカ、ソレハ一年掛リマセウガ二年掛リマセウガ、ソレナラバ之ガ五年、十年掛ルト云フ者デモアリマスマイカラ一年ヤ二年ノ事ハ例ヘ一方ニ新税源ヲ完備スルマデハ之ニ課セラルルト云フ事ハ忍バレヌト云フ事ハアリマスマイト思ヒマス、其所ニ大ニ気遣ヲ起シテ、之ヲ全廃スル事ハ出来ヌカラ不完全デモ幾分ノ修正ヲシテ之デ宜シイト云フ議論ハ最早立ツ者デアルマイト考ヘマス、大体斯様ニ簡単ニ申上テ置キマス
○五十一番（京都、大沢善助君）　京都商業会議所ハ此全廃意見ヲ維持シテ居リマシテ、既ニ意見ハ印刷ヲシテ差出シテ置キマシタモノデゴザリマス、別ニ之ニ対シテ意見ヲ申シマセヌ、又営業税ノ実際行レテ居ル現況ニ就イテハ縷々他ノ御説ガアリマスカラ之ヲ補フ必要モゴザリマセヌガ、唯現場ニ現レテ居リマス模様カラ見マスト、之ヲ補フノ道ニ就イテ追々御杞憂モアル様ニ考ヘマス、其ニ就テ聊カ意見ヲ述ベタイト考ヘマス、全体此営業税法ト云フモノハドウ云フ場合ニ施行スルモノデアルカト云ヘバ、何カ或ル種ノ税目ノ税率トカ若クハ関税ガ大変重クシテ下等人民ハ非常ニ多ク税ガ課セラレテ居ルトカ云フ場合ニ、其ノ不平均ヲ慰スル為ニ一種ノ補助税トシテ施行セラルヽモノト思ヒマス、又タ各国ノ例ニ依ツテモ多クハサウ云フ場合ニ用ヒラレテ居ル、其税法ヲ用ヒマスノニ国費ノ何々ガ必要デアルカラソレニ向ツテ大層ナ金ヲ営業税カラ取ラウト云フヤウナコトヲ考ヘ出シタト云フコトハ、全体間違ツテ居ル、大本ニナツテ居ル、今玆ニ二・三ノ御説ガ出マシテモ地租ガ安キニ過ギテ居ルト云フコトハ殆ド輿論トナツテ居ル、果シテサウ云フ場合ニハ仮ニ僅ノ地租ニ何カ補助税ヲ持ツテ往ツテ重ニ取ルト云フコトヲ施スベキ次第デアルノニ、其偏軽ニ失シテ居ル所ノ地ニ向ツテ課税セズニ特ニ商売人ナルモノヲ選リ出シテ課税ヲスルト云フコトハ非常ナ間違デアルカラ、此間違ニ向ツテ幾ラ修正ヲシマシテモ、如何ナル方法ヲ用ヒマシテモ、公平ヲ保ツコトハ出来ヌ、大体ノ税法ハ不公平
 - 第22巻 p.231 -ページ画像 
ヲ慰スル為ニ用ユル税ヲ無関係ナル商業者ニ向ツテ課シタノデアルカラ、此補助税ガ出テ来テ却テ益々不平均ヲ甚シクシタカラ、幾ラ之ニ就イテ修正ヲ加ヘマセウトモ完全ナルモノガ出来ヤウト云フコトハ更ニナイト考ヘマス、縦令又商売人ナルモノガ割合ニ税ガ軽イカラ商売人ニ向ツテ課税ヲシヤウト云フ目的デアルニモセヨ、唯今ノ税法ノ如ク唯利益ト云フモノヲ取ル此商売人ト云フヤウナ目的ヲ以テ此法律ヲ編レタト云コトモ甚シキ誤デアル、利益ヲ取ルモノハ独リ商業工業ニ限ラズ種々ノ仕事ヲ以テ利益ヲ取ルモノガアル、其ノ利益ヲ取ルモノヽ中デ唯商売人ト云フ名ガアル為ニ其者ヲ選リ出シテ其者ノ頭ニ税ヲ課シタト云フコトハ非常ナ誤リデアルカラシテ之ハ従業者ノ中ニ課税標準ヲ幾ツモ並ベテ課税ノ不公平偏軽偏重ヲ補フトシテ色々ノモノヲ並ベテ見マシタガ、色々並ベバ並ブ程商工業家ニ苦痛ヲ感ズル、大体サウ云フ性質デナイ所ヘ斯ウ云フ性質ヲ持ツテ来タカラ、ソレデ営業税ノ唯今行レテ居ル有様ニ就イテ別ニ述ベル必要ハゴザリマセヌカラ、之ハ他ノ諸君ノ御説ニ譲リマシテ京都商業会議所ガ之ニ代ヘルニ如何ナル主義ヲ採ルカト云フ問題ハ宅地税ヲ時価ニ修正ヲシヤウト云フ意見デゴザリマス、之モ大変此時価ニ修正ヲスルト云フコトガ面倒イト云フ方ノ議論カラ論ジマスレバ大ニ面倒イコトデゴザリマスガ、又之ヲ容易イト云ラ方カラ論ジマスレバ大ニ容易イ、此宅地ノ地価ト云フモノハ彼ノ営業税法ノ上リ高ヲ申告シマストカ、若クハ資本金ヲ申告シマスト云フコトニ比シテハ之ヲ申告法ニ致シマシテモ余程容易イ、ドナタデモ随分鑑定ガ付クノミナラズ、隣リノ身代ハ分ラヌデモ隣リノ地価ハ誰デモ分ルト云フ訳デ、ダカラ之ヲ推測ヲ下スノニモ道ガアルシ、又本人ノ申告ト雖モ将カ十分ノ一ヲ脱シナイ申告ヲスルコトハ出来ナイ、丁度営業税ノ上リ高ノ如キモノデアレバ外国ノ方ハ申告税ト云フモノヲ以テ最モ貴ンデ居ツテ、人民ノ徳義心ガ強クナツテ居ル若クハ名誉心ノ為ニ一文デモ多ク言イタイト云フ時代ニ用ユル申告税ナラバ宜イガ、日本ノ如クサウ云フ域ニ達シテ居ラヌノハ申告ニ間違ガアツタ、之ハ先刻ドナタカノ御説ガアツタ通リ無形ノモノニ向ツテノ申告デ、到底決定スルコトハ出来マセヌガ、宅地ト云フモノハ有形ノモノダカラ何ト云ツテモ隠シタリスルコトガ出来ヌ、又申告モ相違ヲ生ズルコトハナイ、又宅地ノ地価ガ非常ニ騰貴シテ居ルノハドウ云フ処カト云ヘバ多ク商工業者ノ住居シテ居ル市街ニ多イ、其市街ノ宅地税ヲ改正シマスル、即チ時価ニ直シマスト云フコトニナレバ、ソレハ営業税ニ較ベマシテハ或ハ金持ノ商売人デナイモノカラ税ガ掛ルカ知リマセヌガ、公平ニ多クノ地所ヲ以テ住ヒシテ居ル者、地所ヲ以テ金ヲ取ツテ居ル者等ニ均シク課税スルノデゴザリマスカラ、宅地ノ修正ハ左程六ケ敷コトデナクシテ、之ヲ以テ此法ニ代ヘルト云フコトニナリマシタナラバ、大ニ当ヲ得タル所ノモノガ出来ルデアラウト云フ考カラ、之ヲ持出シマシタノデゴザリマス、乍併例ヘ此宅地トカ其他種々ノ税法ノ見出スコトガ出来ナイニモセヨ、此営業税ト云フモノヽ唯今ノ有様ニ向ツテ、吾々商工業者ハ之ヲ甘ンジテ納税ヲ負担スルコトハ断ジテ出来ヌト考ヘマス、ソレハ
 - 第22巻 p.232 -ページ画像 
前段述ベマシタ通リ、又他ノ諸君カラ御述ベニナツタ通リ、沢山ノ不都合ガ生ジテ居ル、是ニ依ツテ弊害ガ生ジテ居ル、是ニ依ツテ不公平ガ増サレタ有様ダカラ、斯ノ如キ税法ハ例ヘ之ヲ補フ道ガアツテモナクテモ、ナイナラバ国費ノ幾分ヲ減ジテモ止メナケレバナラヌト云フ考デ、尚之ニ就キマシテハ文ヲ綴ツテ呈シテ居リマスカラ余リ長クハ述ベマセヌデゴザリマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　営業税ノ全廃ノコトニ就キマシテ五十七番、其他営業税全廃ニ御賛成ノ会議所ノ御方ノ御演説ヲ能ク承リマシテ、能ク了解致シマシタ、然ルニ私ハ不幸ニシテ此説ニ従フコトガ出来ヌノデゴザリマスカラ、其所謂ソレニ反対ト云フコトヲ一言申上ゲテ置キマス、如何ニモ皆様ノ御議論ノ通リ此営業税ノ不完全ト云フコトハ私モ認メテ居リマス、ソレヲ完全無欠ト云フ事ニ至リマシタナラバ、天下ニ一モ恐ラク完全無欠ト云フコトハナカラウト思フノデス、ソレハ暫ク措キマシテ、一体此営業税ト云フモノガ今更国税ニナリマシタカラ新ニ出来タヤウニ思ハレル方ガアリマスケレドモ、地方ニ至リマスト是迄県税デ営業税ト云フモノハヤツテ居ルノデ、ソレヲ今度止メマシテ国税ニ移シタト云フ、大体カラ云フト色々地方ニ営業税ガアル、其地方ノ情実ニ依ツテ立テルモノデゴザリマスカラ一概ニハ申シマセヌガ、先ヅソレヲ廃シテ国税ニヤツタト云フヤウナ事実ハ余程アルノデ、之ヲ廃シマスルト直グニ又県税ガ此通リ営業税ヲヤル、今国税ニシマシタカラ国税ニ対シテ十分ノ二ノ附加税ト云フモノハ取ルコトナラヌト云フ法律デゴザリマスガ、之レヲ廃スルト云フト直グニソコヘ持ツテ往ク、サウ致シマスト、此ノ地方税ノ営業税ト云フモノハ誠ニ困ツタモノデ年々歳々変更スル、私ガ今年百円ノ営業税ヲ掛ケラレルト来年三百円掛ケラレルカ分ラヌ、営業ノ目的ハ予算ガ立タヌ、国税デ見マスト最早法律ガ変ラヌ以上ハ年々何程私ガ営業税ヲ出スト云フ予算ガチヤント立ツ、ソレカラ此営業税ト云フモノハ商人ノ利益ノ処デモ曝露シテ仕舞フ、如何ニモサウナンデスケレドモ、少シハ違ヒマスケレドモ此所得税ト云フモノモ其所得或ハ利益ニ依ツテヤツテ居ルノデ、サウスルト云フト敢テソコラノコトハ最早サウ沢山ニ利益ヲ曝露セラレタトカ、資本金ヲ云々シタト云フ所ハ力ヲ入レテ最早懸念ノ要ラヌコトヽ私ハ存ジマス、殊ニ此所得税ノ出マシタ時分ニモ始メ随分此通リデアツタ、矢張今日申告税デアル今ノ営業税ト同ジヤウナ性質ノモノデアリマスカラ、或ハ帳簿ヲ調ベタ地方モアリマス、或ハ役人ニ言ハレマシタケレドモ、今日ニ至ルト余リ不平ヲ言ハズニ居ル、シテ見マスト一年ニ始メテ一遍ヤリマシタ所デ、役人ノ不熟練申告スルモノヽ慣レナイノヲ以テ、ソレヲ比例ニ取ツテ余リ云々スルト云フノハ如何ナルモノデアラウカ、又先ニ中野君ノ御演説ノ如クソレハ暫ク置イテ、税源ト云フモノヽ土台ノ本ガ往カヌカラト云フ御説ガゴザリマシタガ、如何ニモ之ハ本ガ悪イカラサウ云フコトノ弊モゴザリマセウ、然レドモソレガ悪イカラ斯ウ云フモノニ立テナケレバナラヌ、確乎トシタ商人ニ営業税ト云フモノニ代ユベキ其性質ノモノガ此処ニ出タナラバ、或ハ私モ賛成スルカモ知レマセヌ
 - 第22巻 p.233 -ページ画像 
ケレドモ、先キカラ聴キマスト云フト稍々横浜ノヽハ一種別デゴザリマスガ、兎モ角モ外ノハ地租ト云フ一方ニ傾ク様デゴザイマス、如何ニモ地租ハ目下ノ所ハ明治八年ニヤツタノジヤカラ、余程今デハ上ゲテモ差支ナイト云フコトハ随分輿論ニモナツテ居ル様デアリマスガ、扨テ之ヲ上ゲテ営業税法ヲ廃スルト云フコトニナリマシタナラバ、実際ニ於テ行ハレルヤ否ヤト云フコトモ能ク考ヘテ見ナケレバナラヌ、ト云フ者ハ是迄商業会議所カラ政府ニ向ツテ建議シタコトガ一トシテ採ラレタコトハナイ、サウスルト商業会議所ハ建議スルコト計リニナツテ、実際ニ行ハレヌト云フコトニナツタナラバ少シク商業会議所ト云フ者ノ信用ニモ関係スル、之ニ付テノ信用ニ関スルコトハ暫ク置キマシテモ、将来何ニ向ツテモ信用ガ出来ヌト云フコトニナリハセヌカ、ソレデ私ハ成ル可クハ此際全廃ト云フコトヲ止メニ致シマシテ、改正ノ目的ヲ達スルト云フ趣意ニ本ヅキマシテ、ドウカ改正ヲスルコトヲ政府ニ迫ツテ、サウシテ此商業会議所ト云フ者ノ力ニ依テ是迄斯ウ云フ繁雑ガアツタノガ改正ニナツテ斯ウ云フコトニナツタト云フコトヲ、此ノ営業社会ニ能ク知ラシメタナラバ、此ノ会議所ト云フ者ニ重キヲ置イテ従テ力ヲ得ルデアラウト思フ、今之ヲ地租ニシヤウト言出シタ所ガ行ハレモセヌコトヲヤリ出シマシテ、サウシテ五年デモ三年デモヤツテ居ルト云フノハ誠ニ会議所ノ面目トシテ遺憾ジヤナイカト云フ、是レハ一ツノ情実上トシテ皆サウデアリマス、然ラバ貴様ノ言フ修正説ハ行ハレルカト言ヘバ、是レモ向フニ相手ガアルコトデアリマスカラ未定ノ問題デアリマスケレドモ、今日此税ガ発布ニナツテ実施サレテ居リマスニ付テ、税ガ堪ヘナイト言ツテ苦情ヲ言フコトハ聞カナイ、税ヲ出スコトハ戦後ノ経営トシテ已ムコトヲ得ヌ、是レハドウカ修正シテ完全ニ取ツテ貰ヒタイト云フノガ当今ノ事情ニモ合ヒ、果シテサウ云フコトガ今日ノ営業者ノ輿論トナツテ居ルト云フコトナラバ、此ノ営業者ノ輿論ト云フ者ハ政府ノ当局者ニ於テモ議院ニ於テモ、幾ラカ全廃ト云フコトヨリハ修正スルト云フコトニ首ヲ傾ケテ居ルジヤロウト云フ愚考デアリマス、シテ見マスレバ、未定ノ問題トハ雖モ幾ラカ其方ガ早ク行ハレハシナイカト思ヒマスカラ、私ハ誠ニ全廃ト云フコトハ営業者カラ金ヲ取ルノヲ止メルト云フコトデアルカラソレニ向ツテ異議ヲ言フ所デハナイ、誠ニ結構ナ御相談デゴザイマスガ、今申シマス通リノ次第デ、之ヲ廃シテ仕舞ツテ営業税法ト云フ者ガ無ナルナラバ宜イガ、或ル地方ニ至リマスレバ之ヲ廃スレバ県税ト云フ者ガ直グニ出テクルカラ之ガ行ハレヌ、廃シタ所ト比較ヲ取レバ却テ重クナルノデアリマスカラ、却テ籔突イテ蛇ト云フ風ニナリハセヌカト云フ私ハ考ヘデゴザイマスカラ、私ハ皆サンノ御賛成アルニモ拘ハラズ全廃ト云フノハ不同意デアリマスガ、ソレカラ先ノ金沢商業会議所ノ御話ニハ譲リ合ハシテシタモノハ満足ナモノデナイト云フ御話デアリマスガ、ソレハ各々自分会議所ノ言フ様ニヤルノガ満足デ他ノ者ト折衷シタノハ不満足ニ違ヒアリマセヌガ、全体カラ言ヘバ満場一致ハサウデアルカラ結局ノ所ハ少シモ違ウコトハナカラウト私ハ思ヒマス、故ニ要スル所ハ、昨年以来東京
 - 第22巻 p.234 -ページ画像 
カラ之ヲ御発議ニナツテ修正ヲシヤウジヤナイカト云フ、我々モ至極御尤ノコトヽ思フテソレニ賛成シマシテ昨年ノ会議ニ修正シマシタ、ソレニ尚ホ能ク皆サンノ御協議デ修正説ヲ加ヘテ、或ハ七百五十万円ト云フノガ予算デ見マスレバ五百八十万円トナツテ居ル様デアリマスガ、ソレガ幾ラカ重イト云フナラバ五百万デモ四百万デモソレハ宜シウゴザイマスガ、ドウカ修正ノコトニシテ前ノコトヲ貫徹シタイ、去年ハ実施前デアツタカラ云々ト云フ御話モゴザイマスガ、私ハ其結果トシテハ同ジコトデ、実施ニナツテ見タ所ガソレガ負担ガ重イカラト云フコトハナイ様デ、只税法ガ悪ルイ為メニヤレ賃貸価格トカ従業者ト云フ数項ニ分レテ居ル、成ル可ク之ヲ固メテ取ル様ニシタイト云フ様ニ思ヒマスカラ、サウシマスト別ニ実施ヲシタカラ斯ウダ、シナイ先ノ意見ジヤツタカラ斯ウダト云フ様ナコトハ別ニ変ハツタコトデアルマイト思ヒマスカラ、ドウカサウ云フコトニ願ヒタウ存ジマス
○二十一番（堺、藤本荘太郎君）　私モ全廃ト云フコトハドウモ面白ウアルマイト思ヒマスノデ、先刻カラ五十七番ノ革新論ノ御意見ヲ承ハリマシテモ、矢張リ此ノ地租ニ掛ケマスト之ニ御座イマス通リ重クナツテ参リマス、其地租ノ重イ所ハ誰ガ受ケマスカト申シマスレバ、矢張リ商工業者ガ受ケテ参リマスノデ、サウシマスレバ商売ヲシテ居リ乍ラ商業税ガナクテ、サウシテ地税デ往クト云フコトニナリマスカラ、自分ハ矢張リ商売ヲシテ居レバ商売デ税ヲ払ツテ、商売人ハ商売人トシテ所謂国民ノ義務ヲ尽シタイト云フ精神デゴザイマス、全ク方法ニ依テ持上ツタゴタゴタデアリマシテ、方法ハ決シテ善イトハ申シマセヌ、善イトハ申シマセヌガ、先刻カラ承ハツテ居リマス所デハ是迄方々ニ苦情ガゴザイマスガ、少シ大キナ声デハ申上ゲ兼ネマスガ、私ハ斯様申シマスト政府党見タヤウニナリマスガ、随分人民モ悪ルカツタ、本当ニ自分ノ実際ノ商売高ヲ書出シテヤリマシタナラバコンナコトニハナラナカツタラウト思フ、私ハ此辺ハ遺憾ニ思フ、初メニ嘘ヲ附キ出シタ者デアリマスカラ嘘デスツパリ出来テ居ル様ニ見ヘテ、税吏モ抛ツテ置クコトハ出来ヌト云フ者ガ、極多クデハアリマセヌガ随分アツタ、ソコカラ厳敷□ツテ遂ニ衝突ヲ来シタノデアリマス、ソレハ所謂方法ノ不完全カラ起ルコトデ、少シ御話ニ及ビマスガ営業ノ金高ヲ以テ云々ト云フ御話ニシマスト、会議所抔デ年々ニ統計取リマスケレドモ十分トハ言ヘナイト云フコトニナリマセウト思ヒマス、統計ヲ蒐集イタシマスニ付テハ矢張リ信用モ入レナケレバナラヌ、ソレモ自分ノ利益ヲ暴露スルト云フコトハ矢張リ暗ニ商売人ガ調ベルノデアリマスカラ、向フハ金高デドノ位ナ利益ガアルト云フコトハ粗々標準ニナルモノデアリマスカラ、ソレモ言ヘナイト云フ様ナ勘定ニナツテ参リマス、強チソレヲ露ハシタカラ商売人ノ権力ヲドウスルノ斯ウスルノト云フ程デモ私ハナイト思ヒマス、ソレカラ尚ホ京都ノ御話モ一応御尤デアリマス、併シ又横浜ノ家屋税ト云フ御話モゴザイマスガ、矢張リ五十歩百歩ト云フコトニナラウ、同ジコトニ出シマスナラバ、先ヅ商売人ハ商売ノ税ヲ払ヒ、農民ハ地租ヲ払ウト云フ名実ヲ正シクシテ
 - 第22巻 p.235 -ページ画像 
往ク方ガ宜イト思フ、土地ヲ御持チノ方ハ地租デ取ルコトニナレバ宅地ニ掛ツテ往クカラ固ヨリ商売人モ負担シテ往クカ分リマセヌガ極農家ノ小サナ所ニ往キマスレバ地租ガ増シタト云フコトニナルト商売人ハ営業税ヲ出サヌ様ニナツタカラソレガ為メニ地租ガ増シタト云フコトヲ言ハレテハ、自分等ハ幾分カ肩身ガ狭イト思ヒマスカラ、今日此処デ改正ヲ願ヒマシテ、其方法ニ付テハ十分御討議ニナツテ、先ツ廃止ト云フコトハ到底是レハ今財源ガナイノデアリマスカラ廃スルト言ツテモ廃サレルモノデモアリマスマイ、ソレ故私ハ改正ヲ希望シマス
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　只今ノ藤本君ノ御説ニ対シテ申シテ置キマス、我ガ名古屋地方デハ人民ガ嘘ヲ言ツタ為メニ税務吏ガ税ヲ押附ケタト云フ様ナコトハ、少シハアツタカ知ラヌガ先ヅナイト言ツテ宜シイ、サウ云フコトハ例ニ取レヌ、今日ハ只改正スルカ廃止スルカト云フノデアリマスカラ、無実ヲ弁ジテ置キマス
○二十一番（堺、藤本荘太郎君）　只今オ叱リデ多クハ申シマセヌガ、此大体ソコ迄ノ改正ヲ致シマスニ付テハ根本的善イト云フコトモアリマス、又欠点ノアル所ハ人民モ亦顧ミナケレバナラヌト云フコトヲ窃カニ声ヲ低メテ申シタノデアリマス、殊更ニオ咎メヲ受ケル程ノコトデハアリマセヌ、鈴木君ニ一言オ返シ申シマセウ
○四十一番（浜松、中村忠七君）　本員ハ此問題ニ付キマシテハ反対ノ意見ヲ持ツテ居リマス、五十七番ノ意見ノ御要点ハ既ニ御印刷ノ書面ノ中ニモアリマスシ、又御話中ニモアリマシタガ、営業税法ナル者ハ根本的悪法デアル、斯ノ如キ者ハ税法トシテ施行スベキモノデナイト云フコトガ余程重キニ居ラレル様テアリマス、又金沢・京都等ノ御説モ矢張リ是レハ不良ナ法デアル、不完全ナ法デアル、或ハ補助法トシテ施行スベキモノデアルノガ戦後経営ノ為メニ斯ノ如キ者ヲ発布サレタ、実ニ我々ハ負担スベカラザルモノヲ殊更ニ戦後経営ノ為メニ負担シタリト云フ御説モアリマシタ、是レハ昨年十一月ニ当会議所デ聯合会ノ節ニ我々モ喋々意見ヲ述ベ又諸君ノ御説ヲ拝聴シテ居リマシタガ、併シ昨年ハ五十七番ノ様ナ根本的負担スベキ税法デナイト云フ様ナ御論ハナカツタト私共承知シテ居リマス、若シ之ガ根本的悪法デアリマスナラバ、如何ニ戦後ノ経営デアリマセウトモ、如何ナル反対論ガアリマセウトモ、昨年ノ十一月ノ聯合会ニ於テ堂々御発シニナラナケレバナラヌモノト先ツ第一ニ疑ヲ起ス然ルニ昨年ハ大体之ニ付テ大多数デ修正案ガ通過シマシタ、当時不良デアル不備デアルト云フ御論ハアリマシタガ、根本的ニ絶対的ニ営業税法ノ範囲ヲ脱シヤウト云フコトハナイト考ヘテ居リマス、シテ見レバ今年ト昨年トハ時世ガ違フカラ斯ノ如キ者ハ負担セヌト云フコトデアリマス、時世ガ如何ニ異ナリマシテモ税法ノ性質如何ニ於テハ別段変ハリマセヌト思ヒマス、只今函館ノ御説モアリマシタ通リ、此ノ営業税ト云フ者ハ日本ノ内デ事情カ変ハリマセウトモ孰レノ土地デモ多少府県税ヲ皆負担シテ居リマシタ、自ラ一ノ習慣トナツテ居リマス、夫故ニ昨年御相談ノ場合ニモ第一修正ト云フ考ヘヲ持ツテ、已ムヲ得ヌモノデアラウト云フ観念ハオ互ニ持ツタコト
 - 第22巻 p.236 -ページ画像 
デアラウト思フ、シマスト只今ノ場合之ヲ全廃シタナラバ前途如何ナルモノデアルカ、横浜ノ家屋税ト云フ御説モアリマスガ、家屋税戸数割ト云フ者ハ市町村税ノ財源デゴザイマス、今俄ニ営業税ヲ廃シテ其代リニスルト云フニハモツト大キナ所得デナケレバ面白クナイ、ソレナラバ地租ニ掛ケル、是レモ宜シウゴザイマセウ、去リ乍ラ営業税法ヲ俄ニ地租ニ変更シマシタ所ガ、ソレガ為メニ完全デアルカト言ヘバ完全ナコトニハ至ラヌノデアル、兎ニ角最早営業税ト云フ者ハ維新以来ノ習慣トシテ納税ヲ仕来ツタノデアルカラ、此場合ハ成ル可ク負担ノ簡明負担ノ軽減ヲサセルコトニ致シタイモノデアル、徴収ノ方法ハ最モ簡便ナコトニシテ貰ネバナラヌモノデアル是レガ昨年ノ議論ノ要点デアル、本年実施シマシタ其結果地方々々ニ衝突ガアツタデモアリマセウ、種々其間ニハ消息モアツタデアリマセウト思ヒマス、是レモ強チ人民ノ悪ルイト云フ斗リデナイ、又政府ノ方ノ官吏ニ於キマシテモ悪ルイト云フ訳デハナイ、双方共新タナコトデアリマスカラ従来ノ経験ナキ為メ衝突ヲ来シタ者デアル若シ一年、二年ト施行シマシタナラバ昨年程ノ波瀾ハナイト思ヒマスガ、併シソレハ私ハ満足シマセヌ、満足ハシマセヌガ只今ノ所ハ相当ノ之ニ代ルベキモノガナイ、若シ府県税ト国税トノ範囲ノ分界ガ立チマス者ガアリマスレバ、尚ホ一考ヲスルコトモアリマセウガ只今承ハル所デハ営業税ヲ廃シテ地租ニスルトカ、家屋税ニスルト云フ意見ニ止マツテ、国税ト府県税トノ分界ヲ立テ、営業税ニ代ハルベキモノガアルト云フコトハ未ダ承ハリマセヌ、私ハ已ムヲ得ズ全廃案ニハ反対シマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　廃スルト言ヒ、修正ヲスルト云フ此二ツデゴザイマスガ、此税法ノ不完全ナル宜シカラザルト云フ事ハ全廃論者ト雖モ、修正ヲ希望スル者ト雖モ同一ノモノデアラウト思フ、是ニ於テ変ハリハアルマイト思フノデアリマス、ソレナラバ此ノ営業税ト云フ者ハアルガ善イカナイガ善イカト言ヘバ、営業者ノ上カラ言ヒマシタナラバ斯ウ云フ税ガナイコトヲ希望スルコトハ万々デアラウト思ヒマス、又之ガ重イガ善イカ軽イガ善イカト言ヘバ無論軽イ方ヲ希望セザルヲ得ヌノデゴザイマス、然ルニ廃サウト云フコトニ傾キヲ附ケテ考ヘテ見マシテモ、廃サウト云フ中ニモ種種ナル意見ガ此ニ御坐イマス、東京ナラ東京ノ御意見ニハ順序トシテ革新ノ意見ト云フガ添附シテアリマス、又家屋税ニ取レト言ヒ、又地租ニ取レト言ヒ、宅地ニ取レト言フ、各々他ニ税源ヲ求メルト云フコトハ、即チ政費ノ歳出入ノ上ニ余程是レハ重大ナ関係ヲ持ツコトハ論ヲ待タヌコトデアリマシテ、ソレカラ考ヘテ見マスレバ実行ノ上ニ付テ出来得ルコトナラバ無論全廃シタイト云フコトデ、万万希望セザルヲ得ヌコトデアリマスガ、只此ニ他ニ税源ヲ求ムルト云フコトノ術ニ於テ余程考ヘニヤナラヌコトヽ思フ、只之ヲ宜シウナイモノデアルト云フコトナラバ満場一致ダラウト思フ、一人トシテ此税法ヲ宜シイト認メラレタ方ハ恐クアルマイ、ソレナラ之ヲ廃サウト言ツテ之ヲ廃スト云フコトノ決議ハ容易ナコトデアリマセウガ、只商業者ガ集マツテ此税ハ善クナイカラ改メテ貰ヒタイ、他ハ
 - 第22巻 p.237 -ページ画像 
顧ミヌト云フノガ実行上如何テアラウノ一点ガ誠ニ困シイト思フタカラ、仮令ヒ廃止案ト云フコトニ仮定致シテ見マシテモ、各々見ル所ガ異ナツテ、宅地ト言ヒ、地租ト言ヒ、家屋ト言ヒ、山林田畑ト言ヒ種々ニナツテ居ルガ、他ノ税源ノ上ニ付テ是レハ余程考ヘテ見ナケレバナラヌコトデアル、又此事ノ決議実行ヲ致シマスコトニ付テモ、希クハ余リ議論ニ走セナイ様ニ能ク纏メテ此事ノ決議ヲ致シテ、到底此処デ決シタ計リデハイカヌノデアリマスカラ、孰レ之ニ対スル相当ノ方法ヲ設ケテ相当ノ運動ヲシナケレバナラヌト思ヒマス、果シテ然ラバ成ル丈ケ必要ナ決議ヲシテ本会ノ結果ヲ見タイト思フノデアリマス、ソレ故考ヘテ見マスト、軽々ニ此処デ中々決議ハ出来ヌ、只全廃スルノハ不同意デゴザイマス、昨年来修正シヤウトシタガ昨年ト今年トサウ変ハルモノデナイト云フ御説モアリマスガ、一概ニ是レハ講究ノ出来ルモノデナイカラ十分考慮シテ見タイト思ヒマス、然ルニ京都ノ意見書抔ハ只今受取リマシタ計リデ、末文ノ所ヲ少シ読ンデ見タ位デ之ヲ見テ直チニ全廃ニ同意スルト云フ事ハ出来ヌ、能ク是等ノ説明ヲ伺ヒマシテ熟考ヲ致シタイ、今日ノ所ハ稍此位ニシテ能ク此趣意ノアル所ヲ御考ヘ下サイマシテ、一方ニハ玆ニ相当ノ委員ヲ設ケテ、苟モ此営業税法ナル者ヲ修正スルニ利益ガアルカ、斯ウ云フ税ハ寧ロ廃シテ仕舞ツタ方ガ宜イカト云フコトハ、大凡ソ此案ガ出テハ居リマスガ、尚ホ能ク一ツ此趣意ニ本ヅイテ能ク考慮ヲ致シ、尚ホ之ニ付テ一ツ調ベルト云フコトガ必要デアリマセウト存ジマス、デ若干名ノ委員ヲ挙ゲテ能ク之ヲ調ベテ貰ヒタイト思フ、ト云フ者ハ税源ノ上ニ付テ余程皆御考ヘノ異ナツタ所モアリマセウト思ヒマスカラ、廃スルトスルノデス、能ク一ツ調ベテ見タイト思ヒマス、其上デ、孰レニ決スルカ知リマセヌガ、ドウゾ決議シタイト云フ希望ヲ持チマス、幸ニシテ御賛成ヲ得マシタナラバ委員ニ附托シテ能ク調ベテ貰ヒタイト云フ考ヘデアリマス
○十一番（知多、天木嘉祐君）　知多商業会議所ハ最初ヨリ営業税法ノ不完全ナルコトハ知リ乍ラ、他ニ税源ヲ見出スコトガ出来ヌ為メニ戦後ノ経営上已ムヲ得ズシテ別ニ全廃ノ意見ハ出シマセヌガ、本法実施以来営業者ハ甚ダ迷惑ヲシタコトハ五十七番ヤ金沢会議所抔ノ御説ト同ジヤウナ事デ、此ニ一ツ奇怪ナ話ガアル、第九議会デ酒税ガ四円ガ三円増シタ、随分過酷ナ増シ方デアル、然ルニ其増シタニモ拘ハラズ営業者ハ余リ困難ヲ感ジマセヌ、今度ノ営業税法ガ営業者ガ大層感ズル、之ヲ以テモ営業税法ノ宜シカラヌコトハ分ル、大要ハ五十七番ニ私ハ賛成デアリマスガ、只今三十三番ノ御注意ガアリマシタガ、之ヲ廃スルニシテモ余程ナ問題ダラウト思ヒマスカラ委員ヲ御選ビニナツタラ善カラウト思ヒマス
○十三番（横浜、高橋是清君）　先刻カラ御説ヲ承ハツテ居リマシタガ此ノ承ハリマス所デハ営業税ト云フ名ニ拘泥セラレテ居ル様デアリマスガ、営業税ト云フ名ハ悪ルクハナイ其方法ガ悪ルイ、其悪ルイコトヲ改メレバ善イガ、従業者ニ課スルノハ悪ルイカラ改メロ、賃貸価格ニ課スルノハ悪ルイカラ止メタガ宜カラウト言ヘバ、営業税ハ殆ト全廃ト同ジニナツテ仕舞ウ、或ハ往掛リノ御論モアリ、前ノ
 - 第22巻 p.238 -ページ画像 
時世ト今日ノ時世ト変ハツテ居ルト云フ様ナ御論モアツタガ、ソンナ軽イコトデハナイ、元来一寸先刻御答ヲスル時ニ御話ヲシタヤウデスガ、此税ト云フモノハ分析シテ往ケバ皆例ノアルコトニ違ヒナイ、又即チ賃貸価格或ハ従業者ニ調ベル之ハ例ノナイコトハナイ、此営業者ト云フモノハ此処ニ掲ゲテアリマス通リ種々雑多ノ業ヲシテ居ル、昔ノ単純ナ商売人ハ丸デナイ、保険業・仲買業、種々雑多ノ業ヲ営ム者、皆網羅シテ居ル、ソレニ持ツテ往ツテ公平ニ税ヲ課サウト云フカラ法ガ複雑ニナル、家屋税ト云フ税法ヲ持ツテ来テ当テガツテ見タリ、或ハ人頭税ト云フ税法ヲ持ツテ来テ見タリ、或ハ資本税ト云フ税法ヲ持ツテ来テ当ガツテ見タリ、色々公平ヲ行フガ為ニ色々集メテ之ニ当テヽ却テ複雑シテ不公平ナモノニナツテ来タ此税法ニモ商人ニ総テ利益ヲ調ベテ所得税ヲ出シテ居ルカラ差支ナイ、利益ヲ調ベテモ差支ナイト云フガ、商業者ニハ総テ秘密ト云フモノガアル、人ニ知ラレテハ其利益ヲ奪ハルヽト云フ差支ガアル、之ガ従前ノ社会デアツタラ宜シウゴザリマセウガ、数年後ニハ内地雑居ニナル、ソレカラハ外国ノ商人ト対持シテ往カナケレバナラヌ時勢デアル、昔ノ商売ノ仕方トハ違ツテ来ル、苟モ一人ノ商人ガ己ノ取引ヲシテ居ル細カナ帳面ヲ見ラレルノハ刑法ニ触レタトカ、破産ヲシテ裁判所ニ呼出サレル時デナケレバ、人ニ対シ見セル義務ガナイ、ソレヲ僅ノ税吏ガ来テ何処迄モ其帳簿ヲ見ル権利ガアルト云フコトハアル筈ガナイ、資本ニ税ヲ課シテモサウ、会社即チ大勢ノ金ガ集ツテ玆ニ番頭ガ居ツテ集ツテ仕事ヲスルト云フ、之ハ世ノ中ニ報告スルノハ必要デアル、其他一個人ノ商売ノ資本或ハ組合ノ資本ナドヽ云フモノハ、外国ニ往ツテ御覧ナサイ、ドウシテ分ル、即チ興信所ノ如キモノガ必要ナモノデアル、サウ云フコトガ明ラサマニ分ツテ何デ商売ガ出来マセウ、斯様ナコトニ甘ンジテ居ルノハ或ハ前ニ所得税ガ行レタ時苦情ガアツタ、今日行レタノガ苦情ガナイ之ハ卑屈昔ノ官尊民卑デ済シテ往ケバ格別、ソレハ時勢ガ許サヌ、所得税ニシテモ許サヌ、吾々ノ所得ハ幾ラダト云ツテ届ケテ済ム、段々サウナラナケレバナラヌ、何ノ利益ガ幾ラ々々、明細ニ書クベキモノデナイ、即チ社会ハ段々進ンデ往ク、亜米利加ナド御覧ナサイ、所得税ハ届ケテ済ンデ居ル、乍併一方ニ社会ノ制裁ガアル、徳義ガ段々篤クナツテ往ケバ毎日自分ノ所得ノ金ト云フモノガ出テ居ル、何ノ為ニ税ヲ出ス、国ヲ維持スル為デアル、夫故ニ自分ノ届ケタモノヨリ所得ガ多カツタト云フト、大蔵大臣ニ金ヲ出スノガ日々新聞ニ現レテ居ル、甚シキハ金額五万円・十万円ト云フ巨額ノモノガアル、其位ニマデ之ヲ一々申告シタ、此帳簿ニ立入ツテ調ベルト云フコトハ税法ニ於テアルベキコトデナイ、其人ノ秘密ニ立入ラズシテ向フノ申シテ来ル所ヲ信用シテ取レル租税ニ於テ始メテ取ルベキ税法デ、而モ人民ガ夫程徳育智育ガ進マズシテ掛ケルノハ時勢ガ早イト云ハナケレバナラヌ、随分之ハ先刻カラ論ノアリマス通リ重大ナ問題デアラウト思ヒマス、最初ニ二番カラ委員説ガ出マシタ、依テ私ハ二番ノ委員説ニ賛成致シマス、之ハ宜シク議長ニ於テ若干ノ委員ヲ御指名ニナツテ委員附托ニナランコトヲ希望致シマス
 - 第22巻 p.239 -ページ画像 
○三十九番（宇都宮、田中勝次郎君）　私モ大体ハ改正スル意見ヲ持ツテ居リマスノデ、五十七番・十三番ハ種々全廃ノ御意見ガゴザリマス、御議論トシテハ実ニ御尤ナコトデゴザリマス、不完全ナ税法デアルト云フコトハ今更私ガ喋々致シマセヌデモ分ツタ話デゴザリマス、左様ナ不完全ナモノデアルカラ之ヲ全廃スルト云フコトハ至極御尤ナ次第デゴザリマス、乍併諸君モ先刻カラ修正意見ヲ御持チニナツテ居ル諸君ガ幾ラモ御弁シニナリマシタヤウナ事デアリマシテ営業税ナルモノモ国税トナリマシタノハ近頃デゴザリマスガ、既ニ地方税デハ是迄皆大抵ノ地方ハゴザリマシタノデ、今回始メテ実業者ガ此税ヲ課セラレタト云フコトニナリマシタ次第デモゴザリマセヌ、何ガ為ニ此紛擾ヲ来シタカト申シマスレバ、徴税ノ手続ガ煩雑ナノト、ソレカラ課税標準ガ数多イノデ余程紛擾ヲ来シタノデアラウト思ヒマスノデ、此徴税ノ手続ヲ極ク簡便ニ致シマシテ、賃貸価格トカ或ハ従業者ノ義務トカ云フモノヲ除キマシタナラバ差支ガナイダラウト云フ考デゴザリマスノデ、先ヅ此廃止ノコトハ至極結構ナコトデゴザリマスケレドモ、総テ目的ヲ達シマスニハ先ヅ目的ノ達シ易イ方カラ運ンテ参リマス方ガ至極策ノ得タモノデアルダラウト云フ考ヲ持ツテ居リマスノデ、乍併尚是等ニ就イテハ篤ト諸君御高説モ拝聴致シタウゴザリマスシ、尚又善イ御方法ガゴザリマスレバ何時デモソレニ賛成ヲ致シマス次第デゴザリマスカラ、矢張二番ノ御説ノ如ク委員ヲ設ケラルヽガ至極宜カラウト思ヒマス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　最前ヨリ続々諸君ノ御意見モ承リマシタガ、最モ重大ナ問題デアリマスシ致シマスデ、之ハ矢張二番ノ意見ニ賛成シマシテ、之ハ委員ニ嘱托アランコトヲ希望致シマス
○三十四番（津、橋本清助君）　二番ノ御説ハ委員ニ附托スルト云フコトデアリマシタガ、然ルニ全廃ヲスルカ改正ヲスルカト云フ方ノ討議デゴザリマシテ、ソレニ附帯シ廃税ヲスル故障ノコトガ大体出テ来マシテ、為ニ委員附托ト云フコトガ要ルノデアラウト思ヒマス、就イテハ廃止ヲスルカ改正ヲスルカト云フコトガ決定ノ上デ委員ニ附托スルノガ順序デアラウト思ヒマス、其御意見デアルノデゴザリマセウヤ否ヤ確メタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　御尋デアリマスガ、自分ノハ素ヨリ順序トシマスレバ即チ此廃止ト決シマスカ、或ハ修正ト決シタ上ニト云フノガ順序デアリマセウガ、斯ノ如キ重大ノ事件ヲ右ノ如ク決スルヨリ、種々ノ御説ガ出マシテ之ヲ廃止トシマスニモ、仮ニ東京ノ税法革新意見トシテ出マシタモノヲ之ヲ適当トシマスニモ、中々容易ニ短時日ノ間ニ之ヲ行フコトハ出来ヌ、又適当ノ方法ヲ求ムルト云フ金沢ノ御論ニシテモ、適当ノ方法ト云フノニモ此聯合会トシテ決シマシタ以上ハ凡ソ適当ノ方法ヲ指摘シナケレバナラヌ、夫等ハ或ハ一方ニ於テ委員デモ設ケテ調査ヲシマシタ上ニ大体ハ廃止ト決スルケレドモ、其焦眉ノ急ヲ救フニハドウシテモ斯ノ如キ箇条ハ修正シナケレバナラヌト云フ事ニ致シマスカ、全ク廃止ト致シマスカ又ドウシテモ廃止ハ出来ヌモノダカラ修正トシマスカト云フヤウニ総テカラ御出シニナリマシタ書類ト雖モ、未ダ自分等始メ一読モ致
 - 第22巻 p.240 -ページ画像 
シマセヌ御方モナイトモ保セラレマセヌカラ、其辺ヲ委員ニ附托シテ調査シ十分講究シタ上、委員デハ斯ノ如キ意見デアルト云フノヲ此会議ニ向ツテ報告ヲシ、而シテ其案ニ向ツテ決スルノガ順序デアルマイカト云フノデ、委員ヲ設ケタイト云フノデ、唯全廃カ修正ト決シタ上ニ委員ヲ設ケルト云フノデハナイ、其事ヲ決スルニ此九十名ニ近イ人ガ甲論乙駁シテモ切リガナイコト、大体ヲ極メタラ捗取リガ宜カラウ、ソレニハ調査委員ヲ設ケタガ宜カラウト云フ意見ナノデアリマス
○三十四番（津、橋本清助君）二番ノ御説ハ分リマシタガ、御尤ノヤウデハゴザリマスガ、今ノヤウナ御意見デゴザリマスト、恐クハ先ノ委員会ノ如キ結果デナカラウカト思ヒマス、短時日デハ調査結了ハ如何デアラウ、中ニハ其報告ヲ待ツ間ニハ県ニ帰ル人ガ出来ルダラウ、ソレヨリ先ヅ意見ヲ定メテ置イテ、其上委員ニ付托スルナラバ委員ガ大挙シテ調査スルト云フ事ニナツタ方ガ宜カラウト思ヒマス、今ノ二番ノ説ニハ同意スルコトハ出来ナイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　素ヨリ御同意ノ有無ハ暫ク措キマシテ自分ニ於テハ先刻陳弁シマシタ如ク、若シ之ヲ軽々ニ廃スルナラ廃スルト決シマシタラ、委員ニ於テ廃案ニ就イテ唯文章ノ修飾トカ、或ハ此事ハ此方ヘ繰リ変ヘルト云フコトニ過ギヌコトニナツテ、最早委員ヲ選ブ必要ハ僅ノコトデ、大体ガ決シマシタラ各書記長ニ任シテモ宜シイ、斯ノ如キ重大ナコトハ縦令ンバ一日・二日費シマシタカラトテ、此重大ノ事件ヲ少シ時間ガ手間取ルカラ帰県スルト云フ人ハ別段ノ話、十分ノ調査ヲ尽サナケレバ、同ジ中ニモ廃止ノ御説ガアリ、修正ノ中ニモ色々アリマスカラ、若クハ之ヲ調査委員デ調査シマシタナラバ極リマセヌモノヲ以テヤリマスヨリハ、ソレハ斯ク々々ノモノダケレドモ調査委員ノ意見デハ斯ノ如ク、修正意見デハ斯ノ如キモノダト云フコトヲ報告シテモ、切リヲナクシタナラバ十日デモ十五日デモ掛リマセウガ、大体大別シテ斯ノ如キモノダト云フコトヲ調査シテ廃シナケレバナラヌ、ソレハ斯ル財源ハイカヌト云フコトモ、斯ノ如キモノハ先ヅ其真ニ近イモノダラウト云フコトヲ調査スルノハサウ数日間掛ツテ、ソレガ為メ会員ガ御帰県ニナルコトハアルマイト思ヒマスカラ、自分ハ飽迄自説ヲ維持シマス
○三十五番（神戸、岡田元太郎君）　三十五番モ二番ニ御同意ヲ致シマシテ、委員附托ニナリタイ、唯今三十四番ノ御話中ニハ、若シ此処デ大体ヲ決シテ置カナイデ委員ニ附托シタナラバ、此前ノ委員会ノヤウナ結果ヲ見ハシナイカト云フ御案ジガゴザリマスガ、彼ノ委員会ニハ、三十五番ノ考ヘマスニハ、総テ修正ト云フコトニ就イテ寄ツテ居リマシタ委員デゴザリマス、其場合ニ全廃ト云フ説ガ出ルモノデナイト云フ頭ヲ持ツテ居ツタ委員会デゴザリマスガ故ニ、之ヲ兎ヤ角決議ヲスルノハ穏当デアルマイト云フ所カラ、此聯合会ヲ更ニ開クコトニナツタモノデアラウ、今日ニナツテ見マストモウサウデナイノデ、既ニ全廃ノ説ト云フモノモ彼方此方カラ現レマシテ、其事ヲ第一ニ議スルト云フ場合ニナツテ居ルノデゴザリマスカラ、之ニ対シテ委員ハ随分思ヒ切ツタコトガ出来ル委員デアル、三十四
 - 第22巻 p.241 -ページ画像 
番ノ御懸念ニハ及バヌト思ヒマス、勿論二番説ニ同意致シマス
○四十五番（豊橋、宅間菊太郎君）　四十五番ハ修正説ヲ賛成デゴザリマスガ、唯今ノ二番説ノ此委員ヲ設ケルコトヲ賛成致シマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私ハ三十四番ニ賛成デアリマス、委員ヲ御設ケニナリマシタ所ガ単純ナ問題デゴザリマスカラ、本会ヲ明日ニデモ御延ベニナリマシテ尚諸君ノ御意見ヲ承ルト申シマスカ、委員ヲ御設ケニナリマシテ又委員ノ方デ隙取リマスト却テナンデゴザリマスカラ、私ハ三十四番ヲ賛成致シマス
○十三番（横浜、高橋是清君）　委員附托ノコトニ就キマシテ私ハ賛成デス、理由ヲモウチツト申シマスガ、此修正ノ方ニ御懸念ノアル御方ガ大分アル、此修正説ノ方ノ御方ノ御説ヲ先刻カラ聴イテ見マスト、所謂従業者ニ課スル税額賃貸価格モ不都合ダト云フ、ソレヲ取ツテ除イタカラ全廃ニナリマセヌカト云フ懸念ガアル、ソレヲ取ツテ除ケズニ外ニ善イ方法ヲ用ユル、取ツテ置カナケレバドウスル矢張大変ナ不公平ナモノガ出来ル、夫等ノモノヲ委員ヲ置イテ研究ヲシテ貰ヒタイト云フ考、全廃ヲ必ズシロト云フ方ノ委員デハナイ、マダ攻究ガ足リナイダラウト思ヒマス、修正ヲ主張セラルヽ諸君ガ十分御考ニハナツテ居リマセウ、不都合ノアルト云フコトハ御認ニナラナケレバナラヌ、不都合ナモノヲ取ツテ除イタラ大ニ政府ノ予期シテ居ル収入ガ減ツテ仕舞ツテ却テ徴収ノ費用ガ余計掛ルト云フコトニナル、或ハ一層不公平ナモノニナリハセヌカト云フ懸念ガアル、未ダ斯クスレバ宜イ、不公平ナモノガナクナル、斯クスレバ苦痛ハナクナルト云フ御論ヲ承ラナイ、決シテ十分ニ尽シテナイト思ヒマス、依ツテ委員ヲ設ケルコトノ必要ヲ認メルノデアリマス、ドウカ委員附托ニナランコトヲ希望致シマス
○二十四番（栃木、石塚新吾君）　委員ノコトニ就キマシテ私モ三十四番ト大体同意デゴザリマス、ソレデ、勿論重大ナ問題デゴザリマスカラ委員モ要シマスルシ、又今日ノ会議ヲ明日ニ延シテ尚諸君ノ御説ヲ拝聴致シタイノデゴザリマスガ、此事ニ就キマシテ委員ヲ挙ゲテ見マシテモ、廃止スルト云フコトヽ改正スルト云フコトノ二ツデゴザリマシテ、一ノモノヲ改正スル其改正ノ御議論ニ就イテ説ガ幾ツモ分レテ居ルカラ委員ヲ挙ゲテ頼ムト云フナラバ、容易イデゴザリマセウガ、廃スルト改正スルト云フコトハ二ツデゴザリマスカラ此議ガ纏ルマイト思ヒマス、縦令纏ツタ所ガ、サウナルト少数ノ意見ヲ圧倒スルト云フ傾キニナル、少数ノ人デ廃止ト云フモノト改正ト云フモノト相談ヲ致シマシテ、而シテ其多数ガ詰リ委員説トナリ廃止ナリ修正ナリ意見ガ立チマシタラ、少数ヲ以テ多数ヲ圧スルト云フヤウナ傾ガアリハセヌカト云フ懸念モゴザリマス、夫故ニ私ハ委員ニ托スルト云フコトハ反対ヲ致シマシテ、三十四番ト矢張同感矢張委員ニ附托シナイ方ガ宜イト云フ考デゴザリマス、而シテ先刻亀岡サンノ御述ベニナリマシタ前段申サレマシタ、明日ニ延期シテ更ニ出タ問題ガアルカラ御研究ヲ十分スルト云フコトヲ賛成致シマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　私共ハ全廃ニ同意デ、併シ既ニ委
 - 第22巻 p.242 -ページ画像 
員説モ出テ居リマスカラ別ニ理由ハ述ベマセヌ、委員ト云フコトニ就イテ是非置カヌト云フ事デハアリマセヌガ、今ハ置カヌ方ガ宜イト思ヒマス、ト云フノハ既ニ三十三番ガ御述ベニナリマシタ如ク、唯今配布ヲ頂キマシテ未ダ書面ヲ見マセヌノモゴザリマス、今日ハモウ三時デゴザリマスカラ之デ御休ミヲ願ヒマシテ、今一応篤ト明日双方ノ議論ヲ戦ハシマシテ、若シモ両方共一致セヌコトデゴザリマスナラバ委員ヲ置クコトニシマシテ、唯今二十何番カノ御述ベニナリマシタ如ク、何レ此議決ハ県会・府会ノ如ク多数デ決スル必要ヲ感ジマセヌ、決シマスル以上ハ満場一致ヲ以テ決スルト云フ後ニ大仕事ノ起ル場合デゴザリマスカラ、ドウゾ互ニ満足ニナル丈ノ意見ヲ述ベ聴ク丈ノコトヲ聴イテカラ御決定ヲ願ヒタイト考ヘマス、詰リ自分ノ思フ意見程善イ意見ハゴザリマセヌ、闘ハスニ従ツテ大ニ悟ル所モゴザリマス、兎ニ角委員ト云フモノハ今暫ク御見合セヲ願ヒタウ思ヒマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　素ヨリ自分ガ委員附托ト述ベマシタノモ最初諸君ノ御説ヲ承ラン時ニ述ベタノデ、其時ニモ申上ゲマシタ如ク直チニ委員ニ附托スルト云フノデナイ、諸君ノ御高説ヲ承ルト全廃ハ全廃デ何カ委員ヲ置クト云フノデ、今日直チニ委員ヲ選挙サレタイト云フノデハナイ、十分御討議ナスツタ上、到底之ヲ他ニ十分取調ヲセズ弁難攻撃シタ暁多数ニ問フテ修正ト決スルカ全廃ト決スルノハ宜クナイ、決ヲ採ル前ニ委員ニ附托シテ其附托ノ報告ヲ待ツテ決セラレタイト云フノデ、決シテ私ハ僅ノ時間ヲ争フ必要ハアリマセヌカラ、十分審議ヲ遂ゲタ上デ委員ヲ置カレタイ、ソレハ大別ヲシタ後ニ置クノデナイ、此議論ノ尽キタ所デ委員ヲ置キタイト云フノデアリマス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　此問題ハ余程重大ナ問題デゴザリマスガ、大阪商業会議所ハ此全廃説ノマダ現レマセヌ前ニ既ニ此修正説ト云フモノヲ決議致シマシタ、其後畿内部会ヲ開キマシテ畿内部会デモ矢張修正説ガ決議ニナリマシタ、然ルニ本日ノ場合デハ部会ト云フモノモ先ヅ消ヘテ仕舞ヒマシテ、各自自分ノ意見ヲ持ツテト云フヤウナ場合ニナリマシテ、部会デ決議シマシタニモ拘ラズ、京都ナドハ既ニ畿内部会ノ一ニ加ツテ居ツテ今日ハ全廃ノ意見ガ出マシタヤウナモノデ、尤モ自分ガ決議致シマシタ事柄デモソレニ優ツタ説ト思ヒマスレバ何モ差支ヘルコトハナイト信ジマス、未ダ大阪商業会議所ハ全廃トモ修正説トモ付カナイ、修正説ハ前ニ決議シテ居リマスガ、是ニ至ツテ何方ニモ改メテ方針ヲ定メテ居ラヌ、尤モ軽々ニ可否ヲ決スベキモノト信ジマセヌデ、夫故ニ二番ノ委員説ニ賛成ヲ致シマスノデゴザリマス、ドウカ此委員説ノ成立ツコトヲ希望致シマス
○五十七番（東京、中野武営君）会議ノ順序ニ就イテ少シク心得ノタメ申シテ置カナケレバナラヌ、ト云フノハ凡ソ会議ハ廃止説ガアツテ修正説ガアツテ第三読会デ廃スルト云フコトハ云ヘマスガ、之ハ品ガ変リマス、妙ナ結果ニナルト思ヒマスカラ、始メニ一言明カニシテ置カナケレバナラヌト思ヒマスノハ、先ヅ此全廃案ガ今ノ場合
 - 第22巻 p.243 -ページ画像 
ニ原案トナツタ、之ニ対シテ反対ノモノハ何カト云フト現行法デアル、所ガ此満場諸君デ現行法ヲ全廃論ト戦ハシテ現行法ガ宜イト云フ御論ナラバ、直チニ私ハ提出シテ居ル案ヲ維持シテ現行法ヲ撃ツノデアル、所ガ今迄シツヽアル所ガ満場諸君現行法ヲ守リ立テヽ宜イト申ス人ガナイカラ、私ハソレヲ撃タウト思ツテモ決シテサウデナイト、第二ニ出テ来ルノハ東京ノ会議所ノ案ヲ是認シテ御出ナサルカラ、私ハ全廃ニ同意スルモノダガ撃ツコトガ出来ヌ、物ハ比較的デ結着ガ取レル、私ガ現行法ヲ撃ツヨリ外今ノ場合ハ論ジヤウガナイ、ソコデ現行法ハ御尤ダト云フ反対ノ御方ハ遁ゲ込ム、甚ダ敵ガナクテ困ル、誰モ責任ヲ持ツテ居ラヌ、現行法ヲ無暗ニ撃ツヨリ仕方ガナイ、其場合デアツテ若シ之ヲ全廃説ニ代ユルニドウ云フ修正説ガ御出シニナルカ未来ノコトダカラ分ラヌ、今高橋君ノ仰シヤル如ク私ノ思フノモ其通リデアル、之ハ簑之ハ笠ト云ツテ除ケタラ何モナイト云フノデ、之ハ悪イ彼ハ悪イト云フ修正ヲスルト何モナク又全廃ニナラヌカ、仮ニ修正説ガ出ルト云フナラバ之ガ皆様ノ宜イモノニナツテ居ルノダト云フ、反対者ガアレバ、私ハソレニ就イテ十分議論ヲシテ見タイガ、ソレガナイ、ソコデ会議ノ順序ニナルガ此ノ全廃説ヲ以テ議題トシテ居リマスカラ、之ヲ続ケテ往ケバ一読会デ全廃説ガ通レバ全部之ヲ議サヌトシテ仕舞ウコトニナル、修正説ガ通レバ委員ト云フ者ガ出来テ見タトキニ、是レデハ詰ラヌ、アレデハイカヌト言ツテ、多数ガ修正説ヲ取ラヌト、全廃モイカヌ修正モ成立タナカツタ、竟ニ仕舞ニ営業税法ガ宜シイト云フコトニナツテ仕舞ウ、会員全体ノ不同意ノ者ガ仕舞ニ宜シウゴザイマスト云フ様ナコトガ出テ来ハシナイカト思フ、ソコデ少シ変則カハ知リマセヌガ、今ノ様ナコトニナリマスカラ、ドウカ委員ヲオ置キ下スツテ、成ル可クハ全廃説ノ是レハイカナイト云フ論ニ対シテ斯ウシタラ善イト云フ修正説ヲ持ツテ居ラルヽ御方ガ沢山委員ニナツテ、此ノ沢山出テ居ル修正ヲ御調ベニナツテ、ソレガ善イカ悪ルイカ御研究ニナツタガ宜カラウト思ヒマス、ドウゾ委員ヲ御選ビニナルナラ、全廃ト修正トドチラガ善イカト云フコトヲ戦ハス為メニ、修正説ヲ持ツテ居ル御方ヲ委員ニナスツタ方ガ宜カラウト思ヒマス
○十七番（熊本、堀部直臣君）　十七番モ只今ノ二番ノ委員説ニ同意デアリマス、全体此ノ修正説ト云フノモ沢山アリマス、皆幾ラカ違ヒガアリマス、ソレデ既ニ前ノ委員会ノ頃、十七番ハ抑々聯合会ヲスルニシテモ議題ト云フ者ガナイトイカヌカラ、是非此ノ修正ヲ調査シテ一ノ議題トシテ聯合会ニ出サウト云フコトヲ私ガ主張シマシタガ、トウトウ成立タズシテ已ムヲ得ン次第ニナリマシタ、只今五十七番ノ御話ノ様ニ、全廃ニ対スル修正ノ方ハ、言フテ見レバ此処ト云フ敵ハナクシテ、只現行法ヲ撃ツヨリ外ハナイト云フ実ニ御尤ノ御話デ全ク敵ハナイ、其敵ヲ拵ヘルノハ必要ダカラ前カラ敵ヲ拵ヘルコトヲ主張シテ居リマシタ、併シソレハ過去ツタコトデ今日ハモウ間ニ合ハヌコトデアリマス、ケレドモ只今二番ノ御話ノ如ク、是レハ委員ヲ設ケテ其敵ナル者ヲ早ク拵ヘテイカヌト、イツ迄議シテ居ツテモイカヌト思フ、速ニドウゾ沢山ノ委員ヲ議長指名デ御拵ヘ
 - 第22巻 p.244 -ページ画像 
ニナルコトヲ希望シマス
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　二十番ハ先刻来諸君ノ御議論ヲ拝聴シマシテ、修正説モゴザイマスシ、全廃説モゴザイマス、斯ノ如キコトハ軽々ニ附スベキコトデナイト思ヒマス、熟慮熟考ヲ求メル為メニ明日ハ休会トシテ、明後日開会アラムコト希望シマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　先刻五十七番ノ御説ガゴザイマシタガ私ガ心得テ居リマス所ヲ一応申上ゲテ、若シ違ツテ居リマスレバ又五十七番ノ御説ニ賛成シマスガ、抑々本日議題トナツテ居リマスノハ単純ナ改正意見ト廃止説トドツチヲ取ルカト云フ議長カラノ御宣告ニナリマシタト本員ハ思ツテ居リマシタ、ソレヲ議スルノニ別ニ議事ノ心得法ヲ御述ベニナツテ、五十七番ガ反対ノ意見モ何モナイノニ議スルト云フ様ナ御演説ガゴザイマシタガ、私ハ左様ニ感ジマセヌ、ドツチカ両説ニ決心ヲ致シテ居リマス、私ハ固ヨリ修正説ヲ取ルノデアリマス、ソレデ今回ノ議事ニ付テ議員ノ心得ニナリマスコトハ議長ヨリ宣告アラムコトヲ希望シマス
　○五番（函館、平出喜三郎君）　私モ五十七番ノ御演説ハ怪シカラヌ御演説ト思ヒマス、今日ハ只全廃スルカ修正ニスルカト云フコトヲ議シテ居ル、本員ヲ初メトシテ二十一番ハ全廃ハイカヌ修正ガ宜シイト、全廃説ニ反対シテ居ル、シテ見レバ五十七番ノ御説ノ敵ガナイノニ云々ト云フコトハ甚ダ穏カデナイ御説デアラウト存ジマス、ソレカラ修正説ニ付テ斯ウ云フコトヲ修正シロト云フ御説ハ如何ニモ御尤ト思フ、段々御意見ヲ伺ツテ見マスト、委員ヲ設ケルヨリハイツソ明後日迄此議事ヲ延バシテ、明日一日考案ヲ与ヘタガ宜イト思フ、軽卒々々ト云フ声ガアリマスガ、私ノ考ヘデハサウ軽卒デナイト思フ、抑々去月ノ八日カラ此問題ガ出テ今日此ニ至ツタノデアル、京都ノ如キハ地租ニ課スルト云フコトガ今日出マシ＠ガ、ソレハ今日考ヘル必要ハナイ、愈々全廃ナラ全廃、修正ナラ修正ニナツテカラ議シテ宜シイ、今日ノ所デハ全廃・修正ト二ツニアル以上ハ最早二週間以上モ皆サンガ御考ヘニナツテ居ルノデアラウト思フ、今日ハ委員説ハ止メマシテ、若シ之ヲ採決スルノガ軽卒デアルト云フナラバ明日更ニ会ヲ御開キニナラウトモ、又ハ明日ハ休会致シマシテ明後日ニ致シマセウトモ、全廃・修正二ツノ者ニ付テ決ヲ採ツテ、其結果委員ヲ設ケタガ至当ヂヤト思フ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　段々御説ガゴザイマスガ、明日ハ日曜日デアリマスガ、是非日曜日ダカラ休マニヤナラヌト云フコトモナイカラ、御相談ノ上デ宜シイガ、扨委員ノ設ケ所ガ善クナイト云フガ色々考ヘテ見マシタナラバ色々アル、或ハ二読会ニ移ツテ内輪ノコトヲ講究スルコトモアラウ、只今ノ所ハ総体ノコトニ付テ調査スル委員ヲ設ケ様ト云フノデアル、一刀両断ニ廃スルカ修正スルカト云フ、言葉ノ上デハサウデアリマスガ、此ノ大問題ニ向ツテ一朝廃止ト云フコトニナツタラモウ一遍議スルコトガ出来ヌノガ先決問題タル廃案説ダラウト思フ、ダカラ此ノ廃案説ニ向ツテドウカト云フト、他ニ税源ヲ求メルト云フコトニ付テハ種々考ヘガ異ナツテ居ロウト思フ、又何ントカ実行ノ上ニ付テ余程考ヘテ見ナケレバナ
 - 第22巻 p.245 -ページ画像 
ラヌ、成ル可クナラバ廃スベシト云フコトハ極希望スルコトデアルガ、併シ只無暗ニ廃スルコトヲ希望シテ見タ所ガ仕方ガナイ、之ヲ廃ス上ニ付テモ詳細ノ事ヲ能ク考ヘナケレバナラヌカラ、一ツ委員ニ講究調査シテ貰ツテ、サウシテ本会ニ委員ノ見ル所ノ報告ヲ得テ尚ホ審議シテ見タイト云フ考ヘデアリマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　御議論モ段々御坐イマスケレドモ、余程今日ハ時間モ大分経ツテ居リマス、委員ヲ置ク置カヌト云フ説ガ二ツゴザイマス、ドウカソレダケ御議決ニナリマシテ本日ハ是レデ閉会ニナリマシテ、明日引続キ開会ニナラムコトヲ希望シマス
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　委員ノコトニ付テ大分議論ガアリマスガ、一読会ノ劈頭第一ニ委員ヲ選ブト云フコトハ諸県会等ニモ例ガアリマス、別シテ意見ガ違ツテ居ル上ハ必要ト思フ、委員ガ調査シテ本会ニ持出スコトハ潰レルコトハ少ナイト思ヒマスカラ、矢張委員ヲ設ケルガ必要ト思フ
○四十一番（浜松、中村忠七君）　委員ノ事ニ付キマシテ甚ダ疑ガアリマスガ、委員ヲ置イテ此ノ調査ヲサセル或ハ講究ヲサセルト云フ御説ガアリマス、只今此議場ニアリマス者ハ全廃ヲスルカ将タ修正ヲスルカ孰レカ一ヲ取ルガ宜シイト云フ場合ニナツテ居リマス、此場合委員ヲ置イテ一読会ノ採決権ヲ委員ニ与ヘテ仕舞ウト云フコトニナリハシナイカ、若シ左様デナケレバ此ノ委員ハ全廃ト修正ト同ジ様ナモノヲ二ツ調査シテ提出スルコトニナル、其ノ二ツノ内孰レデアルカ委員説ノ方ニ伺ツテ置キタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　先刻来屡陳弁シテ御分リニナツタト思ヒマスガ、畢竟斯ノ如キ重大ナ事件デアルカラ、只今廃スルカ修正スルカノ決ヲ採ラウト云フニ付テ、ソレヲ修正スレバ斯ウ、廃スレバ斯ウト云フコトヲ合セテ調査シテ、委員ノ意見ヲ此会ニ報告スル而シテ委員ノ説ガ善ケレバソレニ極マリマセウ、兎ニ角紛擾ヲ避ケル為メニ同ジ廃スルト云フ中ニモ斯ク々々ノ理由ガアル、修正スルニモ斯ク々々ノ理由ガアル、修正説ガ宜シイ、或ハ修正ハ到底出来ヌモノデアルカラ全廃ガ宜シイト云フ、双方ノ説ヲ調査シテ報告シテ貰ウト云フノデアル、決シテソレニ議決権ヲ任セテ仕舞ウノデナイ、斯ノ如キ委員ヲ設ケテ委員ハ議場ニ向ツテ報告スルノデアルカラ敢テ差支ナイ
○四十一番（浜松、中村忠七君）　二番ノ御説明デ分リマシタガ、益々ソレデ分リマセヌ、サウシマスト二番ノ御説ハ全廃スルガ善イカ修正スルガ善イカト云フコトヲ調査シテ貰ウ委員ヲ置クト云フ以上ハ問題ヲ二ツ捕ヘテ委員ハ孰レカ撰択シテ本会ニ提出シテ貰ヒタイト云フ結果ニナル、サウシマスト只今此議場デ議シテ居ル所ノ精神ト委員ニ附托スル精神ト二ツノ間ニ必ズ衝突ガ生ズル、左様ナ精神ノ衝突スルモノヲ附托スルノハマダ時機ガ早イ、私モ只今迄考慮シテ居リマシタガ二番ノ説ニハ不同意デアリマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　マダ時機ガ早イト云フコトデアリマスガ、全廃ト修正ト一刀両断ニ決シテ後ニ委員ヲ置クト云フ御説モアリマスガ、自分ハ先決問題ヲ決シナイ前ニ調査委員ヲ置イテ其報告
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ヲ得テ、今暫ク議論ヲ戦ハシタ後決ヲ採ルガ宜イト云フノデ、直チニ置クト云フ説ヲ述ベタノデアリマセヌ、直チニ置クガ宜イト云フナラバ議長ノ御考ヘデ御設ケニナツテ宜イ、其事ハ最初述ベタ時カラ兼テ申上ゲテ居ル
○五十七番（東京、中野武営君）　今日ハ初日デアリマスカラ此儘デ閉会ニナツテハドウデス
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマス、委員ヲ極メルト云フコトノ採決ヲスルノモ明日ニ致シテハ……（「異議ナシ」ト呼ブ者アリ）
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ委員ヲ置ク置カヌノ採決ハ明日ニ延期シマス、明日ハ午前九時開会、但午前限リノコト、今日ハ是レデ散会シマス
　　午後三時五分散会

明治三十年十二月五日午前十時二十五分開議
　　出席委員　　　　　　四十八名　○氏名略
○議長（東京、渋沢栄一君）　是レヨリ開会仕リマス、昨日ノ御引続キニ付キマシテ、此委員ヲ選ブヤ否ヤト云フコトガ昨日ノ問題ノ行掛リデゴザイマシタ、其事ヲドウゾ御議決ニナルヤウニ願ヒマス
○四番（小樽、高橋直治君）　私ハ此委員ノ成立タヌ内ニ意見ヲ述ベマス、私ハ此ノ全廃説ヲ非トシテ修正説ヲ賛成スル者デアリマス、其理由トシテ是レハ世間ノ風説デアリマスガ、五十七番ニ同意ヲ求メマス、我々ハ商業社会ニ都合ノ善イ話ヲシマシテ建議シマシテモ、一向政府モ議会モ取ラヌト云フコトニナツテハ一向詰ラヌコトデアリマス、世間ノ風説ヲ聞キマスト、全国商業会議所ナル者ハ此頃迄税金ハ出シテモ宜イ、只税ノ法ガ悪ルイニ依テ修正シナケレバナラヌト云フコトハ先月迄騒イデ居ツタ、然ルニ先月辺リカラ全廃説ガ湧イテ来テ、所謂政府ヲ困ラセル為メニ政党員ノ踏台ニナルカト云フ説ヲ為ス者ガアル、ソレデ五十七番中野武営君ハ一昨日モ紅葉館ノ懇親会ニ於テ、東京商業会議所ハ政党員ニ関係ノナイコトハ特色ダト云フ御話デアツタ、成程御尤ダラウト思フ、然ルニ東京商業会議所ガ政党員ニ関係ナイトセバ、我々全国商業会議所ハ残ラズ政党員ニハ関係ハアルマイト思フ、然ルニモ拘ハラズ世間ニハサウ云フ風説ヲスル人モアル、ソレ故ニ我々ハサウ云フ風説ヲサレテ、詰ラヌ嫌疑ヲ受ケテハ実業社会ニ疵ガ附キマス、ソレデ五十七番ハ昨日三十分余モ長々御話ガアツテ能ク分リマシタ、大変得ノ往ク話デアルガ、サウ云フ風説モアルカラ相成ル可クハ全廃説ヲ撤回シテ修正説ニ御賛成アラムコトヲ希望シマス
○五十四番（福井、村野文次郎君）　五十四番ハ現行営業税法ニ付テ今日程困難ヲ感ジタコトハ恐ラクアルマイト思ヒマス、其法ノ不良ナルコトハ言フニ及ヒマセヌガ、東京・横浜・金沢等ノ全廃説ハ私ハ実ニ賛成スルコトデアリマスケレドモ、私共ハ一年ガ半年モ此ノ現行法デハ堪ヘラレマセヌカラ、全廃ヨリモ修正ノ方ガ早ク出来ヤウト思フ、修正ト決シマシタ時分ニハ意見ヲ述ベル積リデアリマスガ
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全廃ハ非常ニ望ミマスケレドモ、忍ンデ修正トシマシテ成ル可ク修正ノ早ク行ハレルコトヲ希望スルノデアリマス、ソレデ委員ヲ設ケラレルニ付キマシテ、此処デ直チニ委員ヲ選ンダ時ハ即チ委員説ト修正説ト二ツニ分レタモノト見テ可ナリデアラウト思ヒマス、ソレデ尚ホ鄭重ニモウ一偏御審議ノ上委員ヲ選バレタラ宜カラウト思ヒマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　昨日委員ノ説ガ出マシテ、昨日ハドウカ延ベテ貰ヒタイト云ラコトカラ、自然ノ結果委員説ハ今日ニナリマシタガ、今日ニナリマシテハ委員ノ出来マスル方ヲ希望シマス、併シ修正説ニ御同意ノ方ト全廃説ニ御同意ノ方ト二ツニ分レテ居リマス、全体此問題ハ先決トシテ全廃説ガ問題ニナツテ居リマスガ、ソレニモ拘ハラズ委員ハ全廃ト修正ト利害得失ヲ調ベルト云フコトニナツタラ、案外此ノ議事ノ捗取リガ善イト思ヒマス、十名出来レバ五名ハ全廃ノ方カラ取リ、跡ノ五名ハ修正ノ方カラ取ツテ調査ヲシタラ宜イト思ヒマス、或ハ変則カ知リマセヌガ其意見ヲ提出シマス
○四十六番（太田、前島平君）　昨日ヨリ色々ト御高説モ拝聴シマシテゴザイマスガ、本員ハ此委員ヲ設ケテ御調査ヲ願ウト云フ説ニ全然同意ヲ表スルノデアリマス、此場合ニ於テ委員ヲ設ケル必要ハアルマイトカ、委員ノ御調査ニナルコトニ付テ色々意見ヲ御述ベニナル様ニ拝聴シマシタガ、只今ハ此現行ノ営業税法ヲ全廃スルト云フコトニ付テ是レガ先決問題ト云フモ、成ル可ク只今討議シツヽアル場合デアリマスカラ此議題ニ付テ選ビマス、委員ハ全廃其者ニ付テ十分ノ御説ガアルモノト考ヘル、ノミナラズ此委員会ガ全廃説ヲ可決サレルヤ否ヤハ未定ノ問題デゴザイマシテ、其御報告ニ依テ判然スルコトデアリマセウト思ヒマス、本問題ハ如何ニモ重大ノ問題デ特ニ委員ニ御附托ヲシテ大体ノ方針ヲ御調査アラムコトヲ希望スルノデゴザイマス、ソレデ此ノ現行法ニ付テハ自分ノ意見モ御坐イマスケレドモ、是レハ委員ノ御報告ヲ待ツテ申述ベル積リデアリマス、只今ハ単ニ委員ヲ選ンデ調査ヲ托スルト云フノガ最モ必要デアルト云フコトヲ一言申述ベテ、御同意ヲ表シテ置キマス
○八番（金沢、渡瀬政礼君）　私ハ全廃説ノ一人デアリマシテ、昨日大体ノ考ヘハ述ベテ置キマシタガ、営業税法ノ不良税法ナルコトハ昨日諸君モ縷々御述ベニナリマシテ、諸君ニ於テモ現法ヲ誠ニ相当トスルト云フ御方ハ一人モナカツタト確信シテ居リマス、只此ニ修正ヲスルカ全廃ヲスルカト云フコトノ二ツニ分レテ居リマスガ、此修正ヲスルト云フ説モ大体不良ノ税法ト云フコトハ固ヨリ御承知ノ上ノコトデアリマスガ、其修正ヲ余儀ナクセネバナラヌト云フコトハ孰レニ其趣意ガアルカト申シマスト、今之ヲ全廃ヲスルナラバ一方ニ其代リノ税源ヲ見出サナケレバナラヌ、税源ト云フ者ハ中々至難ナコトデアル、今一ツニハ若シ之ヲ全廃スレバ翻ツテ地方税ト云フ者ニ多ク又取ラレル様ニナル、孰レヘ往ツテモ此営業税ト云フ者ハ免レヌモノデアルト云フ御気使ヒガアルト私ハ認メルノデアリマス抑々当初此ノ営業税ト云フ者ノ草案ガ出来マシタ時ノコトヲ聞キマ
 - 第22巻 p.248 -ページ画像 
スト、従来各地方ニ於テ営業者カラ取ル所ノ営業税ト云フ者ハ大略二百九万円アルモノデアルト云フ事デアル、其二百九万円ヲ負担シテ居ル者ガソレガ今度国庫ヘ移リマシテ、改メテ七百五十万円ノモノヲ負担スルト云フコトニナツタト云フ話デアリマス、是レハ国庫ヘ移ルカラサウ云フ多額ナ税ニナリマスガ、若シ之ヲ全廃シテ地方税ノ税源トナリマス時ニハサウ無暗ニ七百万円デアルノ五百万円デアルノト云フコトハ必ズアルマイト考ヘル、地方税ハ経済モ小サクアリマスシ、実際地方ニ於テ色々税源モアルコトデアリマスレバ、サウ無暗ニ沢山ノ税ヲ課スルト云フコトハアリマセヌカラ、地方税ニ移ツテ沢山掛ケラレルト云フ憂ハナイモノト私ハ思ヒマス、扨又全廃ヲスル以上ハ代リノ補ナフ所ノ税ハ何ガアルカト申シマスレバ既ニ昨日モ全廃論者ノ中カラ述ベテ居ラレマス通リ或ハ地租ヲ改正シマストカ、或ハ家屋税ニ賦課スルトカ、或ハ市街ニアル所ノ宅地租ニ税ヲ掛ケルト云フコトモアル、随分其税源ト云フ者ハ私ニシテ見レバ一向乏シカラヌモノデアルト考ヘル、殊ニ此ノ市街ノ宅地ト云フ者ハ近年諸物価ノ騰貴ト共ニ日々騰貴シテ居リマスガ、日用需要品ト違ヒマシテ尚ホ一層モ二層モ地価ト云フ者ハ騰貴スルモノデアリマス、一昨年ニアツテ一坪ノ地価ガ十円致シマシタノガ、今年二十円ニモ三十円ニモ及ンデ居ル、或ハ都会ノ地ニ至リマシテハ五十円致シマス者ガ、甚ダシキニ至ツテハ二百円モスルト云フコトニナツテ居リマス、斯ル高価ノ地ニ於テ営業ヲヤツテ居リマス、シテ見レバ其宅地ト云フ者カラ今日何程ノ税ヲ出シテ居ルカト言ヘバ、昔認メタ所ノ宅地租ト云フ者ガアル、至テ僅々タルモノデアリマス故ニ、日本全国ノ市街宅地ヲ調ベマシテ之ニ課シマシタナラバ誠ニ相応ノ税源ニナラウト考ヘル、一向税源ニハ乏シクハナイト考ヘテ居ル、去リ乍ラ修正ト全廃ト両方ニ分レテ居リマス故ニ、之ヲ容易ニ今此処デ決スルコトハ六ケシイト思ヒマスカラ、私モ余儀ナク委員ヲ設ケルト云フコトニ今日改メテ同意ヲシタイト思ヒマス、而シテ其委員ト云フ者ハ成ル可ク大多数ノ委員ヲ設ケラレタイ、通常五人トカ十人トカ云フ委員ガ設カツテ調査ヲスルト云フコトガアリマスナラバ、此度ハ十人モ二十人モ二十五人モ設ケルコトニシタイ、是レハ議長ニ於テ御指名ニナルコトヲ希望シマス、サウシテ其委員ガ色々ト調査ヲ致シマスデアリマセウガ、其結果ニ依テ余程基礎モ固マリ方ガ早カラウト思ヒマス、ドウカ成ル可ク多人数ノ委員ヲ設ケルコトヲ諸君ニ御同意ヲ求メタイト思ヒマス
○二十一番（堺、藤本荘太郎君）　私ハ委員ヲ御設ケニナリマスノモ結構デゴザイマスカ、併シ問題ガ二ツアル所デソコヘ委員サンガ出来ルト、其委員サンガ御修正ヲナサルモノデアリマセウガ、安心ノ出来ヌ話デアリマス、ドチラニナリマシテ一方ニ御片付ケニナリマシタ所ガ、矢張リ本会ニ向ツテ御報告下サル、又果シテ委員サンガ御修正アラレタモノデアルカラ、マア辛棒シテ置カウカト云フ問題デナイ、矢張リ其時ニハ意見ノ合ヒマセヌトキハ申上ゲナケレバナラヌ、サウシマスト、折角委員サンデ種々御討議ヲ下サレテ、而テ御出シ下サレタ所デ、又他カラガヤガヤ申上ゲルト云フコトニナツテ
 - 第22巻 p.249 -ページ画像 
同ジコトデアラウト思ヒマス、又只今八番ノ御説デゴザイマスガ、大多数ノ委員ヲ設ケルト云フコトデアリマスガ、ソレデアリマスレバ此総会デ尚ホ縷々御意見ヲ伺ヒマシテ、サウシテ御決議ヲ請ヒマス方ガ却テ善カラウト思ヒマス、若シ二十五人ト云フ委員サンデ直チニソレノ御修正ニナレバ、ドウ御決シニナリマスカ知リマセヌガ是レモ中々御纏メガ御六ケシカラウト思ヒマス、此方ヘ御出シニナツテ同ジニナツテ所謂輪環委員サンノ様ナ者ニナリハシナイカト思ヒマス、却テサウ手数ヲ御掛ケ下サルヨリハ、此処デ尚ホ区々ノ意見ヲ十分御述ベ下サイマシテ御決議ニ相成ラムコトヲ希望シマス、成程重大ノ事件ニハ相違ゴザイマセヌ、又相違ゴザイマセヌガ此問題ニ付キマシテ、度々御集会ニモナツテ居リマスシ、又各位ノ御脳髄ニハ十分這入ツテ居ルコトデアリマス、昨今ニ湧キマシタ問題デナイ、鄭重モ結構デゴザイマスガ大抵御意見ト云フ者ハ定マツテ居ラウト思フ、同ジコトヲ繰返シテ居テハ幾日掛ツテモ同ジコトデアラウト思フ、私ハ委員ヲ御設ケナクシテ是レガ二日掛リマシテモ三日掛リマシテモ、是丈ケノ総会デ十分ニ御討議ノ上御決議ニナラムコトヲ希望致シマス
○十三番（横浜、高橋是清君）　最早今日ハ委員ヲ置カレルコト、存ジマスデ、希望ヲ述ベテ置キマス、此ノ現行法ノ不良ナルコトハ申スニ及ハヌ事デ、只今四番カラシテ此ノ聯合会ハ政党ニ駆ラレテ政府ヲ攻撃スルト云フ様ナ斯ウ云フ精神デヤラレテハイカヌ、実業社会ノ疵ニナルト云フコトデ、実ニ御尤ナコトデ左様ナコトガアツテハナラヌ、併シ如何セン他ニサウ云フ風説ガアルニセヨ、此現行ノ営業税法ヲ忍ンデ往クト云フコトハ国家ノ為メニ宜シクナイ、已ムヲ得ズ之ヲ全廃シヤウトカ修正シヤウトカ云フノデ、決シテ政府攻撃ノ目的デハナイノデ、昨日モ一寸申シマシタガ、成程此営業税法ノ方法ニ至ツテハ其種類ニ依テ区別シテ往ケバ皆外国ニ例ノアルコトデ、之ヲ混ジテ雑多ノ職業ニ課シテ居ル所ガ営業者即チ商人ニ限リ此税ヲ課スルト云フノデ斯ウナツタ、例ヘバ資本金ニ税ヲ掛ケル、是レハ仏蘭西ノ如キ銀行ノ資本ニ税ヲ課スル、或ハ資本ト積立金ト合セタモノニ税ヲ掛ケル、是レハ宜シイノデアル、銀行ト云フ者ハ世ノ中ニ己ノ資本ト積立金ヲ広告サヘモスル位デアルカラ其高ヲ知ラセルノハ少シモ差支ナイケレドモ、其法ヲ持テ来テ一人一個人ノ組合ガ営業ヲシテ居ル其者ト云フ者ハ己ノ資本ト己ノ立前ト云フ者ヲ合セテ世ノ中ニ信用ヲ得テ商売ヲシテ往クノデアリマス、ソレ等ニ向ツテ是等ノ資本ヲ暴露スルト云フコトハ甚ダ商売人ニ取ツテ不都合デアル、又申告税ヲ用ヒルナラバ人民ニ度合ガアル、申告シタ者ヲ先ツ是レナリ取ツテ差支ナイト云フ場合ニ取ツテ宜イ、申告シテソレガ少シ気ニ入ラヌト忽チ税務吏ガ往ツテ帳簿等ヲ点検スルト云フ、是等ニ至ツテハ誠ニ商業上守ルベキ秘密ヲ暴露サレテ甚ダ困ル、殊ニ製造業抔ニ至ツテハ専売特許ヲ得テ薬品其他公ケニ示スコトノ出来ヌモノヲ以テ秘密ニ製造スルモノガ多々アリマス、ソレ等ヲ取調ベテ其秘密ヲ訐クト云フコトハ甚ダ迷惑ナコトデアル、到底現行ノ営業税法ノ如キハ今日ハ皆黙ツテ居ルカ知リマセヌガ、内地
 - 第22巻 p.250 -ページ画像 
雑居トナツテ一・二ノ外国人ガ商業ヲシテ製造業ヲシタ時分ニハ斯ノ如キ法律ニ甘ンジテ居ル者デナイ、ソレデ此営業者ノ言フノハ決シテ銭ヲ出スノガ惜シイノデナイ、金ヲ出ス点ニ付テ不便ヲ感ズルノデナクシテ其方法ガ不理不当デアルカラ取テ除ケタイト云フノデアル、ソレデ横浜商業会議所モ修正ノ意見ヲ以テ立タノデアリマスケレドモ、到底之ヲ満足ナモノニナスコトガ出来ヌト云フコトヲ見切リマシテ、已ムヲ得ズ全廃説ニ決スル様ニナツタ、故ニ強チ不用ノ金ヲ政府ガ徴集スルカラ全廃スルト云フノデナクシテ、他ニ代ハル財源ガアラバ其方デ取ツテ貰ヒタイ、横浜市ノ状況ニ依テ言ヘバ之ヲ家屋ニ割当タナラバ家屋ニ等級ガ立テ居ルカラ其手続モ簡単ニシテ、政府ノ得ル所ハ却テ現行ノ営業税ヨリモ高ガ多クナリハシナイカト云フ考ヘヲ立ツタノデ、最早今日ハ委員ヲ置クコトニナリマセウガ、委員ヲ置クニ付テ望ミマスコトハ、是レハ成ル可ク修正派ノ人カラ委員ヲ御選ビニナツテ、斯ノ如ク修正シタナラバ不都合ナクシテ是レデ善イト云フ名案ガアルカモ知ラヌ、ソレヲ私共望ムノデアル、此国費多端ノ場合ニ於テ政府ガ金ガ入ルト云フコトヲ、実業者トシテ漫ニ金ヲ出スノガイヤダト云フ様ナ感覚ヲ、政府ハ勿論一般ノ人民ニモ、又外国ニ対シテ左様ナ感ジヲ持タセルト云フコトハ余リ好マヌコトデアリマス、只方法ニ付テ苦痛ヲ感ジナイ様ニシテ、此税ガ取レル様ナ修正案ガアリマシタナラバ誠ニ妙デアリマスドウカ成ル可クハ修正派ノ人ヲ以テ委員ニシテ、斯クノ通リニスレバ全廃スルニ及ハヌト云フ修正派ノ一致若クハ多数ヲ以テ一ツノ案ヲ極メラレル様ナ委員ガ欲シイ、ソレデ此儘委員ヲ置カズニ全廃ガ善イカ悪ルイカヲ起立ニ取ツテ見ルガ善イト云フ請求ガアリマスケレドモ、良シヤ全廃ト云フコトガ否決ニナリマシテ修正説ニナリマシタ所ガ、其内ニハ色々ノ説ガアルカラ、然ラバ今日委員ヲ拵ヘテ調査ヲサセテ斯クスレバ宜イト云フコトヲ講究サセル方ガ宜シイノデアル、只我々共ノ掛念シマス所ハ各地意見ノ異ナツタ修正案ヲ持テ居ル御方ガ集ツテ、此ノ不都合彼処ノ不都合ヲ除イテ往カウトスレバ、営業税法ト云フ者ガ成立ツヤ否ヤト云フコトガ頗ル掛念ヲスル、若シ其時ニ至ツテ善イモノガ出来ナカツタナラバ実ニ実業者ト云フ者ハ不体裁至極ナモノデアル、マダ彼等ハ十露盤玉ヲ持テ居レバ宜イ、国政抔ニ喙ヲ出ス資格ノアルモノデナイ、アノ様ヲ見ロト云フ事ニナル、銘々修正説ヲ出シテ居ル御方ハ自分ノ方ガ善イト云フ考ヘモアリマス、是レハ丁度横浜市ノ一局部ニ付テ代ヘルニ家屋税ヲ以テスルガ宜イト云フ意見ヲ出シタノト同ジデアリマシテ、其地方ノ一局部ニ付テ是レナラ先ツ忍ブベシ、是レナラ善カラウト云フ意見ガ出テ居ル、之ヲ広ク此方ノ地方ニヤツテモ差支ヘヌト云フ協議ハ成立ツテ居ラヌ、又此委員ニ於テハ其点ノ協議ヲシテ一ツノ修正案ト云フ者ガ出来上ルコトヲ私ハ望ムノデアリマス、委員ガ出来マスコトト考ヘマスニ依テ、希望ヲ述ベテ置キマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　先程ノ御宣告ニ依レバ今日ハ単ニ委員ヲ置クヤ否ヤト云フコトノ採決ニ承リマシタガ、然ルニ各員ノ御議論ヲ聞キマスレバ、矢張リ全廃ガ善イカ修正ガ善イカト云フ議論バ
 - 第22巻 p.251 -ページ画像 
カリニ考ヘマス、甚ダ私ハ迷ヒマスカラ、単ニ議長ノ御宣告ノ通リ委員ヲ置クヤ否ヤト云フコトノ一方ニドウカ論鋒ヲ変ヘル様ニ議長カラ御忠告アラム事ヲ希望シマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ今ノ委員ヲ置クカ否ヤト云フコトガ、昨日ノ議論ノ続キデ昨日決ヲ採ラウト云フノヲ今日迄待テト云フ御請求カラ今日迄待ツタノデ、而シテ今日其続キノ御議論ノアルヤウニ申上ゲタノデゴザイマスカラ其御議論トシテ全廃ト云フコトハ不都合ダカラ修正ト決シテ宜カラウト云フコトハ、丁度取リモ直サズ委員ヲ設ケルニ及バヌト云フ委員説ニ反対ノ意味ニナル、別ニ私ノ申上ゲテ居ルノト議場ノ御議論ト齟齬シテ居ルマイト思ヒマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　サウシマスト、ドウ云フコトニ考ヘレバ宜シイノデスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　結局委員説ガ御多数ト云フコトデアリマスレバ委員説ガ成立チマスノデ、ソレカラ先委員ニ付テノ決ヲ採ル様ニシマセウガ、今此ニ御評議ニナツテ居ル委員ヲ立ルヤ否ヤト云フコトニ付テ論ジ、他ノ全体ニ付テ廃止又修正ノ論ヲスルノハ議長ノ申出シニ齟齬スル動議ノ様ニ見ヘルト仰ツシヤルノデスガ、サウハ思ヒマセヌト申上ゲタノデアリマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　ソレデハ私ハ議長ニ改メテ申上ゲマスガ、ソレデハイツ迄モドツチニモ片附カヌデ只時間ノ遷延スルノミデ、矢張リ小田原評議デ終ツテ仕舞ハシマセヌカト思ヒマス、ドウカドチラカニ案ヲ一方ニシテ、或ハ委員ヲ設ケルニシテモ時機ガ早イカラ全廃カ修正カドチラガ善イカト云フコトヲ十分戦ハシテ、其暁ニ委員ヲ置クヤ否ヤノ決ヲ取ルコトニナラヌト少シ弁護ヲ致シマスニモ差支ニ存ジマスガ、ドウカ相成ルベクハドチラカ一方ニ傾ムケテ御採決アラン事ヲ希望シマス
○二十二番（堺、柴谷武次郎君）　私モ堺商業会議所ノ意見トシテ修正説ヲ可トシテ意見ヲ出シテ居ルノデアリマスガ、併シ只今ノ場合ハ委員ヲ置クヤ否ヤト云フノ議論ニ渉ツテ居リマスカラ其理由ハ暫ク述ベマセヌ、所デ委員ヲ置クニ付キマシテモ昨日来段々御論ガアリマシタガ、自分ノ考ヘマス所デハ、此場合委員ヲ設ケレバ二途ノコトヲ調査シナケレバナラヌ、即チ全廃ニ対スル調査ト修正ニ対スル調査トシナケレバナラヌ、ソレヲ一方ハ取ルベキモノデアラウト思ヒマス、折角委員ガ御調査下サツタモノガ徒労ニ属スルト云フコトハ御気ノ毒デアリマスカラ、此先決問題タル全廃論ノ可否ヲ決シタル後委員ヲ置カレムコトヲ望ミマス
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　私ハ昨日本会ニ臨ミマセヌデゴザイマシテ、前日ノ実況ハ存ジマセヌデゴザイマスガ、先刻ヨリ諸君ノ御意見ノアル所ヲ概ネ承知致シマシタノデ、マダ判然ハ致シマセヌケレドモ大体ノ事丈ケハ分リマシテゴザイマス、デ貴重ノ時間ヲ費ヤスノ恐レガゴザイマスカラ多言ハ致シマセズ、簡単ニ十三番ノ説ニ同意スル者デアルト云フ事ヲ一言シテ置キマス、何ゼナラバ十三番ニモ縷々御述ベニナリマシタ如ク、横浜商業会議所ノ如キハ委員ヲ置テ修正セントシテ、ソレソレ一度ナラズ二度ナラズ度々会議ヲ
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致シマシテ修正ノ労ヲ取ツテ見マシタナレドモ、到底完全ナル事ガ出来得マセヌト云フ事ヲ見出シマシタ、已ムヲ得ズ此全廃ヲ主張シナケレバナラヌト云フ事ニ決シマシタ次第デゴザイマスデ、此ニ委員ヲ設ケラレテ委員ニ附托スルト云フ事イ御説ガ多イ様デアリマス只今十三番ノ申サレタ如クデ今ヤ全廃ト云フノニ付キマシテ修正スルト云フノ第一ニ意ガゴザリマセヌノデ、各地方ヨリ提出サレマシタ所ノ修正案ト云フ者モ此ニ御渡シニナリマシタ所ノ部分ハ粗承知イタシマシテゴザイマス、皆幾分カソレソレ御修正ノ廉ガ違ツテ居ルカト思フ故ニ、ドウカ修正ガ完全ナル事ガ出来得マス事デアリマスレバ、ドウカ十分ニ修正セラレテ本会ニ御差出シニナル様ニ修正説ヲ主張セラルヽ所ノ諸君ヲ挙ゲラレテ調査セシメラレム事ヲ私ハ希望シマスノデ、到底我々ハ最早修正ノ道ガナイト云フコトヲ断念シテ居リマス、又先程四十八番デアリマシタカ、両説ニ付テ委員ヲ設ケラレル様ニト云フ御説モアリマシタガ、全廃ト云フ事ニ付キマシテハ最早家屋税ニ致セ地租ニ致セ、此一・二ニ止マツテ居リマス他ニ余リ考慮ヲ要スル事ハゴザリマセヌト信ジマスカラ、ドウカ修正説ニ御同意ノ諸君ハ其方々ヲ挙ゲラレテ善キ様ニ修正セラレタナラバ、或ハ全廃説ノ者モソレニ御同意ヲ申上ゲルカ知レマセヌケレドモ、既ニ完全ナル修正ヲナス事ガ出来得ラレナイト云フ所カラ、横浜商業会議所ノ如キハ已ムヲ得ズ全廃ノ説ヲ出シマシタノデアリマス、又四番デアリマシタカ政党云々ノ御心配ガゴザイマシタケレドモ、決シテ横浜ノ会議所抔ニ於キマシテハ政党ノ為ニ云々ト云フ様ナ事ハ少シモナイト申シテ宜シイ、商業会議所ハ商業会議所丈ケノ理由ヲ以テ致スト云フコトハ勿論御同感ノ事デアリマス、決シテ左様ナ事カラシテ全廃ヲ持チ出シタ事デナイト云フコトヲ一言申上ゲテ置キマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私モ本問題ニ付キマシテハ意見ガゴザイマス、併シ只今ハ委員ヲ設ケルヤ否ヤト云フコトガ先ヅ初メニ問題ニナツテ居リマスカラ差控ヘテ居リマスガ、若シ只今述ベマシテ宜シケレバ述ベマスガ
○議長（東京、渋沢栄一君）　委員ヲ設ケルニ及バヌト云フノ御説デアリマスカ
○六番（佐賀、西村万次郎君）　今全廃ト修正トノ意見ニ付キマシテ、只今述ベテモ差支マセヌカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　御述ベニナリマシテモ差支アリマスマイ
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私ハ已ムヲ得ズ修正ヲ取ル者デアリマス、固ヨリ悪税ト云フ名目ヲ下スノデハアリマセヌガ、営業税ト云フ名目ノ下ニハ宜シクナイモノデアラウト考ヘマス、私ハ営業税ト云フ名目ノ下ニハ排斥スルモノデハアリマセヌ、ソレデ営業税法ノ税率ニ対シマシテ誠ニ困難ヲ来タシマスカラ其レヲ修正致シマスノデアリマス、多々御議論モゴザイマスケレドモ、本問題ヲ或ハ全廃スル修正スルトナリマシタ所ガ、詰リ請願致シマシテ当局者ノ容レル所トナラナケレバナリマセヌ問題デアリマスカラ、マダ現行法ハ困難ヲ来シマスカラ速ニ本会議所ヨリ其不完全ナ所ノ者ヲ排斥スル
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丈ケノ請願ヲ要スルノデゴザイマス、固ヨリ先ニ修正説ノ個々別々ニナツテ居ルト云フ御話モゴザイマスガ、我カ九州部ノ如キハ即チ一徹ニナツテ居リマス、併シ参考トシテ議場ニ意見ヲ出シテ居リマスガ、修正トナツタ以上ハ決議ハ決議デ従ハナケレバナラヌ、誠ニ此修正ノ已ムヲ得ザルト申シマス者ハ段々排斥シテ宜シイト云フ御意見モゴザイマスケレドモ、営業者ノ負担スル所ノ国税、土地所有者ノ負担スル所ノ国税トノ比較ヲ見マスノニ、私地方辺リニシマスト一町ノ土地ヲ所有スル者ハ其地価ガ概シテ先ヅ一千円、此ノ国税二ケ半ニシマスト二十五円デゴザイマス、所得ヲソレニ概算シマスト先ヅ百円所得致シマス人ガ二十五円ノ地租ヲ負担シテ居リマス、固ヨリ此地価ノ修正ハ先ニドナタカ御述ベニナリマシタ通リニ土地ノ繁華ニ付キマシテ、以前ノ地価ヲ附ケマシタ時トハ今日ハ変更シテ居リマスカラ、地価ノ修正ハ当局者ガ行ハレナケレバナラヌト云フ事ハ私ハ別問題トシテ希望ハ致シテ居リマス、併シ乍ラ只営業者ガ五百万円カ七百万円カノ税ヲ負担スルニ其財源ノ為メニ他ノ土地所有者ノ税ニ掛ケテ宜シイト云フ、自分ノ方斗リ考ヘテ地方ヲ顧ミナイト云フ様ナコトニナリマシタナラバ、之ヲ当局者ガ取捨スル時ニ至テ彼レト是レトノ考ヘヲ致シマシタナラバ、或ハ一方ニ偏スルト云フ様ナ嫌ヒヲ醸スカモ知レマセヌ、ソレデ私ガ今希望致シマスノハ、若ヤ修正説ガ成立チマスレバ其事ヲ一纏メニ致シマシテ、即チ議会ナリ、政府ナリニ請願スルノデゴザイマスカラ、其請願ノ結果ヲ速カニ見タイト云フ考ヘデゴザイマシテ、ドウゾ速ニ税率ガ改正サレルコトヲ希望シマス点ヨリシテ、先ヅ修正ヲ取ルノデゴザイマス、先ニ何番カノ御説ニ此修正ノ意見ヲ合セテ委員ニ附托スルノハ疑ハシイト云フ御話モゴザイマシタガ、若シ此両点ガ極マリマシタ以上ハ恐ラク委員ガ出来マシテ本会ノ決スル所トナランコトハ出来ヌコトハアルマイト私ハ考ヘマスカラ、先ヅ委員ヲ設ルヤ否ヤト云フコトヲ御決シニナツテ、其結果次第デ尚ホ意見ヲ述ベマスガ、私ハ修正ヲ希望スル者デアリマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　段々御説ヲ拝聴シテ居リマスガ、兎角御議論ガ多岐ニ渉ル様デアリマス、本席ハ昨日既ニ採決セラレントシテ委員ヲ設ケルカ否ヤト云フコトハ昨日決ヲ採ルベキノガ今日ニ及ンダト云フノデ、即チ委員説ト云フ者ハ議場ニ起ツタ一ツノ動議デ本問題ニ立入ラヌノデアラウト思フ、兎角ニ修正ト全廃トノ二ツノ御論ガ出テ少シ議事ガ延ビル様ニ思ヒマス、自分共モ此本題ニ付テハ一ノ意見ヲ述ベズニ居ル、只此議ヲ決スル前ニ委員ヲ設ケタイト云フノガ即チソレデ、御定見ノ附テアル方ハ或ハ廃スルコトハイカヌ修正ハ是ナリト云フ御説ガ出テ居リマスケレドモ、我々ハマダソコ迄認メガ附テ居ラヌ、故ニドウゾ此場合ニ於テハ委員ヲ設ケルヤ否ヤ其点ノミニ付テ御意見ガアレバ兎モ角、暫ク他ノ修正トカ廃スルトカノコトハ暫ク御制止ヲ願ツテ、只委員ヲ設ケル必要ガアルカ否ヤト云フ是丈ケノ所ニ止メテ御裁決ヲ願ヒマス、先刻十二番・十三番辺リハ修正者ノ方カラ委員ヲ取ルガ宜イト云フ事デアリマスガ、我々モ修正ノ意見ヲ提出シテ居リマスガ、若又修正ニ優ツ
 - 第22巻 p.254 -ページ画像 
タ廃スルト云フ機ヲ見出セバ、或ハ修正意見ヲ止メテ仕舞ツテ廃スル方ニ賛成スルカモ知レヌ、然ルニ修正説ヲ出シタ者カラ委員ヲ挙ゲルト云フコトニナツテハ只修正説ノミニ止マツテ仕舞ウカラ、修正説ノ人カラ委員ヲ挙ゲテト云フコトハ少シ是レハ御無理ナコトデハアルマイカト思ヒマス、我々ハ単ニ其二ツヲ極メルコトニ付テ講究シテ見タイト云フノデ、委員ヲ置キタイト云フノデアリマシテ、ドウカ単ニ委員ヲ設クルヤ否ヤト云フコト丈ケニ付テ御採決ヲ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザリマセウ、御討論モ進ンデ居リマスガ、丁度昨日三十三番ノ御述ベノ如ク昨日ノ議事ノ進ミガ此案ニ就イテ廃止若クハ修正ト云フコトハ二説ガ相応ニ銘々其要領ヲバ御述ベニナツテ居ルデス、其続キデ委員ヲ置クガ宜カラウト、此委員ヲ置クト云フニ就イテ大体ノ主義ヲ決シテカラ委員ヲ置クガ宜カラウト云フ、委員ヲ唯単ニ置クト云フ御説ニ反対ノ御意見モアツタ、其御意見ニ御同意ノ御方モアツタ、乍併先ヅ其趣意ヲ定メテ委員ヲ置クト云フ事ハ斯ル議場デ為シ得ベキ方法デナイト云フ御説ガ多クテ、此委員ヲ置クヲ是トスルト云フ御論モ御発言ニナツタ御方モ大分見ヘテ居ル、而シテ昨日既ニ之ヲ決スルカト云フ御請求ガアツタガモウ一ツ思案シテト云フ事デ今日ニナリマシタガ、今三十三番ノ御述ベノ如ク、一ノ委員説ノミデハ御発言ナサラヌガ宜カラウトハ申シマセヌガ、委員ヲ置クヤ否ヤニ就イテ此処デ決スルト云フ事ニナスツテハ如何デゴザリマセウカ　（「異議ナシ、々々々々」ノ声起ル）
○議長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ全体ノ御意向ガサウナツテ居リマスカラ、主義ヲ決セズシテ此委員ニ附托スルガ宜カラウト云フ唯今ノ二番ノ御発言デ之ニ御賛成ガ多クゴザリマスカラ、之ニ就イテ採決シヤウト思ヒマス、二番ノハドウ云フ選挙法デ、何名デゴザリマスカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　自分ノ委員説ハ唯今宣告ニナリマシタ如ク大体ヲ決シナイ前ニ委員ヲ置クト云フコト、此選挙ハ会長ノ御指名ニ任セタイ、而シテ人員ノ如キハ強イテ自分ハ議論ハナイノデアリマスガ、自分ノ委員ヲ置クト云フニ御賛成者ノ説ニハ種々ノ御説ガアリマセウ、或ハ大多数ノ委員ヲ置クトカ、或ハ十名ニスルトカ、五名ニスルト云フ御説ガアリマスケレドモ、自分ノ希望スル所ハソンナニ此委員ヲ置キマスト云フ《（脱アルカ）》ニ数名ヲ置ク位ナラバ全会ノ委員ノ調ベデ宜イト思ヒマスカラ、先ヅ九名若クハ七名、九名デ少ナケレバ十一名ト云フコトニ奇数デ置キマシテ、多分九名位デ宜カラウト思ヒマス、併シ人員ハ必ズ九名デナケレバナラヌ、七名デナケレバナラヌト云フ請求デアリマセヌ、人員ノコトニ就イテハ諸君ノ御発議何レニ極リマストモ、自分ハ大体ヲ決シマス前ニ委員ヲ置ク其委員ハ七名若クハ九名乃至十一名ニ致シマシテ、選挙ハ会長ノ御指名ニ任シテ宜カラウト思ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　左様致シタ上委員ノ主義ハ最初御述ベニナツタ如ク全体ヲ合セテ附托スル、例ヘバ廃止案ヲ是トシテ提出シ
 - 第22巻 p.255 -ページ画像 
ヤウトモ、修正ヲ斯ウ云フ方法ガアルカラト云フコトヲ論ジヤウトモ、ソレハ委員会ノ模様ニ依ル、斯ウ云フコトニ主義ヲ決定スル仕方デスカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　左様デス、夫故ニ修正ナリ廃止ニ就イテ意見ガアリマスガ、其意見ハ一度モ述ベテ居リマセヌノデ、合セテ附托スル委員ニ附托シタラ到底修正シ能ハヌカラ、委員会ハ此全廃ヲ可トスルトカ、或ハ全廃ヲ取調ベタ所ガ之ニ代ル税源ヲ見出スト云ツテモ短日月デハ見出セヌカラ、焦眉ノ急ニハ修正ヲ以テシ藉スニ数年ヲ以テシ、他日全廃スルコトニスルカ、ソレハ附托セラレタ委員ノ権限デアリマスガ、サウ云フコトハ予メドウ云フコトニナスト云フコトハ想像ハ致シマセヌ、委員ニ委托ヲシテ会議ニ報告シテ、会議ニ報告シタ暁強チ委員ノ説ガ成立ツトハ限ラヌ、十分御議シナサルコトガ出来ルノデアリマス、若シ委員ノ取調ガ十分ナラバ一向会議ニ於テ議論ナク可決ト云フコトニナル、兎ニ角委員ヲ選挙シタラ宜シイト云フ意見デゴザリマス
○三十四番（津、橋本清助君）　三十四番ハ委員ヲ置クコトニハ反対デモナイノデゴザリマスガ、既ニ先決問題ニナツテ居ル廃税説ニ就イテ委員ヲ置クト云フ説ガ出テ来マシタニ拘ラズ、茫漠タルコトデ委員ニ附托スルト云フコトニナツテ居リマスカラ、誠ニ委員ニ挙ゲラレタ人モ煩労ヲ増スノミニシテ、議事ノ纏リニ就イテ甚ダ不得策デアラウト考ヘマス、未ダ自分ノ意見ハ述ベマセヌガ、追々諸君ノ説ヲ伺ツタ上ナラ委員諸君ニ於キマシテモ採択スルニ大ニ其便ヲ得ルデモゴザリマセウカ、議事半バニシテ斯ノ如キ意見ヲ以テ委員ヲ選定セラルヽト云フコトハ、其結果甚ダ不都合デアラウト思ヒマス、昨日意見ヲ定メナイデ委員ヲ選定スルト云フコトニ反対シマシタ意思ヲ敷衍シテ置キマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　今二番ノ御申述ノ通リノ御説ニ依ツテ此委員ヲ置クニ就イテノ御動議ヲ裁決致サウト考ヘマス、サウ致スト十一名ト云フ委員ノ数ト致シテ、主義ヲ決定セズ、即チ全体ヲ附托スルト云フ委員ノ権限、而シテ十一名ヲ今二番ハ議長指名ト云フ御希望デゴザリマスガ、議長指名トスルニ就イテ此二番ノ御意見ヲ多数ニ諮フテ見マス積リデゴザリマス、二番ノ御説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○議長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザリマス、皆様、此今ノ委員ヲ置クコトハ多数デ決定仕リマシタカラ、其御指名ヲ此席カラ致スヤウニト云フ此御議決ニ従ヒマシテ、御名前ヲ申上ゲマスヤウニ仕リマス
　奥田正香君　　平出喜三郎君　高橋是清君　　宮里正静君
　藤本荘太郎君　香川真一君　　亀岡徳太郎君　岡田元太郎君
　桐原恒三郎君　大沢善助君　　中野武営君
○十三番（横浜、高橋是清君）　難有イ訳デアリマスケレドモ、私ハ公務ヲ以テ来月早々海外ノ出張店ニ視察ニ出ルコトニ内定シテ居リマスノデ、其用意等ガアリマスノデ拠ロナク欠席勝ニナラウト思ヒマ
 - 第22巻 p.256 -ページ画像 
ス、却テ皆様ノ御趣意ニ背クダラウト考ヘマスカラ、ドウカ成ルベクバ御免ヲ蒙リタウゴザリマスガ
○議長（東京、渋沢栄一君）　議長指名ト云フコトヲ御議決ニナリマシテ申上ゲル直グ様今ノヤウナコトニナリマスト、私ニ於テ此処デ畏マリマシタト云フコトハ申上ゲ兼ルノデスガ、ソレハドウカ第二ニ生ジタ事情トシテ、委員会デ御相談ヲ願ヒタウゴザリマス――ソレデハ十一名ノ委員ハ今申上ゲマシタ通リデゴザリマスデ、御苦労ナガラ御相談ヲ願ヒマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　何時委員会ノ報告ガゴザリマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ今此処デ時日ヲ約シマスコトハ御出来ナサイマセウカドウデセウカ、委員会ノ模様ニ依ツテ一日二日ハ御猶予ガナクテハナラヌデゴザリマセウ、委員会ノ経過ニ依ツテ尚開会ノコトヲ申上ゲルト云フコトデ取極メザルヲ得ヌト思ヒマス
○五十番（京都、中野忠八君）　誠ニ委員諸君ハ御苦労デゴザリマスガ願クバ今日カラ御掛リ下サレマシテ一両日ト云フコトハ極メテ頂キタイト思ヒマス、何分当節柄ノコトデゴザリマスカラ
○議長（東京、渋沢栄一君）　引続イテ今日此後トデ委員会ヲ御開キ下サルヤウニ
○二番（名古屋、奥田正香君）　兎ニ角十一名アルト云フコトデ唯今御注文丈ノコトヲ誰ガ御答スルト云フコトハ出来マセヌ、後トデ引続イテ委員会ヲ開キマス趣意デ成ルベク早ク致スト云フコトヨリ、誰ガ致シテモ申上ゲヤウガアルマイト思ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　今時ヲ急グガ宜カラウト云フ御注文ガゴザリマスガ、尚本会ノ御意向ヲ委員会ニ向ツテ斯様ナ御望ミガゴザリマスト云フコトハ御通知ハ申上ゲマセウ、併シ何時間ニ御答ヘスルト云フヤウナコトハ私ヨリ御注文スルコトモ六ケ敷ゴザリマス、委員会ノ御模様ニ依ツテ更ニ御通知ヲスルト致シマセウ、最早時ガ至ツテ居リマスガ、如何デゴザリマセウカ此処ニ段々協議会デモ附シタイト云フ問題ガ皆様カラ出テ居リマス、既ニ東京ニモ丁度其意見ノ取調ベタモノヲバ御一覧ニ入レテゴザリマスガ、玆ニ暫時デモ協議会デモ開クト云フコトニ致シマセウカ、余リ時ガゴザリマセヌカラ更ニ又其御約束ハ別ニ致スト云フコトニシマセウカ
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　実ハ自分ハ三谷君ノ御意見書モ唯今頂戴シ、マタ又東京商業会議所ノ相談会ノ御方ノ御意見モ昨夜頂戴シマシテ、未ダ熟読致シマセヌノデ
○二番（名古屋、奥田正香君）　尚一言述ベタイノハ委員会デ甚ダ議事ノ規則トシテハ如何ナヤウニ思ヒマスガ、御指名ヲ願フ前ニ会議所名ヲ以テ願ヒタイト云フコトヲ申シ漏シマシタ、ト云フノハ場合ニ依リマシテ下調ベ等其他ニ就キマシテ或ハ書記長ヲシテ当ラシメルトカ、同会議所デゴザリマスレバ同意見デゴザリマスカラ、一時ノ差支ガゴザリマス時ニ同会議所ナラ差支ナイト云フ御融通ヲ願ツタラ捗取リニナラウト思ヒマス、是迄ノ慣例ニ依リマスト多クハ人名デ委員トナリマスレバ御附托ヲ受ケテ人名デスルノガ当然デアリマスガ、畢竟営業税ノ委員ヲ選ビマスニ会議所ノ名デ選ビマシタラ誰
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ガ出マシテモ講ハヌトナリマスカラ、此議席デ御選ビニナルノハ人名デ御選ビニナルガ当然デアリマスガ、其融通等ノ如キハ御黙許ニナルヤウニ致シタイト考ヘマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　別ニ御異議ゴザリマセヌナラバ、ソレハサウシテ務メラレルト云フコトニシテ差支ナイト考ヘマス（「異議ナシ、々々々々」ノ声起ル）
○議長（東京、渋沢栄一君）　御多数ガ御異議ガゴザリマセヌナラバ、今二番ノ御望ミ通リニ私ハ人ニ就イテ申シマシタガ、或ル場合ニハ其人、其商業会議所ノ御同席ノ御方ガ代理シテ、御話ニナリマスヤウニ……
○三十四番（津、橋本清助君）　御報告ノ時期ヲ今御決シニナルト云フコトモ六ケ敷コトデハゴザリマセウガ、乍併来月御旅行ノ方ガ欠席ノ御心配ガアル位ノコトデ、今一日二日デ御報告ガ出来ルト云フコトデアリマスカ、或ハ来年ニ及ブト云フヤウデアリマセウカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ少シ御議論ニ渉リ過ギハ致シマセヌカ
○三十四番（津、橋本清助君）　全ク議論デアリマセヌガ、此処デ委員サンガ会ヲ御閉ヂニナル前ニ御寄合下サツテ、今明日調査シテ、明後日出テ来ルト云フコトニナツタラ宜カラウト思ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　何レ両三日中ニ開会致スコトニセネバナリマスマイ、サウ委員会デモ長イ日子ヲ費シテ調査サレルコトハアルマイト思ヒマス、唯十三番ノ御述ベニナツタノハ前支度ガアルカラト云フコトデ、一日出レヌト云フノデ為ニ此委員会ガ長ビクト云フコトハ御懸念ニ及ビマセヌト思ヒマス
○三十番（岡山、香川真一君）　私モ御指名ノ委員ノ一人デアリマスガ時日ヲ極メテドウト云フコトハ六ケ敷ト思ヒマス、一月モ一年モ掛ルトハ決シテアルマイト思ヒマス、之ハ私一人ノ考デゴザリマスガドウシテモ長イコト掛ルコトハ出来マスマイト思ヒマス、極メヤウト云コトハ例ヘ委員ガ寄合ツテ相談シテモ六ケ敷ト思ヒマス、一言申シテ置キマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ時間ガゴザリマセヌデ、協議会ノコトハ委員会ノ進ミノ模様ニ依ツテ又御相談致スト仕リマス、何レ委員会ノ経過ノ模様デ早速開会ノコトヲ御通知致シマスカラ、委員諸君ハ尚御残リ下サリマシテ後トノ委員会ノ御都合デ御評議ヲ願ヘタウゴザリマス
　　午前十一時四十五分散会

明治三十年十二月六日午前十一時開議
　　出席委員　　　　　四十八名　○氏名略
○議長（東京、渋沢栄一君）　是ヨリ開会仕リマス
○五十七番（東京、中野武営君）　本員ハ委員長トシテ委員会議ノ結果ヲ御報告致シマス、昨日諸君カ委員ヲ撰挙セラレテ営業税法ニ関スル取調ヲ御付託ニ成リマシタカラ、直チニ委員会ヲ開キマシテ我々委員ハ段々審議ヲ尽シマシタガ、其多数ハ修正ニ致シタガヨカロウ
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全廃ハ宜シクアルマイト云フ事デ、全廃説ハ少数デゴザリマシタ、併シ其修正ノ意義ニ付キマシテハ一様デゴザリマセヌ、或ハ全廃ハ望ム所デアルガ、全廃ニ至ル迄ノ間現行ノ法律ノ儘デオカレテハ困難ニ耐ヘラレンカラ、目下ノ急ヲ救フ為メニ是非共修正ヲシテ貰ハネバナラヌト云フモノト、又全廃ハ不都合デアル、営業者ト云フモノハ営業税ヲ負担スルノガ当然デアルカラ、不都合ナ所ハ修正ヲ加ヘテ存在スルガヨイト云フモノトアリマシテ、概シテ申セハ修正説カ多数デゴザリマシタ、ソーシテ其修正案ト申シテモ各会議所カラ御回ハシニ成タモノカ沢山アリマスカラ、是等ノモノヲ取リ集メテ組立テル事ト致スガヨイカ等ノ議論カアリマシタガ、未ダ本会議ノ意向ヲモ見マセンデ委員会ニ於テ修正案ノ取調ヲ致スノハ早カロウト云フコトデ、兎モ角全廃・修正ノ両説ヲ本会ニ問フテ後、若シ本会ニ於テ修正ニ決セハ、更ニ委員ヲ設ケテ取調ヲ致スコトヽシタ方ガヨカロウト云フコトデ終リマシタ
○十七番（熊本、堀部直臣君）　只今委員長ノ御報告ニ因テ委細承知致シマシタガ、委員会ニ於テ全廃説ハ消滅ニ成リ、修正説ガ多数トナリマシタハ本員ノ満足ヲ表スル所デゴサイマス、就テハ昨日ノ委員諸君ヲ尚修正案ノ調査委員ニ願ヒタイト存シマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　只今ハ委員会ノ結果ノ御報告ニ過キマセンカラ、其御報告ニ基テ修正ニスルカ全廃ニスルカヲ定メテ後、十七番ノ御説ノ通リ修正案ノ調査ヲ委員ニ付託スル事ニ致シタイト存シマス、マダ本会議ノ結果ヲ見マセンデ、修正案ニスルカ全廃案ニスルカ分ラヌ訳デアリマスカラ、是ヨリ十分討議ヲ尽シテ後十七番ノ御説ノ様ニ願ヒタク思ヒマス
○十番（知多、天野伊左衛門君）　私ハ十七番ニ賛成致シマス、只今此テ修正ト全廃トノ両説ヲ闘ハシマスルハタダ混雑スル斗リデ、殆ド昨日ノ委員会ノ経過ヲ再ヒスルト同様ノモノダロウト思ヒマス、修正・全廃ノ可否ヲ決シタ所ガ修正説ガ一様デゴザリマセン、幾個モアリマスカラドレヲ取テ宜イ事カ分ランカラ、十七番ノ御説ノ通リ委員ニ付託シテ一定ノ方針デ取調ヘマシテ、是ヨリ外良案ナシト云フ迄ノモノヲ作テ貰フ事ヲ希望致シマス、最初委員会ニ付託シマシタ時ニハ何ノ制限ヲモ加ヘマセンカラ、委員会ハ当然斯様ノ事迄ヲ為シ得タノデ有ロウト思ヒマス、併シ今更致シ方モゴザリマセンカラ、速ニ委員ニ付託シテ修正案ヲ一定シマシテ、後ニ全廃案ト論議ヲ闘ハス事ヲ希望致シマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　私ハ三十三番ニ同意致シマス、即チ委員会ノ報告ニ付テ先ツ決議シマシテ、果シテ委員会ノ意向ノ通リ修正ニ決シマスレバ、ソコデ委員ニ付託スル事ニ致シタイ、ソウシテ其修正委員ハ人員ノ都合モアリ、又可成修正説ノ異ル人ヲ挙ケタ方ガヨカロウト云フ様ナ都合モアリマスカラ、先ノ委員ニ付託スルヨリハ、他ノ人ヲ加ヘテ改撰致シタ方ガ宜シカロウト思ヒマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　私ハ三十三番ト同感デゴザリマス委員会ハ広イ権限ヲ有シマシタカラ修正案ヲ一定スル事モ為シ得タデ有リマシヨウガ、委員会ニ於テ修正説ニ決シタトハ申シナガラ、
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実際全会一致ト申ス訳デゴザリマセン、随分異論モアリマシタ、殊ニ修正説ヲ執ル御方デモ焦眉ノ急ヲ救フ為メ修正シタイトカ、修正説ノ方ガ政府ガ容レ易カロウ、全廃案ハ其筋ノ採納ガ如何デアルカト云フ如ク其実ハ全廃カ宜シイト云フ御考ノ様ニ思ハレマシタ、夫故ニ委員会ニ於テ広イ権限ヲ有シナガラ修正案ヲ一定スル事迄ヲ為シカネタノデアリマス、本会議ニオキマシテモ全廃ヲ主張スル方ガアルカモ知レマセン、兎ニ角私ハ全廃ヲ可ト致シマス、因テ本会ニ於テ修正説ニ依ルカ全廃説ニ依ルカヲ議決スル事ヲ至当ト存シマス
○三十九番（宇都宮、田中勝次郎君）　私ハ修正説ノ一人デ有リマスガ併シ修正ナリ全廃ナリ何レナリトモ、我々ハ共ニ同一致ノ運動ヲ為ス事ガ必要デアリマスカラ、私ハ其点ヨリ委員会報告ニ基テ全廃・修正ノ可否ヲ議決セラレンコトヲ望ミマス、即チ其以上修正案ノ調査ヲ委員ニ付託シタ方ガ結果ガ宜シカロウト存シマス
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　本員ニ於テ誤解アリシヤ知レサルモ本員ノ信スル所ニ依レハ、昨日委員会ニ附託致マシタ主意ト申シマスルハ、全廃カ修正カノ先決問題ヲ一定シタ上、若シ修正トナリマシタナラハ如何ナルモノヲ修正案ト致スヘキカヲ撰定シテ御提出ニ成ルヘキ筈ト心得マシタ、而ルニ只今ノ御報告ハ単ニ修正ト全廃トノ二説アルコトヲ御報告ニ成タニ過キマセン、誠ニ委員会ノ決議ノ御報告ハ御苦労様デアリマシタガ、御骨折ガチト物足ラヌ様ニ思ハレマス、此点ニ付テ会頭ハ如何ニ御承知ニ為リマシヨウカ伺ヒタイ只此報告ノミデハ殆ント昨日委員ニ附託シタ時ト同一ノ状態ニ復シタモノヽ様ニ思ハレマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　昨日委員諸君ニ御附託致マシタハ大体ノ制限ヲ立テタ斗リデ、必ズ修正案ヲ出スベキコト迄ヲ託シタトハ云ヘマスマイト考ヘマス、私ハ修正案ヲ出ス迄ノコトヲ為スノガ悪イトシテ申ス訳デハアリマセンガ、修正案ヲ出ス迄ノ責ヲ負ハセハセナカツタデ有タロウト申ス丈テゴザリマス、夫故唯今ノ順序トシテハ全廃・修正ノ何レカヲ委員会ノ報告ニ基テ決議シタ後、更ニ委員ヲ撰テ何レノ案ヲ取ルヘキカヲ定ムルガ順序テアラウト存ジマス
○三十五番（神戸、岡田元太郎君）　私ハ修正説ヲ可ト致シマス、議事ノ進行ニ就キマシテハ三十三番ト同感デゴザリマス
○二十四番（栃木、石塚新吾君）　三十三番ニ同感修正・全廃ノ決ヲ取ツテ修正説ニ致シマシタ上ハ修正案ノ調査ヲ附託スル事ヲ望ミマス
○四十七番（山形、佐治吉左衛門君）　私モ一個ノ考ヲ以テ居リマスカラ、三十三番ノ申ス通リ委員会ノ報告ハ之ニ止メテ、更ニ本会議ニ移テ片付ケラレン事ヲ希望致シマス
○三十四番（津、橋本清助君）　私ハ昨日委員ヲ撰ンデ先ツ修正案ヲ一ツニ決シタイト云フコトヲ発議致シマシタガ少数トナリマシテ、今日又昨日ト同様ノコトニナリマシタ上ハ、修正カ全廃カノ一ヲ先決問題トシテ決スルコトニ致シタイ、本年広島聯合会ノ決議デ修正スルト云フコトニ成リマシテ、私共ハ修正案ヲ調ベマシタ、処ガ色々差支ガ出来マシテ、変ツタ物ヲ作テハ又変ヘ、賽ノ河原ノ様ナ事ヲシテ見マシテモ、トテモ完全ナ物ガ出来マセンデ、結局現行法ノ方
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ガ善イト云フ様ニ為リマシタ、然ルニ現行法ハ実施後大ニ困難ヲ生シマシテ、如何ニシテモ此儘デハ置カレナイト云フコトガ分テ居リマスカラ、全廃ニスルヨリ外致方ガゴザイマセント考ヘマシタ、併シ全廃ト云フコトハ議会ノ通過ガ如何カト思ヒマスカラ、第一策トシテハ全廃説ヲ取リ、第二策トシテ修正案ヲ提出スル事ニ成リマシタガ、実ハ全廃ヲ望ム者デゴザリマス、夫故全廃カ修正カノ先決問題ヲ決スル事ヲ望ミマス、偖全廃ニ付テ諸君ノ意向ト委員会ノ報告トニ因テ考ヘマスレバ、全廃スルト云フ斗リデハ政府ガ採用セナイデ有ロウ、ソコテ廃止スルナラハ之ニ見代ル税源ヲ設ケネバナラヌト云フ二点ヲ御心配ノ様デアリマスガ、政府ト交渉スル場合ナラバダガ、会議所トシテハ只今ノ場合ニ一歩ヲ譲ルト云フコトハ入ラント思ヒマス、徒ラニ意見ヲ曲ケルト云フコトハ惜ムヘキコトデアロウト考ヘマス、又此税ニ代ルモノヲ見出スコトヲ御心配ノ様ダガ、財政整理ヲ託セラレタナラバソー云フコトモ必要テ有ロウガ、併シ商売人トシテハ全廃ヲ望ムモノハ全廃ヲ主張スルガヨイ、ソンナ余計ナコトハ入ルマイ、若シ名案ガアレバダガ、私ハ之ニ代ル名案ハナイ、又各会議所提出ノ修正案ヲモ亦全ク同意スルコトガ出来マセン、只此税法ヲ廃シタイト云フコトヲ申スノデゴザリマス
○三十八番（宇都宮、上野松次郎君）　廃棄ニ付テハ議論ニ及ヒマセン然ラハ修正ト云テモ矢張名案ハゴザリマセン、夫レ故修正・全廃何レトモ議論ハ入ラント思ヒマスカラ、三十三番ト同感、速ニ採決アランコトヲ望ミマス
○二十三番（桑名、平野美純君）　三十三番ニ賛成、先ツ修正ト全廃ノ問題ヲ決シテ後、委員ヲ設ケル運ヒニ致シタイ
○四十三番（八王子、大野宗兵衛君）　私ハ八王子商業会議所ノ委員デアリマスガ、八王子商業会議所デハ最初修正ノ決議デアリマシタガ段々調ヘテ見マスルト議論ガ六ケ敷ナリマシテ、全廃ノ議論ガ盛デアリマシタ、然ルニ聯合会デハ修正ト云フ事ニ成リマシタカラ夫ニ依テ修正案ヲ出シマシタガ、東京商業会議所デハ全廃案ヲ提出致サレマシタ、此事ハ八王子商業会議所デハ大賛成デゴザリマス、実ニ東京商業会議所委員ノ報告セラルヽ通リ、土地課税ノコトハ至テ名案ト存シマス、明治六年九月改正ノ頃ハ米ノ代価ハ五円内外デアリマシタ、然ルニ只今デハ十円以上ニ上リマシタノヲ見マシテモ、土地ノ再丈量ヲシテ課税スルト云フコトハ至当デゴザリマス、尚関西地方ノ如キハ丈量ガ至テ寛大デアリマシテ、私ガ商業視察ノ為メ先年遊歴致シマシタ時ニ、関西地方デハ一反デ十俵位米ヲ収穫スルト聞キマシテ、余リ不思議ノ事ト思ヒマシタガ、夫ハ一反歩ガ六百坪位ニ丈量ガ伸ビテ居ルカラダト聞キマシタ、旁々以テ五十七番ニ賛成致シマス
○五十七番（東京、中野武営君）　敗軍ノ将兵ヲ語ラズト聞キマスガ、敗軍ノ卒兵ヲ語ルハ尚更謂レナキコトデアリマスガ、只今ハ実ニ修正・全廃何レニカ決セラルヽ分ケ目デアリマスカラ、此ニ全廃説ニ付テ最後ノ論弁ヲ試ミマス、即チ全廃説ニ反対セラルヽ理由ニ付テ弁駁ヲ加ヘルノデアリマス、偖テ全廃説ニ反対セラルヽ理由ヲ挙ケ
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マスレハ、之ヲ要スルニ営業税法ヲ全廃シタナラハ他ニ之ニ代ル所ノ税源ヲ発見セナケレバナラヌ、苟モ然ラサレハ無責任ノ言動デアルト云フコトヽ、営業税ヲ置カナカツタナラバ地方税トシテ苛重ナル負担ヲ課セラルヽ恐レガアル、夫レナラハ寧ロ国税トシテ負担スル方ガヨイデハナイカト云フコトヽ、営業税ハ如何ニモ新シイ税法デアルカラ官民共ニ不慣レノ為メニ困難スルノデアル、コヽ両三年ヲ過キタナラハ大ニ是等ノ憂ガナクナル事デアラウト云フノ三点ニ帰スルト思ヒマス、第一、全廃ハ至当デアル、望ム所デアルカ、他ニ之ニ代ルモノガ見出サレナイカラ不本意ナガラ全廃ヲ不可トセナケレバナラヌト云フ理由ガアリマシヨウカ、泣ク子ト地頭ニハ勝タレナイト云フ時代ナラバ知ラズ、今日平等自由ノ昭代ニ於テ悪イ者ト知リナガラ何故之レヲ全廃スルト云フコトヲ云ヒ得ナイノデアルカ、我輩ハ代リノ物ヲ膳立テシテカラデナケレバ云フコトモ云ヒ得ナイト云フ様ナ、児戯ニ類シタ事ハ必要デナイト思ヒマス、成程財政一般ニ関スル問題ナラハ財政一般ニ付テ論議スルノガ至当デアリマシヨウ、租税全般ノ問題ナラハ租税全般ニ付テ申スノガ相当デアリマシヨウ、ナレトモ営業税ト云フ如キ一局部ノ問題ヲ議スルニ付テ、何ゾ之レヲ全廃セントセバ先ツ之ニ代ル物ヲ提供セナケレバ無責任ノ言動トナルト云フ理論ガアリマシヨウヤ、尚仔細ニ観察致シマスレハ、全廃ヲ不可トスル論者ト雖トモ概ネ減税ノ意味ヲ存スル様デアリマス、若シ一方ニ於テ営業税率ヲ低減致シタナラハ其ノ穴ハ何ヲ以テ埋ムルノデアリマスカ、税額ヲ減シテ之ニ代ルモノヲ与ヘナケレハ政府ノ同意シ能ハサル事情ハ何ゾ全廃説ト違フ事ガ有リマシヨウ、其ノ結局ニ於テ全廃説モ修正説モ五十歩百歩ニ帰着シマス、恐ラク反対論者ノ御説ハ自家撞着ニ終ル事ナランカト存シマス第二、営業税ヲ全廃ト致シタナラハ地方税ヲ重ク負担スルコトニナルダロート云ハレマスハ故ナキ事デアリマシヨウ、凡ソ国税トシテ悪税ナリト決セラルヽモノガ地方税トシテ良税ナリト云フコトハ出来マスマイ、若シモ当局者ガ之レヲ顧ミナイデ地方税ヲドシドシカケル事ト成リマシタナラハ夫レハ又其時ニ臨ンデ之ヲ排斥スルノ途ガアリマシヨウ、惟フニ会議所ノ存在スル所ハ概ネ市デアリマス、ソウシテ市税ハ営業税ノ百分ノ五十迄ヲ附加税トシテ取リ得マスル又タ課税ノ方法ヲサヘ別ニスレハ、附加税以外ニ於テ幾様ニモ営業者ニ課税スルコトガ出来マスル、故ニ営業税ヲ負担スルハ地方税ノ重課ヲ免ルヽノ途ナリト御承知ニ成ルノハ大ナル誤謬デアリマシヨウ、必シモ営業税ヲ存スレハ十分ノ二以上ノ税額ヲ課セラルヽ恐ナシト云フコトハ出来マセン、我輩ハ決シテ徒ラニ税額ノ多キヲ厭フ訳デハアリマセン、第三、官民ノ不慣レハ即チ不慣レデアリマシヨウ、ナレトモ如斯紛擾ヲ来シマスル所以ハ一ニ不慣レニ因ルモノトハ申サレマセン、例ヘハ九州地方ハ比較的穏カデアリマシタガ概シテ他地方ハ不穏デアリマシタ、九州地方ノ比較的平穏デアリマシタ真相ハ知ルコトヲ得マセンガ、惟フニ当局官吏ノ取扱上ニ寛厳ノ違ガアルカラト信シマス、抑モ此取扱官吏ノ手心如何ニ因テ伸縮自在ナル法令ノ如キハ、国民ノ権利財産ニ関スル税法トシテ尤モ悪法ノ
 - 第22巻 p.262 -ページ画像 
悪法タル所デアルト断言シテ憚リマセン、若シ此上ノ手心ガ上手ト成リマシタナラハ我々国民ハ如何ニ多クノ税ヲ課セラルヽニ至ルヤモ計ラレマセン、夫故ニ我々ハ税法其モノヽ不可ナル事ヲ根本的ニ唱道スルモノデアリマス、先般来屡々喋々致マスル如ク、勤勉ニ課税スルト云フコトハ甚タ宜シキヲ得マセン、又我国ノ如キ今後将ニ発達セントシ且ツ発達セサルヘカラザル国情ヲ有スルモノニ在テ、彼ノ課税ノ名誉ノ如ク思ヒ居ル国ノ制度ヲ移シ来テ、之レヲ我国ノ如キ財政整ハス諸般ノ準備正確ナラサル社会ニ施行シ、只其幾分ヲ修正加除シテ以テ良好ナル結果ヲ挙ケントシマスルニハ蓋シ至難ノ業デアリマセンカ、寧ロ全廃ト云フコトニスレバ早晩其目的ノ達スル時期カ到来スルノデアル、仮ニ姑息ニ今此修正ヲ致シテサウシテ実ニ商売上トシテ阻害ニナル忌ムベキモノヲ一部デモ今日甘ンジテソレデ宜シイ、是デナラバ我慢シテ受ケマセウト云フコトニナレバ遂ニ一年二年ノ一時ヲ凌ガントスルガ為メ永遠ノ商売上ノ阻害ト云フモノヲ自ラ甘諾シナレバナラヌノデアル、而シテ此廃案説ニ対スル修正説ト云フノハ必ズ委員ガ御出来ニナツテ御報告ニナルト思ヒマスガ、夫等ニ就キマシテ私共今何ノ案ヲ以テ私ノ反対ト見做シテ論シマセウヤ、此問モ甚ダ諸君ノ御感触ヲ害シタガ、私ハ真実サウ思フテ居ル、今日迄ノ処ハ敵ナクシテ戦ヒヲスルヤウナモノダト申シマシタ、廃案説ガ金城鉄壁之ニ当ルモノガナイト申シタノデハナイ、私ノ論ハ案ガナイカラ撃チ方ガナイ、然ラハ其以上案ヲ御出ニナツテ相当サル之ニ代ル案ガ出来マシタラ、ソレヲ拝見シテ感服スルカ、ソレニ対シテ意見ヲ申スカ、未来ノコトハ今申スコトハ出来マセヌ、廃案説ニ対シテ御反対ヲ是迄承ル廉々ニ対シテハ右申シタノデ尽キテ居ルト考ヘマスカラ、其他ノ些細ナルコトガアリマスガ申ス必要ガナイ
○五番（函館、平出喜三郎君）　唯今中野君カラ反対ノ御演説ヲ承リマスシ、一体先ニ報告ヲ委員長ガナサレル際ニモ御話申サウト思ツテ居リマシタ、最早皆様カラソレガ御述ベニナリマシタカラ、唯今中野サンハ三点ノ意見ヲ挙ゲテ御攻撃ガゴザリマシタガ、第一番ニ中野サンノ仰セノ件ノ是ニ代ルベキモノガナケレバイカヌト云フ説ヲ駁シタイ、如何ニモ私等モ全廃説ニナレバ或ハ代リヲ見付ケテモ宜イト云フコトヲ申上ゲルカ知リマセヌ、ソレハソレトシテ、修正説ガ二割モ三割モ減ツテ居ル、ソレヲ補ヒヲセヌノガ自家撞着デアル斯ウ云フ御説ヲヒドク御論ジニナツタヤウデアリマスガ、然ルニ私ハ是レコソ中野サンガ自家撞着デナイカト考ヘル、何故ナレバ御同君ハ始終敵カナイト云ツテ居ル、方々カラ来テ居ル修正説ガアリマスカラ之ヲ一切調ベ上ゲマシタラ、或ハ二割減スト云フノモ一割減ズト云フ分モアリマセウシ、或ハソレヨリ余計ニナツテ居ル分ガアルカ知レマセヌ、ソレニ向ツテ修正説ハ三割・四割減ツテ居ル、ソレハドウダト云フコトヲ御論ジニナリマスガ、是コソ御自分ノ仰シヤル如ク敵ガナイモノニヤツテ居ル、是ガ幸ニシテ修正説ガ成立ツテ、サウシテ委員ガ出来マシテ、サウシテ其委員ノ拵ヘタモノガ果シテ二割モ三割モ四割モ減ツテ居ルト云フナラバアノ論ハ或ハ宜イ
 - 第22巻 p.263 -ページ画像 
カ知リマセヌ、今日何モ修正説ハ二割ヲ増シテスルカ五割ヲ増シテスルカ、モノヽナイモノニ向ツテ修正説ハ四割減ツテ居ル、自家撞着ダト云フ、御自身ガ敵ガナイト云フ事ヲ御論ジニ拘ラズ、之ニ向ツテアヽ云フコトヲ吐クノハ御自身ガ自家撞着シテ居ルノデナイカト云フ私ハ考デゴザリマス、皆様ハドウ云フ御考カ知リマセヌガ、決シテ三割減シタ四割減シタト云フコトハ出テ居ラヌ、或ハ中ニハ三割減シタ所ガアルカ知ラヌ、其中減ラヌモノガアルカ知ラン、減ラヌモノヲ採ルカ減シタモノヲ採ルカト云フコトハ少シモ今日ノ議場ニハ現レテ居ラヌ、ソレカラ二番ニ地方税ノコトヲ御論ジデゴザリマシタガ、此地方税モ如何ニモ私ガ申上ゲマシタノヲ少シ御聴取リ違ヒニナツテ居リハセヌカト考ヘマス、私ノ申スノハ営業税ト云フモノハ今始メテ出タト云フヤウニ皆様ガ御考ニナルガ、如何ニモ国税トシテハ今始メデアルケレドモ、地方税トシテハ是迄地方ニヤツテ居ルノデアル、営業税ガ出来タ為ニ二割ト云フ制限ヲ立テタノデアル、若シ此営業税ガ廃スルト云フコトニナレバ取リモ直サズソレガ地方ニ戻ツテ来テ同ジモノヲ出スヤウニナル、同ジヤウニ果シテ出スモノナラバ自分ノ気ニ依ルガ宜イ、地方税ハ本年千円出シタモノハ翌年二千円出サナケレバナラヌカモ知レヌ、地方ニ依ツテ年年地方ノ県会ニ於テ極メルカラ安心ガ出来ナイ、斯ウ云フ趣意ナノデゴザリマス、決シテ唯今中野君ノ御演説ニナツタヤウナ訳デハナイノデゴザリマス、ソレカラ是デハ政府ガ採ルデアラウカ採ラヌデアラウカト云フコトハ要ラヌ、此決心デアルト云フテ向フヘ任シタラ宜イ、斯ウ云フ中野サンノ御説、或ハ此役人ノ手心ニ依ツテ左右ノ出来ル税源ニハ服従ハ出来ナイ、如何ニモ御尤ナ説デゴザリマス然レドモ今日日本ニ行レテ居ル法律ニ依ツテ此権利ノナイモノハ恐ラクアリマスマイ、一反歩ガ六百坪アルト云フ御説ガゴザリマシタガ、家ノ一反歩ガ六百坪アルト云フコトハ恐ラクハナカラウト思ヒマス、アルトスレバ之モ役人ノ手心ニ出タモノト思ヒマス、独リ今年カラ行レル所ノ煙草税、是等ノモノニハ役人ノ手心ノ甚シキモノガ行レルタラウト思ヒマス、役人ガ鑑定シテ買上ゲル斯ウ云フ税、必ズ其役人ガチヤント公平ナモノヲ以テ此煙草ハ幾ラ、彼ノ煙草ハ幾ラト云フ観察シタモノハ恐ラク違ハヌコトハアリマスマイ、其間ニ役人ノ手ヲ経テ色々ノコトガ出来ヤウト思ヒマス、仕方ガナイ、日本ハ未ダ国税ト云フモノガスツカリ定マラナイ以上ハサウ云フコトハ間々アルニ相違ナイ、之ハ御互ニ政府ノ悪イノデハナイ、御互ニソコニ至ラヌカラデアル、ソレデアルカラソレマデハ止ムヲ得ズ辛抱シナケレバナラヌ、完全無欠ト云フコトヲ云ハレマスガ、完全無欠ト云フコトハ昨日委員会デモ申シマシタガ、人為デヤレバ恐ラク完全無欠ト云フコトハ誰ガヤツテモ出来マイト思ヒマス、御互ニ辛抱シナケレバナラヌ、完全無欠、少シモ動カスコトガ出来ヌト云フコトハ云ヘヌ、恐ラク憲法デモ穴ガアルト思ヒマス、唯之ヲ弱ラセンガ為ニドナタガ委員ニナリマシテモ、修正案ヲ出シタモノニ何処カニ穴ガナイカト云ツテ窺イタラ、穴ダラケノモノダラウト思ヒマス、何ヲ拵ヘテモ其通リデアルト思ヒマス、又此地租ヲ改正致シ
 - 第22巻 p.264 -ページ画像 
マスニ就イテ第一番ニ矢張役人ノ手心デ穴ガアル、決シテ東京地方モ完全無欠、少シモ違ハヌ、公平ヲ得タト云フコトハ言ハレマイト思ヒマス、ソレヲ人間ガヤルト云フノガ土台間違ツテ居ル、公平的ニ人間ト云フモノハ必スナラヌケレドモ己ノ言フ通リニハナラヌカラ人ノ説モ聴イテ、御互ニ譲リ合ツテヤルト云フノデ今日此社会ガ持ツテ居ルノデアルト思ヒマス、故ニ唯今中野君ノ三条ノ御説ハ私ハ少シモ価値ガナイト思ヒマス、故ニドウカ速ニ決ヲ上ゲラレテ、修正ノ委員ヲ御選ビニナツテ、幾ラカ是ニ脳髄ヲ費シテ成ルベク皆様ノ御意見ヲ聴キ、到底唯今申シマシタ如クドナタカ是ニ当リマシテモ完全無欠ト云フコトハ出来マイト思ヒマスカラ、然ルニ若シ之ヲ完全無欠ニシテナケレバナラヌト云フコトナラバ、恐ラク今日ノ会場デ其職ニ当ツテ私ガ委員ノ責ニ当ツテ御請ヲスルト云フモノハ恐ラクアリマスマイト思ヒマス、若シアツタラ其人ハ人間デナイ、神様デアルカモ知レマセヌ
○五十一番（京都、大沢善助君）　大分満場ガ御熱心ノ様子デゴザリマスケレドモ、今此先決問題ヲ決セラルヽ場合デゴザリマスカラ、反対論者ハ今饒舌ラシテ貰ハヌト折ヲ失フ、是カラ修正ノ諸君ハ何日デモ饒舌ラレマスカラ、反対者ハ今ヨリ時ガゴザリマセヌカラ御迷惑ナガラ一回申シマス、此営業税ガ不完全トカ不都合トカ云フコトニ就イテハ縷々御述ベニナツテ居リマスカラ、サウ云フコトニ就イテハ述ベマセヌ、到底修正シヤウト云フ御意見ハ勝ヲ制スルデアラウト思ヒマスカラシテ修正上ニ就イテ述ベタイト思ヒマス、全体之ヲ修正シヤウト云フコトニ至レバ、今此処ニ出テ居リマス所ノ各会議所ノ意見ガ今平出君ガ喋々御演説ガアリマシタガ、平出君御自身ノ会議所ハ何程カト云フト三割減ジテ居ル、之ヲ総体ニ調ベルト減税ニナツテ居ラヌノハアリマセヌ、畿内部モ減ジテ居ル、差引税銭ハ少ナク寄ルニ違ヒナイ、何処デモ減ジテ居ル、ソレデ其減税ノ意味ヲ以テ之ヲ修正スルト云フコトニナレバ、或ハ今ノヨリ銭ガ少ナイ、減ルト云フ結果ニナルカラ其代リ先刻カラ度々出ル自家撞着ト云フコトハ双方共免レヌト思ヒマス、然ルニソレヨリモツト甚シイノハ何カト云フト、此意見中ノ賃貸価格・従業者ヲ削除スルト云フコト、此二ツノモノヲ削除スルト云フコトハ、吾々商売人トシテ吾吾自分ノ商売ノ上ニ税ヲ掛ケラレル上ニドウ云フ頭ヲ以テ判断ヲ下スカト云フト、之ヲ取ラレルト非常ナ困難ナル判断ヲ下サナケレバナラヌ、何故ナラバ減税ヲセヌト云フコトナラバ売上高、収益ノ税律ヲ上ゲテ来ナケレバ如何ニ工風ヲシテモ減税ニナツテ往ク、サウスルナラバ売上高ニ之ヲ増シテ来マス、売上高ニ増シテ来マス場合ニハ単純ニ売上高何程ニ対シテ何程ト云フ税律ニナツテ来テ、其税律ヲ以テ当テラレタ時ニハ非常ナ困難ガ起ル、此売上高ト云フモノノ歩合ガ低イナラバ或ハ我慢ガ出来テ往ク、二割・三割口銭ヲ取ツテ居ル商人、又ハ一分・二分ノ口銭ヲ取ツテ居ル商人モ一律ノ下ニ課税サレテ、其歩合ガ高イト云フ結果ヲ見レバ非常ナ困難デアル、又内国人ト外国人ガ物ヲ売ルニ競争シテ居ル時ニ此税ガ三分トカ或ハ二分トカ云フ歩合ガ掛ル結果ガ来レバ、内国人ト外国人ト競争ヲ
 - 第22巻 p.265 -ページ画像 
スルト営業税ノ為ニ何時モ内国人ガ敗ヲ取ラナケレバナラヌ、何程売ツテモ売上高ニ対シテ取ラレルト、一分ヤ二分ノ「コンミツシヨン」デ売買スル奴ハ殆ド営業税ニ取ラレナケレバナラヌカラ、内外人ノ競争スル時ニハ此税ノ為ニ内国人ハ敗ヲ取ラナケレバナラヌワケ、ナラバ収益ニ向ツテ課税スル修正法ガアリマセウ、ソレヲ御選ビニナレバドウナルカト云フト、此収益ト云フモノヲ調ベヤウト云フ上ニ就イテ先ヅ先ニ売上高ハ幾ラ、商売ヲ何程スルト云フコトヲ見ナケレバナラヌ、ソレカラ商売ニ対シテ是位ト云フコトヲ調ベナケレバナラヌ、営業税取調ノ上ニ混雑ヲモウ一ツ余計シナケレバナラヌ、売上高ノ調ベヲシテ収益ノ調ベヲシナケレバナラヌ、サウスルト今迄ノ困難ヲモウ一倍持ツテ往カナケレバナラヌ、二度ノ手数ヲ掛ケナケレバナラヌコトニナル、ソレデ此売上高トカ収利ト云フモノデハサウ云フヤウナ口銭ノ多イモノトカ或ハ少ナイモノトカ云フコトニ比例ヲシテ少シモ動カナイ標準ヲ取ラナケレバナラヌトシテ挙ゲテアル賃貸価格ノ如キモノデアル、ソレヲ削除シテ仕舞ツテヤラウト云フコトニナルノデスカラ、勢ヒドウシテモ減税ト云フ事ニナツテ来ルニ違ヒナイ、ソレデ其減税ガナシニヤルナラバ前段述ベタ如ク歩合ヲ上ゲナケレバナラヌ、歩合ヲ上ゲレバ是々ノ困難ヲ生ズルト云フ結果ニナリマスカラ、大変強イ反対ニナル事ガアルトカナイトカ云フ意見モ、飽迄本員ハ五十歩百歩ノ論デアツテ、決シテ全廃ダカラ斯ルコトノ心配ハシテナイ、減税ダカラ心配ガシテアル、修正ハ玆ニ心配ガシテアルト云フコトハ言ヘナイ、是非共彼ノ修正案ヲ持ツテ来テヤツタナラバ、総額ノ上ニ減額ガ出ルニ相違ナイ、又之ヲ純粋ノ売上高収利トカ云フモノニヤリマシタナラバ、此税源ハ不定ノモノニナツテ来ル、商売ノ景気ガ善ケレバ沢山税ガ上ル、商売ガ錆ビテ来レバ税ガ少ナクナル、何レ税ヲ国費ノ一部ニ充テル積リデ課税スレバ、其方カラ幾ラカ不動ノ性質ヲ持ツテ居ラナケレバナラヌ、何処デモ動クモノヲ以テ税則ヲ上ゲルコトハ出来ヌ其中幾ラカ不動ノモノガアツテ賃貸価格ノ如キ余計売レテモ売レヌデモ是々ノ金ガ上ルト云フモノヲ置カナケレバナラヌ、今年ハ三百万円デ来年ハ八百万円ト云フ動キ易イモノヲ税率ニスルコトハ出来ヌ、何カ不動ノ者ヲ加ヘナケレバナラヌ、サウスレバ各会議所ノ希望シテゴザル改正ハ行レナイコトニナル、ソレデ京都商業会議所ナドハ最モ重キヲ置イテ居ルモノハ、国ガ人民ニ向ツテ課税ヲスルモノハ成ルベク公平ニ不均一ノナイヤウニシナケレバナラヌト云フコトヲ主トシテ居ル、其意味カラ営業税ノ修正ヲスル時分ニハ成ルベク不権衡ノナイヤウニ、モノヽ動カナイヤウニ、素ヨリ完全無欠ト云フコトハ出来ヌガ、出来得ル丈ケ不権衡ノナイヤウニスルニハ、従業者ヲ入レルトカ賃貸価格ノモノヲ入レルトカシテ其不権衡ヲ医スル手段ヲ取ラナケレバナラヌ、一例ヲ申セバ京都デ生糸ヲ商フモノト友染ヲ商フモノヽ利益ノ差ハ大変ナモノデ、友染商人ハ甚シク一人デ口銭ヲ取ツテ卸売ガ出来ナイ、生糸ハ七分カ滅多ニ八分ノ口銭ハ取レナイ、ソレガ同ジ卸売ガ一率ノ下ニ課税サレルノニ其上ニ売上高デ歩合ヲ増サレルノハ不公平ガ出来ル、ソレニハ平均ヲ取ル
 - 第22巻 p.266 -ページ画像 
手段ガナケレバナラヌ、ソレナラバ各会議所カラ出テ居ル大部分ハ不満足ニナツテ、営業者ハ不公平ヲ蒙ル結果ニナル、到底斯ウ云フコトハ為シ能ハザル修正デアルカラシテ、何処マデモ本案ノ如ク廃シテ他ニ税源ヲ求ムルコトヲ相当ト考ヘマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私ハ先ニ修正ノ意見ヲ述ベマシタガ、今ニ矢張修正ノ意見デゴザリマス、段々反対論者ノ御意見ガゴザリマスニ就キマシテ一言述ベマスガ、唯今五十一番ノ述ベラレタ所ノ御論ハ唯今デハ実ハ必要ガナイト本員ハ思ヒマス、又頻リト各会議所ヨリ出シマシタ所ノ修正説ニ就イテ、個々別々ニナツテ居ルカラソレデハイケナイト云ノ御論鋒デゴザリマスケレドモ、之ハ本会ガ如何ナ結果ニナリマス修正ト確定致シマシテ、修正委員ガ出来マシタラ其際ニナツテモ宜イト考ヘマス、是ニハ是丈デ置キマス、就キマシテ五十七番ガ九州地方ノ如キ――私モ九州ノ一人デゴザリマスガ、苦情ガ少ナイ、役人ノ手加減デスルカラデアラウト云フ御論モアリマスケレドモ、私ノ方カラ意見書ヲ出シマシタノハ即チ其営業税其物ガ悪税デナイ、営業税率ノ不完全ナ所ニ於テ苦情ガゴザリマスカラ修正説ヲ出シタノデゴザリマス、ソレデ決シテ其九州ノミガ斯様ト云フ訳デハゴザリマスマイト思ヒマス、段々自説ニ就キマシテ細目ニ渉ツタ御論モゴザリマスケレドモ、五十一番等ノ如キハ税率ヲ若シ置ケバ賃貸価格モ置カナケレバナラヌ、デナイトソンナ割合法ニシナケレバ不完全ダ、ソレモシナケレバナラヌ、是モシナケレバナラヌト云フ、マダ修正ト極リマセヌ先ニ御論ガゴザリマスガ私ハ今日ハ御討論申シマスコトハゴザリマスマイト思ヒマスカラ、ドウカ速ニ問題ニナツテ居リマス所ノコトヲ何レトカ御決定ニナリマシタ上デ、又委員説モゴザリマセウガ、十七番モ此儘委員ヲ設ケルト云フ意味デハアリマスマイト思ヒマス、唯自分ハ委員会ノ結果デアツタノヲ喜ブ、其委員ガ出来マスレバ以前ノ委員ニ御委托ヲシタイト云フ意見デアツタラウト考ヘマス、ドウカ両説ニ就キマシテ御議決アランコトヲ希望致シマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　議場ニ御相談シマスガ、今直グニ討論ノ終結ヲ致シマスカ、休憩致シテモウ一度御論ジニナリマスカ　（「休憩、々々」ト呼ブ者アリ）
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ時間デゴザリマスカラ休憩致シマス
　　午後零時二十分休憩
　　午後一時二十分開議
○議長（東京、渋沢栄一君）　是ヨリ開会仕リマス
○二番（名古屋、奥田正香君）午前ニ引続イテ廃止・修正ノ大体ニ就イテ御決議ニナルコトデアリマセウガ、其前ニ向ツテ議場ニ一言建議致シマス、素ヨリ議事ノ法トシテ先決問題ヲ決シ、然ル後修正トシマスレバ修正委員ヲ設ケマスコトハ先刻来各員御陳弁ニナリマシタ通リデ、然カアルベキコトデアリマスガ、唯自分ノ杞憂致シマスコトハ、廃止ト云ヒ修正ト云ヒ、委員会ノ意向ハ修正ニ致スコトニナツテ居リマスケレドモ、余程此修正ト廃止トノ御説ノアル御方ハ
 - 第22巻 p.267 -ページ画像 
稍々承ツテ見マスニ余リ大差ハ数ノ上デナイヤウデアリマス、若シ仮ニ廃止ト決シマスモ修正ト決シマスモ、修正ニ決シマシタナラバ修正委員デモ設ケテ修正スルト云フ場合ニハ廃止論者ハ飽迄修正説ノ不完全ヲ鳴ラシテ討議ヲシナケレバナリマスマイ、之レガ僅ニ二名三名ノ差ヒデ一方ニ決シマスト云フコトニナリマスレバ、兎ニ角感情上ドウシテモ之レヲ各会議所ニ於キマシテモ覊束スルコトハ出来マセヌ、故ニ一方ニ於テ修正ノ建議アリ一方ニハ廃止ノ建議アルト云フコトニナリマシタナラバ、決シテ重キヲ置カレヌダラウト思ヒマス、又実業家ノ輿論トハ言ハレマイト思ヒマス、何方ニナリマストモ、願クバ足並ヲ揃ヘテ此実行ヲ期シタイモノデアリマスノデ自分等モ昨日委員ニ挙ゲラレテ委員会ノ席デモ述ベ置キマシタケレドモ、夫故ニ自分等ハ強チ廃止ヲ否トモシマセヌ、修正ヲ可トモ致シマセヌノデ、甚ダ無定見ノモノデゴザリマスガ、有耶無耶ノ間ニ発議ヲシタヤウナコトデアリマス、要スルニ自分ノ考ハ飽迄何方ニナリマストモ僅ニ二・三ノ方々ノ差ハ致方モゴザリマセヌケレドモ先ツ全国商業会議所ノ輿論ハ此処ニ傾イテ居ルモノダト云フコトヲ当局者ハ勿論、世ノ中ニ知ラシメタイモノデアラウト思ヒマス、ソレニハ万一、二・三名ノ或ハ少数ノ為ニ一方ガ破レタトカ又ハ同数デアツテ会長ノ御採決ヲ乞ハナケレバナラヌト云フコトデハ、此商業会議所ノ輿論トハ認メラレヌ者ト信ジマスカラ、又先ニ自分ガ委員説ヲ出シマシテ、此委員ト云フモノガ挙ゲラレテ調ベマシタ御報道ト云フモノガ如何ニモ各員ニ御満足ヲ与ヘナンダト云フ傾モアリマシテ、再ビ斯ノ如キコトヲ持出シテ遂ニ徒労ニ属スルカ知リマセヌガ、杞憂ノ余リ願クバ小会議デモ御開キ下スツテ、其辺ノ実行上ノコトニ就キマシテ十分御協議ガアリタイト思ヒマス、其席ニ於キマシテ、自分モ考ヘタコトガアリマスカラ、小会議デモ開クコトニナリマシタラ各員ニ御相談ヲシタイト思ヒマス、ドウモ此儘既ニ最早議論モ尽キテアルカラ可否ヲ決シヤウト云フ御発議モアリマシテ殆ドモウ大勢ハ定ツテ居リマセウケレドモ、之カ可否ヲ問ヒマシテ一方ガ破レルト云フ事ノ場合ニナリマシタ時ニハ、結果ハドウデアラウカト云フ憂慮ヲ致シマス、此場合ニ於テ甚ダ又自分ノ発議ノ為ニ時間ヲ妄費シ、又此協議会ト云フモノモ余リ効用ノナイモノダト云フコトニナルカソレハ測リ知リマセヌガ、願クバ尚一応協議会ヲ開イテ親シク御相談ヲシテ、到底纏ラヌ場合ニハ先決問題ヲ御決シニナル場合ニナリマセウガ、希クバ会議所ノ輿論ヲ世間ニ発表スルニハ僅ノ少数ノ為メ一方ガ倒レルト云フコトハ、素ヨリ今日ノ会議ハ傍聴マデ禁ジテアリマセヌカラ秘密ニスル事モアリマセヌカラ、或ハ四十有余ノ会議所ガ半バ廃止説テアツテ半バ修正説デアツタ、又修正説ガ勝ヲ制シテモ論難攻撃遂ニ其穴ヲ拾フテ八釜敷言ヒ、廃止論者ガ承知シナカツタガ、之モ多数ヲ以テ修正者ガ勝ツテ当局者ニ迫ルト云フコトハ不都合ダト思ヒマスカラ、今一応御協議ヲシタイ為ニ小会議ヲ開カレルヤウニ願ヒタイ、其席ニ於テ又自分ノ考ヘタ所ヲ申上ゲヤウト思ヒマス
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　三番モ同意見デゴザリマス、ドウカ
 - 第22巻 p.268 -ページ画像 
成ルベク議論ノ角立タナイヤウニ満足ニ纏リヲ付ケタイ思ヒマスカラ、二番ニ賛成シマス
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　十二番モ二番ノ御説ハ極ク穏当ナル御考ト考ヘマス、成ルベクナラバ一定ノ方針ヲ以テ致スト云フコトハ最モ勢力ノアルコトヽ思ヒマスデ、彼是別レテ玆ニ出シタモノハ大ニ会議所ノ体面ヲ汚ス恐ガアリマスカラ、二番ノ説ガ最モ善イト考ヘマスデ賛成ヲ致シマス
○三十番（岡山、香川真一君）　三十番モ二番ト同感デゴザリマス、二番ヲ賛成致シマス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　協議会ヲ開ク二番ノ御説ニ賛成致シマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　全会ニ御相談致シマス、今二番カラ此採決ヲ致サヌデ一ツ協議会ヲ開イテ見タイト云フ二番ノ御発議デゴザリマス、別ニ御異議ゴザリマセネバ暫ク採決ニ往キ掛ツタ所ヲ中止致シマシテ、特ニ全体ヲスルト云フ協議会ヲ開クト云フ事ニ致シマセウト思ヒマス（「異議ナシ、々々々々」ノ声起ル）協議会デゴザリマスト矢張傍聴ハ禁ジタ方ガ宜シウゴザリマセウ
○二番（名古屋、奥田正香君）　ドウゾ左様願ヒタウゴザリマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハサウ云フコトニ仕リマス
　　午後一時三十分協議会ニ移ル

　　　　協議会　午後一時三十一分開議
○議長（東京、渋沢栄一君）　余程御多数デゴザイマスカラ、議場ガ談話体ニナリマスト、貴君方ノ御述ベニナツタコトガ分ラヌ様ニナリマスカラ、成可ク四角ナク御述ベナサルノハ勿論デスガ、努メテドウカ混雑シマセヌ様ニ願ヒマス
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　十二番ハ小会議デモ、矢張リ会頭ニ議長ニナツテ戴ク方ガ宜シイト思ヒマス、余リ錯雑シテモ何ンデスカラ
○二番（名古屋、奥田正香君）　小会議ニナリマシタラ一寸御相談ヲ致シタイガ、先刻来申上ゲマシテ幸ニ小会議ヲ開クコトニナツテ甚ダ満足デアリマスガ、前日カラ種々諸君ノ御高説ヲ伺ツテ居リマスデ私ハ別段名説モ何モナイ、只斯ウモアラウカト云フコトヲ御話ヲスルノデ、ソレハドウカト言ヒマスノニ、自分ハ先キニモ申上ゲマシタ如ク実ハドチラデモ実行ノ出来ル方ガ宜イト云フ甚ダ微弱ナ議論デゴザイマス、ソコデ又此修正ト言ヒ全廃ト言フ、全廃ノ御方ハ勿論修正スル方デモ、私其修正ノ説ヲ出シテ居リマスガ、今日ノモノヲ以テ完全ナリ、是レデ宜シイトハ少シモ認メテ居ラヌ、悪ルイ税法デアルト云フコトハ認メテ居ル、ソレデ只寛厳異ナル丈ケデ悪ルイ者ダカラ修正スルガ宜シイト云フノト、悪ルイモノダカラ到底廃スルガ宜シイト云フノトノ違ヒデ、一モ現行法ノ儘デ宜シイト云フ御議論ハマダ承ハリマセヌ、ソレデ兎ニ角斯ウデモナリマシタラバドウカト思ヒマスノハ、営業税法ハ悪ルイモノデアル、到底商工業ノ発達ヲ阻害スルモノデアル、中ニハ色々御論ガアリマシテ、商工
 - 第22巻 p.269 -ページ画像 
業者ガ税ヲ出シタ方ガ幅モ利キ権利モ得ラレルト云フ説モアル、ソレニ付テ強チ申シマセヌガ、先ツ悪ルイモノダカラ廃スルト云フコトニ極メマシテ、併シ廃スルト云フコトニ極メテ置イテモ急ニ行ハレルカドウカ分ラヌ、ソレ故ニ又此悪ルイ煩苛ナ税法ヲ此儘施行セラレテ居ルト云フノハ如何ニモ堪ヘラレマセヌカラ、政府ニ向ツテモ何処迄モ是非是レハ悪ルイモノダカラ廃サナケレバナラヌ、左リ乍ラ緩急モアラウカラ、直チニ実行ガシテ貰ヒタイガ、サウモイケヌモノナレバ斯ク々々ノ箇条ハ止メテ貰ヒタイ、其ノ条項ニ渉ツテ細別ニ或ハ営業税ノ内デモ卸売ト小売ヲ斯ク々々ニスルト云フ様ナコトハ、各会議所カラ出テ居リマス御修正ガ皆違ヒマスカラ、中ニハ修正トハ申シ乍ラ殆ド換骨奪胎ト云フ様ナモノデ元ノ営業税法ノ組立ニナツテ居ラヌモノモアリマス、又タ名古屋商業会議所ノ如キニ至リマスト詰リ会社組織ノモノハ利益ニ取ツテ貰ヒタイ、収益ニ取ツテ貰ヒタイト云フ様ナコトニモナツテ居リマス、種々ノ修正ト申ス内ニモ別々ニナツテ居リマス、中ニハ又殆ト軽減ノ御目的ノ様ナノモアリマスシ、中ニハ軽減ハ少シモ云ハヌガ賃貸価格・従業者ト云フ斯ノ如キモノヲ標準トシテ課スルノハ穏カデナイカラ改正シテ貰ヒタイト云フモノモアリマス、要スルニ焦眉ノ急ヲ救フ為メニ斯ク々々ノ如キ者ハ是非取上ゲテ貰ハナケレバナラス、是レモ直チニヤツテ貰ハナケレバナラヌト云フノデアル、又税務吏ガ自分ノ見解ニ依テ寛厳殆ト地ヲ代ヘテ居ル様ナヤリ方ヲスルノハ宜シクナイカラ、二・三ノ会議所ノ御建議ノ中ニモアリマスガ調査委員ヲ設ケテ極公平ニ扱ウコトノ出来ル様ニシタイ、所得税ノ如キモ申告税ニナツテ居リマスガ、営業税ノ如キ直チニ極メルト云フ様ナコトニシテ居リマセヌ、御承知ノ如ク調査委員ト云フ者ガ出来テ調査委員ト云フ者ハ其土地ノ人ガナツテ居リマス、固ヨリ所得税ノ税率ハ甚ダ不完全デアツテ各地共八ケ間敷アリマシタガ、営業税法程八ケ間敷ナイト云フノハ矢張リ調査委員ト云フ者ガ其地方カラ出テ、其人ガ大抵相当デアラウカ不相当デアラウカト云フコトヲ調査シテ極メマスカラ、営業税程甚ダシクハアリマセヌ、依テ右ノ如キ申告ノ当否ヲ査定スル所ノ調査委員ヲ置クト云フコトヲ新タニ法律ヲ設ケラルルカ、命令ヲ以テ定メルトカ是非シテ貰ヒタイト云フ、殆ト鵺ノ如キモノニナリマスガ、先ツサウ云フコトニシテ歩ミ合ヲ附ケマシテ御協議会ガ纏マツタナラバ其纏マツタ所ヲ以テ委員デモ置キマシテ文案ヲ起草シ、其起草ノ成ルノヲ待テ本会議ニ報告シ、本会議ニ於テハ一致ヲ以テ可決シテ当局者ニ供ヘ、輿論ヲ喚起シテ足並ヲ揃ヘテスルコトニシタラドウデアリマセウカ、斯ノ如キコトニシマシタナラバ、或ハ甚ダ御不満足ヲ得ルコトハ難イコトデアラウト思ヒマス、決議シタラ是レガ直チニ実行サレルモノナラバ比較多数デモ、同数ノ者デモ、会長ニ左右サレテモ実行ガ出来得ラレマスガ、此ノ聯合会ノ如キハ大多数ヲ以テ決シテモ政府ガ取ルカ否ヤ、向フニ相手ノアル者デアリマスカラヤラセルコトハ出来ヌ、況ンヤ是レガ二ツニ分レテ殆ト半数々々ノ間ニ於テ一方ハ廃スルヲ可トシ一方ハ修正ヲ宜シイトスルデハ、当局者ガ首ヲ傾ケ、又議会デモ是レガ全国
 - 第22巻 p.270 -ページ画像 
商工業者ノ輿論デアルト見ルコトハドウカト思フ、甚ダ名案デモナイ如何ニモ拙ナイ説デアリマスガ、只期スル所ハ自分ノ説ハ足並ヲ揃ヘテシタイ、全国商業会議所デヤツタラ全国商業会議所ノ輿論デアルト云フコトヲ主ト致シマシテ、其方法ハ是レハ甚ダ完全ナモノトハ認メマセヌガ、私ハ只露払ヒニ一寸其ノ御話ヲシテ、御高説ガアリマスレバ御相談ヲ致シマスガ、只私ハ小会議ヲ開クニ付テハ斯ウデモシタラドウダラウト云フ如何ニモ漠然ノ御話ヲ一寸申上ゲテ置キマス
○二十二番（堺、柴谷武次郎君）　私モ二番ノ御説ト粗々同感ナノデゴザイマス、ドウモ前日来ノ模様ヲ見マスト全会一致デ可決スルト云フコトハ余程難イコトデアラウト思ヒマス、全会一致、商業会議所ノ輿論ト云フ者ヲ作ラナケレバ其効ガ薄弱ナモノト思ヒマス、自分モ今二番ノ御述ニナツタコトハ同感デアリマスガ、少シ意味ガ違ヒマス、ソレヲ述ベテ見マスレバ、自分ノ考ヘハ全廃説ハ何処マデモ希望スル、併シ乍ラ之ヲ実行スルノ日ニ至ルマテハ二年若クハ三年ノ日ヲ期サナケレバナラヌ、ソレ迄ハ今日ノ現行法デ辛抱スルカト言ヘバ到底堪ヘラレヌカラ、ソレヲ実行サレル迄ハ現行法ヲ修正シテ、其修正ハ速ニ実行シテ貰ヒタイト云フ意味デゴザイマス、要スル所私共堺ノ商業会議所ノ意見ト申シマスモノハ修正デ堅クナツテ居ル、併シ只堅クナツテ居ルト云フノデハ効力ノナイコトデアリマスカラ、数歩譲リマシテ大体二番ノ説ヲ賛成スルノデゴザイマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　二番ニ伺ヒマスガ、少シ聞取リ兼ネマシタガ、貴方ノ御説ハ全廃スルノハ善イ、併シ行ハレヌカラ行ヘル迄斯ウ云フ修正ニシテ、サウシテ結局ハ全廃ニシテ呉レト云フコトヲ政府ヘ建議スルト云フノデアリマスカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　サウ云フ積リデアリマス、詰リ一寸御話シシマシタ如ク、アノ税法ノ善クナイト云フコトハ分ツテ居ル、善クナイ箇条ヲ修正スル、モウ一歩進ンデ廃スル、併シ廃止ト云フコトニ極メテモ今俄ニ行ハレヌ、ソレカト言ツテ今日ノ営業税法ノ如クノ儘ヲ以テ忍ブカト言ヘバ忍バヌ、其箇条ハ斯ク々々ニシテ貰ヒタイ、左リ乍ラ一方ノ政府ニ於テモ、或ハ地租ニ課スルトカ、孰レ財源ヲ見出シマスコトニシマシタ所ガ、極都合ガ善クサウ云フコトガ出来レバ善イガ、若シサウ云フ好都合ニ至ラナイ時ハ、此ノ財源ヲ充タスニハ或ハ東京ナリ横浜ナリ京都ナリカラ出シテ居ル御説ノ如クニシテモ、貸スニ数年ヲ以テセネバ出来ヌト思フ、若シ政府ガサウ云フコトニ方針ヲ取ラレタナラバ承知シテ居ルカラ善イデハナイカト言ツテ抛ツテ置イテハ困ル、修正ノコトハ今直チニ修正シテ貰ハナケレバ困ル、幸ニ政府ガ全廃ト云フコトニ重キヲ置カレ、是等ノ悪税ハ課スモノデナイト云フコトガ脳裡ニ浮ンデ、政費ヲ節減シテ他ノ財源ヲ見出スト云フコトニ往ケバ、我々モ満足デアルガ若シソレガイケヌコトヽスレバ、先ツ斯ク々々ノコトハ是非修正シテ貰ヒタイ、良シンバソレガ出来ヌト言ハレルナラバ斯ノ如クシテ貰ヒタイト云フ注文的ノ改正請願ヲシテハドウカト云フノデ、私ハソレヲ固ク執ツテ動カヌト云フノデナイ
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○十八番（熊本、下田耕造君）　十八番ハ一昨日欠席シマシタカラ御議論ノ如何ハ分ラズニ居リマスカラ黙ツテ居リマシタガ、随分本会ニ於テハ段々御議論ガ八ケ間敷ナツタ様ニ思ヒマスカラ、ドウカ十八番ノ望ミマスニハ、全国ノ商業会議所ノ委員ガ東京ニ集マツテ此事ヲ議スルナラバ輿論ト云フ事ヲ認メラレタイ、是非輿論ト云フコトハ二番ノ仰セラレル様ニナラナケレバ全廃モ役ニ立タズ、修正モ其効ヲ奏サヌト思フ、ソレデ先刻来ノ議論ヲ拝聴スルト、五十七番ガ何ト言ツタトカ八ケ間敷言フテ居ルガ、モウ一歩進ンデ修正説モ一歩ヲ譲リ全廃説モ一歩ヲ譲リ、二番ノ述ベラレタ様ニ全会一致デ政府ニ往クガ宜イ、修正派ノ硬派トデモ言ヒマスカ一歩ヲ譲ツテ、一ツ商業家ノ様ニ前垂掛ケデ睦マジク事ヲ運ンデ政府ニ建議スルニハ全会一致ヲ以テシタイト云フ考ヘデアル、双方カラ一歩ツヽ御譲合ニナツタラ善イ案ガ出来マセウ、其案迄ハ考ヘガ附キマセヌガ、忍ンデ是迄ノ往キ掛リヲ遠州灘ニ投棄テヽ仕舞ツテ、ソコデ変ハツテ御協議ガアリタイト云フ丈ケノ希望ガアリマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　私モ二番ト感ヲ同ジフスルノデアリマス、此場合ハ全国ノ輿論ト云フコトニ重キヲ置キマシテ、只此処デ御協議ガ済メバソレデ宜シイト云フコトナラバ善イガ、サウデハナイ、マダ先ニモウ一ツ目的ヲ達シ様ト云フコトヲ持ツテ居リマスカラ、誠ニ双方共微弱ナ結果ヲ見マシテハ、之ヲ政府トナツテ考ヘテ見マスト、両方ノコトヲ双方カラ持出シテ来テドチラモ力ノ抜ケタモノデアルト云フノハ誠ニ歎カハシイコトデ、併シ今段々二番カラ露払ヒトシテ述ベラレタ所ヲ見マスト、詰リ修正説ニナル、譲歩ト云フ事ニナレバ修正デモナシ全廃デモナシト云フ事ニナレバ如何ニモ歩ヲ譲ツタモノニナラウガ、ドチラニシタ所ガ修正ト云フコトニナルコトハ勢ヒ免レヌコトデアルト思フ、ソコニ至ツテ能ク考ヘテ見マスレバ、全廃者カラ意見書ガ出テ居リマスノハ僅々タル数デゴザイマスガ、又之ニ賛成ヲシテゴザル方モ御坐イマス、大体是等ノ諸君ガ此議場ノ有様ヲ面タリ御覧ニナツテサウシテ之ヲ如何ニシナケレバナラヌカ、全廃デモナシ修正デモナシ、中途ノモノハ出来ヌカラ、全廃ヲ譲レバ修正ト云フコトニ極メ附ケラレテ仕舞ウ、ソコデ此全廃ノ方々ガ一ツ何ントカ御考ヘガ出来マスヤ否ヤ、ソレガ出来ヌトシテ見ルト、甚ダ私ハ苦慮杞憂スルノハ、右ノ如キ微弱ナ結果ヲ以テ各地区々ノ意見ガ出マス様ニナツテハ誠ニ歎カハシク思フ、此点ヲ能ク御考ヘ下サツテ全廃説ヲ御持出シニナツテ居ル御方ガ此譲合ガ出来マセウカ、修正説ハ数十ゴザイマスガ、是レハ両説ヲ成立タセルト云フコトハ望マシクナイガ、歩ヲ譲ツテ帰着スル所ガアリマセウカ、一ツ此ノ突飛ナ全廃ト云フ奴ガ歩ヲ譲ルコトガ出来ルカドウカ、何ントカ良イ法ヲ一ツ御考案ヲ願ヒタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　ソレハ三十三番ノ御説ダガ大変ニ感ジガ違フ、私ガ恐シイト思フノハ修正説ノ方ノ御機嫌ヲ損ジハシナイカト思フノデ、全廃ト云フコトニ大体ヲ置イテ修正ト云フ方ヲ附加ヘ様ト云フノデアルカラ、ドチラカト言ヘバ御機嫌ヲ損ズルナラバ修正ノ方ノ御機嫌ヲ損ズルデアロウト思ツタ、ソコデ露払ヒト胡魔
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化シテ一ノ折衷説ヲ出シタ、所ガ豈図ラン全廃者ガ御不同意デハナイカト云フ御説デ、シテ見ルト、私ノ説ハドチラカラモ御怨ミヲ買ウ様ナモノデアルカラ、矢張リ中道ヲ得タモノデハアルマイカ、総テ世ノ中ノコトハ双方ニ賞メラレルコトハナイ、片方ニ賞メラレナカツタラ一方ニ偏シテ居ルガ、双方ニ悪口ヲ言ハレタラ寧ロ中庸ヲ得テ居ル説デナイカト思フ
○五十一番（京都、大沢善助君）　反対ノ意見ヲ持ツテ居ル者ガドウカシナイカト云フ御呼出ガゴザイマスデ、ドウデモセンナラヌ様ナ場合デアリマスカラ言ハナケレバナリマセヌガ、是レモ有リ体ニ申上ゲマスレバ、京都商業会議所ノ大方針ヲ申サナケレバ何ノ御土産ガナイコトニナルガ、此処デ頭ヲ振ルト通過サレヌ様ニナリマスカラ申上ゲマスガ、京都商業会議所ニ於キマシテハ、此ニ出マスニ就テモ決シテ議員根性ヲ持テ出テ居ルワケデハゴザイマセズシテ、商工業者ノ利益ト云フモノニナリマスレバドンナ御説デモ合同スル精神デアルノデ、ソレデ此ノ営業税法ハ商工業者ノ発達ヲ阻害スルモノト認メテ居リマスカラ、飽迄廃サレルコトヲ希望シマスガ、併シ銭ハ取ラレテモ商工業者ガ儲カルナラバ、百両儲ケテ一両取ラレルナラバ、サウ云フ修正説ガ出タラ、直グ合同シテ仕舞ヒタイト思フ、ソコデ斯ウ云フコトヲ申出シテハ或ハ御叱リヲ蒙ムルカ知リマセヌガ、御協議デアリマスカラ申シマスガ、是レモ奥田君ノ露払ヒト同ジデアリマス、東京商業会議所カラモ出テ居リマス京都カラモ出テ居リマス財政整理問題ト云フコトニ付テ、幸ニ御協議ニ附セラレマシテアノ方ニ付テ結果ガ宜シイ様ナコトデアツタナラバ或ハ私ハ一歩ヤ二歩譲ツテモ構ハヌ、商工業者ノ利益ニナルナラバ、儲カツテ銭ヲ取ラレルノハ差支ナイカラ一己ノ権能ヲ以テ御同意シテ仕舞ウ是レモ目茶々々アレモ目茶々々ト云フコトニナリマスト、一寸御同意ヲシマセウ御譲リシマセウト云フコトハ申サレヌノデアリマス
○四十一番（浜松、中村忠七君）　只今五十一番ノ御説モアリマスガ、別段ニ議員根性デハゴザイマセヌノデアリマス、兎ニ角他ノ種々ノ意ヲ挟ンデ此営業税法ヲ譲リ合上極メタト云フコトガ他日世ノ中ニ発表シマスコトハ、本会議所ノ最モ避ク可キコトト思フ、又経済上ノ大問題ノ如キコトニ付キマシテハ、是レハ別段ニ御杞憂ガナクテモ全会御同意ノコトト思ヒマスガ、私ハ只今十八番ノ御述ベニナリマシタ様ナ其内ノ最モ硬派ノ説ヲ取リマシテ、甚ダ全廃者ニ対シテハ御気ノ毒ナ訳デアリマスガ、枉ゲテ此場合ハ御譲リヲ願ヒタイ、其ノ御譲リヲ願ウト云フノハ、既ニ昨日モ申述ベタ如ク、昨年ノ十一月此所デ会議ヲ致シマシタ当時、アノ修正案ノ中ニハ会社法ト云フ意見ガゴザイマシタ、此為メニ余程ノ日子時間ヲ費ヤシマシタ、ソレハ竟ニ否決ニナリマシタガ、兎ニ角大体ノ方針ハ昨年十一月議シマシタノガ本会議所ノ意見トナツテ居リマスカラ、広島ノ七部会トナリマシタノモ、昨年十一月ノ大会ノ議決ガ根拠ニナツテ居リマス、又其他ノ商業会議所モソレガ本ニナツテ居ル、只今ノ七部会ノ御集会ノ当時ニ初マツテ居ル、シマスト只今迄ノ歴史ト申シマスノモ少シ八ケ間敷イコトデアリマスガ、昨年十一月ノ会議ヲ開ク迄ノ
 - 第22巻 p.273 -ページ画像 
経過トシテ商業会議所全体ノ意向ハ元修正ニ傾イテ居ル、議論ハ全廃論ガ最モ立派デ、又税法ト云フ者ガ宜シクナイコトハ認メテ居リマスガ、併シ昨年ハ全廃論ガ出マセヌデアリマシタ、若シ斯様ナ議論ガアツタナラバ既ニ商業会議所ノ意向ト云フ者ハ実施前ソレガ善イモノナラ全廃論ヲ認メタデアラウ、然ルニ如何セン一箇年経過シテ之ニ対スル感覚ガ異ナツテ居リマスガ、イツソ昨年ノ修正案ニ付テ当分ノ間此方針デ往クガ当然デアラウ、既ニ実施前カラ全国商業会議所ハ修正ト云フコトニ一致ノ意見ヲ定メタ、実施後ノ今日尚更修正ノ必要ヲ見タト云フナラバ此説ハ余程基礎モ鞏固デアルシ御議論モ立派デアラウ、併シ修正論ハ実際論カラ割出スモノデアル、全廃論ハ理論カラ組立テアリマスカラ立派デアル、修正論ハ一部ニ偏スル様ニナルガ是レハ已ムコトヲ得ヌ、強チ理論ノ御趣意ハ置イテ此場合ハ枉ゲテ我々ノ修正論ニ御同意ヲ願ウ様ニシマシタナラバ廃止・修正等ノ条目ニ付テハ十分御調和ガ出来ルト思フ……
○議長（東京、渋沢栄一君）　一寸四十一番ニ申シマスガ、今二番ノ御協議ノ趣意ハ、此処デ採決シテ修正ト廃止トヲ多数デ決シテ見タナラバ、左迄大ニ大多数ト云フコトノ一方ニ向クマイト思フ、然ルトキハ説ガ区々ニナツタト云フコトヲ表ハシテ、即チ商工業者ノ輿論トハ認メ得ラレヌト思フ、此処ノ往キ掛リカラ採決シタラ造作ナイガ、今ノ全国商業会議所聯合会トシテハ望マヌ、右ニ付テ自分ハ折衷説ヲ申出ス、其要点ハドウカト言ヘバ、詰リ此法ハ不良ナ法ト云フコトハドナタモ認メテ居ルノダカラ廃スベキモノダカラ廃スト云フ意見ヲ持ツ、左リ乍ラ今東京ノ説若クハ西京ノ説ノ如ク廃シキリデ論ズルト折衷ノ説ニナラヌ、廃スベキモノダガ其廃止ノ場合迄ノ間ハ修正ヲスル、其修正ハ逐条ニ付テ各所カラ出シタル案ヲアレヲ議スト云フコトニセズシテ、只文章ノ上カラ趣意ヲ以テ例ヘバ調査会ヲ設ケル様ニスルガ善イ、ドウ云フ種類ノモノハ廃スベキモノデアルカラ是非税源ヲ見附ケテ御廃シナサイ、ト云フ意見ノ意味ノ様デアリマスカラ、今其説ニ付テソレガイカヌト云フナラバ御尤デアリマスガ、ソレガ昨年カラ往キ掛ツタ御説ダト仰セラレルト、今ノ二番ノ御説ハ昨年ノ往キ掛リデハナイ、明治三十年ノ今日出タ説デアルカラ反対ヤラ賛成ヤラ分ラヌ
○四十一番（浜松、中村忠七君）　ソレハ了解シテ居リマス、今三十三番ノ御説ハ全廃論者ガ御譲リ下サツタ方ガ宜カラウト云フ様ナ御考ヘガアリマシタ、其ノ三十三番ノ御説ノ全廃論者ニ御譲リヲ願ヒタイト云フコトヲ賛成スル、詰リ其御説ヲ賛成スル、強チ二番ノ説ニ反対ヲ試ミルト云フ様ナコトデハナイ、左様ニシタ方ガ我々ノ修正ノ意見ヲ貫徹スルニ近カラウト思ヒマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　私ハ一寸二番ニ御照会致シマスノデアリマスガ、一体今度ノ協議会ハ全ク感服シマセヌ、土台七部委員会デ此問題ガ出マシタガ七部委員デハ軽卒デイカヌカラ全国ノ委員ヲ設ケテ意見ヲ聞ケト云フコトデアリマシタ、全国ノ委員ヲ設ケテ聞イテ見マシタ所デ、又軽卒デイカヌカラ委員ヲ設ケテ委員ノ意見ヲ聞カウト云フノデ委員ガ出来マシタガ、ソレデモイカヌト云フノデ
 - 第22巻 p.274 -ページ画像 
モウ一ツ協議会ヲ開イタ、所ガ協議会デ又委員ヲ設ケルト云フコトニナルカモ知レマセヌガ、今度ノ協議会ト云フ者ハ際限ガナイト云フコトデ賛成シマセズ、又物ト云フ者ハ実ニ此問題ガ出ルト云フト僅ニ半日ノ間咄嗟ノ間ニ決議ヲシテ誠ニ是レハ全国ノ商業会議所ノ意向ハ此ニアル、所謂広島ノ臨時議会ガ日清戦争ノ時分ニ開カレテ二億五千万円ノ公債ヲ募集スルト云フ様ナコトガ僅ニ二十分カ三十分ノ間ニ決シテ、是レハ四千万ノ者ガ一瞬間デ決シタト云フノヲ貴ブノデアリマス、ソレ故協議会ヲ開イタリスルコトハ好ミマセナンダガ、是レハ今繰返シテ申シマシテモ仕方ガアリマセヌガ、二番ノ御説モ結構ナ御説デ之ヲ一体ニヤルト云フコトニナルトサウ云フコトニデモシナケレバ纏マリハシマスマイガ、只私ガ少シ疑ヲ容レマスノハ、修正説ハ御熱心デアリ乍ラ今度建議ヲスルニハ全廃ヲ主トシテ修正ヲ附加ヘテ出スト云フノハ其意ヲ得マセヌ、ソレカラ是レハ議論デゴザイマセヌ御相談デアリマスガ、如何デゴザイマセウカ総テ会議ノ方デ全会一致ト云フコトハ望ム可ラザルモノデ、多数ヲ以テ意向ト云フ者ヲ極メルト云フコトハ社会一般見做シテ居ルコトデゴザイマスカラ、仮令ヒ反対者ガアリマシテモ多数ノ方デ一方ニシテ政府ニ迫ル方ガ力ガアリマセウカ、全会一致ヲ以テドツチヤ附カズノコトヲヤリマシタ方ガ政府ニ迫ルニ力ガアリマシヨウカ、此処ハ能ク御研究ヲ願ハナケレバナラヌ、只全会一致ノモノニナレバ必スシモ勢力ガアルト云フコトハドウモ認メ兼ネマス、故ニ只今ノ折衷説ヲ絶対ニ悪ルイトハ申シマセヌガ其ノ辺ノ所モ御考ヘヲ願ヒタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　私ハ始メニ申上ル時ニ余程心配ヲシテ御話ヲシタ、案ニ違ハズ御叱リヲ受ケマシタ、併シ大分小会議デ御手柔カデゴザリマス、ソコガ皆様ノ御意向ガ違フノデ今平出サンノ御話ダト昨日修正論者ニ拘ラズ全廃ヲ主トスルト云フケレドモ、私ハ昨日修正論者トナリマシタノハ、大別スルト修正ニナルハ私ハ全廃ハ悪クハナイガ急ニ行レナイ、行レタラ宜イト云フコトニナルト大別スルト全廃ト修正トスルト、自分ノ説ハ修正ニナリマス、精神ハ何レニアルト云フト、全廃ガ行レタラ妙ダト云フノデ、精神ハ全廃ニアルカ知ラヌ、ソコデ今日出シマシタノガ全廃ヲ主トシマシタカラト云ツテ敢テ昨日委員会ノ席デ述ベタノト違ヒマセヌ、ケレドモソンナコトヲ此処デ喋々スルニ及ビマセヌカラ、御叱リヲ受ケテモ差支アリマセヌガ、前ニ申シマシタ如クソレデ全廃者ガ承知シマイデナイカト云フ三十三番ノ御説ガアル所ヘ、平出サンガサウ傾クノデナイカト仰シヤルト、益々自分ハサウ御叱リヲ頂ク程ノ説デナイト考ヘタ事ニナリマス、亀岡サンハ全廃論者ガソレデ承知シマイ――修正論者ガ承知スマイト仰シヤル平出サンノ御説ガ出ルト同様ノ御叱リヲ受ケマスガ、平出サン亀岡サンノ御説デ見ルト、何方ニモ御叱リヲ受ケマス、後ニ平出サンノ仰シヤツタ如ク、或ハ全会一致スレバ喜ブガ去リナガラ何方ツカズノコトヲ以テ出スノハ宜クナイデナイカト云フコトハ、私ノ述ベヤウガ悪カツタカ知リマセヌガサウ云フ意味デハナイ、兎ニ角営業税法ノ悪イト云フコトハ全国商
 - 第22巻 p.275 -ページ画像 
業会議所デ認メテ居ル、故ニ昨年ノ臨時会ニ於テ是非之ハ修正シナケレバナラヌ、此儘デ置クト云フコトハ宜クナイカラ広島商業会議所ハ是非ソレハ修正シナケレバナラヌトナツテ、悪イコトハ極ツテ居ルカラソレヲ修正スルカ廃スルカト云フノ二ツニナル、素ヨリ全廃ト云フコトハ是非悪イモノダカラシナケレバナラヌ、サウカト云ツテソレヲ捨テ置イテ宜イカト云フト、例ヘバ病人ガアル、善イ医者ニ掛ケタラ宜カラウケレドモ、其地方ニ善イ医者ガナイ、若クハ善イ医者デナクテモ売薬デモ飲ンデ置イテモ善イ医者ヲ呼ンデ来ナケレバナラヌ、全廃ナラバ早ク行レヌ修正ナレバ早ク行レルト云フノモ、昨日委員会ノ席ニ於テ会長渋沢君トハ全ク見解ガ異リマシタノデアリマスガ、ソレハ分リマセウケレドモ、先ヅ何方カト云フト一方ニ於テスルノハ、先刻モ私ガ喋々述ベマシタ如ク、政費ヲ節減シテ之ヲ廃スルト云フヤウナコトニナリマシタラ直チニ出来マセウガ、他ニ財源ヲ求メナケレバナラヌ、ソレニ就イテハ若クハ地租デモ課スルト云フコトニナツテ、或ハ実価ヲ調ベテ実価ヲ定メルトシテモ地租ヲ改正スルトシテモ短日月ノ間ニハ出来ナイ、然ルニ営業税法ハ今既ニ実施シツヽアル、之ヲ三年ヲ待ツテ実施スル営業税法ナレバ差支ナイガ、現ニ実施シツヽアルモノ故ニドウカ之ハ困ツテ居ル、是非不都合ナ廉丈ハ変ヘテ貰ハナケレバナラヌト云フノデ、別ニソレニ二ツノコトヲ云フノデナイ、ドウシテモ悪イ税法ハ御廃シナサルガ宜イガ、悪イ税法ヲ此儘置イテ廃止シテ呉レナケレバ此儘デ宜イトハ言ヘヌ、急ニ御廃シ下サルコトニシタイト云フコトニナリマスカラ別ニ二ツニハナリマセヌノデ、コヽガ協議会デアリマスカラ協議会ガ調ハヌケレバ仕方ガナイガ、調ヘバサウ云フコトデシマスカラ、矢張政府ニ於テモ此全国ノ商業会議所ニ於テドウシテモ彼ノ税法ハ悪イコトハ認メテ居ルカラドウシテモ廃シナケレバナラヌト云フ頭ガ出来マス場合ニハ、直チニ出来ヌカヲ修正ヲシテ他日財源ヲ得ルマデ待ツトナリマセウガ、要スルニ足並ガ揃ハヌト云フコトハ、素ヨリ会議ノ弊トシテドウシテモ満場一致デヤルノハ難イケレドモ、満場一致ヲ得ヌデモ四十五ナリ五十ノ会議所ガ寄ツテ僅ニ五・六会議所ガ反対ダト云フト殆ド輿論ト云ヘマセウガ、可否ヲ起立ニ問フテ見ナケレバ分リマセヌガ、殆ド全廃・修正相半バスル如クデナイカト想像致シマス、若シサウ云フ結果デ之ヲ決シマシタナラバ、当局者ガ見ル所モ余リ重キヲ置カレヌデアルマイカ、アレモ五十歩百歩デナイカ、全廃スルカ修正スルカ何方ニカ帰着スルダラウカラ、此儘ニ現行法デヤツテ置ケバ実業家ノ何方ニナルカ又案外ニアレ位区々ニナツタコトヲ云フテモ現行法ノ後ニ言出スマデモナイ、之ヲ捨テ置イテ宜イ感ジヲ持タレヌカト云フコトヲ憂ヘマスカラ、ドウカ希クバ商業会議所ハ一体ニ異ナルベキモノデナイ、農家ガ寄ツテ居ルノデナク、商工業者ノ代表者ガ各会議所カラ寄ツテ居レバ、大抵僅ニ所見ノ異ナル人ガ三・四ケ所アリマセウトモサウ折半ニナルト云フ事ナラバ絶対的ニ悪イ絶対的ニ改正シナケレバナラヌ必要ハナイト云フ感ジヲ当路者ニ与ヘ、又社会全般ニモサウ云フコトヲ思ハセハシナイカ、此際ノ如キハ直チニ一名ノ多数デモ
 - 第22巻 p.276 -ページ画像 
決行セラルヽ、或ハ県会ナリ国会ナリ一名ノ多数デモ極ツタラ法律デモ何デモ発布サレル、又地方税ノ如ク、直チニ徴収ガ出来レバ宜イガ此処デ極メマシテモ何方ニ傾イテ全会一致デ以テ極メテモ、当局者ガヤツテ呉レルカドウカ、此方ハ力ヲ尽シ運動シナケレバ決議シ放シデ出来ルトハ思ヒマセヌ、況ンヤソレガ正半数デ会長ガ何方ニカ御極メ下スツタト云フモノヲ以テ之ヲ全国商業会議所ノ輿論トハ言ヒ得ラレヌ、言ツテモ当路者デモ社会デモ認メマスマイ、ソコヲ患フルノデ、平出サンノ御論モアツタガ私ハ固ク主張スルノデハナイガ、ケレドモ先ニモ御協議会ノコトダカラ何カ拠リ所ヲ御話シナケレバ往ケマセヌカラ、先ヅ斯ウナラバト云フノデ斯様ニシタラドウデアラウカト云フコトヲ申上ゲタノデ、ソンナコトニスル位ナラバ寧ロ二ツニナツテモ輿論ト云ヘヌモノヲ以テト云フマデハ申サヌノデ、御話ガ纏マラネバ仕方ガナイガ、御話ガ纏マツタラ、全会一致ヲ以テシタトシタラ勢力モアリマセウ、議会デ論ジテモ之ガ全国会議所ノ決議シタ商工業者ノ輿論ダト斯ウ認メラレハセヌカト思ヒマス
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　今ノ御説ハ大変私ハ穏当デアラウト思ヒマス、併シ大体宜イノデゴザリマス、所デ三十三番其他ニ色々ノ御話カラシテ、詰リ全廃者ガ消滅デアルト云フヤウナ意味ヲ含マレテ御話ニナルト云フコトハ、小会議デ穏カヲ取ラレルニハ困ル、成ルベク穏当ニシテ満場ノ一致ノ望ミヲ持ツテ往クト云フ方ノ方針ヲ取ラレンガ為ニ、小会議ヲ開イテサウシテ今二番ノ御話ノ如クニシタイト云フノガ趣意ダツタラウト思ヒマス、玆ニ修正ノ方ガ勝ヲ制シタトカ云フ意向ヲ以テヤル為メ一歩譲ツテ云々ト云フコトモ面白クナイト思ヒマス、ソレデハ半バ取ツタト云フモノデナイノデ、併シ其何方ニ致シマシタ所ガ権力ヲ多ク有シテ持出スト云フ方ガ最モ得策テアリマスカラ、ソレデ私ノ考デハ大体ハ二番ト同ジデス、ケレドモ私ノ考ニハ、此全廃ト云フコトハ、勿論法ノ悪イト云フコトハ普ク御承知ノ次第デアルカラ、政府自ラ吾々ハ其方法ガ悪カツタト云フコトハ矢張顧ミテ居ラレルダラウト思フ、所デ全廃トシテ持ツテ来マスニハ一方ヲ以テ全廃トシテ、修正ト云フモノハ陳情委員ト云フモノヲ設ケテ修正ヲ十分講ジテ拵ヘテ置イテ、ソレカラ陳情委員ト云フモノハ、全廃ガ今日行レナケレバ斯ウデモシテ貰ハナケレバ今日甚ダ困難デアルト云フコトノ陳情ヲ致シタ方ガドウモ宜カラウト思ヒマス、唯両方ノ案ヲ持ツテ往クト云フコトハ出来ズ致シマスカラ、詰リ全廃ト云フモノヲ大趣意ニ致シマシテ、サウシテ之ガ矢張修正ヲ不可トスル次第デナイ、サウシテ持ツテ往ツテ、陳情委員ト云フモノニ修正案ト云フモノヲ含ンデ居ラレタラ宜カラウト思フ、サウシテ修正ト云フモノハ此処デ委員ヲ選バレテ十分御修正下サリマシテ、陳情委員ニソレヲ托スル、大体ハ表面ハ全廃ト云フモノヲ持ツテ往ツテサウシテ陳情委員ニ愈々其全廃ト云フコトガ急ニ行レナイト云フコトナラバ、斯ノ如キノ修正ニデモシテ貰ハナケレバナラヌト云フコトヲ陳情ヲ以テ致シタ方ガ大変宜カラウト思フ、ト云フモノハ、政府ガ今日現行シテ居ルモノヲ修正ヲシテ下サ
 - 第22巻 p.277 -ページ画像 
イト云フコトヲ表面上言フノハ面白クナイ、ダカラ修正ハ陳情ニ任シテ置キタイ、必ズ参考ニハナラヌト思ヒマス、ドウカ全廃ト云フコトヲ主トシテ、修正ヲ参考ニ持ツテ往ツテ、愈々全廃ガ行レナケレバ斯ノ如クシタイト云フノ修正ヲ陳情委員ガ持参シテ、縷々述ベテ親シク御話ニナツタ方ガ大変得策デアラウト思ヒマス、私ノハ大体二番ト同ジデゴザリマスガ、二ツ一緒ニ持ツテ往クヨリ一ツヲ主トシテ持ツテ往ツテ、サウシテ陳情ニ於テ急激ニ行レナケレバ斯ウモシテ貰ハナケレバ実ニ今日ニ困ルト云フコトヲ、縷々御話ニナツタラ十分修正ノ方ハ貫徹スルノデアラウト思ヒマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　陳情委員ノ御話モゴザリマスケレドモ又二番ノ行司見タヤウナ水ヲ御入レナサイマシタガ、大分疲レマシテゴザリマス、一応御極メニナツテカラデモ差支ナイト思ヒマス、此協議会ガ決議致シマシテモソレヲ実行スル場所デゴザリマセヌカラ、私ハサウ六ケ敷コトハアルマイト思ヒマス、若シモ修正ガ多数トナリマシテモ、又二番ノ御話ノヤウニ三年モ全廃ヲ実行スルニ掛ルト云フコトデ、本会ハ又近クニ開キマスカラ、御決議ニナツテモ宜カラウト思ヒマス、本会ハ本会デサツサト議題ヲ御捌キ下サルガ宜イト思ヒマス、折角二番ノ御注意モゴザリマスガ……
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　普通ノ会議デゴザリマスト、此処デ全廃ガ否決致シマストソレデ消滅シテ再ビ顔ヲ出スコトハ出来マセヌガ、此会議ハ今之ガ採決ヲシテ少数デ全廃ガ否決致シマストキニハ、全廃説ヲ再ビ出スコトハ出来マセヌデゴザリマセウカ、ドウ云フ御整理ノ御積リデゴザリマスカ
　○議長（東京、渋沢栄一君）　会議トシテハサウヨリ外ゴザリマスマイ、別ニ又此会場ニ特ニ議事規則デモ御定メナサイマスレバ格別デゴザリマスガ、拠ルベキ議事規則ハ、東京商業会議所ノ規則ニ依レバ、一議題ガ消滅シテ仕舞ヘバ又再ビ持出シテ論ズルコトハ何レノ会議所デモナイヤウデゴザリマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　ソレデ私ノ御尋ハ確マリマシタ、ソレデ全廃派ニ譲レト云フコトガゴザリマスニ就イテ尚考ヘマスニ到底此処デ御譲リスルトカ御譲リナスツテ貰フト云フコトハ六ケ敷コトデゴザリマス、之デ若シ少数デ全廃派ガ消滅致シマシタ処ガ、今度ノ修正案ガ成立チマシタ処デ、可決致シマシタ所デ、之デ同意スルヤ否ヤト云フ所デ、迚モ全廃ガ出来ヌ以上ハセメテ修正ナリトモ貫徹サセタイト云フコトニナリマシタラ、足並ヲ揃ヘタイト云フコトデ致ス意見ガ分リマセヌ、若クハ止メルカ知レマセヌ、之デ何方ニカ決スルノハ六ケ敷ナイカト思ヒマス、ソレデ序ニ申上ゲタイノデスガ、此採決ヲ中止シテ、仮ニ修正案ガ多イトシテ修正案ヲ拵ヘテ一ツ審議討論致スコトニナツタラ如何デゴザリマセウ、若シ此案ガ出来マシタラ全廃者モ鐙《（兜カ）》ヲ脱シテ之ニ同意ヲ表シタイト云フ考デス
○五十番（京都、中野忠八君）　モウ大抵御話ハ連日続イテアルコトデゴザイマスカラ、御説ハ尽キテ居ルト思ヒマス、折角二番ノ仲裁ノ御話ガ出テ居リマスケレドモ、ソレガ為メ本員等ガ譲ルト云フコト
 - 第22巻 p.278 -ページ画像 
ハ全廃案ニハシ悪イ、寧ロソレヨリハ首斬ラレルモノナラバ斬ラレテ仕舞フ方ガ諦メカ付キマス、折角二番ノ御説ヲシテ成立ツトスルト、虎ノ頭ヲ斬ツテ竜ヲ附ケテ政府ニ御覧ニ入レルノデ、若シソレヲ獣類ニスレバ何ト評シテ宜イカ分ラヌト思ヒマス、ドウカ御採決ト云ツテモ可笑イカ知リマセヌガ、何方カニ極メタ方ガ進行上却テ円滑ニ往カンカト思ヒマス、若シ全廃案ガ否決シマシタ暁ニハ京都商業会議所ハ修正案ニ就イテ意見ヲ持ツテ居リマス
○十番（知多、天野伊左衛門君）　私ハ大体ニ於テ二番ニ同意デゴザリマスガ、色々御説ガアリマスガ、其中先ニ申述ベ置キマスガ、唯今四十八番カラ会議ノ法ニ於テノ御問ヒニ就イテ一応申シマス、玆デ修正ト廃止ト両案戦フ時ニ於テ、何方ガ首ガ斬ラレルカ落チルカ知ラヌガ、ソコデ決議ニナツテ修正案ガ勝ヲ制シタ時ニハ、修正ニ就イテ一ノ意見ヲ御定メニナツテ、而シテ其修正意見ニ於テ立派ナ案ガ出来レバ、一旦首ヲ斬ラレタ時ニ黙ツテ居ルモノモ、見苦シイ案ガ出来レバ、修正ガ各会議所カラ提出シテ居ルモノダカラ、首斬ラレタモノモ亦生キ返ラナケレバナラヌト云フコトニナル、今ノ所デ見ルト反対ニ立ツタ所ノ敵ハ幾ツカノ兵器ヲ持ツテ居ルト云フヤウナ有様、ドウシテモ一ノ物ガ定ツテカラモウ一度戦ツテ見ルト、会議ノ上ニ於テ本統ノ精神ヲ持ツコトガ出来ヌト思ヒマス、而シテ其結果ドウデアルカト云フト、或ハ首ヲ斬ラレテ居ル者ガ黙ツテ居ル商業会議所ガアルデゴザリマセウシ、又少数ナル会議所デ修正ノ反対ニ立ツテ議決サレタ処ガ其会議所ノ中ニ於テハ中々首ヲ斬ラレタナリデ黙ツテ居ラヌデ、一方カラ修正案ヲ提出シテ政府ニ向ツテ、一方カラハ廃棄説ヲ述ベルト云フコトニナツタラ、恐ラク何方ノ意見ヲ当路者ガ採ツテ宜イカト云フコトニナルト、此商業会議所ノ聯合会ノ意見ガ薄弱ニナツテ来ルダラウト思ヒマス、之ヲ足並ヲ揃ヘテ往フト云フ二番ノ御説ハ至極穏当ナヤリ方デアラウト思ヒマス、譲ル譲ラヌト云フコトハ何レモ自惚心ノ説デアツテ、全廃者ノ方カラズツト譲ツテ貰ヒタイト云フノハ、修正デ勝ヲ制シテ目的ヲ達スル御意見ガアルカラ、之ヲヤツタラ政府ハ直グ同意ヲスルダラウト云フ斯様ナ自惚心カラ来ルノデ、又全廃者ノ方ヲ云ツテ見ルト、譲レナイト云フノハ所謂御望ミヲ修正派ノ方ガ遂ゲルコトハ出来マイ却テ全廃ノ方ガ是レ一方デ往ツタラ意見ヲ貫クデアラウト云フ希望ヲ持ツテ居ル、両方共ニ自惚心デ、実ニ二番ノ説ハ両者ノ意見ヲ完フスルコトガ出来ル、二番ノ御説ニ依ツテ見ルト云フト、不良非理ノ税法デアル、ドウシテモ之ハ廃シテ貰ヒタイ、政府ハ財政ノ都合ニ依ツテ急ニ之ヲ廃スルコトガ出来ナカツタ時ニハ、万止ムヲ得ヌカラ当分ノ中此修正ヲ容レテ是非実行シテ貰ヒタイ、ト云フノデゴザリマスカラ、全ク全廃ト云フコトガ全国聯合商業会議所ノ上ニ於テ精神ガ一致スルノデス、万止ムヲ得ヌ時ニ斯ノ如キ不完全ナ修正ホカ出来ナイケレドモ、是ナリトモヤツテ呉レタラ大ニ現行法ヨリ宜カラウト云フノデゴザリマスカラ、勝ツモ負ケルモナイ話デアルソレデ大体ニ於テ二番ノ説ガ御話合ガ出来タナラバ私ハ矢張リ好結果ヲ見ルデアラウト思フ、只今横浜ノ会議所ノ御意見ヲ御述ベニナ
 - 第22巻 p.279 -ページ画像 
ツタノハ二番ノ大体ガ決シタ所デ之ヲ実行セシムル方法デアラウト思フ、二番ノ説ヲ大体決シテ或ハ文案ハドウヤルト云フ方法ニ這入ツタ上デ大谷君ノ御説ニ付テモ講究スベキ価ハ十分アラウト思フ、今ノ説ヲ賛成シマス
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　果シガ附キマセヌカラ二番ノ御説ヲ一ノ動議トシテ決ヲ採ラレムコトヲ希望シマス
○五十七番（東京、中野武営君）　本員ガ黙ツテ居ルト何カ野心ガアル様ニ思ハレルカ知ラヌカラ一言シマス、東京商業会議所ノ意見トシテハ別ニ意見ガアリマスケレドモ、此場合中野一己ノ意見トシテハ二番ノ説ニ賛成ヲシマス、其方ガ早ク片附クト思フ、ソコデ二番ノオヤリニナルノハドウ云フ結果ニナルカ知リマセヌガ、ドウカ一ツ御纏メニナツテ、之ヲ起草シテ文章ガ出来マシタラバ宜カラウト思フ、兎モ角モ一ツ二番ノ御説ノ様ナコトニシテ、其趣意ノ起草ヲシテ見タラ宜カラウ、サウスレバ全廃論者ノ意モ言ヘル修正論者ノ意モ言ヘルト云フコトニナラウト思フ、随分文章ノ言ヒ廻ハシ次第デ説ガ立ツト思フ
○五番（函館、平出喜三郎君）　私ハ協議会ノ御相談トシテハ中野君ノ御説ハ御尤ト思ヒマス、モウ時間モ大分過ギマシタカラ今日ハ此儘ニシテ置イテ、中野君及ビ会長ニ御願ヒ申シテ、明朝迄ニ一ツ政府ヘ出スト云フ草案ヲ作ツテ貰フト云フコトハ、協議会トシテハ大キニ善イ御相談ト思ヒマスカラ私ハ賛成シマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　協議会ハ開ケテ居リマスガ、協議会デノ方案ハ二番カラ御提出ニナツテ其趣意ニ於テデス、例ヘバ廃止ト云フコトヲ主義トシタル修正意見ノ様ナモノデハイヤダトカ、ソレカラ修正ト云フ文字ガ加ハルヨリハ廃止ヲ土台トシテ修正ハ一ツノ附属条項トシテ言フガ宜イ、ト云フ様ナ双方ノ御説ガ見ヘル、色々ナ説ガ見ヘマスガ、其内ノ重モナル廃止論者カラ言ヘバ、廃止ヲ原則トシテ仕舞ツテ修正ヲ例ヘバ十二番ノ御説ノ如ク陳情委員ヲ以テ特ニ申ス様ニスルガ善イ、或ハ五十一番ノ様ニ他ノ条件ガ極ラヌト修正ト云フ文字ニ対シテ之ニ同意ハ出来ヌ、是レハ廃止論者ノ方カラ見ルト又新タナ御説、然ルニ四十二番サンノ御説ハ是迄ノ往キ掛リカラ廃止ト云フコトハ言ヘヌ、修正デナケレバナラヌト仰ツシヤル様デアリマスカラ、詰リ二番ノ出シタ提案ガマダ熟シテ居ラヌ様ニ思フ、五十七番ハ二番ノ意見ヲ文章ニ綴ツテ本会ニ出シタラドウカト云フノデアリマスカ
○五番（函館、平出喜三郎君）　一応二番ノオヤリ様ニ付テ伺ヒマスガ全廃ヲ主トスルカ或ハ修正ヲ主トスルカト云フコトヲ又ヤリマスト訳ガ附カヌト思ヒマスカラ是レハ暫ク置キマシテ、中野君ガドウ云フ案ヲ出サレルカ、其案ヲ出シテ貰ヒタイト云フ二番ノ説ニ付キマシテ、ソレニ主従ガ二ツ要ル、全廃ヲ主トスルカ修正ヲ主トスルカト云フコトノ議論ニナリマシタラバ、是レハ私ノ考ヘデハ一応修正ガ善イカ全廃ガ善イカト云フコトヲ採決イタシマシテ、多数ノ方ヲ主トシテ少数ノ方ヲ従トシナケレバナラヌ、是レハ互ニ主張シマシタナラバサウナルガ、今カラソコ等ノ所ヲ注文ヲシテ案ヲ拵ヘテ貰
 - 第22巻 p.280 -ページ画像 
ハヌデ、兎モ角今中野君ニ案ヲ拵ヘテ貰ヒタイト思ヒマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　御協議ノコトデアリマスカラドナタニ御注文シテ宜シウゴザイマスカ分リマセヌガ、私ハ甚ダ微弱ナ説ヲ述ベマシタケレドモ、アレヲドウカ御相談下サイマシテ、採決ト云フ程デナクトモ、兎ニ角私ガ申シタ説ヲ採ルカ採ラヌカ、若シ採ルガ宜シイト云フコトニ御極メニナレバ、ソコデ起草委員ナリ何ナリ御定メニナツテ、サウシテ起草委員ノ案ガ出タ所デヤリ方ノ御論ニナルト云フ斯ウ云フ順序ニナツタラドウデスカ
○三十番（岡山、香川真一君）　単ニ中野君ノ説ヲ賛成スル、本案ヲ出シテ見タラバ案外面白イモノガ出ルカモ知レヌト思フ
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　十二番ハ一言シタイ、只今起草ヲ中野君ニ頼ムト云フコトデアリマスガ、私ハ小会議ノ主張者二番サント会頭ト中野君ノ御三君ニ願ヒタイト思フ
○議長（東京、渋沢栄一君）　御待チ下サイ、若シ起草ノコトヲ言フナラバ、成ルベク色ノハツキリセヌ方ニ願フタラドウカ、即チ二番サンカ或ハ大阪トカ、十一番サントカ、神戸トカ若クハ岡山トカ是等ノ五ケ所位ニ御依頼シタラドウカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　私モ会長ノ御説ノ如ク、今誰ト御極メニナルヨリモ、五君ナリ七君ナリト云フコトデ兎ニ角人ヲ極メテ起草ヲ托スルト云フコトハドウデゴザイマセウ
○議長（東京、渋沢栄一君）　此ノ協議会ガ、皆様ガ今二番ノ御意見ヲ此ニ文章ニ表ハシテ、諸君ノ賛成ヲ求ムル様ニシナケレバナラヌト云フ説ガ出マシタ、ソレヲシヤウト云フニハ此ニ形チ造ツタモノヲ拵ヘナケレバナラヌ、其形チ造ツタモノヲ拵フルニハ、ドウシテモ往キ掛リカラ偏スルト云フ様ナ嫌ヒガ是レ迄ノ議論ノ傾キガ見ヘルカラ、成ル丈ケ中庸ニ立ツタ方カラ起草委員ヲ立テタガ宜カラウト思フ
○二番（名古屋、奥田正香君）　協議会ノコトデアリマスカラ極簡単ニ言フテモ善ウゴザイマスカラサウ云フコトニ御極メヲ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソコデ多数ノ御意向ヲ伺ヒツヽアルガ、併シマダソレハ必要ガナイト云フ様ナ五番サンヤ六番サンノ方ニハ見ヘタ、所謂修正派トシテ同意セヌト云フ様ニ聞ヘタ、又五十一番ハ反対派トシテ何カ条件ガナケレバ己レハ同意ガ出来ヌト言ハレタ其固マリハドウナリマスカ
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　会頭ニ任カセテハドウカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　大体ダケ極メテハ……
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デアリマスカ、今ノ協議会問題ハ協議会ノ議題ニナリ得ルガ、併シ皆様ガ其必要ガナイト云フト、協議会デ出来タ原案ガ又打毀ハシニナルト何モ効能ガナイコトニナル
○二番（名古屋、奥田正香君）　ソレデ協議会ハ詰リ文案ヲ起草シテ見ヤウト云フコトニシテ、本会ヲ開イテ余リ不都合ガナイナラバ同意セウト云フコトニ願ヒタイ（賛成々々ト呼ブ者アリ）
○十九番（仙台、木村一是君）　ドウゾ其委員ハ会長ノ御指名デ中庸ヲ得タ方ニ願ヒタイ
 - 第22巻 p.281 -ページ画像 
○五番（函館、平出喜三郎君）　サウスルト修正ノ文章ヲ出シタモノヲ遵守シロト云フノデアリマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　併シ出タ以上デ己レハサウ云フコトニ同意セヌト云フ位ナラバ作ラセヌガ宜イ、ソコデ文案ヲ作ラセルト云フコトガ多数ノ御意向デアルカドウト云フコトヲ伺ウノデアリマス
○五番（函館、平出喜三郎君）　能ク御話シ申シテ拵ヘテ貰ハヌト困ル跡デ出来タモノヲ目茶々々ニスルトイカヌト云フ議長ノ御心配デアリマスカラ、能ク皆サンノ腹ニ這入ラナケレバナラヌ、私モ先キニ申シマシタガ、税ト云フモノハ絶対的悪ルイモノデナイ、其ノ辺ノ所ヲ能ク御考ヘニナツテ委員ガ拵ヘタ、反対ノ理由ヲ言フナラバ、無効ナモノデアルト云フコトヲ言ハレテハ困ル、拵ヘタモノヲ目茶目茶ニスルノモ悪ルイガ必ズソレニ従ハナケレバナラヌト云フノハ迷惑デアルカラ、ソコ等ハ打合セテ御極メヲ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　二番ノ御説ハ是レハ成ルベク多数ヲ得タイト云フ考ヘデ、折衷案ニ依テシヤウト云フ其折衷案ノ根拠ノ立テ方ガ、固ヨリ修正スレバ結構ナ税法デゴザルト云フノト、不良ナ法デアルガ急ニ全廃ニハナルマイカラ先ヅ修正シテ是レト云フノトデハ大キニ違ヒマスカラ、ドチラカニ凡ソノ意味ヲ立テ置カヌト、此原案ハ我々ノ希望シタコトヽ違ウト云フコトガ跡デ生ズル恐レハナイカト思フテ念ヲ推スノデアリマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　今会長ノ御述ベニナツタ如ク、兎ニ角二ツニ分レテ居ツテハ面白クナイ、全会ガ一致ガ出来ナケレバ八・九分通リハ其足並ヲ揃ヘタイト云フノハ是レハ一方ニ偏シタ御説デゴザイマセウガ自分ハ一方ニ偏シナイ説ノ積リデ仲裁説同様ノコトヲ申シテ置キマシタ、併シサウ云フコトハ全ク無用デアルト云フ御意向ガ無ケレバ起草委員ヲ置ク必要ハナイ、兎ニ角起草委員ヲ設ケテ置クガ宜イト云フナラバ議長ノ御指名デヤルト云フコトニシタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマセウ、協議会ノ結果ハ今二番ノ言フ様ニシタラドウデスカ、納マリガ附カヌカラ……
○六番（佐賀、西村万次郎君）　只今ノ御説ノ原案ヲ拵ヘル委員デアリマスガ、今問題ニナツテ居ルノハ別ニ置イテ外ノ原案ガ出来マストサウシマスト今迄ノ議事ハ会長デハドウ云フコトニ御納メ下サルカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト修正ト廃案トノ間ニ一ツノ動議ガ生レテクルト云フコトニナリマセウ、其動議ガ皆サンガ御同意デアツタラ、是迄ヤリ来ツタ修正トカ廃案トカ云フコトハ此議場デ採用サレヌデ、其一動議ニ依テ確定サレルコトニナラウガ、ソレガ一ツノ議場ノ評議スベキ問題ニナルコトハ、別ニ差支ナイコトテアラウ
○五十番（京都、中野忠八君）　先ニ述ベマシタ如ク決ヲドチラカニ極メテ貰ウ方ガ却テ跡ガ円滑ニ纏マルト思フ、二番ノ鵺ノ様ナ案ニナルト絶対的反対セニヤナラヌヤウナ場合ニナラウト思フ、私ハ二番ノ説ニ同意シマス
○二十四番（栃木、石塚新吾君）　一寸伺ヒマスガ、只今ノ文案ヲ起草スルト云フ事ニ付キマシテハ、詰リ二番ノ述ベラレマシタ趣意ニ依
 - 第22巻 p.282 -ページ画像 
テ文案ヲ拵ヘテ、ソレヲ明朝協議会ヲ開イテソレガ宜カラウト云フコトニナツタラ一ツノ動議トシテ持出スト云フコトデアリマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ハイ協議会ヲ此ニ閉ヅレバ其案ガ協議会デナシニ持出スコトモ出来ル
○二十四番（栃木、石塚新吾君）　若シソレニ対シテ不同意デアツタナラバドウナリマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　其案ガ廃棄サレルト詰リ無用ノ手数ニナル、又修正ナリ廃案ナリヲ決セネバナラヌコトニ、帰スルノデアリマス
○二十四番（栃木、石塚新吾君）　困ツタモノデスナ
○議長（東京、渋沢栄一君）　困ツタモノダカラ其折衷ガ成立テバ困ラナクナル
○五番（函館、平出喜三郎君）　ソレデハ其案ノ成立ツ為メニ主従ニ付テ決ヲ採ラレタラ宜カラウ、委員会ニ於テモ四人ニ対スル七名ノ多数ヲ以テ修正スルト云フコトニナツタノダカラ、モウ眼前ニ紛争ヲ起シマスカラ、此処デドツチヤヲ採ルガ宜イト云フコトヲ採決シマシテ、採決シタ暁ニ勝ヲ占メタ方ヲ主トシテ残ツタ方ヲ従トスルコトニシテハドウカ、左モナイト文案ガ出来タ所デ明日又大変争ヒガ出来ル、私等ノ主張スル所ハ負ケマシテモ、其負ケタ者ニ判ヲ押スト云フコトハ押シ悪イガ、反対運動ヲスルト云フ様ナコトハ徳義上シマセヌ、自分ガ少数デアツタカラ反対ノ運動ヲスルト云フコトニナツタラ、将来聯合会ト云フ者ハ無益ナモノデ最早五十箇所ノ会員ガ揃フテ五十箇所ノ人ガ出テ居ル以上ハ顔色ノ違フ如ク説ガ違ウカラ、若シ負ケタラ反対運動ヲスルト云フコトニナツタラ、聯合会ハ無益ナコトデ、只人ヲ騒ガスコトデアルカラ、ソレ丈ケハ謹ンデ多数ニ従フガ判ハ致シマセヌ、ソレデ全廃ヲ主ニスルカ修正ヲ主ニスルカガ極ラヌト、ソレノ争ヒガ出来ルト思フカラ兎モ角全廃ガ善イカ修正ガ善イカヲ採リマシテ文案ヲ起草スルガ宜シイ、先ノ十二番ノ言フ様ニ全廃ヲ採ツテ陳情委員ヲ出スガ善イト云フコトデアルガ私ハ修正ノ方ヲ採ツテ全廃ノ陳情委員ヲ出シタガ宜イト思フ
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　只今五番ノ御話デ、私モ五番ノ御熱心ナ所ハ誠ニ自分モ商業会議所ノ者ト致シマシテ誠ニ感服スル次第デアル、何ンデモサウ御熱心ニ願ウガ国家ノ為メダト思フ、所ガ只今ノ御説ノ中ニ良シヤ多数デ全廃ガ勝ヲ制シ様トモ、或ハ修正ガ勝ヲ制シ様トモ、其勝ヲ制セラレタ方ニ向ツテ意見ハ言ハヌガ調印ヲセヌト云フ様ナコトガアリマシタガ、成ル可クハ此処ヘ寄ラレタ諸君ハ一致ヲシテ往カナケレバナラヌト云フノガ既ニ二番ノ説ダ、一人デモ己レハ不同意ダカラ抜ケルト云フコトニナリマシテハ此法案ヲ改正セシムル所ノ場合ニハ如何カト思フ、仮令ヒ一人デモ二人デモサウ云フコトガアリマシテハイカヌカラ、成ル可ク是レハ全会一致ヲ以テ政府ニ出サナケレバナラヌト云フ今日ノ場合デアリマスカラ、殊ニ全廃モ修正モ同ジ様ナ意見デ根本ハ別ニ違ツテ居ラヌ、全廃ハ宜イガ全廃ハ今日ノ場合急激ニイカヌカラト云フノガ修正諸君ノ御考ヘデ、完全ナモノト思フテ居ラヌ、飽迄モ不完全ニ思フテ居
 - 第22巻 p.283 -ページ画像 
ルガ急激ニ之ヲ廃スル事ハ行ハレヌカラ、ソレヨリモ寧ロ修正ヲ加ヘテ実行シテ貰ツタ方ガ宜カラウト云フノガ趣意ト思フ、サウスルト之ヲ全廃スルノハ皆サン御同意ト言ツテ善イ、ソレヲ急激ニヤレヌカラ修正ヲシテ貰ハウト云フ御趣意ト思フ、サウスレバ仮令ヒ一地方ノ商業会議所デモ一人デモ之ニ反対シタト云フコトハドウモ私ハ矢張リ力ガナイコトニナルト思フ、飽迄モ一致シテヤツタ方ガ名名ノ此実業界ノ為メデアリマスカラ、飽迄モ一致ヲシテ往ク方ヲ私ハ取リタイ、他ノ会議ト違ヒマシテ、全ク営業税法ノ悪ルイガ為メニ斯ノ如ク煩ハス会議ヲ開イタ次第デアリマセウカラ、飽迄モ一致ヲシテ此事ヲ貫徹スルト云フ方針ヲ取ラレル方ガ最モ我々ノ責任ヲ全フスルモノト思ヒマスカラ、ドウカ一致ト云フコトニ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ドウ致シタモノデセウ
○五十一番（京都、大沢善助君）　ドウカ協議会ヲ纏メナケレバナラヌノデアリマスカラ、私ハ自分ノ説ハ跡ニシテ御協議ガ出来ルナラバ結構デアリマスガ、併シ今ノ平出君ノ主客論ノヤウナコトガ出マシテ、或ハ修正ト云フコトガ多数ヲ占メル様ニナツテ修正ガ主ニナツテ全廃ガ客ニナルト云フ様ナ文章ハドナタガ委員ニナツテモ出来ヌト思フ、土台出サヌト云フノガ主デ其次ハ出スト云フコトニナラナケレバイカヌ、工合ガ善ケレバ出シマスガ左モナケレバ出セマセヌト云フ案ハ出来マセヌト思ヒマス、纏メル方ノ腹ガアルナラバ二番サンカラ出シテ貰ウコトニシテ、他カラ喙ヲ容レヌコトニシタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザリマセウ、決議案ニ条件ヲ立テナサルヤウニスルト、平出サンノ仰シヤツタヤウニ又ナツテ来タラ甚ダ協議会ガ治リガ付カナクナル、出来タ文案ニ就イテエライ御多数ガ御不同意ガアルト云フ恐ガアルカ知ラヌガ、其恐ガアルト同時ニ皆様ガ宜イト思ツタラ此議場ガ大賛成デアルカ知ラヌガ、兎ニ角玆ニ二番サン御一人ニ委員ヲ頼ムト云フノモナンデセウカラ、大勢ハ要リマスマイガ、成ルベク三・五ケ処ノ中庸ニ居ル御方ヲ起草委員ニ御依頼ニナツテハドウデス
○三十番（岡山、香川真一君）　岡山ト云フコトガ出マシタガ、実ハ角力取ノ間ニ出タ螺ガ峠ヲ守ツテ居ルノデ、多イ方ヘ付クノデアリマスカラ、ソンナモノハ委員ニハ不都合デアリマスカラ、ソレハ御除キヲ願ヒタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　素ヨリ私ガ先刻杞憂シテ無用ノ協議会ヲ開クト云フヤウナ御感覚ガゴザリマセウシ、又先ニモ申シマシタ如ク無用ニナルカ知ラレヌ者ヲ持出シテ済ミマセヌガ、唯要スルニ自分ハ纏メガ付ケタイノデ、双方ニ傷ガ出来テ宜クナイカラ仲裁シタノデ、原被両造ノ費用ヲ払ヘ、貴様カ関係シタノハ逃ゲタカラ貴様一人デヤレト云フコトハ無理ナ注文デアラウト思ヒマス、物言フタモノガ逃ゲルコトガ出来ヌノハ止ムヲ得マセヌガ、五十何名デ喧嘩買フタモノヲ一人デ脊負ヒ切ルノハ六ケ敷イ、唯今岡山ノ方ガ螺ガ峠ダト云フコトデアリマシタガ、其方ノ主唱者ハ私デ、ソレデ御免蒙ルナラ結構デスガ置キ去リヲサレルノハ仕方ガナイ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　二番ノ思ハク通リ起草シテ頂キ御
 - 第22巻 p.284 -ページ画像 
趣意ノアル所ヲ書面ニ現シテ作ツテ頂戴シタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何デス、サウ皆様デ区々ニ仰シヤイマスト到底評議ガ出来ヌト云フコトニナリマスカラ、詰リ此会議ト云フモノヲ兎ニ角終結セシムルヤ否ヤ、御自身デ御考ニナツタラドウデス
○二番（名古屋、奥田正香君）　発議者ニ起草ヲ托スルトナルト容易ニ発議出来ヌヤウニナラウト思ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　二番サンガ起草ヲ御受ケナサルハ適当カ分リマセヌガ、ソレハ何レ協議会ヲ纏メタラ、協議会ノ趣意、折衷文案ヲ作ルト云フ趣意ニ就キ、其折衷文案ヲ作ルヤ否ヤヲ協議会デ御認メナサレバ宜イジヤアリマセヌカ、五十番ハ必要ガナイト云ヒ五番ハ条件ヲ付ケナケレバナラヌト云フ、廃止説ヲ主張スル人モ条件ヲ付ケナケレバナラヌト云フ、サウシテ見ルト採決シテ見ナケレバ分ラヌ、サウスルト畢竟協議会ニ移シタ効能ガナイ、ソレヲ厭フノガ二番ノ協議会ノ趣意デ、二番ノ趣意ヲ相当ト見レバ、二番ノ論ジラレタ如ク丸デ文案ヲ作ツテ協議会ヲ纏メテ、協議会デ何程ノ人数デヤツテ貰フカト云フコトハ、第二段ニ運ブトシテヤツタラドウデス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　五名位ニドウカ
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　会頭ニ御任セシテ然ルベクドウカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ如何デゴザリマセウ、協議会ノ結果トシテ、二番ノ御述ニナツタ趣意ヲ一ツ自カラ折衷議案ト申ス如キモノニナルソレヲ一ツ造ル、就テハ起草委員ヲ五名選ブ、三十番デスカ己ハ除ケト云フ説ガアリマシタガ御一人ガ条件付ニ除クト云フコトヲ極メラレルト困ル
○三十番（岡山、香川真一君）　除ケテ下サレト云フ訳デハナイガ、唯私ハ何方ニデモ付クト云フノデ、唯会議ノ纏リヲ希望スルト云フノデス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレナラバ宜シイ、ソレデハ二番ノ御発議ハ、詰リ協議会ヲ纏メテ二番ノ御説ニ依ツテ二番ノ話ノコトヲ五名ノ委員ヲ選ンデ一ツ文案ヲ起草シテ貰フト云フコトニ就イテサウ極メマシテ宜シウゴザリマスカ（賛成々々ト呼ブ者アリ）
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ大阪商業会議所・名古屋商業会議所・岡山商業会議所・神戸商業会議所・知多商業会議所此五ケ所ノ御方ニ御依頼シマス、昨日ハ人名デ申シマシタガ、御都合ニ依ルト二人御出ノ処ハ御申合セニナリマセウト思ヒマスカラ今日ハ御場所デ申シマス、ソコデ如何デゴザリマセウ、此文案ハドウ云フ御都合ニナリマセウカ、予メ明日一日位御猶予ガナケレバ困リマセウガモウ連日御議論デ御疲レデセウカラ一日位御休ミニナツタラ宜カラウト思ヒマスガ如何デゴザリマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　明後日議事ヲ開クコトニドウカ、サウシテ大阪モ其御指名ニ加ハリマシタガ、条件ハナイコトニ願ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　条件ハナイノデス、附托サレタ此範囲内
 - 第22巻 p.285 -ページ画像 
ト云フコトハナイノデス――明日ハ午後一時カラ財政ノコトニ就イテ協議会ヲ開キマス、御欠席ノ方ハ御通知ヲ致シマス、左様御承知ヲ、ソレデハ今日ハ之デ散会致シマス
　　午後三時二十分散会

明治三十年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第二二九―二六六頁　刊
明治三十年十二月八日午前十一時三十分開議
　　出席委員　　　　　四十七名　○氏名略
　　有志出席員　　　　　　三名　○氏名略
　　出席事務員　　　　二十二名　○氏名略
○議長（東京、渋沢栄一君）　諸君、今日ハ私ハ甚ダ遅刻致シマシテ開会ガ遅ナハリマシテ申訳ガゴザイマセヌ、今日ハ一昨日ノ引続キノ協議会ヲ御開キニナル様ニ致シタウゴザイマス
　　　　協議会　午前十一時三十一分開会
○議長（東京、渋沢栄一君）　協議会ニ於テ成立チマシタ委員ノ方々カラ一ノ修正案ガ御取調ニナリマシテソレハ皆様ニ差上ゲテゴザイマス、ソレニ付テハ委員ノ方々ノ中カラ其次第ヲ一応御申述ベ下サルデゴザイマセウ
　　　〔左ノ議案参照ノ為メ掲載ス〕
　　協議会ノ決議ニ依リ附託セラレタル営業税法ニ関スル意見書立案ノ件、審議ノ末別紙ノ如ク起草致候間、此段及御報道候也
　　　明治三十年十二月七日

　　　　　　　　　　　　　　　委員
　　　　　　　　　　　　　　　　知多商業会議所委員
　　　　　　　　　　　　　　　　名古屋商業会議所委員
　　　　　　　　　　　　　　　　神戸商業会議所委員
　　　　　　　　　　　　　　　　岡山商業会議所委員
　　　　　　　　　　　　　　　　大坂商業会議所委員
　　　　営業税法ニ関スル意見案
　　現行営業税法ハ、大体ニ於テ不良ノ税法タルニ止マラズ、税法ニ貴フベキ課税標準ノ明確不動ナルコト及ビ徴収方法ノ簡易公平ナル事ノ二要素ハ全然之ヲ欠ケリ、同法制定以来批難百出、特ニ其実施ニ際シテ物情騒然、官民乖離ノ状アルニ至リシモノ、職トシテ此ニ由ラズンバアラズ、蓋シ租税ハ国民ノ勤勉労働ニ課スルヲ避ケ、勤勉労働ノ結果タル財産ニ課スルヲ以テ本旨トスベキニ、営業税法ハ売上金額・資本金額・報償金額・請負金額ノ如キ類ヲ課税標準トシテ専ラ商工業者ノ勤勉労働ニ課税スルノ方針ヲ取レリ、是ノ如クンバ啻ニ商工業者ノ勤勉心ヲ阻害スルノミナラズ、其極遂ニ商工業ノ発達ヲ阻害スルヲ免レズ、是其大体ニ於テ不良ノ税法タル所以ナリ、而シテ同法ハ売上金額・資本金額・請負金額・報償金額・建物賃貸価格・従業者ヲ以テ課税標準ト為セリト雖トモ、個人ノ営業ニ在テハ以上六者一トシテ増減常ナク且ツ之ヲ確知スルコト至難ナルモノナラザルハナシ、故ニ之ガ課賦ヲ定ムルニ当リ営業者ノ申告ハ収税吏ノ臆算ニ一致セズ、種々ノ撿査
 - 第22巻 p.286 -ページ画像 
ト幾多ノ手数トヲ要シ、而カモ其徴収ノ結果同一営業ニ於テスラ寛苛軽重甚シク其度ヲ異ニスルヲ免レズ、徴税費ノミ徒ラニ多キヲ加ヘテ国庫ニ収入スル所予期ノ如クナル能ハザルニ至ル、畢竟其是ノ如クナル所以ノモノハ、課税標準明確ヲ欠キ徴収方法簡易ナラズ、賦課ノ全部ヲ挙ゲテ収税吏ノ認定ニ一任スルノ外ナキカ為メノミ、熟々同法実施以後ノ状況ニ徴シ併セテ同法ノ大体ヨリ考察スルニ、向後縦令之ヲ改正加刪スルモ到底完全ナル税法タラシムルニ由ナシト信ズ、故ニ現行営業税法ハ速ニ之ヲ廃止セラレンコトヲ望ム
　　然レトモ国家財政ノ燮理上之ニ代ルベキ財ヲ得ルニ非ザレバ遽ニ同法ヲ廃止スル能ハザル事情アラン乎、則チ宜シク一面ニ於テハ速ニ適当ナル財源ヲ得ルニ力メ、一面ニ於テハ此際現法中最モ煩雑ニシテ且ツ弊害多キ点ヲ改正シテ、目前ノ困難ヲ匡救スルヲ期スベシ、即チ課税標準ニ於ケル賃貸価格、従業者ノ如キ極メテ煩雑ナル手数ヲ要シテ而カモ其実数ヲ知リ難キモノハ断然之ヲ課税標準中ヨリ除去シ、其他ノ算定方法ニ至テモ収税吏ヲ異ニシ収税署ヲ異ニスル毎ニ寛苛軽重ノ度同一ナラザルガ如キ弊ナカラシメ別ニ各地適宜ノ区域内ニ法定上ノ調査委員ヲ新設シ、之ヲシテ営業税ニ関スル調査ヲ為サシムルコト猶所得税ニ於ケル所得税調査委員ノ如クスベシ、是固ヨリ完全ノ改正ニアラズト雖モ是ノ如クナルヲ得ハ庶幾クハ同法ヨリ生ズル弊患ハ其幾部ヲ除却シ得ン
　　之ヲ要スルニ、将来ノ我国ハ商工業ノ発達ヲ謀ルヲ以テ国是トセザル可ラズ、已ニ之ヲ国是トスル以上ハ商工業ノ発達ヲ阻害スベキ現行営業税法ノ如キハ断然之ヲ廃止セラルベキヲ疑ハズト雖トモ財政上ノ事情今日直チニ之ヲ廃止スル能ハズトセバ、縦令不完全ノ嫌アルモ前記ノ如ク改正シテ無益ノ紛雑ヲ官民間ニ醸成スルノ不幸ヲ薄クスベシ、現法ノ如クニシテ其賦課ヲ受クルハ商工業者ノ一日モ耐フル能ハザル所ナリ
○二番（名古屋、奥田正香君）　一昨日ノ協議会ニ於キマシテ委員ヲ御置キニナリマシタガ、委員ニ於キマシテ一昨日来意見案ヲ起草シマシタ、是レハ只御附托ノコトヲ只文章ニ致シマシタト云フニ止マリマシタノデ、別段委員ヨリ詳細ニ述ベル必要ハアリマセヌ、其意見案ハ印刷ニ附シマシテ御手元ニ廻ハシマシタカラ御一読下サレタコトト思ヒマス、固ヨリ此案タルヤ発議者ニ於テモ深キ理由ノアルノデハナク、斯ノ如クデモシテ極リヲ附ケタラドウカト云フノデ協議会ニ向ツテ発言ヲシテソレニ付テ御担当ヲ申シタノデ、尚ホ此案等ニ付テ諸君ノ御攻撃モアリマセウガ、全ク協議会デ決シマシタ趣意ヲ文案ニシタト云フニ過ギマセヌ、別段申上ゲル程ノコトモアリマセヌ
○四十一番（浜松、中村忠七君）　少シ質問ヲ致シマスガ、此二項ニ分ツテ居リマス、第一項ノ方ノ全廃ノ趣意ヲ述ベマシタ文中デゴザイマスト、営業税法ナルモノガ大体ガ不良ノモノデアル、斯ノ如キ不良ノモノハ産業ノ発達ヲ阻害スルモノテアルカラシテ到底施行セラルベキモノデナイ、況ンヤ此施行スル上ニ於テハ税務吏ノ手心ヲ以
 - 第22巻 p.287 -ページ画像 
テ不公平ノ処置ヲシタ為メニ批難百出シタ、御文意ノ所ハ如何ニモ大体ノ意ハ諒シマシタ、且又一ノ意見書トシテ最モ主客ノ当ヲ得タモノトハ思ヒマスケレドモ、大体此営業税法ナル者ハ施行セラルベキモノデナイ、是レハ不良ノモノデアルト云フコトヲ第一ニ此意見書ノ趣意トシテ述ベマスト、是迄一昨日来此処デ修正論者ノ方ノ意見トシテ喋々申シ述ベマシタ所ハ、営業税法ハ大体ニ於テ是認シテ居ル、然ルニ此ノ意見書ハ大体ノ上ニ於テ斯ノ如キモノヲ施行スベキモノデナイト云フ斯ウ云フ差ガアルヤウデゴザイマス、其辺ニ付テ委員ノ御説明ヲ煩ハシマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　今御尋ネノ通リノ訳デ、別段陳弁ヲ要スル点モナイ、只今四十一番デゴザイマシタカ其他ノ御方ニ於テ、営業税法ハ存シテ置クガ宜イト云フ御論モアリマシタガ、是レハ余リ沢山デアツタカナカツタカ可否ヲ起立ニ採ツタノデナイカラ分ラヌガ、営業税法ハ須ラク修正スルガ善イト云フ御論ト、全廃スルハ善イガ詰リ修正スルノモ已ムヲ得ンカラ之ヲ修正シヤウト云フ論モアツタ、種々アツタ、要スルニ委員ガ只今之ヲ文案ニシマシタト云フノハ、一昨日モ発案者ノ述ベマシタ通リノ事ヲ文章ニシタト云フノデアリマスカラ、斯ノ如ク営業税法ニ付テ大体ニ於テ不可トシテ廃スルト云フ事ハ文案ガ宜シクナイノ宜シクアルノト云フ事ハ御議論デ、只委員ノ致シマシタノハ発案者ノ申述ベ置キマシタ通リノ事ヲ此文章ニ致シタノデ、ソレガ当レルヤ否ヤハ皆様ノ御考ヘニアルノデ、発案者ニ於テハ、営業税法ト云フ者ハ宜シクナイ、全廃ガ宜シイ、左リ乍ラ到底是ハ急ニ行ハレヌ、ト言ツテ不良ノ税法ヲ修正モセズ負担スルコトハ出来ナイカラ、相当ノ之ニ代ハルベキ財源ヲ見出ス迄ノ間修正ヲシテ呉レト云フ考ヘデ、勿論是レハ全廃論者ノ方ニモ一ノ修正ヲシヤウト云フノモアリマセウ、修正論者ノ御方ノ中ニモ是レガ全クナケレバ宜シイガ、廃スコトガ出来ヌ以上ハ悪ルイ所ヲ修正シヤウト云フノモアリマセウ、又営業者トシテハ無論営業税ヲ出スノハ当然デアル、只其煩苛ナモノヲ受クルノハ宜シクナイカラ修正スルガ宜イ、ト云フ御論モアツテソレヲ三ツニスルコトハ出来ヌ、只今御尋ネノ通リ営業税ハ決シテ悪ルイモノデナイ、営業税ハ受クベキモノデアル、只如何セン斯ク々々ノ条項ガ宜シクナイカラ之ヲ宜シク簡明ナモノニスルトカ、煩苛ナ箇条ヲ省キタイトカト云フ御論ノ方ニハ全ク余程縁ガ遠クナツテ御気ニ入ラヌカモ知レマセヌ、ソレハ成ルベク発案者ニ於テハ皆サンノ御気ニ入ル様ニト云フ考ヘデ発議シマシタガ、ドウモ三方四方ニ皆御満足ヲ与ヘルコトハ出来マセヌ、故ニソレノ主論者ニハ少シク御不満足ニナルカモ知レマセヌ、詰リ要スルニ発案者ト雖モドチラカニ致シマセヌトハツキリ致シマセヌト云フコトハ固ヨリ思フノデゴザイマスガ、サリ乍ラ虻蜂取ラズニナルヨリハ寧ロ互ニ能ク御協議ヲシテ双方ノ要旨ヲ取ツテ意見ヲ聞イタナラバ纏マリガ附クデアラウ、権能ナイ聯合会ガ喧嘩棒チギレノ決議ヲシテドチラモ多数ヲ得ヌ様ナコトヲスルヨリモ、是レデ折合ガ附ケバ其方ガ善クハナイカト云フコトヲ述ベマシタ、所ガ御協議会ニ於テハソレガ善カラウト云フ其意ヲ受ケ
 - 第22巻 p.288 -ページ画像 
テ起草スルガ宜シイト云フ議場ノ御注文ニ依テ起草シマシタノデ、此文章ヲ御読ミ下サレタ上デ御合点ガ往カウト思ヒマスカラ、別段喋々スルコトハナイト思フ
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君)　本員ハ此修正動議ニ付キマシテハ、昨日来委員説ガ熱心ニ起リマシタ訳デアリマスガ、到底服従スルコトハ出来ヌノデゴザイマス、斯ノ如クナレバ全廃ハ全廃、修正ハ修正ト致スニ過ギナイ話デ、故ニ私ハ修正ヲ維持スル所以デアリマス、就キマシテハ十三番ノ高橋君、五十七番ノ中野君ノ御演説ニハ、此税法ナルモノハ悪法ダカラ廃スガ宜イト云フ御論デアリマスガ、独リ此営業税法ノミナラズ、今日現ニ行ハレマス所ノ酒造税デモ売薬税デモ、熟レモ人権ニ立入リマシテ秘密ヲ訐クト云フモノデ独リ此案ニ限ツタ訳デナイ、故ニ私ハ矢張リ此税法ヲ改正スルノ意見ニ過ギナイ、次ニハ五十番デアリマシタカ京都ノ中野君ノ御説デハ、税ノ標準ガ甚ダ不公平デアルト云フコトデアリマシタガ、我ガ仙台商業会議所ハ早クモ見ル所ガアリマシテ、第一類ハ何々、第二類ハ何々、第三類ハ何々ト物ノ区別ヲ附ケテ税ヲ課シテ居リマスカラ、此税ニ傚ヒマスレバ決シテ左様ナ不公平ナコトハナイノデ、私ハ飽迄モ修正説ヲ可トスルノデアリマス
○二十一番（堺、藤本荘太郎君）　委員ノ御苦労ニナリマシテ只今御廻ハシニナリマシタガ、大体之ヲ伺ヒマスト多言ヲ要シマセヌデゴザイマスガ、是レデ出シマシタ所デ私ハ甚ダ妙ナモノデアラウト思ヒマス、大体ニ廃スルモノデアルト言ツテ置イテ、サウシテ跡ヘ持テ往ツテ今財源ヲ見出スコトガ出来ヌカラ先ヅ当分之ヲ改正ヲシテヤツテ貰ハナクテハナラヌト云フ、斯ウ云フコトニナツテ居リマス、サウシマスト、此書面ガ出マシタトキニドウ云フ感ジヲ政府ニ与ヘルデゴザイマセウカ、或ハ廃スルト云フカト思ヘバ又修正ヲスルト言フ、何ンダカニヤツイテ居リマス、如何ニモ政府ハ此八ケ間敷イコトハ御承知デアリマセウカラ、改正シテモ善イガ、併シ改正シタ所ガ約マリ是ハ全廃スルモノデアルト云フコトニナツテ居リマスト改正ヲシタクモ改正ノ端緒ヲ開クコトハ政府ニ出来マイト考ヘマス総テ此委員諸君ノ御精神ハ只聯合会ノ円滑ヲ謀ルヲ以テ目的トシテ居ラルヽニ違ヒナイ、自分等モソレハ希望スルコトデアリマスガ、併シ只各地ノ会議所ノ感情ヲ悪ルクシナイ様ニ会議ヲ円滑ニシヤウト云フ為メニ、此八ケ間敷キ所ノ大問題ヲ遂ニ何ノ効モナイコトニシテ、大問題ガ何処カヘ往ツテ仕舞ウ様ニナリハセヌカト思ヒマスソコデ只結構デゴザイマスト言ツテ当聯合会ガ無事ニ帰リマシタ所ガ、矢張リ聯合会ノ規則ガゴザイマスカラ、若シ帰リマシテ報告ヲ致シマシタトキニ、此決議ハ覊束ヲシナイカラ矢張リ元ノ通リ自分ノ会議所ハヤルト云フコトニナレバ矢張リヤラナクテハナラヌ、ソレデ今折角御苦労下サイマシテ、ソレニ服従シテ帰リマシテモ帰ツテ又ヤルト云フコトデアリマシタラバ、尚更ラ円滑ヲ欠クコトニナリマセウト思ヒマス、ソコデ私共ハ之ニ服従スルコトハ出来マセヌト云フコトヲ一言申シテ置キマス
○五十四番（福井、村野文次郎君）　五十四番ハ先達テ本会議ノ節ニ此
 - 第22巻 p.289 -ページ画像 
営業税法ハ実ニ不良ナ法デゴザイマスケレドモ、今全廃ヲ申シタ所ガ早ク行ハレナイト思フテ、抂ゲテ修正ヲ賛成シテ居ツタ一人デゴザイマス、実ハ折角御苦労ヲ掛ケマシテ出来マシタ此案ニ依リマスト、先ツ従業者トカ賃貸価格ヲ廃スルト云フコトニ止マリマス様ニ見ヘマス、然ルニ我ガ地方ノ状況ヲ簡単ニ申上ゲマスト、売上金ト云フ者ハ極差ガアルノデゴザイマス、事ニ暗イ田舎デアリマスト、輸出羽二重ガ出来マスノデ、売上金トナルト羽二重・生糸ガ重税ヲ課セラレテ我ガ地方ハ忍ベヌカラ、生糸業組合・羽二重業組合・織物業組合・商業会議所カラ此春出デ非常ニ運動シマシタガ、松方大蔵大臣ニ事情ヲ申上ゲマシタ所、直グニ目賀田局長ガ来ラレマシテ現行法デハ成ル可ク寛ノ所ニ処セラレマシタ、ソレデサヘ堪ラヌデゴザイマスカラ今度又直グ様出デ来タ訳デアリマスガ、此修正案デシマスト一層悪ルクナリマス、賃貸価格・従業者ノ如キ課税標準ヲ廃シマスト、其金額ハ減リマシテ、減リマスレバ七百五十万円ノ内二百万円ハ既ニ不足トナツテ居ルト云フコトデアリマスカラ、其上此二点ヲ廃スルト益々減ル、政府ハ金ノ必要ガアツテ設ケラレタ営業税デアレバ、アレモ除ケテ呉レコレモ除ケテ呉レト言ヘバ、孰レモ売上金ニ掛ケルカ、資本金ニ掛ケルカナツテ来マス、悪法ノ上ニ尚ホ又悪法ニナル訳ニナリマス、斯ノ如キ修正ナラバ絶対的反対デ前ニ申シマシタ修正説ハ取消シマシテ何処迄モ廃止ト云フコトニ一人デ倒レテモヤリ附ケル、決シテ此商業会議所ハ足並ヲ揃ヘナクテモ善イ、我ガ地方ノ会議所ハ物産ト云フ頭ヲ以テ何処迄モ議会ナリ政府ニ向ツテ運動ヲスル積リデアリマス
○二十二番（堺、柴谷武次郎君）　私ハ一昨日ノ協議会ニ於キマシテ、二番ノ御述ベニナリマシタ折衷説ニ大体賛成ヲシタ一人デアリマスガ、其賛成ヲシタ趣意ト申シマスモノハ、聯合会ナルモノハ一致シテ運動ヲシタイト云フ趣意カラ、尤モ余程是レハ難イコトヽハ思ヒマシタケレドモ、ナルコトナラサウシタイト云フ考ヘカラ賛成ヲ表シマシタガ、最早今日トナツテ見マスレバ、到底満場一致ト云フコトハ望メナイト云フコトハ私ニ於テハ明カニ認メテ居リマスカラ、之ヲ賛成スルノ必要ト云フモノモ従テ消滅シテクル次第デアリマス尚ホ委員諸君ガ御苦労下スツタ報告書ノ趣意ニ依リマスレバ、全廃ノ趣意ハ分ツテ居リマスガ改正ト云フコトハ漠トシテ居リマス、斯ウ云モノヲ政府若クハ帝国議会ニ申出シテモ何ノ感ジヲ与ヘナイコトデアラウ、如何ニモ斯ウ云フコトニシテヤレバ必要ガアル、是レハ先ニシテヤラナケレバナラヌ、ト云フ改正ガ先ニ立タナケレバナラヌ者ガ、其改正ノ要領ハ漠トシテ捕マヘ所ガナイモノニナツテ仕舞ウ故ニ、協議会ハ先ヅ此辺デ御止マリニナリマシテ、本会ニ御移リヲ願ウ、本会ニ於テ成往キニ任カセルト云フコトヨリ仕方ガナイト思ヒマス、速ニ本会ニ移ラレタイ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　自分共委員ノ一人ニ加ハリマシテ昨日来立案ヲ致シマスニ付キ種種審議致シマシタ、其結果トシテ今日此案ヲ提出シマシタ訳デアリマス、固ヨリ之ヲ廃シヤウ修正シヤウト云フ二ツノ御論ガアリマシタ、此両立ノモノガ数日議シマシタ
 - 第22巻 p.290 -ページ画像 
所デ到底好結果ヲ見ルコトハ出来ヌト云フコトハ無論デアル、去リ迚何トカ一ツ効力ヲ附ケマシテ、ドウゾ政府ニ向ツテ相当ノ運動ガ致シタイト云フノガ大体ノ趣意デゴザイマスカラ、或ハ数ノ多少ヲ以テ論ガ分レルト云フ様ナコトハ誠ニ歎カハシイコトデアリマスカラ、色々苦心ノ上協議会ヲ開イテ協議ノ上、斯様ナ仲裁説見タ様ナコトガ成立チマシテ、委員ヲ設ケテソレデ文章ヲ作ツテ見テハドウカト云フコトガ即チ一昨日ノ協議会ノ結果デアラウト思フ、所ガ又元ヘ戻ツテ本当ノ論議ヲ致スト云フコトニナレバ、委員ヲ設ケタ御趣意ニ少シ反シハセヌカト思フ、抑々此満場ガ委員ヲ置イテ委員ニ托シテ一ツ案ヲ拵ヘテ見様ト云フ斯ウ云フコトカラ今日ノ結果ニナツテ来タ、此文章ガ拙ナイカラ斯ウ云フ風ニ往ツテ見タラドウカト云フ、斯ウ云フコトデ御批難ヲ受ケルノハ已ムヲ得マセヌガ、只此ニ至ツテ元ヘ戻ツテ論ズルコトニナツテハ、一昨日ノ御意向ヲ伺ツタコトガ甚ダ薄イ様ニ考ヘマス、本題ニ付キマシテ双方ガ苦情ヲ言出シマシタラモウ異口同音デ、幾度言フテ見テモ幾度聞イテ見テモ同ジコトデアラウト思フ、其事ヲ止メテ、一昨日ノ論旨ニ本ヅイテ此案ナラバ善カラウ、此処ガ斯ウナレバ宜カラウト云フコトガアレバ、其案ニ本ヅイテ御説ヲ聞キタイ、今日新ラシク言出シタノデナイ、一昨日満場ノ決議トシテ此ニ至リマシタノデアリマスカラ、ドウカ切ニ希望シマスノハ、文章ノ上デ御同意ガ出来ヌノハ已ムヲ得マセヌ、委員ガ不都合ト云フコトヲ御詫スルヨリ仕方ガナイ、之ニ代ハルノ御名案ヲ御出シ下サツテソレガ通過スルト云フコトニナリマスレバ委員共一言モ申シ様ハナイ、ドウカ此文章ガイケナイカラ御賛同ガ出来ヌト云フナラバ、御遠慮ナク名案ヲ御述ベニナリタイ
○三十四番（津、橋本清助君）　私ハ一寸御質問ヲ申上ゲマス、只今ドナタカラモ出マシタガ、昨日大沢君ノ御説ニモゴザイマシタ彼ノ売上金額、是レハ利益ノ大差ノアルモノデ、此売上金額ニ対シテ課税スルト云フ場合ニナリマシタナラバ、営業税法ハ一層甚ダシキデアラウ、其点ニ於キマシテハ私共同感デゴザイマス、此処等ノコトモ調査ノ時ニハドウ云フ御考ヘデゴザイマシタカ、此文面ニハ其辺ノ所ハ見ヘヌ様デゴザイマス、此困難ヲ救フニハドウ云フ法ヲ以テシヤウカ、ソレカラ次ニハ資本額、是レモ先ヅ此案ニ依テ見マスト残シテ置ク積リデアラウト思フ、製造場ノ如キハ家屋ト資本ト云フ様ナコトハ殆ド賃貸価格ノ算定法ト能ク似テ居ル、是等ニ対シテ一方ノ賃貸価格ノ方ハ取除ケヲシタガ、ソレニ類似シタ所ノ資本額ニ家屋トヲ算入スルト云フ者ハ適当ト云フノハドウ云フ御考ヘデアリマスカ、此ノ御立案ノ模様ヲ伺ヒマシテ意見ヲ決シタイト思フ、ドウカ詳カニ御答弁ヲ願ヒタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　詳カニト云フ御請求デゴザイマスガ、詳カニナリマスカナリマセヌカ分リマセヌガ、固ヨリ此発議者並ニ委員ノ取調ベタ所ニ置キマシテモ、到底此修正ト云フ方ノ完全ヲ得ラレナイト思フ、此方ヲ押ヘレバ此方ガ抜ケル、此方ヲ抜ケバ此方ニ不都合ガ出来ル、ソレデ是レハ概略ヲ言フテ居ル、従業者ノ如キ若クハ賃貸価格ノ如キ斯ウ云フ極メテ煩雑ノ手数ヲ要スル者ハ断然
 - 第22巻 p.291 -ページ画像 
廃ス、其他ノ者ハ深ク調査講究ヲシテ貰イタイト云フノデ是レハ孰レモ各会議所カラ出テ居リマスノヲ調査致シマスノニ、単ニ修正ト言ヒマスレバ修正デアリマスケレドモ、斯ノ如ク違ツテ居ル、其内最モ各会議所中デ何ガ多イト申セバ賃貸価格ダトカ従業者トカ云フ者ヲ標準ニスルノハ善クナイト云フノガ多イ、其大層多イ所ノモノヲ第一ニ挙ゲテ是レハ起草シマシタノデアリマス、之ヲ悉ク又其法ヲ備ヘテ出スト云フ事ニナリマスレバ、中々一朝一夕ニ出来マセズ又サウ云フコトニシマスレバドノ会議所ノ一ヲ取ツテ善イカ、既ニ孰レノ会議所デ御調ベニナツタノモ皆完全ト認メテ御提出ニナリマシタノデアラウ、其修正ニ付テ賃貸価格ハ取ルガ此方ノハ取ラヌト云フ様ナコトニシマシタナラバ、ドレモ不具ナモノヽ外出来マセヌ成程売上金額斗リニナツタラ不公平ノ上ニ不公平ヲ増スト云フコトニナル、又此利益金ニ取ルト云フコトモ御提出者ノ中ニハ色々御説モアリマスケレドモ、是レモ元来論ジテ見マストドウモ利益ト云フ者ヲ知ルノモ甚ダ難イト云フコトニナル、デ要スルニ営業税法ハ皆様ガ不良ナ法ト御認メニナツテ居ル、ソレヲ廃シテ貰ヒタイケレドモ速ニ廃止ガ出来ヌ場合ニハドウゾ修正シテ下サイ、其修正シテ貰ウ個条ハ賃貸価格、従業者ノ如キ煩雑ナモノハ第一ニ除ケテ貰ヒタイト云フ此文章ダケ位デ一般デ出来マスガ、修正ノ各項ニ付テ金額モ減ラナイ様ニ不公平モナイ様ニト一々論弁シテ往ツタナラバ、縦シヤ紙数ガ殖エテモ容易ニ出来ヌ、一会議所ノ意見ヲ其儘ニ用ヒルト云フ事ニ標準ヲ立テレバ稍其方ニ近イモノガ出来マセウガ、手ヲ斬リ足ヲ斬ルト云フコトハ取調ノ上出来マセヌ、故ニ概略ヲ述ベタニ過ギマセヌ、アレモイカヌコレモイカヌト言ヒマシタラバ、全ク修正法ガナクナツテ、現行法ノ儘ニ据置クカ廃止ヲ請求スルカト云フコトニナル、修正論ハ何処カラモ同一ニ出デ居ル、既ニ我我モ名古屋商業会議所カラ出シテアリマス、是レハ丁度又手前味噌デ言ヒマスト、自分ニ於テハ完全ト認メテ居ル、何業ハ何ニ取リ何業ハ何ニ取ルト課税標準ト云フ者ガ定メテアリマスガ、若シソレヲ名古屋商業会議所ノ申出シタノガ各所ノトハ違ウカラ幾ラカ差引ヲシマシタラ丸デ目茶々々ニナリマス、ソコデ、先ツ各会議所カラ出シタ意見ノ中ニ多ク御論ジニナツテ居ルノハ賃貸価格ト従業者デアルカラソレヲ要旨トシテ挙ゲテアリマス、要スルニ委員等ノ調ベタ所デハ調ベレバ調ベル程六ケシイノデ、今暫ク一週間ノ日ヲ貸サレタ所ガアチラヲ抜キコチラヲ抜キシテドナタモ御不同意ガナイト云フモノガ出来様トハ存ジマセヌ、故ニ甚ダ不満足ナガラ之ヲ出シタノデアリマスカラ、成ル可ク円滑ニ双方御譲合ガ出来テ目的ヲ達スルコトニシタイト思フ
○十二番（横浜、大谷嘉兵衛君）　十二番ハ委員諸君ガ起草サレマシタ所ノ案ハ、一昨日ノ小会議ニ於テ諸君ノ間ニ御論ノアツタノハ斯ウ云フ様ナ先ヅ場合デアツタラウト思フ、ソレデ当日委員ヲ置キマスニ付キマシテモ余リ不肖ハ賛成ヲ致スコトガ出来ナカツタ、詰リ一昨日ノ小会議ニ於キマシテノ模様ハ此通リデアラウト思フ、二番ノ縷々御述ベノ如クデ余リ固マツテ居ナカツタト思ヒマス、ソレデ私
 - 第22巻 p.292 -ページ画像 
ノ考ヘマスニハ、之ヲ喩ヘテ見マスト、此第一ノ方ノ廃スルト言フ方ガ、刀デ言ヒマシタラバ名刀迄ハイカヌヤツト人ヲ斬ル位カト思ヒマス、望ムト云フノデアリマスカラ望ムガドウ云フ方ニナルノダカ先ニ至リマスト迷ハス様ナモノデナイカト思フ、何ゼ迷ハスカト言ヘバ、例ヘバ五十四番ハ正反対デ、詰リ賃貸価格トカ従業者ト云フモノハサウ重ク見テナイ、或ハ売上金トカ云フ様ナ方ニ重キヲ置イテ居ル、区区マチマチ地方ニ依テ修正ヲ異ニシテ居ラレルト云フコトハ、只一・二ノ御説ニ付イテ明カデアリマス、ト云フト誠ニ完全ナラヌト思フ、若シ之ヲ急激ニ廃スコトガ出来ナケレバ斯ク々々ニ修正シテ見テ下サイト言ツタ所ガ、諸君ガ一致シテ之ヲ決スルト云フコトハ大ニ覚束ナイ、サウシマスト、先ノハ刃ノコボレタ刀デ、後ノハ少シ増シダケレドモ錆タ刀位ナモノデハナイカ、錆タ刀デ首ヲ斬ラレテハ大変痛イ、ソレカラ刃ノコボレタノデハ到底斬レマセヌ、ト云フ様ナ訳デ、ドウモ誠ニ曖昧主義デハナイカ、併シ委員諸君ガ御作リ下サツタノデアリマスカラ、不肖ガ批難ヲスルノデハアリマセヌガ、此間ノ結果トシテ御作リ下サツタラ此通リデアラウト思フ、若シ私ノ様ナ者ガ委員トナリマシテモ矢張リ此案ヨリ外出来ナイ、併シ考ヘテ見ルト、全廃ヲ望ムカト言ツテソレカラ先ノコトニナルト区々マチマチニナリ、修正者諸君ガ之ニ一致シテ居ナイト云フコトニドウモ見ヘマスカラ、成ル可クハ此場合ハ、詰リ正宗ト云フ様ナ訳デ致シマシタナラバ大ニ政府ニ於テモ仕善カラウト思フ又之ニ付テノ財源ヲ拵ヘルト云フニ付テハ、サウ苦シマナクテモ容易ニ出来ルコトモアラウト思フ、併シ何デ出来ルト問ハレマスト、先ツ只今ハ御答ヘ申スコトハ出来ナイガ、併シ出来サウナモノト思フ、依テスツパリ斬テ奇麗ニシタ方ガ大ニ仕善カラウト思フ、デ今ノ錆タ刀刃ノ欠ケタモノデ致スト云フコトハ誠ニ不肖抔ノ望マヌコトデ、且ツ全国ノ商業会議所ノ重モナル方々、最モ此実業社会ノ重モナル方々ガ此ニ此会ヲ開カレテ、何ンダカ曖昧ノ様ナモノヲ出スト云フコトハ甚ダ遺憾ニ思ヒマス、仮令ヒ通ツテモ通ランデモ一致団結ヲ以テ申スト云フコトガ最モ私ハ商業会議所ノ為スベキコトデアルカト思フ、殊ニ聯合会議デゴサイマスカラ成ル可ク聯合シテ致シタイト思フ、是レデハドウモ些ト不肖ニ於テハ御同意申スコトハ出来ヌ、只一寸一言ダケ申シマス
○二番（名古屋、奥田正香君）　固ヨリ此意見案ハ私ハ維持スルト云フ考ヘハ持テ居ラヌ、一昨日ノ御依托ヲ受ケテ斯ノ如クシタ位デ、今十二番カラ刀《カタナ》ノ御喩ヘガアリマシタガ、丁度前ノ方ハ刃ノコボレタモノデアル、ドウカ此会議デ研ギ上ゲテ名刀ニ御研ギ上ゲニナツテモウ少シ斬レル様ニスルノハ望マシイコトデアル、名刀ト云フノハ修正ノ名刀カ廃止ノ名刀カドチラノ名刀カ知リマセヌガ、ドチラノ名刀デモ若シ滑ラカニ御同意ガ出来テ研ギ上ツタ誠ニ明晃々タルモノガ出来レバ至極善イ、決シテ委員ガ之ヲ調ベタモノガ無用視サレタカラ不満足ト云フコトハナイ、委員ハ斯ウ云フモノヲ通過サセタイト云フノガ目的デナイ、兎ニ角一番ノ目的ハ何カト言ヘバ、願ハクハ満場トイカズトモ大多数ヲ以テ可決シタモノヲ以テ政府ニ建議
 - 第22巻 p.293 -ページ画像 
シタイト云フノデアルカラ、是非之ヲ通過スル様ニシタイトハ言ハヌ、固ヨリ一昨日ノ議事デ出来タモノハ斯ノ如キモノデアル、斯クスルヨリ外仕方ガナイ、ソレデ修正ノ如キモ列挙スレバ際限ガナイカラ概略ニシタ、此儘デ善イト云フコトニナリマシテモ足リマスマイカラ、細目ノ者ヲ添テ出シマストモ、又委員ガ口頭デ述ベマストモ、又冗長ニナツテモ此文章デ言ハス事モ出来マセウ、ソコハ孰レデモ宜シイ、委員トシテ拵ヘマシタノト又発案者トシテ述ベマシタノハ、斯ウナレバ完全無欠ナ名刀トハ思ハヌガ、併シ一昨日ノ御評議ノ末ヤリマシタコトハ殆ト完全無欠ナモノガ出来タト思フ
○首藤貞吉君（徳島、書記長）　元来此廃止論ト修正論ト云フ者ハ根拠ニ於テ両立スベカラザルモノト私ハ考ヘル、其両立スベカラザル、全ク根拠ヲ異ニシテ居ルモノヲ折衷シヤウトシテ、折衷シタ所ノ文章ヲ書ケト云フノハ頗ル六ケシイ注文デ、此六ケシイ注文ニ対シテ委員ガ名文ヲ御書キ下サレタ御苦労ハ察スルニ余リアルコトデアリマスガ、併シ乍ラ謹ンデ此文章ヲ拝見シマスト、全廃ト云フコトヲ本義トシテ、主トシテ修正ト云フコトヲ補助若クハ従ト云フ様ナ地位ニ置カレタ様ニ拝見ガ出来ルノデ、是レハ所謂折衷説ノ已ムヲ得ナイ所デハゴザイマセウケレドモ、ドチラカト申セバ其論旨ガ甚ダ薄弱デアルト申サナケレバナラヌ、凡ソ人ヲ動カシ政府ヲ動カスト云フ議論若クハ文章ト云フ者ハ、其論拠ト云フモノガ非常ニ強クナケレバナラヌ、非常ニ鞏固ナモノデナケレバイカヌト思ヒマス、斯様ナ薄弱ナル所ノ論旨ヲ以テ人ヲ動カスト云フコトハ余程六ケシイコトヽ存ジマス、斯様ナ建議ヲ致ストカ請願ヲ致ストカ言ヒマシタナラバ、政府ニ於テ大ニ迷フデアラウ、全廃ヲシタナラバ御意ニ叶ウノデアルカ、若クハ修正ヲシタナラバ御意ニ叶ウノデアルカ、ドチラヲ取ツテ善イカト云フコトニ付テ大ニ政府ヲ迷ハセル種ニナルカト思フ、ドチラヲ取ツテ善イカ迷フト云フ様ナ薄弱ナモノヲ以テ営業税法ヲ改正スルトカ全廃スルトカ云フ様ナコトハ頗ル六ケシイコトヽ思フ、殊ニ此文章ヲ拝見シマスト、少ナクモ修正論ト云フモノハ此文章ノ上ニ代表サレテ居ナイト言ハナケレバナラヌ、何ゼサウデアルト言ヘバ、修正論者ノ多数ハ詰リ営業税法其者ハ悪ルクハナイ、修正ヲスレバ悪ルイモノデナイト云フ斯ウ云フ思想、所ガ此文章ヲ拝見シマスレバ、営業税法ト云フ者ハ根本カラ不当ナモノデアル不正ナモノデアルト斯様論ジテアリマスカラ、少ナクモ修正論者ノ論拠ハ代表サレテ居ラヌト言ハナケレバナラヌ、要スルニ凡ソ会議ニ掛ケテ事ヲ決スル以上ハ、ドウシテモ決議ヲシナケレバナラヌ、是丈ケノ多数ヲ以テ可決ヲシテモ全国聯合商業会議所ノ決議デアルト云フコトハ頗ル有力ナモノデアル、頗ル強イモノデアル、左レバ足並ヲ揃ヘテ往ク、一人ノ反対ナシニ所謂全会一致ヲ以テ決議ヲシナケレバ輿論ト見ラレナイ、力ガナイト云フ其根本ノ思想ガ、甚ダ無礼ナ申シ様デアルガ、私ハ誤ツテ居リハシナイカト思フ、私ハ斯様ナ力ノナイモノヲ以テ建議スルヨリハ、寧ロ此案ト云フ者ハ廃止ヲシテ、全廃若クハ修正ノ決ヲ採ツタ方ガ宜シイト思フ、併シ其本議ニ移ツテ修正・全廃ノ可否ヲ決議スル前ニ、若シ足並ヲ揃ナ
 - 第22巻 p.294 -ページ画像 
ケレバ不都合デアルト云フナラバ、詰リ此協議会ニ於テ多数ヲ占メタ方ノ動議ニ服従ヲスルト云フ徳義上ノ御協議ヲシテ置キマシタナラバ、決シテ御心配ハナカラウト思フ、詰リ全廃論者ガ多数ヲ占メレバ修正論ノ方ハ服従ヲスルト云フコトニ徳義上ノ御協議ヲナサルガ必要ト思ヒマス、兎ニ角本案ハ私ハ反対デゴザイマス
○四十一番（浜松、中村忠七君）　四十一番ノ意見ヲ述ベマス、委員諸君ガ御拵ヘニナリマシタ此文意ニ付テハ私ハ敢テ述ベマセヌ、又私ハ之レヲ細カニ申シマスレバ、全廃論者モ方法ニ付テノ反対論ガアル、況ンヤ修正論者ノ方デハ着々反対論ヲ述ベルノハ当然ト思フ、本員モ修正論者ノ一人デ、一昨日ノ協議会ノ当時委員ニ附托シタナラバ、主客孰レニナルカト言ヘバ、全廃ガ主ニナツテ修正ガ従ニナルト云フ事ハ、我々反対論者ト雖モ認メテ居ル、併シ当時議事ニ倦キテ他ニ策ガナイカラ、先ヅ々々委員ニ附托シタラ宜カラウト云フ事デ決定シタヤウデアリマス、私共ハ不満ナガラ多数ニ服従シテ居リマス、併シ乍ラ此意見案ガ到底満足ナモノガ出来様訳ガナイ、左リ乍ラ、一種ノ便法ヲ以テ多数ノ同意ヲ得ル事ガ出来ルカモ知レヌト云フ望ミヲ残シテ置キマシタ、然ルニ不幸ニシテ我々ガ希望スル如キ案ガ出来ズシテ、如何ニモ委員サンノ御苦労ニ対シテハ感謝ニ堪ヘマセヌガ、本員ハ已ムヲ得ズ今日ハ反対デアリマス、最早協議会トセズシテ、孰レカニ御極メヲ願ヒタイ、是レハ秘密デナイ公ケノ仕事デアリマス、多数少数ノコトニ付テ、種々先輩諸君ノ御憂慮ガゴザイマシタガ、今日ノ場合ハ最早多数少数ノ心配ヲ致ス時デナイ、御互ニ各商業会議所ヲ代表シテ、営業税法ノ前途如何ナルモノニスベキカト云フコトヲ熱心ニ論究シテ居ルノデアリマス、其間多少差ガアリマシテモ、全廃ニナリ修正ニナルノモ已ムヲ得ヌ、私ハ徹頭徹尾修正論デアリマスガ、若シ我々ノ意思ガ少数デアツタナラバ速ニ全廃論ニ降参シマス、若シ我々ノ修正論ガ多数デアツタラ全廃論者モ御譲リヲ願ハナケレバナラヌ、今阿波ノ書記長ヨリ御述ベニナリマシタ通リ、此文案ニハ主従ト云フ区別ガ判然立テ居ル、十二番ノ御説ニモ錆刀《カタナ》トコボレ刀ト云フ御説ガアル、如何ニシテモ修正論者デモ此文デハ同意ガ出来ヌト云フコトハ明瞭ト思ヒマス、私ハ更ニ協議会ニ於テ本案ヲ本会ニ移スヤ否ヤト云フコトニ付テ採決ヲ望ミマス
○五十番（京都、中野忠八君）　一寸心得迄ニ伺ヒマスガ、此案ハ至極都合能ク先日ノ協議ノ趣旨ヲ御纏メニナツタモノト感心致シマスガシテ此案ガ此処デ決シマシタ後ハ此儘デ置クノデゴザイマスカ
○議長（東京、渋沢栄一君）　サウデハゴザイマセヌ、今ハ協議会デゴザイマスカラ、協議会ニ於テ委員ガ斯ウ云フ案ヲ御作リニナリマシタ、即チ協議会ノ多数ノ御望ミデ是レガ宜シイト云フコトニナリマスレバ、協議会ハ結了シテ是レガ本会ノ一ツノ議題トナル
○五十番（京都、中野忠八君）　分リマシタ、サウスルト此案ニ対シテ協議会ガ認メタナラバ本会ノ議題トナル、矢張リ此様ナモノデ議シテ往クノデアリマスカ、細カク修正説ナラ修正説ト云フ様ナ立案ハシナイノデスカ
 - 第22巻 p.295 -ページ画像 
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ議場ノ御考ヘ次第デゴザイマス
○五十番（京都、中野忠八君）　二番ニ御尋ネシマスガドウ云フ御考ヘデアリマスカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　是レガ万一ニモ之ヲ本会ニ移スト云フコトニナリマスレバ、是デ宜シイト云フ事ニナルカ、是レデハ到底イカヌ、之ニハ修正ノ条項ヲ明瞭ニ加ヘナケレバナラヌト云フコトニナリマシテ、其事ガ二読会ニ於テ御修正ニナリ、或ハ其前ニ委員ヲ選ンデソレソレ御調査ニナルトモソレハ議場ノ御都合デアル
○五十番（京都、中野忠八君）　分リマシタ
○五番（函館、平出喜三郎君）　モウドウカ休憩ヲ願ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　大分御浮足ニナツタ様デアリマスカラ休憩ニ致シマス
　　午後零時四十分休憩
　　午後一時二十五分開会
○議長（東京、渋沢栄一君）　引続キマシテ協議会ノ終リヲ御結ビヲ戴キタウゴザイマス
○三十二番（大阪、土居通夫君）　私モ委員ノ一名デゴザイマス、一昨日ノ二番ノ動議ガ成立チマシテ協議会ヲ開クヤウニナリマシタ、サウシテ遂ニ此意見書ヲ立案スルコトニ決シマシタ、其際其起草ヲ致シマスニ付キマシテモ、予シメ其事柄ハ二番カラモ述ベラレマシテ又ソレヲ決スルノ場合ニハ議長カラノ縷々御言葉モゴザイマシタ、而テ委員ハ此起草ヲ致シマスニ付キマシテモ、.此前議場ノ成往キガ双方共ニ固クナリマシテ、ドウモ如何共結果ノ見据ヘガ附キマセヌデ、双方カラ或ハ歩ヲ譲ツテ纏メル方針ニシタラ善カラウト云フ御考ヘデアリマシテ、詰リ結果斯ウ云フ意見書ガ出来マシタ、固ヨリ完全ナモノトハ言ヘマセヌガ、其起草ヲ致シマス前ニ議場ノ意向ヲ見マシタ時ニハ先ツ斯ウ云フ様ナ趣意ノ者デアツタト考ヘマス、是レハ十二番サンノ述ベラレマス通リデ、併シ乍ラ錆刀トカ刃ノコボレタ刀《カタナ》トカ云フ御喩ヘデアリマスガ、是レガ満場一致デ出来マスレバ錆刀デモ人ガ斬レヌト云フコトモアリマスマイガ、併シ今日トナリマシテ、又其起草致シタニ拘ハラズ以前ニ立戻ツテ同様ノコトヲスルト云フコトニナツテハ、一向際限モナイコトデゴザイマスデ、ドウカ此意見ガ容レラレマスカ、或ハ分析サレマスカ、此両様ノ所ガ此場合デハ最モ緊要ナコトヽ考ヘラレマス、デ願ハクバ其点ニ付テ御採決アラムコトヲ希望シマス
○三十番（岡山、香川真一君）　私モ三十二番ト同意見デアリマス、岡山モ起草員ノ一人デゴザイマス、実ニ是レハ木ニ竹ヲ接イダ様ナノデゴザイマスカラ、立派ナコトノ出来様筈ガゴザイマセヌ、最早此案ハ孤城落日、四面楚歌ト云フ様ナ有様デゴザイマス、又御質問ガアツテ御議論ガアツタ所ガ誠ニ平々凡々デ、最早御質問モ御議論モ要ラヌト思ヒマス、速ニ三十二番ノ申サレル通リドチラカニ決議ニナルコトヲ希望シマス
○十番（知多、天野伊左衛門君）　委員諸君ガ色々御説ヲ御述ベニナリマシテ、私モ其委員ノ一人デゴザイマスデ一言ヲ述ベマス、元此起
 - 第22巻 p.296 -ページ画像 
草ヲ致シマスニ付テハ、何ガ目的デ我々ガ起草ヲシタカト申シマスト、所謂二番ノ発言ニ本ヅイテ起草シタノデゴザイマス、一昨日ノ会ノ景況ハ只今土居サンカラ述ベラレタ通リノ次第デゴザイマシタカラ、此起草致シタモノガ悪ルイト言ヘバ、本会ノ皆サンガ一昨日ノ会デハ私ハ誤マツタデアツタカト思フ、一昨日ノ会ニ引続イタ様ナ有様ヲ頻ニ先刻来皆サンガ御意見ヲ御述ベニナリマスケレドモ、是等ノ意見ハ矢張リ一昨日ノ二ノ舞デアツテ、起草委員ガ出来ナイ前ノヤリ直シニ過ギナイノデゴザイマス、委員等ニ於テハ二番ノ精神ニ本ヅイテ起草シタノデ、二番ノ精神ハドウカト言ヘバ、此聯合会ノ表面ニ現ハレテ一方ハ現行法ヲ廃スルト言ヒ一方ハ修正スルト言フ、其修正モ区々ニ分レ、実ニ聯合会ノ体面ヲ汚スデハアルマイカ、左様ナコトニナルマイカト云フコトカラ、所謂氷炭相容レヌモノヲ以テドウカ纏メタイト云フカラ発言ヲサレタ次第デゴザイマスカラ、固ヨリ此案ノ不完全ナト云フコトハ最初ヨリ明カニ分ツテ居ルノデゴザイマス、今日ニ至テ復再ビ起草委員ノ出来ナイ前ノ会議ヲ引続イテヤツテ居ツタナラバ際限ノナイコトデ、是ニ於テ皆サンガ起草委員ヲ御拵ヘニナツタノハ誤リデアツタト云フコトヲ御認メニナツタコトヽ思フ、又誤ラナイ己レハ満足デ此最後ノ結果ヲ心配シテ見ルト各会議所ノ意見ヲ撿束シナイト云フノデ、先刻ドツカノ書記長ノ論ゼラレル通リ、譲レルモノナラバ纏メテ往キタイ、併シ一昨日来ノ会議ノ景況ヲ見マストドウモ是レハ譲レマイト思フ、サウスルト本会ノ将来ノ結果ハ余リ面白クナイト思フ、誠ニ杞憂ニ堪ヘヌノデゴザイマス、起草ノ上ニ付テ委員ニ不都合ガアルト云フナラバ私共責ヲ引キマスガ、起草ノ点ニ付テ不都合ハナイト思フ、若シアルナラバ十分御教示ヲ願ヒタイ
○二番（名古屋、奥田正香君）　詰リ御気ニ入ラヌナラバ御止メニナルガ宜シイ、大抵御様子ヲ見ルニドチラニモ御気ニ入ラヌ、御気ニ入ラヌノハ十番ノ御述ベニナツタ通リ一昨日トハ御心変ハリニナツタノデ、皆議員ガ秋風ガ立ツタラ私共売附ケ度クモ何ンデモナイ、詰リ採決迄モナク反対モナイカラ御止メニナツタガ宜イ、只秋風ガ立ツタト御承知ニナツタラ宜イト思フ
○四十五番（豊橋、宅間菊太郎君）　私ハ此修正ヲ可トスル意見デアリマスガ、委員ノ此ノ御意見案ハ大ニ宜シイト思ヒマス、大賛成ヲ致シマス者デアリマス、先般ヨリ諸君ノ御高説ヲ承ハツテ居リマシタガ、両派ニ相分レマシテ何分此議事ノ結果ガ如何ナル結果ヲ見様カト思フテ大キニ杞憂致シテ居ル、幸ニ此意見案ノ出マシタノハ好都合デ、是レヨリ他ニ依ル所ハナイカト私ハ考ヘマスノデ、私ハ此意見案ニ大賛成ヲシマス、ドウカ諸君ニ於テモ御賛成アランコトヲ希望シマス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　私モ此事ニ付テハ諸君ノ御説ハ飽迄拝聴シマシタカラ、最早今日ニナツテハ数日ノ日子ヲ費ヤシテ同ジコトヲ何遍聞イテモ仕方ゴザイマセヌカラ、願ハクハ修正トカ全廃トカ孰レカニ御決定ヲ希望スルノデゴザイマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　此委員ノ御取調ニナツタ案ニ付テ、孰レ
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協議会ガ此案ヲ採用スルトカセントカ云フ丈ケノ意思ヲ極メヌト、協議会ノ終局ヲ見ル事ガ出来マセヌ、ソレデ之ヲ本会ニ移スカ、之ヲ廃案ニスルカト云フ両説、ソレニ依テ決ヲ採ラウト思ヒマス、ソレデハ之ヲ廃案ニスルト云フ御説ニ付テ決ヲ採リマス、此委員カラ御提出ニナツタ案ヲ採用セヌ、廃スルト云フ、斯ウ云フ御意見ヲ持テ居ラルヽ方々ノ御起立ヲ請ヒマス
　　出席総数　四十三名
　　起立者　　二十二名
○議長（東京、渋沢栄一君）　可トスル方ヲ立テ戴キマセウ、此案ヲ可トスル御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　二十一名
○議長（東京、渋沢栄一君）　ドウモ廃案ノ方ガ一名ノ多数デゴザイマス、採決ノ結果ハ今申シマシタ通リ、ソレデハ協議会ハ是デ御仕舞ニ致シマシテ、又此修正・全廃ノ御討議ニ移リマス
○中略
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ是レヨリ本会議ヲ開キマス、詰ル所過日来段々御討論ノ末修正若クハ廃止ト云フコトノ御意向ヲ此ニ採決致スノ場合ニ至ツタト思ヒマス、別ニ御討論ガゴザイマセネバ直グ様採決ニ取掛ル様ニ致シマス（賛成々々ト呼ブ者アリ）
○十番（知多、天野伊右衛門君）　御採決ニ先ダツテ一寸一言意思ヲ述ベ置キマスガ、先決問題ガ可決シマスレバ宜シウゴザイマスガ、先決問題ノ現法ヲ廃スルト云フ説ガ否決シマシタ際ニハ、直チニ修正案ニ賛成ヲスルコトハ私ハ出来得マセヌ、如何トナレバ修正案ガ如何ナルモノカマダ一定シテ居リマセヌ、此段ヲ述ベ置キマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　細カニ採決ヲシテ往クト云フコトニナリマスト、修正ノ中ニハ種々ナルモノガアリマスカラ、或ハ此修正此修正ト言ツテ決ヲ採ツテ往クト云フコトモ必要カモ知レマセヌガ、併シ此間中ノ御評議ノ末トシテ、孰レ修正ト決シタナラバ、各種ノ修正カラ更ニ一案ヲ作ツテ本会ニ出サレルコトヽ思ヒマス、故ニ先ツ全体ニ於テ全廃ト修正、此二ツノ決ヲ採リタイト云フコトニ拝聴シテ居リマス、故ニ採決ノ仕方ヲ今ノ修正各種ニ付テ採決致サズニ全廃ト修正ニ付テ決ヲ採リマス、然ラバ全廃説ニ御同意ノ御方ノ起立ヲ請ヒマス
　　出席者総数　　四十五名
　　起立者　　　　二十三名
○議長（東京、渋沢栄一君）　御着席ガ四十五名デ廃案説ヲ可トスル方ガ二十三名多数デゴザイマス、サウ致シマスト此廃案説ノ方ガ多数ニ相成リマシテゴザイマス、ソコデ此議事ノ都合ハ如何ニ致シマセウカ
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　斯ク敗軍シタ以上ハ仕方ガアリマセヌガ、廃案ニ色々東京商業会議所ノ御提出ニナリマシタノモ京都カラ提出ニナリマシタノモゴザイマス、ドウカ均シク審議討論アランコトヲ望ミマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ドウ云フ御意見デアリマスカ、廃案ノ建
 - 第22巻 p.298 -ページ画像 
議ヲスルト云フ文案ヲ審議スルト云フノデスカ
○二十番（仙台、小林八郎右衛門君）　左様デアリマス、廃案ニモ二種アル、東京商業会議所ハ一般ノ地価ヲ上ゲルトカ、京都商業会議所ハ単ニ宅地ニ課スルトカアル
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　其条件ハ附ケヌ方ガ宜イト思フ
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　全廃ノ方ノ勝利ニナリマシタガ、附キマシテハ孰レ其筋ヘ建議・請願ヲスルニ付テハ聯合会ト云フモノデアリマセズ、会議所ノ名ヲ以テ建議ニナルノデアリマセウカ、会ノ為メ伺ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　今十六番ノ御説ハ、聯合会トシテ特ニ聯合会ノ名ヲ以テスルト云フコトニセヌデ、各会議所ガ名々ニ致ス大趣意ヲ此ニ議決シテ置クト云フコトニ止メテ宜カラウト云フノデアリマスカ
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　左様
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　是迄建議ハ聯合会ノ名ヲ以テスルコトハ出来ヌト云フコトニナツテ居リマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　左様致シマスト、此大趣意ノ御決議ガ聯合会ノ多数ハ営業税ハ廃スルヲ是トシタト云フコト丈ケガ決定ノ趣意トナツテ、其ノ跡各会議所ガ之レニ依テ建議ヲスルト云フコトハ其ノ会議所名々ノ見ル所ヲ以テ建議ナリ請願ナリシテ宜イト云フコトニ相成ツテ宜シウゴザイマセウ
○二番（名古屋、奥田正香君）　是迄ノ慣例ハソレヲ用ヒヌトハ決議シマセヌガ、聯合会デ決シタノハソレヲ各地ニ御廻ハシニナツテ居ルソレヲスルトセヌトハ各会議所ガ覊束セヌ、左様致シマセヌト意見ガ一致シマセヌ
○議長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ二番ノ御考ヘノ如クシマスニハ、一ノ廃止ニ付テノ建議書ト云フカ請願書ト云フカ、文案ヲ一ツ組立テルコトヲ引受ケ手ガナクテハナラヌ訳デ
○二番（名古屋、奥田正香君）　ソレハ御苦労ナガラ、御迷惑ニ御迷惑ヲ掛ケマスガ、東京商業会議所ニ托シタイ、ソコデ条件ヲ附スルカ附サヌカト云フコトニ付テハ、二番ハ条件ヲ附サヌ方ガ宜イト思フ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　三十三番ハ敢テ議論ハ申シマセヌガ、廃止案ヲ御提出ニナリマシタ会議所四箇所デ之ノ文案ヲ作ツテ戴クト云フコトガ穏当ナコトヽ思ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　而テ二番・三十三番ノ御説ハ、此議場デモウ一遍議決ヲ経ルト云フ論デハナイノデアリマスカ、ソレガ出来タノヲ各会議所ニ配付ヲ望ム、趣意ハ斯ノ如キ趣意デアツタト云フコトヲ御案ニスレバ善イト云フコトデアリマスカ
○二番（名古屋、奥田正香君）　今御明言ニナツタ通リデ、別ニ条件ヲ附サヌト云フノデアリマスカラ、至極単簡ナモノデアラウト思ヒマス、併シ四会議所デオヤリ下サツテモ五会議所デオヤリ下サツテモ宜シイ、私ハ自説ヲ取消シテ三十三番ノ賛成ト見テ差支ナイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ今二番・三十三番ノ御説ノ如ク斯様ニ廃止説ガ一致多数ト決定致シマシタニ付テハ、廃止ニ関スル
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建議若クハ請願ノ趣意ハ東京商業会議所・横浜商業会議所・京都商業会議所・金沢商業会議所此四箇所カラ意見ガ出テ居リマスカラ、其四箇所ヲ委員ニ選定シマシテ、成ル丈ケ短カイ趣意ヲ以テ、今ノ附帯意見ハ附ケヌト云フヲ趣意トシテ、斯ウ云フ様ニシタラ善カラウト云フ案ヲ備ヘマシテ、聯合会各地ノ商業会議所ニ差上ゲマス、但シ之ヲ取ルカ取ラヌカハ、先刻二番ノ御申述ベノ通リ、其地ノ商業会議所ノ御多数ニ依ルコトデゴザイマセウ、此会ノ結果トシテハ左様ナ手順ニ致スト云フコトニ御申合ヲシテ置キマシテ宜シウゴザイマスカ（異議ナシト呼ブ者アリ）
○五番（函館、平出喜三郎君）　附ケルナラ附ケル、附ケナイナラ附ケナイト云フコトヲ極メテ一致ノ事ニシタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレハ各会議所ヲ覊束セスト云フノデスカラ、徳義上ソレヲ皆サンガ守ラレルノハ別段ノ話デ、其会議所ガ附ケルト云フノヲオヨシナサイト聯合会ガ干渉スルコトハ出来ヌ、ソレハ已ムヲ得ヌ
○五番（函館、平出喜三郎君）　ソコデ我々ノ敗軍シタ者ハ別トシテモ勝利ノ方ハ一致ガ出来ルト思フ、私共敗軍シテモドチラデモ政府ニ貫徹ノ出来ルコトヲ希望スルノデゴザイマス、ソレダケノコト位ハ私ハ幾ラ聯合会ノ決議ニ束縛セヌトシテアルトモ、ソレニ重キヲ置カヌデ、此ニ一致ノコトヲ極メテ置キタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　此処デ極メルト云フコトハ難イコトデ、ソレヲ確定スルコトハ出来マセヌ
○二番（名古屋、奥田正香君）　ソレハ出来マセヌト云フノハ、若シ之ヲ附ケヌト云フコトニシマシテモ附ケタイト云フ会議所ガアツタラ仕方ガナイ、聯合会ノ会議デハ附帯セヌト云フノデアリマスカラ、徳義ヲ以テ附ケヌナラバ格別、各会議所ニ帰ツテカラ財源ヲ附ケテ出サナケレバナラヌト云フコトデアレバ已ムヲ得マセヌ、是レハ覊束セズト云フ明文ニ依ルヨリ外ハナイ、我々ハ成ル可ク此御決議ノ通リ建議スル積リデアリマスガ、此処デ極メルト云フコトハ出来ナイト思フ
○五十一番（京都、大沢善助君）　会長ノ御宣告通リデ、平出君ノ御説ハ至極賛成スル所デアリマス、是レハ附帯セヌモノト極ツテ居ル以上ハ平出君ノ御希望モ達シテ居ル、各会議所デヤルコトハ仕様ガナイ、サウ云フ様ナコトハナイモノトシテ会長ノ御宣告通リデ宜シイ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　ソコデ御配慮ニナリマシタ文案デスガ、各所ヘ参考ノ為メ御廻ハシヲ願ヒマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　必ズ左様仕ツリマス、尚ホ此ニ一寸申上ゲマスガ秋田商工会ト土佐商工会カラ本案ニ対シテ修正ノ意見ガ出テ居リマス、是レハ此問題ガ修正ト決シタ時ニ御報道ヲシタラ宜カラウト思ツテ居リマシタガ、決議ノ結果修正ノ方デナク全廃ト相成リマシタカラ、一応秋田ト土佐ノ商工会カラ意見ガ出テ居ルト云フコトヲ全会ニ御照会申上ゲテ置キマス

明治三十年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第三七七―三八六頁　刊
 - 第22巻 p.300 -ページ画像 
明治三十年十二月九日午前十一時十五分開議
　　出席委員　　　　　四十一名　○氏名略
　　有志出席員　　　　　　三名　○氏名略
　　出席事務員　　　　二十三名　○氏名略
○上略
　　午後一時十五分開議
○議長（東京、渋沢栄一君）　協議会ヲ開ク前ニ御相談致スコトガゴザイマスガ、昨日御議決ニナリマシタ営業税法廃止ノ事柄デゴザイマス、昨年ハ此改正ノコトニ付イテ聯合会ニ於テ決議シマシタ末、主務省若クハ関係ノ重立ツタ官省ヘハ、大臣ニ訪問ヲ致シテ、聯合会ヲ代表スルト云フコトマデニイカナイカ知ラヌガ、聯台会ヲ開イテ斯様ナ意見ニナリマシタ、ドウゾ十分御取調ベ下スツテ御採納アラムコトヲ望ミマスト云フ目的ヲ以テ、事情ヲバ陳述致シマシタヤウデゴザイマシタガ、当時ノ御議決ニ付キマシテハ如何取計ヒニ致シタラ宜シウゴザイマスカ、玆ニ決シタ昨日ノ御議決ノ通リ其趣意ヲ文章ニシテ各地ヘ御配布スルト云フコトハ、昨日ノ御議決ノ通リ東京商業会議所・横浜商業会議所・金沢・京都、此四ケ所ノ商業会議所ノ御方々ガ更ニ御取調ベニナリマシテ、極ク趣意ヲ簡単ニ致シテ斯様ニ議決シタ、此趣意デ望ムト云フコトヲバ各地ヘ御配リ申スト云フコトハ昨日来其御評議ガ済ンデ居リマス、ソレハ皆様ヘ御通知申上ゲマスルヤウニ致ス筈デゴザイマスルガ、此会議ノ相済ミマシタアト、主務省ニデモ訪問致シテ其事情ヲ陳述スルト云フ手続ヲ昨年ノ通リスルヤ否ヤト云フ御相談デゴザイマス
○三十五番（神戸、岡田元太郎君）　三十五番ハ唯今御陳告ノ通リ、昨年ノ如ク其筋々ヘ陳情スルコトヲ希望致スノデゴザイマス、就キマシテハ、其陳情方ハ甚ダ御苦労ニハ存ジマスケレドモ、昨日来御苦労ニナツテ居リマス四会議所ノ方々デ御運ビ下サルヤウニ致シタウゴザイマス
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　三十五番ニ同意デゴザイマス、若シ起草ノ都合ガ数日ヲ費シテ、四会議所ノ方ガ万一ニモ出来ヌト云フ場合ハ、其ノ辺ノ所ハ東京或ハ横浜等ノ五会議所デ御取計ヒヲ願ヒマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　同感デゴザイマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　唯廃税ヲ言ツタ者ニ其事ヲ望メト云フヤウニ聞イハシマセヌカ、特ニ御選ビニナツテ若シ留京ヲシテ歴訪ヲスルナラバ、歴訪委員ヲ願フ方々ヲ御極メニナルコトガ宜カラウト思ヒマス
○四十一番（浜松、中村忠七君）　本員ハ唯今議長ノ御述ベニナツタヤウナ趣意ガ宜カラウカト思ヒマス、既ニ本会トシテ決議シマシタ以上ハ、最早何レノ論者デアツタト云フコトヲ今日殊更ニ種別スル必要ガナイト思フ、廃案ヲ御決議ニナリマシタノハ是ハ従来ノ手続トシテ左様ナルベキコトデアリマスガ、今日トナリマシテ、議長ヨリ然ルベク五会議所ヲ御指定下サレテ、昨年同様ノ御苦労ヲ願ヒタイト思ヒマス
 - 第22巻 p.301 -ページ画像 
○三十五番（神戸、岡田元太郎君）　今日トナリマシテハ最早修正派・全廃派ト云フ区別ハナイノデアリマスカラ、四会議所ノ方ヲ以テシテモ憚ル所ハゴザイマセヌカラ、兎ニ角御苦労ヲ願ヒマス
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　私ハ賛成スルノミナラズ、マダモウ一ツ御約束ヲ願ツテ置キタイノハ、ドウゾ今度ノコトハ成ルベク事情ノ徹底致シマスルヤウニ、務ムベキ義務ガアルダラウト思ヒマス、唯各要路ノ大臣ヘ歴訪ヲ致シマスルノミナラズ、最早議会ノ開会モ切迫シテ居リマスレバ、或ハ此議会ヘ向ツテ請願ヲ致スト云フヤウナコトハ必要ト存ジマスルガ、如何デゴザイマセウカ、唯大臣ヘ此決議ノ趣ヲ陳情致シタノデ止ミマスカ、進ンデ議会マデ運動ヲ致スカト云フ点デアリマス、之ヲ附加ヘテ御協議ヲ願ヒタイノデアリマス
○五十番（京都、中野忠八君）　今亀岡君カラノ御説ニ付キマシテハ本員ハ同感ヲ致スモノデアル、是マデ会議所デヤツタコトガ成効ガ有ツタカ無カツタカト云フ御話ガ出マシタガ、本員ハ此事ニ付イテ経験ガゴザイマセヌカラドウカ分リマセヌガ、聞ク所ニ依レバ、是マデ御ヤリニナルノハ何時モ斯ウ云フ御相談ノ結果、地方ノ会議所ガ書面ヲ出シテソレニ付イテ効力ガ有ルカ無イカト云フコトヲ御論ジニナツテ居ルヤウデアル、斯ウ云フ事柄ニ付イテ出来ルダケ当路ニ向テ尽力ヲ致シテ、ソレデ敗ヲ取ツタラ拠ナイコトデアル、此事ニ就イテモ、成ルベク四・五ノ会議所ノミナラズ、モウ少シ三府五港トカ何トカ云フヤウナコトニシテ大キク作ツテ置イテ、御苦労ニナルコトヲ希望シマスルノミナラズ、其模様ニ依ツテハ随分地方ニ於テ実業家タル相応ノ働ヲ取ラナケレバナラナイト云フ考デアリマス、之ニハ是非所謂運動委員ノ性質ヲ帯ビタ委員ヲ選ンデ置キタイト云フ考デアリマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私ハ三十五番ニ同感デゴザイマスガ、矢張今日トナツテハ御熱心ノ御方ヲ尚ホ希望致シマス、前四ケ所ノ御方ニ御依頼ヲ致シタイ
○八番（金沢、渡瀬政礼君）　私ハ営業税全廃ニ付イテ唯今陳情委員ヲ四ケ所ノ会議所カラ出シタラ宜カラウト云フ御論者ガアリマシタガ先刻会長ヨリモ御話ノ如ク、ドウモソレデハ全廃説ヲ主張シタモノニ何モ彼モ任セルト云フ話ニナリマシテ、唯今トナリマスト云フト此聯合会ノ総体ノ議トナツテ仕舞ツタモノデアリマスル故ニ、ソレデハドウモ一向宜カラヌト思フノデアリマスデ、五人程ト云フドナタカノ御説モアリマスガ、其人数ノコトハ必ズ何程デナケレバナラヌト私ハ思ヒマセヌ、五人デモ七人デモ宜シク、此会カラシテ選ム方ガ宜シイト思フ、広ク選ム方ガ宜シイト思フ、ソコハ会長ノ御指名デモ宜シウゴザイマスルシ、ソレハ皆サンノ仰セニ従ヒマスガ、右ノ主張シタ四ケ所ノ会議所ノミニ陳情委員ヲ任セテ置クト云フコトハ宜シクナイト考ヘル、デアリマスカラ、ドウカ此義ハ諸君ガ能ク御考ニナツテ、適当ノ委員ヲ御選ビニナルコトヲ希望致シマス、且ツ他日貴衆両院ガ開会ニナリマスル、此側ニ付イテノコトハ今カラ選ンデ置クト云フコトモ如何ハシイコトヽ思ヒマスルガ、是ハ全
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廃ノコトガ決シマシテ皆サマモ御郷里ヘ御帰リニナリマシテ御報告モ出来マセウ、ソレカラシテ書面ヲ作ツテ定款ナリガ出来ルコトデアラウト思ヒマスカラ、是ハ各地カラ出テ事情ヲ陳述シタ方ガ宜カラウト思ヒマスカラ、是ダケノ意見ヲ申シテ置キマス
○三十四番（津、橋本清助君）　此主務省ヘ陳情委員ノ選ビ方ハ七部ニ分ケテ一人ヅヽ出スト云フコトニシタラ宜カラウト思ヒマス、サウシテ尚ホ三十三番ノ御説、議会ヘ対シテノ運動モソレニ嘱托スルト云フコトニ致シタイ、其七部ニ分ツタ其中デ申合ハシテ其人ヲ選定スルト云フコトニ致シタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　三十四番ノ七部ト云フノハ、広島デ出来タ七部ト云フノヲ指シテ云フノデアリマスカ、別ニ七部ヲ作ラウト云フノデアリマスカ
○三十四番（津、橋本清助君）　広島デ定メマシタモノニ依ル積リデアリマス
○四十番（大津、西村卯兵衛君）　四十番モ唯今三十四番ノ御説ガ広クツテ宜カラウト思ヒマスカラ賛成ヲ致シマス
○六番（佐賀、西村万次郎君）　私ハ左様ニ陳情委員ヲ七部ニ分ケナケレバナラヌト云フ必要ヲ感ジマセヌ、既ニ多数ヲ以テ決シタト云フ所デ、此先キ各地ニ帰リマシテ如何ナル意見ヲ抱イテ居リマスルカ又決スル所ガナケレバナラヌト考ヘマス、ソレデ私等ノ如キ修正説ヲ抱キマシタモノハ誠ニ全廃ノ方ノ論点ガ弱フゴザイマス、其弱イノヲ若シヤ委員ニ選バレマシタ所ガ効能ガ無イト思ヒマス、ソコデ御熱心ノ御方ガ委員ニナツテ下サイマスト、成立ツコトモ早イダラウト思ヒマス、又衆議院ニ運動致シマスルコトハ次ニ譲リマシテ、本会ノ結果ノ陳情委員ダケハ右発論者ニ御委托ヲ致シタイト云フ希望デゴザイマス
○四十八番（広島、桐原恒三郎君）　本員ハ八番ト同感デゴザイマス、兎ニ角満場ノ選挙ヲ以テ陳情委員ダケヲ極メル方ガ宜カラウト思ヒマス、併シ此選挙ノ仕方ハ例ニ依リマシテ会長ノ御指名ヲ希望致シマス
○十六番（鹿児島、宮里正静君）　私ハ三十三番ニ同感ノモノデアリマス、ソレデ丁度吾ガ鹿児島ノ会議所ハ臨時会ヲ開キマシテ修正ト云フ所ニ決シテ私ハ参ツタノデアリマス、然ルニ若シ又委員ニ御選ビニナル気遣ヒハアリハシマスマイガ、念ノタメニ申上ゲテ置キマスガ、何レ此議事ノ結果ヲ議員一同ヘ報告ヲシナケレバナラヌ、其段ハ念ノタメニ申上ゲテ置キマス、依テ三十三番ニ同感デゴザイマス
○北村竹四郎君（富山書記長）　陳情委員デゴザイマスガ、之ヲ実行シテ貰フト云フコトニ付テハ非常ナル熱心ヲ以テ御運動ヲ希望セニヤナラヌ、為メニ又時日ヲ要スルコトモ出来ヤウト思フ、随分金モ要ルト云フヤウナ憂ガ付イテ廻ルカモ知レヌ、ソレヲ又吾々会議所ニ於テ負担セヌナラヌト云フコトニナリマスト、固ヨリ負担セネバナラヌモノデハアラウケレドモ、随分困難デモアリマスルシ致シマスルカラ、成ルベクハ全会一致ヲ以テ東京商業会議所ヲ陳情委員ニシテ貰ツテ働イテ頂クト云フコトヲ私ハ希望スル、成ルベク入費ナド
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ハ出サイデ宜イト云フヤウニ願ヒタイ
○議長（東京、渋沢栄一君）　如何致シタモノデゴザイマセウ、主務大臣ヲ御訪問シテ此事情ヲ陳述スルガ宜カラウト云フ御趣意ノヤウニ見エマスガ、其仕方ニ付イテ両説バカリニ分レルヤウデアリマス、或ハ廃止説ヲ主張シタ人カラ選ンデ置イタラ宜カラウ、左ナクシテ全体カラ選ブガ宜カラウ、或ハ七部委員ト云フモノガ既ニ此営業税法ニ付イテアツタカラソレヲ玆デ充テタラ宜カラウ、ト云フ二・三ノ説ガゴザイマスルガ、何レニ決議致シタモノデゴザイマセウカ
○三十三番（大阪、亀岡徳太郎君）　モウ一応満場ノ輿論ニハ抱泥ハ致シマセヌケレドモ、決シテ此労ヲ厭フニアラズシテ、趣意ノ徹底致スタメニ決議ノ趣ヲバ当路ノ大臣ニ陳情スルト云フコトヲ主眼ト致シマスルナラバ、若シ昨日ノ結果ハ多数ヲ以テ決シマシタコトハ面ノ当リ明瞭ナコトニハ相違ゴザイマセヌケレドモ、各地皆各々代表シテ此処ヘ参ツテ居ルト云フコトハ明カナコトデアリマス、彼是レ考ヘテ見マスト、腹ノ底カラ修正説ノ人ガ此全廃ノ理由ヲ以テ之ニ当ラシメヤウト云フノハ皆サン意外ナ御考ガ御有リナサルデゴザイマセウガ、サリトテ此全廃主唱ヲナスツタ提出者四ケ所ト云フコトヲ指シマスト何カ嫌ヒガアリマスルヤウデ、之ヲ希望スルノハ本来本統ノコトデアルマイカト思フ、ナゼナレバ固ヨリ此論法ヲ御立テナスツテ真実心底ヨリ此御趣意ガ御脳裏ニ存シテアルト云フ方ノヤウニ認メラレル、果シテ然リトスルト、此方々ガ是非総体ヲ代表ナスツテ下サルト云フコトハ、御無理ナ御願ヒデモナイヤウニ思ヒマスル、鈍クテモ構ハナイ、ドツチカ極ルト云フヤウナコトニ御取リニナルト妙ナ嫌ヒガアリマスガ、玆ハ一体ガ希望スルコトナラ成ルベク趣意ノ徹底スルヤウニ務メヤウ、斯ウ云フコトニ御考サヘ付キマシタレバ、敢テ差支ヘルコトハナイデハアリマセヌカト考ヘマスドウゾ多数ノ御意見ニ……
○三番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　ドウデゴザイマセウ、陳情ト云フコトハ皆サマ一致デスガ、人ノ選ビ方ニ付イテハ異議ガアルヤウデアリマスガ、会長ノ選ブ所ニシテ起立ニ問ハズシテヤリタイト思ヒマス
○五十一番（京都、大沢善助君）　ドナタカヽラ御説ガ出マシタガ、大蔵大臣ニ決議ノ趣ヲ陳情スルト云フコトダケハ私ハ会長ニ願ツタ方ガ宜カラウト思フ、成程今三十三番ノ御説ナドハ御尤モデス、本員ナドモ労ヲ厭フタ訳デモ何デモアリマセヌガ、唯若シ此後斯ウ云フ例ガ残リマスルト、将来聯合会ヘ意見ヲ出スノニ面倒ガ起ツテ来ルウツカリ出セナイト云フヤウナ結果ニナルト思ヒマスカラ、ドウカ会頭カラ陳情ヲ願ヒタイノデアリマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　五十一番ノ御論ハ、昨年ノヤウニ特ニ選挙セズニ、此会ノ会頭カラ申シタ方ガ宜カラウト云フノデアリマスナ……（賛成々々ト呼ブ者アリ）
○議長（東京、渋沢栄一君）　大勢寄ツタカラト云フテ屹度宜イト云フコトニ限ツタ事ハゴザイマセヌ
○四十七番（山形、佐治吉左衛門君）　私ハ五十一番ト同感デアリマス
 - 第22巻 p.304 -ページ画像 
会長ニ其事ヲ御委托致シタイノデアリマス
○五十四番（福井、村野文次郎君）　就キマシテハ決議ノ案文ハ成ルベク早ク御廻シテ願ヒタイ、ソレヲ直グニ各地方カラ出シマセヌト熱ガ睲メルヤウニナリマスカラ……
○議長（東京、渋沢栄一君）　唯今五十一番カラ議会ニ対シテノ御心配モアリマシタケレドモガ、今ノ主務省若クハ御関係ノ官省ニ対シテ事情ヲ陳述シテ意志ノ徹底ヲ求メルト云フノト、ソレカラ又議会ヘ対シテノ希望ト云フ方トハ自カラ勤メガ別々デゴザイマス、若シ今五十一番ノ御説ノ如ク、東京ニ於テ其御筋ヘ出テ此会議ノ模様ヲ陳述シ是非廃止スルガ相当デアルト考ヘルト云フ意志ヲ陳情スルト云フコトハ、若シ御意見デモゴザイマスレバ、当会議所ノ会頭・副会頭――此聯合会ノ会長・副会長ガ御選挙ヲ受マシタラ、会議ヲ取纏メタ順ヲ以テ陳情スルコトハ出来ヌコトハアルマイト思ヒマス、併シ議会ニ対シテノ御心配ニ於テハ此ハ又別段デゴザイマスルデ、各地ソレソレ御手寄リモゴザイマセウカラ、各地ニ於テ十分御心配下サイマシタラ特ニ此会議ノ場合ニ其委員ガ御出張ニナツテ運動スルコトガ無フテモ、意志ヲ徹底スルコトガ出来ルデアラウト思ヒマス
○三十四番（津、橋本清助君）　私ハ今ノ御宣告ノ通リデ宜カラウト思ヒマスカラ前説ヲ取消シマス
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ五十一番ノ御説ニ決ヲ取ラナイデ決シテ宜シウゴザイマスカ（異議ナシト呼ブ者アリ）
○議長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ今ノ陳情ノコトハ右ニ決シマシタカラ左様御承知ヲ……
　　　○本巻明治二十九年十一月十九日、同三十年十一月五日ノ両条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年四月二十五日、同年十一月六日、同年十二月十七日、同三十年五月七日、同年十月八日、同年十二月二十七日ノ各条参照。
　　　○営業税法ハ全廃ハ勿論、明治四十三年迄ハ実質的改正サヘ行ハレザリキ。
　　　　（明治財政史第六巻、明治大正財政史第七巻）