デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月11日（1899年）

是日第八回定期会第一日ノ会議ニ於テ、山形・太田・水戸・宇都宮・栃木ノ各商業会議所提出ノ営業税法改正ノ儀上程サレ、委員附託トナル。十八日第五日ノ会議ニ於テ、委員会報告上程サレシガ否決セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第四五―四六頁　刊
○第十四号議案　　　　　　　　　　（山形商業会議所提出）
一営業税ニ対シ調査委員ヲ設ケ納税額ヲ決定セシメン事ヲ建議スルノ件
　　　　理由
　　営業税ハ一ノ申告税ニシテ、営業者自身ニ納税額ヲ届ケ出ツル規定ナルニヨリ、是カ制裁法トシテ同法第十七条以下ニ於テ、政府
 - 第22巻 p.449 -ページ画像 
ガ該申告ヲ不当ナリト認ムル場合ニ処スル規定ヲ設ケラレタリト雖、果シテ其不当ナルヤ否ヲ決定スルニ臨ミ、収税官吏ト営業者トハ性質上各自其所見ヲ異ニスルハ、実ニ己ヲ得ザル状勢ナリトス、従テ官民相互ノ間感情ヲ害シ、其極地方不穏ノ傾向ヲ惹起スルハ屡次見聞スル所ナリ、故ニ之ヲ矯正スルノ方案トシテ、営業者中ヨリ委員ヲ挙ケ、申告書ノ当否ハ委員会ノ評議ヲ経テ之ヲ決定セシメ、円滑ニ其局ヲ結ヒ、納税者ヲシテ不平ノ声ヲ絶タシムルハ目下ノ急要ナリト認ム、是レ玆ニ本案建議ノ採用ヲ望ム所以ナリ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　第五四―五七頁　刊
○議案第十九号　　（太田・水戸・宇都宮・栃木商業会議所提出）
営業税法中ニ調査委員ヲ設ケラレン事ヲ政府ニ建議シ並ニ貴衆両院ニ請願スルノ件
　　　　理由
　　現行営業税法ノ不完不備ノ法規タルハ夙ニ輿論ノ認ムル所ニシテ曩ニ明治三十年十二月東京ニ於テ開会セラレタル全国商業会議所聯合会ノ決議ニ依リテ之レカ全廃ノ意見ヲ発表シタル事アリシナリ、然レトモ当時未タ該法実施ノ成蹟ヲ覩ルノ時期ニ達セサレハ只理論上法質ノ不完全ナルヲ陳弁シタルニ過キサリシカ、今ヤ既ニ該法実施上ノ結果トシテ、歴々其不良ノ成果ヲ発見スルヲ得タルヲ以テ、従来ノ経験ニ徴シテ之ヲ考フレハ、該税法中ニ調査委員ナル者ヲ設ケテ之レカ調査ヲナサシメ、一ハ以テ申告ノ虚偽ヲ防止シ、一ハ以テ認定ノ苛察ヲ除去セントス、畢竟申告認定等ニ於ケル徴税上是等ノ弊害アルハ勢ヒ免カレサルモノナリト雖トモ特ニ営業税法ニ於テ太甚シトナス、此ニ於テカ本会議所ハ調査委員ナルモノヲ設ケ、以テ其弊根ヲ断切シ、賦課ニ苛察ナク、申告ニ虚偽ナク、納税者ヲシテ国費負担ノ義務ヲ全カラシメント欲スルナリ
　　調査委員ノ設置方法ハ、現行所得税法ノ調査委員ノ規定ニ準依スルモノトス
　　選挙区域内ニ居シ、営業税法第十三条ノ申告ヲ為シタル者ハ、調査委員選挙人ヲ選挙シ、調査委員若クハ調査委員選挙人ニ選挙セラルヽ事ヲ得
　　　但シ左ニ記載スル者ハ此限リニアラス
　　　一　無能力者
　　　二　身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者、及家資分散若クハ破産ノ宣告ヲ受ケ其確定シタルトキヨリ復権ノ決定スルニ至ルマテノ者
　　　三　剥奪公権者及ヒ停止公権者
　　　四　禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其裁判確定スルニ至マテノ者
　　　五　第三十四条・第三十五条ニ依リ処罰セラレタル後五ケ年ヲ経サル者
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　　調査委員選挙人ノ定数ハ、其選挙区域内ニ於テ第十三条ノ申告ヲ為シタル者拾人ニ付一人トス
　　　但シ申告者二百人以上ナルトキハ二十人ニ止メ、申告者拾人未満ナルトキハ一人トス
　　調査委員選挙人ノ選挙事務ハ、市区町村長又ハ戸長之ヲ執行ス、調査委員ノ選挙事務ハ郡長之ヲ執行ス
　　郡長ハ調査委員選挙人ノ選挙期日ヲ定メ、之ヲ市区町村長又ハ戸長ニ通知シ、市区町村長又ハ戸長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選挙期日七日前其旨ヲ公示スヘシ
　　選挙ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
　　選挙ハ投票ノ多数ヲ得タル者ヲ以テ当選者トス、投票ノ数同シキトキハ年長者ヲ取リ、同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
　　調査委員撰挙人ノ撰挙終了シタルトキハ、市区町村長又ハ戸長ハ当撰人ノ氏名ヲ公示スヘシ
　　郡長ハ撰挙期日ヲ定メ、少クトモ八日間公示シ、調査委員、之ト同数ノ補欠員ノ撰挙ヲ行ハシムベシ
　　前項ノ撰挙ニ関シテハ調査委員選挙ノ規定ヲ準用ス
　　調査委員及ヒ補欠員ノ撰挙終了シタルトキハ郡長ハ当撰人ノ氏名ヲ公示スヘシ
　　調査委員及ヒ補欠員ニ撰ハレタル者ハ正当ノ事故ナクシテ之ヲ辞スル事ヲ得ス
　　調査委員ノ任期ハ満四年トシ、二年毎ニ其半数ヲ改撰ス
　　　但シ第一回改撰期ニ於テハ抽籤ヲ以テ其退任者ヲ定ム、補欠員ハ二年毎ニ之ヲ改撰ス
　　調査委員ニ欠員ノ生シタルトキハ直ニ補欠員ヲ以テ之ヲ補充スヘシ
　　　但シ補欠員ヨリ調査委員トナリタル者ノ任期ハ、前任者ノ残任期間トス
　　調査委員会ハ毎年二月ニ開会スルコトヲ要ス
　　調査委員会ハ郡長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
　　調査委員ハ毎年開会ノ始ニ於テ調査委員中ヨリ会長ヲ選挙スヘシ
　　調査委員会ハ過半数ノ出席者アルニアラサレハ決議スルコトヲ得ス
　　議事ハ出席員ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
　　調査委員ハ自己ノ申告ニ関スル議事ニ与ル事ヲ得ス、納税者ニシテ調査委員会ノ決議ヲ不当ト思意スルトキハ再調査ヲ要ムル事ヲ得、前項ノ場合ニハ郡長ハ直ニ調査委員会ヲ開キテ再調査ヲナサシムヘシ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第一三―二三頁　刊
　　　　○第一日
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
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　　　委員　　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○六十二番（東京、中野武営君）　議事進行ノ上ニ付キマシテ一ノ建議ヲ致シマス、ソレハ今日迄提出ニナツテ居ル議案ガ十九号ニ至ツテ居ルノデゴザイマス、其中唯今議長カラ御報告ニナツタ三案トイフモノハ未ダ印刷ハ出来テ居リマセヌ、併シ此十九号ニ至ル迄ノ議案ヲ調ベテ見マスルト、其中航海補助金ニ関スル問題ガ四ツゴザイマス、ソレカラ衆議院議員選挙法改正ニ関スル議案ガ五ツ、営業税法中改正ニ関スル議案ガ二ツゴザイマス、斯ウ問題ガ一ツニナツテ居ルモノデ、色色箇条ニ依テ違ヒハゴザイマスケレドモ、大体ハ同ジ案デアリマス、附キマシテハ此議事ノ進行ノタメニ其案ノ場合ニ至ツテ委員ヲ選挙シテ調査ニ掛リマスルト云フト、自然ト此会ガ時間ヲ要スルト云フコトニナラウト思ヒマスカラ、一号議案ヨリ議スルニ先立ツテ唯今申シマスル案ノ委員ヲ設ケラレテ、其委員ニ附託シテ調査ヲサセルヤウナ都合ニ致シタイ、之ヲ再言致シマスレバ、航路補助金ニ関スル議案ハ、即チ、第一号・第四号・第五号・第十八号、此四ツノ議案デゴザイマス、ソレカラ衆議院議員選挙法改正ニ関スル議案ハ、即チ第六号・第七号・第十三号・第十五号・第十七号、此五ツノ議案、ソレカラ営業税法ニ関係シマスルモノガ第十四号・第十九号、此二ツノ議案デゴザイマス、即チ此三ツニ別ケマシテ委員ヲ設ケラレタナラバ都合ガ宜カラウト考ヘマス、ソレデ航路補助金ニ関スル委員九名ヲ置キ、衆議院議員選挙法改正ニ関スル委員モ同ジク九名、営業税法ニ関係シマスルモノハ五名ノ委員ヲ置ク、之ヲ建議致シマス
○中略
○二十七番（熊本、下田耕造君）　段々議論ガ二ツニナツテ、面倒デゴザイマスガ、ドウカ六十二番ガ先キニ発議シテ居リマスルデ、其説ニ吾々モ賛成致シマスカラ、六十二番ノ説カラ先ニ採決スルヤウニ致シタイ
○会長（東京、渋沢栄一君）　六十二番カラ三ツノ議案ニ対シテ委員ヲ置カウト云フ説ガ出マシテ、段々御賛成ガゴザイマスシ、且ツ先キニ出テ居ル案デゴザイマスカラ、之ヲ先キニ採決シヤウト考ヘマス、六十二番ノ説ハ衆議院議員選挙法改正ニ関スル件ト、ソレカラ航路補助金ニ関スル件ト、営業税法改正ニ関スル件ト、此三ツノ委員ヲ置ク、其委員ハ航路補助金ニ関スル件ハ九名ノ委員、衆議院議員選挙法改正ニ関スル件モ九名ノ委員、ソレカラ営業税法改正ニ関スル件ハ五名ノ委員ヲ置ク、其委員ノ指名ハ会長ニ致サセテ宜カラウト云フ御意見ノヤウデゴザイマス、此動議ニ付テ採決致シマス、六十二番ノ説ニ御同意ノ御方ハ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　総起立デゴザイマス、委員ノ指名ハ追テ申上ルコトニ致シマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第六八―六九頁　刊
　　　　○第一日
 - 第22巻 p.452 -ページ画像 
明治三十二年十月十一日午前十時四十五分開議
　　出席者
　　　委員　　　　　五十一名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　ソレデハ今日ハ是デ閉会致シマス――只今段々此委員ノ御説ガゴザイマシテ其委員ノ方々ヲ御指名致シマスガ、ドウモ頭ガ錯雑シテ参ツテ甚ダ窮シマシタ　○中略　ソレカラ営業税法改正ニ関スル件之ハ五名デゴザイマス、斯波信太郎君・反町慎哉・君・前嶋平君・若尾幾造君・三浦碧水君ノ五名様　○下略

明治三十二年十年開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第七二頁　刊
　　　　○第二日
明治三十二年十月十二日午前十時五十分開議
　　出席委員　　　　　五十六名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　皆様御苦労デゴザイマス、開会ニ先立チマシテ一・二御報告申シマスコトガゴザイマス、昨日決議ノ結果委員ノ成立致シマシタ、此委員諸君ガ今朝委員会ヲ開カレテ委員長ノ互選ガゴザイマシタ、其結果ヲ申上ゲマス　○　中略営業税法改正ニ関スル件ハ若尾幾造君ガ委員長ニ御当選デアリマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第三四九―三七七頁　刊
　　　　○第五日
明治三十二年十月十八日午前十時十分開議
　　出席委員　　　　　五十名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　営業税法改正ニ関スル件調査報告、此議事ニ御移リニナルヤウニ致シマス、議案ヲ朗読致シマス
　　　〔書記議案ヲ朗読ス〕
　　　　営業税法改正ニ関スル件調査報告
全会ノ決議ニ依リ調査ヲ附託セラレタル営業税法改正ニ関スル件審議ヲ遂ゲ候処、委員会ノ意見ハ別記ノ趣旨ニ依リ政府ヘ建議シ、貴衆両院ニ請願致候方可然ト決定致候間、此段及御報告候也
　　　　　　　　　　　営業税法改正ニ関スル件調査委員長
　　明治三十二年十月十四日　　　　　　　　　若尾幾造
　　　　第八回商業会議所聯合会々長　渋沢栄一殿
　（別記）
　　　　営業税法改正ニ関スル件
一営業税法課税標準中賃貸価格及従業者ヲ刪除シ、更ニ適宜ノ税率ヲ定ムル事
一調査委員ヲ設ケ申告ノ当否ヲ審査セシムル事
　　　　理由
　　現行営業税法ハ賃貸価格及従業者ヲ以テ課税標準ノ一ニ加ヘタリト雖トモ、本来収益ノ多寡ハ営業ノ用ニ供セラルヽ建物ノ広狭ニ
 - 第22巻 p.453 -ページ画像 
伴フモノニアラズ、又従業者ノ賃銀ハ業務ノ種類ニ由リ非常ノ高低アルヘキカ故、千遍一律此二者ヲ以テ各種営業ノ課税標準トナスハ抑モ失当ノ規定タルヲ免カルヘカラス、特ニ見習者ヲモ従業者ノ一種トシテ課税スルニ至リテハ、苛酷モ亦甚シト謂フヘシ
　　且夫レ営業者ノ申告ノ真実ヲ保スルノ方法トシテ、一郡若クハ一市ヲ徴税区トシ、納税人ヨリ数名ノ委員ヲ選定シ、営業者ヨリ申告ノ諸件ヲ審査セシムルコトヽセハ、現時ニ於ケルカ如キ官民間ノ紛争ヲ避クルト共ニ、課税ノ公平ヲ得ルニ庶幾ヲ得ン
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　別段ニ申上ゲルコトモゴザイマセヌ極ク簡単ノ案デゴザイマスガ、此十四号議案・十九号議案ニ付イテ委員ニ御話ニナリマシタ審議中、委員ノ中ニ於キマシテモ色々御説ガゴザイマシタガ、結局唯今御報告致シマシタ通リ此二箇条ニ決シマシタヤウナ次第デ、其訳柄ハ理由書ヲ以テ示シ置キマシテゴザイマスカラ宜シク御討議アランコトヲ希望致シマス
○十八番（京都、大沢善助君）　チヨツト御尋ネ致シタイノデスガ、此第一項ノ賃貸価格・従業者ヲ廃シテ其下ノ処ニ更ニ適宜ノ税率ヲ定メルト云フ文章ガゴザイマスガ、之ハドウ云フコトヲ意味シタノデゴザイマセウカ、例ヘバ政府ガ営業税カラ収入スル税額ハ何百万円ト極ツテ居ル、其中ノ課税標準ノモノニ減ラスナラバ、ソレニ対シテ上ツテ来ル税ヲ他ノモノニ持ツテ行ツテ取ラウト云フ意味ニナルノデゴザイマスカ、他ノモノト云フモノハ、他ノ課税標準ハ、売上高ニ向ツテ税率ヲ課シテ取ラウト云フ意味ニナルノデゴザイマセウカ、サウ云フコトデアレバ、此営業ト云フモノヽ上ニハ、皆サン御承知ノ通リ福井地方ノ羽二重ノ如キ、或ハ生糸ノ如キ、非常ニ売上ゲ金高ガ高クナツテ利益ノ極ク薄イモノガアル、ソレ等ニ向ツテ標準ヲ失ウヤウニナリハシナイカト云フ恐レガアル、其辺ニ付テハドウ云フ御調ベガアリマスカ、チヨツト御尋ネヲ……
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　唯此適宜ト云フコトハ実ハ別ニ考モゴザイマセヌ、故ニ当事者ニ任セルト斯ウ云フコトデアリマス、斯ウ云フテ唯ダ賃貸価格・従業者ト云フコトニ付キマシテハ非常ニ当局者ト納税者ノ間ニ混雑ヲ生ジテ居リマス、甚ダ煩ハシイコトデアル、其他ノ公平ノ適宜ナル所ニ任カシテ納税ヲセシメタイト云フニ止マリマス
○十七番（阿波、根本民治君）　チヨツト委員ノ御方ニ伺ヒタイノデスガ、先キニ此聯合会ニ於キマシテハ此営業税ト云フモノハ絶対的ニ不利デアルト云フコトハ聯合会ニ於テ決定シタ事デアル、デ其際ニハ即チ貴衆両院ニ向ツテモ其意見ヲ提出シタト云フヤウナコトニモナツテ居リマス、今此聯合会ニ於テ此段々此委員ヲ置クトカ何トカ云フヤウナ意思ガ出テ居リマスガ、委員会ハ先キニ聯合会ガ決定シテ、営業税法ハ詰リ今日ノ国家ノ所謂歳入収入ノ上ニ於テ迚モ之ヲ最早今日行ウベカラザルモノデアルト云フヲ認定セラレテ、サウシテ此修正ヲ作リマスト云フコトニ委員会ハ決定シタノデアルカ、其点ハドウ云フ御考デアルカ、ソレト今一ツ、ドウモ十八番カノ御尋ネニ於キマシテモ今御答ガゴザイマシタガ、ドウモ了解シ兼ネマスガ、此税率此適宜ノ税
 - 第22巻 p.454 -ページ画像 
率ト云フモノハ矢張営業税法ノ範囲ノ中ニ於テ、例ヘバ百分ノ二ト云フモノヲ百分ノ三ニスルトカ四ニスルト云フコトヲ政府ニ任カスト云フノデアルカ、又何ニカ他ニ、其不足ヲ訴ヘルモノハ政府ニ於テ宜シク税法ヲ編ミ出シテ、貴衆両院ノ協賛ヲ求メテ、ソレ等ノコトハ塡補セヨト云フ意思ニナツテ居ルカ、此相当ノ税率ト云フコトニ付イテハ甚ダ了解ニ苦ミマス、第一ノ要点ト第二ノ要点ヲモウ一応……
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　之ハ唯今十七番ノ御説ノ如ク第六聯合会ニ於テ全廃ト云フコトニナツテ居ルノデゴザイマス、委員会ニ於テハ其事モ実ハ協議致シテ居リマシタノデゴザイマスガ、到底此全廃ト云フコトハモウ今日マデ貴衆両院ニ請願シテ見タ所ガ云フコトハ行ハレナイ、併シ到底政府ノ財源等ニモ関係スルノデアル、納メル事ハ納メヌケレバナラヌガ、併シ此錯雑ヲ避ケルコトニシタナラバ宜カラウ、斯ウ云フ論旨ニ付キマシテ、ソレデ昨年ノ十三議会ニモ詰リ此事ハ衆議院ハ通過シテ居リマスガ、貴族院ハ日ガナクシテ通過シナカツタ、斯ウ云フヤウナコトモゴザリマス、ソレニハ此売上ト云フ方ニ向ツテ勧誘シテ居ルヤウニ見ラレマス、サウ云フコトハ今爰デ彼是委員ガセズシテ其事ハ御協議ヲスル必要ガナイカラシテ、宜シク当事者ニ任カシタナラバ宜カラウト云フコトニ過ギナイノデゴザイマス
○十一番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　本案ニ付キマシテハ委員会ノ能ク要旨モ分リマシテゴザリマス、賛成致シマス、ドウモ曩キニ全廃ト云フコトハ当聯合会ニ於テ決議ニハナリマシタガ、今日国家ノ財政上到底云フベクシテ行ハレナイコトヽ存ジマス、之ハ委員会ノ説ガ至極穏当デ宜シカラウト思ヒマス、又先キニ提出ニナリマシタ所ノ調査委員会ノミトゴザイマシタガ、之ノミニ定メテ置キマスト云フト、他ノコトハ彼ノ通リデ宜シイト云フコトニ黙認ノヤウナコトニナリマス、委員会ハ誠ニ完全ナ修正カ出来タト思ヒマス、徹頭徹尾賛成致シマス
○六十二番（東京、中野武営君）　此案ニ対シマシテハ、此営業税ノ不完全ナルコトハ単リ此箇条ノミデナク、一体種々ノ点ニ不完全ノコトガアツテ、根本的行カナイト云フコトハ、前回デゴザイマシタカ頻リニ主張シテ、今日モ繰返ヘシテ申上ゲルコトハ殆ント不必要ニ属シテ居リマスカラ、其問題ヲ今玆ニ持出シテ喋々致シマセヌガ、兎モ角モ此ノ如キコトハ即チ前決議ト云フモノヲ自ラ取消シテ掛ルト云フコトニ結果ガ相成ルト考ヘマスルデ、私共矢張リ前議ヲ取ツテ居リマスカラ遺憾ナガラ此説ニハ反対ヲ致シマス
○十八番（京都、大沢善助君）　今中野君カラ御説デゴザイマシタカラ私ハ別ニ述ベル要ハゴザイマセヌガ、併シ私ハ敢テ其前議ヲ固執シテソレガタメニ此案ニ反対スルト云フ意味デハゴザイマセヌデ、全体ニ諸君ガ彼レニハ往生スルト云フコトデアレバ、往生センナラヌトシテ往生シテモ宜ウゴザイマスガ、此賃貸価格・従業者ヲ廃シテ之ヲ売上高ニ配当シテ修正スルト云フコトニハ飽迄御同意スルコトハ出来ナイケレドモ、是ハ営業者トシテハ此課税標準ヲ成ルベク複雑ニシテ標準ヲ得ルヤウニシナケレバナラヌモノデアツテ、極ク野蛮時代デハ単純ナル税法ニ移スト云フコトヲ希望スルノデス、前ノ営業税法ハ実ニ不完全不公平ヲ与ヘテ居ル、其ノ上ニモウ一層ノ不公平ヲ来ス、是ガ売
 - 第22巻 p.455 -ページ画像 
上ゲ高ニ税率ガ変ツテ来タナラバ益々不公平ガ起ツテ来ルノハ明カデアル、寧ロ賃貸価格・従業者ト云フ標準額ノアル方ガ益デアル、之ヲ採ツテ以テ売上高ニ課税ノ率ヲ増スコトニナツタナラバ、売上ノ少イ従業者ハ非常ナ不公平ヲ蒙リマスカラ是ニ反対ヲ致シマス
○十七番（阿波、根本民治君）　十七番ハ六十二番ヲ賛成致シマス、現ニ此我ガ商業会議所ノ如キモ全廃論デ、敢テソレヲ固執スルヂヤゴザイマセヌガ、彼ノ不完全ナルモノヲ以テ是ニ修正ヲ加ヘルト云フコトハ宜クナイ、現在ノ所得税ノ調査是等ヲ見テモアレハ名有ツテ実無キモノ、殊ニ本年ノ所得税調査ハ我徳島ノ如キハ余リドウモ調査委員ノ効力ガナイヤウナコトヲ認メマシタ、進ンデ之ヲ他ノ府県ニ聞イテ見マシテモ随分サウ云フヤウナ事ガアツテ、ドウモ名実ニ伴ハナイト云フ結果ヲ感ジテ居ル、ソレ等ノ事カラ考ヘテモ此営業税法ノ調査委員ヲ置キマシタ所ガ、別ニソレダケノ効能ハナイト云フ考ヲ持ツテ居リマス、兎ニ角此案ハ六十二番ヲ賛成致シマス
○十一番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　少シ邪推ノヤウニ当ルカ知レマセヌガ、十七番ハ今調査委員ハ無能デアルト云フコトヲ申サレマシタカラ一言弁ジテ置キマスガ、徳島ノ如キハ如何デアルカ知レマセヌガ、現ニ名古屋ノ如キ地方ニ於テハ所得税調査委員ハ非常ニ公平ヲ与ヘルヤウニ勉強シテ、今日ノ処デハ略ボ標準ヲ得ルニ近カラシメタ、デ営業税法ニ調査委員ノ如キモノガアツタナラバ、斯ノ如キヤカマシイコトハナカツタラウト思ヒマス、決シテ調査委員等ノコトハ無能デナイト云フコトハ我愛知県地方ニ於テハ大ナル働キヲ為シテ居ル、中国筋ハドウカ知レマセヌガ、其事情ガ少シ違ヒマスカラ一言此事ヲ弁ジテ置キマス
○五番（水戸、塙七平君）　五番ハチヨツト調査委員長ニ伺ヒマスガ、此営業税法中ニ調査委員ヲ設ケ申告ノ当否ヲ調査スルコトヽ云フノガ既ニ衆議院デ議決シタ中ニ此条項ガ這入ツテ居ルノデアリマスカ
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　御答致シマス、昨年衆議院ヲ通過シタ中ニハ這入ツテ居リマス
○五番（水戸、塙七平君）　実ハ五番ハ此営業税法中ニ調査委員ヲ設ケ申告ノ当否ヲ審査セシメルト云フ案ノ提出者ノ一人ニナリマシタ、太田カラ提出シタ中ヘ聯名致シマシテ提出ヲシタノデアリマス、段々聞キマス所ニ拠リマスルト、衆議院ノ改正案ニモ既ニ其事ガアルトスレバ、強チ此処デ其事ヲ言ヒ出スヨリハ、却テ前議ヲ保持シテドシドシヤツテ呉レト云フコトヲ、全会ノ決議ヲ以テ衆議院ヘ要求シテ置イタナラバソレデ事足リルダラウト思ヒマスデ、此案ハ別ニ必要ガナカラウト思ヒマスルカラ、前議ヲ以テヤツテ呉レト云フコトヲ、全会ノ決議ヲ以テ衆議院ヘ要求スルコトニ致シタイト思ヒマス
○四十六番（豊橋、三浦碧水君）　私ハ固ヨリ此委員説ニ同意ノモノデアリマスガ、チヨツト御参考ノタメニ申シテ置キマスガ、先刻唯賃貸価格ヤ従業者ノミヲ廃シテシマツテアトハ売上価格ニ依ルト云フコトハ如何ニモ不公平デアルト云フ御説ガアリマシタガ、成程是ハサウ云フ考ガ生ズル訳デアリマスガ、詰リ右ノ二ツヲ取ルト云フノハ、昨年衆議院ヲ通過シマシテ貴族院ノ方ガ時日ガナクテ済マナンダト云フダ
 - 第22巻 p.456 -ページ画像 
ケニナツテ居ル案デアリマス、ソレハ此案ノ通リト私共ハ考ヘテ居リマス、其案ノ通リニスレバ結局賃貸価格ヤ何カ違ハヌモノガ出来ル、其違ハヌ率迄モ委員会ガ決スルガヨイト云ツテ見タ所ガ、向フ見ズナ事ヲ決シタ所ガ、衆議院ノ案ニ少シ違フ位ノコトデ是ガ極ラヌヤウデハイカヌト思ヒマスカラ、ソレ故ニ細カイコトハ言ハヌデ、ドウシテモ除カナケレバナラヌ二ツノモノヲ取ツテ、アトハ任シテ置ケバ政府デモ大概斯ウ云フ意味ナモノヲ提出ニナルデアラウ、若シナラズトモ衆議院カラ提出ニナルデアラウト思ヒマス、ソレデ、成ルベク会議所ノ其意向ヲ発表シテ置ケバ、貴族院・衆議院ノ通過ニモ力ニナルダラウト思ヒマスカラ、左様ナコトニ極メタノデアリマス、ソレデ全体前年当会議所ニ於テ全廃ノ説ガ出テ居リマシタ、是モ此節ノ何ヲ能ク取調ベテ見ルト、全国各区域ヲ切ツテ其区域内ニ於テ意見ヲ定メマシタ是ヘ持ツテ来テ議シタ所ガ全廃ト云フコトニナツタ、其本ヲ能ク尋ネテ見ルト、全廃ニ及バヌト云フヤウナ説デアルカラ分リ易ク、其修正ノ意見ニ至ルト、アー修正シタラ宜イ斯ウ修正シタラ宜イト云フ、修正ノ説ガ区々ニナツタカラ、其意見ガ成立タヌト云フノデ、全廃意見ノ方ガ僅カニ一票カ二票ノ差デ通過シタト云フ有様デアリマス、併シナガラソレ等ノモノハ、修正ノ条項ト云フヨリモ、全廃ト云フ意見ガ其時ニ多数ニナツタナラバ多数デアリマスカラ、多数デ極ツタトシタ所ガ、ソレハ前ノ事デアリマス、目今ノ処デ其事ヲ請願シテモ通リマセヌシ、又現行法デドコマデモヤツテ居ラレマシタ所ガ、人民ニ取ツテ見ルト実ニ難義ナコトデアリマス、賃貸価格・従業者ト云フコトハ弊害ノ多イ標準デアリマスカラ、之ヲ怺ヘ得ルコトガ出来ヌトスレバ全廃ヲスル時ノ来ルヲ待ツガ宜カラウト思フ、其間右様弊害ノアルコトヲ除クガ至当デアルト思フノデアリマス、私共モ此営業税ニハ個人トシテ絶対的ニ之ヲ賛成スルモノデナイ、廃シテ仕舞タイ、ソレヨリハ適当ナ税源ガ他ニアラウカト考ヘマスガ、ソレハ今云フベクシテ今年ヤ来年ニ行ハレルコトデナイト思フ、シテ見ルト其間二年カ三年ノ間弊害ニ苦シメラレテ居ルコトハ難義デアリマスカラ、道理ハ兎モ角モ、早ク害ノアルモノダケ除イテ貰ヒタイ、即チ其事ヲ本会デ決議シテ建議スルノハ全ク適当ヲ得テ居ルト考ヘマス、ソレ故ニ斯様ナ修正ヲシタラバ宜カラウト云フ意見デアリマス、故ニ委員会ノ説ニ賛成致シマス
○三十六番（岡山、香川真一君）　三十六番ハ甚ダ健忘家デ、家ヘ帰テ女房ヲ忘レルト云フヤウナ健忘家デ、誠ニ夢ノヤウナ御尋ヲ致シマスガ、此調査案ノ第一項ニ付テハ段々御議論モアリマシタガ、元来是ハ何処カラ出タ議案デ調査委員ニ附託シテアツタモノカ忘レマシタ、甚ダ迷ツテ居リマスル、唯ダ十四号ト十九号ガ調査委員ニ附託ニナツテ居ルト考ヘマシタガ、斯ウ云フ改正案ハ何処カラ出タノデアリマスカ甚ダ健忘家デ忘レマシタカラ一言御尋ネ致シマス
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　三十六番カラ御尋ネデゴザイマシタガ、是ハ委員会ニ於キマシテモ非常ニ議論ガゴザイマシタノデアリマス、ソレデ結局ドウモ之ダケノモノニ纏メルヨリ外ニ仕方ガアルマイト云フノデ、是ガ出来タノデアリマス
 - 第22巻 p.457 -ページ画像 
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　唯今三十六番ノ御尋ネニ対シテ四十八番サンガ御答ヘニナリマシタノハ、十九号議案ト十四号議案ト二ツノモノニ対シテ調査委員ヲ置イタノデアルガ、併シ尚ホ進ンデ此営業税法ノ改正モ次キニヤツタト云フコトニナルノデアリマスカ、今一応確メタイト思ヒマス
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　唯今三十八番ノ仰ノ通リ是ハ非常ニ議論ガアツタノデアリマス、併シ先ヅ弊害ノアルモノダケ除イテヤツタラ宜カラウト云フノデ出来マシタ訳デアリマス
○三十六番（岡山、香川真一君）　能ク分リマシタガ、殊ニ御親切ナコトデアリマス、併シ此事ニハ段々御議論ガアルノデゴザイマス、第一項ガアルタメニマルデ之ヲ否決スルト云フコトニナルト、大変ニ不都合ガ起ルカト思ヒマス、私ハ調査委員ニハ賛成ダガ、ドツチカ一ツニナツタラ委員諸君ノ責ハソレデ済ミハスマイカト思ヒマス、是ガ出テ居ルト皆否決スルヤウニナルカト思ヒマスカラ一言……
○四十六番（豊橋、三浦碧水君）　私モ委員ノ一人デアリマスカラ、三十六番ノ説ニ対シテ私ノ委員トシテ之ニ賛成シタ趣旨ヲ述ベマスガ、詰リ此調査委員ヲ設ケルト云フ件ニ付キマシテハ即チ案ガ出テ委員ヲ置カレタノデアリマス、ソレヲ調査シタ所ガ此調査委員ヲ置クト云フコトハ固ヨリ宜シイ、宜シイケレドモ調査委員ヲ置クト云フ一ヲ可トシテ之ヲ建議スルコトニナツタナラバ、其事一デ宜イ、アトハ現行法デ宜イト云フコトヲ認メルヤウナ訳ニナル、シテ見ルト、ソレヲ可トシテ建議スルノ外ハ是認スルコトニナツテ大ニ不利益ニナル、シテ見ルト、是ニ伴ツテ調査委員ヲ置ク外ニ、是迄ノ害ノアルト云フコトヲ申述ベヌトキニハ其意ヲ達セヌ訳ニナル、又此調査委員ヲ置クト云フコトハ外ノ事ヲ言ハニヤナラヌ、ソレヲ言ツチヤ悪ルイ、悪イカラ之ヲ否トスル、ト云フコトハ出来ヌノデアル、又会議所ニ於テ物ヲ議スルニサウ権限ノ細カイモノデナカラウト思フ、例ヘバ調査委員ニ托シテ調査スル案ガアツタカラソレヲ調査セシメヤウト云ツテ出シタ、其外ノ事ヲ議スルノハオカシイジヤナイカト仰ツシヤツタガ、何モオカシイコトハナイ、サウ四角張ツタコトヲ言ツチヤイカヌ、営業税法ヲツマリ善クシヤウト云ツテ調査委員ヲ置イタノデアリマスカラ、ソレヲ改正シテ善イモノニスルノガ委員当然ノ職務デアルト、斯ウ云フ考デゴザイマス
○五十五番（栃木、桜井源四郎君）　五十五番ハ先刻カラ諸君ノ説ヲ拝聴致シマシタ、抑モ此十九号議案ハ太田・水戸・宇都宮・栃木此四会議所ガ挙ツテ、調査委員ヲ制定シテ貰ヒタイト云フコトヲ、本会議所ヘ向ツテ議案ヲ出シタノデアリマス、所ガ矢張同様ノ十四号議案ガ山形会議所カラ出マシタ、然ルニ調査委員諸君ガ調査委託外ノ一項ヲ拵ヘタタメニ否決セラレント云フ勢ニナリマシタカラ、五十五番ハ黙ツテ居ルコトガ出来ヌノデ一言シマスガ、ドウカ満場諸君カラ御注意モアルコトデアリ、若シ調査委員ガヤリ過ギタト云フ御考ヘガアルナラバ御取消ヲ願ヒマス、サウシテ十四号議案ノ体面ト、十九号議案ノ体面ヲ汚サヌヤウニ願ヒマス、願ハクハ調査委員ハ第一項ヲ速ニ御取消ニナツテ、相応ナル調査委員ヲ設ケラレンコトヲ五十五番ハ切ニ希望
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致シマス
○十一番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　一項ノ此事ニ付テ議論ガアリマスガ、調査委員ガ斯クマデニ御親切ニナシ下スツタコトハ謝シマス、調査委員バカリデ、現行法ハ間然スル所ガナイカラ何レ黙認スル姿ニ当リマスカラ、サウナツタナラバ、単ニ調査委員ノミデ彼レハ設ケタイト云フ精神ガ現ニ十二議会・十三議会ニ於テモ熱心ニ尽力シテ居ル、外ノ事ハ宜イ外ノコトハ悪ルイト云フノハ、抑モ営業税法ニ合ハヌ、此聯合会ノナスベキコトデハナカラウト思ヒマス
○三番（知多、天野伊左衛門君）　唯今ノ皆サンノ御説ヲ承ツテ居リマスト、丁度一昨年ノ第六聯合会ノ議論ヲ再ビ爰ニスルト云フヤウナコトガ起ツテ参リマス、彼ノ当時ノ有様ヲ簡単ニ申シマスレバ、調査委員バカリニ賛成説モアリ、又賃貸価格ヲ廃スルノ説モアル、種々御議論ガアツタ末、如何ニシテモ此税法ハ不完全デアルト云フ所ヘ各商業会議所ノ委員諸君モ御悟リガ附イテ、種々幾度モ委員ヲ設ケ又委員ノ上ニモ亦講究委員ヲ設ケタ結果、遂ニ此税法ハ甚ダ不当ナ税法デアルカラ廃止ヲシテ貰ハナケレバナラヌ、ソレニ付テハ帝国議会ニモ請願シ、併セテ当局大臣ニモ特ニ委員ヲ選ンデ聯合会ノ意見トシテ上申シタ方ガ宜カラウ、斯ウ云フノデ此聯合会ノ方針ト云フモノハ此税法ハ不法ナ税法デアルカラドウシテモ廃シテ貰ヒタイト云フガ聯合会ノ大体ノ方針デアル、果セルカナ、聯合会ガ意見ヲ述ベタ以来今日ニ至ルマデ、各地ニ於テ此税法ニ於テハ囂々ノ議論ト云フ者ハ敢テ今日迄尽キヌノデアリマス、デ早晩之ハドウシテモ廃スベキモノデアルノデス然ルニ又玆ヘ持ツテ来テ調査委員ノ説ヲ一ツ御立テナサルト云フノハ誠ニ此ノ波ノナイ所ヘ一ツノ風ガ起ツテ来タヤウナ訳デ、爰ヘコウチヨイト此問題ガ起ツタ許リデ、一昨年ノ会議ノ二ノ舞ヒヲ玆デセヌケレバナラヌノデゴザイマス、デモトモト完全ナル税法デアレバ衆議院モ亦十三議会ニ於テ是ガ修正案ハ出マイト思フ、不完全ト認メルカラ衆議院ニ於テモ既ニ修正案ガ出テ居ル際デアル、又聯合会ノ大体ノ方針ト云フモノハ、此税法ハ国家ノ上ニ存スベカラズト云フ意見ガ既ニ決シテ居リマスカラ、此十四議会ニ向テハ能ク此聯合会ノ意見ノアル所ヲ衆議院諸君モ尚ホ一年経ツタ丈ケニ御熟考下スツタナラバ、昨年ハ修正案ヲ御提出ニナツテモ、或ハ十四議会ニ於テハ此税法ノ如キハ廃案ニ帰スルガ宜イト云フ説ガ衆議院ノ議場ニ起ルカモ知レマセヌ、私ハ兎モ角モ六十二番ノ先ニ唱ヘマシタル通リ、此聯合会ノ曩キノ方針通リ、甚ダ失礼デゴザリマスルガ、其精神ヲ以テ此委員ノ修正案ハ否決致シタイ考デゴザイマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　段々御説ガ進ンデ参ツタヤウデ、御討論ガ大抵終結シマシタカラ此案ヲ……
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　チヨツト私ハ一言採決前ニ御注意申シテ置キタイコトガゴザイマスガ、唯今ノ其調査委員ノ御調査ニ付テ私共十分ナ御礼ヲ申ス訳デアルガ、進ンデ御ヤリ下スツタ所ノ議ハ併シ之ハ調査ハ善イコトデアルカラソレハ為ルヽモ宜イ、悪ルイコトナラセラレヌト云フコトデハ面白クナイノデスガ、詰リ何デモ依託外ニ及ブ事ハセヌ方ガヨカラウト思フ、之ハ一ツノ例ヲ残シテ、極ク悪
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ルイ例ヲ残スト云フヤウニナル、悪ルイコトデモセラレタ時分ニハ仕方ガナイト云フコトニナル、委員ニ依託シタコトハ、十九号議案ト十四号議案ノ二ツヲ依託シテ、二ツノ案ヲシテ貰フタノデアルカラ、ソレ以外ニハ余リ結構ナ事ガゴザイマシテモ別問題デアルカラ、是レデゴザリマスレバ、法律ノ現行ノ営業税法ノ改正ト云フコトヲ即チ此御協議ニナツテ御報告ニナツタンデ、一方ハ唯ダ一ツ営業税法中ヘ調査ノ委員ト云フモノヲ設クルノ一項ヲ加ヘラレンコトヲ希望シタ案デアル、ソレデ此悪税デアルカラ之ハ一ツ十分ニ改正ヲスルコトニシタ方ガ宜カラウカラ、之ヲ調査委員ガ調査シテ出シタト云フコトニ付キマシテハ事ノ善悪ニ拘ハラズ一ツノ例ヲ残スト云フコトニナツテ甚ダ面白クナイ、デ之ハ否決スルト云フヨリハ寧ロ調査委員ニ一応御返シヲ申シテ、再調査ヲ願ヒタイト私ハ思フノデアリマスガ、如何ナモノデゴザリマセウカ、エライ手間モ掛ルヤウナモノデゴザイマスガ、極ク穏カニナルトスレバサウ云フ方ガ一番穏カデアラウト私ハ考ヘマス、ドウカ其辺ハ会長ノ御考デ何トカ御取計ラヘガゴザイマスレバ猶結構デゴザリマス
○四十六番（豊橋、三浦碧水君）　唯今三十八番ノ要求ガアリマシタガ全体ドウ云フモノデアリマスカ、私ハ如何ニモ了解ニ苦シミマスガ、詰リ此調査委員ノ委員ヲ設クルト云フコトハ何ヲスルノデアリマスカ結局此営業税ニ宜クナイ処ガアルカラシテソレヲ直シタイト云フノガ精神デゴザリマス、唯ダ文字ニ拘泥シタ訳デハナイ、ソレヲ例ヘバ調査委員ヲ置クト云フ一ヲ以テ、外ノ営業税ト云フコトニ論究シテ行クコトハ出来ヌト云フノデ、サウ云フ例ヲ残シテハ悪ルイノデスカ、ソンナ例ガ残ツテモ何デモナイ、唯ダ調査委員ヲ置クト云フ例デアルト其今現行法ヲ見ルト現行法ハ皆宜イトハ言ヘナイ、サウスルト調査委員ニハ否決トスルヨリ仕方ガナイ、サウスルト調査委員ヲ置ク方ガドウダト云フニ宜シイソレヲ否決シテシマウト云フヤウナソンナ無理ナコトヲセヌデモ、ソレニ付テ是ダケノ事ヲ附加シテヤツテモ何ガ之ガ跡ニ害ガ起ルカト思ヒマス、害ガ起タ所ガ宜カラウト思フ、調査委員ノ案ヲソレガタメニ廃シテシマハウト云ヘバ却ツテ事実ニ悖ツタコトガ出来ル、ソンナ無理ナコトニナルヤウナコトヲセヌデモ、今爰ヘ調査委員ヲ置クナラバ序デニ夫丈ケノ事ヲスレバ宜イノデ、ソンナ例ガ残ツテモ害ニナルコトハナイト思フ
○六十二番（東京、中野武営君）　此問題ニ付イテ権限ノ議論ガアリマスガ、或ハ極クモウ規則立ツタ会議ナドデハ、唯今段々御論ガアツタヤウナコトモ一ツノ研究スベキ事柄デ、委員ノ権限ノ上ニ於テ濫用シタヤウナコトノ嫌ヒガアルト云ヘバ言フヤウナモノデアリマスガ、私ハ其処デハ、ドウゾ此聯合会ナドデハ、道理ハドウカ存ジマセヌケレドモ、研究シ居ルト云フ精神カラ言ツテ見ルト、ソコマデ委員ニ窮屈ヲ与ヘヌ方ガ宜シイ、又斯ウ云フコトハ同ジ法律ノ一箇条ガ出来タニ付イテ是ト是トノ関係ガアルトカ、或ハ斯ウ云フコトニ関係ガアルトスレバ随分委員ガ調査スル、意見アレバヤツテ見タ方ガ寧ロ此聯合会トシテ望ム所デアルカラ、ソレデ是等ガ後々ノ例ニナツテモ構ハヌ、併シナガラ営業税法ノ改正ヲスルノニ地租条例ヲ持ツテ来ラレルトカ
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之レハ困ル、サウ云フ訳デハナイ、同ジ法律ノ中ニ彼是ノ関係ノアルト云フコトハ、サウ云フ調査ノ上ニ於テソコマデ調査ヲシテ気附イタコトガアツタナラバ持チ出シテ呉レルガ宜シ、ソレハソレトシテ、唯ダ此所デ議論ヲスルノハ、斯ウ云フコトデ二箇条一緒ニ採テ可否ヲ決シテシマハウト云フノガ議論ガアルノデゴザイマスカラ、固ヨリ会議ニハ三読会ガゴザイマスカラ、此案ノ如キ一項・二項ニ分ツテ別々ニ議論ガゴザイマスレバ、第一着ニ原案ヲ全体ニ付イテ原案ヲ採ツテ決スベキヤ否ヤヲ一読会ヲ御採リナスツテ、二読会ニ一項・二項ヲ別々ニシマシテ、一項ハ一項、二項ハ二項デ決ヲ御採リニナレバ少シモ差支ナクゴザリマス、何時デモ箇条ガ変ツテ居ル限リハ二読会ノ順序ヲ経マシテシマスレバ、議会ニ於テ少シモ妨ゲハナイ、反対ニモ拘ハラズ斯ウ云フコトハ致シテ置カナケレバナラヌ
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　唯今六十二番カラ如何ナ議論ガ出マシタガ、一体儀式張ツタ議会デナイカラト云フヤウナ、実ハ此会議法ハ東京商業会議所ノ会議法デヤルト云フコトニナツテ居リマシテ、其会議法ト云フモノダケハ矢張踏ンデ行カンナラヌノデアル、サウシテ見マスト云フト、依託以外ノコトハ善イコトデモ悪ルイ事デモ私共セラレヌコトヽ思ツテ居ル、問題ガ違フノデス、先刻四十六番サンデスカ段々御弁ジガゴザイマシタケレドモ、大体調査ノ委員ト云フモノヲ置クト云フノハ、営業税法ガ善イカ悪ルイト云フ調査ヲスル調査委員デハナイト考ヘテ居ル、営業税法ノ一項ノ調査委員ト云フモノヲ置クト云フ事ヲ加ヘテ貰ヒタイト云フニ外ナラヌ、ソレハドウ云フコトヲ仕事ヲスルノデアルカト云フノハ、営業税法ノ宜イカ悪ルイカト云フ事ヲ調査スル委員デハナイ、ソレハ賦課法トカ何トカ云フ施行法ニ付イテ調査ヲスル即チ調査委員デアラウト私ハ心得テ居リマス、ソレハ私ノ心得違ヘカ存ゼマセヌガ、サウスルト云フト、営業税法ガ悪ルイト云フコトハ全ク別問題デアル、ソレハ其方デ建議ヲスルナリ何ナリ方法ハ沢山アルノデゴザイマスカラ、唯ダ営業税法中ニ調査委員ト云フモノヲ設ケテ、調査委員ハドウ云フ仕事ヲスルカト云フト即チ賦課法其他ノ事項ニ付イテノ調査ヲスルト云フ事デゴザイマスレバ、今ノ極ク悪ルイト云フ方ノコトハ別問題ニナル、ソレ程分ツタ明カナコトヲ持ツテ来テ調査委員ガヤルト云フコトニ付イチヤ、ソレハ六十二番サンノ御意見トモ心得ヌ如何千万《（遺憾）》ノコトヲ言ハレタノデ、サウ云フ例ハアツテモ此聯合会ニハ宜シイト云フ、斯ウ云フコトナラバ、今カラ私ハ確メテ置キタイ、果シテサウ云フコトナレバ、以来問題違ヒノコトマデモ調査委員ガ調査ヲスルコトガ、商売人ノ寄合デアルカラ、サウソレヲ角張ツタコトヲ言ハズトモ宜イ、ヤツテモ宜イジヤナイカト云フ其事ニ極メテ置イテ戴クナラバ、私共サウ云フコトヲスルカ知ラヌ、ソレハ甚ダ私共宜クナイ例デハナイカト思フ、商売人ノ寄合デモ大勢ガ寄ツテ議スルカラニハ議決法デ普通デ、ソレハ東京商業会議所ノ会議法ニ依ツテモ同ジコトデアラウト思ヒマス、サウ云フコトハ決シテナイ筈デアル
○六十二番（東京、中野武営君）　一応私ノ意見ヲ述ベマスガ、全体ソレハ角張ツタ会議デモ随分ソレヲスルノデ、帝国議会ナドデモソレヲ
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スル、委員会ガ其箇条ノ外ノ箇条ヲ其法律ノ範囲内ナラバシテ居ル例ガアル、現ニ私ガ一ツ記臆シテ居ルノデモアル、私共委員デ居ツタ即チ商業会議所ノ条例ノ政府案デ出タ、或ハ取引所法ト別ニ改メテ来タ商業会議所ノ条例ナンド云フコトモ政府案ヨリハ箇条ヲ殖ヤシテ色々書入レタモノモアツテ、ソレヲ以テ報告シタコトモアル、全体一ツノ法律ノ中ハ箇条ニハ分ツテアリマスケレドモ、同ジ法律ノ範囲ナレバ外ノコトヲシタト云フコトデハナイト考ヘル、何トナレバ一ツノ法ニ項ヲ置ケバ外ニ関係ヲ持ツ、又外ニ関係セヌヤウダケレドモ、一ツノ法律ガ元来関聯シテ居ルカラ響キガ何処迄モ広ガルト云フ恐レガアル其法律ノ範囲ヲ超ヘルト云フコトハナイノデアルカラ、大抵数限リハナクサウ云フ端緒ヲ開イテ置クト何処マデモ飛走ツテ行クカラ、セラレタト云フモノハ大ニ考ヘナケレバナラヌケレドモ、此問題ノ如キハ一ツノ法律案中ニ於テ調査シタ結果ヲ言ツタンデゴザイマスカラ、或ハ帝国議会ノ方デモソレハ一ツノ慣習ニナツテ居ルカラヤツテ居リマスガ、理論デ言ツテハ悪イカモ知レマセヌ、敢テ理論モ正シイノジヤト云フコトハ言ハナイ、併シ慣例トシテハソウ云フコトハアルノデ、ソレカラ東京商業会議所ニシテ見マシタ所ガ其処マデ何ニモ喧シウ言ツタノデハナイ、調査委員ト云フモノヲ置クト云フノガ一ツノ問題デ是ノ外ニ逸出スルコトデナイカラ、ドウカ斯ウ云フヤウナ研究ヲシテ講究ヲスルト云フヤウナ寄合ニハ、ソレ等ノ慣例ガ出来タカラト云フテ決シテ弊害ガナイ、寧ロソレ等ハ却ツテ宜シイト云フテモ宜イ、何モ範囲ヲ溢レ出スト云フ積リハナイ、恐レモナイト云フ考デ
○十八番（京都、大沢善助君）　兎角ニドウモ議事ガ枝葉ニ渉ツテ、議事順序デ喧シクテ困ルノデスガ、先刻六十二番ガ御述べニナツタヤウニ、項目ヲ分ケテ採決シマスレバ、順序ガ少々悪クテモ採決上ニ不都合ハアルマイト思ヒマス、唯ダ遺憾ナノハ営業税ノ改正トアレバ之ヲ御託シテ今ニ討論スベキノデアツタケレドモ、ソレガナカツタコトハ残念デアルガ、併シ此事ニ付テハ各地商業会議所ニ於テモ意見モ極ツテ居リマセウ、シテ又今日此調査委員ト云フコトニ付テモ十一番ノ述ベラレル都合ニ得テ居ル所モアレバ、又アツタノガ非常ニ利益デアルト云フノデモナイ、害ガアルト云フノデモナイ、ソレ等ハ分ケテ御採リ下スツタナラバ何チデモ行クダラウト思ヒマス、唯ダ本員ハ賃貸価格・従業者ヲ廃シテ売上高ニ課税スルト云フコトハ、徹頭徹尾反対ヲ致シマスカラ
○五十一番（宇都宮、村上浜吉君）　五十一番モ六十二番カ御述ベニナツタヤウニ、二ツニ決ヲ採ルコトハ至極宜カラウト思ヒマスガ、爰デ此案ヲ議スルカ議センカト云フヤウナコトニシテ決ヲ採ルト云フト或ハ議論ガ出ルカ知レマセヌガ、願クハモウ調査委員ノ方ト此方ノ賃貸価格或ハ従業者ヲ削除スルト云フ方ト二ツニ決ヲ採ラレンコトヲ……
○二十七番（熊本、下田耕造君）　此案ハ二読会ニ移ラズシテ此儘決議シタイ、御笑ヒアルカモ知レマセヌガ、吾々ノ会議所ハ修正説ヲ一昨年来持ツテ居ツタ、併シ聯合会ニ於テ多数デ以テ廃スルガヨイト云フノデ、成程廃スルハ極ク希望デアル、廃スルガ宜イト云フコトニ決シテ居リマシタカラ、今日迄吾々ハ廃スルコトデアラウト云フコトデ安
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心シテ居ツタ、所ガ今更之ヲ修正スルトカ、委員ヲ置クトカ云フノハ馬鹿ナ話、余程政府ニ譲ツタ話ダ、何処マデモ別ニ税源ヲ見付ケテ置イテ此案ハ廃スルガヨカラウ、廃スルト云フコトヲ一体言出シテ居ル聯合会ガ悪ルイト云フコトヲ認メテ廃スルコトニ認メ居ル、何処マデモ廃スルト云フ精神ヲ貫クノガ一番宜カラウト思ヒマス、ソレデ折角斯ウシテ出シマシタカラ、継続案トシテ直チニ廃スルト云フコトヲ十分確カニ言ハルヽ税源ヲ見出スカ知レヌ、何処マデモ決議案トシテ置キタイノデ
○五十五番（栃木、桜井源四郎君）　甚ダ満場諸君ニ御耳ヲ煩スカモ知レマセヌガ、併シ此十九号議案ノ提出者即チ栃木商業会議所ハ発起人デゴザイマス、幸ヒニ是レダケノ賛成ヲ得マシテ議案トナリ、調査委員ニ挙ゲラレテ、聊カ栃木会議所ニ於キマシテハ何時モ抱イテ居ル精神ガ貫ケルカト喜ンデ居リマス、所ガ調査委員ノ御方ガ余計ナコトヲ御附ケ下スツテ、何ニ片田舎ノ人ガヤツタコトガ分カルモノカ、調査委員ガ助ケテヤツテ、調査委員ノ説ヲ取ツテヤラウト云フヤウナコトデ、併シナガラ片田舎デモ矢張商業地ハ商業地ノ物産ガアリマス、或ハ何程片田舎ノ会議所デモ御頼ミモシナイモノヲ押付ケラレテ或ハ之ヲ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　ドウゾ地方考ヲ以テ仰シヤルト可笑シウゴザイマスカラ
○五十五番（栃木、桜井源四郎君）　有力ナル六十二番サンガ仲裁説ヲ御取リ下スツテ曖昧ノ中ニ没了シヤウト思ヒマスガ、前ノ一項ヲ御取消ニナツタナラバ、吾々ハ願クバ御取消ヲ願ヒタイ
○五十六番（栃木、清水安平君）　色々御説ガ出マシテ喜ンデ居リマシタ、所ガ調査委員ノ御方ガ余計ナモノヲ御付ケ下スツテ、ナニ片田舎モノハ分ルモンカ、調査委員ヲ設ケルコトヲ加ヘテサヘ置ケバ、委員ノ説ヲ喜ンデ採ルデアラウト云フ御考ノヤウニ見ヘル、併シナガラ吾吾ノ土地モ商業地デゴザイマス、ナンボ片田舎ノ会議所ダカラト云ツテ御頼ミ申サナイモノヲ……
○十六番（桑名、平野美純君）　色々ノ御説ガ出マスガ、私ハ二十七番説ノ継続ニ賛成デゴザイマス、営業税ニ附キマシテハ独リ賃貸価格ヤ従業ニ限リマスマイ、種々アラウト信ジマスカラ、今日此箇条ダケヲ議スルヨリモ先年カラ続イテ居ル重大ナ問題デアリマスカラ、継続ト致シタイ、即チ二十七番ニ賛成致シマス
○三十一番（鹿児島、宮里正静君）　三十一番モ営業税法ノコトニ附イテハ一昨年以来非常ニ脳髄ヲ悩メテ、私共ハ徹頭徹尾是ハ修正シタガ宜カラウト云フノデアツタガ、豈料ランヤ色々ノ御運動ガアツテ其御運動ノ結果全廃シタラ宜カラウト云フノデ、僅カ一票ノ違デ敗ヲ取ツタノデアリマスガ、今日ニ於テモ徹頭徹尾全廃ト云フノデ運動シタラ宜カラウト思ヒマス、私ハ二十七番ニ賛成デアリマス
○三十六番（岡山、香川真一君）　私ハ甚ダ奇怪ニ思フ、委員会ニ附託スルト云フ事ハ可決シタガ、ソレヲ継続問題ニスルトカ何ントカ云フコトハ一向記臆致シマセヌ、始メテ承リマスガ私ハ不賛成ダ、実ハ成程失礼ナガラ商業者ノ連中ガ寄集ツタノデアリマスカラ四角張ツタコ
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トヲ云フハ宜クナイガ、規則ハ規則デヤツタ方ガ宜カラウ、ソレハソレトシテ、調査委員ニ御照会スルノダガ、一項ガタメニ非常ニ議論ガ八カマシクナル、ドウカ一歩退イテ御徹回下サレタナラバ誠ニ円満ニ納マルト考ヘテ居ル、是ハ御見識ニ関係スルコトデモナシ、名誉ニ関係スルコトデモナシシマスルカラ、一旦御徹回下サツタラ一番早ク極マラウト思ヒマスカラ、ドウカサウ云フコトニ願ヒマス
○五十八番（太田、西野次郎兵衛君）　私モ提出者ノ一人デアリマスケレドモ、此案ガ倒レサウデアリマスカラ勢黙ツテ居ラレマセヌカラ、一言満堂ノ諸君ヘ御賛同ヲ求メナケレバナラヌ次第デアリマス、先刻六十二番ノ御説ニ第一項ト第二項ト別ケテ採決シタラ宜カラウト云フ便宜論ノ御説ガアツタヤウデス、ソレニ付テ一番其他ノ賛成ガアツタヤウデゴザイマスガ、説ガ色々ニナツテ居リマスカラ、先以テ六十二番ノ説カラ決ヲ御採リ下サルヤウニ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　大抵御討論モ尽キタヤウデスガ、詰リ此案ニ対シテ反対ノ意見ト、ソレカラ此ノ決ノ採リ方ニ付イテ六十二番ノ御説是ニモ御賛成アツタヤウデスガ、反対ト賛成ト、ソレカラ継続案ニシヤウト云フ説トカ重モナル議ニナツテ居リマスカラ、一ツ反対意見カラ採決ヲ致シマス、此案ハ三読会ヲ兼ネマセヌデ、先ヅ一読会ヲ議決シテカラ、ソレカラ二読会・三読会ト採決シテ往カウト思ヒマス、其意味ヲ以テ採決ヲ致シマス、本案ニ反対ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　少数ト認メマス、モウ一ツハ継続説、即チ二十七番ハ此案ヲ継続問題トシテ今日ハ決議シナイ、斯ウ云フ御意見デス、此説ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　少数
○会長（東京、渋沢栄一君）　ドウモ御出席ノ人数ガ今朝トハ動イタヤウデ、チト計算ニ困リマスカラ、ソレデハ直チニ議スルト云フ御方ノ起立ヲ請ヒマセウ
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ矢張議題ト相成リマシテゴザイマス、反対説モ少数、継続説モ少数デゴザイマス
○六番（仙台、遠藤敬止君）　二読会ニ移リマシタガ、サウスルト此議案ニ付キマシテハ、全体私ノ考ハ三十六番ガ既ニ御述ベニナツタ通リデアリマスルガ、此委員会ハ山形商業会議所ト其外水戸・太田・宇都宮・栃木ノ方カラ出マシタ調査委員ヲ設ケルト云フ案ダケナンデス、然ルニ段々権限論モゴザイマシタガ、此委員ガ越権ノ事ヲサレタト云フ訳デゴザイマスマイガ、委員外ノ事ガ加ハツテ居ルカラ色々面倒ナ議論モ出ルノデアラウト思ヒマスガ、第一ノ方ノ箇所ダケハ前年ノ聯合会デ以テ全廃論ヲ主張シテ居ツタコトデアリマスカラ、ドコマデモソレヲ主張スルトシテ、一項ヲ除キテ二項ノ方ダケニ致シタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　第一項ト第二項トハ自ラ性質カ違ヒマスカラ、唯今全体ニ付テ議スルコトニ極リマシタカラ、第一項ヲ議スル
 - 第22巻 p.464 -ページ画像 
コトニ致シマス、第一項ヲ否決シタイト云フ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス
○五番（水戸、塙七平君）　二項ニ付キマシテハ本員ハ先刻述ベテ置イタ通リ、衆議院ノ修正ノ中ニモ此通リノ箇条ガゴザイマスルナラバ、却テ衆議院ヘ対ツテハ箇条ヲ書カズニ本会ノ決議ヲ以テ注意ヲ促シテ置クガ宜カラウト考ヘマスカラ、此意見ヲ提出致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　調査委員ヲ設ケ云々ト言ハズニ……
○五番（水戸、塙七平君）　言ハズニ、矢張前ノ聯合会ノ決議ヲ幾ラカ容レテ呉レタモノト思ヒマスカラ、其十三議会ニ出シタ所ノ修正案ヲ復ビシテ、ソレヲ徹底シテ呉レイト云フコトヲ、衆議院ヘ忠告シタ方ガ穏デアラウト思ヒマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　此項ハ前ノ条項ガ削ラレテ否決トナツタ以上ハ、此項ノミヲ決議スルト云フト如何ニモ訳ノ分ラヌモノニナツテ、他ノモノハ現行法デ完全無欠デアル、調査委員サヘ置イテ呉レレバ宜イト云フコトニナリマス、前ノ全廃論トモ衝突シ、又修正論ニモ衝突シ不都合極ツタモノニナリマスカラ、此項ハ否決シタイト思ヒマス、尚五番カラ説モアリマシタガ、ソレハ各地ノ商業会議所カラ建議モ出ルデアラウト思ヒマスカラソレハ宜イガ、ドウカ之ヲ削ルコトニシタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ二項ヲ否決ト云フ、二項ニ反対ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス
○六十二番（東京、中野武営君）　議会ノ場合ニ斯ウ云フコトガ往々アリマスガ、最ウ玆ニ於テ三読会ニ掛ケル議案ハナシニナツテ仕舞フタ是ガ若シ必要トスルナラバ新タニ委員ヲ選ンデ此調査ヲシナケレバナラヌコトニナルノデスガ、ソレニ付キマシテハ最早此二読会通リデ即チ全部否決ニナツタト云フ結果デ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　三読会ニ掛ケヤウガアリマセヌ
○六十二番（東京、中野武営君）　掛ケヤウガゴザイマセヌガ、若シ必要トスレバ、新タニ委員ヲ置イテ調査ヲサセテ議案ヲ出サセナケレバナリマセヌ、是ハ会議所ノ議事規則ハドウデスカ、新タニ委員ヲ置ク必要ハナイカラ二読会ノ決議通リト、三読会ニ於テモ決議シタイト思ヒマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　十番ハ六十二番ノ通リデゴザイマス、固ヨリ自分等ハ斯クナツタ以上ハ全廃論ヲ主張スル
○十一番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　六十二番ノ説ニ賛成デアリマスガ是ガ総体潰レテ仕舞ツタ以上ハ、諸君ニ一言希望ヲ述ベタイ、去ル三十年ニ当議長渋沢君ヨリモ奮起シテヤレ、政治界ニモ喙ヲ容レナケレバナラヌト云フコトヲ申サレマシタガ、是ハ吾々厚ク感佩スル所デ、現ニ営業税ノ問題ニ付テ十二議会・十三議会ニ熱心ニ尽力ヲシマシタ此時ニ当ツテ各地ノ商業会議所カラ応援ヲシテ貰ハヌト、如何ニモ勢力ガ微弱デ運動ガ不十分デアリマスカラ、此辺ノ所ハ此ニ御来会ノ諸
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君ハ御如才モアリマスマイガ、尚厚ク御尽力ヲ願ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　三読会ノ説ニ付キマシテ六十二番カラ御意見ガ出マシテ、大分御賛成ガアルヤウデスカラ最早起立ハ採リマセヌ、二読会通リト御議決ヲ願ヒマス
　　　○明治二十九年十一月十九日、同三十年十一月五日ノ両条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治二十九年四月二十五日、同年十一月六日、同年十二月十七日、同三十年五月七日、同年十月八日、同年十二月二十七日ノ各条参照。
　　　○営業税法ハ全廃ハ勿論、明治四十三年迄ハ実質的改正サヘ行ハレザリキ。
（明治財政史第六巻・明治大正財政史第七巻）