デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月12日（1899年）


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是日第八回定期会第二日ノ会議ニ於テ、浜松商業会議所ノ提案ニ係ル東海道鉄道複線ヲ速成セシムルノ儀上程サレ、宿題トナル。栄一所用ノ為メ退席シ副会長中野武営代リテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第一一六―一二七頁　刊
　　　　○第二日
明治三十二年十月十二日午前十時五十分開議
　　出席委員　　　　　五十六名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　甚ダ相済ミマセヌガドウゾ中野君、今日ハ誠ニ已ムヲ得ヌ都合デゴザイマスカラ……
　　　（会長渋沢栄一君退席）
○副会長（東京、中野武営君）　唯今議長ガ帰ラレマシタカラ私ガ代理ヲ致シマス、午前ニ議案第八号ガ終リマシテゴザイマスカラ、是ヨリ第九号ノ議案ヲ議スコトニ致シマス
　　　〔書記議案ヲ朗読ス〕
　○議案第九号　　　　　　　　　　　　　浜松商業会議所提出
　一東海道鉄道複線速成ノ件
　　　　理由
　東海道鉄道複線工事起工以来玆ニ数年、東西両京ニ近接ノ地方ハ漸次其工ヲ竣ヘリ、運輸事業ノ一大進歩ヲ来タセシト雖トモ、独リ静岡最寄以西名古屋近傍以東ノ地ニ限リ未タ工事ノ着手ヲ見ルニ至サルハ大ニ遺憾トスル所ナリ、抑々東海道鉄道ニ於ケル静岡以西名古屋以東ノ地ハ物産最モ多ク百貨ノ消費又少カラス、然ルニ海運ノ利便完カラサルニ因リ、専ハラ鉄道ニ拠テ以テ集散ノ途ヲ計ラサル可ラス、複線工事ノ遅速如何ハ商工業ニ偉大ノ影響ヲ蒙ラシムルヤ必セリ、如斯ハ単ニ東海道地方ノ不利ノミニ止マラス、苟クモ東海道鉄道ニ依ル乗客貨物ハ等シク運輸遅緩ノ不利ヲ免カルヽ能ハス、於爰乎全国ニ於ケル運輸交通上東海道鉄道ノ複線ヲ速成セシムルハ須臾モ等閑ニ付ス可ラス、況ンヤ該地方ノ間ニハ大崩及金谷ノ隧道アリ、富士川・大井川・天竜川及浜名裏海等ノ長橋アリテ其工事容易ナラストスルモ、之レヲ中央鉄道ノ難工事ニシテ其開通前途猶ホ遠キモノニ比スルトキハ蓋シ同日ノ談ニアラス、故ニ若シ一旦緩急アルニ至リ複線工事ノ遅延ヲ悔ユルモ何ソ及ハン、国家ノ為メ豈ニ戒心セサル可ケンヤ、因是観之、東海道鉄道複線ノ貫通ハ国利民福ヲ希図スル上ニ於テ迅速成功ヲ希望シテ止ム能ハス、是レ本案ヲ提出スル所以ナリ
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　本昨ハ案年逓信省及貴衆両院ニ建議致シマシテ、貴族院ダケハ通過致シマシタ、衆議院ハ其儘ニナツテ居リマス、諸君モ御覧ノ如ク東西複線ノ起工ハモウ着々捗取ツテ居リマス、独リ静岡以西名古屋以東ニ於ケル分ハ未ダ更ニ起工ニ着手モアリマセヌヤウナ次第デ、其工事タルヤ、実ニ箱根ノ険ニモ譲ラザル富士
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川・大井・天竜・浜名裏海等ノ長橋モアリマシテ、同日ヲ以テ起工致シマシテモ或ハ後ルヽノ恐レアルモノト考ヘマスルモノデゴザイマスガ、未ダ着手ニナリマセヌ次第デアリマス、二十七・八年ノ頃大ニ貨物ノ渋滞スル所ハ今目撃スル次第デアリマシテ、実ニ遠参尾ニ於キマスル海岸ハ至ツテ良港湾モゴザイマセヌノデ、鉄道ニ拠ルヨリ外ハゴザイマセヌ、東西複線ノ竣功ヲ告グルト同時ニ中間ハ単線ノヤウナ次第デゴザイマスル、自然一層ノ渋滞ヲ感ズルコトヽ考ヘマスルノデ今日憂慮スル次第デゴザイマス、諸君モ其辺ハ御賛成下サリマシテ、議決アランコトヲ希望致シマス
○二十番（静岡、北村五郎兵衛君）　只今浜松鶴見君ヨリ御説明ノ通リ全ク此複線工事ハ中途ニシテ着手モナイト云フコトハ、如何ニモ国家ノタメ不利益ト実際目撃致シテ居リマスルデ、皆サン定メテ御承知デハアリマセウガ、成ルベク満場ノ御賛成ヲ得マシテ可決アランコトヲ希望致シマス、一言賛成ノ意ヲ表シマス
○十一番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　本案ニ賛成ヲ致シマス
○二十番（静岡、北村五郎兵衛君）　併セテ二次会・三次会ヲ省略シテ直チニ確定議ヲ希望致シマス
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　私共モ只今ノ案件ノ複線説ノ事ニ付キマシテハ、決シテ不同意ト云フ考ハ少シモ持ツテ居ラヌ、固ヨリ希望スル所デアリマスガ、一体此吾々商業会議所ノ資格ヲ顧ルト云フト、商業工業ニ係ルコトハ条例ニ示シテアル通リニ固ヨリ何ンデモ議スルコトハ出来ルノデ、差支ハゴザリマスマイト思フノデゴザイマスガ、併シ余リ何ニモ彼モ勝手ニヤツテモ差支ナイカラ喙ヲ容レルト云フヤウニ思ハレテモ実ハドウデアラウカ、少シ此商業会議所ノ上カラ申シマスルト成ルタケノ慎重ニ事ヲヤル、又其ヤルコトハ必ズ遂ゲルト、ヤリ遂ゲルト云フヤウナ方針デヤリタイト云フ考ヲ持ツテ居ル、此複線ノ事タル固ヨリ私共只今申上ゲル通リ不同意ハナイ、固ヨリ希望シテ止マヌノデアリマスガ、併シドウデアラウカ、今彼ノ複線ガナケレバ大変ドウモ商業上・工業上ニ取ツテ不利益ニナルコトデアツテ実ニ焦眉ノ急ト云フヤウナコトデアルカドウカト云フコトヲ考ヘテ見マスルト、ドウモ未ダ今漸々吾大阪近傍ハ神戸・京都、彼ノ辺マデ漸漸起工ガ出来テ居ル、ソレカラ以西ニ向ツテ着々ヤツテ居ラルヽノデ即チ中間タル浜松近傍ガ今残ツテ居ルト云フ訳デアツテ、是トテモ決シテ政府ガ抛ツテ置イテモウヤラヌト云フ考デハナイ、漸次手ヲ着ケテ行キ居ルノデアラウト思フ、ソレデドウモ其複線ガナケレバ荷物ガ大変渋滞スルト云フ程ノコトハナイノデ、到底アルニ越シタ事ハナイガ、詰リソレガナケレバ運ビ切レナイト云フヤウナ訳ニモナツテ居ルマイト私共ハ考ヘテ居ル、兎モ角モソレハ何ニシテモアル方ガ宜イノデアリマスカラ、敢テ賛成不賛成ヲ云フノデハナイガ、何モ彼モ何デモカンデモ喙ヲ容レルト云フヤウナコトニナラヌヤウニシタイト云フ考デ居リマスノト、ソレカラ既ニ其事ニ付テハ政府モ手ヲ着ケテ居ルニハ違ヒナイ、此財政上其他ノ事情ニ依ツテ又其所マデ運ンデ行カント云フコトデアルヤウニ吾々ハ察シテ居リマス、願クハ此案ハ今少シ延バシテ今日ノ決議ト云フモノトセズ、宿題ニデモシテ置イタラドウ
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デアラウカト云フ考ヲ持ツテ居リマス、一寸一言述ベテ置キマス
○四十六番（豊橋、三浦碧水君）　四十六番モ固ヨリ此案ヲ賛成シタノデアリマス、シテ只今尚ホ時機ガ後レテモ宜カラウト云フ御説ガアリマス、実際東海道線ト申シマスルノハ全国ノ中デモ一番何処カラモ交通シテ参ル所ニ当ツテ居リマスカラ、是ノ渋滞ハ唯ダ東海道ノミデアリマセス、総テ全国ノ貨物ガ渋滞ヲ来スコトニナリマスカラ、併シナガラ渋滞ノ有様ヲ能ク御承知ノナイ方モアリマセウト存ジマス、モウ其私共ノ会議所デハ年々ノヤウニ逓信省ノ方ヘ建議シタリ色々致シマシタコトガアリマス、渋滞セヌト云フ年ハナイ、始終貨車ガ足ラヌト云フコトハモウ度々アリマス、会社ノ方カラソレヲ廻ハスト云フコトハ度々アリマス、中々ソレガヤリ果セヌ、段々参ツテ見ルニドウモ其場其場デハ到底ヤリ果セヌ、複線ヨリ外ニ詰リ途ハナイト云フ説ヲ度度承ツテ居リマス、到底之ヲ複線ヲ置キマセヌデ一時ノ補ヒヲシマシテモ始終貨物《（渋滞脱カ）》ト云フ事ハ免レヌ、其渋滞モ一通リデハアリマセヌガ、先ツ之ヲ爰デ一々申述ベル必要モナイト考ヘマスカラ申述ベマセヌガ唯々東海道ノミノ利益ト云フ考デアルカモ知レマセヌガ、決シテサウデアリマセヌ、総テノ荷物ガ是ガ為ニ大変ナ渋滞ヲ来タスコトハ明カデアリマス、ドウゾ其御賛成アランコトヲ希望致シマス
○十七番（阿波、根本民治君）　十七番ハ三十八番ヲ賛成致シマス、所謂只今富山・直江津間ノ如キモノト是トハ又同一ノモノデハナイ、詰リ此線路ニ対シテハ必要ヲ認メテ政府ガ敷設ヲセラレテ行キ居ルト云フ順序ニナツテ居ル、私ハ決シテ之ガ最早絶対的ニ複線ガ出来ヌモノトハ見做サヌ、早晩此事ハ完成スルモノト見做ス、先ツ此事ハ暫ク後ト廻シニシテ置ク方ガ順序宜カラウト云フ考テ、私共三十八番ト同感デ賛成シマス
○二十八番（広島、桐原恒三郎君）　二十八番ハ三十八番ト略々同ジ感情ヲ持ツテ居リマスモノデゴザイマスガ、斯ク議題ニ現ハレ出デマシタ以上ハ之ヲ宿題ニスルトカ何トカ之ヲ葬リマスルト、此東海道鉄道ハ急ガナイト云フヤウニ若シ誤ツテ之ヲ見ル人ガアルト大変デアリマスカラ、是等ハ害ノナイコトデゴザイマスルデ、速カニ本案ハ三読会マデヲ原案ノ通リニ決シマスルコトヲ希望致シマス、即チ原案賛成ノ意ヲ表シマス
○四十二番（浜松、中村藤吉君）　本案ニ付キマシテ三十八番ノ御注意モゴザイマシテ甚ダ御尤モデアル、此本案ハ既ニ名古屋聯合会ニ於キマシテ、官線鉄道ノ改良ヲ望ムト云フコトデカラニ可決ニナツテ居リマシテ、詰リ是ガ議会ニ出デラレマシテカラノ東海道ノ複線ト云フコトニナツタノデアリマス、デ複線ガナイカラトテモ或ハサウ差支ガナイト云フ御説モゴザイマシタケレドモ、只今四十六番ヨリモ述ベラレマシタ通リ既ニ二十七・八年ニ於キマシテハ眼モ当テラレナイ、停車場ノ如キ意外ナル損害ヲシ薩摩芋ノ如キハ為ニ腐敗ヲシタコトガアリマス、恰モ皆サン此方ラヘ御通リデゴザイマセウケレドモ、丁度鈴川ガ海嘯ノタメニ御困難ヲナスツタト同ジ事デ、両方ガ出来テ居リマシテモ若シ中間ガ出来マセヌデゴザイマスレバ十分ノ効力ハアルマイト考ヘマスルノデ、最モ之ハ政府デモ着々進ンデハ居ラレマスケレドモ
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如何ニシテカ名古屋・浜松間ガ未ダ更ニ着手ガゴザイマセヌカラ、詰リ政府ノ決議ヲ成ルベク早ク実行シテ貰ヒタイト云フ希望デアル、之ヲ宿題ニスルト云フベキモノデアルマイト深ク信ジテ居リマス、ソレデ只今御注意ノ二十番デゴザイマシタカ御説モゴザイマシタガ、私モ彼ノ富山県ノ建議ニハ聯合会デモ賛成ノ一人デゴザイマス、今回モ賛成ノ一人デアル、斯ウ云フコトハ成ルベク満場ノ一致ヲ以テ可決セラレンコトヲ切ニ希望致シマス
○番外二十番（金沢、伊藤鏢三郎君）　私ハ宿題説ヲ賛成スル、其理由ヲ少シ述ベタウゴザイマス、此事ハ必要ニハ違ヒナイ、去リナガラ物ニハ順序ガアル、一時ニヤラウト思フト財源ガナクテ一時ニハ出来ナイト云フ結果ニナル、ソレデ順序ヲ付ケテヤラナケレバナラナイ、東海道線ノ如キハ不完全ナガラ既ニ全通シテ居ル、単線デアルケレドモ全通シテ居ル、或ル部分ハ複線ニナツテ居ルカラシテ隴ヲ得テ蜀ヲ望ンデ居ル、複線ハ勿論必要デアル、必要デナイトハ言ハナイノデアリマスケレドモ、一体日本ノ国ガ三十年前ノ進歩ニ照シテ見レバ実ニ不平均ノ進歩ニナツテ居ル、東海面ニ瀕シタ方ハ非常ナ交通機関ノ便利ヲ得テ進歩シテ居ルケレドモ、日本海ニ向イテ居ル即チ北向イテ居ル方面ハ実ニ後レテ居ル、サウ申シテハ失礼カ知レマセヌケレドモ、露骨ニ言ヘバ一世紀位後レテ居ルト思フ、ソレハ何故デアルカト言ヘバ鉄道ガ敷イテ居ナイト云フノガ最大原因デアル、山陰道若クハ北陸道ノ如キ実ニ実ニ意外千万ノモノガ多イ、ソレハ詰リ一日モ早ク日本ノ北面ニ面シタ方ニ鉄道ヲ急カナケレバナラヌト云フコトデアル、之ヲ人ノ体ニ譬ヘテ見ルト半身不随ノ中風症ノ如キ感ガアル、南ノ方ニ向ヘタ方ハ誠ニ壮健デ、血液神経ノ機能モ大ニ程能クヤツテ居ルガ、北ノ方ニ向ヘテ居ル所ハ、脊髄ヲ越ヘテ北ニ行ツタ――日本ノ脊髄ハ中央ニ山脈ガアツテ脊髄トシテ見レバ、北ノ方ヘ向ヘタ方ハ神経遅鈍デ血液ノ循環シナイ、機能ガ十分デナイ、実ニ残念ナ話デ、ソレデ一国ノ強国ト云フノモ半分其神経ガ鋭敏ト云フ丈ケデハ矢張リ強国ト云ハレナイ、一致シテ進マナケレバ行ケナイ、故ニ現時ノ有様ハ随分北方ニ遺利ガ多イ、将来ニ於テ段々事ガ多イデアラウト想像セラルヽ、デ此場合ニ於テ其北部ノ方ノ日本ヲ打抛ツテ置イテ臍ヲ噛ムノ憂ガアルデアラウト想像セラルヽ、ソレ故ニ富山県カラ御提出ニナツタ直江津間ノ鉄道、之ハドウモ第一着ニヤラナケレバナラヌ、続イテ次ギヲ云ヘハ松江トカ或ハ鳥取トカ云フヤウナ鉄道モ大ニ急ガナケレバナラヌデ曾テ京都商業会議所ハ鉄道国有論ヲ主張シテ漸ク目的ヲ達シテ今調査シツヽアル、依ツテ私設鉄道ノ買上ゲハ勿論飽マテ希望スルノデゴザイマスケレドモ、此場合ハ私設鉄道ヲ買ウヨリハ寧ロ北部全体ニ鉄道ヲ敷クト云フ方ニ、政府ハ力ヲ尽サナケレバナラヌ時機デアラウト私ハ一人ハ考ヘテ居ル、ソレデ東海道線路ハ勿論複線ハ必要デ、此間ナドハ複線デアツタナラバ彼様ニ旅客ハ困難ヲシナイダラウ、貨物モ渋滞シナイダラウト考ヘテ居リマスガ、同時ニハ行ケナイノデ、是等ハ一年ヤ二年ハ後ラシテモ宜カラウト思フ、趣意ハ賛成ダケレドモ宿題ニシテ置クト云フ方ニ同意ヲ表シマス
○二十七番（熊本、下田耕造君）　此案ハ唯ダ催促スルト云フニ止マル
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ダラウト思ヒマス、矢張リ宿題ニシタガ宜カラウト思フ、何故ナレバ之ハ両端カラ着手ヲシテ居ル、ソレガ箱根山過ギテ行ツテ居ル、彼方ラカラ馬場アタリマデ出来テ、是カラ半バカラ出来シタト云ツタ所ガ一哩二哩ヤツテモ何ノ役ニハ立タヌ、矢張リ両端カラヤツテ行カナケレバナラヌト思フ、ソレデ政府ハ之ヲヤリツヽアル、ヤリツヽアルノヲ速成ヲ希望スルト云フコトハ誰デモ希望スル、私共東海道ハ二筋三筋モ四筋モアルガ好キデアルケレドモ、今ノ北方ノ方ノ直江津・富山間ノ如キ官線ト云フベキモノヽ未ダ此第二期ニ繰リ込ンデアルヤウナ有様デアル、サウ云フコトヲ先ニシテ、先ヅ一通リ運輸ノ便ガ付テ居リマスカラ、是ハ矢張運ンデ居ル、是ヲヤリ掛カツタ以上ハ成ルタケ早ク速成セヌケレバ不利益デアル、用ヲ成サヌノデアリマス、政府モ等閑ニシテハ置カヌ、政府ノヤリ方ガ遅イカラト云フ催促ニ止マル、是ハ富山・直江津幹線ノ如キモノヲヤルノトハ趣ガ違ヒマスカラ、三十八番ノ言フ如ク宿題トシテ、又此次迄政府ガグズグズシテ置イタラ其時一鞭打ツタラ宜カラウト思ヒマス
○四十九番（横浜、左右田金作君）　唯今諸君カラ色々御説ガ出マシテゴザイマスカラ、私ガ駄弁ヲ要セズトモ宜イ事デ、本員ハ巨細ナコトハ述ベマセヌガ、色々政府ヘ建議致スト云フ案ガ数多ク出テ居リマスルノデ、政府ダカラト申シテモ一々是ニ応ズルト云フコトハ出来マスマイ、是ハ政府ノ方カラモ論ジナケレバナリマセヌ、如何トナレバ経費――ソレソレ歳入・歳出モアリマスカラ、片方ニ対シテ斯ウ片方ニ対シテアヽト、万般ノコトニ付キマシテ、此会ガ決議シテ政府ヘ出サウト云フノハ、宛モ子供ガ父兄ヘ対ツテ是非之ヲ買ツテ呉レ、アレモ買ツテ呉レト迫テモ、親タルモノガ経費ガ許ナケレバ一々是ニ応ジテ買ツテ与ヘルコトガ出来ヌト思ヒマス、丁度今日ノ有様ハソンナコトデハアルマイカ、ダニ依ツテ之ヲ宿題ト云フコトモ一理アルヤウニ聴ヘマスガ、先ツ以テ此事ハ政府ヘ促ス、促スト云フコトハ早晩シナケレバナラヌト考ヘマスカラ、先ヅ此原案ヲ賛成致シマス、付キマシテチヨツト手前ガ心得迄ニ承ツテ置キタイノハ、此案ノ字句修正其他ノ事ハナク是デ直グ其筋ヘ向ケテ御差出シニナル御考ヘカ、或ハ又字句其他ノ修正ヲ致シテ出スノデスカ、一応承ツテ置キタイト思ヒマス
○副会長（東京、中野武営君）　ソレハ此席カラ御答ヘシマスガ、是ガ決議ニナレバ銘々ノ会議所ヘ持ツテ帰ツテ其会議所ガ更ニ文章ヲ訂正スルカ、ソレハ別ノコトニナリマスカラ……
○三十六番（岡山、香川真一君）　大分論端ガ催促ノコトニ渉ツテ居リマスガ、大抵是ハ新聞ニ出ルデアリマセウカラ、ソレニ依ツテ催促シタコトニナラウト思ヒマスカラ、私ハ三十八番ニ賛成シマス
○四十九番（横浜、左右田金作君）　チヨツト伺ヒマスガ、一次会ヲ以テ確定議トシタイト云フ説モ出テ居リマスガ、ソレハ議題トナツテ居リマスカ
○副会長（東京、中野武営君）　ソレハ決ヲ採ル時分ニ何ニスル積リデゴザイマス、モウ大抵論ガ尽キタヤウデゴザイマスガ、之ヲ宿題トスルト云フノガ一ツ、是ハ一ノ動議ト見テ宜イカ反対ト見テ宜イカ、一向分リマセヌガ、原案ハ之ヲ以テ其筋ヘ出サウト云フ趣意デアルカラ
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ソレノ先ヅ反対デ今出スニ及バヌト斯ウ見ルヨリ外ニ仕方ガナイ、ソレデ此賛成ノ方カラ採決ヲシテ之ヲ案ニスルト云フ説ハナイノダカラ若シ是ガ可決ニナツタラソレデ宜イ、若シ可決ニナラナカツタナラバ自然ニ三十八番ノ宿題ト云フコトニナツタト看做シテ宜カラウト思ヒマス
○二十八番（広島、桐原恒三郎君）　宿題ト云フ方カラ先ニ採決シテ貰ヒタイト思ヒマス
○副会長（東京、中野武営君）　ソレハ宿題ト云フ説ヲ一ノ動議ト見レバ宜ウゴザイマスガ、反対ト見レバ後ニシナケレバナリマセヌ、三十八番ハ動議トシテ見テ宜イノデスカ
○三十八番（大阪、今西林三郎君）　ハイ
○副会長（東京、中野武営君）　ソレデハ宿題ト云フノヲ動議ト看做シテ先ヅ決ヲ採リマス、三十八番ノ本案ヲ宿題ニスルト云フ御説ニ同意ノ諸君、起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　多数
○副会長（東京、中野武営君）　多数デゴザイマス
　　○本件ハ第九回定期聯合会ニ再ビ提案サレ一定条件ノ下ニ可決セラレタリ。本巻明治三十三年五月十九日ノ条参照。