デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治35年12月9日（1902年）


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是日臨時会第二日ノ会議ニ於テ、京都・大阪・神戸・名古屋・四日市五商業会議所ノ聯合提出ニ係ル商業会議所議員選挙資格改正ノ儀上程サレ、委員附託トナル。十一日第四日ノ会議ニ於テ、委員ヨリ本件ニ関シ農商務大臣男爵平田東助トノ会談顛末ニ就キ報告アリ、原案ニ多少ノ修正ヲ加ヘ之ヲ可決ス。十二日第五日ノ会議ニ於テ、委員ヨリ再度農商務大臣ヲ訪問シ当局ノ了解ヲ得タル旨ノ報告アリ。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会報告　　第一三―一四頁　刊
　　　　○議事ノ経過及決議
○議案第一号　　　　　　　　　（京都・大阪・神戸　名古屋・四日市商業会議所提出）
一商業会議所議員選挙資格改正ノ件
　　　　　理由
全国商業会議所カ多年希望セル商業会議所法ハ既ニ改正セラレ、吾人ハ依テ以テ将来大ニ商工業界ニ貢献センコトヲ期シタリ、然ルニ本年六月発布セラレタル議員選挙資格制限ニ関スル規定ハ、甚シク商業会議所法ノ運用ヲ阻碍シ、吾人ノ希望ヲ達スル上ニ於テ一大難関ヲ構ヘタリ、思フニ法ノ制定ハ難キニアラス、要ハ其実行如何ニアリ、若シソレ実行ノ方法ニシテ其当ヲ得サランカ、法制亦タ其用ヲ為サヽルナリ、曩ニ農商務省ハ各商業会議所ニ諮詢スルニ新法実施上最モ必要ナル議員選挙資格ノ標準ヲ以テス、是故ニ各会議所ハ反覆調査審議ヲ凝ラシテ地方ニ適実ナル標準ヲ答申シ、且ツ全国商業会議所ハ臨時聯合会ヲ東京ニ開催シ選挙資格ニ関スル条項ヲ討議スルヤ、其所見ハ政府当局ノ親シク領知セル所ナリ、然ルニ議員選挙資格制限ニ関スル規定ハ、各会議所答申ノ要旨ハ勿論、聯合会ノ決議ヲ採容セルノ跡ナキハ吾人ノ深ク遺憾トスル処ナルノミナラス、斯クノ如キハ将来ニ於ケル商業会議所ノ発達ヲ妨ケ、本法改正ノ目的ヲ阻碍スルモノト謂フヘキナリ、惟フニ現時我国ノ状態ハ多数商工業者ニ資格ヲ与ヘ、商業会議所ヲシテ是等商工業者ノ機関タラシムルコトヲ要スルモノナルニ、政府ハ此事情ヲ参酌セスシテ資格制限ヲ厳ニシ、多数商工業者ノ希望ヲ排シ、強テ少数商工業者ノ機関タラシメントス、是豈ニ当ヲ得タルモノト謂フヘケンヤ、加之凡ソ新法ヲ制定スルニ方リテハ努メテ激変ヲ避ケ、当事者ヲシテ円滑ニ之レカ運用ヲ為サシムルハ政府ノ須ラク用意スヘキ処ナルニ、事此ニ出テスシテ急激ナル変動ヲ敢テシタルハ、頗ル策ノ得タルモノニアラサルナリ
是ニ於テ乎、各商業会議所ハ曩ニ聯合会ニ於テ決議セル資格標準ノ妥当ナルヲ確信ス、故ニ当局ニ於テハ其趣旨ヲ容レ、速ニ農商務省令第十六号ノ規定ヲ改正シ、以テ新法ヲシテ円満ニ実施スルコトヲ得セシメラレンコトヲ切望ス

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第六六―八二頁
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明治三十五年十二月九日午前十時四十五分開議
　　出席委員　　　　　二十四名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト今日ノ議事ハ第一号カラ取掛ツタラ如何デセウ
　　　（「異議ナシ」ト呼ブ者アリ）
○会長（東京、渋沢栄一君）　一号議案ヲコレカラ御議シニナルヤウニ願ヒマス
　　　（書記朗読）
○三十四番（大阪、法橋善作君）　私ハ発起会議所ヲ代表致シマシテ、本案ヲ特ニ提出シタ理由、並ニ発起会議所其他ガ此省令ニ対シテ不同意ヲ唱ヘ今年七月以来今日ニ至ルマデ運動シ来リマシタ経過、又此会ニ於テ最終ノ計ヲ為スニ付イテノ大要ヲコレヨリ陳述致シマス、サリナガラ少シク時日ガ経過シテ居ルノト、本問題ニ付キマシテハ商業会議所ノ存廃ニモ関スル事柄デゴザイマスルノデ、満場ノ諸君ハ暫ク時ヲ仮シテ十分御聴キ下サランコトヲ希望致シマス、元来此省令第十六号ハ少シク遡ツテ淵源カラ御話ヲセヌケレバ事実ガ徹底セヌダラウト思ヒマスガ、昨年ノ十二月此法律ヲ制定サレマスル際ニ、農商務大臣ノ内旨ヲ承ケテ、七会議所ガ寄ツテ此法律ヲ制定スルコトニ参加シタノデアリマス、ソレデ其法律ハ比較的世ノ中カラ歓迎サレル所ノ法律ガ成立シテ、各会議所一般ガ先ヅ喜ビヲナシタト云フ態デアツタノデアリマス、付キマシテハ尚ホ七会議所ガ発起人トナツテ、本年四月当会議所ニ於テ全国ノ聯合会ヲ開イテ、此省令ニ関スルコトヲ数日間審議討論シタト云フコトガゴザイマシタ、余程此事柄ニ対シテハ主務省ニ吾々モ重キヲ置イテ熱誠以テ尽シタノデゴザイマス、然ルニ数月後ニ至ツテ主務省ガ省令十六号ヲ発表サレマシタ事柄ハ、条理ニ背キ地方ノ情況ニ通セザル所ノ事柄デゴザイマシタヽメニ、折角立派ニ出来タ所ノ法律ヲ施行スル際ニ当ツテ、此一問題ノ為メニ主務省ト吾々ノ間ニ衝突ヲ起シ、従ツテ商業社会ノ不振ヲ来スノ基ニナツタト云フ有様デゴザイマス、是ハ誠ニ遺憾千万ノ次第デゴザイマス、ソレデ吾々ガ本問題ニ対シテ反対ヲ致シマスル事ヲ大別致シマスレバ、第一ニ、主務省ガ全国商業会議所ヲ無視シタト云フコトデアル、第二ニ、主務省ノ行為ハ法律ノ明示スル所ニ背反シタル行為デアル、第三ハ、各地ノ事実ニ照シマスレバ、此省令ノ不適当ノタメニ著シク弊害ガ生シテ居ルト云フコトデゴザイマス、ソレデ大凡三大別ニ区別スル理由ヲ細カニ述ベマスレバ、主務省ガ吾々商業会議所ヲ無視セラレタト云フ事ハドウデアルカト云ヘバ、過刻モ申述ベタ通リ本問題ハ御同様ニ余程重キヲ措イテ本年四月ノ聯合会ニ於ケル出席者ガ六十有余名、書記長以下ガ三十有余名、殆ンド百名ニ近イ所ノ熱誠ナル諸君ガ寄ツテ本問題ニ就イテ十分尽シタ訳デゴザイマス、当時日時ヲ費ス事平均殆ト二十時、費用ヲ費ス事之ヲ合算シマスレバ一万円以上、サウシテ聯合会ナルモノハ法律ニ依ツテ成立ツテ居リマセヌケレドモ、主務大臣ガ此会ニ臨席ヲセラレテ、商業社会ニ必要ナル案件デアルカラ諸君ハ公平ニ十分御審議ニナリタイト云フ御演説ガアツタ位デゴザイマス、而シ
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テ翌日木内商工局長始メ、起草者ニ至ルマデ臨席シテ屡次意見ヲ闘ハシ、サウシテ御同様ニ十三会議所ヲ委員ニ選定シテ委員会ヲ数次開イテ、サウシテ其審査ヲ遂ゲタル事柄ヲ全会一致ヲ以テ可決シタ次第デゴザイマス、付キマシテハ吾々ノ考ヘル所デハ本問題ハ一ノ程度問題デアル、殊ニハ政府ノ威信問題デアツテ、重大問題デアリマスカラ、農商務大臣ハ聯合会ノ決議ヲ全然容レラレルノガ当然デアルト思フテ居リマシタ、固ヨリ法律ノ認メヌ聯合会デハアリマスガ、農商務大臣ガ臨席シテ演説ヲ致サレ、当局者ガ臨ンデ意見ヲ述ベタノデアルカラ殆ド法律ガ認メタ所ノ有力ナルモノデアルト云ツテモ敢テ過言デハナイ、而シテ吾々ガ数日間貴重ナル時日ヲ費シ大金ヲ費シ熱誠以テ尽シタ所ノ事柄ヲ無視スルト云フノハ、即チ主務大臣ガ吾々商業会議所否ナ聯合会ヲ無視シタト云ツテモ敢テ過言デハナイト考ヘマス、第二ニ法律ノ精神ニ違背シテ居ル事ハトウテアルカト云ヘバ、法律ノ第八条ノ九項ニ「地方ノ情況ニ依テ適当ニ之ヲ命令ヲ以テ定ム」トアルデゴザイマセウ、然ラバ一片ノ理想ヲ以テ当局者ガ机ノ上ノ議論ヲ以テ之ヲ定ムベキ事デハ決シテナイ、地方ノ情況ヲ能ク審査シテ其土地々々ニ当箝マルヤウニ制定スルト云フノガ法律ノ精神デアル、然ルニ事玆ニ出デズシテ、吾々ノ審議討論シタコトヲ無視シテ定メタト云フ事ハ則チ法律ノ精神ニ違背シテ居ル、又他ノ法案ニ於テモ、是ハ農商務省ガ中等以上ノ少数ノ人ヲ以テヤルト云フコトデハナクシテ、広イ範囲ニシテ事ヲ処スト云フ事ハ、他ノ法律ニ於テモ亦示シテ居ル所デアルソレハ何デアルカト云ヘバ、彼ノ階級選挙複選挙ト云フコトガ此選挙上ノ骨子トナツテ居リマス、其階級選挙複選挙ト云フコトハ決シテ狭イ区域ニ於テ為スモノデハナイ、広イ範囲ニ於テ為サナケレバ其効用ト云フモノハナイノデアリマス、然ラバ一方ノ法律ニハ広イ範囲ニ於テ為スト云フ事ヲ明示シテアルノニ、故ラニ狭イ程度、狭イ区域ニ之ヲ当箝メルト云フノハ、則チ法律ノ意思ニ背イテ居ルト云フ事ハ言フヲ俟タヌ話デアリマス、又会員選挙役員上任ノコトニ至ツテモ決シテ狭イ区域ノ救助策ニアラズシテ、広イ意味ノ救助策ト云フコトハ順序当リ前ノコトデアラウト思フ、地方長官ガ特別会員ヲ選挙スルトカ、或ハ役員ノ上任ヲ主務大臣ガ認可ヲ与ヘルト云フコトハ、運動ノ弊其他ニ対シテ甚ダ不都合ナコトノ生ジタ場合ノ救助策デ、農商務省ノ云ヘルガ如キ少数ノ人ノ上流社会ノミニ之ヲ当箝メルト云フコトデアツタナラバ、左様ナ救助策ヲ設ケルノ必要ハナカラウト思ヒマス、之等ヲ参酌シテモ、法律ノ明示シテ居ル所ニ違背シテ居ルト云フコトハ敢テ過言デアルマイト私ハ信ズルノデアリマス、ソレカラ第三ニハ、各地ノ事実ニ対シテ一大激変ヲ与ヘ商工社会ノ発達ヲ妨ゲルト云フ事柄デアリマス、此事柄ニ付キマシテハ、第一我大阪ヲ始メ二・三ノ例証ヲ挙ゲテ私ハ玆ニ諸君ノ御考ヘヲ願ヒタイト思フノデアリマスガ、第一、此程度ノ高キニ過ギルタメニ其地方ノ協同力ヲ殺キ信用ヲ低ウスル、協同力ヲ弱カラシムレバ従テ信用ヲ墜ス、第二ニ、今日ノ世ノ中ハ権利ヲ尊重スル世ノ中デアリマスガ、謂ハレナク大勢ノ人ノ権利ヲ剥奪スルト云フト、其地方ノ衰微スルコトハ論ヲマタヌ、第三ニ、今日ノ法理ニ依ツテ見マスレバ、経費ト云フモノハ国税滞納処分ヲ以テ
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処分スルト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、今日我国何レノ地方ヲ見テモ実ニ政費多端デ、其政費ノ多端ナノハ国家ノ進歩ノタメニ已ムヲ得ヌコトデアリマスガ、既ニ制限通リノ賦課法デハイカヌノデ、何レノ土地モ内務・大蔵大臣ノ特別認可ヲ受ケテ制限以外ニ賦課ヲサレルト云フヤウナ時期ニ到来シテ居ルノデアリマス、然ル揚合ニ少数ノ人ノ負担ヲ重カラシムルト云フコトハ決シテ策ノ得タルモノデハナカラウト思フ、徴税賦課ト云フコトハ成ルベク人民ガ痛痒ヲ感セヌヤウニシテ、知ラズ識ラズノ間ニ聊カノ力ヲ以テ之ヲ計劃スルト云フコトガ徴税法ノ一ノ秘訣デアラウト信ズルノデアリマス、尚ホ又各地ノ状況ニ照ラシテ夫等ノ事ニ対スル実例ヲ申シマスレバ、我大阪ノ如キハ商工業者ト称フルモノハ二万六千人アルノデアリマス、二万六千人ノ商工業者ガ此省令ニ照ラシテ見マスルト二千三百人デアル、然ラバ此事ニ与ルモノガ百分ノ八ト云フ割合ニナツテ居ルノデアリマス、而シテ我大阪ノ如キハ同ジ営業税ヲ納メル者ガ、政費ノ多端ノタメニ一円ノ営業税ヲ納メル者ガ二円モ納メナケレバナラヌト云フ結果ニナツテ居リマスカラ、相当ノ商人デモ三十円以下ノ程度ニナツテ居リマス三十円以下ノ者ガ奉公人ヲ六・七人モ使ハナケレバ其仲間ニ這入ラレヌト云フ事ニナツテ居リマス、而シテ経費ノ負担ハ従前ニ照シテ二倍七・八分、殆ンド三倍ノ経費ヲ負担シナケレバナラヌト云フ有様ニナツテ居リマス、第二ニハ、京都ノ大要ヲ申シマスレバ、京都ノ如キハ此省令ノ程度ノ高イタメニ最モ苦シム所デアリマス、ドウ云フ有様デアルカト云ヘバ、諸君モ御承知ノ通リニ、京都ノ西陣其他陶器物ナドハ全国著名ナモノデアリマス、是等ノモノハ個人トシテハ比較的程度ガ低ウゴザイマスガ、之ヲ綜合シタモノハ至大ナモノデアリマスガ、個人トシテハ比較的低ウゴザイマスカラ、此省令ノ範囲ヲ脱シテシマツテ、殆ンド今日迄ハ四百名カラモアツタ選挙有権者ガ僅ニ三・五十人ニ止マルト云フ有様デアリマス、而シテ経費ノ負担ハドウカト云ヘバ、営業税一円ニ対シテ、二十五銭ト云フ制限デゴザイマス、然ルニ之ヲ今日ノ省令ニ依リ人員ニ当箝メルト、最早二十三銭ヲ徴収シナケレバナラヌト云フコトニナル、然ラバ商業会議所ガ法律ノ下ニ立ツテ商業機関トナツテ将来仕事ヲスル場合ニ当ツテ、余裕ガ二銭ホカナイカラ何レノ仕事モ出来ヌト云フ結果ニナル、其他程度ノ高イト云フコトハ之ヲ以テ推シテ知ルベキデアラウト思ヒマス、ソレカラ神戸ノ有様ハドウカト云ヘバ、程度ノ高イタメニ神戸ハ三級選挙ニスルコトニナレバ、一級選挙ハ山陽鉄道会社ガ一人デ選挙シテシマウ、若シ之ヲ二階級ニ分テバ殆ンド四十人ノ議員ノ中二十人ノ議員ハ山陽鉄道会社ガ選挙スルト云フコトニナツテ、一万二千円ノ経費ノ中五千八百円ハ山陽鉄道会社ガ負担スルト云フコトニナルノデアリマス、故ニ之ハ神戸市ノ消長ニモ関スル位ノ問題デ、諸君モ御承知ノ通リ神戸ハ新開ノ土地デアツテ、全国カラ苦労人ガ寄集ツテ来テ居ル所デアルカラ、比較的財産ノ程度ノ低イ人ガ多イ、此新開地ノ如キ所ハ今日カラ照セバ二十円ト云フコトニ神戸ハナツテ居リマスガ、二十円ノ営業税ヲ納ムル以下ノ人ニ働キ手ガ多イノデアリマス、詰リ神戸ノ為メニ大ニ働ク人間ヲ除ケテシマツテ、少数ノ金持ダケガ残ツテ仕事ヲスルト云フコ
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トニナルノデアリマス、又名古屋ノ如キハドウデアルカト云ヘバ、是又会社等モ漸ク六箇所カ七箇所シカ此制限ニ合ハナイ、此地方モ三・五年ノ間長足ノ進歩ヲナシテ、今日ニ於テハ日本ノ都府ノ仲間入リヲシテ居リマスガ、比較的程度ガ低イノデアリマス、故ニ此省令ノタメニ大ナル会議所ト小ナル会議所ガ最モ痛苦ヲ感ズルデアラウト思ヒマス、デ過般吾々ガ此事ニ対シテ彼此レト諸会議所ノ諸君ニモ相談シタ場合ガゴザイマシタケレドモ、中ニハ中位ノ会議所ニ於テハ省令カラ云ツテモ、聯合会ノ決議カラ言ツテモ、資格ガ十円位ニナツテ居ルノデ、十箇所バカリハ利害痛痒ヲ感ズルコトガ比較的薄イヤウデアリマスガ、併シナガラ之等ノ問題ハ自家ノ御手許ニ於テ御差支ガナクトモ一般ノ事情ニ照シテ御賛同下サルコトガ当然ノコトデアラウト思フノデアリマス、唯今申上ゲルヤウナ事実デゴザイマスカラ、吾々四会議所ガ主務大臣ニ対ツテ屡次陳情シ、然ルベク反省ヲ求メタノデアリマスガ未ダ要領ヲ得ヌノデアリマス、屡次陳情致シマシタ結果、吾々ノ陳情スル所ハ非ナリ、斯様ナル例モアルカラ、ソレハイケナイト云フノデハナクシテ、一度発布シタモノデアルカラ、之ヲ行ツタ上デイケナイト云フ事ガアレバ訂正スルニハ吝ナコトハシナイ、是非其場合ハ改正スルカラ此場合ハ此省令ニ服従シテ居ルモノモアルシ、又一度発布シタ者ヲ直チニ変更スルコトハ幾分カ政府ノ威信ニモ関係スルカラドウカ此場合ハ務メテ行ツテ呉レト云フコトデアリマシタ、ケレドモソレハ行ツテ見ヌデモ事実イケナイト云フコトガ明カニナツテ居リマスカラ、此上往クノハ快クアリマセヌカラ、断然此場合反省シテ下サルヤウニト要メマシタガ、一時他ニ何カ方法ガナイカト云ツテ多少御攻究ニナツタヤウデアリマスガ、竹ニ木ヲ接イダヤウナ一ノ取除法ヲ設ケル訳ニモイカヌデ困ルカラ、此場合是非施行シテ呉レイト云フコトデコレト云ツテ良案モナイノデアリマス、ソレデ全国二十八会議所連署ヲ以テ主務大臣ニ陳情書ヲ提出シテ、此場合是非トモ御反省ヲ仰ギタイ、最早施行期日ガ迫ツテ居ルカラ、此儘ニナツテ居ツテハ甚ダ吾々迷惑ダ、又主務省ト吾々トイツ迄モ衝突シテ何ノ準備モセヌト云フノハ国家ノ為メニ慶ブベキコトデナイカラ是非願ヒタイト言ツテモ是亦其辺ノ事柄ニ付イテハ、別ニコレト云フコトモゴザイマセヌ、故ニ吾々ノ考フル所デハ、此一件ハ余程重大ナル事柄デ、而カモ時日ガ切迫シテ居リマスカラ、本会ニ於テ諸君ト共ニ十分ニ之ヲ御協議致シテ、会議所ノ将来ノタメニ十分御尽力ヲ願ヒタイト云フ所カラ提出シタノデアリマス、此場合ニ於テ最後ノ計ヲ致サナケレバ、中ニハ不幸ニシテ解散ヲシナケレバナラヌ所モアリマセウ、又中ニハ自然消滅ニ帰スル所モアリマセウ、左様ナコトニナツテハ、折角立派ナ法律ガ出来テモ遺憾千万デアリマスカラ、何トカ此場合一ノ方法ヲ設ケテ、此事ヲ追加ナリ何ンナリシテ実行ノ出来ルヤウニシタイト云フ考デ、今般諸君ヲ煩ハシタヤウナ次第デゴザイマス、ドウカ本案ニ対シテ尚ホ御質問等ガアレバ、発起会議所各員ヨリ御答ヲ申上ゲマス、又諸君ニ於テ御考ガゴザイマスレバ、謹ンデ承ツテ篤ト考ヘタイト考ヘマスカラ、十分御審議アツテ、此事ノ結末ヲ着ケルヤウニ御配慮アランコトヲ希望致シマス
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○三十八番（名古屋、鈴木摠兵衛君）　本案ニ付キマシテハ唯今法橋君ヨリ概要ノ格別緊要ナルコトヲ御報道ニナリマシタ、ソレニ付キマシテ自分モ一言シテ置キタイト思ヒマス、抑此提出シマシタ趣意タルヤ法橋君ノ御述ベニナリマシタ通リデアリマス、既ニ東京ガ四十円以上デ定ツタ、横浜ガ三十円、或ハ広島其他ノ如キ拾円デ定ツタ所ガアル此方々ニ対シテ吾々共ノ主唱スル所ノ低イ所ニ下ツテ御附合下サイト云フコトヲ要求スルノデハナイ、則チ地方ノ状況デ即チ定ツタレバ宜イノデ、唯タ之ニ付テ行キ兼ネルモノハ下ゲテ下サイト斯ウ云フ趣意ニ過ギヌノデアリマス、又主務大臣ノ応答ニモ唯今法橋君ガ述ベラレタ通リ、自分モ同行シテ大臣ニモ屡々会見シマシタ、其時分ニモ吾々共ノ陳述スル所ハ決シテ無理トハ思ハヌガ、一旦省令デ出シタカラ何トカ考案ハナイカ、オ前共ニ於テ気ガ附イタラバ一ツ考案ヲ出シテ呉レ、併シ遠路ノ所ヲ出張シテ居ルモノヲ態々引止メテ置イテモ際限ノナイ話デアルカラ能ク承知シテ呉レト云フノデ、最後ニ吾々共又諸君ト共ニ数名総理大臣ノ官邸ヲ訪ヒマシテ、大体ノ事情ヲ陳述致シマシタ所ガ、総理大臣ノ御答ヲモ一応聞取ツタ、併シ主務省ノ方ノ専ラ所管スル所デアルカラ一応伝ヘテ置クト云フコトデアル、ソレカラ又後ニ御伝ヘニナツタ御返答ヲ聞キニ出マシタトキニハ、主務大臣ニ伝ヘタガ主務大臣モ当時考中デアルカラ、尚ホ更熟慮シヤウト云フ斯ウ云フコトデ御分レニナツテ居ル、ソレ故ニ唯今法橋君ノ述ベラルヽ如ク二十七・八ノ会議所ガ聯合ヲ以テシタ此御返答ヲ聴流シタノデアリマス、是丈ノコトヲ補ヒ置キマス、諸君ニ於テモ宜シク御承知アランコトヲ希望致シマス
○三十四番（大坂、法橋善作君）　私ハ本案ニ対シテ尚ホ一言ヲシテ置キタイト思ヒマスガ、先刻私ガ第一ニ数ヘマシタ如ク吾々ガ大多数ヲ以テ決議ヲシタコトモマルキリ主務大臣ガ採ツテ呉レナイト云フヤウナ有様デゴザイマスレバ、前途此法律ニ依ツテ商業会議所ヲ設立シマシテ大ニ資金ヲ費シ、大勢ノ者ガ寄ツテ熱誠ニ尽シマシタ所ガ何ノ効果ヲ見ルコトガ出来ヌダラウト思フ、此ノ如ク人民問題ニシテ政府ノ威信問題デナイ、之ヲマルキリ採ラヌト云フ位ナラバ政府ニモ人民ニモ併セテ利害ノアルコト、従テ政府ノ威信ニ関係スル如キモノハ如何ナルコトデモ決シテ採用ハセラレヌト云フ結果ガ生ジテ来ルダラウト思ヒマス、サウシテ斯ウ云フ衝突ノ出来マシタ所ガ何レカ得ル所ガ多少ナケレハナラヌト思ヒマス、農商務大臣ハ之ヲ容レラレヌト云フニ対シテ、農商務大臣ハ何ノ得ル所モナイデゴザイマセウ、唯ダ吾々会議所ガ苦ムト云フマデノコトデ、一方ハ苦ムマデデ、一方ハ得ル所ノ更ニナイ事柄デ衝突スルト云フコトハ、実ニ意外千万デアルト思ヒマス、此ノ如キ筆法ヲ以テ事ヲヤラレルコトデゴザイマスレバ、決シテ我邦ヲ商工立国トナシ、農商務省ガ大ニ此商工業ノ発達ノ為メニ御尽シ下サルト云フコトハ、思ヒモ寄ラナイコトデハナイカト私ハ窃カニ憂フルノデアリマス、固ヨリ農商務省ハ実業ノ発達状況等ヲ顧ミテ、ドウカ半官半商ノ地位ニナツテ互ニ円滑ニ話合ツテスルコトニ致シタイト思ヒマス、何時デモ農商務省ガ一度ビ見ル所ガアツテモ、各地ノ事実ト云フモノガ立派ニ現ハレマシタ暁ニハ速カニ御反省ニナツテ然
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ルベキモノト思ヒマスノデアリマスガ、唯ダ斯ウ云フヤウナコトニ一二ノ当局者ガ机ノ上ノ理想的ヲ以テポンポンヤラレテハ実ニドウモ遺憾千万ト思ヒマス、デ此所ハドウカ諸君ト共ニ将来ノ関係ニモ余程及ボス所ガアルト思ヒマスカラ、ソンナラト言ツテ吾々ガ主務省ニ向ツテ政治的ノ働ヲナシ理窟ヲ以テヤラウト云フノデハナイ、今日マデ六箇月ノ間主務省ト商業会議所トノ間ハ徳義ト云フモノハ決シテ失ハズシテ尽シタヤウナ訳デアリマスカラ、決シテ破壊的ニ喧マシイ挙動ヲシヤウトハ申サヌノデアリマスカラ、ドウカ前途ノ利益ニナル方ニ共ニ共ニ会議シテ円満ニヤルト云フコトニシタイト思ヒマスカラ、ソレヲ一言……
○八番（富山、関野善次郎君）　此第一号ノコトニ付キマシテハ、実ニ我カ富山ナドハ最モ小サイ区域ノ会議所デハゴザイマスケレドモ、一般ノ国税ノ営業税ヲ納メテ居ル者ガ千百九十六人アルノデ、今度ノ拾円以上ト云フコトニシマスルト僅カニ三百四人ト云フモノデ組織シナケレバナラヌ、サウスルト営業税ヲ納メル者ノ中デ組織ノ中ニ這入ルコトノ出来ナイ者ガ八百九十二人ト云フノデ、殆ンド三分ノ一ノ人員ヲ以テ組織シナケレバナラヌト云フコトデアリマスル故ニ、従ツテ賦課税ノ負担モ多クナル、又徴税ノ上ニ於テモ余程困難デアル、ソレ故ニ此改正ハ最モ同意スル所デアリマス、併シナガラ此事ニ付テ今段々伺ヒマスレバ、大阪其他ノ商業会議所ナリ、及ビ又先般開カレタ所ノ聯合会ニ於テモ非常ニ御尽力モ下サレマシタケレドモ、其効ヲ奏スルコトガ出来ナカツタト云フコトデ、ソレデ今法橋君ナトノ御話デハイロイロナ御話モゴザイマスケレドモ、兎ニ角此事ニ付テハ深ク論議ヲシマセヌデモ皆様御同意デアラウト思ヒマスル、デ私ハ幸ニ此聯合会ヲ発起セラレタ五会議所デアリマスルカ、其方デ不足ナレバ尚ホ二・三ノ会議所ヲ加ヘテ、最終ノ一ツ相談ヲ農商務大臣ニシテ戴キ、ソレデ相談ヲシテ聞カナケレバソレハ一向分ラヌ人デアルモノデスカラ、ソンナニシテ何時マデ同ジコトヲヤツテモ仕方ガナイコトデアリマスカラ、又々吾々聯合会ハ大ニ其将来ノ方法ニ付イテ決スル所ガアツテ宜カラウト思フ、ソレデ之ハ長ク審議ヲスルマデハナイ、早ク委員ヲ設ケテ当局大臣ニ交渉ヲスルト斯ク云フコトニシテ貰ヒタイ
○三十四番（大坂、法橋善作君）　関野君カラノ御話ハ最モ同意ヲ得タ御話デゴザイマス、私モ全ク諸君ガ御賛成下サレバ、是デ最後ノ談判ヲシマシテ、何分ノ其御話ニ依ツテ決シナケレバナラヌト思ヒマス、ドウゾサウ云フコトニ決シマスレバ、発起会議所ニ於テモ誠ニ満足デゴザイマス
○三十七番（神戸、横田孝史君）　最早此問題ニ付キマシシハ玆デ喋々論議スルノ必要ハナカラウト思ヒマス、既ニ繰リ返ヘシテ述ベルマデモナク、曩キニ本問題ノ為メニ開キマシタ四月ノ聯合会ニ於キマシテハ重ナル会議所十五会議所ヲ以テ委員ヲ組織シ、其委員会ニ於テハ充分ニ意見ヲ闘ハシ、加之ナラズ、当局者タル木内君ハ委員会ニ出席シ其委員会ノ状況トシテ其時ノ委員長井上角五郎君ノ句調ヲ藉ツテ申シマスレバ之ヲ報告セラルヽニハ、吾々委員ノ意思ト当局者ノ意思トハ殆ンド相一致シタルモノデアル、聯合会ト当局者ト協定ノ上ノ案デア
 - 第22巻 p.851 -ページ画像 
ルト云フコトヲ此委員ノ報告ニ載ツテ出タノデ、然ルニ省令第十六号ト云フモノハ全然之ヲ無視シ、全然其意思ニ反対シタル所ノ案ガ出マシタ、其結果トシテ既ニ全国中数多ノ会議所ハ今日解散ノ悲運ニ陥ツテ居ルト云フガ如キ有様デアル、農商務省ハ恰モ此省令十六号ヲ以テ会議所征伐ヲ行ツテ居ルト云フ事実ヲ玆ニ発現シテ居ルノデアル、デ此事ハ啻ニ商業会議所ノ組織ノ上ニ於テノミナラズ、将来此活動ノ上ニ於テ最モ重大ノ関係ノアルコトダラウト思フ、商業会議所ハ当局者ノ諮問ニ対シテ充分慎重ナル所ノ態度ヲ以テ之ニ答ヘ、其席ニハ当局者ハ臨席シタルニモ拘ハラズ、其結果トシテハマルキリ之ヲ無視シテ掛ルト云フヤウナ歴史ヲ此所ニ見テ居ルノデアリマス、之ヲ直接ニシテハ殆ンド商業会議所ノ存廃問題トモ云フベキ程ノ事柄デモゴザイマス、又間接ニシテハ会議所ノ威信ニ関係スル大ナル事柄デアルト考ヘマス、故ニ今後ノ方針ニ付キマシテハ唯今八番関野君ヨリ提案モ出マシタガ、先ヅ以テ委員ヲ挙ゲテ此措置ニ従事スルト云フコトガ最モ今日適当ノコトデアラウト考ヘマスル故ニ、八番ノ委員説ニ同意致シマス、若シ八番ニ於テ委員ノ員数ニ御意見ガゴザイマスレバ承リマス、若シ御異議ガゴザイマセヌナレバ議長ノ指命ヲ以テ委員ヲ挙ゲラレンコトヲ希望致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　委員説ハ段々御賛成ガアルガ、数ハ……
○八番（富山、関野善次郎君）　成ルベク発起会議所、京都・大坂・神戸・名古屋・四日市ト此提出者ノ方デ委員ニナツテ戴キタイト思ヒマスガ、併シ他ニ異ツタ説ガゴザイマスレバ如何デモ……
○会長（東京、渋沢栄一君）　スルト五名ト云フ御考デアリマスカ、発起ト云ヘバ五名デ宜カラウト云フノデスカ
○八番（富山、関野善次郎君）　サウ云ウ考デ
○三十四番（大阪、法橋善作君）　今日発起会議所ハ此案ガ成立致シマシテ委員トナツテ尽スコトハ一向厭ヒマセヌガ、尚ホ之ニ加ヘテ各地方ノ中ノ九州ナリ、東北ナリ、又東海道筋ナリ、其地方地方ノ利害ヲ陳情スルト云フコトノ必要モゴザイマスルデ、各地ニ割当テヽ、ドウカ総計九名位ノ委員ヲ選定スルコトニ御願ヒ申シタイト思フノデアリマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　一号議案ニ付キマシテハ委員説ニ段々御賛成ガゴザイマス、唯タ委員数ハ発起者ノ五名デ宜カラウカ、三十四番ハ九名ト云フコトニシタイト云フ……
○三十七番（神戸、横田孝史君）　ドウカ九名位ガ宜カラウト考ヘマス八番ノ委員説モ九名デハ行ケナイト云フコトデハアルマイト思ヒマス
○三十四番（大阪、法橋善作君）　ドウカ八番サンノ方デ御考ヲ
○会長（東京、渋沢栄一君）　如何デゴザイマスカ、本問題ハ大分モウ議ハ尽キテ居ルヤウニ承知サレマスガ、余リ異ナツタ御議論ガゴザイマセネバ委員説ヲ採決シヤウト思ヒマスガ、今八番サンハ指名ハヤハリ議長指名ト云フ御趣意デゴザイマシタカ
○八番（富山、関野善次郎君）　左様デアリマス、私ハ発起会議所ヲ入レテ、跡ノ四名ヲ指名ト云フコトニ、九名ト云フコトニナリマスレバ……
 - 第22巻 p.852 -ページ画像 
○会長（東京、渋沢栄一君）　跡ノ四名ハ議長指名ト云フコトデアリマスカ、御賛成モ其趣意デゴザイマスカ
　　　（「異議ナシ、異議ナシ」ト呼ブ者アリ）
○会長（東京、渋沢栄一君）　ソレデハ此問題ニ付テハ陳情委員トシテ九名ヲ選挙スル、其九名ノ中ノ五名ハ発起会議所トスル、而シテ他ノ四名ハ議長指名ニシテ、サウシテ此委員ニ拠ツテ此趣意ヲ十分ニ当局者ニ陳述シテ貫徹セシムルヤウニスルト、斯ウ云フコトニ相成リマスルガ、此八番ノ御説ニ御同意ノ方ハ御起立ヲ願ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、此所ニ於テソレデハ委員ヲ申上ケルヤウニ仕リマセウ、既ニモウ決議ノ結果トシテ、京都ハ田中源太郎君、大阪ハ法橋善作君、神戸ハ藤田松太郎君、名古屋ハ鈴木摠兵衛君、四日市ハ井島茂作君、此五名様ハ既ニ決議ノ結果トシテ御立下サラネバナリマセヌ、更ニ指名シマスルノハ尾道デ橋本吉兵衛君、富山デ関野善次郎君、熊本デ岡崎唯雄君、広島ノ早速整爾君、此四名ノ御方ヲ指名仕リマス、ドウゾ御引受下サル事ニ致シタウゴザイマス、ソレト前ニ申上ゲタ五名ノ御方、ソレデ併セテ九名ニナリマス、左様御承知ヲ願ヒマス

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　第一三七―一八五頁　刊
明治三十五年十二月十一日午前十時四十分開議
　　出席委員　　　　　二十四名　○氏名略
○会長（東京、渋沢栄一君）　開会致シマス、続キマシタ議案デアリマスカラ工場法案ヲ御議決アルヤウニ致シタイ
○三十四番（大阪、法橋善作君）　其前ニ曩ニ御委託ニナリマシタ省令十六号ノコトニ付イテ、昨日農商務大臣ヲ訪問致シマシタ経過ヲ御報告致シタイト思ヒマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　宜シウゴザイマス
○三十四番（大阪、法橋善作君）　諸君ニ御報告致シマスガ、一昨日御託シニナリマシタ省令第十六号ノコトニ付イテ直チニ農商務大臣ニ電話ヲ以テ照会致シマシタ、所ガ昨日午前九時迄ニ参レト云フコトデゴザイマシタカラ、委員ハ打揃フテ九時ニ参ル積リデゴザイマシタ、所ガ俄ニ大臣ニ御都合ガアツテ午後四時カラニシテ呉レト云フノデ、昨日此会ヲ終ツテカラ皆車ヲ連ネテ大臣官邸ニ訪問致シマシタ、大臣及安広長官モ臨席サレマシテゴザイマス、付イテハ田中君始メ委員諸君ヨリ省令十六号ニ対スル不適当ナル事情ヲ縷々陳情サレマシテゴザイマス、然ルニ大臣モ最後ノ陳情デモアリ、何分アヽ云フ成行ニナツタ事柄デモアリ、一応考慮ヲ尽シテ返答ヲシナケレバナラヌト云フコトデ、詰リ即答致シ難イ、ソレデ今般聯合会ヲ御開キニナリ、出席ノ会員諸君ガ委員ヲ設ケラレタ事情ヲ段々御質シニナリ、斯様斯様ナ手順デ参ツタト云フコトヲ申述ベマシタ、所ガサウ云フ成行キデアレバ大ニ考慮ヲ尽サナケレバナラヌカラ、会期ノ短イノニ即答ヲセヌノハ遺憾デアルガ、今晩カラ明朝マデニ掛ケテ十分考モシ多少取調モシタ上デ御返答ヲスルカラ、明日委員長ガ御出デ下サイト云フコトデゴザイ
 - 第22巻 p.853 -ページ画像 
マシタ、ソレデハ此聯合会ハ明日ヲ以テ略々結了スル積リデゴザイマス、ケレドモ是ハ誠ニ商業社会ニ取ツテハ大事件デアリマスカラ一日ヤ半日位ノコトニハ代ヘラレマセヌカラ、明日中ニ十分御考慮ヲ下スツテ成ルベク吾々ノ陳情ノ意思ノ貫徹スルヤウニ御配慮下サルヤウニト云ツテ、委員ハ引取リマシタ、多分今日後程マデニハ何トカ御沙汰ガアルダラウト思ヒマス、此事ヲ一言御報告致シマス、付キマシテハ諸君ニ御協リ致シマスガ、今日ハ成ルベク閉会ヲシタイト云フ考デ、今晩懇親会ヲ開クヤウニ致シタ次第デアリマスガ、唯今申述ベタヤウナ事情デ到底今日閉会ト云フコトハムヅカシイト云フ見込デゴザイマス、ソレデ御多用ノ折柄御迷惑デハアリマセウガ、明日モウ一日ダケハ御滞在下スツテ十分此会議ヲ尽シテ分レルヤウニ御方針ヲ御執リ下サランコトヲ希望致シマス、此事ヲ併セテ一言致シテ置キマス
○中略
　　　午後一時四十五分開議
○副会長（東京、馬越恭平君）　是ヨリ開会ヲ致シマス
○三十三番（京都、田中源太郎君）　他ノ議事ニ御掛リニナル前ニ昨日私共初メ九名ノ委員ニ御付託ニナリマシタ彼ノ商業会議所議員選挙資格改正ノ件ト云フ、即チ第一号議案ノ件ノ御報告ヲシ、併セテ此事ノ議事ヲ願ヒタイデゴザイマス、唯今発言シテ宜シウゴザイマスカ
○副会長（東京、馬越恭平君）　宜シウゴザイマス
○三十三番（京都、田中源太郎君）　満場諸君ニ御報告致シマスルデゴザイマスガ、昨日本会ニ於キマシテ唯今述ベマシタ一号議案ノ件ニ付イテ九名ノ委員ヲ選ンデ総理大臣ニ此決議ノ模様及其実際ノ事情ヲ上申スルコトヲ御依托ニナリマシテゴザイマス、ソレデ委員ガ打寄リマシテ不肖私ヲ委員長ト云フ事ニナレト云フ事デゴザイマシタカラ、不肖ナガラ私ガ委員長ノコトヲ請ケマシテ、ソレデ九名ハ農商務大臣ノ官邸ニ罷リ出デマシテ上申シタコトハ今朝三十四番カラ概略御報告ニナリマシタヤウニ伺ヒマスデゴザイマス、此九名ノ上申致シマシタコトハモウ玆ニ再ビ申述ベマセヌデゴザイマス、今朝私ノ出席ノ後レマシタノモ農商務大臣カラ呼ハレマシタノデゴザイマシテ、此事柄ハ何分ニモモウ会期モ切迫シテ居リマスルデ、昨日特ニ其御答ヲ早ク御願申シタイト云フコトヲ特別ニ願ツテ置キマシタノデゴザイマシタ、デ今朝農商務省ニ罷リ出デマシテサウシテ其事ヲ伺イマシタノデゴザイマス、其事ヲバイロイロ此方ラカラ申上ゲタコトモアリ又総務長官ノ種々ノ御話モゴザイマシタガ、別段其道行ハ申上ゲマセズ、要ヲ摘ンデ申上ゲマスル、要シマスルニ大臣ノ御答ハ、農商務省ハ従来各地ノ商業会議所ノ実況ヲ鑑ミテ、サウシテ昨年ノ議会デ決議ニナリマシタ改正条例ノ趣旨ヲ程宜ク行ヒタイ、ソレハ即チ成ルベク後来各地ノ商業会議所ノ資格モ高メ、又適当ノ人ヲ得テ相当商工業ノ機関トナツテ充分ニ効用ノアルヤウニシタイト云フノカ望ミデアル、而シテ彼ノ法律ニ依ツテ納税資格ナドヲ定ムルコトハ命令権ニ委ネテ、其命令権ニ依ツテ各地ノ状況ニ依ツテ資格ヲ定メタ、即チ省令第十六号デ出シタ如ク三等ニ定メテ是ナラバ凡ソ各地ノ商業会議所ニ適当スルデアラウ多少不便ガアツテモ是ナラバ是迄トハ資格ガ高マルデ相当ノ人ガ得ラ
 - 第22巻 p.854 -ページ画像 
レルデアラフト、斯ウ見込デ彼ノ省令ヲ出シタノデアル、併シ是迄アル二・三・四・五ノ会議所カラ種々ノ陳情モ聞カヌデハナイガ、又或ル部分カラハ大抵彼ノ方ガ適当テアラウト云フコトモ聞イテ居ツタガ昨日皆ノ委員カラ承ル所ニ依ルト、全国商業会議所ノ聯合会ニ於テ彼レデハ実際ドウモ行ハレ難イ場合ガ沢山アル、故ニ彼レハ改メテ貰ツタ方ガ宜シカラウト云フ希望ノ決議ヲシテ委員ガ上申スル所カラ以テ見ルト、実際ニ余程当嵌リ難イ所ガアルト云フコトモ感ズル、ソレニ付イテハ強ヒテ農商務省ハ是非トモ此範囲内デ出来テモ出来ナイデモ是非ヤレト云フ押付ケルト云フ考ハ毛頭ナイノデアツテ、実際ニ当嵌リ難イナレバ尚充分ニ考慮ヲシテ改正ヲスル事ハ決シテ吝カナラヌノデアルカラ、ドウゾ聯合会ニ於テノ希望、又ハドウ云フ都合ニシテ貰ツタナレバ宜カラウト云フ見込ヲ参考マデニ書面デ上申シテ呉レヌカ斯ウ云フ返辞デアリマスルノデゴザイマス、ソコデ此返辞ヲ今朝承リマシテ委員ガ寄合ヒマシテ先刻来委員ノ決議ヲ致シマシタノデアリマス、其決議ハ委員ハドウスルガ宜イカト云フト、彼ノ一号議案デゴザイマス、彼ノ一号議案ニ少シノ文字ヲ足シマシテサウシテ此所デ御決議ヲ願ツテ、其決議ヲ直チニ本日ニデモ農商務大臣ニ上申シタ方ガ宜シカラウト云フ積リデアリマス、ソレデ彼ノ一号議案ノ末文ニ少シク文字ヲ足シマスノデ末文ノ「是ニ於テカ各会議所ハ曩キノ聯合会ニ於テ決議セル資格標準ノ妥当ナルヲ確信ス、故ニ当局ニ於テ其趣意ヲ容レ速カニ農商務省令第十六号ノ規定ヲ」此尻ヲ少シ変ヘマス「改正セラルヽカ、又ハ該省令中新タニ」其所ニ括弧ヲ入レマシテ「地方ノ状況ニ依リ前二条ノ制限ニ依リ難キモノハ、主務大臣ノ認可ヲ経テ特ニ其制限ヲ定ムルコトヲ得」ノ一条ヲ加ヘ「以テ新法ヲシテ円満ニ実施スルコトヲ得セシメラレンコトヲ切望ス」ト斯ウ云フ風ニ彼ノ一号議案ヲ変ヘマシテ、本会デ御決議ヲ願ヒタイト云フ希望デゴザイマス、御報告旁々委員ノ意見ヲ申上ゲテ置キマス
○三十四番（大阪、法橋善作君）　唯今田中委員長カラ御報告ニナリマシタ事柄ハ、私共委員ノ一人デ昨日以来先刻来モ委員会ヲ開イテ唯今御朗読ニナツタヤウナコトニ修正ヲシタナラバ最モ当ヲ得ルコトダラウト信シタノデアリマスガ、其事ハ委員ノ一人トシテ申上ゲテ置キマスガ、尚ホ本案ニ付キマシテハ最早論シ尽シテアルコトデゴザイマスデ唯今御報告ノコトハ吾々ガ数日間打寄ツテ希望スル所ノ点ハ玆ニアルノデゴザイマスカラ、満場総起立ヲ以テ其事ヲ可決シテ速ニ主務大臣ノ方ニ進達スルコトヲ希望スルノデアリマス
　　　（「賛成、賛成」ト呼ブ者多シ）
○副会長（東京、馬越恭平君）　唯今田中委員長ノ御報告ト共ニ本案ノ末文ニ修正ヲ御加ヘニナル事ハ段々御賛成ノ諸君ガゴザイマスルヤウデゴザイマスガ、是ニ御同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　満場
○副会長（東京、馬越恭平君）　満場一致デ可決致シマシタ
○三十三番（京都、田中源太郎君）　唯今委員ノ御報告致シマシタ案ニ満場ノ御同意ヲ得マシテ決議ニナリマシテゴザイマス、付キマシテハ此御決議ヲ直ニ大臣ニ上申シタイト思ヒマスルデ、其上申スルニ付キ
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マシテハ是マデノ聯合会ノ会長若クハ会長ガ御留守デゴザイマスレバ副会長ト云フ名デシテアルノガゴザイマスガ、ドウモ聯合会ノ会長ト云フモノハ全体認メラレテ居リマセヌモノデゴザイマスカラ、或事柄ニ依リマスト委員ノ名ヲ以テシタヤウナコトモ往々例ガアルサウデゴザイマス、ソレデ之ハ幸ヒ手続デゴザイマスルデ聯合会カラ選挙セラレマシタンデゴザイマスルデ、委員ガ九名連署致シマスルカ若クハ其総代デ私ガ署名シマシテ、之ニ委員トカ委員総代トカ委員長トカ云フ位ノコトデ参考迄ニ上申スルコトデゴザイマシテ、サウシタイト思ヒマス、ソレデ御異存ハゴザイマスマイデゴザイマセウカ
　　　（「異議ナシ」又ハ「一名デ願ヒマス」ト呼ブ者アリ）
○副会長（東京、馬越恭平君）　別段御異議モゴザイマセヌヤウデスカラ、御一名デ差支ナイト思ヒマス
○三十三番（京都、田中源太郎君）　ソレデ御異議ガゴザイマセネバ私ハサウ云フコトニシテ直チニ是カラ出マス、特ニ今一ツ願ツテ置キタイノハ、此会ハ明日モウ一日御延バシニナルコトニナリマシタサウデスガ、ドウカ又明日ハ会議モゴザイマスルデ、此事ノ結果ノ何カ附キマスルマデハ委員ヲ此儘継続シテ置クト云フコトニ御決議ヲ願ツテ置キタイト思ヒマス（「賛成、賛成」ト云フモノアリ）是又一ツ述ベテ置キマス
○副会長（東京、馬越恭平君）　別段御異議モゴザイマセヌヤウデスカラ、左様致シテ置キマス……

明治三十五年十二月開設
臨時商業会議所聯合会議事速記録　　第二〇六―二〇九頁　刊
明治三十五年十二月十二日午前十一時三十分開議
　　出席委員　　　　　二十二名　○氏名略
○副会長（東京、馬越恭平君）　是ヨリ開会致シマス
○三十三番（京都、田中源太郎君）　昨日御決議ニナリマシタ第一号議案ノ決議ノ主旨ヲ農商務大臣ニ上申致シマシタ結果ヲ御報告致シマス即チ彼ノ十六号ノ省令改正希望ノ事ヲ直チニ書面ニ認メテ持参シテ参リマシテゴザイマス、是迄数度各地ノ商業会議所カラ御上申ニナリマシタ事柄、及ビ本会カラ上申致シマシタ事、其他此改正ノ事柄ハ御承知ノ通リニ三月カラ施行ニナルコトデアリマスカラ、遅クモ本月中ニハ各地ノ商業会議所ニ於テ定款ヲ拵ヘテソレソレ認可ノ上施行セネバ施行期日ニ間ニ合ハヌヤウナ都合デゴザイマスカラ、其急ギマス事柄ヲ併セテ上申ヲ致シマシタノデゴザイマス、ソレニ就テハ斯様ナ御答ヲ得マシテゴザイマス、一昨日委員カラ上申ノ旨モ篤ト了承シタ、又今書面ナル即チ私ガ上申シタ事モ委細了承シタ、此模様ヲ以テ察シテ見レバ地方ノ情況ニ依テハ事情已ムヲ得ザル地方モアラウト思フ、之ニ対シテハ特例ヲ置クノ必要ガアルヤウニ認メタ、特例ヲ置クノ必要ガアルコトヲ既ニ認メタニ就テハ何ニトカ相当ノ取計ヒヲ致シマスデアラウト、斯ウ云フ御答デゴザイマス、ソレデ必ズ両三日ノ間ニ何ニトカ相当ノ改正若クハ追加セラレマスカ此二様、即チ昨日御決議ニナリマシタ如クニ一ツノ除外例ヲ設ケラレマスカ、若クハ全部ノ改正ヲ
 - 第22巻 p.856 -ページ画像 
致サレマスカ、其方法ハ何レニシテモ分リマセヌデゴザイマスケレドモ既ニ地方ノ情況已ムヲ得ナイ者ニ対シテ特例ヲ置クノ必要ガアルト云フコトヲ御認メニナツタ以上ハ、此二ツノ者何レカニ御処分ニナルコトヽ確信ヲシテ居リマス、必ズ何トカ取計ラウト云フ御答デゴザイマス、尤モ此御答ノ旨ハ聯合会ニ報告致シマスト云フコトモ申シテ置キマシテゴザイマス、左様ドウゾ御承知ヲ願ヒマス
○三十四番（大阪、法橋善作君）　私ハ唯今ノ御報告ニ対シテ一言述ベテ置キタイト思ヒマス、本問題ノ決議ニ就キマシテ一昨日以来委員長ノ非常ノ御骨折リニナツタコトハ殊ニ感謝ヲ致シマス、又本案ニ就キマシテハ農商務省モ今日ノ事情ニ依テ見マスレバ大ニ寛容サレタ模様ガゴザイマス、之ハ一ツハ農商務省ガ吾々商業者ニ対シテ厚キニ出タコトヽ思ヒマス、又一ツハ満場諸君ガ熱心ニ利害ノアル所ヲ適切ニ御審議ニナツタ結果ダラウト思ヒマス、之ハ実ニ吾々商工業者社会ノ為ニ聊カ慶賀スベキコトデアラウト思フ、就キマシテハ此新法ノ下ニ立ツテ組織致シマスニ対シテハ、農商務省ガ斯ノ如ク寛容サレル厚イ志同様、吾々モ又厚キ心ヲ以テ一般ニ之ヲ円満ニ施行シタナレバ、社会ガ商業社会ノ機関トシテ民力ノ現ハレタ所ヲ認メテ呉レルコトニナラウト思フ、随テ商工業者ニ対シテ帝国議会ヲ始メ政府ニ於テモ会議所ノ意向ト云フモノヲ以テ決定ヲスルヤウナコトニナラウト思フ、ドウカ今日ノ諸君ノ御熱誠ハ尚ホ全会議所ノ施行上ニ対シテモ御尽シアランコトヲ希望致シマス
　　○本巻明治三十二年十月十三日、同三十三年五月十九日ノ両条、並ニ本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十四年九月十五日、同年十一月七日、同三十五年四月十二日ノ各条参照。

法令全書　明治三五年上巻　　内閣印刷局編　刊
○農商務省令第十六号
商業会議所議員選挙権ニ関スル納税額及資本額又ハ財産ヲ目的トスル出資額ノ件左ノ通相定ム
　　明治三十五年六月二十七日
　　　　　　　　　　　　農商務大臣　男爵　平田東助
第一条　商業会議所法第九条第二項ニ依リ納税額ニ関スル制限ヲ左表ノ如ク定ム

　　　　営業税・鉱業税
　　　　　　　　　商業会議所所在地名　　　納税額
　　第一　　　東京　　　　　　　　　　　　四十円以上
　　第二　　　大阪　横浜　　　　　　　　　三十円以上
　　第三　　　京都　神戸　名古屋　　　　　二十円以上
　　第四　　　其ノ他　　　　　　　　　　　十円以上
　　　　取引所税
　　　　　　　　　商業会議所所在地名　　　納税額
　　第一　　　東京　大阪　横浜　　　　　　一万円以上
　　第二　　　京都　神戸　名古屋　　　　　三千円以上
　　第三　　　其ノ他　　　　　　　　　　　千円以上

 - 第22巻 p.857 -ページ画像 
第二条　商業会議所法第九条第四項ニ依リ納税額及法人ノ資本額又ハ財産ヲ目的トスル出資額ニ関スル制限ヲ左表ノ如ク定ム

　　　　　商業会議所所在地名　　資本額又ハ出資額　所得税
　　第一　　東京　　　　　　　　五十万円以上　　　三十円以上
　　第二　　大阪　　　　　　　　四十万円以上　　　二十円以上
　　第三　　横浜　　　　　　　　三十万円以上　　　二十円以上
　　第四　　京都　神戸　名古屋　二十万円以上　　　十五円以上
　　第五　　其ノ他　　　　　　　十万円以上　　　　十円以上

第三条　本令ハ商業会議所法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス

法令全書　明治三五年上巻　　内閣印刷局編　刊
○農商務省令第二十三号
明治三十五年農商務省令第十六号中左ノ通改正ス
　　明治三十五年十二月十六日
　　　　　　　　　　　　農商務大臣　男爵　平田東助
第二条ノ次ニ左ノ二条ヲ加ヘ、第三条ヲ第五条ニ改ム
第三条　地方ノ状況ニ依リ前二条ノ制限ニ依リ難キトキハ、定款ノ定ムル所ニ従ヒ、特ニ其ノ制限ヲ設クルコトヲ得
　商業会議所法第五十条ノ場合ニ於テハ前項ノ制限ハ議員ノ定数・選挙方法、其ノ他選挙ニ関スル必要ナル規定中ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第四条　商業会議所設立ノ際前条第一項ノ特例ヲ設ケムトスルトキハ商業会議所法施行規則第一条ノ手続ヲ為ス前予メ其ノ認可申請書ヲ農商務大臣ニ差出スヘシ
　　　　　附則
　本令ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス