デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治26年6月17日（1893年）

是ヨリ先明治十九年、我政府万国赤十字ニ関スル「ヂユネーブ条約」ニ加盟スルニ及ビ、当社ハ事業ヲ拡張シ、翌二十年日本赤十字社ト改称ス。是日、上野公園元第三回内国博覧会会場第五号館ニ於テ当社第七回総会催サレ、栄一、常議員ニ就任ス。明治三十七年十一月之ヲ辞ス。

日本赤十字社史稿　　第一七七―一七八頁　刊
明治廿六年六月第七回総会ヲ開ク、此総会ニ於テ第二回常議員改選ヲ行ヒ、尋テ理事員ノ互選ヲ為シ、現任幹事常議員蜂須賀侯爵・桜井子爵ハ単ニ常議員ニ当選シ、常議員毛利公爵・伊藤伯爵・千家男爵・大野直輔・男爵高崎五六ハ其任ヲ去リ、其他ハ再ヒ選ハレテ現任ヲ継続シ、社長・副社長ノ就任ハ廿三日勅許ヲ得タリ、新ニ当選ノ理事員・堂議員ハ左ノ如シ
　　幹事　常議員　特選幹事　平山成信
　　幹事　常議員　特選幹事　長崎省吾
　　常議員　　　　　　子爵　榎本武揚　　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　富田鉄之助　　白根専一
　　　　　　　　　　　　　　渡辺洪基

日本赤十字　　第一五号・第二八―三二頁　明治二六年六月
　　　　○第七回総会記事　（第一）
六月十七日、本社第七回総会を上野公園元博覧会第五号館に開設せり当日午前六時本社及び病院諸役員・東京府委員等参着、八時三十分皇族・大臣・親任官・各夫人・新聞記者等各招待員、各地方参会員・府下社員一同続々参集する者無慮三千名、此内地方参会者数百名あり
兼て仰出されし如く辱くも
皇后陛下行啓を賜はるべきのところ、御風気にあらせられ御見合仰出されたるにより、殊に室町典侍・北島権掌侍・香川御用掛の三女官を下し賜りたるは、誠に以て感佩の至りに堪へざるなり
此日は数日来の霖雨頓に晴れ、途上塵を揚げず草木緑を添へ、場の内外和気靄然たり
十時総裁小松宮殿下式場に臨まれ（奏楽）
陛下の令旨を伝へらる
　本日赤十字社第七回の総会に臨み各員を見るをよろこぶ、尚将来本社の事業益盛大ならんことを望む
夫より社長は、例に依り前年間の事務及び会計の概要並に本年一月以来の本社現況の報告をなせり（報告案は次回に載す）
○中略
　　　　第七回総会記事　（第二）
　去る十七日総裁殿下より上呈せられたる答辞は左の如し
　本日第七回総会に方り　陛下親臨優渥の令旨を賜ふ、誠に本社無上の光栄なり、本社は上　帝室の恩眷を辱うし、下国民の協賛ニ依り社業年を逐ひて旺盛に赴き、殊に本年に至りては加盟者著く其数を増し今や社員三万六千余人を有するに至れり、本社の忠愛の主旨全国に普及するの日蓋し遠きにあらざるべし、社員等益々相奮勉し
　陛下隆渥の恩眷に報ゆる所あらんとす、謹て奉答す
翌十八日午後一時、今回総会参列の為め上京の各地方委員・支部職員並東京府委員等を芝紅葉館に招待し、協議会を開きたり、会する者社長以下凡二百名、総裁殿下にも特に臨場の栄を賜はり、又宮内大臣・海軍大臣も臨席せられたり
 - 第24巻 p.439 -ページ画像 
社長先つ起て、社業拡張及び事務上に就き一場の演説をなし、各自互に諸般の談話をなし、且余興として松林伯円の講談二席を開き、畢りて庭前に於て一同の撮影をなし、夫より晩餐を供し、酒間交々胸襟を開て社業前途の隆盛を祈り、午後九時各歓を尽して散会せり
翌十九日午後二時、事務商議の為め更に東京及び各地方委員・支部役員総代を本社に招集し、参集する者五十余名、本社並に各地方より提出の意見書を議題となし、其外各自の考案を吐露して討議研究する所あり、監督官石黒軍医総監も臨席して、衛生部と本社との関係に付一場の演説ありたり、午後八時散会、是に於て本社第七回総会の用務全く修結し、地方職員も随意帰途に上ることゝなせり
　　　　○理事及常議員改撰
本社理事員及常議員改撰期に依り、過る十七日本社第七回総会に於て当撰の常議員中より社長以下の理事員を撰挙し、正副社長は総裁彰仁親王殿下より勅裁を仰ぎ、幹事は上奏を経て何れも上任せり、其人名左の如し
　　　　　　日本赤十字社理事員当撰人名
　　　　　　　　　　社長　　　　　子爵　佐野常民
　　　　　　　　　　副社長　　　　　　　花房義質
　　　　　　　　　　同　　　　　　子爵　大給恒
　　　　　　　　　　幹事　　　　　同　　松平乗承
　　　　　　　　　　同　　　　　　同　　松平信正
　　　　　　　　　　同　　　　　　　　　清水俊
　　　　　　　　　　同　　　　　　男爵　高崎正風
　　　　　　　　　　同　　　　　　　　　平山成信
　　　　　　　　　　同　　　　　　子爵　松平忠礼
　　　　　　　　　　同　　　　　　　　　長崎省吾
　　　　　　日本赤十字社常議員当撰人名
　　　　　侯爵　蜂須賀茂韶　　　　侯爵　鍋島直大
　　　　　男爵　小沢武雄　　　　　侯爵　池田章政
　　　　　　　　石黒忠悳　　　　　　　　橋本綱常
　　　　　　　　芳川顕正　　　　　子爵　榎本武揚
　　　　　　　　末松謙澄　　　　　侯爵　中山孝麿
　　　　　子爵　桜井忠興　　　　　　　　島地黙雷
　　　　　　　　黒田綱彦　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　渡辺洪基　　　　　　　　桜井能監
　　　　　　　　富田鉄之助　　　　　　　山中隣之助
　　　　　　　　白根専一　　　　　　　　石坂惟寛

青淵先生公私履歴台帳　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　○民間略歴（明治二十五年以後）
　　　　慈善其他公益ニ関スル社団及財団
一日本赤十字社評議員《（マヽ）》　卅七年十一月八日辞任確定

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