デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治40年8月（1907年）

是月ノ函館区火災及ビ東京府外一府五県ノ水害ニ
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際シ、栄一、罹災者ヘ金二百円賑恤ス。

青淵先生公私履歴台帳　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　賞典
同　○大正元年九月廿六日　明治四十年七・八月函館区火災及東京府外一府五県水害ノ際、罹災窮民ヘ金弐百円賑恤候段奇特ニ付為其賞木杯壱組下賜候事　同　○賞勲局総裁

中外商業新報　　第七七三六号　明治四〇年八月二七日
　　　　○各地水害公報
△群馬県（廿五日午前七時一分同県知事発）利根川出水、六時一丈猶ほ増加す△同上（二十五日午前八時四十五分）二十三日来の暴風雨にて県下の諸川増水し、家屋・鉄路・橋梁の浸水決潰流失及び人命の死傷等あり、碓氷・板野・北甘楽の三郡被害多し、風雨未だ止まず専ら警戒中△長野県（二十四日午後四時五十分同県知事発）昨二十三日来の強雨にて筑摩川其他各川出水し、国道及鉄道にも被損あり、信越線汽車不通となる、委細調査中△同上（廿五日午後六時）県下各川出水山崩れ、家屋流失、堤防決潰、国県道・鉄道破壊、信越線尚ほ不通、電話不通の箇所多く、上伊那郡負傷者一・馬流失一、東筑摩郡死者三諏訪郡負傷者一、委細書面△茨城県（二十四日午後三時四十分同県知事発）一昨廿二日来の強雨にて渡良瀬川は阿久土地先に於て一丈二尺五寸、利根川は中田地先に於て一丈三尺三寸に達し、猶増水の見込なり△同上（廿五日午前十時四十分）渡良瀬川は阿久土地先一丈九尺八寸、利根川は中田地先一丈九尺二寸、サカイ地先一丈八尺五寸、トリデ地先一丈三尺一寸五分に達し、猶増水しつゝあり、又ノツタリの堤防内側約廿間亀裂を生じ極めて危険に付き其手当中なり、尚鬼怒川はリウドウ地先一丈五尺五寸、コカイ川は三ツ街道地先七尺八寸五分に達し、猶増水中なり△同上（廿五日午後二時）利根川は中田にて二十尺、渡良瀬川はアクトにて二十尺七寸に達し、他は増水しつゝあるも勢力稍緩慢となれり△同上（廿五日午後六時）利根川上流は対岸堤防決潰ありし為め幾分減水を呈したるも、下流は漸次増水し石斗地先十七尺七寸、布川地先十七尺四寸、マナイタ地先十一尺五寸、尚ほ鬼怒川ホソウド地先十七尺に達し、極力防禦中△大阪府（二十五日午前四時五十四分同府知事発）府下新淀川増水最高二丈二尺、橋梁の流失せしもの新淀川三十六・ケンヤ川一・伝法川一・人畜死傷なし△栃木県（二十四日午後九時五十八分同県知事発）昨日来暴風雨今猶止まざるも、午後七時までは日光及塩原御用邸には異常なし△同上（廿四日午後八時廿四分）昨廿三日来暴風今猶止まざる為県内の河川は何れも増水し大谷川は日光にて六尺五寸、鬼怒川は大内村にて七尺、渡良瀬川は谷中にて一丈五尺、橋梁の流失、浸水地多小之れあるを以て警戒中なり、足尾にて水防中溺死せし男一人あり△同上（二十五日午前六時廿分）天候は猶不穏、足尾に通ずる日光中宮ヂソウリ道の橋は流失、或は山岳崩壊の為、下層道を除く外交通杜絶せり△同上（廿五日午前
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十一時十分）天候未回復せず、日光・塩原の御用邸共に午前十時迄には異状なし△同上（廿五日午後一時）昨報後にて河川益膨脹し大谷川は九尺となり、日光製麻会社の石堤を破壊し其附近の人家約廿戸を流失せり、鬼怒川は氏宗にて十一尺、渡良瀬川は山部村の堤防百十間余破壊あるも人畜死傷なし、道路の交通杜絶せる者尠からず△同上（廿六日午前一時）今回の水害は重に大谷、鬼怒・渡良瀬・思川沿岸にして、前報後の被害は上都賀郡の日光にて流失家屋十一戸・破壊十一、足尾は道路の破壊百間余、足利郡にては破堤三、阿蘇郡にては同じく十九、下都賀郡同じく五ケ所にして、落橋及浸水家屋少なからず、其他の川筋にても被害ありしも天候は漸次恢復しつゝあり、日光及中宮祠附近風水害ありしも外国人一同無事△埼玉県（二十四日午後十時四十分同県知事発）荒川非常の出水にて、午後六時サヤタ量水標一丈二尺四寸五分に達し、三十五年の水よりも高く、熊谷以下の堤防は越水箇所多く目下全力を挙げて防備中なるも、危険は刻々に迫りつゝあり△同上（廿五日午前三時七分）荒川通はサヤタ量水標二十四日午後六時一丈二尺四寸五分増水止み、大石村破堤の箇所あり、他にも危険の個処多し、利根川通り朝日村山王通り量水標二十四日午後十時一丈三尺八寸増水止み、栗橋量水標廿五日午時零時一丈六尺四寸猶増水の見込△同上（廿五日午後二時）荒川の出水は非常の災害を来せり、沿岸挙げて水防に尽力せしも熊谷下流の堤防は殆んど総浸水の有様にて、水防非常に困難なり、昨午後六時先づ横見領四間の堤防東吉見村地先に於て決潰し、西吉見村の一部を余す外全部浸水、次に川島領六ケ村の堤防は小見野村地先に於て決潰し、其他川田谷村・大石村・国宮村植水村・大久保村等に於て、堤防何れも決潰し、被害多大にして光景惨澹たり、クゲ村・吹上村・小谷村附近は頗る危険なるも目下全力を挙げ防禦中、利根川筋は目下の処破堤の報に接せず△同上（廿五日午後三時）荒川水源秩父の雨量は、廿二日午後二時より廿三日午前六時迄八四・八、同時より廿四日午前六時迄二一八・三、同時より廿五日午前六時迄三一四・二、同時より同十時迄二六・七、計六四四にして未曾有の雨量なり△同上（廿五日午前三時）荒川通佐谷田量水標廿四日午後六時十二尺四寸五分増し止まり、大石村は破堤の箇所あり危険の所多し、利根川通旭村山王堂量水標二十四日午後十時十三尺八寸増し止まり、栗橋量水標廿五日午前零時十六尺四寸尚増水の見込△同上（廿五日午後七時）利根川旭村山王堂水量昨午後十一時十三尺八寸、増し止まりたり、今午後二時十二尺四寸に減じ、同川筋利島村麦倉地先今午後〇時半約百間破堤し原道村地先も堤防溢水を始め目下防禦中其他下流権現堂川・江戸川筋も、危険の場所あるを以て警戒中△同上（廿六日午前零時）出水被害本日午後九時迄に調査したる外、堤防決潰約十二ケ所、危険に陥りたる箇所九十五ケ所、被害町村約八十、浸水家屋約一万戸、目下各所に救護所を設け救助中、岩石崩壊の為潰家八戸・死傷約四十二名△山梨県（廿四日午後四時五十七分同県知事発）西八代郡上野原地先笛吹川堤防四個所に九十間決潰し、浸水家屋二十五戸、鰍沢町富士通り二丈二尺増水、浸水家屋五百戸、田畑の浸水四余町歩、避難戸数百八十戸、人畜死傷なし、甲州街道伊沢口幸運橋流
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失し罹災民救護中△静岡県（廿四日午後一時三十九分同県知事発）県下伊豆鉄道線は昨二十四日の夜来強雨の為め大場駅以南線路上約五寸溢水し今朝六時より汽車不通となり、三島・沼津間の電車も昨夜十時より線路に溢水の為め運転中止せり△同上（二十四日午後九時五十七分）県下駿東郡足柄村竹の下附近に於て豪雨の為め鉄道線路破壊し、午後四時三十九分御殿場発東行列車より不通となれり、熱海人車鉄道線路中、神奈川県に属する海岸に破損の箇所を生じ是れ亦不通になれり、沼津町附近にて多数の浸水家屋と落橋一あり、目下専ら救護警戒中△同上（廿五日午前十時廿七分）昨日来強雨の為め県下富士川出水一丈七尺五寸・阿部川九尺・大井川八尺六寸・天竜川五尺三寸・狩野川一丈四尺に達し其他諸川増水被害目下取調中なり△同上（廿五日午前七時）昨日報告後富士川出水十九尺となり、・鉄橋チヨ塚にて百間及び尚ほ流末にて五十間堤防決潰、大井川九尺二寸となり堤防四十間破壊す、カノ川十六尺となり沼津永代橋流失、其他諸川共被害尠なからず△同上（廿五日午前十一時）富士川増水の為富士郡岩松村地先鉄橋東側堤防破壊し、今朝午前七時三十分岩淵駅発東行貨物列車より同駅鈴川間汽車不通△京都府（廿五日午前七時同府知事発）一昨日来の強雨にて府下諸川は何れも増水し、堤防決潰の虞ある場所尠なからさるに付専ら警戒中、昨夜来木津川は増水一丈七尺に及ひ瓶原村に架設せし大橋を流失し、ツイデ川岸の家屋一棟をも流失し、附近の人民避難せしもの少なからず、人畜には死傷なし、淀川も今朝来逆流し其沿岸伏見・淀橋・本野三町に於て浸水家屋一二〇〇戸許、水勢未減退の模様なし△神奈川県（廿四日午後二時十分同県知事発）相摸川堤防崩潰して厚木町全部浸水せり△同上（廿四日午後三時）馬入川堤防崩潰し平塚町浸水せり△同上（廿四日午後九時三十分）多摩川堤防川崎附近にて二個処破壊、東京・横浜間汽車不通△同上（廿五日午後九時三十分）小田原町早川決潰、家屋浸水△同上（廿五日午前七時八分）川崎町及馬入川全部浸水、流失家屋多し、横須賀線の外交通機関杜絶の為め其他判明せず、横浜は水道も断水せり△同上（廿五日午後零時三十分）箱根早川の橋流失、堤防破壊し、家屋浸水、危険の所あり、食料は小田原より供給す、小田原沿海は波荒れ堤防破壊の虞あり警戒中、同地方御用邸は被害なし、酒匂川は九尺出水、酒匂橋危し

風俗画報　　第三七〇号・第四一―四二頁　明治四一年九月
　　　　○各地水害表（九月三日内務省調）