デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治28年3月（1895年）

是月海軍予備黌商議員制設ケラレ、栄一商議員ニ推薦セラル。次イデ三十三年四月、当校私立海城学校ト改称セラルルヤ、引続キ之ガ商議員トナリ、三十九年九月財団法人海城学校設立ノ直前ニ及ブ。

青淵先生公私履歴台帳　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　○民間略歴（明治二十五年以後）
　　　　慈善其他公益ニ関スル社団及財団
一、海城学校商議員
　　以上明治三十三年五月十日調
　　　○「職任カード」ニ拠レバ「海軍予備黌商議員。明治二八年三月――同三三年四月。海城学校商議員。明治三三年四月――同三九年九月」トァリ、財団法人海城学校商議員ハ「明治三九年九月――現在。」トアルヲ抹殺シテ、「商議員ハ自然消滅セルガ如シ。」ト記セリ。

海城学校海城中学沿革　同校編　　第一―一〇頁　昭和二年三月刊
　　　　　　緒言
　明治二十四年十一月、我が先憂の士海軍少佐古賀喜三郎先生は帝国国防上海軍力の充実未だ完からざるものあるを慨き、其の充実を図らんには海国的人材を養成して国家当面の急務に適応せしむるの緊切なるを看取し、自ら進んで官を辞し私財を擲つて市内麹町区元園町二丁目四番地に私立海軍予備校を創設し、海軍兵学校・同機関学校・同軍医学校・同経理学校其の他海事に関する諸学校に入学志望の青年を募集し以て準備教育を実施せり、当時先生の風采を想望し門下に集る者忽ち二百名を算するに至れり、是れ実に本校の前身なりとす、先生思へらく、苟も軍人又は海員たらんとするものは幼少時より其の思想を涵養するに非らざれば、真に優秀なる人材を得る能はずと、乃ち範を海軍兵学校に採り智徳併進を教育の綱領とし、学生の言語・動作・規律等に細心の注意を払ひ、他日海国男児の素養に欠如するなからんことを慮り、幾多の優良教師を招聘し率先して之が範を示したり、是を以て校風大に振ひ、朝野有識者の認識する所となり、続々後援を与へられ、校運の隆盛を見るに至れり、爾来年次を経るに随ひ校運の隆替なきにしも非らざれば、以下順序を追ひ其の次第を明記せんと欲す。
　　　　沿革
明治二十四年十一月　　東京市麹町区元園町二丁目四番地ニ私立海軍予備校ヲ設立シ、海軍諸学校ニ入ラント欲スル者ニ緊要ナル学科ヲ教授シ、精神教育ヲ励行ス（生徒数二百名）
○中略
明治二十八年三月　　本校ニ商議員制ヲ設ケ、左ノ名望家ヲ商議員ニ
 - 第27巻 p.40 -ページ画像 
推薦ス
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（いろは順）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大石正巳
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　片岡健吉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河島醇
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　川崎八右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加藤正義
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高田早苗
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　田中経一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　荘田平五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楠本正隆
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　児玉利国
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　男爵　船越衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　赤松則良
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　安藤則命
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々友房
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三浦安
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水野太一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　子爵　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　島田三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　男爵　杉渓言長
○中略
明治三十二年五月　　改正中学校令（明治三十二年二月七日勅令第二十八号ヲ以テ中学校令公布）ニ依リ、海軍予備校内ニ日比谷中学校設置ノ件、文部大臣ヨリ認可セラル、依テ海軍予備校生徒ニシテ日比谷中学校ニ入ラントスルモノニハ、文部省令第三十三号ニ依リ試験ヲ行ヒ相当級ニ編入セリ
爾後海軍予備校ハ、日比谷中学校卒業者又ハ他ノ中学校卒業者ニシテ海軍諸学校又ハ東京商船学校入学志願者ノ補習教育ヲ施スコトトセリ
○中略
明治三十三年四月十日　　海軍予備校ヲ、私立海城学校ト改称ス
○中略
明治三十九年三月末日　　私立日比谷中学校閉鎖、同時私立海城中学校設立ヲ文部大臣ヨリ認可セラル
明治三十九年九月十四日　　文部大臣ヨリ財団法人海城学校定款（寄附行為書及ビ解散後ノ財産帰属者ノ件）認可セラレ、海城中学校ヲ附属ス（明治三十九年十月四日登記ヲ了ス）
　因ニ記ス、海城学校ヲ永遠ニ保存シ且ツ其施設ヲ改善スル為メ、財団法人ニ改メ、設立者古賀喜三郎名義ノ動産・不動産ノ全部ヲ、法人ニ帰属セシメ、之レガ登記ヲ了ス
○中略
大正十五年二月　　政府施行ノ区劃整理ノ為メ、府下豊多摩郡大久保町所在国有地ニ移転ノ命令ヲ受ケ、直チニ其新築工事ニ着手シ、昭和二年三月竣工、移転ヲ了ス