デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

5章 学術及ビ其他ノ文化事業
3節 編纂事業
4款 尾高惇忠伝
■綱文

第27巻 p.494-495(DK270134k) ページ画像

明治42年4月18日(1909年)

是ヨリ先、栄一ガ口述シ、編纂セシメタル尾高惇忠ノ伝記「藍香翁」成ル。是日、藍香翁頌徳碑除幕式ニ当リ、之ヲ其発起人及ビ知友ニ配布ス。次イデ五月八日、建碑及ビ伝記編纂関係者ヲ王子邸ニ招ジテ慰労会ヲ催ス。


■資料

藍香翁 塚原蓼洲著 序 明治四二年三月刊 【渋沢栄一識】(DK270134k-0001)
第27巻 p.494 ページ画像

藍香翁 塚原蓼洲著  序 明治四二年三月刊
藍香尾高翁の伝記成るを告く、余何そ之に序せさるを得むや、蓋し余の翁と生るゝに郷貫を同ふし、繋るに戚族を以てし、而して齢に於て余の兄たり、学に於て余の師たり、余の学を修め人と成るに至るもの実に翁の薫陶に依らすむはあらす、是を以て余深く翁を敬愛し、終始悖らすして管鮑の交を全ふしたるもの固より偶然にあらさるなり、故に又翁の性行・履歴を詳かにし、其事蹟・逸話を知るものも亦余に加ふるなきを自信す、夫れ翁は克謹己れを持して汎く衆を愛し、生産作業の旁ら深く学に志し、晴耕雨読常に寸陰を惜み、躬行実践して浮華の名を求めす、赤心を披瀝して子弟後進を誘導し、而して謙遜夸らす恬澹自ら居る、真に古賢人の風ありと謂ふへし、之を以て翁を追慕するもの前に胥謀り醵金して以て頌徳の碑を建設し、尚其経歴を詳かにして伝記を作り、之を世に公にし遠近翁を知るものゝ為に永く其音容に接する如き感を与へ、又以て後進勤行の一助に供せむと欲し、則余に求むるに翁の生涯を説話するを以てす、余其篤志を嘉みし、数回を重ねて記憶する所を縷述し、其筆記を以て蓼洲塚原君に属して此伝記を成すを得たり、鄒臾の言に曰く、人を愛する者は人亦之を愛し、人を敬するものは人亦之を敬すと、此挙の為に謂ふ者の如し、之を序と為す
  明治戊申十月
                   渋沢栄一識


渋沢栄一 日記 明治四〇年(DK270134k-0002)
第27巻 p.494 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四〇年     (渋沢子爵家所蔵)
五月六日 大風 暖             起床七時 就蓐十二時
○上略 午後四時帰宿シ、尾高藍香伝記編纂ノ事ニ関シ塚原氏ト談話シ、同建碑ノ事ヲ三島氏ヘ托ス ○下略


渋沢栄一 日記 明治四一年(DK270134k-0003)
第27巻 p.494 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四一年     (渋沢子爵家所蔵)
五月十八日 晴 暖
○上略 午後三時兜町ニ抵リ、尾高藍香翁建碑ノ為メ、渋沢喜作・尾高父子・塚原靖氏等ト会合シ往事ヲ談シ藍香翁ノ伝記編纂ノ事ヲ談ス ○下略

 - 第27巻 p.495 -ページ画像 

渋沢栄一 日記 明治四一年(DK270134k-0004)
第27巻 p.495 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四一年     (渋沢子爵家所蔵)
十月三日 半晴 涼
○上略 朝飧ヲ食シ後藍香翁伝記ノ序文ヲ浄書ス ○下略


渋沢栄一 日記 明治四二年(DK270134k-0005)
第27巻 p.495 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四二年     (渋沢子爵家所蔵)
三月十六日 晴 寒
○上略 渋沢市郎・岡部五郎・尾高幸五郎・増田明六諸氏来訪ス、藍香翁建碑除幕式ノ時日及手続ヲ談ス
○下略
三月十七日 雪 寒
○上略 藍香翁伝記成ルヲ以テ之ヲ一読シテ、頗ル懐旧ノ感ヲ生ス


竜門雑誌 第二五二号・第八八頁 明治四二年五月 ○尾高藍香翁伝記(DK270134k-0006)
第27巻 p.495 ページ画像

竜門雑誌  第二五二号・第八八頁 明治四二年五月
○尾高藍香翁伝記 青淵先生には予て尾高藍香翁の伝記を編纂せんことを図られ、爾来屡々繁劇なる事務の余暇を以て速記者を自邸に招き自ら翁に関する事績を談話して之を速記せしめ、或は翁生前の知己及び親戚等の談話を速記収録せしめ、之を塚原靖氏に託して編纂せしめられたるもの名つけて藍香翁と云ふ、玆年四月十八日翁の頌徳碑除幕式の挙行せらるゝに当り、先生には千数百部を製して之を其発起人及知友の間に送与せられたりと云ふ


(八十島親徳) 日録 明治四二年(DK270134k-0007)
第27巻 p.495 ページ画像

(八十島親徳) 日録  明治四二年   (八十島親義氏所蔵)
四月十八日 晴 日曜
今日ハ埼玉県手計鹿島神社境内ニ於テ、尾高藍香翁頌徳碑ノ除幕式執行セラル ○中略 殊ニ男爵ガ別ニ心配シテ編纂セラレタル塚原渋柿執筆藍香翁伝記モ、本日一同ヘ配布セラル ○下略


渋沢栄一 日記 明治四二年(DK270134k-0008)
第27巻 p.495 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四二年     (渋沢子爵家所蔵)
五月八日 曇 暖
○上略 四時王子ニ帰宿シ ○中略 三島中洲・塚原靖其他諸氏来会ス、藍香翁建碑及伝記編纂ニ付テ尽力セシ人々ニ対スル慰労会ヲ開キタルナリ、来客ト共ニ庭園ヲ散歩シ、六時ヨリ饗宴ヲ催フシ、数番ノ余興アリ、各歓ヲ尽シ十時過散会ス
   ○本資料第二十六巻所収「修養団体」中「竜門社」明治三十四年一月二十九日ノ条及ビ第二十八巻所収「記念事業」中「尾高惇忠頌徳碑」ノ条参照。