デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治8年12月21日（1875年）

当会議所、会議規則及ビ行務科章程ヲ定メテ議事ト行務トノ分界ヲ立テントシ、是月四日之ヲ東京府知事ニ稟請シ、七日認可セラル。是日栄一、選バレテ当会議所会頭兼行務科頭取トナル。

渋沢栄一書翰　　大久保一翁宛　（明治八年）一一月三〇日　　（大久保子爵家所蔵）
奉啓愈御清穆奉恭賀候、偖過頃度々奉伺候会議所事務整頓之順序、先日御教示之次第モ御坐候ニ付、議事規則・行務章程等も可成丈文字を穏当ニ引直し、只通常之取扱を少々改正整理せしむる迄之目的ニいたし、右規則丈ハ一応御庁之御許允を相願置申度ニ付、別紙草案不取敢呈電覧候、右ニて不都合も無御坐候ハヽ、不日会議所より伺出可申候間早々御許允被下度候、将又此改正ニ付何か民権家之議論を来し候も不好事ニ付、新聞紙掲載等ハ、追而諸事務整頓之報告書又ハ会計表抔のミニいたし、此改正規則抔ハ掛り一同ヘ相示し候外他見せさる愚案ニ御坐候
又新撰人員之義も田中次郎右衛門以下四・五名ハ未タ同意之回答無之
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候得共、是も小生其店之重立候ものへ丁寧相談いたし候処、大概同意之由ニ付尚追而増員申上候積、差向別紙之同意之者ハ新任御聞届被下度候、但是も追而表立伺書差上可申候、右之都合ニ付弥別紙書類ニて御差支無御坐候ハヽ乍憚其旨御指揮被下度、然ル上ハ議所《（会脱カ）》より表向書面差上則同様之書類ニ御坐候事改而一同之会議を開き、向来之手続ハ総而此度創立之成規ニより取斗申度奉存候、右拝趨可申上之処、兼而口頭申上置候義ニ付欠敬なから書中奉得芳意候、何分之御指図奉願候　匆々頓首
　　十一月三十日　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　大久保一翁様
　　　○別紙草案ハ次掲ノ「東京会議所規則附行務課章程」ノ草稿ナランモ、欠除セリ。

東京会議所規則附行務課章程　　　　　　（東京府文庫所蔵）
当会議所之儀ニ付テハ、本年六月中掛一同協議之上、真成之民会ニ更正仕度段建言仕候処、御趣意有之、未御制可無之、因テ先ツ従前ノ慣習ニヨリ引続事務調理罷在候得共、兼テ具陳之通会議ノ名有テ議事ノ実無之、私共之義務難相立、深痛心仕候、就テハ今般更ニ当会議所ノ事務調理イタシ、改テ議事ト行務トノ分界ヲ立、其議事ニ渉リ候モノヲ会議ニ附シ、従前取扱ヒ来候事務及ヒ向後相生候事共迄、都テ真成之議事ヲ設ケ決按ニヨリテ取扱申度、且又議事之都合ニヨリテハ、各区々戸長ヲモ出会為致、広ク府下人民一般ノ便益ヲ協謀仕度、依而別紙会議規則並行務科章程草案取調、供撿閲候間、至急御允裁被成下度奉存候、此段上陳仕候也
　　明治八年十二月四日　　　　　　　　東京会議所公印
　　　　東京府知事　大久保一翁殿
割印書面規則改正並議事役人撰申出之趣聞置候、尤ケ条中議事役名々エ辞令渡方者相改、其掛於テ達方取計、人撰相改候節ニ可届出事
　　明治八年十二月七日　　　東京府知事　大久保一翁公印
一今般別紙ヲ以上陳仕候通リ御允裁相成候ハヽ、其施為之順序ハ左ノ通リ取扱申度奉存候
一議事役之儀ハ従前之頭取掛リノ外、別紙人名之通相増申度ニ付、各新任ノ者ヘハ辞令御下ケ被下度候事
一会議規則ハ壱本ヲ御府ヘ留メ、壱本ハ御裁印之上御渡被下度候事
一行務科章程ハ御承認之為メ、壱本御府ヘ御留メ被下度候事
一御允裁之後ハ直ニ会議ヲ開キ、会頭・副会頭ヲ撰任シ、且行務科頭取・取締役其外ヲモ撰定シ、各其名前書ヲ添御届可仕候事
一従前会議所中ノ役員ニテ不用之分ハ夫々相廃シ、可成冗費ヲ減シ、且ツ向来ハ規則ニヨリテ其責任ヲ定メ可申事
一会議規則・行務科章程ハ、御允裁之日ヨリ速ニ取行可申事
一此度撰任之議事役中退免ヲ乞フ者有之候ハヽ、更ニ相応之者ヲ撰挙シテ塡員イタシ、速ニ御届可申事
一会計表及事務考課状等ハ追々雛形取調可申上候、尤諸牒簿ハ本式之簿記法ニ改正可仕候事
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一会計表及事務考課状ハ、毎月又ハ毎半季ニ新聞紙ヲ以テ一般ニ公告可仕候事
一会議ノ節、会頭・行務科頭取之役印其他御府上申書之体裁等モ夫々雛形ヲ定メ、向来毎事成規ヲ設ケ、不都合ノ義無之様可仕候事
右ハ此度上陳之件々御允裁之上ハ、施為之手順差向候処ニ御座候、尚追々取調高旨ヲ仰キ百事調整ヲ得候様可仕候ニ付、何卒速ニ御沙汰御座候様奉願候也
　　明治八年十二月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京会議所
　　　　東京府知事　大久保一翁殿
（別紙）
東京会議所規則緒言
東京会議所ハ明治五年八月中府庁ノ任撰ヲ以テ東京市中ニ就テ富有ノ者若干員ヲ擢抜シ、仮ニ市民ノ総代人ト為シ、旧政府中ヨリ伝来セシ市中ニ積蓄スル金穀ノ事ヲ管掌セシメ、而シテ其会同ノ場所ハ営繕会議所ノ名ヲ下シ、市街・道路・橋梁修築ノ事務ヲ弁理セシム、然リ而シテ其名ノ唯修築ノ一事ニ止リ、市民ノ便益ヲ謀ルニ由ナキヲ以テ、当時官撰ノ委員相謀リテ更ニ一歩ヲ進メ府下一般ノ利害得失ヲ衆議セント、之ヲ府庁ヘ申請シ、初テ東京会議所タルヲ得タリ、然リトイヘトモ今日ノ現状ヲ察スルニ会議ノ名アツテ議事ノ実ナク、行務ノ順序大ニ建設ノ本旨ニ背馳スルヲ以テ、本年六月中現在委員会同商議シ、議事真成ノ宏図ヲ成サント再ヒ府庁ヘ稟請ス、然リト雖モ未其許可ヲ得サレハ、現今各府県ノ間適宜ヲ以テ実際施行スル処ノ区会或ハ町村会ノ議事則等ヲ酌量シ、更ニ会議所ノ面目ヲ改メ、従前ヨリ調理スル処ノ事項ハ之ヲ行務科ニ付シテ議事ト剖判シ、而シテ此議場ノ如キハ更ニ若干ノ委員ヲ増加シ、常ニ日ヲ刻シテ真成ノ会議ヲ開キ、其決案ヲ以テ百般ノ事務ヲ処置シ、名実ノ相悖戻セサル為メ、玆ニ此規則ヲ調成シ府庁ノ允裁ヲ得、漸次府下真成ノ民会ヲ起立スルノ楷梯ト為ント欲ス

東京会議所規則
　　　　第一章
　　　　　　会議ノ体裁
○第一条
凡事ノ公議ニ付スヘキモノハ常式・臨時ノ会議ヲ開キ、其決按ニヨリテ之ヲ処置シ、以テ議事ノ眼目ヲ存シ、而シテ現務ノ施為ハ之ヲ行務科ニ属シ、議事ト行務ト相剖判シテ其規程ヲ明瞭ナラシム
○第二条
此議場ハ従前ノ慣法ヲ継キ、管理スル処ノ事務ニ於テ之ヲ公議ニ付シ処置スヘキモノ及将来相生スル条款ヲ、常式・臨時ノ会議ニ付シ、其決案ヲ以テ処分ヲ判定ス
○第三条
行務ニ属スル事項ハ、此会議ノ公撰ヲ以テ議事役又ハ其他ノ者ヨリ相当ノ人員ヲ撰任シ、議事ノ決案ニ従テ行務ノ権限ヲ定メ、其事務ヲ担
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当セシメ、且其施為ノ実況ヲ報知セシム
　但シ行務ニ属スル役員ノ月給等ハ公議ヲ以テ定ムヘシ
○第四条
此議場ハ闔市ノ公益ヲ謀リ、妨害ヲ除キ、人民ヲシテ営業ノ間益其幸福ヲ享ケ、且官府ノ布令ヲ体認シテ、上下ノ情相暢達スルヲ以テ大旨トス
○第五条
此議事ハ東京市街六大区ノ関カル所ニシテ、朱引外各区ニ干渉セス、然シテ其墓地事務ノ如キハ独朱引外ニ有ルトイヘトモ、向ニ府庁ノ命ニヨリ之ヲ調理スレハナリ
　　　　第二章
　　　　　　議員ノ職掌
○第六条
此議事役ハ二十名ニ下ラス三十名ニ上ラサルヘシ、而シテ此議事ニ於テハ府下六大区中ノ代議人ト見做スヘシ、且会頭・副会頭ハ議事役中ヨリ一同ノ公撰ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
○第七条
公議ヲ以テ撰任スル処ノ議事役中ニ於テ、退免等ノモノアリテ欠員スル時ハ、更ニ一同ノ公撰ヲ以テ之ヲ定メ府庁ヘ具陳シテ塡員スヘシ
○第八条
会頭・副会頭・議事役トモ在任ノ時間ハ一ケ年ヲ限トシ、満任ノ節ハ一同ノ投票ヲ以テ勤続又ハ退免ヲ定ムヘシ、尤モ此投票ニテ退免ノモノアレハ、更ニ勤続ノ者ノ投票ヲ以テ新任ノ者ヲ撰挙シテ欠員ヲ塡スヘシ
　但シ行務科ノ役員モ同例タルヘシ
○第九条
会頭・副会頭ハ直ニ府庁ニ至リ、知事ニ対シ其議スル処ノ論説ヲ明弁スルヲ得ル
　但シ其事柄ニヨリテハ、議事役又ハ其他ノモノヲシテ府庁ニ至リ、事由ヲ具申セシムルヲ得ベシ
○第十条
副会頭ハ会頭欠員又ハ欠席スル時ハ其権任ヲ代理スルヲ得ル
○第十一条
議事行務ノ諸役員ヘハ上任ノ節書式ノ辞令ヲ渡シ、其請書ヲ出サシムヘシ
○第十二条
議事役ハ府下六大区内ニ入籍又ハ寄留シテ満一年ヲ経タル平民中、品行篤実ニシテ区内人民ノ名望ヲ有シ、且家産アルモノヲ撰挙スヘシ、若破産身代限ノ処分ヲ受ケタルモノ、並二十五年未満ノモノハ之ヲ採挙スヘカラス
○第十三条
会頭ハ此議場ニ於テ要用ナル録事・会計役・書記生等ヲ撰任シ、其職務ヲ分課シ且其進退ヲ専決スルヲ得ル
○第十四条
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録事・会計役・書記等ハ会頭・副会頭ノ指麾ニ従ヒ、場中記録・会計ノ事務ヲ弁理スヘシ
○十五条
議事ノ条款ニヨリ府下六大区中ノ区戸長ヲシテ出席ヲ要シ、其論説ヲ聴テ議事ノ参考トスル事アルヘシ
○第十六条
然レトモ此議場ニ於テハ区戸長ノ論説ヲ以テ、議事投票ノ中ヘ加フヘカラス
　　　　第三章
　　　　　　議事ノ権限
○第十七条
此議場ニ於テ議スルモノヲ以テ凡三科ニ部分ス、其一ハ府庁ノ顧問ニ答ヘ、其二ハ行務ノ立案ニ係リ、其三ハ議事役又ハ府下人民ノ建議ニ出ツ、而シテ府庁ノ顧問ニ答議スルモノ及議事役又ハ人民ノ建議ニ出ル者ハ、只其所見ヲ議定シテ之ヲ府庁ヘ具陳スル迄ニテ其採否ヲ要スルノ権ナシ、行務ノ立案ニ係ルモノハ其決議ヲ行務科ニ付シテ之ヲ処置セシム
○第十八条
議事ノ小ナルモノハ会頭ノ考案ヲ以テ其要旨ヲ書載シ、議事役一同ヘ回送シテ其決案ヲ取リテ、殊ニ会議ヲ要セザル事有ヘシ
○第十九条
会議ノ都合ニヨリ諸規則ヲ草定シ、諸法案ヲ調理スル等ノ事アレハ、会頭ノ考案ヲ以テ議事役中ノ若干員ヲ命シ、別ニ小会議ヲ開カシメ便宜其調整ヲ為シ、而シテ之ヲ一般ノ会議ニ付スル事有ヘシ
○第二十条
凡議決ノ条件ハ会頭其席ニ於テ決議ノ趣意ヲ議事役一同ヘ公示シ、其原書ニハ決印ヲ鈐シテ録事ニ付シ格護セシム
○第二十一条
議事役ハ既ニ決議シタル条款ノ是非ヲ論スヘカラス、又己レ同説ナラサルヲ以テ其決議ノ趣意ニ違背スヘカラス
○第二十二条
会頭若シ議事ニ於テ其建説ヲ要スル時ハ、副会頭又ハ議事役中ヨリ当席限リ更ニ会頭ヲ命シ、己レ議事役ノ席ニ加リ論弁スル事有ヘシ
○第二十三条
行務ノ立案ヨリ起ル議目ハ当分左ノ如シ
　道路修築ノ事務
　瓦斯街灯建築ノ事務
　商法講習所ノ事務
　会議所附属金銀出納ノ事務
　会議所附属地販売ノ事務
　養育院ノ事務
　墓地取扱ノ事務
　　但シ追テ此行務ノ事項増加スレハ、之ヲ記入スル事勿論タルヘシ
○第二十四条
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此行務ニ属スル事項ヨリシテ公議ヲ要スル条款ハ、主任ヨリ之ヲ立案スヘシ、而シテ其公議ヲ経ヘキ分界ハ行務科章程中ニ詳記ス
○第二十五条
議事役ノ立案又ハ人民ノ建議ヨリ起ルモノハ、府下民事上ノ利害得失ニ関係スル条款ニ限ルヘシ
○第二十六条
府下六大区内ニ在籍及寄留ノ者此市会ニ建議スル時ハ、会頭・副会頭ハ之ヲ撿按シ、府下ノ利害ニ係ルモノハ之ヲ採取シテ会議ニ附スヘシ若シ其一己ノ願請ニ出ルモノ又ハ法制・型典等ノ類ニテ此議場ノ干与セサル事ナレハ其旨ヲ垂示シ之ヲ本人ニ返付ス
○第二十七条
議事ノ条款ニヨリテ公告ヲ要スル件ハ、会頭ノ考案ヲ以テ之ヲ新聞紙ニ附スル事アルヘシ、尤モ此会議所所属ノ金銀会計表及事務ノ考課状ノ類ハ、其類ヲ別テ常ニ新聞紙ヲ以テ公告スヘシ
　　　　第四章
　　　　　　議事ノ規則
○第二十八条
此議事ハ常式・臨時会議ノ二類ニ分ツ、而シテ常式会議ハ、毎月二次一日十六日ノ日ヲ以テス、臨時会議ハ、会頭ノ考按ヲ以テ其議事ノ緩急ヲ計リ之ヲ開閉スヘシ
○第二十九条
定式・臨時トモ議事開場ノ時間ハ、毎会午後一時ヨリ五時迄ヲ限ルヘシ、尤モ議事ノ都合ニヨリテハ五時ヲ過クル事アルヘシ
○第三十条
常式会議ハ議事役三分ノ一、臨時会議ハ同十分ノ五以上欠席スル時ハ之ヲ開カス
　但委任状ヲ有スル代理ノ者ハ本人出席ト看做スヘシ、第四十五条ヲ見合スヘシ
○第三十一条
会頭ノ指揮ニヨリ臨時会議ヲ開ク時ハ、其期日ヲ定メ前日録事ヲシテ各議事役ヘ報知スヘシ
○第三十二条
会議ノ当日議事役ノ出頭・欠席・代理等ノ如キハ録事ニ通達スヘシ、録事之ヲ簿記シ而ル後会頭ヘ具陳シ、開否ノ事ヲ出頭議事役ニ通知スヘシ
○第三十三条
議事役着席順序ハ予メ鬮取ヲ以テ之ヲ定メ、録事ヲシテ椅子毎ニ其番号ヲ記シ、毎会其席ニ就カシムヘシ
○第三十四条
会頭ハ各議事役ノ着席ヲ待テ出席ス、其時議事役一同立礼スヘシ、録事ハ会頭ノ側ニ在テ、其議事ノ顛末ヲ筆記スヘシ
○第三十五条
常式会議ノ日ヲ以テ其次回ノ議目ヲ掲示シ、議事役ヲシテ承了セシム
　但シ議事ノ都合ニヨリテハ、当日ニ於テ其議目ヲ掲示スル事有ヘシ
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○第三十六条
凡議決スル者ハ議事役十分ノ六同議ニ出ル者ヲ以テ之ヲ判決ス、其論派各半ニ出ル時ハ、会頭ノ専断ヲ以テ裁決スヘシ
○第三十七条
議事ノ論派各半ニシテ、甲派ノ議旨ニ裁決スル時、乙派ノ者之ニ服従セザルトイヘトモ、会頭ニ対シ議問スルヲ許サス
○第三十八条
常式会議ノ日ハ、府庁ノ掛リ官員時トシテ臨席シ、其論議ヲ聴聞スル事有ヘシ、然レトモ議事ニ参与スルヲ得ス
○第三十九条
常式会議・臨時会議トモ府下人民ノ傍聴ヲ許スヘシ、然レトモ議事ノ摸様ニヨリテハ、会頭之ヲ拒ム事アルヘシ
○第四十条
傍聴人ハ名刺ヲ出サシメ、録事之ヲ指揮シテ傍聴席ニ就カシメ、吹煙睡眠・私語ヲナシ議事ノ妨ケヲ為ス時ハ、速ニ之ヲ退席セシムヘシ
　　　　第五章
　　　　　　議事員ノ心得
○第四十一条
凡事ヲ議スル宜ク平心ニシテ能ク其事由ノ名分性質ヲ詳ニシ、其利害得失ヲ察シ、而ル後発論スヘシ
○第四十二条
議事発言ノ時宜シク言辞ヲ簡約ニシテ条理ヲ明晣ニシ、語声ノ粗忽・弁法ノ措雑ナラサルヲ要ス
○第四十三条
議事役ノ発言ノ間ハ、他員ハ必黙聴スヘシ
○第四十四条
凡議事ノ発言シテ論弁スルモノ総テ会頭ニ対スルヲ法トシ、甲員乙員私対スル事ヲ禁ス
○第四十五条
議事役ノ内若病気或ハ事故有テ不参スル時ハ、其旨ヲ録事ヘ通致シテ同席ノモノヘ委任状ヲ付シテ代理ヲ托スヘシ、然レトモ一員ニテ三員以上ノ代理スルヲ得ス
○第四十六条
凡議事役ノ議場ニ在ル時ハ、必厳粛ニシテ吹煙・睡眠・私語スルヲ許サス
右各款ハ今般議事役一同衆議決定シ、更ニ府庁ノ允裁ヲ得タルモノナレハ、各員謹テ之ヲ恪守シ敢テ悖戻スヘカラス、若実際施行ニ至リ此条目ヲ変更増減スル事有レハ、更ニ議案ヲ作リ公議ニ附シ、決判ノ後之ヲ府庁ニ開申シ、其増減ヲ為スヘシ、因テ爰ニ各姓名ヲ自記押印シ以テ保証トス
　　　明治八年十二月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　副会頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　議事役
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行務科章程
　　　　第一章
此行務ハ会議所ニ於テ従前ヨリ弁理スル処ノ事務及向後公議ニヨリ更ニ生スル処ノ現務ヲ施為スル場所ナレハ、凡新規ノ事務及旧来ノ取扱方ヲ変更スルカ、又ハ費途増減ノ事アレハ都テ議事ヲ要シ、其決案ニ従テ之ヲ処置スヘシ
　　　　第二章
行務科ノ全般ヲ主宰スルモノヲ頭取ト為シ、之ニ次テ各課ノ事務ヲ幹理スル者ヲ取締役トシ、又一課ノ事務ヲ専任スルモノヲ課長トス、而シテ此頭取・取締役及各課長ハ、会議ノ公選ヲ以テ議事役等ヨリ兼任或ハ其他ヨリ撰任スヘシ
　但各課属員ハ其課長又ハ取締役ノ申請ニヨリ、頭取ノ考按ヲ以テ之ヲ命スヘシ
　　　　第三章
凡行務中ヨリ公議ヲ要スル款件ハ、頭取ノ考案ヲ以テ其立按ヲ会頭ニ致シ、其議決ヲ乞フヘシ
　　　　第四章
此行務科ノ事務ニ於テ公議ニ付スヘキモノヲ上款トシ、頭取ノ専決ヲ以テ挙行スヘキモノヲ下款トナシ、左ノ両款ニ従テ之ヲ判定スヘシ
　　上款
第一　行務ノ章程諸規則ヲ更正スル事
第二　府庁ノ顧問ニヨリ府下一般ノ利害ニ関スル条件ニ答議シ、或ハ従前ノ行務ニ於テ意見ヲ具状スル事
第三　瓦斯・街灯・道路修築・墓地等ノ事務ニ於テ、外国人ヲ傭入及永続ノ方法ヲ定ムル事
第四　従前ヨリ此会議所行務科ニ蓄積スル金銀ヲ銀行其他ヘ結約ノ上預ケル事
第五　行務科ノ役員各課長以上ヲ進退シ、及諸役員ノ月給ヲ定ムル事
第六　新ニ費途ノ定額ヲ設ケ、及定額アル費途ヲ増減スル事
　　下款
第一　従前ヨリ施為スル現務ヲ成規ニヨツテ調理スル事
第二　府庁ヨリ下付金及従前ノ積金ヲ進退シ、行務各課事務ノ制限ヲ立、常額アル費途ノ仕払ヲナス事
第三　旧付属地ヲ販売スル事
第四　養育院ノ窮民ニ産業ヲ授ケ或ハ病院・訓盲院ノ事務ヲ処置スル事
第五　各課附属役員ヲ進退シ、或ハ臨時手当等ヲ給与スル事
　　　　第五章
右ノ事務ヲ担当スルニ於テハ、左ノ五課ヲ設ケテ之ヲ分課担任セシム
第一　庶務課
第二　会計課
第三　修築課
第四　街地課
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第五　救育課
　　　　第六章
此行務ノ役員ト称スル者左ノ如シ
　頭取　　一員
　取締役　三員ヨリ五員ニ至ル
　各課長　五員
　同属員　便宜置之定員ナシ
　書記　　同上
　　　　第七章
頭取ハ取締役以下役員ヲ統卒シ、一切ノ行務ヲ総判スル権ヲ有シ、府下人民ノ利害得失ニ関スル事件ニ於テハ直ニ府庁ニ至リ、知事・参事ニ対シ其便否ヲ明弁シ、且現務ヲ調理スルノ責ニ任ス
　　　　第八章
取締役ハ頭取ノ指揮ニ従ヒ各課ノ長トナリ、諸役員ノ勤惰ヲ按察シ其行務ヲ管掌シ、担当ノ制限ニヨリテ頭取ニ対シ之ヲ調理スルノ責ニ任ス
　　　　第九章
各課役員ハ頭取・取締役ノ指揮ヲ承テ其主課ノ事務ヲ担任シ、之ヲ整頓スルノ責ニ任ス、尤課中ノ事ヲ処スルニ雛形ノ如ク稿案ヲ作リ、之ヲ取締役ニ致シ頭取ノ撿印了リ、然ル後之ヲ施行スヘシ
　　　　第十章
凡各課主任弁理スル所ノ事務ニ於テ、金銀ヲ領収スルハ一切取締役ノ撿印ヲ以テ証トナシ、会計課ニ付シテ支給セシム
　　　　第十一章
各課ノ属員ハ其能否ヲ監別シ、主任ノ具収《（状）》ニヨツテ其進退ヲ頭取ノ専決ニ任ス
　　　　第十二章
頭取以下月給ハ別紙表式ノ如ク、従前蓄積金ノ内ヲ以テ毎月二十五日ヲ定日トナシ、会計課ヲシテ之ヲ支給スヘシ
此行務章程ハ公議ヲ以テ決定シ、府庁ノ允裁ヲ得タルモノナレハ、他日更ニ増減改定ヲ要スル事アレハ頭取ヨリ会頭ニ乞テ議場ノ決議ヲ以テ之ヲ増減シ、然ル後府庁ヘ具陳スヘシ
　　明治八年十二月四日
　　　　議事役名前書
　　　　　　古撰之分
　　　　第壱大区十五小区兜町　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　第六大区三小区深川西大工町　　　　　三野村利左衛門
　　　　第壱大区五小区駿河町　　　　　　　　向井一郎兵衛
　　　　第六大区壱小区深川島田町　　　　　　鹿島清左衛門
　　　　第三大区弐小区麹町四丁目　　　　　　倉教我
　　　　第壱大区五小区品川町　　　　　　　　岡田平馬
　　　　同大区拾小区築地壱丁目　　　　　　　西村勝三
　　　　第六大区三小区深川吉永町　　　　　　蔵田清右衛門
　　　　第壱大区六小区本材木町弐丁目　　　　奥三郎兵衛
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　　　　第四大区七小区駒込東片町　　　　　　高崎長右衛門
　　　　第壱大区十四小区新材木町　　　　　　杉村甚兵衛
　　　　同大区拾六小区北新堀町　　　　　　　後藤庄吉郎
　　　　同大区八小区銀座弐丁目　　　　　　　大倉喜八郎
　　　　第五大区三小区佐久間町四丁目　　　　吉川長兵衛
　　　　第壱大区十六小区霊岸島四日市町　　　鹿島清兵衛
　　　　同大区十四小区大伝馬町弐丁目　　　　堀越角次郎
　　　　　　新撰之分
　　　　第四大区六小区下谷茅町弐丁目　　　　福地源一郎
　　　　第七大区二小区北品川宿一丁目　　　　益田孝
　　　　第拾一大区壱小区須崎村　　　　　　　成島柳北
　　　　第四大区壱小区淡路町二丁目　　　　　辻純市
　　　　第壱大区十四小区堀留町二丁目　　　　小林銀次郎
　　　　同大区六小区呉服町　　　　　　　　　吉村甚兵衛
　　　　同大区七小区五良兵衛町　　　　　　　千葉勝五郎
　　　　同大区五小区瀬戸物町　　　　　　　　荒尾亀次郎
　　　　同大区五小区本町三丁目　　　　　　　清水卯三郎
　　　○「東京会議所規則緒言及同規則」ハ渋沢子爵家ニモ所蔵セリ。即チ同規則ノ立案草稿ナルモノノ如ク、文中朱ヲ以テ書加ヘタル部分、東京府庁所蔵ノモノト一致セリ。
　　　○「行務課章程」モ東京府所蔵ノモノノ立按草稿ト思ハルヽモノ渋沢子爵家ニ所蔵セリ。

記事摘要　　明治七年同八年　　　　　（東京市養育院所蔵）
一亥十一月中会議所改正之儀本府江上申致候処、許可相成候ニ付改正之規則書ハ活板ニ致シ写跡ニ有之同十二月十一日会議所ニ而臨時集会を催シ、出席ノ人々左之通り
渋沢栄一　向井市郎兵衛　倉教我　西村勝三　杉村甚兵衛　後藤庄吉郎　大倉喜八郎　吉川長兵衛　堀越角次郎
欠席之人々
三野村利左衛門　鹿島清兵衛　鹿島清左衛門　岡田平馬　蔵田清右衛門　奥三郎兵衛　高崎長右衛門
　　都合拾六人古撰之分
新任出席之人々
福地源一郎　辻純市　荒尾亀次郎　千葉勝五郎　清水卯三郎　吉村甚兵衛
同欠席之人々
益田孝　成島柳北　小林銀次郎
　　都合九人新撰之分
右之人々衆議之上、是迄渋沢栄一会議所之取締たる廉を以而仮リニ会長と成リ、此会議所之原由ヲ説キ出シ、当六月中上申シテ真正ノ民会ヲ起サン事ヲ企シニ、其事行ハレス、去迚是儘ニ致シ可置ニ非サレハ従来ノ議事役一同ニテ東京平民中評判アル人々ヲ新撰シテ是ヲ府庁ニ推挙シ、追テ民会ノ行ハルヽ迄ヲ引受ル積リノ趣ヲ演説シ、又来ル廿
 - 第27巻 p.675 -ページ画像 
一日再ヒ臨時会ヲ催シ、新古打交ニテ会頭・副会頭ヲ入札シ、議事ノ規則ヲモ可議事ヲ通達シタルニ、衆議ノ上ニテ可然ト決定ス
一同月廿一日臨時会ニ出頭之人々
益田孝　成島柳北　向井市郎兵衛　倉教我　西村勝三　岡田平馬　高崎長右衛門　堀越角次郎　後藤庄吉郎　奥三郎兵衛　辻純市　荒尾亀次郎　清水卯三郎　大倉喜八郎　吉川長兵衛　千葉勝五郎　吉村甚兵衛
　但シ《（太字ハ朱書）》渋沢栄一当病ニ付代理益田孝相勤ム
当病ニ付欠席之人々
渋沢栄一　福地源一郎　三野村利左衛門　杉村甚兵衛　鹿島清兵衛　小林銀次郎　鹿島清左衛門　蔵田清右衛門
同日会頭・副会頭並行務頭取投票左之通
　　　　　　　札数十五　　　渋沢栄一
　　会頭
　　　　　　　同三　　　　　福地源一郎
依テ多数ヲ以渋沢栄一ヲ会頭トナス
　　　　　　　札数十五　　　福地源一郎
　　副会頭
　　　　　　　同三　　　　　益田孝
依テ多数ヲ以福地源一郎ヲ副会頭トナス
　　　　　　　札数五　　　　渋沢栄一
　　行務頭取
　　　　　　　同四　　　　　西村勝三
　　　　　　　同四　　　　　三野村利左衛門
　　　　　　　同三　　　　　益田孝
　　　　　　　同壱　　　　　吉川長兵衛
前同断渋沢栄一ヲ頭取トナス

東京日日新聞　　第一二〇一号　明治八年一二月一三日
○一昨十一日午後一時より東京会議所にて臨時集会を催したり、是ハ会議所にて議事の振合を改正する事に付き先頃より東京府へ上申せしに、三・四日前愈々其通りにて宜しき旨のお指図ありたるゆゑに、直さま臨時に集会せしことなり、出席の人々ハ従前よりの議事役にハ渋沢栄一・白井一郎兵衛《（向井一郎兵衛）》・倉教我・西村勝三・杉村甚兵衛・後藤庄太郎《（後藤庄吉郎）》大倉喜八郎・吉川長兵衛、又新撰の議事役にハ福地源一郎・辻純市・千葉勝五郎・荒尾亀次郎・清水卯三郎にて都合十三人の出頭なり、尤も三野村利左衛門・岡田平馬・鹿島清左衛門・蔵田清右衛門・奥三郎兵衛・高崎長右衛門・鹿島清兵衛・堀越角次郎（右ハ古撰の分）益田孝・成島柳北・小林銀治郎・吉村甚兵衛（右ハ新撰の分）の十二人ハ欠席せり○渋沢栄一ハ是まで会議所の取締たる廉を以て仮りに会長と成り、此会議所の原由を説き出し、当六月中に上申して真正の民会を成さん事を企てしに、其事も行ハれず、去り迚この儘に致し置べきに非ざれバ、従来の議事役一同にて東京平民中の評判ある人々を新撰して是を府庁に推挙し、追て民会の行ハるゝ迄を引受る積りの趣を演説し、又来ル廿一日にハ再たび臨時会を催し、新古打ち交りにて会頭・副会頭を入札し、議事の規則をも議すべき事を通達したるに、衆評の上にて然るべしと決したり○此外に差向きたる事柄を三・四ケ条評議し、四時半に退散せり。

渋沢栄一書翰　　会議所議事役宛　明治八年一二月二〇日　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　明廿一日会議所臨時集会御取開ニ付、拙者事も議事役之壱人とし
 - 第27巻 p.676 -ページ画像 
て出頭候様兼而御達も御坐候処、拙者義一昨十八日より歯痛ニて日夜相脳今日ハ稍快方を覚候得共、未全愈無之明日出勤仕兼候間議事発言之義ハ福地源一郎ヘ依頼およひ候得共、是迄之手続ニよりて明日之会議ニ出し衆議之決案有之度条款中左之件々ハ先以明日之議目ニハ御除被成、其次之件々丈ケ御決議有之度と奉存候
　　右御除有之度件々ハ、明日会頭・副会頭撰定之上ハ其考案を以小会議を聞き、コンミツチー其掛ニて夫々調査之上衆議ニ附し候方却而見込も相届可申と奉存候
　　明日決議之件々丈ハ其決案を府庁ヘも上申し、会頭・副会頭等ハ撰定候ハヽ夫々其者ヘ達方有之度候
　　行務課役員撰定ハもし未決ニ候ハヽ、是又御除置候ても宜敷と存候、何れ会頭・副会頭ニて是迄取扱来候実況等詳知之上、予メ其人物を注擬して、一同之公評を取るも可ならん歟
　　　明日之会議ニハ御見合被成度件名
府税之事
　是ハ小会議ニ於て綿密ニ調査いたし、科目中之当否を審案するハ勿論、弥此収入決定之上ハ其金額中ニて修路・養育・学務其外之区分を以、右収額中より相応之高、議所ヘ御下渡相成候様見込相立、府庁ヘ上申いたし度存候事
区入費之事
　是ハ諸県之課法抔斟酌いたし、府下ニ於て稍施行し得へき方法取調府庁ヘ上申いたし度事、尤右調査ハ小会議ニて取扱候積之事
学資金上納云々之事
　是ハ是迄会議所資金より既ニ弐拾万円差上、尚五万円借用之義府庁之其掛より被申聞候義ニ付、篤と府庁ヘ申立最前上納之分まても追々返金之見込有之哉、且右学務資金差出候上ハ、府庁該課之出納計算ハ如何相成候哉をも承糺し、即今五万円を貸上候より向来最前之分返収之目的も相立候ハヽ、府庁之申聞通り差出可申見込之事
瓦斯灯及諸灯之事
　是ハ瓦斯点火料取立之義ニ付、府庁之見込ハ勉而府下之出金を減し議所之費用ニて相弁し候様との見込ニ候得共、元来此点灯之如きハ敢而議所ニ於て取扱ふへき当務にも無之、詰り追而ハ通常之会社ヘなりとも引譲可申ものニ付、即今之処にても得失相較計候丈ハ点火料取立申度ニ付、其条理と手続を明瞭に府ヘ上申し、府之承諾を得申度、尤増瓦斯之見込ハ此瓦斯局之計算上得失より見込相立候ハ可然候得共、只費用を減し候為メ瓦斯元を増加するハ、不相当之考案と存候事
　新製ランプ之義も、詰り瓦斯灯同案之事
会議所資金有高並来年出入概計之事
　是ハ即今之処ニて綿密ニ取調、収入と費途との目的を明瞭ニし此姿にてハ年々資金若干減少し、遂ニ何年間ニて相尽可申、就而ハ前条府税収入中若干之下金有之、引続議所之永続法相立度旨、府庁ヘ上申仕度見込之事
右之件々ハ今日会議所緊要之議目ニ付、幸ひ明日之集議ニ出し度相心
 - 第27巻 p.677 -ページ画像 
得居候得共、到底決議之上にも種々調査可有之事に付、前書申述候通り明日ハ御省被成、会頭相定候上ニてコンミツチーニ於て調査之上会議ニ附し申度事
　　　明廿一日会議ニ於て決議を要する件々
会頭副会頭撰挙之事
右年々賜金給与不給与之事
行務頭取取締役各課長撰定之事
右月給高相定候事
右役員ヘ達書並請書々式之事
　但行務課役員ハ引受証人相立、万一引負金等有之候ハヽ償弁之途相立申度事
議事行務共廻議ニ附すへき議案差出方文例之事
　但議事役出会せすして、会頭より考案相立輪廻決議之事向後多く可有之ニ付、其文例等取究候事
議事行務共属員之義ハ会頭・頭取撰定之上、其考案ニ任せ可然ニ付、明日ハ別ニ詳議ニ及間敷候事
行務課・考課状之事
会議所従前之会計向調査並向後簿記計算法設立之事
議事行務共諸文書編纂法之事
　但此三件ハ議事ニ掛候義にハ無之候得共、夫々見込相立度候事
右ハ拙者病気ニ付明日出勤仕兼候間、勘考之次第書取申上候也
　　　十二月廿日　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一栄一
　　　　会議所
　　　　　　議事役　御中

会議所伺　　第三号　明治八年　　　　　　　　　（東京府文庫所蔵）
第三百拾五号《（太字ハ朱書）》
当会議所議事規則・行務章程改正向之儀、今般御允裁相成候ニ付、別紙之通議事役撰挙之上、投票ヲ以テ行務科頭取・会頭・副会頭ヲ公撰仕候間、此段上申仕候也
　　明治八年十二月二十七日　　　　　東京会議所印
　　　　東京府権知事　楠本正隆殿
（別紙）
　　　　　　　議事役名前書
　　　　　　　　　　　　　　　会頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　行務頭取
　　　　　　　　　　　　　　　副会頭　　福地源一郎
　　　　　　　　　　　　　　　議事役　　益田孝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　成島柳北
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三野村利左衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　向井一郎兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　倉教我
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡田平馬
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西村勝三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　蔵田清右衛門
 - 第27巻 p.678 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　奥三郎兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高崎長右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　杉村甚兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　後藤庄吉郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大倉喜八郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉川長兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堀越角次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　辻純一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小林銀次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉村甚兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　千葉勝五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　荒尾亀次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清水卯三郎
　右之通御座候也
　　明治八年十二月廿七日　　　　　　　　　　東京会議所

東京日日新聞　　第一二〇四号　明治八年一二月一六日
東京会議所ノ改正ハ現ニ朝野・報知両先生ノ間ニ於テ新面ノ論題ヲ開キ、問答数回ニ及ブ、又将ニ世上ノ読者ヲシテ多少ノ利益ヲ其ノ論弁中ヨリ得セシメントスルノ勢アリ、吾曹ハ実ニ君子ノ争タルヲ以テ、之ヲ傍観スルノ幸福ヲ有セントス、孰ゾ漫リニ批評ヲ其間ニ容レ以テ討論妨碍ヲ成スヲ欲センヤ、只聊カ吾曹ガ此ノ会議ニ就キ聞見スル所ノ情由ヲ記載シ、併セテ思考ヲ陳述シ、両先生ノ参考ニ供スルノ自由ヲ占ムル而已
夫ノ東京会議所ハ純乎タル民会ニ非ザルナリ、其ノ議員ナル者モ亦決シテ公選ニ出ヅト云フ可カラザルナリ、維新ノ後ニ際シ東京府庁ハ身許アル町人十数名ヲ官選シ、之ニ托スルニ元ト町会所積金ノ幾分ヲ以テシ、専パラ東京道路修繕ノ事ヲ司ラシム、東京修繕会議所即ハチ是ナリ、此ノ官選委員ハ道路修繕ノ事ノミナラズ、府下一般ノ民政ニ於テモ少シク関与セン事ヲ希ヒ、府庁モ亦コレヲ望ミシニ付キ、修繕ノ二字ヲ抛棄シ、更ニ東京会議所ト名ケ、衆議ノ帰著ヲ以テ府庁ノ下問ニ答ヘ、傍ラ貧民救助・養育院・病院・修路・瓦斯灯ノ事務ヲ執リ、府庁ノ差図ヲ受ケテ彼ノ附托セラレタル金額ヲ府下ノ公益ニ仕払ヒ畢レハ、則ハチ我事畢ルト云フ位ノ考案ニ過ギザリシナラン、何トナレバ右ノ委員ハ大抵代理ヲシテ議席ニ臨マシメ、太ダ進取ノ気力ニ乏シケレバナリ、幸ニ二・三ノ錚々者アリテ、此ノ告朔ノ饋羊ヲシテ数年ニ堙滅セシムルヲ憂ヒ、市中ニ名望アル人ヲ選デ会議所ノ事務ヲ総管セシメント企テ、之ヲ衆ニ謀リ、渋沢栄一君ノ其人タルヲ以テ之ヲ府庁ニ推薦シ、会議所ノ取締ニ成シタリ
渋沢君ハ去年ノ冬ニ於テ会議所ノ取締ト成リタレトモ、会議所委員ノ勢力ナキト、十分ノ公益ヲ挙行シ能ハザルトハ依然トシテ旧時ニ異ナラズ、蓋シ勢力ヲ得ベキノ原因ヲ誤ル、孰ゾ能ク其ノ成跡ナル公益ヲ十分ニスルヲ得ンヤ、渋沢君ノ智力アルモ復タ以テ之ヲ奈何トモシ難キハ、又ソノ理ナキニ非ザルナリ、此時ニ当リテヤ民権ノ論議ハ漸ク
 - 第27巻 p.679 -ページ画像 
上等社会ニ行ハレ、六月ニ至リテ地方官会議ノ挙アリ、委員一同ハ相議シテ此期ヲ以テ会議所ヲ閉ヂ、更ニ真正ノ民会ヲ創立セント決シ、乃ハチ其書ヲ具シテ之ヲ府庁ニ稟セリ（本年六月十三日ノ日々新聞ニ載セタリ）
東京府知事公ハ其議ヲ嘉納シタレトモ、民会ノ設立ハ地方官会議ノ問題タルヲ以テ、之ヲ専決シテ施行セシムルヲ得ズ、会議ノ決案ヲ待チタルニ、知事公カ公選民会ヲ可ナリトスルニ拘ラズ、会議ノ衆論ハ如何ナル故カ区戸長会ニ帰着シテ奏上スル所ト成レリ、於此乎東京会議所ノ希望モ、民会ノ事ニ付キ改メテ政府ヨリ発令アル迄ハ先ヅ泡沫ニ属スルノ状ヲ現シ、公選民会ノ気息ヲ奄々ノ間ニ存スベキ町村会規則ノ如キモ、其頃ハ近々ニ発行アルニ相違ナシトカ、或ハ何院何局ニテ評議中ナリトカニテ、遂ニ声モ無ク臭モ無ク、世論上ヨリ消失タルガ如シ
東京会議所ハ先ニ府庁ノ下問ヲ謝絶シ、府民ノ具請ヲ受取ラザル可シト決議シタルニセヨ、適当ノ相続人ニ引渡ス迄ハ、現在ニ履行スル所ノ事務ヲ抛棄シテ一切之ヲ顧ミザルガ如キ粗暴ノ挙動ヲ為ス可カラザルニ付キ、更ニ二条ノ問題ヲ設ケ（甲）現行ノ事務ト残金トヲ挙テ之ヲ府庁ニ返上シ、直ニ会議所ヲ鎖スベキ乎（乙）或ハ是迄ニ履行シテ真正ナル民会ノ創立スルヲ待チ、之ニ引渡スベキ乎ヲ議セシニ、衆論ミナ乙ニ帰着シタリ、然レトモ現今ノ儘ニテ委靡スル時ハ、会議所ハ府庁ノ望ニ副ハザルノミナラズ、他日公選ノ議員ナル相続人ニ対シテモ実ニ閏位ノ職務ヲ悉サヾルノ罪アリ、故ニ議事ノ手続ニセヨ、事務ノ取扱ニセヨ、力ノ及ブ丈ケハ之ヲ理粛シ、整頓シ、真正ノ相続人ノ為ニ先駆ト成リ、以テ府民ノ権理ヲ保護シ、以テ一般ノ利益ヲ拡充スルノ地歩ヲ為サヾル可カラズ、而シテ此ノ地歩ヲ成スニハ、責メテ府民中ニテ評判アル人々ヲ委員一同ニテ推薦シ、共ニ議事役ト成リテ相謀ルニ若カズト決議シ、其旨ヲ府庁ニ上陳シタリ、此ノ決議ノ顛末ヲ見レバ、所謂不得已ニ出ル者ニシテ、其ノ情由ヲ知レバ太ダ憐察スベキ者ニ非ザルヲ得ンヤ
右ノ顛末ヲ詳ニシ情由ヲ知ルガ故ニ、其ノ推薦ニ遇フタル福地・益田成島・千葉・清水・荒尾ノ諸君ハ（此ノ姓名ハ已ニ本月十三日ノ日々新聞ニ記載シタリ）商賈ノ為ニハ最モ価アル時間ヲ繰合セテ会議ノ席ニ出頭シ、共ニ姑ラク議事役ノ閏位ニ備ハル事ヲ肯シ、去ル十一日ニ於テ臨時集会ヲ開キ、新旧ノ人々相集リテ一個ノ議員ト成リ、本月廿一日ヲ以テ更ニ会長・副会長ヲ入札シ、所務並ニ議事ノ手続ヲ衆議セント謀リタリ
斯ノ如キ有様ヨリ成立タル会議所ナレバ、其ノ民会ニモ非ズ公選ニモ非ザルハ、吾曹将ニ日報社印ヲ鈐シテ世上ニ保証スルナリ、而シテ其ノ目的ハ那辺ニ在リヤト問フ人アラバ、吾曹ハ又ワガ社印ヲ再鈐シ、明カニ他日ノ民会ノ為ニ其ノ地歩ヲ経営スルニ在リト答フ可シ、朝野先生ガ所謂ル斉一変シテ魯ニ至リ、魯一変シテ道ニ至ルヲ跂望スル者ナリト云ハザル可ケンヤ、然レトモ若シ名称ニノミ拘泥スルアリテ、其ノ名質ノ正シカラザルニヨリ其ノ実質ハ何程ノ進取ヲ勉強スルトモ真正民会ノ為ニ毫厘モ他日ノ地歩ヲ経営スルニ足ラズ、徒ニ之ヲ害ス
 - 第27巻 p.680 -ページ画像 
ルナリト明言スルニ至ラバ、初メテ其ノ民権ノ名ヲ好テ民権ノ実ヲ悪ムノ論者ト名クベシ、今ヤ報知先生ハ之ニ反シ熱心ノ民権家ニシテ、民権ノ実ヲ得ルヲ好ムノ論者也、吾曹ハ必ラズ其ノ会議所ガ民権ノ地歩ヲ経営スルヲ喜ブヲ信ズル也、吾曹ハ已ニ之ヲ信ズルニ当リ、某ノ論者ガ故サラニ敵手ヲ進撃スルニ、漸進論者ノ隷属ノ徴候ヲ表ハスノ数語ニ於テ、少シク怪マザルヲ得ズ、苟シクモ理ノ存スル所ト、益ノ興ル所ヲ討究スルニ臨テ之ヲ得バ、何ゾ其ノ他人ノ説ニ同案ナルヤ否ヲ問テ合離ヲ決スルヲ成サンヤ、離ベキノ理アリテ離ル、固ヨリ反覆ニ非ズ、合フベキ理アリテ合フ、豈隷属ト云フ可ケンヤ、若シ之ヲ隷属トセバ堂々タル日本碩学論者モ亦モンテスキュー、ギソー、ホックル諸氏ノ隷属ナランカ、隷属ノ名実ハ果シテ何ノ点ニ在ル、其ノ東京会議所ヲ以テ、山師カ拠リテ金融ノ便ヲ通ズルノ巣窟タルヲ免レザルガ如シト云フガ如キニ至リテ、頗ル其ノ現状ヲ謬ル者ニ似タリ、而シテ之ヲ弁駁スルハ已ニ其人ノ在ルアリ、敢テ吾曹ガ担任ニ非ズト雖トモ、論者ガ其ノ見聞スル所ヲ秘薀ニ置テ之ヲ証明セザルハ、吾曹ガ太ダ解セザル所ナリ
夫レ論者ハ各々其発明スル所ノ理ト実トニ拠リテ説ヲ建ツ、固ヨリ、自ラ為ニスル所アルガ故ニ、強テ褒称ヲ与フルヲ好マザル也、譬バ某ノ蔭武者ガ（ヲット記者ノ誤）某ノ新聞ニ於テ初メハ元老院ノ効績ヲ書連ネ、今ハ其ノ効績無ヲ尤ムルノ如キモ、或ハ之ヲ見テ初メハ自カラ為ニスル所アリテ強テ褒称シ、今ハ自家ニ利スル所ナキガ為ニ之ヲ攻撃スト冷評スルノ人ナキニ非ザレトモ、吾曹ハ曾テ断然ソノ論理ノ私利ニ根底セザルヲ信ジタルニ付キ、今コノ論題ニ関シテモ亦朝野記者ニシテ決シテ其事ナキヲ信スルナリ、唯吾曹ガ患フル所ハ世上ノ為ニ貴重ナル輿論ヲ記載スベキ議場ヲシテ、或ハ他人ノ栄誉ヲ害スベキ讒謗ノ修羅ト変ズルノ禍機ハ、カヽル文筆ヲ以テ其萌芽ヲ成サン事ニ在ナリ
吾曹ハ両記者ノ参考ニ供スル為メニ、右ノ顛末情由ヲ陳述シ畢リ、筆ヲ擱クニ当リ左ノ数語ヲ将テ結局ト成サント欲ス、曰ク東京会議所ノ衆論ハ一日モ早ク真正ナル民会ヲ創立スルノ運ニ遭ヒ、議事・行務ノ両款ヲ挙テ之ニ引続カン事ヲ切望スル者ナルベシ、新聞紙上ニ於テ、其ノ民会ニ非ズ、公選ニ非ザルヲ直論スルハ、即ハチ東京府民ヲシテ奮発スルノ念ヲ起サシムルノ効能アルニ付キ、必ラズ之ヲ聴クヲ喜ビ各自ノ目的ヲ達スル為ニハ屈竟ナル羽翼ナリト信スベシト思フナリ、将タ民会ハ国会ヲ創立スルノ基礎タルヤ否ノ問題ニ関リテハ、吾曹聊カ所見ノ有ルアリ、今コヽニ論及セバ両記者先生ノ論場ニ闖入スルノ勢ナキヲ免レズ、故ニ之ヲ他日ニ譲リテ言ハズ

記事摘要　　従明治九年至十年　　　　　　　（東京市養育院所蔵）
明治九年一月卅日評決
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　庶務課長
　　　　　　　　　　一金六拾円　　　　　　　増田充績
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　養育院長
　　　　　　　　　　一金三拾円　　　　　　　飯田直之丞
 - 第27巻 p.681 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同副
　　　　　　　　　　一金廿五円　　　　　　　神保尹成
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　墓地課長
　　　　　　　　　　一金四拾円　　　　　　　高尾駿平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　修路課長
　　　　　　　　　　一金四拾円　　　　　　　竹本自清
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　瓦斯課長
　　　　　　　　　　一金五拾円　　　　　　　筒井与八
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同副
　　　　　　　　　　一金三拾円　　　　　　　平内彦三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ランプ課
　　　　　　　　　　一金五拾円　　　　　　　阿部潜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同副
　　　　　　　　　　一金三拾円　　　　　　　片山喜八