デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治21年11月26日（1888年）

是日栄一、当委員会ニ出席シ、二十一年度ニ於テ施行スベキ事業ニツキ内務大臣ヘノ上申案・築港ニ関スル建議案・改正路線調査ノタメノ委員選定ニ関スル議事ニ与ル。

東京市区改正委員会議事録　　第二巻・第一一七―一二七丁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府文庫所蔵）
東京市区改正委員会議事録第二十一号
　　明治二十一年十一月二十六日午後第三時十五分開議
　　　　闕席　桜井勉　○外八名氏名略
　　　　出席十八員（鉄道ニ関スル臨時委員ノ出席ヲ要セス）
○委員長曰　市区改正ノ事業ハ、内閣ノ認可ヲ得テ其設計ヲ告示セシメシ上着手スルノ順序ナレトモ、其手続ヲ為スニハ多分ノ日子ヲ要シ殊ニ実施ノ日モ迫リ居ルヲ以テ、過日議定ニナリシ二十一年度ノ施行ニ係ル事業ハ特ニ其裁可ヲ得ント欲ス、依テ内務大臣ヘノ上申案ヲ草シタレハ、一応朗読セシメン
　　　書記左ノ上申案ヲ朗読ス
　　本会ハ東京市区改正審査会議定方案ニ拠リ、逐条審議細討ノ末漸ク昨日ヲ以テ粗ホ其議ヲ了シタルヲ以テ、不日応サニ復申スルトコロアラントス、然ルニ市区改正条例ハ来年一月一日ヲ以テ施行ノ期限ト定メラレタルカ故ニ、其一月ヨリ三月ニ至ル間ノ事業ヲ定メ、東京府知事ヲシテ本年中ニ区部会ノ議ニ付セシメサル可ラサルノ必要ヲ生スルニ迫マレリ、於是本案議定設計ノ全体中ヨリ若干事業ノ設計ヲ撰定シテ、其三ケ月間ニ施行スヘキ設計ト議定シタリ、是レ素ヨリ本案全体認可ノ後ニ議定スルヲ当然トナスト雖トモ、前陳止ムコトヲ得サルノ時情アルヲ以テ、別紙決議案ヲ具シ特ニ認可セラレンコトヲ請フ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員長
　　　　内務大臣宛
　　（別紙）
　　　明治二十一年度ニ於テ施行ス可キ東京市区改正事業ノ設計
　　第一等道路第一類
　　　第六　万世橋ヨリ上野公園ニ至ル路線幅員二十間ノ内
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　　　　○上野西黒門町ノ内
　　第一等道路第二類
　　　第四　浅草橋ヨリ蔵前通リ浅草公園ニ至ル路線幅員十五間ノ内
　　　　○浅草駒形町ノ内
　　同上
　　　第十八　浅草田原町ヨリ吾妻橋際ニ至ルノ路線幅員十五間ノ内
　　　　○浅草田原町ノ内
　　　　○材木町花川戸町ノ内
○二番須藤・四番福地並曰　更ニ意見ナシ
○委員長曰　然ラハ上申スルトシ、築港ニ関スル建議案脱稿シ起草委員ヨリ提出サレタレハ、之ヲ議スルトシ、先其文案ヲ朗読セシメン
　　　書記左ノ建議案ヲ朗読ス
　　東京ノ市街タルヤ、元是レ政治的ノ目的ヲ以テ創設シタル者ナルハ、人皆知ル所ナリト雖トモ、日月ノ相推移スルニ随ヒ、民衆蟻集自ラ殷富ナル大都府トナリ、加フルニ三十年来開市ノ場トナリ又帝都トナルニ至テハ情勢大ニ変シ、兼テ商業ノ中点ノ位地ヲ占ントスルノ勢アリ、乃チ府内外ニ要スル百般ノ施設固リ其情勢ニ応セサルヲ得ス、故ニ苟モ東京市街ノ改良ヲ謀ルトキハ、外ハ港湾ヲ疏濬シテ船舶ノ出入貨物ノ運搬ニ便シ、内ハ街衢ヲ改良シテ人民ノ交通車馬ノ往来ニ便セサル可カラス、此ニ於テ往年東京府知事ノ市区改正議ヲ呈スルヤ、踵テ品海築港議ヲ呈シ、市区改正審査会ヲ設ケラルヽニ当テモ亦併セテ市区改正ト品海築港トヲ審議セシメラル、蓋市区ト港湾トノ相待ツハ、猶家屋ノ門戸ニ於ケルカ如ク、其関係至密ニシテ毫モ相離ル可カラサルヲ以テナリ
　　本会市区改正ノ方案ヲ審議スルコト玆ニ数旬、改正ノ事項略ホ議了ヲ告ク、然ルニ本会ノ議定ス可キ所ハ特ニ市区ノ一偏ニ止リ、港湾ノ改良ニ波及スルヲ得ス、故ヲ以テ徐ロニ其議了セシ所ヲ顧レハ、人民ノ交通車馬ノ往来ニ於テハ大ニ利便ヲ加フ可キヲ信スト雖トモ、船舶ノ出入貨物ノ運輸ニ至テハ依然トシテ不利不便ヲ脱シ得サル可シ、之ヲ譬レハ門戸ノ構造ヲ論セスシテ、単ニ家屋ノ経画ヲナシタルカ如シ、虧簀ノ憾ナクンハアラサルナリ
　　由テ熟案スルニ、本会開設ニ当リ廟議故ラニ港湾ノ改良ヲ除キ、単ニ市区改正ノミヲ議定セシメラレタル所以ノモノハ、豈市区改正ニ加フルニ港湾改良ヲ以テセハ、費額増加シ市民ノ負担ヲ倍蓰センコトヲ慮ラレタルニ非ルヲ得ンヤ、果シテ然レハ港湾ノ改良ハ市民ノ最モ熱望スル所ニシテ、其費額ノ如キモ亦市民ノ負担ニ堪ヘサル所トス可ラス、現ニ数年以来市民港湾ノ漸ク埋マルヲ憂ヘ、乾潮下ニ於テ十二尺ノ深サヲ有タシメンコトヲ希望シ、五拾万円ヲ支出シテ其疏濬ニ着手セルハ、則其証ト云フ可キナリ、況ヤ港湾改良ノ挙ハ其事国防ニ関スルモノアリ、商業ニ関スルモノアリ、其国防ニ関スルモノハ政府其支弁ニ任セラル可キガ故ニ市民ノ負担スベキ所ハ単ニ商業ニ関スル費途ニ過キス、且ツ市区改正ト雖トモ、一時ニ施行セラルヽモノニアラスシテ、漸次ニ施行セラルヽモノタルカ故ニ、港湾改良ノ如キモ右ノ例ニ倣ヒ、先ツ
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其設計ヲ定メ市民ノ力ヲ謀リ、漸次之ヲ施行スルモノトセラルヽニ於テハ決シテ市民ヲシテ其負担ニ苦マシムルノ虞ナシトス、故ニ此際本会ノ権限ヲ拡メ、市区改正ノミナラス併テ港湾ノ改良ニ議及セシメラレ、東京市街ヲシテ政治上ニ商業上ニ共ニ洪大ナル利便ヲ得セシメラレンコトヲ希望シ、本会ノ議決ニ由リ謹テ之ヲ具申ス
○二十二番古市曰　文案ハ至極結構ナレトモ、本文中其事国防ニ関スルモノァリ、商業ニ関スルモノアリ云々ノ一句ハ削除シ、円滑ニ唯市民ハ負担ニ堪ヘストノ意思ヲ述フルニ止メテハ如何
○四番福地曰　二十二番ノ削除セント望マルヽ所ノ文勢ヲ解釈セハ、築港ノ議ヲ当委員会ニ附セラレサルハ府民ニ於テ其負担ニ堪ヘズトノ考案ナランカ、其築港ノ事業タル啻ニ国防上ニノミ止マラス、商業上ニモ便益ヲ与フルニ依リ、則チ築港費中其幾分ヲ市民ニ於テ負担スルハ敢テ難キニアラスト云フニ在レハ、原案ノ儘ニテモ強テ差支アルマシ
○二十二番古市曰　国防云々ト記載シ置キ、国防ト商業トノ事業ヲ分析スルニ当リ、恰モ内務省ニ於テ河心改良費ノ負担ヲ区別シタルト一般、沿川人民ニ関係アレハ其土地ノ負担トスト云フガ如キ区別ヲ立テラレタランニハ如何ニナスヤ、起草者ニ於テ其区別判然シ居ルナラハ不可ナキモ、否ラスンハ国防云々ハ削除スルニ如カス
○二十六番益田曰　築港ノ挙タル、商業上利便ノ為メナレハ市民ニ於テ其費途ヲ負担スト云フ点ニ就テハ、私モ一言異論ヲ唱ヘサルヲ得ス、抑モ港湾ハ市民ノ所有ニアラス、則チ都下ノ咽喉ニシテ、外国ノ例ニ由ルトキハ其資金ハ国庫ト市民トニ於テ各一半ヲ負担シ、若クハ政府ヨリ其資金ヲ一時貸与セラルヽト聞ケリ、然ルニ本案ノ如ク国防ニ関スルモノハ政府其支弁ニ任セラルヘキカ故ニ、市民ノ負担スヘキ所ハ単ニ商業ニ関スル費途ニ過キスト書載スルハ好マシカラス
○十一番黒田曰　国防云々ノ点ニ就テ二十二番ヨリ意見ヲ提出セラレシカ、成程国防云々ハ穏当ナラサルヘシ、元来築港ノ挙タル毫モ国防ニハナラサルニ依リ、国防云々ノ語ハ削除スル方可ナラン
○四番福地曰　然ラハ問ハン、築港ノ計画如何ハ、陸海軍両省ニ関係ナシト云ハルヽヤ
○十一番黒田曰　陸海軍両省ニ関係ハアルモ、国防ニハナラサルナリ
○二十二番古市曰　海底ヲ深ク為スハ海軍省ニ於テ望マサルモ知ルヘカラス、故ニ築港ノ計画タル或ハ国防上ニハ不利ナルコトモアルナルヘシ
○二十五番芳野曰　東京湾ニ台場ヲ築ク如キハ則チ国防ナラン、左レハ築港ノ設計上国防ニ関係ナシトハ云ヒ難カルヘシ
○二十二番古市曰　築港ノ計画上、好シ国防ニ関係アリトスルモ、今日其費用ノ区分ヲ建議書ニ記載スルノ必要ナカラン
○十五番桐原曰　私ハ二十六番ト同感ニテ、文案中ニ市民ノ負担ニ苦ムコトアラスト書載シ置クハ望マシカラス、若シ此建議ニシテ行ハレ、築港条例ヲ発布セラレ、更ニ年々五拾万円宛負担スヘシトナラ
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ハ、市民ハ之ヲ負担セサルヲ得サルニ至ラン、故ニ此建議ニ対シテハ、区部会ヨリ選出ノ我々ハ将来ヲ慮リ厚ク協議ヲ尽シタル上議定スルコトニ為シタシ
○四番福地曰　十五番ノ説ハ一理ナキニアラサレトモ、自ラ進ンテ築港ノ設計ヲ議セント希望為シナカラ、費途ノ負担ニ苦ムト云フハ平仄ノ合ハヌ申分ナラスヤ、強テ二十二番等ノ懸念モアラハ、国防云云ノ一句ヲ削除シ、其他ハ原案ニテ差支ナシト考フ、余リ真正直ノ考ヘヲ以テ建議ナスヨリモ、先ツ本案ノ如ク建議為シ、弥ヨ実施ニ臨ミ其費途巨額ナレハ、其際政府ニ向テ補助ヲ仰クモ晩キニアラサルヘシ
○五番田口曰　起草ノ旨意ハ、港ヲ築キ砲台等ヲ設クルハ防禦ニアルヲ以テ国庫ヨリ支弁セラルヘシ、又港ヲ築キシ為メ商業ニ繁盛ヲ来タセハ、都下ノ人口モ増加スルニ依リ、其幾分ハ増税ニナルモ市民ハ負担ニ苦ムコトナシト云フノ精神故、原案ニテ差支ナシト考フ
○二十六番益田曰　五番ニ問フ、築港ニ係ル費用ハ、市民ニ於テ負担シ得ラルヽ見込ナルヤ
○五番田口曰　私ハ負担シ得ルト考フ、現ニ五拾万円ヲ費ヤシテ百万円ノ地所ヲ得タル例モアリテ、築港ノ為メ得ル所ノ利益ハ少ナカラサル故、決シテ其費途ハ苦慮スルニ足ラス
○十九番銀林曰　国防云々ノ一句モ削除シ、而シテ築港ノ挙タル東京ノ商業ノミニ止マラス、全国ノ商業ニモ大関係ヲ有スレハ、何分ノ保護アランコトヲ希望ストシ、市民ノ負担ニ堪ユルト云フノ点ハ存シ置キテ可ナラン
○二十六番益田曰　横浜ノ築港スラ単ニ政府ノ支弁スル所ナルニ、我カ都府ノ東京湾ヲ改良スルニ方リ、其費途ハ自ラ進ンテ支弁セント云フニモ及ハサルヘシ、故ニ費途ノ負担方ハ明記セサルコトニ為スヘシ
○十六番長与曰　一体此建議ヲ為スコトニ決シタル精神ハ、市区改正事業ヲ議スルニ築港ノ計画ト対照シテ議サヽレハ不利不便ノ廉尠ナカラサルニ依リ、築港設計ノ議権ヲ当委員会ヘ附与セラレタシト云フニ在リ、故ニ先ツ議権丈ヲ請求シ、弥ヨ設計ヲ議スルニ臨ミ其経費タル巨額ニシテ実際市民ノ負担ニ堪ヘ難クハ、其際事情ヲ詳カニ具シ補助ヲ仰クト為シテ可ナラン
○三番藤田・二十番村上・十五番桐原・七番武藤並曰　十六番ノ説ヲ賛成ス
○二十二番古市曰　起草者ノ精神ハ政府ニ於テ築港ヲ議サシムルモ、市民ハ其経費ノ負担ニハ堪ヘサルヘシト認メラレシナランカ、市民ハ決シテ負担シ得サルニアラストノ意見ヲ掲ケラレシモノナラン
○三番藤田曰　設計ニシテ定マラサレハ其費用ハ分ラサル筈故、負担ノ如何ハ別ニ掲クルニ及フマシ
○五番田口曰　併シ凡ソ目的ハ付ケ置カサルヘカラス、水道ヲ改正スルハ即チ衛生上ニアリ、又港湾ヲ改良スルハ商業ノ利便ニアリ、故ニ市民ニ於テ港湾ヲ改良セハ「トンネジー」即チ入港税ハ港湾改良者タル市民ニ於テ収入シテ可ナラン
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○二十六番益田曰　私ハ港湾改良事業ノ如キハ、政府ニ於テ充分保護セラルヽヲ至当ト信ス
○四番福地曰　十九番ノ説モアリタレトモ、築港ハ単ニ東京ノ商業ノミニ止マラス、全国ニ関係ヲ有スルニ依リ、何分ノ補助ヲ仰クト為サンヨリモ、市民ニ於テ負担為シテモ此事業ヲ挙行為シタシト記載為ス方文勢強マリ、熱心ノ意思ヲ貫徹スルニ至ラン、而シテ負担ニ堪ユルト否トハ第二ノ問題ナラン
○七番武藤曰　設計議定ノ後ナラテハ、其費途ノ負担ニ堪ユルヤ否ヤハ察知スルヲ得サルヘシ、然レハ負担シ得ルト明言スルハ面白カラス、況ンヤ築港其物タル市民ニ一任スヘキ性質ノモノニアラサルニ於テオヤ
○十九番銀林曰　築港ノ事業ト雖トモ既ニ審査会ニ於テ審議ヲ遂ケタルモノニシテ、上水・下水ノ改良ト同一ナルニ依リ、費途ノ出所ヲ講究シ明ニ之ヲ記載セサレハ、此建議ハ誠ニ空漠ニ属スルナラン
○七番武藤曰　負担ノ方法ヲ添ユルハ不可ナキモ、未タ築港ノ方法ヲ知ラサル前ニ在テ、軽卒ニモ負担ニ堪ユルト明言スルハ宜シカラサルナリ
○五番田口曰　苟モ築港ヲ望ム以上ハ其費用ノ負担ハ見込サルヘカラス、政府ハ横浜ノ築港ノミニテ足レリト為スモ知ルヘカラス、然ルニ市民ハ府下ノ築港ヲ熱望スル限リハ、市民ニ於テ其費途ヲ支弁スルト云フノ外ナカラン、若シ費用ノ負担ハ望マストナラハ、其結果築港ヲ望マサルコトニナルヘシ
○二十番村上曰　未タ築港ノ計画モ定マラサルニ、市民ニ於テ其負担ニ堪ユルト云フハ、根拠ナキ意見ト云ハサルヘカラス、故ニ先ツ議権ヲ得テ審査ヲ遂ケ、其費額ヲ概算シタル上果シテ負担ニ堪ヘスハ其理由ヲ具シテ補助ヲ請フ方允当ナルヘシ
○五番田口曰　築港ノ利益ト其費途トニ目的ナクハ寧ロ此建議ハ見合スヘシ、私ハ築港ニシテ竣功ヲ告ケナハ、必ス東洋ノ倫動トナルヤ疑ナシ
○三番藤田曰　先刻来頻リニ議論アレトモ、第三句ノ（由テ熟案スルニ云々）以下ハ全ク削除シテ可ナラン、既ニ七番モ述ヘラレシカ、未タ築港ノ何タルモ知ラサルニ其負担ニ堪ユルヤ否ヤハ、素ヨリ知ルヲ得サルヘシ、五番ハ先刻東京湾澪浚ノ事業ヲ挙ケ、五拾万円ヲ抛テ百万円ノ地所ヲ得タリト誇リ顔ニ申サレタレトモ、其ハ全ク事実ト相違シ居レリ、当時自分ハ区部会ニ於テ痛ク反対ヲ表シタレトモ遂ニ自説行ハレス、地面ヲ造ルヲ主眼トシテ浚渫事業ヲ可決為セシハ、当時ノ議事録ニ瞭然タリ、澪浚事業ハ斯ル事実ナル故築港ヲ望ムノ証トスルニ足ラス、五番及二十五番等モ回顧シテ良心ニ訴ヘラレナハ、事実ニ齟齬スル文飾ヲ省略スル説ニハ同意セラルヽナラン
○四番福地曰　「其事国防ニ関スルモノアリ、商業ニ関スルモノアリ其国防ニ関スルモノハ政府其支弁ニ任セラル可キカ」トアルヲ「其事啻ニ東京ノ商業ニノミ関スルモノニアラス、実ニ全国商業ノ利益タルヲ以テ、政府ハ其支弁ヲ分担セラレテ至当ナルヘシ」ト修正シ
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其五行前ニ「果シテ然レハ」トアルヲ「然ルニ」トシ、「亦市民ノ負担ニ堪ヘサル所トス可ラス」トアルヲ「強チニ市民ノ負担ニ堪ヘサル所ナリト云フ可ラス」トシ、末ヨリ六行目ニ「決シテ」トアルヲ「敢テ」ト改メテハ如何
○二十五番芳野曰　四番ノ修正説ヲ賛成ス、又三番ハ澪浚工事ニ関シ云々ト説カレタレトモ、地所ヲ造ルヲ目的トナセシト云フハ三番一己ノ考ヘナラン、私抔ハ澪ヲ浚フ目的ニテアリキ
○十五番桐原曰　私ハ十六番ト同感ニテ、市区改正スラ市民ハ其負担ニ驚ケリ、然ルニ尚進ンテ築港費ヲ負担シ得ルト明言スルハ宜シカラス、就テハ三番ノ説ノ如ク、由テ熟案スル以下ヲ削除スヘシ
○二十番村上曰　私モ三番ノ説ヲ賛成ス、仮令ハ壱千万円ニテ果シテ完全ニ港湾ヲ改良シ得ルヤ、又其費額ハ果シテ市民ノ負担ニ堪ルヤ否ハ、委員会ニ於テ築港ノ計画ヲ認メシ上ナラテハ、明言スルヲ得サルヘシ
○十八番伊藤・十九番銀林並曰　四番ノ修正説ヲ賛成ス
○三番藤田曰　東京湾ヲ干潮下十二呎ニ浚渫スルモ、是迄ヨリ稍々大ナル船舶品海湾ニ入リ得ルト云フニ過キスシテ、必竟五拾万円ヲ支出セシハ弐拾五万坪ノ土地ヲ得ルニアリテ、港湾改良ヲ望ムノ証トスルニ足ラス、故ニ此字句ハ宜ク削除スヘシ、又費途ノ負担ニ堪ル如何ハ築港ノ設計定リシ後チニ論スル順序トス
○二十五番芳野曰　三番ハ東京湾澪浚ノ決議ヲ彼是云ハルヽカ、当時決議ノ顛末ハ議事録ニ掲ケアリテ、只今喋々論スルモ無益ナラン
○十番鬼頭曰　私ハ三番ノ意見ト反対ニテ、東京府区部会ニテ東京湾ヲ十二呎ニ浚渫シタルハ築港ヲ望ムノ証拠立ニ掲ケ置クニ如カスト考フ
○三番藤田曰　文章論ハ姑ク措キ、十六番ノ意見ノ如ク建議為スカ、将タ原案ノ如ク補助ヲ請フコト迄ヲ建議文ニ掲クルカ、此二点ノ内孰レニカ決シ、然ル後文案ヲ議スル方便宜ナルヘシ
○委員長曰　然リ、先ツ建議スヘキ精神ヲ決スルトシ、十六番ノ意見ニ同意者ハ起立アレ
　　起立七人
　又曰　小数ニ付、十六番ノ意見ハ消滅ニ属ス、次ニ此建議案ヲ四番発議ノ如ク修正スルニ同意者ハ起立アレ
　　起立十二人
　又曰　多数ナルヲ以テ、四番ヨリ発議ノ如ク修正ヲ加ヘ、建議書ヲ差出スコトニ決ス、偖玆ニ諸君ニ諮ルヘキ一事アリ、最初東京府知事ヨリ東京市区改正ノ意見書ヲ提出ニナリシ頃ニハ、四等・五等ノ道路モ細密ニ調ヘアリシカ、審査会ニ於テハ四等道路ニ至テハ其最モ要用ノ部分ヲ議定シ、五等道路ノ如キハ全ク其位置ヲ議定セス、路線ハ実施ノ時ニ譲リタルニ、諸君ハ悉ク之ヲ議定シ置クヘシトテ数日ノ労ヲ取リ、五等道路ニ至ル迄細密ニ其路線ヲ議定サレタリト雖モ、尚ホ調査ヲ尽サハ、日本橋・神田・京橋三区ノ如キニ至テハ改正路線ニ編入スヘキ道路モアルナルヘシ、今其一例ヲ挙クレハ木挽町ニ於テモ、起立工商会社ノ前迄ハ道路ノ幅員広クシテ、夫ヨリ
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先キハ幅員狭隘ニナリ居リ、是等ノ道路ヲ取調フルハ随分煩雑ナルヘキモ、此儘ニテ裁可ヲ得、若シ彼ノ道路ニシテ改正ヲ加ヘナカラ此道路ニシテ現形ニ据置キナハ、当時ノ手落ナリシト他日ニ至リ噬臍ノ悔アルヲ遺憾トス、諸君ニ於テ同感ナレハ是ヨリ委員ヲ設ケ神田・京橋・日本橋三区ノ如キ要所ノミニテモ今一層調査ヲ尽シ、改正路線ニ追加スヘキ道路アラハ之ヲ追加スルコトニ為シテハ如何
○十九番銀林・二十五番芳野並曰　如何ニモ委員長ノ示サルヽ如ク未タ脱漏ナシトハ保シ難シ、是ハ委員ヲ設ケテ調査ヲ遂クルニ如カス
○五番田口曰　既定路線外ノ道路ニシテ、焼失ニ係リシ場合ハ、其幅ヲ取拡クル等ノコトハナカルヘキヤ
○委員長曰　其ハ未定ナリ、現在弐・三間ノ道路ニシテ焼失ニ罹リ、之ヲ四・五間ノ道路ニ拡クルノ必要アルナラント考フ、是迄ハ府知事ニ無限ノ権力アリテ、焼失跡地ニシテ取拡クヘキ必要アリト認ムレハ、其手続ヲ尽シ改正ヲ加ヘシモ、今後ハ勅令ヲ以テ道路ノ幅員ヲ定メラルヽニ依リ、是迄ノ如ク改正ヲ加フルコトハ出来サルヘシ
○五番田口曰　然ラハ既定路線外ノ道路ニシテ焼失ニ罹リシ場合ハ、三尺若クハ六尺ツヽ家屋ヲ引下ケ建築スヘシトノ規則ヲ設クルトシテハ如何
○委員長曰　幅員弐・三間ノ道路ニ対シテハ、少シク考案ヲ有シ居ルニ依リ、其考案ニシテ詮議ヲ尽セシ上ハ、尚諸君ニ諮ル所存ナリ
○七番武藤曰　調査ヲ要スル場所ヲ定ムルト為シテハ如何
○二十八番渋沢曰　完全ヲ求ムルニハ、全区ヲ調査スルニ如カサレトモ、経済上ト軽重トノ比較ヲ以テ先ツ必要ノ場所丈調査スルトシ、他ハ委員ノ意見ニ任スト為シテハ如何
○四番福地曰　然リ、委員長ノ示サレタル通、神田・京橋・日本橋ノ三区ヲ一部トシ、其部内ヲ精査シ、其他ハ委員ノ見込ニ任スト為スヘシ
○二十八番渋沢曰　然リ、四番ノ意見ノ如ク為スニ如カス
○委員長曰　異論者ナクハ、十九番・十八番・二十五番・二十八番・七番ノ五氏ニ委員ヲ煩ハサン
○十六番長与曰　委員長ニ請願アリ、新橋以北煉瓦通リノ幅員ニ対シテハ第二次会以来議論囂然、遂ニ第一等道路第一類ニ決定ヲ告ケシカ、十六番ハ千思万考スルモ現在ノ幅員ニテ充分ト信セリ、若シ之ヲ弐拾間ニ改正シタランニハ巨額ノ費用ヲ要スルノミナラス、折角拾五間ノ幅員ニ整理セシメシニ、再ヒ弐拾間ト改正シタランニハ、市民モ之ニ眼ヲ注キ、市区ノ改正ハ武断政治ニ渉ルト怨嗟スルモノアルニ至ラン、殊ニ拾五間ノ幅員アレハ、現在ノ煉瓦家屋ヲシテ三階造ト為スモ衛生上更ニ差支ナキニ依リ、委員長ヨリ大臣ヘノ復申ニハ当委員会ニ於テ銀座通リハ幅員拾五間ニテ充分ナリトノ議論アリタル旨、復申セラレンコトヲ望ム
○委員長曰　拙者ノ資格ニテハ其復申ハ為シ難シ、尤モ大臣ニ於テ議事ノ模様ヲ下問ニナレハ、議論ノアリシ次第ハ開申スヘシ、且ツ十六番ノ意見ハ議事録ニ詳記シアリト承知セラルヘシ
○四番福地曰　議事録ハ大臣ニ進達セラルヽヤ
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○委員長曰　然リ
○中略
○委員長曰　本日ハ此ニ議事ヲ停メ散会セン
　　　于時午後第五時