デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治27年9月27日（1894年）

是日栄一、当委員会ニ出席シ、日本鉄道会社ニ於テ隅田川線及ビ土浦線布設ノ件ニ付キ内務大臣ヘ復申案・神田今川小路等ヘ電話柱建設ノ件ニ関スル議事ニ与ル。

東京市区改正委員会議事録　　第七巻・第五五―六三丁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府文庫所蔵）
東京市区改正委員会議事録第百十四号
　　明治二十七年九月二十七日午前十時五十五分開議
　　　　闕席　仁杉英　○外九名氏名略
　　　　出席十六員（四番・五番・十五番・二十一番・二十五番欠員）
○委員長代理山県曰　委員長ハ他ヘ出張不在ニ付、本員ヘ代理ヲ嘱セラル、議事ニ先タチ報告アリ、之ヲ朗読セシムヘシ
○中略
　又曰　○中略　是ヨリ諮問第十三号ヲ議セラルヘシ
　　　書記朗読（此際一番着席）
　　諮問第十三号
　　日本鉄道会社ニ於テ隅田川線及土浦線ヘ鉄道線路布設ノ件、別紙内務大臣ノ訓令ニ対シ、左ノ通復申セントス
　　内務大臣ヘ復申案
　　日本鉄道会社ニ於テ隅田川線及土浦線布設ノ件、本会ニ於テ審議ヲ遂ケ候処、同会社ニ於テ左ノ条件ヲ承諾シタル上ハ異存無之ト決議致候
　　　一市区改正設計路線及屠獣場ハ他日実施ノ場合ニ際シ障害アルモノハ同会社ノ費用ヲ以テ其鉄道線路ノ移設ヲ為サシムル事
　　　一市区改正設計第三等道路ニ該当スル浅草山谷通リ路線ノ中、貨物停車場ニ面スル部分ノ道幅ハ、同会社ノ費用ヲ以テ幅員十間ニ取拡ムル事
　　右復申候也
　　　年　月　日　　　　　　　　　　　　　　　　委員長
　　　　　内務大臣宛
　　　○諮問第十三号、日本鉄道株式会社布設鉄道新線路之図（附図第四三）。
　　　○右其二　（附図第四四）。
　　別紙
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　日本鉄道株式会社鉄道布設ニ関シ、別紙逓信大臣照会ノ件、其会議ニ付シ候条、意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
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　　　明治二十七年八月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　伯爵　井上馨
　　日本鉄道株式会社ヨリ田端隅田川間ニ鉄道敷設ノ儀願出候処、本線路ハ市区改正上関係モ可有之ト存候ニ付、一応及御協議候条、何分ノ義御回示有之度、図面相添此段及御照会候也
　　　明治二十七年八月十一日
　　　　　　　　　　　　　　　逓信大臣　伯爵　黒田清隆
　　　　内務大臣　伯爵　井上馨殿
○十四番森田曰　図面中貨物停車場トアル処ヲ貫通セル線路アルカ、此レハ市区改正既定路線ナリヤ
○委員長代理山県曰　然リ
○十四番森田曰　復申案第一項ニ、市区改正設計路線ノ実施ニ際シ障害アルトキハ云々トノ条件アルカ、此貨物停車場ヲ貫通スヘキ路線ハ全ク廃滅ニ帰セシムルヤ、或ハ之カ実施ニ際セハ鉄道線路ヲ移設セシムルト云フノ精神ヲ含マレテ居ルヤ、如何
○委員長代理山県曰　十四番ノ御説ハ如何ナリシヤ、今一応
○十四番森田曰　停車場中ニナルヘキ路線ノ実施ニ際セハ、即チ復申案第一項ノ通リ該鉄道線路ヲ他ヘ移設セシムルニヤ、如何ト謂フノ意ナリ
○委員長代理山県曰　其場合ニ至リ、夫々方法ヲ設クルトノ意味ナリ
○十四番森田曰　此辺ニ停車場ヲ設クルハ賛成ナルカ、之ヲ貫通スル路線ノ如キハ、復申案第一項ノ、他日市区改正実施ニ際シ障害アルヤ否ヤハ今日ヨリ予測シ得ヘキ事ニアラスヤ、成程市区改正ノ上ヨリ之ヲ見レハ鉄道ヲ他ヘ移設セシムルコトモアランカ、僅々タル障害ノ為メ一旦許可シタル上布設セシ線路ノ移設ヲ為サシメ、又ハ停車場ヲ他ヘ移転セシムルカ如キニ至ツテハ、寧ロ初メヨリ許可セサルノ勝レルニ如カサルナリ、故ニ其興廃ハ全体ノ事業ニ重大ナル関係ヲ及ホスモノナレハ、是等ノ処分法ヲモ併セテ調査シ、果シテ障害ナキヤ否ヤヲ慥メタル上議セン事ヲ欲ス
○二十四番佐久間曰　十四番ト同感ナリ、斯クノ如クセハ結局市区改正道路ハ廃止スルモノト同様ニナラン
○二番須藤曰　現今此道路アルニアラサレトモ、総武鉄道停車場設置ノトキ同様ノ事アリシ
○二十四番佐久間曰　本所ノトハ違フナラン
○二十七番渋沢曰　迂回セシムルカ、又ハ移設云々トシテハ如何
○二番須藤曰　其ハ不可ナラン
○六番角田曰　障害アルモノハ云々トアリテ、余程ノ意味ハ此中ニ含マレテアル様考ヘラル故ニ、会社ニ於テハ却テ利ノアル方ナラン
○二十七番渋沢曰　軽重ヲ比較セハ市区改正ノ設計ヲ重スル方ナレトモ、会社ノ事業ヨリ視レハ十四番ノ御説ノ通リ、今ヨリ充分其等ノ事項ヲ調査シ、他日不都合ナキヲ期スル方当然ナランカナレトモ、本員ハ迂回セシムルカ、又ハ移設云々トシテハ如何ヤト思フナリ
○六番角田曰　迂回セシムルニ云々至極宜シカラン、然レトモ其ハ委員会ノ権能力為シ得ヘカラサル事柄ナラスヤ
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○二十七番渋沢曰　左様々々
○九番田坂曰　他日実施ノ場合ニ際シ云々トアルカ、此他日ナル文字ハ期ヲ限ラサルヲ以テ意頗ル深ク、只漠然ト為シタル条件ナレハ、五年ノ後ニ移設セシメラルヽヤ、将タ三年ニシテ移設ヲ命セラルヽヤ容易ニ判シ難シ、若シ斯クノ如キ短日月間ニ移設ヲ命セラルヽ如キ事アリテハ、会社ハ如何ニ迷惑ヲ被ムルヘキヤ甚タ気ノ毒ノモノナリ、確カ本所ノ総武鉄道ニ許可シタルハ三十年ノ後云々トアリタルカ如シ、故ニ他日トセス三十年ナリ五十年ナリ、年ヲ限リ置キテハ如何、年限サヘ定マリアレハ会社モ其積リニテ計画ヲ為シ置クヘシ、然ルトキハ後来不都合ヲ生スル事モアラサルヘシ
○委員長代理山県曰　本所ニハ在来道路アリシモ、之ハ田畠ノ中ナレハ、市区改正ノ如キモ数十年ノ後ナラサレハ着手セサルナラン
○九番田坂曰　停車場ヲ設置セハ自然交通モ頻繁トナルナリ、然ルトキハ十年以内ニ実施セラルヽコトアルヤモ亦知ルヘカラス、果シテ右様ノ場合アリトセハ不都合ナラスヤ
○二番須藤曰　貨物停車場ニテ、人ノ停車場ニアラス
○九番田坂曰　貨物ノ運搬カ頻繁トナレハ矢張リ同シ事ナリ、短年月間ニ海路ヲ作ルヲ要スル事モアラン
○十七番曾根曰　御懸念ハ至極御尤ナリ、然レトモ、本復申案ノ如クニシテ会社自身ニ前途ヲ慮リ止メルトナラ其レニテ不可ナシ、故ニ本員ハ原案通リニテ可ナリト信セリ
○十四番森田曰　土浦線ト隅田川線ト二条ニ線路アルカ、此山谷通リハ、交通往来頻繁ナレハ、此踏切ハ壱箇所ニ為ス事ニ願フ、如何ニヤ
○委員長代理山県曰　壱ケ所ニ為ス能ハサルトノ事ニテアリシ
○二番須藤曰　最初本員等モ僅カノ場所ニ弐ケ所ノ踏切アルヲ不可トセシカ、弐ケ所ニアラサレハ線路ヲ布設スルヲ得スト云フノ已ムヲ得サルヨリ、詮方ナシト諦メタルナリ
○十四番森田曰　如何ナル訳アリテ壱ケ所ニ為ス能ハサルヤ、僅々ノ場所ニ二条ノ踏切アリテハ、此辺ヲ通行スルモノカ数百年間不便ヲ感スルナリ、出来サルコトハアルマシ
○三十番原口曰　土浦線ハ千住ヨリ佐久間河岸ヘ通セシムルノ設計ニシテ、高架線ニ結ヒ付クルカ会社ノ目的ナリ、故ニ目今ノハ只一時ノ仮設ニ過キス
○二十四番佐久間曰　然ラハ、高架トスルモノト貨物線ト幾線ニモナルニヤ
○三十番原口曰　隅田川線ハ永久ノ設計ニシテ、土浦線ハ高架ニ結フモノ、即チ稍ヤ千住ヨリ直線トナルヲ以テ、自然踏切ルヘキ箇所ハ一ツニナルヘキモ、只今ノ処ハ二箇所ナリ
○二十四番佐久間曰　十四番ト同感ナリ、此通路ハ円太郎馬車ノ頻繁ナル処ナレハ、踏切ヲ一ツニ纏メルノ設計ニ改メラレタシ
○三十番原口曰　其ハ反対ノ方向ニ行クモノナレハ、到底出来得サルナリ
○二十四番佐久間曰　通新町・箕ノ輪ノ手前ヨリセハ如何
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○三十番原口曰　角度ノ不適合ノミナラス、中央ノ高架線ヘ結フノ設計ニテ、只一時ノ仮設ニ過キサレハ是ニテ可ナラン
○九番田坂曰　日暮里ノ湾形ハ幾許ナリヤ
○三十番原口曰　十八鎖ナリ、東海道線中程ケ谷ヘ曲ル処カ十五鎖ナレハ、其ヨリ三鎖ノ差アリ
○九番田坂曰　然ラハ二百「メートル」以上カ、如何
○十四番森田曰　何故ニ一ケ所ニ為ス能ハサルヤ、踏切ヲ二線ニセネハナラヌト云フ理由ヲ聞カン
○三十番原口曰　前ノ「メートル」ノ問ニ答ヘン、三百五十「メートル」ナリ
○九番田坂曰　湾曲ヲ三百五十「メートル」ト為スヨリ、二線ノ軌道ヲ設ケサルヲ得サルナラン、二百「メートル」ニ狭メナハ一線ニ為スヲ得ヘシ、左スレハ屠獣場ヲ強テ貫カストモ可ナルカ如シ
○三十番原口曰　隅田川ハ永久ノ見込ナレトモ、土浦線ハ先キニモ述ヘシ通リ高架ニ改造スルノ目的ナレハ、今ノ処ハ仮リト見做シテ差支ナカラン
○九番田坂曰　然ラハ其改造ハ何年頃ナリヤ
○三十番原口曰　今日ヨリ何年頃ト申ス訳ニモ参ラヌ
○十四番森田曰　貨物停車場ヲ今少シ千住ノ方ヘ寄セナハ一条ト成ルナラン、故ニ本員ハ切ニ鉄軌ハ一線路ニ改メラレン事ヲ希望ス
○三十番原口曰　貨物停車場ノ位置ヲ改ムルト云フ御説ナリヤ
○十四番森田曰　然リ、鉄軌ヲ二条ニ為スト云フノ理由ヲ認メ得ス、故ニ果シテ其位置ヲ改造セハ差支ナカルヘシ、此鉄路ハ既ニ馬車営業者アリテ其交通頻繁ナルニモ拘ラス、又々或ル会社ヨリ馬車営業ヲ出願セシ事アリシモ、危険ノ虞アリトシテ許可セサリシ程ナルニ尚ホ一層危険ナル鉄道ヲ布設セラルヽノミナラス、僅カナル距離ニ於テ二条ノ踏切アル様ニテハ永世ノ不便ナルヲ以テ、断然一条ニ訂正セラレンコトヲ欲スルナリ
○三十番原口曰　線ノ岐ルヽハ一定ノ角度アリテ、其極点ヲ踰ヘテ他線ヘ結合スルヲ得サルモノナリ、殊ニ永世ノ計画ニアラスシテ仮リニ設クルモノナレハ、尚ホ其辺モ御考ヘアリタシ
○十四番森田曰　貨物停車場ヲ千住ノ方ヘ寄セテハ如何、素人考ヘニハ「どうも」出来得ル様ナリ
○九番田坂曰　判然セヌト云フ諸君モアレハ、再調セラレテハ如何、再調説ヲ提出ス
○二十四番佐久間曰　十四番ト同感、今少シ停車場ヲ移設セハ差支ナク、一箇ノ踏切ト為スヲ得ヘキカ如シ
○九番田坂曰　本所ト違ヒ未タ道路ノ設ケアラサルナラ、尚更ラ三十年乃至五十年ト年限ヲ付スル方可ナラン
○六番角田曰　平タク云ヘハ二箇ノ踏切ハ市区改正ノ上カラハ甚タ好マサル所ナレトモ、鉄道モ亦只営利事業トノミ云ヘヌ場合モアレハ中々面倒ナルコトナリ、併シ貨物運輸ト人車交通トヲ比較シ、孰レヘ重キヲ置クヤト云ハヽ交通便利ノ方勝ルヘシ、故ニ鉄道会社ニ於テ今一応考ヘルトカ、又ハ費用モ相違スルカラ出来ヌトカ、又ハ一
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方ハ切ニ高架ニスルト、判然ト極メテ願ヒタイモノナリ
○二十四番佐久間曰　答申案二項中、山谷通リ線路ノ中「踏切ヲ一箇所トシ同」ト挿入セン、然ラハ同会社ニ於テ学術上出来得ヌナラ、又何トカスルナラン
○十四番森田曰　賛成
○十七番曾根曰　賛成、而シテ委員長ニ問フ、一項ハ如何
○委員長代理山県曰　一項ニ就テノ説ハ成立セス
○十七番曾根曰　決ヲ採ラレンコトヲ望ム
○三十番原口曰　然ラハ土浦線ノ方高架ニセハ宜シク、故ニ踏切ヲ一ケ所トスル事ニ願ハン
○委員長代理山県曰　答申案第一項ニ就キ決ヲ採ラン、原案ニ同意者ハ起立アレ
　　起立十名
　又曰　然ラハ原案ニ決シ、二十四番ノ説ニ就キ決ヲ採ル
○六番角田曰　路線ノ中トアルヲ削リ、直ニ「山谷通リノ踏切ヲ一ケ所トシ」トスル方可ナラン
○二十四番佐久間曰　然リ々々
○委員長代理山県　曰二十四番ノ修正説ニ同意者ハ起立アレ
　　起立十三名
　又曰　多数ナルヲ以テ、二十四番ノ修正説ニ決シ答申セン、次ハ第百九十八号神田今川小路等ヘ電話柱建設ニ関スル件ヲ議スヘシ
　　　書記朗読
　　説明
　　　本案道路ハ規程ノ幅員ヲ有スルモ、往来頻繁ナルニ由リ建柱支障アリト認ム　（図面略ス）
○十四番森田曰　電話ノコトナレハ敢テ支障ナシ
○六番角田曰　電話ハ必用ノ利器ナレハ許可為シタシ
○二十四番佐久間曰　牛込辺ハ庭園中ヘ建柱シタル処モアレハ、其様ナル方法取ラシムレハ、許可セサルモ差支ナカラン
○七番松田曰　本案中玉川堂ノ横町カ宜シカラサレトモ、其他ハ差支ナキカ如シ
○六番角田曰　今川小路一丁目ニ四間五分トアル箇所ト、裏神保町ノ四間余トアル箇所カ宜シカラサルモノヽ如シ
○二十七番渋沢曰　電話ノコトナレハ大抵ナラ我慢シテ許シタシ、神田区選出ノ委員諸君サヘ宜シクハ如何
○七番松田曰　四柱丈ハドウモ困ル
○十四番森田曰　然リ、其四柱丈ヲ除キ其他ハ許可スルモ可ナラン、其説ヲ提出ス
○二十四番佐久間曰　賛成
○委員長代理山県曰　決ヲ採ル、十四番ノ四柱ヲ除キ其他ハ許可スルト云フ説ニ同意者ハ起立アレ
　　起立十二名
　又曰　多数ナルヲ以テ右ニ決シ　○下略