デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治28年4月1日（1895年）

是日栄一、当委員会ニ出席シ、京橋区木挽町一丁目及ビ築地一丁目道路取拡整理並ニ河川改修ノ件麹町区四丁目焼失跡道路取拡ノ件・電気鉄道布設ノ件・馬車鉄道布設ノ件ニ関スル議事ニ与ル。

東京市区改正委員会議事録　　第八巻・第一―二一丁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府文庫所蔵）
東京市区改正委員会議事録第百十六号
　　明治二十八年四月一日午前十時四十八分開議
　　　　闕席　三浦安　　　高橋仲次　　　古川宣誉
　　　　　　　佐藤秀顕　　古市公威　　　田健次郎
　　　　　　　長与専斎　　石黒五十二
　　　　出席十八員　四番・五番・十五番・二十一番・二十五番欠員（三十番・三十一番・三十二番ハ召集セス）
○委員長代理山県曰　本日ハ委員長事故アリ出席セス、本員ニ代理ヲ嘱セラレタリ、偖テ議事ニ先タチ報告スヘキ件アリ、書記ヲシテ朗読セシム
　　　書記朗読
　　報第五十七号
　　本市水道改良工事ノ儀ハ、明治二十四年度ニ起工シ、同二十八年度ニ成功ノ予定ニ有之候処、公債募集期遷延・用地買収ノ協議不調等ノ為メ、二十五年十二月ニ至リ始メテ本工事ニ着手シ、且鉄管埋敷工事ヲ遅滞致シ候為メ、来明治三十一年九月ニ至ラサレハ完成シ難キ見込ニ有之候間、此際竣功期並年度変更ノ儀内務・大蔵両大臣ヘ及稟請候条、此段及御通牒候也
　　　明治二十八年二月二十三日
　　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　市区改正委員長　三浦安殿
　　報第五十八号
　　甲武鉄道線路ノ内、牛込門外ニ当ル場所ハ市区改正設計線路ニ相係リ候ニ付、鉄道線路沿ニ設クル幅六間ノ道路ハ同会社ニ於テ開設セシメ候事ニ相成居候ニ付、鉄道竣成ト共ニ該新道開設ニ着手セシムヘキ筈ニ有之、然ルニ今回右新道トナルヘキ場所ヘ水道改良用材料運搬ニ要スル鉄道分岐線路布設ノ儀、同会社ヨリ逓信大臣ヘ出願ノ末、向フ五箇年間敷設ノ儀認可相成候ニ付、同事業結了ノ時マテ開道工事着手延期ノ儀願出候処、事実不得止儀ニ付明治三十一年十二月マテ起工延期《（旨脱カ）》ノ本日聞届候条此段及御通牒候也
　　　明治二十七年十二月十一日
　　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　市区改正委員長　三浦安殿
　　報第五十九号
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　　　　明治二十七年自七月至十二月幹事会処理件名
　　一牛込区弁天町内道敷上地道路取拡ノ件
　　一京橋区越前堀二丁目一二番地先川敷埋立ノ件
　　一芝区三田四国町二番地内民有道路変更ノ件
　　一四谷区東信濃町道路変更ノ件
　　一本郷区湯島四丁目内共有墓地ニ通スル道路廃止ノ件
　　　外ニ
　　　　電話電灯ニ関スルモノ六十二件
　　右之通リ
　　　○牛込区弁天町内道敷上地道路取拡之図（附図第四五）。
　　　○京橋区越前堀二丁目一二番地先川敷埋立之図（附図第四六）。
　　　○芝区三田四国町二番地内民有道路変更之図（附図第四七）。
　　　○四谷東信濃町道路変更之図（附図第四八）。
　　　○本郷区湯島四丁目内民有廃道之図（附図第四九）。
　又曰　議第二百四号旧東京府庁脇及旧日比谷練兵場地先道路取拡並溝渠新設ノ件ヲ議セラルヘシ
　　　書記朗読（此際十三番着席）
　　麹町区内幸町旧東京府庁脇、及旧日比谷練兵場地先ハ市区改正設計中第一等第一類線ニ該当ノ場所ニ有之候処、今般旧府庁建物等悉皆取払、且日比谷練兵場ノ儀モ既ニ公園ニ編入シ、別紙図面ノ通取拡方施行致候、接続ノ線路ニ付此際点線ノ如ク取拡方実施可致ト存候条、御意見承知致度、費用概算書相添此段及御照会候也
　　　明治二十八年二月十六日
　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　東京市区改正委員長　三浦安殿
　　○議第二百四号、旧東京府庁脇及旧日比谷練兵場地先道路取拡並下水新設之図（附図第五〇）。
○二番須藤曰　本案ニ要スル費用ハ、何レノ金ヲ使用スル見込ナリヤ
○委員長代理山県曰　二十六年度繰越金ナリ
○十四番森田曰　図面中右手ノ曲リ角ハ常ニ混雑スル場所ナリ、此際倶ニ施行スルコト能ハサルヤ如何
○二番須藤曰　其処ハ斜ニ東京ほてるノ処ヘ出ル設計ナレハ、曲リ角ハ関係ナシ
○十七番曾根曰　今日ノ問題ハ頗ル重要ノモノ多キカ、只今定足数ニ差支ナキヤ
○委員長代理山県曰　現員ヲ以テスレハ十一名ニテ足レリ、只今ハ現ニ夫レヨリ多シ、差支ナシ
○二番須藤曰　議論ナシ
○委員長代理山県曰　別ニ異議ナクハ原案ニ決シ、其次議第二百五号京橋区木挽町壱丁目・築地壱丁目道路開拡整理、並河川改修ノ件ヲ議セラルヘシ
　　　書記朗読（此際六番着席）
　　京橋区木挽町亀井橋際別紙図面ノ場所ハ、市区改正設計中第五等道路並河川改修敷地ニ係リ候処、同所ハ水道鉄管布設ノ為メ道路
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開設ヲ要シ候ニ付、相伴フテ河川ノ改修ヲ施行シ、其掘取土ヲ以テ築地壱丁目沿ヲ埋立テ第五等道路ヲ開設シ、且ツ在来道路幅員ヲ整理シ、其不用道敷及埋立不用地ヲ売却シ施行可致ト存候条、御意見承知致度、図面相添此段及御照会候也
　　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　明治二十七年五月四日　　　東京府知事　三浦安
　　　　市区改正委員長　三浦安殿
　　○議第二百五号、京橋区木挽町一丁目及築地一丁目道路開拡整理、並河川改修之図（附図第五一）。
　　　　道路開設並河川改修費概算
　一金弐万九千弐百弐拾三円八銭弐厘
　　　　　内訳
　　　　市公債募集金ヨリ支出ノ部
　　金壱万三千百拾四円弐銭弐厘
　　　　　　内
　　　金七千三百八拾七円四銭　　　　　道敷買上代
　　　　此地坪四百六拾壱坪六合九勺　平均壱坪金拾六円
　　　金四千三百七拾六円　　　　　　　建物其他移転料
　　　金五百七拾五円三拾三銭弐厘　　　工費
　　　　此地坪四百六拾壱坪六合九勺　平均壱坪金壱円弐拾四銭六厘
　　　金弐百六拾五円　　　　　　　　　橋梁費
　　　金壱円六拾五銭　　　　　　　　　測量費
　　　金九円　　　　　　　　　　　　　雑支出
　　　金五百円　　　　　　　　　　　　予備費
　　　　不用地売却代及剰余金ヨリ支出ノ部
　　金壱万六千百九円六銭
　　　　　　内
　　　金五千弐拾四円三拾弐銭　　　　　川敷買上代
　　　　此地坪三百拾四坪弐勺　平均壱坪金拾六円
　　　金三千四百九拾六円八拾銭　　　　河岸地敷買上代
　　　　此地坪弐百拾八坪五合五勺　平均壱坪金拾六円
　　　金弐千五百弐拾壱円六銭　　　　　建物其他移転料
　　　金三千弐百八拾三円八拾四銭弐厘　石垣築造費
　　　金五百九円八銭五厘　　　　　　　改鑿費
　　　金千百八拾九円六拾弐銭九厘　　　埋立費
　　　金八拾四円三拾弐銭四厘　　　　　地均費
○二十四番佐久間曰　新タニ市有地ヲ生スルヤ
○三番仁杉曰　然リ
○二番須藤曰　河岸敷地ヲ買上ルト云フハ如何ナルモノニヤ、一宅地ヲ為サヽサモノハ買上ルコトヲ得ヘキモ、河岸敷地ノ買上ハ市区改正ノ法律カ之ニ当テ箝メ得ラルヘキヤ
○委員長代理山県曰　設計中ノモノユヱ、即チ該規則ニ依リ買上得ラルヽナリ
○七番松田曰　市区改正ハ単ニ道路ノミニアラス、故ニ其設計中ノモ
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ノハ買上得ラルヘシ
○二番須藤曰　然ラハ宜シ
○二十四番佐久間曰　市区改正上必要ヨリ本案ノ起リシモノカ、又ハ他ノ必要アルニ依レルカ
○三番仁杉曰　之ハ一方ヘ鉄管ヲ埋布スヘキ道路ヲ作リ、他ノ一方ヘ区役所ヲ建設セントスルカ為ナリ
　　（此際二十七番・二十九番着席）
○二十九番益田曰　本案ハ最モ必要ナル場所ニシテ、どふもならぬ所ナレハ、早急ニ開設セラレンコトヲ希望ス
○委員長代理山県曰　別ニ異議ナクハ原案ニ決シ、其次議第二百六号麹町区四丁目焼失跡道路取拡ノ件ヲ議セラルヘシ
　　　書記朗読
　　議第二百六号
　　麹町区麹町四丁目ノ内三月二十九日焼失ニ罹リシ場所ハ、市区改正設計中第五等道路ニ該当候間、別紙図面淡紅色ノ通リ此際取拡方施行可致ト存候条、御意見致承知度、此段及御照会候也
　　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　明治二十八年三月三十日　　　東京府知事　三浦安
　　　市区改正委員長　三浦安殿
　　　○議第二百六号、麹町四丁目焼失跡道路取拡之図（附図第五二）。
○十四番森田曰　図面紅色線中カ烏有ニ帰シタル場所ナランカ、特リ其角ノミナラス、此中モ何トカナラヌニヤ
○委員長代理山県曰　其ハ設計ニ関係ナシ
　　（此際二十三番着席）
○二十四番佐久間曰　異議ナシ
○委員長代理山県曰　然ラハ原案ニ決シ、次ハ諮問第十四号電気鉄道布設ノ件ニ移ル
　　　書記朗読
　　諮問第十四号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　別紙東京馬車鉄道株式会社出願ニ係ル既設馬車鉄道ヲ電気鉄道ニ変更ノ件、並ニ藤岡市助外五名・立川勇次郎外四名・雨宮敬次郎外四拾壱名出願電気鉄道布設ノ件、其会議ニ付シ候条、意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
　　　明治二十七年十二月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　子爵　野村靖

　　　　馬車鉄道ヲ電気鉄道ニ変更ノ儀出願ニ付稟申
　　東京馬車鉄道会社長ヨリ在来布設ノ馬車鉄道ヲ電気鉄道ニ変更セントシ別紙ノ通出願ノ趣有之候ニ付、実地ノ状況等検査ノ上篤ト審議ヲ尽シ候処、本願ノ如ク在来布設ノ馬車鉄道ヲシテ電気鉄道ニ変更セシムルニ至リテハ、必スヤ既設ノ電話及電信線等ニ関係ヲ及スコト少ナカラスト被存候ノミナラス、現在馬車鉄道布設ノ
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線路ハ当府下市街中ニ在リテ通行最モ繁劇ナル街路ニ属シ、殊ニ目下其路線中電信・電灯・電話線等既設ノ電柱甚タ多ク、為メニ頗ル其混雑ヲ極メ居リ此上増設スヘカラサル状況有之、加之街路電灯線其他電力線架設ノ儀ハ、一街路中其両側ナルト片側ナルトニ拘ハラス又幅員ノ広狭如何ニ関セス、総テ一線路ノ外之ヲ許可セサルノ方針ナル旨曾テ逓信省ヨリ警視庁ニ注意相成、而シテ該庁ヘ其旨通知相成タル次第モ有之、旁本願ノ如キハ他年市区道路ノ改正ト街路電気線条ノ改良整理ヲ待テ之ヲ許可スルハ格別、目今ノ場合ニ於テハ到底其認可ヲ与フルコトヲ得サルモノト被存候得共、別紙願書相添ヘ此段相伺候条、何分ノ御指揮有之度候也
　　　明治二十七年十月九日
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　内務大臣　伯爵　井上馨殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（別紙書類略ス）

　　　　電気鉄道布設願ノ件ニ付稟申
　　　　　　　　　　　　　　東京電気鉄道株式会社発起人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　藤岡市助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　外五名
　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京電気軌道発起人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　立川勇次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　外四名
　　　　　　　　　　　　　　東京電気鉄道起業者総代
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　雨宮敬次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　外四拾壱名
　　当府下市街道路ニ電気鉄道ヲ布設ノ儀ニ付、前書各発起人ヨリ別紙ノ通リ出願セリ、依テ夫々実施ノ状況ヲ審査シ篤ト詮議ヲ遂ケ候処、本願電気鉄道ヲ布設セントスル線路ハ、何レモ府下市街中ノ要路ニ属シ、目下概ネ電話及電灯線等ノ設ナキ路線無之、然ルニ曾テ逓信省ノ注意ニ依ルトキハ、街路ニ電灯及ヒ電力線ヲ架設スルハ、一街路中一線路ノ外之ヲ許可セサルトノ方針ナルノミナラス、目今当府下市街ノ状況ニ徴シテ之ヲ考察スルニ、市区改正事業ノ如キハ今ヤ漸ク緒ニ就キ、僅ニ其一端ニ着手スルニ至リシト雖モ、未タ道路ニ橋梁ニ水道ニ、前途尚ホ大ニ改良ヲ施サヽルヲ得サルモノ有之、若シ今日府下現況ノ如キ不整理ノ街路ニ向ツテ軽挙是等ノ布設ヲ許可スルニ至リテハ、将来諸般ノ事業上種々ノ障害ヲ惹起スルハ勿論、随テ起業者ニ於テモ屡々既設ノ軌道変更等ニ就テ損害ヲ受クヘキコトニ相成、加之街路電話及電灯・電信等ノ諸線ハ、市区ノ繁盛ヲ進ムルニ随テ倍々其架設ノ増加スヘキハ顕然ニシテ、自然右等ノ諸線ハ将来之ヲ地中線ニ変更スル等早晩必スヤ其改良政理ヲ要セサルヲ得サルモノト被存、之ヲ府下現時ノ状況ニ徴シ、将来ノ趨勢ニ鑑ミ、彼是其許否ノ如何ヲ致考慮候トキハ、本願ノ如キハ暫ク之ヲ他年ニ期シ、追テ府下市街道路ノ整理及街路電気線条等ノ改良整理ヲ待テ、之ヲ詮議スルヲ必
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要トシ、到底之ヲ今日ニ認許スルコトヲ得サルモノト被存候ニ付総テ御許可不相成様致度、依テ別紙願書相添ヘ此段及稟申候也
　　　明治二十七年十月二十二日
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　内務大臣　子爵　野村靖殿
　　　　　　　　　　　　　　　（別紙願書並図面略ス）
　　　　摘要
　　東京馬車鉄道株式会社出願設計
　　一線路　　　　　芝口ヨリ新橋・日本橋・万世橋・上野広小路ヲ経テ浅草雷門前ニ至ル、本町三丁目ヨリ横山町通リ及本石町三丁目ヨリ馬喰町通リ・浅草通リ・浅草雷門前ニ至ル在来線路
　　一軌道　　　　　在来ノ通リ
　　一発電所　　　　市内適当ノ場所ニ設ク
　　一電車線単線式　甲ハ道路ノ両側、乙ハ片側ニ、丙ハ複線軌道中央ニ、地線ハ軌道ノ中心ニ埋没シ、又在来電柱アル場所ハ之ヲ応用ス
　　一客車　　　　　在来ノモノ
　　一走行速力　　　一時間六哩乃至八哩
　　一電気圧力　　　電車線平均ノ電圧五百ボルト
　　東京電車鉄道株式会社発起人出願設計

　　一軌道　　　　　軌道ハ一碼ニ付量目五拾磅ノ凹形鋼鉄製ニテ、幅員四呎弐吋トス
　　一踏切　　　　　十字形ヲ為ス道路ニ在テハ、敷石又ハ煉瓦石ヲ以テ踏切ヲ設ク
　　一発電所　　　　東京電灯株式会社ヨリ供給ス
　　一電車線　　　　甲ハ道路ノ両側ニ、乙ハ軌道ノ片側ニ電柱ヲ設ケ地線ハ軌道ノ中心ニ埋没シ又ハ其被覆シタルモノヲ電柱上ニ架設ス
　　一客車　　　　　長十六尺幅六尺五寸ノ木製箱ヲ載セタル四輪車
　　一走行速力　　　一時間六哩乃至八哩
　　一電気圧力　　　電車線ニ於ケル電圧五百ボルト
　　東京市京橋区南鍋町弐丁目四番地立川勇次郎外四名出願設計
　　一線路　　　　　神田万世橋ヨリ神田橋外堀端通リヲ経、一石橋・比丘尼橋ヲ渡リ、八官町・土橋・愛宕下・芝公園
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ヲ過キ、赤羽根橋ヨリ品川鉄道停車場ニ至ル
　　　　　　　　　　新宿停車場ヨリ四谷門ヲ入リ、麹町通リ・半蔵門外堀端通リヲ経、桜田門外新シ橋ヲ出テ、芝南佐久間町・新幸町ヨリ芝口・新橋ニ至ル
　　　　　　　　　　　但単線、尤モ客車往復ニ須要ノ部分ハ複線トス又広路ハ漸次複線トス
　　一軌道　　　　　軌条ハ一碼ニ付、弐拾五磅ノ丁字形ノ鋼製ニシテ其幅員三呎六吋トス
　　　　　　本設計ハ他ノ三者ト異リ、電車線地中線ニ依ラス、薬品ヲ用ヒ発電セシムル蓄電器ヲ一車毎ニ設ケ、以テ客車ヲ自動セシム
　　東京市京橋区築地弐丁目四拾壱番地雨宮敬次郎外四拾壱名出願設計

　　一軌道　　　　　軌道ハ一碼ニ付五拾五封度ノ「ガーダーレール」ヲ使用ス、幅員三呎八吋以内トス
　　一発電所　　　　弐千馬力ノ蒸汽器械ト之ヲ称フ器械ヲ備フ
　　　　　　　　　　　但其位置ヲ示サス
　　一電車線単線式　距離弐拾間毎ニ壱本ノ割合ヲ以テ電柱ヲ建設ス
　　　　　　饋線ハ凡テ被覆線ヲ用フ
　　一客車・走行速力・電気圧力ヲ明示セス
○七番松田曰　別紙出願人中藤岡市助外何名、立川勇次郎外何名・雨宮敬次郎外何名トアルカ、其人名ハ判リ居ルヤ
○委員長代理山県曰　然リ、判然シ居レリ
○七番松田曰　内務大臣ノ訓令ハ昨年十二月十七日ナルカ、今日マテ本会ヘ提出セラレサリシ理由如何
○委員長代理山県曰　議会開会中ハ何分人員ニ差閊ヲ生シタレハ、已ムヲ得ス今日マテ延引セシナリ、尚ホ前御尋ネノ人名書ハ御手元ヘ
　　（書記、人名書ヲ七番ノ席ニ持行キ一覧ニ供セリ）
○十七番曾根曰　本案別紙中ニ、曾テ逓信省ヨリ警視庁ニ注意シタル電灯其他電力線ノ架設ハ、一街路中其両側ナルト片側ナルトニ拘ラス、又幅員ノ広狭如何ニ関セス、総テ一線路ノ外之ヲ許可セサル方針云々トアルカ、一街路ニ対シ一線路ニ限ル方針ヲ取ラレシハ、電力ノ感応等総テ技術上ノ関係ヨリ来リシモノナリヤ、如何
○二十三番田曰　事逓信省所管ニ関スルヲ以テ、本員ヨリ説明セン、
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之ハ主トシテ技術上ノ関係ヨリ生シタルモノニシテ、一街路中幾条モ架スルトキハ他ノモノトからみ、或ハ暴風ノ際混線シ、非常ニ其作用ヲ激動セシメ、延ヒテ其器具ヲ毀損スルノミナラス、或ハ火ヲ発シ危害ヲ醸出スルコトナキヲ保セサルカ為メニシテ、即チ此危険ヲ避ケシムル目的ニテ斯クノ如キ方針ヲ立テシナリ
○十七番曾根曰　素人目ニモ実際両側ニ建柱シアル箇所モアルカ如何
○二十三番田曰　其方針ヲ採リシハ近年ノ事ユエ、其以前ノモノニハ或ハ無シト断定シ得ラレサレトモ、果シテ実際アリシナラハ、夫等ハ逐次改メラルヘシ、而シテ諮問案中府知事ノ上申書ニハ電話線ニ重キヲ置カレシ如ク、勿論重キヲ置カサルヲ得サルコトナレトモ、本案電気鉄道ノ布設ハ、特ニ電信・電話ノ関係ノミナラス、実ニ本市ノ利害ト美観ニ関係スル重大ナル問題ナレハ、玆ニ聊カ本員カ所見ヲ述フヘシ
　元来電気鉄道ニモ種々ノ方法アリテ、其設計ニ依リテハ一概ニ電話等ニ関係ヲ及ホスヘキモノニアラサルハ論ヲ俟タス、彼ノ薬物ヲ車内ニ蔵置シ、建柱ヲ要セスシテ自由ニ馳行シ得ル所ノ蓄電器ナレハ敢テ電話等ニ関係ナク、又市街ノ美観ヲモ傷ケサル至極好キ方法ナレトモ、此蓄電器ナルモノカ多クノ人或ハ物ヲ自由ニ安全ニ運搬スルヲ得ルヤ否ヤハ、甚タ疑ハシキコトニテ、北米合衆国中ニハ之アリトノコトナレトモ、是以テ単ニ試験的ノ業トスルニ過キサレハ、果シテ応用ノ出来得ルモノナリヤ如何ハ、実際ニ試験セサレハ判然セス、現今ハ蓋シ疑問中ニ属セリ、又単線式ヲ用フレハ電話ハ殆ント其影響ヲ被リ、遂ニ其効用ヲ失フノミナラス、危険極リナキヲ以テ、果シテ許可スルコトヽ為サハ電話ハ悉ク複線ニ更メサルヲ得サルヘシ、彼ノぼすとんヲ除クノ外欧米各国ニテ之カ布設ヲ禁シタル所以ハ、第一美観ヲ損シ、第二危険ヲ免カレサルノ点ニアルカ如シ抑々各区甍ヲ列ネ互ニ其美ヲ競ヒツヽアル街衢ヘ、無風流ニモ多数ノ電柱ヲ建設スルニ至リテハ、其風致ヲ害スルコト酷シキト、一ハ繁盛ナル市街ニ於テ急遽ナル速力ヲ以テ群集ヲ縫フカ如ク馳騁セラルヽニ於テハ、其危険ヤ実ニ恐ルヘキモノアルヲ以テノ故ニシテ、電話ノ関係ニ原因シテ之ヲ禁ストハ謂ハサレトモ、我東京市街ノ如キ然モ大都会ニシテ、今ヤ其市区ノ改良整理ヲ計リツヽアル地ヘ、果シテ是等ノ新事業ヲ許可スルモ差支ナキヤ否ヤ、之レ即チ本員ノ大問題ト為ス所以ナリ、已ニ府知事ノ上申ニモ、他年市区道路ノ改正ト街路電気線条ノ改良整理トヲ待ツテ之ヲ許可スルハ格別云々トアルヲ以テ見ルモ、現今ニ於テ之カ施設ノ許否ヲ断定セントスルハ最モ本会カ充分ニ研究ヲ要スヘキ事項ト認ム
　縦シ又美観ヲ損セス、且危険ノ虞ナシトスルモ、水道鉄管布設ニ大関係ヲ生スルコトアルヲ奈何セン、是又研究ヲ要スヘキ大問題タリ彼ノ単線式ナルモノハ地中ニ向ツテ非常ナル電流ヲ放下スルモノニテ、其電流カ土中ヲ伝フテ其元ヘ戻リ来ルモノナレハ、其土中ニアル伝ハリ易キ物質ニ接触スルヲ以テ、鉄管ノ如キハ勿チ電流ノ為メニ襲ハレ、之カ為メ遂ニ鉄ノ腐蝕ヲ促スノ危険アリ、尤同シ鉄管ニテモ瓦斯管ノ如キハ僅カナルモノナレトモ、実ニ本市ノ休戚ニモ関
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スル程ノ水道鉄管カ通常百年ヲ保チ得ラルヽニ、其電流ノ為メ二・三十年命脈ヲ短縮セラルヽニ至ツテハ甚タ憂フヘキノ至リナリト云ハサルヘカラス、併シ電流ノ為メ絶対的腐蝕ヲ速カナラシムルニアラス、其設計ニ依リテハ大ニ然ラサルモノモアラン歟、即チ其戻リ線ヲ軌道ノ間ニ布キ、以テ大地ヲ利用スルノ方法ヲ減セハ、或ハ其感触ヲ薄カラシムルヲ得ヘシ、然レトモ是又多少ノ害ハ免カレサルノミナラス、電話線ハ孰レノ方法ニテモ現今ノ儘ニテハ用フルコト能ハサルニ至ルヘシ、故ニ迂濶ニ許否スルトキハ此電流ノ為メ恐ルヘキ危害ヲ生シ、危害ヲ避ケントセハ電話線ヲ更改セサルヲ得サルニ至ラン、況ンヤ大事業タル水道鉄管ニ及ホス重大ノ関係アルヲヤ然リト雖モ、欧米ニ於テ之カ布設ヲ禁スルハ前ニモ述ヘタル如ク、電話ノ関係トハ云ハス、美観・危害ノ二点ニ外ナラスト雖トモ、現今ノ電話線ハ夫レ斯クノ如キ密接ノ関係ヲ有スルモノナリ、尤電話其レ自身モ単線式ヨリ寧ロ複線式ヲ用フル方充分ナル効果ヲ得ルモノニテ、到底現今ノ製ノ如キハ完全ヲ得タルモノト云フヘカラス、現ニ電灯線ノ漸次増加スルニ随ヒ、今日ニテモ夜陰ハ己ニ其余響ヲ蒙リ、がんがん耳ニ感シ、其効用ヲ全カラシメサル事実アルハ、蓋シ諸君モ御承知ノコトナルヘシ、加之現今ノ加入者ハ千八百名位ニ止マレトモ、日進月歩ノ社会此上数千以上ノ加入者ヲ生スルニ至レハ、啻ニ電灯線ナシトスルモ無効トナルノ惧アリ、故ニ我逓信省ハ此憂ナカラシメント欲シ、頗ル苦慮シツヽアルモ、如何セン費用ノ許サヽル所アルヲ以テ、已ムヲ得ス其改良ヲ遅々シアルナリ、然レトモ兎モ角モ今日マテハ先以テ幾分ノ効用ヲ減スル位ニ止マリシニ之ニ反シ電気鉄道ノ布設ヲ許可セントセハ弥々現今ノ儘ニ据置クヘカラサルニ至ルヘシ、要スルニ電気鉄道ヲ布設セントセハ、現今ノ電話線ハ勢ヒ更改セサルヘカラサルナリ、併シナカラ電話線ハ斯クノ如キモノナレハ、固ヨリ永久ノ問題ニハ関係ヲ有セサルヲ以テ、本案調査ハ専ラ市ノ美観ト道路ノ安寧、若クハ水道鉄管ニ及ホス関係如何ヲ主トシテ決定ヲ為スヲ至当ナリト信ス
　以上述ヘタル如クナレトモ、本員素ト技術ニ悉シカラス、時ニ或ハ誤謬ナキヲ保セサレハ、充分調査セラレン事ヲ希望ス、就テハ本邦ニ於テモ電気応用事業ノ漸ク頻繁ヲ告クルニ至リシカ為メ、我逓信省ハ昨年一月頃斯学研究トシテ技師浅野応輔ヲ欧米ヘ差遣シ調査セシメラレタレハ、此問題ノ起リシヲ幸ヒ同氏ヲ利用サレナハ大ニ便利ナラン、依テ本員ハ調査委員ヲ設ケラレ、独ホ浅野応輔氏ヲ招キ其調査ヲ付託セラレ、以テ充分ナル意見ヲ確定シ置カントスルノ動議ヲ提出ス
○二番須藤曰　賛成
○六番角田曰　本案ニ就テハ何人カ説明ヲ担当セラルヽヤ
○委員長代理山県曰　二十三番ニ説明ヲ請フ筈ナリ
○六番角田曰　無論調査委員説ニ賛成ナルカ、本案ニハ答申書様ノモノナキヲ以テ見レハ、府知事ヨリ内務大臣ヘ上申シ、同大臣ヨリ本会ヘ訓令セラレタルモノニテ、幹事会ニモ掛ラス、又市会ヲ代表スル市参事会ニモ係ラヌモノニヤ、亦別ニ説アルニヤ如何
 - 第28巻 p.217 -ページ画像 
○委員長代理山県曰　内務大臣訓令ノ儘ナリ
○二十四番佐久間曰　二十三番ノ説ニ賛成ナリ、府知事ハ丸テ許サヌ方ノ上申ナレトモ、斯クノ如キ進歩的事業ハ市ニ差支ナキ限リ許シタシ、街路ノ一方ニ建柱スルトカ、又ハ上野広小路ノ如キ大道ニハ双方ヘ建ツルモ可ナリトカ、是等ハ市区改正上大ナル関係ヲ有スルモノナレハ、併セテ十二分ニ調査アランコトヲ望ミ置ク
○二十七番渋沢曰　調査委員説ニ賛成、就テハ只今二十四番ノ希望ノ如ク、斯カル事業ハ充分ノ調査ヲ要スルハ勿論ナレトモ、面倒ナルモノハ後廻シトスル抔ノコトナカランコトヲ希望ス
○二十九番益田曰　二十三番ノ説明頗ル明晣ニテ、逐一了解シ、委員ヲ置カルヽニハ賛成ナリ、夫レテ本員ハ今一層其調査ヲ拡張シタク思フ、何トナレハ本市ノ如キ大都会ニ在ツテハ馬車鉄道ナリ、電気鉄道ナリ、往復ノ頻繁ナル運輸ノ輻湊ナルハ自然ノ勢ニシテ、何レモ迅速ヲ貴フヨリ、日ニ月ニ其速カナルコトヲ希フモノナレハ、本案ノ如キモ場所ノ広狭ト市区ノ盛衰トニ依リテハ、強チ禁スルモノニモアラサルヘキヲ以テ、適否如何ヲ調査セラルヽト同時ニ、他ニ何物カ善ク便利ヲ為スヘキモノアリヤ否ヤヲモ調査セラレンコトヲ欲ス、其ハ余事ニアラス、若シモ本案カ万一否決セラルヽトキ、夫レ限リニテ沙汰止トナルカ如キコトアリテハ残念ナルヲ以テ、之ニ代ハルヘキ軽便ニシテ且ツ安全ナルモノアリヤ否ヤノ点マテヲモ調査シ置カントスルニアリ、已ニ欧米ニ於テハけーぶるかートカ謂フテ、鉄柵ヲ地中ニ設ケ、以テ車輛ヲ牽カシム至極軽便ノ方法アリト聞ク、是等モ一ノ参考トナルヘシ、又其区域ヲ限ルトカ制限ヲ付スルトカノ方法モアルヘシ、故ニ其辺マテモ此際併セテ調査セラレンコトヲ欲スルナリ
○十四番森田曰　電灯柱ハ警視庁之ヲ許否シ、一個ノ道路ニ二柱ヲ建設セシメサル方針ナリ、二十三番ノ説モアルカ、電灯ハ高圧ナレハ電気鉄道トハ自ラ区別アリテ、其鉄管ニ及ホスヘキ害ノ程度果シテ如何
○二十三番田曰　電話・電灯ヲ片側ヘ一所ニ建設スヘカラサルハ勿論喩ヘ両側ニ設クルモ夜陰ニナレハ非常ナル音響ヲ感セリ、而シテ今日ノ電灯カ鉄管ニ及ホス害如何トノ御尋ネノ様ナルカ、電灯ハ悉皆廻線ニテ地中ヲ利用シ居ラサレハ、現今ハ害ナシ、尚ホ一本ノ柱ニテ往返スル様ニセハ、更ニ可ナレトモ、兎角電線ハ一人テ居ルト心ヲ他ヘ移ス様ニナリ、終ニ之カ為メ害ヲ他ヘ及ホスモノナレハ、所謂陰陽合体スヘキ方法ヲ施サヽルヲ得サルナリ
○六番角田曰　本会ニ於テ何カ調査セントスルトキ金ヲ遣フコトアリヤ、若シ他ノ人ヘ調査ヲ託スルトセハ、其レニ伴フ費用ヲ出スノ決心ナカルヘカラス・如何
○二十四番佐久間曰　嘱託員同様ニセハ可ナラン
○十四番森田曰　近クハ京都ニ其摸範アリ、実地ニ就テ調査シテハ如何
○二十四番佐久間曰　二十九番ノ説ノ如クけーぶるかーノ事モ、調査中ニ加ヘテ決ヲ採ラレタシ
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○六番角田曰　御中言ノ様ナレトモ、他ノ事項ハ調査セサルモ、本案カ如何様ニナルトモ其他ノ事柄マテ随伴シテ消ユルモノニアラサレハ、其ハ委員ノ心得ノミニテ調査スルナラハ穏当ナラン、議場ニ於テ決議ト為スハ如何アランカ
○十七番曾根曰　余程鄭重ノ問題ナレハ、技術家ノ調ヲ徴シ、依テ以テ其委員カ許否ヲ判定スルモノナラン、然レハ之ニ給スル手当又ハ報酬ヲ与ヘサルヲ得サルヘシ
○委員長代理山県曰　報酬ハ本会費中ニアリ、与フルコトヲ得ヘシ、其調査委員ハ何名位ナリヤ
○二十三番田曰　調査委員ハ少シ多数ヲ要ス、又其技師ニハ臨時委員ヲ命セラレテハ如何
○六番角田曰　七名ニテ如何
○二十三番田曰　然ラン
○二十四番佐久間曰　賛成
○委員長代理山県曰　六番ノ説モアレハ、二十九番ノ説ニ就テ採決セン
○二十四番佐久間曰　調査ノ一条件トシテ美観・利便其他ノ事項ヲ調フルニ於テ、差支ナカルヘシト思考ス
○六番角田曰　本員ノ説ハ敢テ峻拒スルニハアラス、只答申ナレハ、他事ヲ議決スルハ如何ト謂フニ過キス
○二十九番益田曰　答申ニハ歌ハスモ、電気鉄道ハ何程ノ利害アリ、他ニ斯クノ如キ好法アリトカ利便アリトカ、云フコトヲ調査シ置クニ就テハ、何等ノ差支ナカルヘシ
○委員長代理山県曰　採決セン、二十九番ノ他ノ利便ナル事項ヲ調査シ置カント謂フ説ニ同意者ハ起立アレ
　　起立三名
　又曰　少数消滅、原案ニ対シ調査委員七名ヲ置ク説ハ異議ナシト認ムルヲ以テ、其委員ハ後ニ指名スヘシ、次ハ諮問第十五号馬車鉄道布設ノ件ニ移ル
　　　書記朗読
　　松本錬蔵外四名ヨリ本所・深川・浅草及下谷区ヘ亘リ、馬車鉄道布設ノ儀出願ニ付、東京府知事ヨリ別紙ノ通リ諮問有之候処、右線路ノ内本所区二《（三）》ツ目通リ街路ノ如キハ、市区改正ノ実施ニ伴ヒ同時ニ其布設ニ着手セントスルノ旨趣ニ有之候得共、目下改正実施ノ確定セサル今日ニ於テ、其実施ヲ予期シ認可ヲ与フルハ妥当ナラサルノミナラス、本線路中深川区東元町ヨリ仲大工町ニ架ス高橋ハ路盤ト橋梁トノ高低甚タシク、到底馬車鉄道ヲ布設セシムルコトヲ得サルモノト認メ候、又厩橋ヨリ上野ヘ至ル街路ハ曾テ雨宮敬次郎其他ノ者ヨリ電気鉄道布設ヲ出願シ、目下其筋ヘ稟議中ニ属シ、未タ許否ノ如何確定不致候得共、彼是重複ニ渉リ候儀ニ付、前述二線路ハ詮議不相成様復申可致ト存候、然レトモ本所区西横川河岸ヨリ南花町通リ・北南割下水通リ・亀沢町ニテ相合シ、元町ニ至ル線路ハ、街路幅員五間五・六分已上六間余モ有之殊ニ亀沢町一丁目ニ於ケル或ル部分ハ曾テ市区改正ノ設計ニ依リ
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其道路ノ幅員ヲ取拡候事ニ相成居、尤モ南割下水通リハ幅員五間ニ満タサル箇所モ有之候得共、同下水ヲ隔テヽ之ト同幅員ヲ保テル道路有之候ニ付、軌道ヲ下水側ニ片寄セ布設セシメハ差支無之ト認メ候、然ルトキハ此一線路ニ於テハ総テ差支無之ト存候間、尚照会ノ為メ意見ヲ付シ復申致度、御調査ノ上何分ノ儀御回答相成度、此段及御照会候也
　　　明治二十七年十二月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　東京市参事会
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　市区改正委員長　三浦安殿
　　　追テ御回答ノ節書類御返戻相成度、此段申添候也
　　別紙
　　本所区元町ヨリ西横川河岸間ニ至ル街路、及厩橋ヨリ上野間ニ至ル街路等ニ馬車鉄道ヲ布設セントシ、松本錬蔵外四名ノ者ヨリ別紙甲号ノ通リ出願セリ、依テ先以テ其支障有無ヲ警視庁ニ照会セシニ、該庁ヨリ別紙乙号ノ通回答アリシモ、右出願線路ノ内本所区元町ヨリ西横川河岸間ニ至ル部分ノ如キハ、僅カニ其距離十四五町間ニ過キサル街路ニ布設セントスルモノニシテ、之ヲ認可スルモ公衆通行上ニ取リ格別ノ便利ヲ与フヘキモノト認メ難ク、ノミナラス該区ノ如キハ常ニ其運輸交通トモ舟運ノ便利ニ拠ルヲ得策トシ、他区市街ノ地トハ大ニ其状況ヲ異ニスル所モ有之、且殊ニ道路ノ幅員モ充分ナラサルニ依リ、旁追テ該区道路ノ改正等実施ノ後之ヲ詮議スルハ格別、現今ノ場合ニ於テハ之ヲ許可セサル方可然ト思料ス、又厩橋ヨリ上野間ニ至ル街路ハ曾テ雨宮敬次郎其他ノ者ヨリ電気鉄道布設ヲ出願シ、目下其筋ヘ稟議中ニシテ、未タ許否ノ如何ハ確定セサルモ、彼是重複ニ渉リ候ニ付別紙出願ハ総テ之ヲ認可セサル見込ヲ以テ其筋ヘ進達セントス、依テ其会ノ意見申出ツヘシ
　　　明治二十七年十一月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　三浦安
　　　　東京市参事会
　　　　　　東京府知事　三浦安殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（別紙願書略ス）
　　　○諮問第拾五号、本所区元町西横川河岸ヘ馬車鉄道線路布設之図（附図第五三）。
　　本所元町ヨリ西横川河岸間ニ至ル線路ニ係ル警視庁意見
　　一図面中元町ヨリ相生町四丁目通リノ街路ニ係ル鉄道複線ヲ単線トスル事
　　　但起業者ノ都合ニ依リ本所警察署ノ門前ニ係ル道路ニ限リ避譲線ヲ布設スルハ妨ケナキ事
　　一図中南割下水沿ヒ通リノ線路ハ、其鉄道ヲ下水沿ヒノ方ニ偏シ布設スル事
　　一図中相生町四丁目角ヨリ二ノ橋通リ朱点ヲ付シタル線路ヲ、黒線ノ線路ニ変換スル事
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　　一図中付箋ヲ為シタル路上井戸駒寄ノ鉄道ニ面スル部分ヲ改造シテ井側ニ接セシメ、又割下水通リニアル共同便所ヲ、向フ側ノ道路割下水沿ヒノ地ニ移ス事
　　一停車場ハ民有地又ハ河岸地等ニ設置シ、而シテ両国橋際ニ在テハ乗客ノ上下モ其停車場ニ於テ為サシメ、路上ニ駐車セサル事
　　一鉄道敷地ニ係ル地盤ハ雨水・馬尿等ノ淹滞又ハ泥濘等ヲ来サヽル様、適当ノ工事ヲ設備スル事
　　　参考
　　品川新橋間馬車鉄道布設ニ付シタル条件
　　一品川新橋間ノ内、所謂品川鉄道橋以南並新橋芝口一丁目間ハ道路狭隘、通行頻繁ナルヲ以テ、危険ノ虞アリ、依テ鉄軌布設ハ品川鉄道橋以北高輪南町ヨリ芝口二丁目マテヲ限ルヘキ事
　　一芝口二丁目道路外ヘ停車場ヲ設置スル事
　　一車馬通行ニ妨碍ナカラシメン為メ、鉄軌ハ凹形ヲ用ヒ、一般道路ノ表面ヨリ昂低セシムヘカラサル事
　　一鉄軌内ハ勿論、鉄軌外共横幅壱尺五寸通リヘ敷石ヲ為ス事
　　一敷石寸法ハ大略竪五寸・横幅七寸五分乃至八寸、厚サ三寸五分ニシテ相州堅石ノ類ヲ用ヒ、別紙図面ノ通リ構造スル事
　　　但堅固ニ其地盤ヲ築造セシムル事
　　一市区改正ニ関スル工事上、一時軌道及敷石等ノ撤回ヲ要スルトキハ、無償ニテ之カ取払ヲ為ス事
　　一市区改正完成ノ上、馬車鉄道ノ布設ヲ議スヘキ路線ノ確定マテ仮リニ許可スル事
　　　　但既設馬車鉄道許可ノ年限ヲ超ヘサル事
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（別紙図面略ス）
○十四番森田曰　曾テ馬車鉄道ヲ許可セシ当時ハ、道幅等ハ調査セサリシカ為メ、現今ニ至リ交通上不便ノミナラス、頗ル危険ノ虞アリ之ニ関シ凡テノ事柄ヲ調フルハ即チ本案カ嚆矢ナラン、就テハ此調査ナルモノハ少ナクモ乗車ノ便利ヲ殺クコトトモナレハ、交通上不便若クハ危険ナキ限リハ許可スルモ差支ナキ精神ヲ以テ調査委員ニ付託セラレタシ、而シテ其調査ハ前ノ議案ニ対スル調査委員ニ嘱スルコトヽ為サハ便利ナラン、玆ニ其意見ヲ提出ス
○二番須藤・二十七番渋沢並曰　賛成
○委員長代理山県曰　異議ナクハ前案ノ調査委員ニ託スルコトトセン本日ハ散会
　　（委員長ハ七番・十四番・十七番・二十三番・二十四番・二十八番・二十九番ヲ調査委員ニ選定シ、幹事ヲシテ通知セシム）
　　　于時零時二十五分